SELECT SITE - 日本コンベンションサービス

CMP
(Certified Meeting Professional)から
SKILL 20:
SELECT
SKILL 20: SELECT SITE
Sub skill 20.01 – Determine Site Specifications
Sub skill 20.02 – Identify and Inspect Sites
CMP 出題頻度:5 〜 7問(合計150問)
SITE
は展示施設を兼ね備えた会議施設、conference centresはホ
テルや研修施設、お城など、ありとあらゆるタイプを含む会
議施設を含むようです。
他にもリゾート、クルーズ船、大学内の施設、歴史的建造
物や博物館を活用するNon-traditional venues(日本ではユニ
ークべニューと呼ばれています)などがイベントの会場として
今回のテーマは会場選定です。MICE ジャパンの読者には
MICE 施設やホテルに勤務されている方も多いことと思いま
すので、プランナー側から見た会場選定プロセスを知ること
が今後のセールスのお役にたてばなによりです。
利用されています。
なお、VIP の参加するイベントでは、会場選びの際に特別
な配慮が求められます。一般参加者と交わらない VIP 導線を
確保する必要があるため、VIP 専用の出入口や特別室 green
roomを用意する必要があります。さらに施設側でも、同じ日
の予約イベント内容に注意を払い、必要とあれば地元警察や
会場仕様を決める
Sub skill 20.01 – Determine Site Specifications
自前の警備チームとともにセキュリティ計画を立てる必要が
あります。
開催地や会場の選択はイベントの成果に大きな影響を与え
ます。より合理的な選択を行うためには、まず求める会場の
仕様を明確にする必要があります。イベントの開催目的、実
施内容、過去の参加者数・内訳、イベント予算と参加者の予
会場選定
Sub skill 20.02 – Identify and Inspect Sites
算、参加者の嗜好、会場の提供サービス内容、そしてサステ
会場選定における判断基準にはさまざまなパターンがあり
ナビリティなどといった項目について、まずは仕様を明確に
ます。まず最初に地域を決めて、その中の施設を比較する場
します。
合もありますし、施設の種類を決めてから複数の開催地を比
会場選定にあたり最大の情報源となるのはDMO(destination
較する場合もあります。
marketing organization)です。公的資金や会費、ホテル税
いずれにしてもRFPを出して各施設からの提案書を比較検
などで運用される組織で、コンベンションビューローや観光
討するわけですが、異なるタイプの施設を比較することは手
局と呼ばれることも多く、担当地域のサプライヤー情報を把
間がかかります。たとえば大学の教室を検討する場合、施設
握しています。なお、DMO の国際組織に DMAI(Destination
の利用料金に付設の映像機器が含まれているのかどうか、技
Marketing Associations International)というものがありま
術スタッフが常駐しているかどうかで合計金額は変動します。
す。
施設のタイプごとに、含まれるサービス、発生しうる追加料
また、一定の基準を満たしたプランナーに無料配布される
金をきちんとチェックする必要があるのです。
業界誌では毎月さまざまな開催地が特集されており、会場選
候補となる会場を絞り込んだら、原則としてプランナー自
定の参考になっています。
身が視察に出向きます。あらかじめ必要項目のチェックリス
世界中からDMO や施設、プランナーが集まる商談会も重
トを作成しておき、最終決定権限者がいる場合は視察への同
要な情報源です。単なる展示ではなく、意思決定者が集まっ
行を依頼します。
ているため、商談につながりやすいことが大きな特徴です。
RFPにサステナビリティ項目を含めている場合は、施設に
開催地決定権を持つプランナーにはホステッドバイヤーとい
おけるごみのリサイクルやコンポスト、厨房、労働条件、社
う制度が用意されており、旅費や滞在費が免除されます。
会貢献活動なども視察・確認します。こうすることで、提案
その他 PCO(professional congress organizer)、日本だ
書に記載されているサステナビリティ取り組み内容について
と旅行代理店に相当するDMC(destination management
より的確な質問を行い、状況を正確に把握することができる
companies)といったリソースを活用することもあります。
からです。
また、会場にもさまざまなタイプの会場があります。日本
視察後、自分なりに選定のめどがついたら、同僚や主要な
ではコンベンションセンターとコンファレンスセンターには大
ステークホルダーと話し合います。この際、項目別の評価表
きな定義の違いはありませんが、欧米では convention centre
を作成することで、その判断の妥当性と、どのような項目を
16 MICE Japan 2016・12月号
考えるMICEのグローバルスタンダードと日本基準
重視して決定したのかを示すことができます。関係者の同意
Sign language interpretation 手話通訳を起用する際の留
が得られたら、施設と契約書を取り交わし、その後は施設担
意事項としては、まず、手話は世界共通ではなく、さまざま
当者との良好な協力関係を維持するよう努めます。
な種類があることです。日本手話、アメリカ手話、イギリス
手話、フランス手話、国際手話など、原則としては国ごとに
使用される手話が異なり、さらに同じ国でも複数の手話が使
アクセシビリティ
Accessibility
用されています。たとえばアメリカの場合は American Sign
Language(ASL)やSign Exact English(SEE)など幅広い手
話が使用されているため、参加者の属性によってどの手話を
イベント会場選定においてアクセシビリティへの配慮は欠
使用するか決める必要があります。また、国際会議の場では
かすことができません。国・地域ごとにさまざまな法律が定
国際手話が使用されますが、実際の使用者が最も多いのはア
めら れ て おり、たとえ ば Americans with Disabilities Act
メリカ手話(ASL)です。
of 1990(ADA)
、Australia’s Disability Discrimination Act
ステージレイアウトを決める際は、consumer 手話利用者が
1992(ADD)などがあります。しかしアクセシビリティは法
手話通訳者の動きと講演者の両方を目で追える位置関係とす
規制としてとらえるよりも、むしろ重要な顧客サービスとし
る必要があります。また、スクリーンに投影する場合は、手
てとらえるべきです。なぜならば、アクセシビリティへの配
話通訳者をPicture in Picture(PIP)と呼ばれるスクリーンの
慮を怠ることで参加者数は減少し、関与の度合いが低くなり、
隅の別ウィンドウに投影する手法が一般的です。また、聴衆
そして主催団体の評判が落ちるからです。
が手話通訳者の動きに集中できるよう、ステージの装飾や照
アクセシビリティについて国連が定めた2つのキーワード
明についても配慮が求められます。
があります。1つめは reasonable accommodation 合理的配
事前に十分な参考資料や読み原稿を手話通訳者に提供する
慮、すなわち「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基
こと、ひとりの手話通訳者が連続して長時間の通訳を行うこ
本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要
とのないようにチーム編成することについては、一般的な通
かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要
訳者と留意すべき点は同じです。
とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を
課さないものをいう」と定義されている概念です。2つめは
universal design ユニバーサルデザイン、すなわち障害の有
無にかかわらず、すべての人にとって使いやすいようにはじ
めから意図してつくられた製品・情報・環境のデザインのこと
を指します。
それでは、イベントにおけるアクセシビリティ配慮事例
には、具体的にどのようなものがあるでしょうか。事例はま
ず、structural considerations 建造物配慮と program and
services considerationsプログラム・サービス上の配慮に分け
られます。つまりハード面とソフト面での配慮ということで
すね。
Structural considerations 事例
・車いす・電動スクーターに対応できる通路幅や
エレベーター
・障害者にも配慮された避難経路
・障害者用トイレの整備
・盲導犬用スペースの設置(芝生など)
Program and services considerations 事例
・イベント会場間の距離の設定
・障害者用交通手段の確保
・手話通訳や聴覚補助端末の準備
・車いす修理業者、獣医の連絡先確保
押さえておきましょう! CMP 用語集(terminology)
Destination 開
催地、目的地
Convention and visitors
bureau (CVB) 観
光コンベンションビューロー
Tourism Office 観
光局
Green Room 特
別室
Non-traditional venues ユ
ニークべニュー
Reasonable accommodation 合
理的配慮
Site management 会
場管理
Site selection 会
場選定
Universal design ユ
ニバーサルデザイン
西本 恵子
Keiko Nishimoto, CMP
日本コンベンションサービス
(株)
MICE 都市研究所 主任研究員
Convention Industry Council で CMP 試験
問題作成委員および国際標準委員を担当。ICCAアジアパシ
フィック部会担当理事。
まもなく国際ミーティングエキスポ(IME2016)が横浜で開催
されます。会期中は身長約2メートルの英国人サステナビリ
ティ・コンサルタントとともに会場におりますので、見かけた
ら
「ハイリハイリフレハイリホー♪」と口ずさんでください。
・・・すみません、若い方にはわかりませんね。
MICE Japan 2016・12月号 17