畜産用(養鶏編)

優良事例
−ブロイラー年間
260万羽の特別飼育鶏生産−
小関 良三
岐阜アグリフーズ株式会社
岐阜県山県市高富227-4
●技術のポイント
1) 特別飼育鶏の大量生産。
2) 自社開発のEMフィードBAとAL-Vを使用。
1 . 基礎データ
2 . 立地条件
1 ) 畜舎の所在地
1 ) 地域の概況
関事業所:岐阜県関市神野奥正洞664-1
事業所のある関市は、岐阜県の中央、鵜飼
塔之洞事業所:岐阜県関市塔之洞籠屋2737
と清流で知られる長良川の中流部にあり、
2 ) 品種
日本列島の中心に位置し、山々に囲まれた
関事業所
コッブ、チャンキー
のどかで快適なまちです。700余年の歴史と
塔之洞事業所
赤、白
伝統をもつ刃物のまちとして知られ、今後、
3 ) 経営規模
東海北陸自動車道や東海環状自動車道の建
関事業所
110万羽
設により内陸型工業都市・物流拠点都市と
塔之洞事業所
26∼30万羽
して、その未来に大きな期待をもっている地
域である。
その他は農家委託
4 ) 労働力
2 ) 経営の特色および生産と消費の形態
関事業所
10名
ブロイラー生産では、人体に影響があると
塔之洞事業所
3名
いわれる抗生物質等の薬剤は一切使用しない
平成5年
特別飼育鶏の生産を自社実験農場で研究を
5 ) EM導入年
6 ) EM導入の動機・期待する効果
続けてきた。従来のブロイラー生産は、病気
近年、消費者の自然・本物・健康志向や環
の大量発生を避けるため、飼育には多くの
境問題への関心が高まる中、農畜産物
抗生物質が使われ、飼料安全法により飼育
生産における低農薬・有機農法等が急速に
期間60日のうち出荷前7日間だけ抗生物質
人にやさしい食品
等の薬剤を添加しない飼料を与えれば良いこ
拡大している。同社
ことをテーマに、人・環境に
とになっている。
とって害のない農畜産物生産や商品の開発を
それに対し特別飼育鶏生産では、飼育期間
行ってきたところ、E M技術の可能性を研究
全てにわたって抗生物質等を添加しない飼料
した。
を与えて飼育するため、大腸菌症やコクシ
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優良事例
ジューム症などの病気対策が最大の課題で
E M利用により、アンモニア臭がなく作業
ある。同社では、
その対策として①施設の衛
がしやすい。糞便が乾いている。
生管理、②病気の早期発見、③飼料の改良を
↓
基本に研究を進めてきた。
②水洗後乾燥。
現在は、 特別飼育鶏として、大手スーパーや
↓
生協に卸している。
③消毒(1回目)後乾燥。
3 ) 経営概要
↓
岐阜アグリフーズ㈱は鶏肉を中心に牛、豚
④消石灰液の散布(病原菌の発生源となる
の総合食品加工販売事業を始め、県内農畜
。
↓
産物加工品や健康食品等の販売、ブロイラ
⑤消毒(2回目)後乾燥。
ーの生産販売の研究や商品開発等のJAグ
↓
ループの総合食品事業を行っている。
⑥消毒(3回目)後乾燥。
現在は直営農場、提携農家、提携企業全て
↓
あわせて年間260万羽の特別飼育鶏のブロイ
⑦消毒済みの器具機械搬入・設置。
ラーを生産している。
4 ) 施設概要(具体的に)
↓
⑧床資材搬入
関事業所 18m× 108m の二階建て鶏舎:4棟
)
18m× 54m の二階建て鶏舎:4棟
堆肥舎
国産針葉樹のチップ)は病原菌
の巣となりやすいので注意が必要。
鶏糞ボイラー3基
↓
⑨200倍のEM 5を鶏舎の内外に湿る程度散
布し、乾燥する。
↓
⑩鶏舎内の加温・加湿・換気。
(温度15∼25度、湿度約60%)
↓
⑪入雛(40∼45gの 購入ヒナを鶏舎に入れ
る:40∼42/坪)
。
特に生後1週間のヒナの管理には細心の注
意が必要。
写真1 鶏舎
↓
3 . 飼育方法
⑫育成(55∼60日間鶏舎内で放し飼い:45
1 ) 飼育方法
∼50/坪)
。
飲水管理を毎日徹底する(朝夕2回鶏舎
平飼いウインドレス(一部窓付き)
2 ) 生産サイクル
に入り、給水器をチェックする)
。
成鶏の出荷終了後
↓
⑬出荷(2,800∼3,000gの成鶏を出荷する)
。
↓
①除糞作業(鶏糞が病原菌の温床となるた
め、出荷後早急にこの作業を行う)
。
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優良事例
※飲水・ボカシ・散布・エサをどの様にとらえ
ているか?
①施設の衛生管理
鶏のALL IN ALL OUT を徹底し、空舎の間
に鶏舎内の消毒3回と床面に消石灰を散布
して、細菌の発生を抑制する。さらに床資材
や鶏舎内に持ち込む器具の滅菌を徹底し、鶏
舎内に細菌を持ち込まないようにしている。
②病気の早期発見
日常からヒナの観察を徹底、定期的な糞便
写真2 出荷前の鶏
や血清などの検査を実施し、ヒナの健康状
態のチェックに努めることで、病気の大量発
生を抑えている。
③飼料の改良
家畜自身の健康を増進し病気にかかりにくく
することを目的に、同社が飼料の研究に取
り組み、有用微生物群(E M)を利用した
「EMフィードBA」を開発した。
④農場の防疫管理の徹底をはかる
「EMフィードBA」は、
iブロイラーが健康に成育するため食欲が旺
写真3 雛を入れる前の鶏舎内
盛で育成率が高くなる。
i
i抗生物質等を添加しないため、飼料コス
トを軽減できる。
i
i
i鶏糞臭が抑えられる。
などの効果がある。
以上のことから実験農場の育成成績は良くな
り、特別飼育鶏生産を平成7年9月より本格
的に開始し、平成8年3月入雛からは全羽を特
別飼育鶏にし、現在も順調に生産を続けている。
3 ) エサ
ブロイラー前期に、EM1の1000倍液とビタ
写真4 雛導入後の鶏舎内
ミン剤を混ぜてエサを練り作成したものを2
4 ) 水および飲水処理
日程度あたえる。
同社は混合飼料「EM フィードBA」
を無薬ブ
・EMXセラミックスによる水の改善
ロイラー前期飼料(アグリブロー)2%、仕上
上水道をためた飲水タンクにE MXセラミッ
げ用飼料に1%添加。
(飼料工場で混ぜても
クスを入れる。(水1tにEM Xセラミックス
らう)
1kg) 飼育の基本には、水のチェックが重
要となる。
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優良事例
5 ) 散布・噴霧処理
家に重宝がられている。
3の2)
の⑨に示す通り鶏舎内外にEM5の200
倍液を散布している。
4 . 調査結果
ブロイラーの糞便腐敗によるアンモニア等の
1 ) 悪臭、ハエの発生について
発生を抑止し、鶏舎内外の環境を整える。
軽減している。E M利用により、アンモニア
特にいまはやっていないが、環境が整うまで
臭がなく、糞便が乾いているため、除糞作業
は育成時にもEM 処理をやった方がよいと考
が楽になった。
2 ) 病気の軽減について
えている。
6 ) ボカシの作り方
大きな病気もなく、状態も良い。
3 ) 飼料要求率について
自社開発の「E MフィードBA」を使用してい
る。E MフィードB Aは、蘇生型(抗酸化)の
一般では、2.0であるが、特別飼育であるた
環境を作る乳酸菌、酵母等の有用微生物群
め2.25前後。
抗生物質などを投与していないため、増体
(EM )に枯草菌(バチルス・サブチルス)を
プラスしたものを、米ヌカ、糖蜜等に添加し、
が少し遅れるため。
4 ) 肉質について
ボカして、ペレット化した混合飼料である。
7 ) EM5の作り方。
生協や大手スーパーなどにも卸しているが、
自社開発の
「AL-V」醸造アルコール+醸造酢)
肉臭さがなく、あっさりしており、アクがで
を使用している。
ないと評判である。特に子供に人気がある。
5 ) 経営について
材料 特別飼育であるため、薬代はいらないが、飼料
水:糖蜜:AL-V:EM1=10:1:1:1
作り方 要求率が若干高く、飼育密度も上げられない
a. 糖蜜(1)を40∼50℃のお湯(3)にとかし、
ため、直接的な収支には、ほとんど差がない。
残り水(7)を入れ、温度を下げる。
(糖蜜
しかし、経営的には、有利販売が可能であり、
をお湯に溶かしたものを15分ほど煮沸す
大手スーパーなどに契約販売でき、安定して
ると良い)
いる。さらなる付加価値をつけていきたい。
6 ) 行政・農協との関係
b. この液の中に、A L - V ( 1 )を入れてよく混
ぜ合わせる。
会社自体が、JA・全農グループである。
c. 温度が、35℃以上でないことを確認して
塔之洞農場の赤鶏は奥美濃古地鶏として、知
から、EM 1(1)をいれて、混ぜ合わし、
事より命名され、販売している。
栓のしっかりできるポリ容器に入れる。
5 . 今後の課題
d. 鼻につんとくる甘酸っぱい芳香(エステ
ル臭)を確認し、pH3.6∼3.8で、できあ
鶏糞問題は、JAグループの中でも、もっと考
がり。
えていかなければならないと考えている。
e. 畜産用では、3ヶ月間以内で使い切った
消費者との提携をもっと図っていきたいと考
方がよい。
えている。
8 ) 糞尿処理
1割程度は農家が取りにくるが、ほとんど
は鶏糞ボイラーの燃料にしている。
鶏糞灰は袋詰めにして、一袋20kgを 200円で
販売している。カリ、ミネラル分が高く、農
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