石油技術 協会誌 第68巻 第6号 (平成15年11月) JOURNAL OF THE JAPANESE ASSOCIATION FOR PETROLEUM TECHNOLOGY VOL. 68, NO. 6 (Nov., 2003) 論 文 新潟県 北蒲原地域 の胎 内川 におけ る鮮新統鍬江層 最上部の古地磁気層序 井 上 博 文*・ 山 田 本 山 功****・ 桂**・ 高 橋 柳 沢 幸 夫*** (Received May 8, 2003; accepted September 雅 紀*** 12, 2003) Magnetostratigraphy of the uppermost part of the Pliocene Kuwae Formation (Natsui Section) along the Tainai River, Kitakanbara area, Niigata Prefecture, central Japan Hirobumi Inoue, Isao Katsura Motoyama Yamada, and Masaki Yukio Takahashi, Yanagisawa Abstract: The magnetostratigraphy for the uppermost part of the Pliocene Kuwae Formation was established along the Tainai River (Natsui Section) in the Niigata Prefecture, Japan. Characteristic components were identified from fourteen sites out of 60 collected sites through the progressive thermal demagnetization (PThD) test, but no stable component was recognized for all pilot specimens through the progressive alternating field demagnetization (PAFD) test. After the tilt-correction for inclined sites, the normally and overlying reversely magnetized sequence was recognized. Combining with biostratigraphic-age constraints, the normal and following reversed polarity sequence can be correlated to the uppermost part of the Gauss (C2An.1n) and the lowest Matuyama (C2r.2r) Chrons. Thus the Matuyama/Gauss boundary (2.581 Ma) is located at the uppermost part of the Natsui Section, which gives an upper limit for the underlying marine sequence of the Pliocene Kuwae Formation. Key words: paleomagnetism, 1. magnetostratigraphy, 超 え る厚 い新 第 三 系 ・第 四 波 大 学 大 学 院 生 命 環 境 科 学 研 究 科Graduate of Life and Environmental Sciences, 沢 大 学 理 学 部 地 球 学 科(COEポ COE Postodoctoral Sciences, ***産 Faculty School University of 業 技 術総 合研 究 所 ****筑 Institute Department of Kanazawa Bio-and of Geoscience, 波 大 学 地 球 科 学 系Institute sity of Tsukuba Copyright (C) 2003, JAPT Earth University 地 球 科 学 情 報 研 究 部 門 研 究 グ ル ー プIntegrated Group, ス ト ドク ト ラ ル フ ェ ロ ー) Fellow, of Science, Prefecture 複 合 年 代 層 序 inflata s. l. の 多 産 層 準 が3層 準 存 在 す る こ とが 知 られ て お り,上 位 か らNo.1,No.2,No.3G. (工 藤,1967;米 Tsukuba **金 Niigata とか け て は,浮 遊 性 有 孔 虫 のGloborotalia 新 生 代 後 期 の新 潟 堆 積 盆 と は,石 油 ・天然 ガ ス貯 留 *筑 KuwaeFormation, 系 が 堆 積 して い る。 この うち上 部 鮮 新 統 か ら下 部 更 新 統 は じ め に 層 を胚 胎 す る厚 さ5,000mを Pliocene, inflata bedと 命 名 さ れ て い る 谷,1978)。 これ らの 対 比 マ ー カ ー は,新 潟 堆 積 盆 ば か りで な く,秋 田堆 積 盆 と 岩 い て も坑 井 間 の 対 比 に有 効 で あ り,と くに最 下 部 のNo.3G. inflata bed の 下 限 は新 潟 標 準 層 序 の上 部 鮮 新 統 西 山階 の基 底 を定 義 す る(米 谷,1978)。 他 方,G. inflata s. l.の多 産 は,相 対 的 に温 暖 な水 塊 の 日本 海 へ の 流 入 を 示 唆 す る こ と か ら Chronostratigraphy (米 谷,1988),鮮 AIST/GSJ of Geoscience , Univer- 新 世 に お け る 日本 海 の古 海 洋 環 境 研 究 に と っ て も極 あて 興 味 深 い イベ ン トの1つ しか しな が ら,No.3G. とい え る。 inflata bedの 年 代 は ま だ十 分 と確 定 して お らず,西 山 階 の 基 底 の 年 代 も曖 昧 な ま ま 井上 で あ る(柳 沢 ほか,2000な 博 文 ・山 田 ど)。 No.3G. 桂 ・高 橋 innflta bedは 雅 紀 ・日 山 功 ・柳 沢 か,2003)に 幸夫 571 基 づ く と,夏 井 セ ク ー ョ ン最 上 部 に ガ ウ であ ス/松 山磁 極 期 境 界 が 存 在 す る可 能 性 が年 代 学 的 に示 唆 り,そ の 年 代 層 序学 的位 置 を明 確 にす る こ と は,日 本 海 され て お り,同 セ ク シ ョ ンに お け る古 地 磁 気 層 序 の確 立 最 も明 瞭 と認 識 で き る重 要 な対 比 マ ー カ ー の1つ 側 油 田堆 積 盆 の 層序 ・構 造 を把 握 す る上 で も,ま た鮮 新 が期 待 さ れ て い る。 こ の よ う な背 景 の もと,筆 者 らは夏 世 に お け る 日本 海 の古 海 洋 環 境 変 遷 を復 元 す る上 で も極 井 セ ク シ ョ ンの と くに最 上 部 につ い て古 地 磁 気 層 序 の確 め て重 要 で あ る。 立 を 目的 に 研 究 を行 っ た。 本 論 で は古 地 磁 気 学 的研 究 結 最 近,鮮 果 の詳 細 を 報 告 し,併 せ て 他 の年 代 層 序 と組 み合 わ せ て 新 世 の年 代 層 序 と 日本 海 の古 環 境 変 動 を 明 ら か に す る 目的 で,新 潟県 黒 川 村 夏 井 付 近 の胎 内 川 沿 い の 夏井 セ ク シ ョ ンの年 代 層 序 につ い て考 察 す る。 連 続 セ ク ー ョ ン(夏 井 セ ク シ ョ ン)に お い て,浮 遊 性 有 孔 虫 化 石(三 2002),珪 2003)な 輪 ほ か,2002),貝 形 虫 化 石(山 田 ほ か, 藻 化 石 岩 よ び 石 灰 質 ナ ン ノ化 石(渡 辺 ほ か, 2. 地質 および層序 夏 井 セ ク シ ョ ンは新 潟 県 北 蒲 原 郡 黒 川 村 夏 井 付 近 の胎 ど,異 な る タ クサ を用 い た複 合 層 序 学 的 検 討 が 内川 右岸 で あ る(Fig.1)。 かま ぐい こ の付 近 に分 布 す る新 第 三 系 しもせき うち す がわ くわ え 精 力 的 に進 め られ て い る。 彼 らは,地 層 の 厚 さ で0.2∼ は,下 位 よ り釜 杭 層,下 関 層,内 須 川 層 お よ び鍬 江 層 に 0.5mの 区分 され る(西 田 ・津 田,1961;小 試 料 間 隔 で各 微 化 石 を検 討 して 岩 り,時 間軸 と 林 ・渡 辺,1985;Fig. 対 して 非 常 と高 分 解 能 な解 析 を行 って い る。 そ の 結 果認 2)。 夏 井 セ ク シ ョ ンに は,こ の うち下 関 層 か ら上 位 の地 識 され る さ ま ざ まな イベ ン トは,可 能 な 限 り年 代 尺 度 に 層 が露 出 す る。 鍬 江 層 は砂 質 シ ル ト岩 を主 と し,珪 藻 質 基 づ い た数 値 年 代 と して汎 用 性 を検 討 す べ きで あ り,そ シル ト岩 か ら な る内 須 川 層 を不 整 合 に覆 う。 夏 井 セ ク の ため には微化石層序 な どの年代決 定手 法 に とどま ら シ ョンの 鍬 江 層 は層 厚210mほ ず,放 射 年 代 測 定 な どの物 理 学 的年 代 測定 を 統 合 的 に適 礫岩 を頻 繁 と挟 在 す る シ ル ト岩 な い し砂 質 シ ル ト岩 か ら 応 す る こ と が望 ま しい。 と くに,珪 藻 化 石 層 序(渡 辺 ほ な り,上 部 で は砂 岩 の挟 み は ま れ で あ る。 夏 井 セ ク シ ョ Fig.1 The location Section, topographic the of sample Kuwae sites Formation. map •gNakajo•h, on the geologic The study published by route-map area the is of shown Geographical the upper on the Survey ど で,下 部 は砂 岩 お よ び part index Institute of the map Natsui (1/25,000 of Japan). J. JAPANESE ASSOC. PETROL. TECHNOL. Vol. 68, No. 6 (2003) 572新 潟県北蒲原地域 の胎 内川 に岩ける鮮新統鍬 江層最上 部の古地磁気層序 Fig.2 Stratigraphy the stratigraphic tion on the detailed ン の 鍬 江 層 と は,胎 positions columnar sedimentary 川 ほ か,1999)と (Tnkw;黒 川 ほか,2003)が sequence of collected section 内川 鍬 江 層 ガ ラス質 テ フ ラ層 (Tnkg;黒 か(2001)に of the Neogene and of the Natsui 胎 内 川 白色 テ フ ラ層 よ る と,本 セ ク シ ョ ンの鍬 江 層 の堆 積 環 境 the study for paleomagnetic area investiga- Section. 3. 3.1 古地磁気測定 試 料 ・測定 古 地 磁気 測 定 用 試 料 は,電 動 な い しエ ン ジ ン ドリル を 古 地 磁気 学 的検 討 を 行 っ た の は,夏 井 セ ク シ ョ ンの鍬 江 層 最 上 部 の 岩 よ そ24mで,砂 in and around ま た 西 側 ほど傾 斜 が大 き い。 挟 在 す る。 な お,高 野 ほ は外 側 陸棚 か ら斜 面 で あ る。 samples 質 シ ル ト岩 な い し シ ル 用 い て採 取 し た。 柱 状 試 料 は,径25mmの ドビ ッ トを 用 いて 露 頭 に深 さ10cm程 ダイヤ モ ン 度 ま で掘 削 し,磁 ト岩 か らな る。 ま れ に挟 在 す る薄 い砂 岩 以 外 は塊 状 な岩 気 コ ンパ スを取 り付 け た オ リエ ンテ ー タ ー に よ り柱 状 試 相 で あ り,地 質 構 造 を 把 握 で き る場 所 は限 られ る。 試 料 料 の 方 位 を測 定 して 採 取 した。 柱 状 試 料 は各 層 準 で5な 採 取 ル ー トの 南 東 端 に は 北 東-南 西 方 向 の 向 斜 軸 が 位 置 い し6日 を採 取 した。 古 地 磁 気 測 定 用試 料 は,予 察 的 に し,そ こで は地 層 は ほ とん ど傾 斜 して い な い(Fig.1)。 一 方 ,摺 曲 軸 の 西 翼 で は 地 層 は 南 北 走 向 で東 側 に傾 き, 地 層 の 厚 さで お よ そ1mお き にKWEO1um∼KWE22 umお イ ト(層 準)よ 石油技術協会誌 68巻6号 (2003) よ びKT1mの23サ り採 取 し,そ 井上 博 文 ・山 田 桂 ・高 橋 雅 紀 ・日 山 功 ・柳 沢 幸夫 573 さ らに つ い て古 地 磁 気 を測 定 した。 そ して,そ れ らの測 2.25umな 定結 果 を考 慮 し,検 討 した セ ク シ ョ ンの 中 ・上 部 につ い で300本 以 上 の 定 方 位 柱 状 試 料 を採 取 し た。 採 取 位 置 て,間 (主要 な も の の み)をFig.1の 隔 を 詰 め る よ うに 試 料 を 追 加 採 取 し た(KWE Fig.3 ど)。 最 終 的 に60層 準 よ り各 数 本 ず つ,総 計 ル ー トマ ップ に,採 取 層 Typical results of progressive thermal demagnetization (PThD) and progressive alternating field demagnetization (PAFD) tests for pilot core samples. Magnetic directions are plotted on the vector demagnetization diagrams using in-situ coordinates. Solid and open circles are projections of vector end points on horizontal and N-S vertical planes, respectively. Numbers attached to symbols show temperature in °C or alternating field intensity in mT. Unstable remanence prevents us from determining any linear trend on the diagrams. J. JAPANESE ASSOC. PETROL. TECHNOL. Vol. 68, No. 6 (2003) 574 新潟県北蒲原地域の胎内川におけ る鮮新統 鍬江層最上部 の古地磁気層序 準 をFig.2の 柱 状 図 と示 す 。 4個 の コ ア試 料 が得 られ,各 層 準 ご と に20個 前 後 の コア 採 取 した 柱 状 試 料 は,実 験 室 に お い て長 さ22mmご 試 料 を準 備 した。 各 試 料 と は定 方 位 を 示 す 印 を 赤 鉛 筆 で と と切 断 し,古 地 磁 気 測 定 用 の 円筒 形 測 定 用 試 料 片(以 コ ア試料 の上 面 お よ び側 面 に記 し,以 下 に示 す 残留 磁 化 下,単 測定 に用 い た。 に コ ア試 料)と Fig.4 石油技術協会誌 した 。 各 柱 状 試 料 か ら は3な い し Typical results of the progressive thermal demagnetization (PThD) test for pilot samples, from which the stable characteristic components (shown as linear trends on each diagram) are recovered. 68巻6号 (2003) 井上 3.2 博 文 ・山 田 桂 ・高 橋 古地 磁気測定 field demagnetization: 技 術 総 合 研 究 所 に 設 置 さ れ て い る2-G 功 ・柳沢 幸夫 伝 導 磁 力 計(2Gmodel 残留 磁 化 の測 定 お よ び段 階交 流 消 磁 alternating 雅 紀 ・日 山 (progressive PAFD)は,産 Enterprises製 Fig.4 (progressive 業 Magnetic 超 18)を thermal Measurements社 760)を 575 用 い た 。 ま た,段 demagnetization: 階熱消磁 PThD)は, 製 の熱 消 磁 装 置 (MMTD- 用 い た 。 い ず れ の 装 置 も地 球 磁 場 を 遮 蔽 し た シ ー continued. J.JAPANESEASSOC. PETROL. TECHNOL. Vol. 68, No. 6 (2003) 576 新潟県北蒲原地域 の胎 内川 におけ る鮮新統鍬江層最上部 の古地 磁気層序 ル ドル ー ム内 に設 置 され,実 験 過 程 で の二 次 磁 化 の付 着 流 消 磁 は 最 高80mTま を最 小 限 に抑 えて い る。 磁 は無 磁 場 に 近 い空 気 中 で,最 高350℃ ま で の12段 階 で 作 成 した コ ア試 料 の うち,各 サ イ トか ら2個 の コ ア試 料(パ イ ロ ッ トコ ア試 料)を 選 び,磁 化 率 お よ び 自然 残 留 磁 化 (natural remanent magnetization: 行 った。 4. 測 定 結 果 NRM)を 測 定 した の ち,そ れ ぞ れ に つ い て段 階 交 流 消 磁 お よ び 段 階 熱 消 磁 実 験 を 行 い,磁 化 の安 定 性 を検 討 した。 段 階 交 Fig.5 で の16段 階 で行 っ た。 段 階 熱 消 残 留 磁 気 は方 位 と強度 か らな る三 次 元 ベ ク トル量 で あ り,段 階 消 磁 結 果 は通 常 vector-demagnetization図 Paleomagnetic directions of each specimen (solid or open symbols) and the site-mean directions (star symbols) with their 95% confidence circles before tilt-correction. Solid (open) symbols are on the lower (upper) hemisphere of equal-area projection. 石油技術協会 誌 68巻6号 (2003) と 井上 博 文 ・山 田 桂 ・高 橋 雅 紀 ・日 山 功 ・柳 沢 幸夫 577 して 示 さ れ る。 図 で は,磁 化 ベ ク トル の 水 平 成 分 を 黒 丸 これ ら14サ イ トにつ いて は古 地 磁 気 を 記 録 して い る可 で,垂 直 成 分 の南 北 鉛 直面 へ の投 影 点 を 白丸 で 示 して あ 能 性 が 示 唆 さ れ た た め,各 サ イ トにお いて 独 立 に定 方 位 る。 した が って,図 の原 点 か ら黒 丸 の 方 向 が そ の ま ま偏 採 取 さ れ た残 りの コ ア試 料 に つ い て,段 階 熱 消 磁 実 験 を 角(declination=D)を 行 い そ れ ぞ れ につ いて 特 徴 磁 化 方位 を 計 測 した。 特 徴 磁 示 す が,図 の 原 点 か ら右 向 き が 北 の方 位 で あ る こ とに留 意 が必 要 で あ る。 他 方,垂 直 化 方 位 は,Kirschvink(1980)の 成 分 は磁 化 ベ ク トル を南 北 鉛 直面 に投 影 し,白 丸 と して 算 した。 以 上 の結 果,上 記14サ イ トに つ い て はそ れ ぞ れ 示 され る。 した が って,白 丸 が原 点 よ り下 側 に プ ロ ッ ト 5個 な い し6個 の コ ア試 料 よ り特 徴 磁 化 方 位 が得 られ た され て い れ ば下 向 きの,上 側 に位 置 して い れ ば 上 向 き の が,一 部 サ イ トにつ いて は特 徴 磁 化 成 分 が 認 あ られ な い 磁 化 ベ ク トル で あ る こ とを 示 して い るが,図 中 で 白丸 と コア試 料 が あ り,3な 原 点 お よ び水 平 線 とが な す 角 度 は,偏 角 が 南 北 方 向(す 位 か らサ イ ト平 均 を計 算 した。 各 サ イ トの 平 均 特 徴 磁 化 な わ ちD=0° 方 位(D,I)は,α95お な い し180°)で (inclination=I)よ な い 限 り,実 際 の伏 角 り大 き く表 現 さ れ て し ま う。 で,vector-demagnetization図 あ る のか,あ 位 は 得 られ な か っ た(Fig.3)。 ton)で 果 に お い て,原 (characteristic これ らの コ ア 試 料 に つ magnetization)で る い は二 次磁 化(secondary magnetiza- あ る の か,残 留 磁 気 の 消 磁 実 験 に対 す る安 定 性 だ けで な く,他 の古 地 磁 気 学 的 検 討 を行 う こ とが望 ま し 点 に 収 束 す る特 徴 磁 化 成 分 い。 例 え ば,地 層 の 摺 曲 テ ス トを行 い摺 曲補 正 の前 後 で component)は の集 中 度 の変 化 や,礫 岩 テ ス ト,正 ・逆 両 磁 化 方 位 の球 認 め られ ず,古 地 磁 気 面 中心 と対 す る対 称 性 な どが 判 定 基 準 と して 挙 げ られ パ イ ロ ッ トコア試 料 に対 す る段 階 交 流 消 磁 結 果 はす べ る。 しか しな が ら,今 回検 討 した地 層 は これ らの テ ス ト 示 され る よ うな 方位 ・磁 化 強 度 と も不 安 定 な挙 動 を 示 した が,段 察 よ び段 階 熱 消 磁 を記 録 して い な い と判 断 して 実験 を 中 止 した。 て,FigG3に 考 もの,す な わ ち初 生 磁 化(primary 大 部 分 の コア試 料 か ら は消 磁 に対 して安 定 な残 留 磁 化 方 (同 左)結 等 示 した。 認 定 さ れ た特 徴 磁 化 方 位 が 当 時 の地 球 磁場 を記 録 した い て 段 階 交 流 消 磁 お よ び 段 階 熱 消 磁 実 験 を行 った 結 果, 階 交 流 消 磁(Fig.3右)お よ びkの 値 と と もにFig.5の 5. 上 で は,黒 丸 ・白 丸 と も直 線 成 分 と して表 現 され る。 パ イ ロ ッ トコ ア試 料 につ い て は,段 い し4個 の コ ア試 料 の特 徴 磁 化 方 積 投 影 図 岩 よ びTable1に 安 定 な磁 化 成 分 は方位 が 安 定 し強度 の み が 減 衰 す る の 主 成 分 分 析 に よ り計 を行 う た めの 地 質 条 件 を十 分 に は満 た して お らず,消 磁 階 熱 消 磁 で は一 部 の試 料 に つ い 実 験 で の 安 定 性 の み を基 準 と,上 記 した14サ イ トの特 徴 て,原 点 に収 束 す る 直線 成 分 を示 す もの が 認 め られ た。 磁 化 方 位 は堆 積 当 時 の地 球 磁 場 を記 録 して い る もの と解 Fig.4とvector-demagnetization図 上 で 原 点 に収 束 す 釈 した。 と くに,最 上 位 に 認 め られ た偏 角 が 南 東 で伏 角 る成 分 が認 め られ た14サ イ トの パ イ ロ ッ トコ ア試 料 の 段 が 下 向 きの ベ ク トル の起 資 に つ いて は よ り詳 細 な検 討 が 階 熱 消 磁 実 験 結 果 を す べ て 示 す 。14サ イ トの う ち下 位 の 必 要 か も しれ な い。 3サ イ トは偏 角 が 西 に偏 った 正 帯 磁 を 示 す が,よ り上 位 14サ イ トか ら認 定 され た 古 地 磁 気 方 位 は,地 層 の傾 動 の7サ イ トは 南 向 き の偏 角 で 伏 角 が 浅 い。 さ らに,最 上 補 正 を 施 す 必 要 が あ る。14サ イ トの う ち最 下 部 の3サ イ 位 の4サ イ トは南 東 向 きの 偏 角 で 下 向 きの 伏 角 を 示 す 。 トは調 査 ル ー トの 南 東端 に 軸 を有 す る向 斜 構 造 の西 翼 に Table1 N, number inclination; geomagnetic Site-mean of core specimens; a95, 95% confidence pole. D and interval paleomagnetic data I, in-situ declination about the estimated obtained from the and inclination; Dc site-mean direction; Natsui Section. and Ic, tilt-corrected declination and k, precision parameter; VGP, virtual J. JAPANESE ASSOC. PETROL. TECHNOL. Vol. 68, No. 6 (2003) 578 石油技術協会誌 新潟県北 蒲原地域の胎内川 にお ける鮮新統鍬江層最 上部の古地磁気層序 68巻6号 (2003) 井上 位 置 し,地 層 は走 向N8°E,傾 博 文 ・山 田 桂 ・高 橋 斜29°Eを 示 す の で,こ 雅 紀 ・日 山 功 ・柳 沢 幸夫 た古 地 磁 気層 序 とCande 579 and Kent (1995)の の 走 向 ・傾 斜 を 用 い て 測 定 方 位 の 傾 動 補 正 を 行 っ た 代尺 度 との対 比 を試 み る。 渡 辺 ほか(2003)で (Table1)。 N.koizumiiの 一 方,残 りの11サ イ トは い ず れ も向 斜 軸 部 終 産 出 層 準 が,真 地磁気年 認 識 した の終 産 出 で は な い とす に位 置 し,地 層 は水 平 で あ るた め 傾 動 補 正 は行 わ な か っ る彼 らの解 釈 を 採 用 す る と,夏 井 セ ク シ ョ ン最 上 部 の正 た。 さ らに,こ れ らの方 位 を も とに 仮 想 地 磁 気 極(vir- 帯 磁 → 逆帯 磁 の古 地 磁 気 層 序 は,ガ ウ ス正 磁 極 期 お よ び tual geomagnetic 松 山 逆 磁 極 期 に 対 応 す る可 能 性 が 高 い(Fig.6, pole: VGP)の 得 ら れ た14サ イ トのVGPの 位 置を求めた。 緯 度 の 層 序 変 化 をFig.6 に 示 す。 最 下 部 の3サ イ ト(KWE21um, お よ びKWE16um)のVGPは KWE19um A)。 こ れ に対 し,N.koizumiiの Model 終 産 出層 準 が真 の生 層 準 で あ る と仮 定 す る と,上 記 古 地 磁 気 層 序 は,N.koi- 北半球 の比較 的高緯度 zumiiの 終 産 出 層 準 の 年 代(D100:2.0Ma)以 降の正 に プ ロ ッ トされ る ことか ら,こ れ ら3サ イ トは正 帯 磁 で 帯 磁 → 逆 帯 磁 の地 磁 気 逆 転 イ ベ ン トで あ る オ ル ドバ イ正 あ る と判 断 さ れ る。 一 方,上 位 のKWE3.4um∼KWE 亜 磁 極 期 の トップ に対 比 され よ う(Fig.6, 2umのVGPは 後 者 の場 合,今 南 半 球 の 中 ・高 緯 度 に プ ロ ッ トさ れ, これ ら は逆 磁 極 期 に獲 得 され た と判 断 した。 他 方,最 上 部 のKWE1.6um∼KWE0umのVGPは プ ロ ッ トされ,ま るな ど,正 赤道 付近 に た偏 角 が 東 ∼ 南 東 で 伏 角 が下 向 きで あ ・逆 いず れ の磁 極 期 と も判 定 さ れ な い。 これ Model B)。 回 検 討 し た層 準 の 下 位10数mの 堆 積物 は,80万 年 以 上 の 時 間 を か け て堆 積 した こと にな る。 す な わ ち,Fig.6の 32.5cm/1000年 柱 状 図 に お け る180mk層 の堆 積 速 度 が2cm/1000年 準 を 境 に, へ と急 激 に低 下 した こ と とな る。 夏 井 セ ク シ ョ ン最 上 部 は砂 質 シ ル ト ら は本 セ ク シ ョ ン下 部 の正 帯磁 か ら,上 部 の逆 帯 磁 へ の 岩 な い し シル ト岩 よ りな り,こ の よ う な堆 積 速 度 の 激 減 地 磁 気 逆 転 の 直 後 の特 殊 な イベ ン トを 記 録 して い るの か を示 唆 す るよ うな岩 相 変 化 は鍬 江 層 に お いて は認 あ られ も しれ な い。 以 上 の よ うに,夏 井 セ ク シ ョ ンの古 地 磁 気 な い(Fig.2)。 学 的 検 討 の 結 果,鍬 江 層 の最上 部 は正 磁 極 期 か ら逆 磁 極 たN.koizumiiの 期 の地 磁 気 逆 転 を記 録 して い る こ とが 判 明 した。 摘 した よ うに見 か け の もの で あ る と判 断 され る。 次 に,鍬 江 層 につ いて 検 討 され た 珪 藻 化 石 お よ び石 灰 した が って 夏 井 セ ク シ ョ ンで認 め られ 終 産 出層 準 は,渡 辺 ほか(2003)が 指 以 上 の結 果 か ら,鍬 江層 最 上 部 に記 録 され た正 磁 極 期 質 ナ ン ノ化 石 層 序 に よ る年 代学 的 制約 条 件 を踏 ま え,認 か ら逆 磁 極 期 へ の地 磁 気 逆 転 は,ガ ウ ス正 磁極 期 と松 山 定 さ れ た 古 地 磁 気 層 序 と地 磁気 反転 年 代 尺 度 と の対 比 に 逆 磁 極 期 との 境 界 に対 比 さ れ る。 換 言 す さ ば,本 つ い て 検 討 す る。 シ ョ ンの 鍬 江 層 最 上 部 に は ガ ウ ス/松 山 磁 極 期 境 界 が 記 Fig.6は,夏 井 セ ク シ ョ ンにお け る鍬 江層 の 全 層 準 に つ い て 検 討 され た珪 藻 化 石 お よ び 石灰 質 ナ ンノ化 石 生 層 準 の年 代(Yanagisawa and 2003; SatoandKameo, Akiba, る 胎 内 川 白 色 テ フ ラ層(Tnkw)の か,2003)を 1998;渡 1996)と,本 結 論 新 潟 県 北 蒲 原 郡 黒 川 村 夏 井 付近 の胎 内 川沿 い に露 出 す Yanagisawa は石 灰 質 ナ ン ノ化 石 のDatum 1996)が,さ Neodenticula た結 果,鍬 江 層 最 上 部 は正 磁 極 期 か ら逆 磁極 期 に堆 積 し koiznmiiの and Akiba, 確 ま た鍬 江 層 の 中 部 に A(2.75Ma; Sato and ら に鍬 江 層 上 部 に て は珪 藻 化 石 の kamtschaticaの 終 産 出層 準(D90:2.7- 確 認 さ れ て い る(渡 辺 ほ か;2003)。 推 定 さ れ る(黒 川 ほ か,2003)。 のN.koizumiiの 認 め ら れ るが,渡 テ フ ラ層 の年 代 に基 づ く と,認 定 さ れ た地 磁 気 逆 転 層 準 は,ガ ウ ス/松 山磁 極 期 境 界 で あ る と判 断 され る。 した が っ て,夏 Cande and ば,2.581Maで な お,こ の テ フ ラ層 の 直 下 に は珪 藻 化 石 のN.koizumiiの 終 産 出 層 準(D100:2.0Ma)が た こ とが 判 明 した。 珪 藻 お よ び石灰 質 ナ ンノ化 石 層 序 と 井 セ ク シ ョ ン の鍬 江 層 最 上 部 の 年 代 は Kent (1995)の 地 磁 気 年 代 尺 度 に基 づ け あ る と考 え らさ る。 ま た, ど上 位 に挟 在 す る胎 内川 白色 テ フ ラ層 の 年 代 は,約2.6Maと か(2003)は,こ 6. る鮮 新 統 鍬 江 層 最 上 部 に つ い て古 地 磁 気 学 的検 討 を行 っ 部 に は そ の 急 増 層 準(3.1-3.0Ma)が そ の10mほ and Kent, 川ほ 認 さ れ て い る(渡 辺 ほ か,2003)。 2.6Ma)が 辺 ほ か, 推 定 年 代(黒 Cande り下 位 の鍬 江 層 の 年 代 の 上 限 を与 え る。 も と に作 成 した堆 積 曲線 で あ る。 鍬 江 層 の 初 産 出層 準(D80:3.5Ma; Kameo, 1995)は,よ 層 上 部 に挟 在 す 最 下 部 に お い て,珪 藻 化 石 のNeodenticula 1998)が,下 録 され て お り,そ の年 代(2.581Ma; セク 謝 辞 本 研 究 を進 め る に当 た り,産 業 技 術 総 合研 究 所 の 山崎 俊 嗣 博 士 に は,古 地 磁 気 測 定 に際 し便 宜 を図 っ て い た だ 辺ほ くと と も に,粗 稿 を 読 ん で い た だ い た。 ま た,同 所 の渡 終 産 出 層 準 は見 か け 辺 真 人 博 士 と田 中 裕 一 郎 博 士 には,そ れ ぞ さ鍬 江 層 の珪 の もの で あ る可 能 性 が 高 い と指 摘 して い る。 藻 化 石 層 序 と石 灰 質 ナ ンノ化 石層 序 に 関 しア ドバ イ ス を これ らの年 代 制 約 を 考 慮 し,本 研 究 に よ って 認 定 され い ただ い た。 愛 知 教 育 大 学 の 星博 幸 博 士 に は,野 外 に お J. JAPANESE ASSOC. PETROL. TECHNOL. Vol. 68, No. 6 (2003) 580 新潟県北蒲原地域 の胎 内川 における鮮新統鍬江層最上部の古地磁気層序 け る試 料 採 取 に お い て お世 話 に な っ た。 黒 川 村 の坂 上 源 助 氏 に は,夏 井 セ ク シ ョ ン に お け る 試 料 採 取 を 快 く了 承 し て い た だ い た 。2名 の 査 読 者 に は 建 設 的 コ メ ン トを い た だ い た 。 上 記 の 諸 氏 に 深 く感 謝 し ま す 。 な お,本 は,国 際 地 質 科 学 連 合(I.U.G.S.)の 会(S.O.G.)の tigraphy Japan” 研究 地質年代 学小委員 ワ ー キ ン グ グ ル ー プ “Integrated of the Miocene Sequence: Stra- Miocene from 教 授 記 念 論 文 集), 孔 虫 化 石 群 の 変 遷 に 見 ら れ る新 第 三 紀 イ ベ ン ト.新 第 三 紀 に お け る 生 物 の 進 化 ・変 遷 と そ れ に 関 す る イ ベ ン ト.IGCP-246・ 1987年 会 シ ン ポ ジ ウ ム(静 自 然 史 博 物 館. Cande, 文 三 輪 美 智 子 ・山 田 西 田彰 一 Cretaceous and polarity Cenozoic. time scale Jour. calibration for the Late Geophys. Res. 100, plane phys. J. L., 1980: The and the analysis Jour. Royal least squares of paleomagnetic Astronom. line and data. 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