「 か わ い そ う 」 と い う こ と

「かわいそう」ということ
取手市立藤代南中学校
三年
山
ま る や ま
丸
み
美
さ
と
里
「かわいそう」と思ったことはありますか。私はあります。いじめを受け
ている者に対して、障がいを抱えている者に対して、自分とは違うと認識し
た者に対して。しかし、今考えるとそれは、その人にとって不本意だったの
かもしれません。
私 は 以 前 、手 術 を 受 け 、松 葉 づ え や 車 い す を 利 用 し て い た こ と が あ り ま す 。
それは短い期間でしたが、印象に残ったことがありました。慣れない松葉づ
えをつきながら、登校した日のことです。私はみんながどんな反応をするの
か心配していました。しかし、友達は私を心配してくれていて、荷物を持っ
てくれたり、階段の昇り降りで支えてくれるなど、みんな積極的に手伝って
くれました。
「 か わ い そ う 」と 同 情 し て く れ た 子 も い て 、そ の 言 葉 が じ ん わ り
と温かく心にしみたことを覚えています。
私の年の離れた弟は、けがをしたとき、痛いよぉ、などと甘えてきます。
かわいそうに、大丈夫?と私が言うと、私の「かわいそう」という言葉に安
心したように泣き止みます。
私にとって「かわいそう」という言葉は、思いやりや愛情、やさしさが詰
まっているように感じられる言葉でした。
し か し 、そ ん な 私 の 考 え を く つ が え す よ う な 出 来 事 が あ り ま し た 。そ れ は 、
母と二人でスーパーに買い物をしに出かけた時のことです。私が松葉づえを
つきながら店内に入ると、たくさんの人の目がこちらを向き、知らない人の
「かわいそう」というつぶやきが聞こえてきました。それは、なぜか友達の
言ったものとは全く違うものに聞こえたのです。どうしてか分からないけれ
ど、恥ずかしさでいっぱいになり、早く家に帰りたいと強く思いました。そ
の後私は、このもやもやとした違和感を抱えたまま帰宅しました。
そ れ か ら 少 し 経 ち 、私 は 違 和 感 の 正 体 が 、
「 か わ い そ う 」と い う 言 葉 に あ る
ということに気が付きました。自分が周囲に壁を作っていたということもあ
りますが、知らない人にこの言葉を言われたということが、劣等感を抱かさ
れたかのような、変な気持ちになってしまったのです。
なぜそのような気持ちになってしまったのか、その答えは自分自身の中に
あるような気もします。私が他人に「かわいそう」という言葉を使うとき、
本当のやさしい気持ちを持つことができず、無意識の内に、自分にあるもの
が欠けている、自分よりも劣っている、と思った人に対して発してしまって
いたのかもしれないと思いました。ですから、私にとっての、知らない人か
ら言われた「かわいそう」という言葉は、どこか人を見下し、差別している
ように感じてしまうような言葉でもあったのです。その言葉が自分自身に向
けられたことで、同情として言われたものを曲がった考えで受け取ってしま
ったのだと思います。おかしな考え方だと思う人もいるかも知れませんが、
このように考えてしまうのは私だけではないのではないでしょうか。そして
私も、そんなつもりでなくても「かわいそう」という言葉で誰かを傷つけて
いることがあるのかもしれません。
「かわいそう」という単語には、力があるように感じます。愛にあふれた
温かい言葉であると同時に、自分と他者を比較して、無意識に優劣をつけて
しまう、冷たい言葉でもあるように感じます。一見両極にあるこの感情が、
たった一つの単語で表現されていることに、強烈な違和感を受けてしまうの
ではないかと思いました。
「かわいそう」という言葉の奥底にある、人を助けたい、という思いやり
や愛情、やさしさに結び付く気持ちは、本当に大切なもの、人間として決し
てなくしてはならないものだと思います。もし、世界がそんな気持ちであふ
れ て い た な ら 、こ の 言 葉 が 必 要 で は な く な る の か も し れ ま せ ん 。し か し 、
「か
わいそう」という言葉が存在する今、偏見や心の壁をなくし、愛情をもって
接するにはどうすれば良いのでしょうか。偏見や心の壁は、優劣という考え
方によって生み出されてしまうものだと思います。けれども、私は優劣が決
して悪いものだとは思いません。なぜなら、それは現実に必ず存在してしま
うものだからです。ですが、そこに「差」があった時に、ただ見下すだけで
なく、自分に足りているもの、相手が必要としているものを差し出すことが
できるかが重要なのだと思います。ただ素直に行動に移せば良いだけなので
はないでしょうか。私は、これからこの言葉を大切に扱い、困っている人に
手 を 差 し 伸 べ 、た め ら い な く 助 け ら れ る よ う な 人 に な り た い と 強 く 思 い ま す 。