人類の天敵を俺に扱えと!? ID:107074

人類の天敵を俺に扱えと!?
虎神
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じます。
︻あらすじ︼
人類の天敵と青年の物語
目 次 第1話 幸運値Eの男 ││││││││││││││││││
第2話 記憶を無くした女神様 ││││││││││││││
第3話 嫉妬の視線と新たなマスター │││││││││││
第4話 幸運値Eの男の戦い │││││││││││││││
1
10
19
28
第1話 幸運値Eの男
くろばねせんり
さてさて皆さんこんにちわ。
俺の名前は黒羽千里。ごく普通の高校二年生だ。
では、まず一言この言葉を述べよう。
﹁ハロー、ニューワールド﹂
俺は、異世界こと﹃Fate﹄の世界に飛ばされた。
ことの発端は数分前
目が覚めれば何もない真っ白な空間に俺は立っていた。
﹂
しかし、辺りを見渡しても相変わらず何もない。
﹁いぃぃぃいいいいい
そして声はーーーー
﹂
﹁まぁぁぁぁああああせぇぇぇぇえええ
上から降ってきた。
﹁でしたぁぁぁぁぁあああああ
!!
ドゴンッと地面に穴を開ける威力で、それは降ってきた。煙などは
!!
﹂
今ので分かった。勘違いなどではない。
﹁あー、なんだろう。嫌な予感がしてならない﹂
!!
1
辺 り を 見 渡 し て も 本 当 に 真 っ 白。椅 子 も な け れ ば 机 も な い 空 間。
だが、意外にもこのような空間で俺は平然を保っていられた。
︵さて、俺は確かベッドで携帯をいじっていたはずだ。にも関わらず
﹂
なんでこんなところにーーー︶
と、そんな時だった。
﹂
﹁すぅぅぅぅぅぅうううう
﹁ん
!!
何か聞こえた。というか絶対聞こえた。
?
何も上がらなかったので、痛々しい音だけが耳に届く。
ほんとぉぉぉおおおに、ごめんなさい
降りてきた、もとい落ちてきたのは天使のコスプレをした少女。
﹁いや、ほんとごめんなさい
﹂
﹁え、あ、うん....﹂
これは止めた方がいいのだろうか
﹁私があなたを殺してしまったんです
どうぞなんなりと罵倒の言葉
!!
﹁そんな殺生な
﹂
﹁よし、そのまま続行しろコスプレ娘。とりあえず話はそれからだ﹂
をーーー﹂
?
ひたすらゴンゴンと頭を地面に打ちつける少女に俺は軽く引く。
!!
﹁はい、やめぇー﹂
﹁はぁはぁはぁ..ゆ、許してくれましたか
﹂
﹂
﹁とりあえず話だけ聞こう。お前はまず誰だ
﹁あ、私は神様です
﹁はい、続行ー﹂
﹁ほんとなんですよぉぉぉおおおお
﹂
? !!?
﹁はい
﹂
?
私はあなたの世界担当の神でして、この度は私の不手際であ
﹁あー悪かった。で、神がなんだって
﹁は、はいぃぃぃ....あ、頭がクラクラ...﹂
﹁はぁ...ストップ﹂
こえてきた。
本当にそろそろやめとこう。音がゴンゴンから何かが潰れる音に聞
と、言いいながらも行動を再開する少女は素直なのだろう。しかし
!!
!
﹂
てるこの光景はマズイな。犯罪臭しかしない。
ど、俺はお人好しではない...と、思う。しかし本当に頭を打ち続け
知るか。いきなりあなたを殺しましたとか言う奴に優しくするほ
!!?
......
?
そりゃまぁ...。いきなりこんな痛い少女、略して痛女を信じろと
﹁その顔は信じていませんね
﹂
なたを殺してしまったんです﹂
!
2
!!
言う方が無理な話だ。
﹂
それにほんとの事です
俺、今声出してた
﹁痛女ってなんですか
﹁あれ
﹂
﹂
!!
事はーーー
親方
﹂
!!
﹂
?
って
ゴ、ゴホンッ....そして今回あなた黒羽千里様をここ、天界
﹂
行こう
今行こう
アニメの世界にーーー﹂
﹁さぁ
すぐ行こう
﹂
!!
漫画やアニメだぜ
俺は言葉を聞くまでもなく立ち上がった。
だって異世界転移だぜ
の名が廃るってもんだ
?
﹂
ここで行かなきゃ男
﹁もちろん、チート能力なんてものは貰えんだよな
?
!!
﹁は、はい。あなたを違う世界。つまりはあなたが知っている、漫画や
﹁提案
に読んだのはある提案をする為です﹂
﹁ひっ
﹁おう、後でまとめてお返しするから話続けろ
際...いえ、うっかりで殺してしまって申し訳ありませんでした﹂
﹁えっと、まず私はあなたの世界担当の神でして、この度は私の不手
そして、目の前の神は話し始めた。
誰が親方だ。
﹁へい
﹁いいから早く﹂
﹁え、な、なんか対応が適当じゃ....﹂
﹁んじゃ、説明どうぞ﹂
通じゃなかったし。
ちて、普通の人間が無事なわけがないよな。あの頭の打ち付け方も普
はい、まさかの本物でした。そういや、今考えればあの高さから落
﹁...なんてこった﹂
﹁マジモンです﹂
﹁マジモン
﹂
いや、そんな当たり前を押し付けられても...。って、待てよ
﹁え、神だから人の心くらい読めますよ
?
!?
!
!!?
!!
3
?
?
?
?
!
!?
?
!
﹁は、はい
すが....﹂
と、言っても一つだけと天界基準法で決められているので
﹂
﹂
チッ、一つだけか。まぁ、ないよりはマシだろう。
﹁んじゃ、どの世界に行くんだ
﹁えっと...あ、﹃Fate﹄と言う世界にうきゃあ
﹁あ、あの黒羽さん
そろそろ離していただけると....﹂
やっていたのがそれだった。
も契約し世界を救ってくる話も出てきたのだ。というか、ベットで
そして、最近では携帯ゲームアプリとなり、幾多のサーヴァントと
ターとなって﹃聖杯戦争﹄という七人のマスターと殺し合う物語。
あるのだ。過去の英雄、神霊を使い魔サーヴァントとして扱うマス
﹃Fate﹄シリーズ。それは俺が一番好きなアニメであり、ゲームで
タバタとしている神であるが、そんな事は知ったことではない。
その言葉を聞くや否や、俺は目の前の神を抱きしめた。腕の中でバ
!!?
?
マジで最高だよアンタ
﹂
良きに計らえ。
﹁あ、ありがとうございます
だって
﹁あ、悪い。あまりの嬉しさに我を失ってた。で ﹃Fate﹄の世界
!!?
?
俺を殺した事は許してやろう﹂
!!
だけ。そりゃ俺も男ですし
俺強ぇーしたいですよ
でも、﹃Fat
?
ていますよ
﹂
﹁決まりましたか
ちなみに、世界を破壊するとかの能力は禁止され
数分ほどじっくり考えた俺は、ようやくその能力が決まった。
なっても意味がない。
e﹄の面白さはサーヴァントと連携しどう敵を倒すかだ。自身が強く
?
....さて、としたならばどうするか。持っていけるチートは一つ
!!
?
﹁え
そんな事で良いのですか
﹂
サーヴァントでも扱えるようにしてくれ﹂
﹁ん な 危 な い 能 力 は い る か。俺 が 持 っ て い く の は た だ 一 つ、ど ん な
?
?
活動に関わる。
ちなみに言っておくが、俺が転移した以上原作にはドンドン介入す
4
!
フハハハハ
!
!?
そんな事とは言うが、俺にとってはかなり必要な事だ。今後の生命
?
る気だ。もしも召喚したサーヴァントが強すぎて扱えきれなかった
りしたらもともこもない。
神は悩む間も無く了承すると、手を俺の胸に当ててきた。
﹂
﹁それでは、転移を開始します。あと、サービスであなたの運気を少し
それは助かるよ﹂
だけ上げておくことにしますね
﹁お、本当か
﹃これを読んでいるという事は、あなたは転移したのでしょうね。つ
それは、神からの手紙だった。
を取り出すと、それを目の前に広げる。
すると、ポケットに入っていた一枚の紙に気がついた。俺はその紙
﹁で、ここはいったいどのシリーズなんだ﹂
た。
何故か自分の服装が黒い学生服ということもあり、かなり寒かっ
り、周りを歩く人々も暖かそうな格好をしていた。
現在俺は一人、街の中で立っていた。空からは白い雪が降ってお
で、冒頭に戻ろう。
に俺の視界は真っ白な光に包まれたのだった。
そんな神の不安しか残らない言葉が耳に聞こえたが、何かを言う前
﹁おい、今なんていーーーーー﹂
﹁あ、間違えーーー﹂
そういえば俺はいったいどのシリーズにーーー
るんだ。後悔などは全くないし、この神にも感謝しかないだろう。
最初はあんなこと言ったが、これで﹃Fate﹄の世界に転移でき
?
きまして、あなたは現在﹃Fate/Zero﹄の世界に来ています﹄
5
?
お、Zeroシリーズか。俺的にはエクストラとかの方がよかった
が、そこまでわがままは言うまい。うん、GOはダメだ。死ねる自信
しかない。
﹃あなたが与えられた能力は二つ、一つはどのようなサーヴァントで
さえ契約できる能力。次に、運気の上昇です﹄
このセットは普通に嬉しい。
しかし、何故か手紙には続きがあった。
﹃注意、あなたの運気をサーヴァント召喚に回してしまいました﹄
うん
﹃よってーーーーー﹄
......
﹃あ な た 自 身 の 通 常 の 運 気 が な く な っ て し ま い ま し た。ご め ん な さ
い﹄
クシャッと紙を握りしめてしまった。しかし、一応は最後まで読も
﹂
喚の魔術陣を書き上げていく。まぁ、そこらへんはノリでなんとかな
6
うとクシャクシャになった紙を再び広げ読む。
﹃あなたの運気については、サーヴァントで言う所のEランクです。
しかし、サーヴァントを召喚する時のみそれはEXまで跳ね上がりま
す。どうか、頭上には気をつけて。それとちなみに、あなたがこの世
﹂
界に来て後一時間で聖杯戦争は起こりまーー﹄
﹁あっんの駄神がぁぁぁあああああ
人減るのか
﹁そういえば、俺がこの﹃聖杯戦争﹄に参加した場合マスターの数は一
つけることができた。
俺は息を切らしながらも走り続け、一つの木々に囲まれた場所を見
めない。
の時にいるであろうサーヴァントに殴ってもらおう。うん、異論は認
あの馬鹿神、今度もし会うことがあればぶん殴ってやる。いや、そ
た。目指すは何処かの誰にも見つからない森の中。
その文を読むや否や、俺は腕につけられていた時計を見て走り出し
!!
俺はそんな事を考えながら、何度もアニメで見て覚え書いた英霊召
?
るだろう︵ならないです︶
時間もそろそろだ。俺は右手を前に突き出し、魔術陣と同じくアニ
メで覚えたその詠唱を始めた。
﹁素に銀と鉄。礎に石と契約の大公
降り立つ風には壁を
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ﹂
願え、最強のサーヴァントをーーーー
﹁閉じよ︵みたせ︶。閉じよ︵みたせ︶。閉じよ︵みたせ︶。閉じよ︵み
たせ︶。閉じよ︵みたせ︶
繰り返すつどに五度
ただ、満たされる刻を破却する﹂
凄まじい暴風が俺を襲うが、それでも詠唱を止める事はない。
﹁│││││Anfang︵セット︶
││││││││││││
││││││││││││
││││││││││││
││││││││告げる。
││││告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ﹂
この世界での負を救うためにーーー
﹁誓いを此処に
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者﹂
正義の味方なんてものじゃなくともーーー
﹁汝三大の言霊を纏う七天ーーー﹂
7
俺は力を手に入れたい
﹁抑止の輪より来たれーーー
﹂
言い切っていたよな
ーーー天秤の守り手よハックション
あ
﹂
セーフだよな
﹁あぁぁあああああああ
今のセーフ
!!?
な二本のツノがあった。
美貌を持つ女性。だが、その頭にはその体格に似合わないほどの大き
あった...が、それでもなお綺麗だった。全てを釘付けにするような
むであろう美しい肉体美。衣服はほとんどあってないようなもので
光によって輝きを増す銀色の長い髪に朱色に近い瞳。女性でさえ羨
砂煙はだんだんと落ちていき、その姿があらわになっていく。月の
いや、最後のはないな。あったら軽く泣く。
それとも嘘つき焼き殺すガールかーーー
はたまた施しの英雄とも呼ばれた神代の英雄か
ローマに君臨した薔薇の皇帝か
ろう。
召喚中の手応えはあり。さて、召喚に応じたのはいったい誰なのだ
には成功したようだった。
が、自身が書いた魔術陣のど真ん中に影だけは見える。どうやら召喚
凄まじい風により砂が宙に巻き上げられ、全くその姿は見えない
シンっと静かになった。
そして次の瞬間にその光は消え去った。
魔術陣は光り輝いており、辺りには青の光が撒き散らされている。
!!?
!!
!
!!?
そんな彼女が俺の方をジッと見つめてくる。
﹁......﹂
8
!?
﹁.......﹂
お互いに無言。だが、そこで俺は思い出した。いや、思い出してし
﹂
まった。つい最近見た、その姿を。
﹁あなたは...誰
美しい声だった。そのまま脳を刺激するかのような美声。
ああ、まったく。これを...こんなものを俺にどうにかしろと
ティアマト
﹁俺は、君のマスターだよーーー﹂
俺は優しく彼女にそう答えたのだった。
9
?
?
"
さて、これはもう軽く言って人類崩壊じゃないかな
?
"
第2話 記憶を無くした女神様
﹁俺は君のマスターだよーーーティアマト﹂
優しい声で、俺は彼女にそう答えた。
しかし、目の前の彼女は何も答える事はない。ただジッと俺のこと
を見つめているだけだ。
それはーーーー
さて、こうして結構平気に見える俺だが内心普通ではない。え、ど
んな風かだって
で
!!
生存率をできるだけ増やすのだぁぁぁああ
!!
相 手 は ま が い な り に も 女 神、つ ま り は 俺 の 生 存 率 も ゼ ロ で は な
きるだけ笑顔でいろ俺
ちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。笑顔ぉぉぉおおお
︵逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げ
?
︶
と書かれてたような...あ、ダ
い....いや、ちょっと待てよ。確かティアマトのプロフィールに
マスターは七十億分の一の抹殺対象
メだこれオワタ。あとは頼むぜ切嗣の爺さん
ああ、たった今生命活動を諦めました。
﹂
ラゴンガールか、ポンコツ女装英霊の方が万倍マシだった。
無理だ。いくらなんでもこいつはダメだ。それならまだ、音痴のド
!
"
めっちゃ噛んだ、たった数文字程度の言葉をめっ
...な、にゃにかにゃ
﹁ねぇ....﹂
﹁
か、噛んだー
ちゃ噛んだよ俺
!?
ティアマト
﹂
携帯ゲームアプリ﹃Fate/Grand Order﹄では第7
けだ。
またも続く無言の空間。ただ聞こえるのは、風で揺れる草木の音だ
﹁....そう﹂
﹁こ、ここは...冬木市って言います...はい﹂
﹁ここは...どこ
だが、目の前の女神は気にすることもなく話を続けた。
!! !!
?
"
10
"
!!
!!
"
章にてメソポタミアを事実上壊滅させた化物であり、最高ランクの女
神が命を捨てるほどの攻撃を放っても、その進行を止める事はできな
かった。
十一の怪物を生み出し、ギルガメッシュ、イシュタル、ケツァル・
コアトルという化物ぞろいの神相手に一歩も引く事はなかった正真
正銘の化物。
もしも主人公達がこの世界に向かわなければ、ギルガメッシュいわ
くメソポタミアは完全に潰れていたと言われている。
そんな存在が、今、目の前にいるのだ。まだ逃げ出さないだけ褒め
て欲しい。ほんと....
さて、かれこれ召喚して数分は経った頃だが...
﹁.....﹂
まっずい、彼女に潰されるより、このなんとも言えない空気に潰さ
れそう。目の前の女神は、ただボォっと俺を見るだけだ。
﹂
﹂
て改めて足を前に出す。するとーーー
﹁.....﹂
うん、確定だ。何故か逃げられる。
たった一歩でもかなりの精神を削るものなのだ。ましてや主人公
これは面白い
そう思ったのだ。
でもない俺がそんな事をしたのだ、もはや思考が全く安定していな
い。俺はこの時何を思ったのか、
︶
"
﹁
﹂
そう考え、勢いよく彼女に走り出した、と次の瞬間。
︵よし、次は10歩くらいいくか
!! "
11
よし、もうヤケクソだ。
﹁...ねぇ
﹁あれ
﹁.....﹂
しかし、そこで何故か思わぬ光景を見た。
たった一歩、されど一歩だ。俺は彼女に近づいた。
?
一歩近づいたら、一歩離れられた。偶然かと思い、俺は勇気を出し
?
彼女が俺の方に手を振るったのだ。そう、振るっただけなはずであ
!!
﹂
る。だが、しかしーーー
﹁へ
たった今、自分の後ろらへんにあった一本の木が折れた。それはも
う、何か爆発物が爆発したように爆散する。
俺は7歩目を行こうとした足を止める。ほんと、さっきまでの自分
をぶん殴ってやりたい気分だった。
だが、そこで俺は気がついた。あの怪物が、人類の天敵が、俺が近
づいただけで手で肩を抱いて震えているのだ。
まるで、俺に怯えているように。
﹂
﹁.....いで﹂
﹁え
﹁....こな...いで﹂
こないで。
彼女は確かにそう言った。その声はなおも美声だったが、それでも
震えているのがよく分かった。
﹂
﹁私に...近づかない...で﹂
﹁
れる﹄という、いたってシンプルな考えだ。もちろん、それはマスター
である俺にも当たる事。しかし、何故か今目の前にいる女神ティアマ
﹂
トは、誰の目から見ても俺という七十億分の一に怯えていた。
﹁君は、自分の名前を覚えている
﹂
名前...名前は.....私の..名は...ティアマト﹂
﹁....君の目的は
﹁なま...え
?
される﹂
?
彼女、ティアマトはーーー
うん可愛いな。じゃなくて
どうやら思った通りだ。
た...怖い。近づいたら...やだ﹂
﹁使 命 は....わ、わ か ら な い。思 い...出 せ な い。...で も、あ な
﹁....じゃあ最後に。君の使命は
﹂
﹁目的...目的は...排除...何かの...駆除..しなきゃ...殺...
?
?
!!
12
?
?
本来、ティアマトの行動理念は﹃現人類を駆除しないと自分が殺さ
!!
﹁こっち...こないで﹂
ーーー記憶を無くしてる。
それはもうほぼほぼ完璧に。おそらく自身の本能でもある人間殺
戮すらもほとんど覚えていない状態だろう。壊れた聖杯の影響か、は
たまた俺というイレギュラーの介入によってかはわからないが、これ
ならばすぐに殺されることはない...と、思いたい。
と、なれば次の目標な訳だが....
﹁ここ...どこ﹂
︵ああ、ダメだ。まともに会話できる自信がない︶
と、その時ポケットに入れっぱなしだった駄神からの手紙の存在を
思い出した。もはやクシャクシャではなく、ただのゴミにしか見えな
いそれを俺は広げ続きを読みだす。
﹃あなたの生活費などは、あなたが欲しいと思った分だけ作り出せま
す。軽い食べ物などでも、願えば現れます﹄
﹂
﹂
ど の も の で は な い。後 ろ で は バ キ ン ッ と か ド カ ン ッ と か 鈍 い 音 が
なっているが気にしては負けだ。
一歩、一歩とだんだん近づいていく。その間、彼女はこないでと言
いながら後ずさりをしていく。
なんか、罪悪感がすごいなコレ。
そして、ついに彼女が背にあった木にぶつかり肩を震わせながら座
り込んでしまった。目には涙が溜まっており、その手の愛好家にはた
まらないだろうが、俺にそんな趣味はない。
肩を震わせる彼女に、俺はそっと手に持っていたドーナツを渡し
13
﹁おぉ、これはなかなかいいな﹂
﹁...
﹁
た。俺は一つ呼吸を整えると、目の前の女神に向かって歩き出した。
すると、見事俺の右手にはまん丸い輪っかのドーナツが握られてい
ドーナツドーナツドーナツドーナツドーナツドーナツ....
そう言って、俺は頭の中に市販のドーナツを思い浮かべた。
?
彼女は驚き腕を縦に振るが、方向さえ分かって入れば避けれないほ
!!?
た。
﹁.....これ...は
﹁どー...なつ
﹂
﹂
﹁これはドーナツ。いい文明だよ﹂
?
﹁.....
﹂
﹂
﹂
そしてついに、ティアマトの口にドーナツが含まれた。
無言でジッと見つめるティアマト。なんとも愛らしい。
﹁......﹂
アマトはそのドーナツを受け取った。
ゴクリと、思わず唾を飲み込む。だが、そんな事にはならずにティ
下に真っ二つにされるだろう。
なんでも避けることはできない。俺もティアマトの逸話と同様、上と
向かって伸ばされていく。もしもこの時に腕でも振られれば、いくら
すると、ゆっくりだがティアマトの手が俺の持っていたドーナツに
﹁うま...い
﹁うまいぞ
うん、超美味しい。
の中に放り込んだ。
なく、手に持っていたドーナツを半分に分けると、それを勢いよく口
そうは言うが、全く手を伸ばしてこないティアマト。俺はしょうが
?
﹁......﹂
﹁な、なに
﹁.......﹂
﹂
﹁....まさか、もっと食べたい...とか
?
だった。
俺はドーナツをいくつも連想すると、次々に彼女に渡していったの
そう聞くと、まさかの肯定だった。
﹂
そして、わずか数秒のうちに食べきってしまった。
小さな口の中に送り込まれていくドーナツ。
パクパクパクパクパクと、まるでリスのような持ち方で次々にその
!
14
?
?
?
﹁さて、どうしてこうなった﹂
﹁....せん..り、もう...どーなつ..ない
﹂
﹁あ、ああ。とりあえずは休憩な、えっと...ティアマト
﹁...うん、わか..った﹂
もう一度言っておこう。ドウシテコウナッタ
はせずただただボォっとしている。
﹂
﹂
と眺めていた。肩と肩はすでにひっついているが、彼女は逃げようと
現在、俺の隣では三角に座ったティアマトが、空に浮かぶ月をジッ
?
?
あ、ちなみに名前は教えたら呼んでくれた。
﹂
?
とりあえず結論から言おう。
﹂
﹁...せんりは...寒い..の
﹂
﹁はい、かなり寒いです﹂
﹁なら..いいよ
?
たいな小説でも書こうかな
いのですか
というか改めて見ると目のやり場に困るから服を着て
るかは分からないが、ティアマトはどうしてそんな格好なのに寒くな
冗談は置いておいて、逆に聞きたいがサーヴァント...に分類され
?
...今度、うちのサーヴァントがこんなにも可愛いわけがない。み
?
まぁしかし、一応ティアマトの許しも得た事だし宿探しーーー兼、
15
?
オカン、餌付けって神代の神にも有効なんだね。
﹂
﹁え、えっとティアマト
﹁..なに
?
﹁とりあえず、ここじゃ寒いから違う場所に行かないか
?
欲しいのですが...。
?
この聖杯戦争の拠点を探しますか
音が聞こえた。
︻自己改造 EX︼new
・
︻ーーーー︼
・
︻ーーーー︼
スキル
絆レベル1/10
筋力:C 耐久:B+ 敏捷:E 魔力:B 幸運:EX
性別:女性
マスター:黒羽千里
クラス:ビースト
サーヴァント: ティアマト
た。
すると、書かれてあったのはまさかのティアマトのステータスだっ
不安がりながらも、それをタッチする。
すると、アプリのところに見慣れないアイコンがあった。俺は少し
俺は携帯の電源を入れると、パスワードを解除する。
黒い前の世界でも使っていた自分の携帯。それがそこにはあった。
﹁これは...俺の携帯
﹂
そう思い、立ち上がろうとした時だった。ゴトリと、何かが落ちる
!
から、体長六十メートルもの竜体に変化する。竜体に変化後、ランク
・黒い生命の海を使い、自身の霊基を作り変える。現在の霊基状態
!
A++以下の攻撃はキャンセルされる。
︻ーーーー︼
・
︻ーーーー︼
・
︻怪力 A++︼new
16
?
・魔物としての怪力、自身の筋力を増大させる。ほぼ最上級のもの。
!
黒泥を体とし、竜体として現れたティアマトの筋力は巨人のそれで
ある。
︻ーーーー︼
・
︻聖杯の封印 EX︼new
しかも、ティアマト自身は女神でありこのまま戦闘となれば、戦い
いる。現在、幸運以外は二流と言ってもいいだろう。
俺の記憶が正しいかは分からないが、かなりステータスは下がって
話は別だ。
を殺すことはないだろう。だが、ステータスも下がっているとなると
これがある限りティアマトはこの状態のままであれば、俺を、人類
︻聖杯の封印EX︼
色々と突っ込みたい事はあるが、特に最後のコレだ。
なんだこれは
ればそれは無効される。
アマトの記憶を切断した力ではあるが、ティアマトが自覚した事であ
・聖杯からの抑止力。スキルの封印、ステータスの低下など。ティ
!
どうした..の
﹂
慣れしている英雄の方が圧倒的に有利。
﹁....
?
そう言って、俺はティアマトの頭を撫でてあげる。するともっと撫
でてと言わんばかりに頭を擦り付けてくる。ああ、可愛いな。娘がで
きたらこんな感じなのだろうか
まぁ、深く考えるのは後にしよう。とりあえずは拠点確保だ
だった。
そして今度こそ、俺はもたれかかっていた木から立ち上がったの
!
?
17
!!?
﹁あーいや、なんでもないよティアマト﹂
?
ちなみに俺に寄りかかっていたのか、俺が立つと同時にティアマト
が横に転んだことによって泣きかけたのは、また別の話。
18
第3話 嫉妬の視線と新たなマスター
﹂
時刻は午後十時。拠点を探しに行くぞと立ち上がりって、約一時間
もう一回頑張ってみようよ。な
が過ぎた。俺たちは現在ーーー
﹁なぁ、ティアマト
﹁...やだ。...できない..もん﹂
り。
俺にいったいどうしろと言うんだ。
﹁...せんりは..ひとりで..いって..いいよ
﹂
来なかったのだ。それに加え、頭の大きな二本の角に極度の人見知
と、言うのも原因はティアマトだ。この女神、まさかの霊体化が出
歩も出ていないのであった。
拠点探しを始めようとして約一時間、俺たちは未だにこの森から一
うっわぁお、可愛いなコイツ。って、だからそうじゃなくて
?
声が聞こえそちらに振り向く。すると、何故かティアマトの手には毛
頭をガシガシとかきながら悪態をついていると、ティアマトが飛ぶ
﹁せんり...﹂
味がないーーー﹂
﹁あーもう、さすが幸運値Eだ俺。ティアマトがEXでもこれじゃ意
この初日はまだ何もなかった気がするが用心した事はないのだ。
だ。まだ完璧にコイツの事を分かったわけではないし、俺の記憶上、
だからと言って、ここに1人ティアマトを置いて行くのもまた論外
の人間だ。この寒さで寝たら間違いなく死ぬ...かもしれない。
そう。サーヴァントであるティアマトはともかくとして、俺はただ
﹁でも..せん..り、さむい..って﹂
﹁いや、そんな泣きそうな顔をしながら言われても...﹂
?
布が握られており、大きさ的にも二人包まれるくらいの物だった。
﹂
﹁ど、どうしたそれ﹂
﹂
﹁ふって...きたよ
﹁降ってきた
19
!!
?
?
つまり、たまたま風に飛ばされた毛布が、たまたまこんな場所に落
!!?
ち、たまたまそこにいた俺が寒がっていた。
さすが幸運値EX。
一緒に入ろ
などと言ってきた。もちろん断ろうとしたの
するとティアマトは、毛布の端っこを両手で持つと、キョトンとし
た顔で
私はあなた達を愛していたのに
ように毛布から出ると、立ち上がり一つ背伸びをした。
横ではティアマトが目を閉じ眠っている。俺は彼女を起こさない
﹁すぅ...すぅ....﹂
﹁これは...ああ、ティアマトのツノか﹂
覚めた。
鳥の鳴き声と、頭にゴンゴンと当たる硬い何かによって、俺は目が
た
そして彼女は、自身が作り出した新たな子供達とともに彼らと戦っ
なぜ
だが、次に子供たちが矛を向けたのは自分だった
した。それが愛情だと信じ続け
子供たちが夫を殺したにもかかわらず、それでも子供たちを良しと
そして、自身の子供の味方だった
彼女はまさしく母親だった
夢を見た
まり眠りこけたのだった。
だが、それよりも寒さが勝ってしまったので二人でそのまま毛布に包
?"
﹁ふっーーーはぁぁぁぁ﹂
20
"
?
いい天気だ。少し肌寒いが、それでも昨日よりはマシだろう。そし
て、俺は自身の右手の甲に刻まれた羽根のような赤い紋様を眺めた。
これが令呪
サ ー ヴ ァ ン ト に 絶 対 的 な 命 令 を 3 回 ま で 下 す こ と の 出 来 る 代 物。
これが全てなくなれば、その者はマスターではなくなる。つまり事実
上2回までの命令権だ。
︵これを使えば、人類の天敵であるティアマトを自害させることがで
きる...︶
いいや、それはダメだ。絶対にやってはいけないことだ。たとえ人
類の敵だとしても、彼女は間違いなくここにいる。今こうして生きて
いるのだ。
それを強制的に殺すなど、少なくとも俺は絶対に出来ないしやらな
い。
︵でもどうするか。このままじゃ、俺たちはこの森から出ることもで
きないし、拠点の確保も出来ない︶
俺の記憶では、近々キャスター以外のサーヴァントが一斉に出現す
る戦闘があるはずなので、そこで顔くらいは見ておきたいところだ。
セイバー陣営
サーヴァント アーサー王
マスター 衛宮切嗣
アーチャー陣営
サーヴァント ギルガメッシュ
マスター 遠坂 時臣
ランサー陣営
サーヴァント ディルムッド・オディナ
マスター ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
アサシン陣営
サーヴァント ハサン・サッバーハ
マスター 言峰綺礼
キャスター陣営
サーヴァント ジル・ド・レェ
21
マスター 雨生 龍之介
ライダー陣営
サーヴァント イスカンダル
マスター ウェイバー・ベルベット
バーサーカー陣営
サーヴァント サー・ランスロット
マスター 間桐雁夜
記憶
以上の七人のマスターとサーヴァントが、この物語の主な登場人物
なのだが....
﹁この調子じゃ間に合うかどうか...はぁ﹂
先が思いやられるとかのレベルじゃなく不安だ。
それよりも、今はティアマトの分析を早くしたほうがいいか
では確か7個くらいあったはずだ。
俺 は ポ ケ ッ ト に 入 っ て い た 携 帯 を 取 り 出 し テ ィ ア マ ト の プ ロ
フィールを見た。
現在分かっているのは︻聖杯の封印EX︼
︻怪力A++︼
︻自己改造
EX︼の三つのみ。それ以外は空白、つまりは封印されているのだろ
う。
確かティアマトは自身を用済みとして捨てた子らに、憎み、憎しみ、
悲しみを持ち合わせているがため、再び全生命の母胎に返り咲く事が
目的...みたいな説明だったような気がする。
そ の ほ か に も 謎 は ま だ あ る。テ ィ ア マ ト...つ ま り は ビ ー ス ト Ⅱ
である彼女が何故陸に上がれているのかなど。
だが、現在のティアマトはそれを忘れている。
覚えているのは自分の名と、少しだけ記憶の断片にあるであろう自
身の本能である人間の抹殺だけだ。
﹁さらに厄介なのが︻聖杯の封印EX︼こいつか...﹂
説明に書かれているように、聖杯からの抑止力。ティアマトの記憶
を切り分け忘れさせている正体。これは、ティアマトが記憶を思い出
し自覚していくたびにスキルやステータスが元に戻っていくという
22
?
事だろう。
つまり、ティアマトを強くしたければ、人類抹殺の記憶を与えなけ
ればならないという事だ。
結論、未だ一割も彼女の正体は掴めない。それと、英雄との戦闘に
なれば真っ先にやられる。
これが最終の結論だ。
﹁あー...今頃他のマスターは動き出すんだろうな。特に雨生龍之介
は止めたかったんだが....﹂
まぁ、言ってもしょうがない。今は出来るだけ他のサーヴァントと
の遭遇を回避しながら、情報を集めていくしかない。
﹁...ん﹂
おっと、どうやらうちのお姫様が目を覚ましたようだ。
﹂
全生命の母胎というか、全生命の妹
せんり...﹂
﹁おはよう、ティアマト。よく寝れたかい
﹁...ん..おは..よう
相変わらず可愛いなコイツは
みたいな感じじゃないか。
俺は手にドーナツを一つ出すと、ティアマトに渡す。
﹂
﹁じゃあ、ティアマト。食べながらでいいから聞いてくれ。これから
の行動についてだ﹂
﹁.....﹂
﹁前言撤回だ。ちょっとだけ食べるのやめようか
﹁...わか...った﹂
すっごく心が痛むから
﹂ーーーえ
﹂
え、でもなんで急に
﹂
とりあえず、ティアマトが霊体化出来ない以上俺たち
そんな目で見ないで
?
!!
23
?
目をこすりながら毛布に包まれている彼女を見てると心が和むな。
!
?
!!?
きのうのやつ...できるように、なった...よ
?
﹁ゴ、ゴホンッ
は﹁...るよ
﹁れいたい...か
....マジですか
?
﹁こえが...きこ..えてきて、おしえて...くれた﹂
?
?
? !!
なんだかよく分かんないけど、声ナイス
るようになったーーーー
﹂
これでどうにか街を歩け
﹁えっと、人がたくさんいるとこ行くけどいい
﹁....がん...ばる﹂
うん、明らかに嫌そうだね。
ごめん。もう食べていいよ、ほらこれおかわりの分﹂
いっちょ世界を救いますか
とりあえず今日の目標はこれだな。
﹁ふぅ、さて
﹂
なる可能性が高い。で、間を見てティアマトの解析。
俺というイレギュラーが存在する限り、打ってくる手もまた違う物に
次に情報集め。原作を知っているとはいえ、他の者たちも人間だ。
とかは別として。
ろが良い。敵もそうそう手は出してこないだろう。まぁ、切嗣と雨生
とりあえず第一に拠点の確保。出来れば人が密集するようなとこ
ていく。
改めてドーナツを食べ始めるティアマトを見ながら、考えをまとめ
﹁.......﹂
﹁あ
﹁.....﹂
ち止まるのは悪手としか言いようがないしな。
ここで過ごすとなると俺の体がもたない。それに一箇所にずっと立
しかしこればかりは譲れないのだ。今後の生活のためにも、ずっと
?
!!
!!
ほらほらほらー﹂
﹁あ、乗ってくれてありがとなティアマト。ドーナツがまだ欲しいか
﹁...おー...﹂
!
ティアマトの聖杯戦争が、1日遅れで始まったのであった。
24
!
こうして、ビースト陣営ことイレギュラー黒羽千里と人類の天敵
?
﹂
﹁なぁ、ティアマト﹂
﹁....
﹁その声に、なんて教えてもらったんだ
か
﹂
うちのティアマトが間違った知識覚えてんじゃ
いや、俺が喜ぶというのはその通りだから間違いではないの
!!
って、そうじゃないだろ俺
?
招きで呼んだ。
わ、分かりました
すぐにお着替えをお持ちしますね
﹂
!!
以外何も履いていないんです﹂
﹁え、ええ
!
さっき氷が溶けた水溜りにはまってしまって隠してはいますが、下着
﹁あ、すいません。彼女の服を何着か見繕って貰えないですか
実は
店員の元気な声が聞こえき、俺はたまたまそこにいた女の店員を手
﹁いらっしゃいませぇー﹂
そう言って俺たちは、たまたまそこにあった服屋に立ち寄った。
﹁ん....﹂
﹁とりあえずは服を買おう。宿より先に服を買おう﹂
ていく。
ティアマトに腕をギュッと掴まれている俺に恨めしそうな目を向け
通 り 過 ぎ る 野 郎 は、皆 テ ィ ア マ ト の 美 貌 を 二 度 見 す る。そ し て、
格好になっていた。
れたわけだが、横の俺はというとこんな寒い日に黒T一枚という面白
腰に括り付けることによって、ツノのみを消したティアマトが完成さ
現在、俺の上着二枚を貸すことによって、一枚は上を、もう一枚は
!
ねぇか
まで教えてやれよ
おい声よ、前に言ったナイスは撤回するぞ。テメェ教えんなら最後
ツノだけ...消したら...いい...よって﹂
﹁...よこに...いたほうが...せんり..が...よろこぶ...から、
?
?
!!?
員が戻ってきた。手には服がかなりの数ある。
自身の上着を数着選んでいると、一分もしないうちに息を切らした定
そう言って女の店員は、急ぎ足で衣服をとっていく。俺がその間に
!?
25
?
﹁お、お待たせいたしましたお客様
﹁﹁ッ
﹂﹂
﹁どこにも...いかない
﹂
すぐあちらでお着替えを﹂
すると、ティアマトは俺の服の袖をギュッと掴むと上目遣いで
﹁あ、はい。ほらティアマト、あの中で服着替えて来い﹂
!!
れは反則だよティアマト。それで聞かれて
いいえ
とか答えられ
"
......
あーいえ。そう言うわけではないのですが...﹂
﹁...彼女さんですか
﹂
そのまま試着室に服を受け取り入っていった。
俺は何処にもいかないよと言い頭を撫でてあげると、少しだけ笑い
る奴が何処にいる。いや、いたら俺がぶん殴るが。
"
まずい、今このお姉さんと気持ちが重なった気がする。というかそ
?
そして数分後ーーー
﹁おーい、着替えれたか
?
うヤバかった。
なお、より綺麗になったティアマトに引っ付かれている俺への嫉妬
8万7000円を買い、俺はその店を出たのだった。
数分後、次こそはちゃんと着たティアマトの服と、その他数着計1
当に良かった。
いをお願いした。定員も少し苦笑いでそれを承諾してくれたので本
俺は顔を赤くしながら、横にいた定員さんにしぶしぶ着替えの手伝
﹁何処が着れてんだよ
﹂
わ下はベルトをしていないから今にもずり落ちそうだわで、なんかも
を閉め直す。パッと見ただけだったが、上着のボタンは止めていない
はーーーほぼ着れていないティアマトの姿が。俺は急いでカーテン
そ う 言 う の で、俺 は 試 着 室 の カ ー テ ン を 開 け る。す る と 中 に
﹁う...ん﹂
﹂
ただ二人で試着室の前で話していた。
﹁...その気持ち、よく分かります﹂
﹁....私、開いてはいけない扉を開きかけました﹂
﹁え
?
!!?
26
!!
?
の目が増えた事は、言わずともわかる事だろう。
千里たちが服屋を出たのと同時刻
﹁ライダー見てみろよ、この木﹂
﹁おぉ、これは見事に粉砕されているな。並みの怪力ではこうはなら
ん。しかも、この壊れ方を見た限りただの風圧でこうなったな﹂
一人は赤毛のヒゲを生やした大男。もう一人はヒョロヒョロの青
そうじゃないだろこの馬鹿
と怒っていた。
﹂
いるだろう。おそらく、つい先ほどまでここにいたのだろうな﹂
﹁うっわ、よくそんな小さいもの見つけられるな﹂
﹂
マスターだろうが
﹂
状況分析は戦の基本よ。貴様も王の臣下なら
お前の
!!
﹁グァハッハッハッハ
僕が
!!
?
!!
ばこれくらいやって貰わねば困るぞ
﹁誰が臣下だ
!
彼らもまた、聖杯によって願いを叶えるための者たちである。
イスカンダル。
この青年ウェイバー・ベルベット。そしてそのサーヴァント征服王
!?
27
年だった。大男は感心しながら何本も破壊された木を見るが、もう一
人は
﹁これ、どう考えてもサーヴァントだよな
!!"
﹁お そ ら く な。そ れ に....見 ろ。こ こ に 食 べ 物 の 残 り カ ス が 落 ち て
?
"
第4話 幸運値Eの男の戦い
やぁみんなこんにちわ。幸運値Eこと黒羽千里さんだ。
なにやら顔色が悪そうだ﹂
﹂
いきなりで悪いんだが、もしも自分の今は絶対会いたくない人に
会ってしまったら、貴方ならどうする
ああ、どうしてこうなった
﹁......﹂
﹁ふふふっ、同じ髪の色の人とは初めて会ったわ。こんにちわ
﹁ア、ハイ。ダイジョウブデス﹂
﹁あ、あの、大丈夫ですか
できれば対処法を教えて欲しいです。
?
アマトに何か美味しいものでも食べさせてあげようと街に繰り出し
ていた。
﹂
﹁ティアマト...って、この呼び方はそろそろマズイな。ビーストっ
﹂
て呼ぶのもどうかと思うし、何か呼びやすい呼び方はないかな
﹁べつに...なんでも...いいよ
?
...うん、...てぃあ﹂
﹂
と、いうことで俺はティアマトの呼び名を考えることにした。
とバレてみろ、めんどくさいことこの上ないに決まっている。
AUOことギルガメッシュがいるのだ。もしも彼女がティアマトだ
この先、彼女を真名で呼び続けるのはマズイ。相手にはあの金ピカ
?
﹁ティアマトだから...ティアとか
﹁てぃあ
呼ぶ時は、ティアでいいか
﹂
﹁う...ん、わたし..てぃあ﹂
?
?
28
?
服屋で服を買い、今晩の宿も手に入れることに成功した俺は、ティ
?
?
﹁ありゃ、一発目でまさかの好評だった。なら、ティアマトをこれから
?
気に入ってくれて何よりだ。
﹂
そして、そこでそれは起こってしまった。というか俺の幸運値Eが
働いてしまったのだろう。
﹁あ、ごめんなさい。ちょっといいかしら
う。
だが、そんな事はどうでも良かった。
!
﹂
﹁あら、ごめんなさい。でも、私と同じ髪の人を見つけたからついね
﹁アイリスフィール、勝手に動いてもらっては困ります
﹂
顔のパーツも整っており、真紅の瞳は見るものを身惚れさせる物だろ
麗な女性だった。銀色の長い髪に、その髪に合うような真っ白い服。
肩を後ろからトントンと叩かれ振り向くと、声をかけてきたのは綺
﹁あ、はい。いったい何のようで...す...か...﹂
?
そう言って側に寄ってきたのは、中性的な顔をした金髪の人物。男
とも女とも取れるこの黒スーツの人物は、俺に話しかけてきた女性を
軽く叱り付けていた。
おい、俺の幸運値よ。お前は本当にろくなことをしでかさないなぁ
﹁失礼、私のところの主人がご迷惑を﹂
その言い方だと私が彼に迷惑をかけているみたい
﹁アーイエ、ダイジョウブデス﹂
﹂
﹁そうよセイバー
じゃないの
!
﹂
?
真名、アルトリア・ペンドラゴン。かの有名なエクスカリバーで同
この金髪の人物。いいや、男装の人物と言ったほうがいいだろう。
﹁貴方はーーー﹂
別だ。
この様子だと、ティアの方は全く気づいていない。しかし、相手は
﹁....せんり...いか..ない...の
これはかなりマズイ。まさかの敵の大将の夫人とご対面だ。
アインツベルンさん。
いや、もう実際かかっているんですよ、アイリスフィール・フォン・
!
29
?
!!
じみのアーサー王その人だ。
彼...い や、彼 女 は 俺 の 背 に 隠 れ る テ ィ ア を 観 察 す る よ う に 見 る
と、ご無礼をと言いながら左手を俺に差し出してきた。
﹁私は彼女の護衛のようなものですので、名は明かせませんが、私のと
ころの主人がご迷惑をおかけしました﹂
セイバーはそう言って笑顔で言うが、おそらくはティアから何かを
感じたからだろう、マスターの証でもある令呪が書かれた右腕を要求
してきたのだ。
俺はそっとポケットに突っ込んでいた手を取り出すと、同じく笑顔
で彼女の手を握る。
......﹂
﹁別に気にすることじゃないよ。随分と若い人なのに護衛って凄いで
すね﹂
﹁ふふっ、見た目で判断してはいけませんよ
﹁.....﹂
時間にして数秒だったが、やはりだ。彼女はじっと俺の右手を見て
いた。俺は再びポケットに手を突っ込むと、背に隠れていたティアの
頭を撫でてあげる。
﹂
﹁悪いな、ちょっと人見知りでさ。珍しい格好だけどここら辺に住ん
でんのか
﹂
﹂
出会うことがあるかもしれませんね。あ、そろそろ時間だ。アイリス
セイバーばかり話してずるいわ
フィール行きますよ﹂
﹁えぇー
﹁わがままを言わないでください。ほら、早く行きますよ
!
出した。
﹁ぷはぁー
?
﹁死なないよ。ただ、精神的に死にかけただけだ﹂
﹁せんり...しんじゃ..うの
﹂
あー、死ぬかと思った﹂
車が曲がり角を曲がった所で、ようやく俺は溜まっていた息を吐き
のまま黒い車に乗って行った。
セイバーは一つ俺たちに頭を下げると、アイリスフィールを連れそ
?
!
30
?
﹁ええ、つい最近ここいらに越して来たものです。もしかしたら、また
?
!
それにしても良かった。
﹂
俺は右手をポケットから出すと、そのなにも書かれていない肌を眺
めたのだった。
﹁......﹂
﹁あらセイバー、考え事
車の中、アイリスフィールのその言葉にセイバーはハッとする。自
分でも分からないほどボォっとしていたようだ。
﹂
﹁す い ま せ ん ア イ リ ス フ ィ ー ル。少 し 先 ほ ど の 青 年 を 考 え て い ま し
て﹂
﹁どうかしたの
それだっ
た気がしたので。ですが、彼の手には令呪がなかったのできっと勘違
いですね﹂
﹁あら。もしかしたら彼女、魔術師の家系だったのかしら
たらもう少し話してみたかったわ﹂
私が倒さない理由にはならないのだから。
ターだとしても︶
︵はぁ、考えても仕方ありませんね。もしも....もしも仮に彼がマス
ろうが、それでもあの緊張はまるでーーーーー
確かに私やアイリスフィールのような容姿は、この国では珍しいだ
はいたが、それでも何故か自分たちに緊張していた。
無関係だと思うが、彼のあの握手をした時の笑顔だ。かなり隠せて
いをしながら、窓の外を眺めそれでも彼のことを考えていた。
アイリスフィールはさぞ残念そうにそう言った。セイバーは苦笑
?
31
?
﹁いえ、ただ少し彼の後ろにいた彼女の気配が私たちのソレと似てい
?
セイバーとアイリスフィールと別れて数分後、俺たちはある飲食店
に入っていった。看板には茶色い輪っかのイラストが描かれている
ここはそう、ドーナツの専門店だ。
たまたま通りかかっただけだったが、それを見つけたティアの目が
かなりの種類があるが...﹂
輝いていた為、そのまま入って来たのだ。
﹁さて、どれにする
﹂
﹂
?
ご注文はお決まりでしょうか
端までのドーナツをお盆に乗せていく。さすが、はやいな。
?
えっとお会計30点
﹁お、お待たせいたしました。お持ち帰りでよろしいですか
....って、あ、も、申し訳ございません
﹁あ、ここで食べます﹂
﹁へ
!
う。するとどうやら、定員が持てない分のドーナツを持って来てくれ
俺は五千円を定員に渡すと、ティアに先に席に座っているように言
合わせて3600円になります﹂
﹂
定員は少しポカンとしながらも、すぐに失礼しましたと謝り端から
?
少し不安になりながら、定員の元に並んだ。
﹁いらっしゃいませ
﹂
﹁えっと、端から端まで全部一個づつで﹂
﹁....え
﹂
大丈夫かと聞くが、ティアはコクンッと首をうなづけるだけ。俺は
﹁ほ、ほんとに食うのか
﹁ここから...あ...っちまで...ぜんぶ﹂
﹁え
﹁ぜん...ぶ﹂
全部食べるとしたら、どれだけ胸焼けをするのだろーーー
棚に並べられていたのは30種類ものドーナツたち。これをもし
?
!
うん、やっぱりその反応だよね。
?
32
?
?
るそうだった。
そして、机の上にはドーナツの山が出来上がり、ティアは今まで見
せたこともないような嬉しそうな顔でそれを頬張り始めた。
﹁..............﹂
うん、リスか。いや、違った天使か。
周りいた客もこれには驚き、中には携帯でそに様子を撮っている人
もいるくらいだ。まぁ、ここまでの美人でこんな体型なのに大食いと
か珍しいよな。
そして、数分もせぬうちにドーナツの山は消え去ったのだった。
﹁さて、ティア。これからの予定を言うぞ﹂
﹁....﹂
﹁あー、先に口拭くからこっち向け﹂
﹁ん....,﹂
よと言っているみたいなものなのだ。しかし、それによって他のマス
ターのターゲットが俺に向き殺し合う事が少なくなるかもしれない。
ほんの雀の涙ほどのものだが、それでも行く価値はあるものだと俺
は思っている。
ティアがもしも嫌だといえば行かない。全てはティア次第だった。
﹁....わたし...は...いく﹂
33
口の周りが砂糖の粒だらけになっていたので、俺はそれを拭きもの
でぬぐってやる。その時、何処からか舌打ちが聞こえた気がしたが気
にしない。
﹁俺たちは今日、他のマスター達に会うために海岸沿いの荷物置き場
に向かう。きっとそこには俺と同じマスターがたくさん来るし、お前
﹂
﹂
と同じサーヴァントもいるだろう。最悪戦闘に巻き込まれるかもし
れないが....ティアは行きたいか
﹁わた...しは...せんりがいいなら...いいよ
﹂
?
そう。実際には顔を見せる必要はない。それは俺がマスターです
いんだ。もし行けばティアの身も危なくなる。それでも行くか
﹁...嫌なら嫌といってもいい。はっきりって顔を合わせる必要はな
?
?
﹁
﹂
﹁わ た し..は...き お く が...な い。で も...せ ん り と い っ し ょ に
いたいと...おもう﹂
それは今までの言葉よりもはっきりとした言葉であり、俺を突き動
かすには十分すぎた。
そっと頭を撫でてあげると、俺は椅子から立ち上がった。
﹁ああ、なら任せろ。俺もお前とまだ一緒にいたいかたな﹂
人類の天敵だとかもう知るか。俺はマスター、ティアのたった一人
のマスターだ。さぁ、聖杯様よ。あんたの悪と俺の勝手な偽善、どち
らが上かひと勝負だ。
これは俺がこの世界に来て初めて、ティアのマスターだと自覚した
時だった。
絆レベル2/10 up
!
ガキンッと金属がぶつかり合う音が、そこからは聞こえた。
﹂
﹁ふっ
!
た。
になっている箇所も目に見えるほどの激しい戦闘が、そこにはあっ
を振るえば暴風が吹き荒れる。地面は削れ、コンクリートはむき出し
士の甲冑を着た金髪の少女。男が槍を突けば空気は貫かれ、少女が剣
片方は槍を使う軽装の男性、もう片方は目に見えない武具を操る騎
﹂
﹁はぁ
!
34
!!
﹁流石だ。俺の槍をここまで受ける奴は久しくいなかったのでな﹂
﹁ふっ、それはこちらとて同じ事。貴様のような者と手を合わせる事
ができるなど思いもしなかった﹂
そう言って、再びぶつかり合う二人の人外。
金髪の少女の後ろには、銀とも白とも取れる髪の女性が不安そうに
立っていた。
そして次の瞬間、少女の脇腹を槍が斬りつけた。
﹁グッ....なるほど、その槍魔力で作られたものを無効化するのか﹂
﹂
﹂
﹁さて、それはどうかな。では、まだまだ腕を休めるには早いぞセイ
バー
﹁ぬかせランサー
だがその両者の突撃は、横から飛んできた大きな物体によって防が
れた。ランサーは飛んできた物体をなんとかそらすと、その飛んでき
﹂
た物を見る。それは、自分たちの周りにも積まれている鉄製の箱だっ
た。
﹁こんなもの、いったい誰が...姿を見せろ
えばいいかな
﹂
﹁そうだなぁ...しいていえば、新しい聖杯戦争のマスターとでもい
﹁貴様...何者だ﹂
ういなかった。人間でも英雄でもない、全く別次元のもの。
圧倒的な圧力。自身が生きていた時でさえここまでの者はそうそ
ては話は別だった。
た。肉体から見てまだ子供。しかし、その青年の隣にいる少女につい
ランサーがそう叫ぶと、暗闇からフードを被った人物が一人現れ
!!
彼らの戦いが、今始まった。
﹁サーヴァント ビーストのマスターだ﹂
黒い髪の青年と銀髪の少女。
﹁俺の名前は黒羽千里﹂
そして青年は被っていたフードを後ろへやる。
中にある宝石のような紋章。それは見たこともない令呪だった。
そう言って、青年は右手の甲の赤い紋章を見せる。二翼の翼に真ん
?
35
!!
!!