Market Flash 金利にコミット 2016年12月21日(水) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【欧米経済指標他】 ・10月ユーロ圏経常収支は2840億ユーロの黒字となり、9月から700億ユーロの増加。貿易・サービス収支が 既往最高付近で推移する下、高水準の経常黒字が常態化している。 (10億ユーロ) 50 ユーロ圏 経常収支 40 30 経常収支 20 10 0 -10 貿・サ 所得収支 (1・2次合計) -20 -30 00 02 04 06 08 10 (備考)Thomson Reutersにより作成 12 14 16 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は続伸。イタリア大手行に対する懸念が一部払拭されたことをきっかけに欧州銀行株がラリ ーすると、米国株も金融株主導で上昇。もっともNYダウの2万突破が視野に入ると利益確定売りが膨ら み上値は限定的。WTI原油は52.23㌦(+0.11㌦)で引け。 ・前日のG10 通貨はJPYの弱さが目立った反面、その他通貨は動意に乏しく小動きに終始。USD/JPYは日銀金 融政策決定会合の結果発表後からジリ安となり、欧州時間には118を回復したが、その後は徐々に水準を切 り下げた。EUR/USDは一時1.03半ばへと水準を切り下げたものの、EUR売りは持続しなかった。新興国通貨 はまちまちだったが、JPMエマージング通貨インデックスは6日ぶりに反発。 ・前日の米10年金利は2.559%(+2.0bp)で引け。株価、原油価格上昇で逃避需要後退。欧州債市場(10年) はまちまち。ドイツ(0.269%、+2.2bp)、イタリア(1.839%、+2.0bp)が金利上昇となった一方、ス ペイン(1.337%、▲2.6bp)、ポルトガル(3.744%、▲1.4bp)が金利低下。周縁3ヶ国加重平均の対独 スプレッドはタイトニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は欧米株高・USD/JPY上昇を受けて続伸(10:30)。日経平均は19500円を回復した。 <#日銀 #現状維持がメインシナリオ> ・日銀は金融政策決定会合において、景気の総括判断を事実的に上方修正したうえで、金融政策の現状維持 を決定。声明文における景気判断の上方修正は広範な項目にわたり、生産・輸出・個人消費・設備投資の 判断に変更が加えられ、総括判断は「緩やかな回復基調を続けている」と従来どおりのシンプルな表現に 戻された。最近の生産・輸出統計の改善を踏まえ、これまでの「輸出・生産や消費の一部に鈍さが残る」 との文言は削除された。もっとも、日銀が重要視している予想物価上昇率は「弱含みの局面が続いている」 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 との判断が据え置かれた。これは足もとで観察されている債券市場で算出される予想インフレ率上昇や日 銀短観における企業の予想物価上昇率引き上げを、日銀が原油価格の底打ちと円安による「外生的要因」 と見做し、慎重な判断を貫いたものと思われる。 ・注目の総裁会見ではイールドカーブコントロールに質問が集中した。ここへきて米長期金利上昇が円債市 場に波及している現状を踏まえ、日銀が10年金利の操作目標を引き上げるのではないかという思惑が一部 に生じていたことが背景にあった。これに対して総裁は「2%の物価目標への距離はまだ遠い」としたう えで、「長期金利目標の引き上げについての具体的な議論をするのは時期尚早」として、2%目標の達成 を優先する構えを明確に打ち出すことで債券市場を牽制した。多くの市場参加者にとって納得感のある説 明だろう。9月に「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるま で、マネタリーベースの拡大方針を継続する」という、オーバーシュート型コミットメントを導入した直 後に、この程度の環境変化で金融政策を調整してしまっては“コミットメント”の真意が疑われることに なる。米10年金利が3%を突破し、コアCPIが1%を超えるような状況になれば話は別だが、そこに辿 り着くには暫く時間がかかりそうだ。日銀の金融政策は現状維持が続くだろう。 (%) 日本 予想インフレ率・実質金利(10年) 日銀短観 企業の物価見通し (%) 2 1.6 1.5 1.4 1.2 1 1 予想インフレ率 0.8 0.5 0 0.4 -0.5 0.2 14/07 15/01 15/07 16/01 16/07 販売価格見通し 0 実質金利 -1 14/01 物価見通し 0.6 名目金利 17/01 (備考)Thomson Reutersにより作成 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 14 14 14 14 15 15 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 15 16 16 16 16 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2
© Copyright 2025 ExpyDoc