更新日:2016/12/12 調査部:野神 隆之 原油市場他:主要非OPEC 産油

更新日:2016/12/12 修正
調査部:野神 隆之
原油市場他:主要非 OPEC 産油国が OPEC 産油国と協議、日量 55.8 万バレル減産へ(速報)
(OPEC 他)
① OPEC 産油国と主要非 OPEC 産油国は 12 月 10 日にオーストリアのウィーンで閣僚級会合を実施、
この場においてアゼルバイジャン、バーレーン、ブルネイ、赤道ギニア、カザフスタン、マレーシア、
メキシコ、オマーン、ロシア、スーダン、及び南スーダンは、合計で日量 55.8 万バレルの減産を実施
する旨表明した。
② 非 OPEC 産油国の個別の減産量は公式には発表されていないが、ロシアが 10 月の原油生産量で
ある日量 1,124.7 万バレルから同 30 万バレル減産し、6 ヶ月後には日量 1,094.7 万バレルに到達す
る旨ノバク エネルギー相が 12 月 10 日に明らかにした他、メキシコが日量 10 万バレル、オマーンが
同 4 万バレル、アゼルバイジャンが同 3.5 万バレル、カザフスタンが同 2 万バレル減産する旨伝えら
れる。
③ 減産は 2017 年 1 月 1 日より 6 ヶ月の期間実施することとし、市場の状況や展望によってはさらに 6 ヶ
月間延長することもありうる。
1.協議内容等
① OPEC 産油国と主要非 OPEC 産油国は 12 月 10 日にオーストリアのウィーンで閣僚級会合を実施、
この場においてアゼルバイジャン、バーレーン、ブルネイ、赤道ギニア、カザフスタン、マレーシア、
メキシコ、オマーン、ロシア、スーダン、及び南スーダンは、合計で日量 55.8 万バレルの減産を実施
する旨表明した。
② 非 OPEC 産油国の個別の減産量は公式には発表されていないが、ロシアが 10 月の原油生産量で
ある日量 1,124.7 万バレルから同 30 万バレル減産し、6 ヶ月後には日量 1,094.7 万バレルに到達す
る旨ノバク エネルギー相が 12 月 10 日に明らかにした他、メキシコが日量 10 万バレル、オマーンが
同 4 万バレル、アゼルバイジャンが同 3.5 万バレル、カザフスタンが同 2 万バレル減産する旨伝えら
れる。
③ ただ、非 OPEC 産油国のうち、ロシア及びオマーンは減産する意志を明確にしているものの、カザフ
スタンは減産に向け努力するとしており、またメキシコ及びアゼルバイジャンは油田での生産の自然
減退を含んでいると見られることから、実際の石油市場への影響は表明した減産量程ではないもの
と思われる。
–1–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
④ 減産は 2017 年 1 月 1 日より 6 ヶ月の期間実施することとし、市場の状況や展望によってはさらに 6 ヶ
月間延長することもありうるとしている。
⑤ またの遵守状況を監視するためにアルジェリア、クウェート、ベネズエラからなる監視委員会(議長国
はクウェート)に、ロシア(議長代行国となる)及びオマーンが参加するとされる。
2.今回の会合の背景等
① 11 月 30 日に開催された OPEC 総会で、OPEC 加盟国は全体で原油生産量を日量 117 万バレル弱
引き下げることで合意した。
② しかしながら、この程度の原油生産量の引き下げでは、最も遵守が徹底し、かつ生産上限の対象外
となったナイジェリア及びリビアが現状の生産量を維持した場合でも、2017 年全体での石油需給を
均衡させる程度の効果しか見込めない。
③ 従って、ナイジェリアやリビアで今後増産が行われれば、原油生産制限の効果が低減する他、特に
年後半と比べ季節的に石油需要が抑制される年前半においては石油供給過剰感が市場で感じられ
やすくなる。
④ このため、特に 2017 年前半の世界石油需給をより均衡に接近させるべく、非OPEC 産油国に原油生
産調整を要請したものと考えられる。
⑤ 非 OPEC 産油国としても、OPEC 産油国と合意すれば、少なくとも市場関係者による石油需給引き締
まり観測から原油相場が支持される可能性があることから、OPEC 産油国の要請に応じたものと考え
られる。
3.今後の見通し及び原油価格の動き等
① ただ、ロシアは 2016 年 9~10 月は日量 1,110~1,120 万バレル程度とそれまでの概ね日量 1,070~
1,090 万バレル程度の生産量から突出して高水準となっており、日量 30 万バレルの減産後でも、日
量 1,000 万バレル台後半であるため、依然として高水準の原油生産を行うと見られる他、これらの減
産は石油会社による自主的な生産調整によるものと見られることから、減産が徹底するまでに時間を
要する他、場合によっては減産が徹底しないといった展開もありうる。
② ロシアは 2001 年 12 月 18 日に開催された OPEC 臨時総会において、アンゴラ、オマーン、ノルウェ
ーと併せて日量 46 万バレルの減産協力を表明、さらに 2002 年1 月 3 日にはロシアは同年第一四半
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期の輸出量を日量15 万バレル削減する旨明らかにしたものの、その後実際には増産していた(2002
年第一四半期の原油生産量は日量 735 万バレルと 2011 年 12 月の日量 723 万バレルから増加して
いた)旨判明するなど、同国の減産協力に関する実績に対する市場の信頼感は必ずしも高いものと
は言えない。
③ また、メキシコやアゼルバイジャンは、従来から 2017 年は原油生産量が減少する方向性であると見
る向きもある。因みに、2016 年 10 月の OPEC 事務局が発行した「月刊オイル・マーケット・レポート」
によると 2016 年第四四半期から 2017 年第二四半期にかけメキシコ及びアゼルバイジャンの石油生
産量は双方とも日量約 10 万バレルの減少になると予想されている)、この面では減産の効果が額面
通りには得られないことも予想される。
④ 他方、12 月 10 日には、サウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が同国は 11 月 30 日
に合意した減産幅を上回るとともに、市場の状況によっては日量 1,000 万バレルを割り込む旨明らか
にしている。ただ、12 月 9 日には、サウジアラビアが欧州及び米国の顧客に対して原油供給量を 1
月から引き下げる旨通知したものの、同日、サウジアラビアはアジアの一部顧客には契約数量通りか
契約数量以上の供給が行われる他、イラクもアジアの顧客に対して契約数量通りの原油供給を行う
旨伝えられるなど、11 月 30 日に開始された OPEC 総会時で決定した減産幅が完全に遵守できるか
どうか不透明な部分も残る。
⑤ このため、市場の関心は、2017 年 1 月以降の OPEC 及び主要非 OPEC 産油国による原油生産調整
の遵守状況に移る。
⑥ 2017 年 1 月末以降、OPEC 及び主要非 OPEC 産油国による原油生産状況が明らかになってくると
思われる(それ以前においても断片的に各国の生産及び輸出といった供給状況が判明することもあ
る)が、その場において遵守状況が芳しくないようだと、石油市場関係者間で需給引き締まりに対し
て失望感が広がることに加え、春場の石油不需要期(市場の末端の段階では依然冬場の暖房用石
油製品需要期であるが、製油所の段階では春場のメンテナンス作業時期突入により原油の購入が
不活発化)と重なることにより、原油価格に下方圧力を加えるといった展開も想定される。
⑦ それでも、今般 OPEC 及び非 OPEC 産油国が 2001 年 12 月の OPEC 総会以来 15 年ぶりに原油生
産調整で合意したことにより、両者の結束強化を石油市場に対して示したことにより、産油国による市
場及び価格支配力強化に対する市場の期待が増大することを通じて、原油相場を少なくとも下支え、
場合によっては上昇をもたらすといった場面が見られることもありうる。
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⑧ 実際 12 月 11 日夜間の米国原油先物市場での時間外取引開始直後の取引では一時 WTI は 1 バレ
ル当たり 54.51 ドルと 12 月 9 日終値(1 バレル当たり 51.50 ドル)比で 1 バレル当たり 3.01 ドル上昇し
ている。
⑨ ただ、原油価格が 1 バレル当たり 50 ドルを超過して大幅に上昇していくようだと、米国でのシェール
オイル開発・生産が刺激される(既に 12 月 9 日時点の米国石油水平坑井掘削装置稼働数は 437 基
と前週比で 18 基増加している)ことにより、同国での原油供給が増加することを通じて再び石油需給
が緩和する可能性があるとの観測が市場で増大することにより、そのような原油価格水準が持続する
可能性はそれほど高くないものと見られる。
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(参考:12 月 10 日開催 OPEC 及び非 OPEC 閣僚会合時声明)
OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting
No 25/2016
Vienna, Austria
10 Dec 2016
Following the ‘Vienna Agreement’ decided upon at the 171st Meeting of the Conference of the
Organization of the Petroleum Exporting Countries (OPEC) on 30th November, 2016, Ministers from
OPEC met with a number of Ministers from non-OPEC oil producing countries on Saturday, 10th
December, at the OPEC Secretariat in Vienna.
The Meeting was jointly chaired by His Excellency Dr. Mohammed Bin Saleh Al-Sada, President of the
OPEC Conference and Minister of Energy and Industry of the State of Qatar and His Excellency Alexander
Novak, Minister of Energy of the Russian Federation.
The Meeting recalled the rights of peoples and nations to permanent sovereignty over their natural wealth and
resources.
The Meeting took into account current oil market conditions and short- to medium term prospects and
recognized the need for joint cooperation of the oil exporting countries, to achieve a lasting stability in the oil
market in the interest of oil producers and consumers.
The Meeting noted that OPEC Member Countries met on 30th November 2016 and decided to implement a
production adjustment of 1.2 million barrels a day (mb/d), effective from 1st January 2017. The Meeting
recorded that OPEC Member Countries, in agreeing to this decision, confirmed their commitment to a stable
and balanced oil market and underscored the importance of other oil producing countries joining their efforts.
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The Meeting recognized the desire of Azerbaijan, Kingdom of Bahrain, Brunei Darussalam, Equatorial Guinea,
Kazakhstan, Malaysia, Mexico, Sultanate of Oman, the Russian Federation, Republic of Sudan, and Republic
of South Sudan, as well as other non-OPEC producers, to achieve oil market stability in the interest of all oil
producers and consumers. In this regard, the aforementioned countries proposed to adjust their oil production,
voluntarily or through managed decline, starting from 1st January 2017 for six (6) months, extendable for
another six (6) months, to take into account prevailing market conditions and prospects.
The aforementioned countries and OPEC, convinced of the necessity to jointly cooperate to help stabilize the
oil market, reached the following.
 OPEC
maintains its decision made on 30th November 2016, whereby arrangements were recorded
following the extensive understanding of OPEC’s adjustment;
 Azerbaijan,
Kingdom of Bahrain, Brunei Darussalam, Equatorial Guinea, Kazakhstan, Malaysia,
Mexico, Sultanate of Oman, the Russian Federation, Republic of Sudan, and Republic of South Sudan
commit to reduce their respective oil production, voluntarily or through managed decline, in accordance
with an accelerated schedule. The combined reduction target was agreed at 558,000 barrels a day for
the aforementioned producers;
 That
two participating non-OPEC countries shall join the OPEC Ministerial Monitoring Committee,
consisting of oil ministers, chaired by Kuwait with the Russian Federation as alternate chair and assisted
by the OPEC Secretariat;
 To strengthen their cooperation, including through joint analyses and outlooks, with a view to ensuring a
sustainable oil market, for the benefit of producers and consumers; and
 To regularly review at the technical and ministerial levels the status of their cooperation.
Finally, the Meeting expressed its gratitude to the Government and to the people of the Republic of Austria,
as well as the authorities of the City of Vienna for their warm hospitality and excellent arrangements made
for the Meeting.
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