法歯学・法人類学講座

法歯学・法人類学講座
法歯学講座初代主任教授鈴木和男は、「法歯学とは、歯学および自然科学を応用して、社会の治
安維持、公正なる法律の適用を計るために必要
な歯学的事項を研究する学問である」と述べて
いる。つまり、法歯学とは、法律と歯科医学と
の関係上に成り立つものと解釈される。
当講座では、歯や骨だけでなく、DNA や人類
学的特徴など、ヒトを対象としてできる限り広
範な個人識別情報を得る研究を主として行って
いる。そして、その研究成果を鑑定という実務において社
図 1 当講座で行った鑑定の一例
会
に還元し、国民の基本的人権を守り、社会正義の擁護に寄与している(図1)。
また、厚生労働省および外務省から嘱託を受け、様々な鑑定を行っている。厚生労働省からは、
戦没者慰霊事業の一環として、身元確認調査のた
め DNA 鑑定を嘱託されている。一方、外務省か
らは邦人の保護および身元確認のための業務を
嘱託されている。政府は、海外在留邦人の保護を
目 的 と し た 海 外 緊 急 展 開 チ ー ム ( ERT :
Emergency Response Team)を創設し、当講座
の医局員がその一員として登録されている。海外
において大規模災害が発生した場合は、現地に赴き、各国
図 2 タイ王国プーケットでの活動の様子
の DVI:Disaster Victim Identification チームと共に犠牲者の身元確認作業に従事する(図 2)。
これらの経験から、大規模災害時の身元確認作
業が正確かつ円滑に行うことができるよう、歯
科治療痕からの個人識別を行うことができるよ
うなソフトウェアの開発といった研究も行って
いる(図 3)。
以上のように、当講座では他の講座とは大き
く異なり、歯科医学の知識・技術を法律的な問題に
適応させた研究・実務を行っている。
図 3 歯科的個人識別のためのソフトウェアの照合画面