試験の紹介 穂発芽しにくい大麦を選抜できる DNA マーカーの開発に取り組んでいます 大麦を始めとする穀物は、収穫前の降雨により、 るため、上記のような手間のかかる検定が省け、 穂についたままの種子が発芽してしまう現象(穂 有望な系統だけを次世代に進めることができま 発芽)が起こります。穂発芽が起きると、品質が す。さらに、大麦の育種では数万の系統を扱うた 低下し商品価値が損なわれ、生産農家に大きな損 め、DNA マーカーを簡易で迅速に検出できるシス 害をもたらします。栃木県の大麦収穫時期は梅雨 テムの確立も目指しています。 入り前後にあたるため、常に穂発芽のリスクがあ (生物工学研究室) ります。実際、平成 26 年には、収穫前の高温と大 雨により県内各地で穂発芽が発生し、ビール大麦 で 23 億円の被害となり、長年継続してきた生産量 日本一の座を明け渡すことになりました。今後も 穂発芽による被害の多発が懸念されるため、穂発 芽しにくい品種の育成が求められています。現在 は、穂発芽が起きやすい状況を人工的に再現し、 発生程度を評価することで、穂発芽に強い大麦品 種の育成を行っています(H27 年 7 月栃木県農業 試験場ニュース参照)。 H28 年、岡山大学や農研機構次世代作物開発研 究センターにより、Qsd1 及び Qsd2 という穂発芽 のしやすさに関わる遺伝子が明らかにされまし た。これらの遺伝子は、1 塩基の違いで穂発芽の 強弱が変わることが分かっています。当研究室で は、この情報を利用し、効率的に穂発芽しにくい 写真 個体を選抜できる DNA マーカーの開発に取り組ん 注 でいます。DNA マーカーを利用すれば、生育初期 大麦の穂発芽 穂についたまま、種子が発芽し、 緑色の芽が出ている に穂発芽に対する強さを明らかにすることができ 試験の紹介 いちごの次世代型生産技術の 開発に取り組んでいます いちごの生産現場は、異常天候の頻発や市場価格の低位安定化 などの課題を抱えており、これまで以上に生産性及び果実品質の 安定・向上が強く求められています。このようなことから、周年 生産や超多収生産を可能とし、高収益型いちご経営を実現できる 次世代型生産技術を開発するため、本課題では炭酸ガスの長時間 施用による増収効果やクラウン部等の局所温度制御などによる四 季成り性品種における花成促進効果などに着目した新たな環境制 御法の確立などに取り組んでいます。 (いちご研究所開発研究室) -3-
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