ウリ科植物における アルコール分解酵素含有量の比較

ウリ科植物における
アルコール分解酵素含有量の比較
1. 背景
日本人は遺伝的に約半数の人がお酒に弱い,もしくは全く飲めない
体質である,といわれているがこれはアルコール分解酵素のアセトアル
デヒドデヒドロゲナーゼ(以下,ALDH)が低活性型もしくは非活性型
であることに由来している.そのため,肝機能を高めたり,二日
酔いを軽減したりする製品の需要は高い.一方,キュ
NADH濃度/µmol dm-3
2016年火曜班
300
250
200
150
100
50
0
ウリなどの一部のウリ科植物にもアルコールを分解
果実名
す る アル コー ル デヒ ドロ ゲ ナー ゼ (以下 ,ADH)や
ALDH が含まれていることが知られている.しかしな
図1 ADH活性測定でのNADH濃度
がら,ウリ科植物においては一部の野菜でしか研究が
いウリ科植物を用いて,アルコール分解酵素を発見し,
その活性を評価することにした.
2. 実験
2.1 ADH活性測定
ウリ科植物の果実をミキサーで粉砕し,その後、遠
NADH濃度/µmol dm-3
進んでいない.そこで本実験では未だ研究されていな
240
190
140
90
40
-10
心分離にかけ,上澄みを採取した.その果実溶液に反
応溶液(NAD を含む Gly-NaOH 緩衝液,
pH10)を混合し,
果実名
プレインキュベートした.基質(エタノール溶液)を加え,
図2 ALDH活性測定でのNADH濃度
分光光度計を用いて吸光度測定をした.
2.2 ALDH活性測定
2.1と操作は同じだが,加える反応溶液を,pH8 のピラゾー
なお,酸処理溶液では ADH 活性はみられなかった.
ル及び EDTAを含むピロリン酸ナトリウム緩衝液とし,
基質をアセトアルデヒド溶液とした.
2.3 酸耐性評価
2.1の果実溶液に塩酸を加え,酸処理溶液の残存活性によ
り,酸耐性を評価した.
4. 考察
ADH活性測定におけるNADHの生成量を比較した場合,最も
多くNADHを生成した果実はメロンとなった.しかしながら,希釈
倍率を上げてもNADH濃度が下がらないという矛盾が生じている。
また、ALDH活性測定においては活性がみられないものがいくつか
3. 結果
吸光度測定を行い,NADHの濃度を求めた結果は次の図のよう
ある。したがって、この結果に対する信憑性にはある程度の課題が
残る結果となった.酸耐性については1Mの塩酸を使用したため,
になった(NADHはアルコールを分解する際に発生する物質で,N
実際の胃酸のpHより低くなってしまい,酵素が失活したこと
ADHの濃度が高くなれば,果実にアルコール分解酵素が多く含ま
によるものと思われる.
れていると考えてよい).
なお,果実名の後の数字は希釈倍率を表している.
今後の展望としては,塩酸ではなく,人工胃液を用いた酸
耐性評価を行うことによって,より正確な果実中の酵
素活性について評価をしていきたい.