進路指導における「保護者の思い」「障害者の理解」「地域との連携」 埼玉

進路指導における「保護者の思い」
「障害者の理解」
「地域との連携」
埼玉県立春日部特別支援学校
教諭 島田 さえり
(1) はじめに
本校には現在、小学部91名、中学部61名、高等部153名
の児童生徒が在籍しており、高等部3年生の卒業後の進路先は
左図の通り、主に2つに分けられる。
企業就労における職種は、施設や店舗での清掃、スーパーなど
小売店での品出し、レストランでの食器洗浄、物流センターで
のピッキング、工場(部品、食品など)製造補助など軽作業が
中心である。
(2) 社会参加、企業就労を進めるために
保護者の方々からは「親なき後の子どもの自立を考えたら、なんとしても企業就労を。」
「地域で顔の見
えない子どもにはしたくない。社会参加の機会を。
」という声をいただく。企業就労も含めた社会参加
の機会を増やすべく職業体験の場を求めて、地元の企業を初め、商店会や商工会、近隣の農家などにも
職業・作業体験のお願いをしているが、受け入れが進まない場合の原因の一つに誤解や障害への理解不
足が挙げられる。特に知的障害は目に見えないゆえの理解の難しさがあり、作業能力や接し方がわから
ないと言われることが多い。社会参加の機会を増やすためには、まず、障害者の理解を進めることが不
可欠であると痛感している。発信の機会をいただき、地元のロータリークラブや生徒の受け入れ先の企
業で、
「障害者雇用のポイント」などについても話をさせていただいた。
(3) 地域との連携
障害者の理解を進めるために他にも、企業実習は、本人保護者のニーズに応えつつできる限り地元の、
新規に開拓した企業で行うようにしている。一度実習を受け入れ上手く行くと、そこから障害者の理解
が広がり、実際に雇用にまで結びつく例が少なくないからである。今年度は、実習だけでなく、類型別
社会課程の「職業」の時間に週一回、近隣の店舗等で職業体験をさせていただき、生徒が様々な職種を
知り、社会のルールやマナーを学ぶ機会としている。
(下図参照)
(4)終わりに
ここ数年、毎年新しい事業所(作業所)がオープンし、本校卒業生(6~7割)が進路先として考える
選択肢が広がりつつある。それはそれで喜ばしいことであるが、一方で施設の建設に近隣住民の反対が
あったという話も耳にすることがある。これだけノーマライゼーションが進められ、合理的配慮などが
取り上げられている状況の中での悲しい現実である。
実際、地元の一般の方や企業の方々に聞いてみても「特別支援学校」に通所している児童生徒の年齢
や人数、実態、通学方法やカリキュラムの内容など、知られていないことが多く、まさしく「未知の世
界」となっていることを実感する。誤解を恐れずに言わせていただくと、人間はわからないことに対し
ては怖さを感じやすいし、想像は誤解につながりやすい部分を持っているように思う。
進路の主事として地域を回る中で、誤解を解くには正しい理解を広める必要があり、正しい理解を広
めるためにも、学校は地道に発信していくしかないという結論に達した。
本校の児童生徒の理解が進み、企業の就職先だけでなく多くの方々にかわいがっていただき、笑顔で
過ごせる場がたくさんできることを期待し、これからも発信し続ける一端を担えるよう、進路の主事と
してできることを行っていくつもりである。