ツシマヤマネコ飼育下個体の移動等について(お知らせ)

ツシマヤマネコ飼育下個体の移動等について(お知らせ)
平成 28 年 11 月 17 日(木)
環境省
・九州地方環境事務所野生生物課
課長 横田 寿男
・対馬自然保護官事務所
(対馬野生生物保護センター)
首席自然保護官 佐藤 大樹
℡0920-84-5577
(公社)日本動物園水族館協会
会長 福田 豊
生物多様性委員会委員長 佐藤
ツシマヤマネコ種別計画管理者
藤代 敏行(福岡市動物園)
℡:092-531-1968
哲也
環境省では、絶滅危惧種のツシマヤマネコの保護を図るため、「絶滅のおそれのある
野生動植物の種の保存に関する法律」
(通称「種の保存法」)に基づく保護増殖事業を実
施しています。その一環として、(公社)日本動物園水族館協会(以下、「日動水」)に
依頼し、国内の計 9 施設において飼育下繁殖事業に取り組んでいます。
このたび、この冬∼春の繁殖期に向けた「平成 28-29 年 ツシマヤマネコ繁殖(移動)
計画」を策定し、本年に 8 頭の移動を実施することとしましたのでお知らせいたします。
環境省では引き続き、日動水と連携し、関係動物園の協力を得て、ツシマヤマネコの
飼育下繁殖に取り組んで行くこととしています。
1.平成 28 年-29 年の飼育下繁殖に関する方針
・遺伝的多様性の維持の観点から繁殖ペアの組み合わせを検討する。
・飼育下繁殖第一拠点施設(福岡市動物園、西海国立公園九十九島動植物園)
では、導入したファウンダー候補中心の繁殖に取り組む。特に若いメスの繁
殖成功率が高いことから、ファウンダー候補の若いメスを優先して繁殖に取
り組む。
・飼育下繁殖第二拠点施設(名古屋市東山動植物園、京都市動物園)では、平
成 26 年生まれのメスの繁殖に取り組む。
・遺伝的多様性を維持する一つの手段として、人工繁殖推進施設(井の頭自然
文化園、対馬野生生物保護センター)で人工授精や収容された野生個体から
の生殖細胞の確保に取り組む。
・繁殖に寄与しない個体についても、展示ならびにその他研究の対象個体とし
て活用していく。
注:ファウンダーとは、野生由来で、繁殖のため飼育下に導入し、繁殖に成功した個体
を言います。
2.各施設での取組方針
上記1の方針を基に以下のとおり個体の移動を行い、飼育下繁殖拠点施設
及び人工繁殖推進施設において繁殖等に取り組む。(下線付きが移動個体)
①福岡市動物園
・メス No.48、ファウンダー候補であるメス No.74 とファウンダー候補のオス
No.51、またはファウンダーのオス No.60(繁殖経験あり)との繁殖に取り組
む。また、若齢ではあるがオス No.71 の繁殖に関する経験を積ませるため、
機会があればペアリングに使用する。
・メス No.42 については、MSI ランキングが低く、優先度は低いが、状況をみ
て繁殖に取り組む。
②西海国立公園九十九島動植物園
・ファウンダー候補であるメス No.69 とオス No.45、No.36、No.70 との繁殖に
優先的に取り組む。
・メス No.72 が、繁殖可能年齢に達したため、MSI ランキングは低いが、繁殖
に取り組む。近年初産個体での繁殖失敗が続いているので、妊娠した場合は
万全の準備を整え出産に備える。
・オス No.68 の繁殖経験向上のため、マッチングなどに利用する。
③名古屋市東山動植物園
・メス No.65 とオス No.40 との繁殖に取り組む。
・オス No.28 を展示個体とする。
④京都市動物園
・メス No.66 とオス No.41 との繁殖に取り組む。
・メスは帝王切開実施個体のため、出産時準備を綿密に行う。
⑤井の頭自然文化園
・メス No.39 とオス No.50 で、人工授精を実施する。
⑥横浜市立よこはま動物園
・メス No.10 を受け入れ、栄養管理の研究対象メス個体とする。
⑦盛岡市動物公園・富山市ファミリーパーク・沖縄こどもの国
・展示個体を維持。
⑧対馬野生生物保護センター
・繁殖拠点施設の負担軽減のため、一時的な措置として心疾患個体の No.73
を受け入れ、展示個体及び心疾患個体の No.73 を維持する。
・収容された野生個体からの採精及びその他人工繁殖に関する技術のツシマヤ
マネコへの応用を検討し、可能な範囲で実施に移す。
3.移動個体一覧
個体番号
性別
年齢
移動前
移動後
No.10
メス
15
名古屋市東山動植物園
横浜市立よこはま動物園
No.28
オス
12
横浜市立よこはま動物園
名古屋市東山動植物園
No.42
メス
9
西海国立公園九十九島動植物園
福岡市動物園
No.48
メス
7
西海国立公園九十九島動植物園
福岡市動物園
No.68
オス
2
名古屋市東山動植物園
西海国立公園九十九島動植物園
No.69
メス
3
福岡市動物園
西海国立公園九十九島動植物園
No.72
メス
1
福岡市動物園
西海国立公園九十九島動植物園
No.73
メス
1
福岡市動物園
対馬野生生物保護センター
※個体の安全確保のため移動時の取材はご遠慮下さい。
※詳細な移動日は今後各飼育園館で調整し、決定します。
※予定については変更の可能性があります。
※個体の写真提供、取材については各飼育園にお問い合わせ下さい。
(参考1)
飼育施設別ツシマヤマネコ飼育頭数(移動前・移動後)
施設名
(飼育開始年)
移動前
移動後
計
オス
メス
計
オス
メス
盛岡市動物公園
(平成 23 年)
1
1
0
1
1
0
井の頭自然文化園
(平成 18 年)
4
2
2
4
2
2
横浜市立よこはま動物園
(平成 18 年)
3
3
0
3
2
1
富山市ファミリーパーク
(平成 19 年)
2
1
1
2
1
1
名古屋市東山動植物園
(平成 23 年)
4
2
2
3
2
1
京都市動物園
(平成24年)
4
2
2
4
2
2
福岡市動物園
(平成8年)
9
3
6
8
3
5
6
4
2
7
5
2
沖縄こどもの国
(平成23年)
1
1
0
1
1
0
対馬野生生物保護センター
1
1
0
2
1
1
合計
35
20
15
35
20
15
西海国立公園九十九島動植
物園
(平成22年)
(参考2)
ツシマヤマネコ飼育下繁殖事業の概要
1 ツシマヤマネコの保護増殖事業について
ツシマヤマネコは平成6年に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する
法律(通称「種の保存法」)に基づく国内希少野生動植物種に指定され、平成7年に
同法に基づく保護増殖事業計画(平成 7 年 7 月 17 日環境庁及び農林水産省告示)を
策定し、同計画に基づく生息状況の把握、生息環境の維持・改善、飼育下での繁殖等
の保護の取組を進めています。
2 ツシマヤマネコ飼育下繁殖事業について
○飼育下繁殖事業は、保護増殖事業計画に基づき以下の目的で実施しています。
(1) 対馬の環境が改善し、
生息地で安定して生息が可能になるまでの生息域外で
の種の保存
(2) 野生個体群の保護活動の補完(野生復帰など)
(3) 科学的データを収集、解析し、生息地でのヤマネコの保護対策への応用
(4) ツシマヤマネコの現状について全国的に普及啓発を行うことで、
野生個体群
保護を推進すること
また、平成 26 年 5 月に環境省と(公社)日本動物園水族館協会(以下、
「日
動水」)の間で締結した「生物多様性保全の推進に関する基本協定書」に基
づき、日動水に各園館における飼育下繁殖事業の実施を依頼しています。
<参加している園館(H28 年9月末時点)>
○福岡市動物園、井の頭自然文化園、横浜市立よこはま動物園、富山市ファミリーパ
ーク、西海国立公園九十九島動植物園、沖縄こどもの国、京都市動物園、名古屋市
東山動植物園、盛岡市動物公園の9施設。
<飼育状況>
○ツシマヤマネコの飼育下繁殖事業は、平成8年より福岡市動物園の協力を得て開始
し、平成 12 年4月に初めて繁殖に成功、これまでに53頭が誕生。
(現在は 27 頭
が生存中)
○平成 21 年以降繁殖に成功せず、飼育下繁殖個体の高齢化が進んでいることなどか
ら、平成 25 年に7園間で計 17 頭を移動し、繁殖の可能性が高い年齢の個体を拠点
となる園に集め繁殖に取り組んだ結果、平成 26 年には福岡市動物園 2 頭、西海国
立公園九十九島動植物園 3 頭が成育し、(福岡市動物園では3頭出生したが1頭は
直後に死亡)平成 27 年には福岡市動物園で 3 頭が成育している。平成 28 年には
名古屋市東山動植物園及び京都市動物園で 2 頭ずつ出生したがいずれも出生直後
に死亡している。
○平成 28 年 10 月1日現在、9ヶ所の動物園等及び対馬野生生物保護センターにおい
て、計35個体を飼育中。