岡久宏史専務理事 - 日本下水道新技術機構

People
本機構と関わりを持つ方を紹介するコーナーです。
今回は,今年3月に専務理事に就任した岡久さんから就任し
た意気込みや展望をお伺いしました。
ピープル
専務理事 岡久宏史
■本機構の専務理事に就任された心境は
計画」を5月に策定しました。この計画では,技術開
やりがいのある時期に,やりがいのある組織の専務
発の三本柱として「下水道機能の持続性確保」,「災害
理事に就任したと思っています。
リスクへの対応力の向上」,「新たな価値の創造」を掲
今や下水道事業は,建設から管理・運営の時代に突
げました。この三本柱において策定した「中期的な取
入していますが,事業主体である自治体では財政状況
り組みの考え方」に基づき,今後の技術開発(ハード
が厳しく,執行体制も脆弱化しつつあり,整備された
とソフト)を進めていきたいと考えています。
下水道システムの適切なマネジメントが難しくなっ
個人的には,施設管理におけるロボット技術やICTの
ています。そのような状況下にあって,官民連携や
導入,PPP/PFIによる適切な管路管理の促進,不明水対
PPP/PFIなどの言葉に象徴されるように,民間企業
策,下水処理場の消費エネルギーの50%削減とそれに
を活用せざるを得ない場面が今後ますます増加してく
創エネを組み合わせたエネルギー自立型処理場の実現,
ることが考えられます。本機構は,官と民が連携して
微生物を利用した有益な資源の製造などに積極的に取
下水道事業を推進するために「産官学」の橋渡しを行
り組みたいと思っています。
う組織ですから,その果たす役割は今後ますます重要
また,新たな施策や効率的なマネジメントを推進す
になってくると思っており,やりがいのある仕事だと
るためのコーディネーター,あるいは,アドバイザリ
思っているわけです。
ー的な役割を果たす機能も持ちたいと考えています。
■機構の役割として重視したいことは
■何か課題はありますか
先ほども言いましたように,本機構を設立した原点
二つの課題があると思います。一つ目は,自治体が
に立ち返って,産官学の「橋渡し」機能を強化し,拡
どのような技術を求めているか,いわゆるニーズが判
張することが重要だと考えています。
然としないことです。管理・運営の時代ともなるとさ
機構はこれまでも官のニーズを産や学につなげ,産
らに判りづらくなっているのではないかと思います。
や学の技術を官につなげてきました。が,建設の時代
どのようにして自治体の課題を把握し,その解決に寄
からマネジメントの時代になり,個々の要素の個別最
与する技術開発の方向性を民間企業に提示し,新たな
適を検討するのではなく,今後はシステムとして全体
技術を実現するか。今の大きな課題です。
最適の解決策を目指す必要があります。
もう一つは,普及・啓発の促進です。機構には役に
そのためには,産でいえば,コンサル,建設業,プ
立つ成果が数多く蓄えられていますが,それらの成果
ラントメーカー,メンテナンス業など各業界間の横の
が対外的に知られておらず,そのため十分に活用され
連携を図ることが重要となりますし,異業種との連携
ていないのではと感じています。これら成果(技術マ
も必要となります。
ニュアルや資料)を必要としている自治体や民間企業
官については,自治体間の広域連携など横のつなが
に広く届くように発信力を強化しなければなりません。
りを強化した事業の実施をコーディネートするような
■今後の抱負を一言
役割も果たす必要があると思いますし,自治体の要望
機構でしかできないこと,機構だからできることが
を国の新たな政策に橋渡しすることも必要でしょう。
あると思います。例えば,「アセットマネジメント」
つまり,これまで進めてきた既定の枠内にとらわれ
や「地震・津波対策」,「省エネ,創エネ」の問題で困
ず,幅広に,かつ,縦横の連携も図るという発想で今
ったことがあれば,「そうだ!まず機構に相談してみ
後の橋渡しを進めなければならないと考えています。
よう!」と自治体や民間企業の方々に思われる組織に
■今後重点的に取り組みたいテーマは
したいと思います。そして,そのような期待に十分応
今年度を初年度とした五か年計画である「中期事業
えられる組織でありたいですね。
42 —— 下水道機構情報
Vol.11 No.23