多機能性層状複水酸化物ナノシート

多機能性層状複水酸化物ナノシート
Keyword : 2次元材料、水酸化物、スーパーキャパシタ、電極触媒
研究の背景
粘土鉱物一種である層状複水酸化物(LDH)は、正に帯電した層と、弱く結合した交換可能な陰
イオンとが交互に積層してできている。多くの種類の無機・有機陰イオンや、さらにはDNAを含む
複雑な生体分子を、LDHの層間に取り込むことができる。ほとんどの層状物質が負に帯電した
層と層間に陽イオンを持っていることに対し、陰イオン交換型であるLDHは独特な物質であり、ア
ニオンクレイとも呼ばれ、古くより盛んな研究が行われているが、そのほとんどはMg-Al系の機
能的には不活性な化学組成に集中していた。
研究の狙い
我々は様々な機能性の起源となる遷移金属 (Fe, Co, Ni等)を層状複水酸化物に導入し、続いて
ソフト化学反応により層1枚にまでバラバラに剥離してナノシートを合成する。LDHナノシートが
正電荷を持つカチオン性ビルディングブロックとして働き、グラフェンや酸化物ナノシートに代表
される多くの負に帯電したアニオン性機能ブロックと組み合わせて集積化、複合化できることに
着目して、特異な機能性材料の創製を目指す。
最先端研究トピックス
多様な金属組成を持つLDH結晶
を合成し、ナノシートを誘導する
六角板状結晶
ナノシート
ナノシート同士の集積により機能性ナノ複合材料を開発
文献
•
R. Ma, T. Sasaki, Accounts of Chemical Research 48, 136 (2015).
• W. Ma, R. Ma, et al., ACS Nano 9, 1977 (2015).
• R. Ma, et al., Adv. Mater., 26, 4173 (2014).
まとめ
実用化の目標
 Co2+-Al3+, Co2+-(Ni2+)-Co3+, Ni2+-Fe3+など多様な金属
組成を持つLDHナノシートを誘導することに成功した。
 高い電気容量と急速充放電特性を両立させる次世代
スーパーキャパシタへの応用
 ナノシート同士を分子レベルで交互に積層し、人工超格
子のような複合材料を形成できた。
 貴金属を代替できる安価かつ高性能な電極触媒の開発
 関連特許4件。
 高い水酸基陰イオン伝導特性を持つ無機固体電解質や
メンブレン等への応用
ナノマテリアル分野 ソフト化学グループ
馬 仁志
E-mail: MA.Renzhi●nims.go.jp
URL: http://www.nims.go.jp/softchem/index.html
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