鍛える前に 整える オガサカチームも取り組むトレーニングをクローズアップ! 読者の皆様も、オフシーズンはさまざまなトレーニングに取り組んでいることでしょう。 しかし、そもそも身体のアライメント(配列) や関節がゆがんだ状態でトレーニングを行なっても、 あまり良い効果を得られないばかりか、ケガのリスクが高まる可能性もあります。 まずは身体のアライメントを「整えて」から「鍛える」ことをめざしてはいかがでしょう。 オガサカチームのトップ選手も取り組んでいるトレーニングを紹介します。 写真=樽川智亜希 協力=オガサカスキークラブ、スキー工房ヒグチ 133 【後編】 〈リアライン〉 を使った アライメント矯正にチャレンジ! Part.1 《リアライン・バランスシューズ膝関節用》 を使ったトレーニング しています。この軸の上でバランスを保 ちながらスクワットをすることによっ 上のスクワットよりもやや広め のスタンスを取って、スクワッ トを行ないます。このときも 意識することは同様。両方の つま先を正面に向けて、膝は 第4趾の真上にキープします。 スタンスが広くなったことで、 大腿部に対する下腿の内旋 をより大きくうながす必要があ ります て、中殿筋(お尻の筋肉)や大腿部の筋 ターンが習得できます。そうすれば膝 ワイドスクワット 肉を正しく使い、大腿部に対する下腿の 先月号では、自分で身体のアライメ ントの崩れやゆがみを確認する方法や、 関節に負担のかからない屈曲荷重動作 解説=栗田興司 国体などへの出場経験 を持つレーサーでありな がら、コンディショニン グコーチやスポーツトレ ーナーとして活 動。 (一 社)日本健 康予防医学 会関節疾病予防専門部 会理事。フィジカル・コ ンディショニング・プロ ダクション(PCP)代表 内旋をうながしながら荷重する運動パ それを矯正するエクササイズを紹介し イズを正確にコントロールした動作で反 復してください。アライメントを維持す が可能になります。それぞれのエクササ る筋活動を習得するためには、 回程 10 特別な器具を使って矯正していくトレ ーニングを紹介していきます。 度の反復回数からはじめ徐々に回数を 1 ました。今回はその身体のゆがみを、 《リアライン・バランスシュー まずは、 ズ膝関節用》を使ったトレーニングで 増やし、正確に 分以上連続で実施で きるようにしていきましょう。 す。これは写真のように、第4趾(内側 から4番目の指)上にバランス軸を配置 スクワット 《リアライン・バランスシューズ膝関節用》を履いてスクワットを行な ってみましょう。つま先を完全に前に向けて、膝の位置は第4趾列 の真上にくるようにしてスクワットを行ないます。動作中はつねにバ ランスシューズが水平で、揺れないようにしてください。悪い例では 膝が内側を向いてしまうニーインとなり、大腿部に対して下腿が外 旋してしまっています。この状態で荷重を行なうと、膝関節の周囲 や内部の組織にストレスがかかり、障害の原因になってしまいます 実技=清水大 1990年生まれ、長野県 出身。 インターハイやイン カレなどで上位入賞の経 験を持ち、現在は社会人 として活動する国内のト ップレーサー。2013/14 シーズンにはファーイー ストカップ総合3位を記 録している。オガサカス キークラブ所属 実技=児玉有矢 サイドスクワット さらに大きくスタンスを取り、左右に重心を大きく移動させるスクワットを行ないます。 片方の膝が屈曲されたときに、膝が第4趾の真上にあるようにバランスをキープしてく ださい。そうすることによって、大腿部に対して下腿が内旋した状態で屈曲荷重をする 感覚を身につけることができます 1995年生まれ、長野県 出身。幼少の頃からア ルペン競技に取り組み、 全中などの全国レベル の大会で上位入賞を記 録。長野県の強化指定 選 手にも選 抜されてい る。現在は東洋大学3 年、オガサカスキーチー ム所属 134 片脚上げ 脚を交互に持ち上げ、スキーで 外脚に荷重する体勢を作りま す。外脚(支持脚)をやや屈 曲させて、正面から見て膝の位 置が第4趾の真上にくるように して、バランスシューズを水平に キープしましょう。膝が内側に 入り込むニーインになってしまわ ないようにするためには、臀部 の筋の動きが大切です。横から 見て、スネの前傾角度と上体の 前傾角度が平行になるようにし ましょう。バランスシューズを履 くことで、動作中のアライメント 不良が顕著に表われるので、正 しい関節の使い方やポジション を身体に覚え込ませることがで きます スプリットスクワット 片方の脚を後ろに引き、前に出した脚の膝に荷重屈曲して いきます。左右どちらの脚にも同様のアライメントで荷重で きるようにしましょう。動作中は肩や腰のラインを水平にキ ープして、バランスシューズを揺らさないようにしてください スクワットジャンプ 90度ジャンプ 左右に90度回転しながらジャンプし、着地の姿勢を作ります。回転することでバランス 維持の難易度が高まりますが、着地時の膝の位置は第4趾の真上にあるようにしましょ う。着地は柔らかく、膝の屈曲に合わせて下腿と上体は平行に前傾させてください 135 その場で垂直にジャンプして、膝や股関節を屈曲させなが ら柔らかく着地します。着地の瞬間に膝の位置が第4趾の 真上にあるようにすることで、滑走中の膝へのストレスを軽 減させる機能が向上します。着地時に膝がぶれないように、 着地前に空中で最適なアライメントを準備するように意識し ましょう スプリットスクワット Part.2 《リアライン・バランスシューズ足関節用》 を使ったトレーニング りながら正しくスクワット動作ができれ ば、膝を内側に入れずにスキーの真上か らインエッジに荷重することができ、膝 や腰への負担を減らしながらエッジング 内側を向いてしまうニーインの原因は、 す。先月号でもお伝えしたように、膝が 続いて、足関節の機能を向上させる 《バランスシューズ足関節用》のトレー 足関節の周囲の筋の活動制限に原因が の運動効率を向上させることができま ニングを紹介していきます。このシュー あることも考えられます。 《バランスシ 動きにチャレンジし、足関節の筋の働き ューズ足関節用》を使用してさまざまな ズは写真のように、母趾球からカカトの 外側に向かう斜めのバランス軸を配置し をうながしましょう。 ています。スキーで言うところのインエ ッジ荷重ライン。この軸でバランスを取 スクワット 《リアライン・バランスシューズ足関節用》を履いてスクワットを行ないます。 つま先を正面に向けて足部が平行になるように立ちます。しゃがんだとき に膝の位置が第4趾の真上に位置するようにします。動作中はバランスシ ューズの外側が床につかないように、スネの外側の筋肉(腓骨筋)を働 かせて、バランスシューズが水平になるようにします 膝関節用のバランスシューズと同じように、片 方の脚を後ろに引き、前に出した脚の膝を屈 曲させてスクワットを行ないます。膝関節用の トレーニングと同様に、膝を第4趾の真上に キープしつつ、バランスシューズが水平になる ように、下腿の筋肉によって足関節をコントロ ールしましょう 片脚上げ 交互に脚を持ち上げ、外 脚 荷重のポジションを作ります。 支持脚の膝の位置が第4趾 の真上にあるようにしながら、 足首がぐらつかないようにコン トロールします。スネの前傾 に合わせて、上体を前傾させ ることも、理想的な下肢への 荷重姿勢を憶えるためのポイ ントです。これができるように なれば、スキーでも膝をニー インさせずに、しっかりとイン エッジに乗ることができるよう になります 136 最後に、骨盤や胸郭など、体幹のゆ がみを整える《リアライン・コア》を 使っていきましょう。胸郭ユニットと 骨 盤 ユ ニッ ト と 呼 ば れ る パ ー ツ が あ り、それぞれを身体に装着し、ベルト に よって 適 度 に 左 右 対 称 に 圧 迫 し ま す。その状態で簡単な体操をすること で、体幹のゆがみが整えられます。機 械的に左右対称に圧迫をするので、骨 盤や胸郭のゆがみを左右の圧迫感の差 差が運動中に改善されて動きが快適に で自覚することができ、それらの左右 1 なっていく感覚を感じ取ることができ 10 ます。それぞれのエクササイズを ~ 2分程度実施し、トータルで 分の運 動時間が目安です。骨盤内の関節や胸 郭のゆがみに起因する腰痛予防に効果 的です。 Part.3 《リアライン・コア》 を使ったトレーニング 深呼吸&腕上げ 《リアライン・コア》を装着して、まずは深呼吸や腕の上げ下げを行なってみましょう。深呼吸によって胸 郭、とくに下側の胸郭が大きく動きます。胸郭ユニットによる緩やかな圧迫感によって胸郭の動きの左 右差を感じることができます。深呼吸時に肋骨がうまく横に広がらない側は圧迫感が強く感じられます が、しばらく続けていると胸郭ユニットの圧迫によって左右差が解消されていきます。胸郭の動きが左 右対称化されることで背中や肩の動きが拡大し、腰への負担が軽減されます。腕の上げ下げ運動も同 様に、運動中の胸郭の左右差が解消されるまで実施してください。胸郭の可動性が増してベルトが緩く 感じられたら、少しだけベルトを締めてふたたび左右対称の圧が感じられるように調整します 足踏み 交互に足踏みをしながら、左右の骨盤の 圧迫感を確かめましょう。圧迫感が強く 感じられる側の寛骨が過剰に前傾してい ることになり、滑走時の荷重伝達効率の 低下につながります。運動をしながら左右 差が解消、または減少することを確認し ながら反復してください 胸郭の回旋 左右スライド つま先を正面に向けたまま、骨盤を左右に移動させ て、左右の移動量に差がないかどうかを確認しまし ょう。重心の移動にともない骨盤や胸郭も動き、そ こにゆがみが生じている場合、それぞれのユニットで 圧迫感に左右差が感じられます。とくに圧迫感が強 く感じる方向を中心に、左右差が解消するまで動作 を反復します。運動後にラチェットを確かめて、緩み が生じている場合は、圧迫感が左右対称になるよう にラチェットを締めてベルトに張力を加えます 背骨を軸に胸郭を左右に回旋させてみましょ う。この際、胸郭ユニットや骨盤ユニットの向 きが変わらないようにして上部の胸郭が水平 にどのくらい回旋するかを確かめます。回旋が しづらく、回旋時に腕組みで形作った四角形 がゆがんだり、胸郭の圧迫感が強く出る側を 確かめて、そちら側を中心に回旋運動を繰り 返してください。左右どちらにも同じように回 旋できるように整えていきましょう 前屈と後屈で体幹の動きを確認してみましょ う。胸郭や骨盤のアライメントに左右差があ ると、腰椎の関節面にストレスが生じ、とく に後屈が制限されたり、痛みが生じます。 《リ アライン・コア》を装着すると即座に骨盤が 安定し、胸郭の動きの左右差が解消される ので、可動域が広がることを確認できます。 立位の荷重位で実施することがポイントで、 整えられた骨格を維持する筋活動パターン が学習されるため、 《リアライン・コア》を外 したあともその効果が持続します 前屈&後屈 要だと考える動きやバランスを身につ むずかしいものです。いかに自分に必 ス キ ー に お け る 陸 上 ト レ ー ニン グ は、その効果や影響を体感することが と言えます。このことは障害予防にも できるフィードフォワードがより重要 予測して理想的なポジションをキープ ョンに修正するには間に合わないので、 ハイスピードの滑走中に最適なポジシ けても、それが正しいものなのかどう 大切だと考えています。 に効果を発揮していることを実感して かということは、実際に雪の上で滑っ きています。また、技術選に出場する てみないとわからない。もし身体のゆ ると、雪の上でいちいち課題を確認し、 デモチームもこのトレーニングを取り オガサカチームでは、国内のトップ レーシングチームが、この〈リアライ ふたたび陸上トレーニングでそれを修 入れ始めています。トップアスリート がみを持ったままトレーニングを重ね 正したり、補ったりしなければなりま だけではなく、一般のスキーヤーの方 実際に選手のレベルアップやケガ予防 せん。しかも、スキーの場合、オフシ にも、上達とケガの予防の両面で重要 ン〉を使ったトレーニングを取り入れ、 ーズンの間はなかなか滑ることができ キーヤーの方々に、トレーニングの意 ぼしてしまうかもしれません。そうす ないという制約もあります。 味やその方向性を、一度考えてもらい ていたら、それが滑りにも悪影響を及 そんなこともあり、 〈リアライン〉を 使ったトレーニングには注目していま たいと思っています。 なことだと感じているので、多くのス 使用したトレーニングでは、関節や骨 す。たとえば、 《バランスシューズ》を 格に対して理想的な荷重ポイントが自 覚できます。理想の荷重軸が崩れると シューズがぐらついて教えてくれる。 つまり、いかにぐらつかないように最 適なポジションに荷重するかを予測し た筋肉や身体の使い方、いわゆる「フ ィードフォワード」のトレーニングが 可能なのです。一般的に揺れながら不 安定なバランスを修正するトレーニン グは、 「フィードバック」のトレーニン グです。しかし、フィードバックでは 《りアライン・バランスシューズ》 、 《リアライン・コア》 の情報は以下のWEBサイトから http://www.glabshop.com/realine_core/ v i e w I n t e r t r S h o 骨盤ユニットに両手をかけて骨盤を回転させ ます。骨盤ユニットの圧迫によって骨盤輪が 安定し、股関節周囲の筋の不必要な緊張 が解消されることで、驚くほどスムースに股 関節が回旋することを実感できます。この動 作を習得することで、膝に対して左右にひね るストレスを与えない股関節の回旋可動性を 引き出すことが可能です。動作中は母趾球 が浮き上がらないようにします 骨盤の回旋 フィード“フォワード” トレーニングの重要性 田島あづみ(オガサカ・レーシングチームコーチ) 138
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