(4-3)配当課税の仕組み

配当課税の仕組み
●非居住者に対する課税関係の概要
非居住者の区分
所得の種類
恒久的施設
帰属所得※1
その他の
所得
恒久的施設
を有しない
者
【課税対象外】
【総合課税※3】
所得税の
源泉徴収※2
無
無
【総合課税※3(一部)】
【課税対象外】
④土地等の譲渡による所得
20.42%
10.21%
源泉徴収と課税方法
式
無
③組合契約事業利益の配分
-3
株
(事業所得)
①資 産の運用・保有により生
ずる所得
(⑦から⑭に該当するものを除
く)
②資 産の譲渡により生ずる所
得※4
恒久的施設を有する者
4
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
■ 上場株式等の配当 上場株式等の配当に対しては、20.315
分離課税、残りの部分を総合課税にする
%(所得税15.315%・住民税5%)の源
ことはできません。
泉徴収が行われます(配当所得の収入す
総合課税を選択した場合、配当控除(93
20.42%
べき時期は、配当を支払う法人の株主総
ページ参照)が適用されます。一方、申
⑥不動産の賃貸料等
20.42%
会や取締役会などの決議があった日とな
告分離課税を選択した場合、上場株式等
⑦利子等
15.315%
ります。くわしくは92ページ参照)。
の譲渡損との損益通算ができますが、配
⑧配当等
20.42%
源泉徴収の後、上場株式等の配当所得
当控除の適用はありません。
⑨貸付金利子
20.42%
について確定申告をする場合には、総合
一般株式等の配当等や大口株主が受け
課税または申告分離課税のいずれか一方
取る上場株式等の配当等について総合課
を選択します。確定申告をしない場合に
税が適用されている場合でも、上場株式
は、源泉徴収のみで課税関係が終了する
等の配当等(大口株主の受取配当等を除
申告不要制度を選択することができま
く)について、申告分離課税を選択する
す。
ことも可能です。
ただし、上場株式等の配当等であって
◆申告不要を選択した場合
も、大口株主(内国法人の発行済株式数
申告不要を選択した場合、源泉徴収の
の3%以上を保有している個人株主)が
みで課税が終了するため、実質的に源泉
支払いを受けるものについては、課税上
分離課税と同じといえます。申告不要の
は一般株式等の配当と同様の扱いとな
利用に手続きは必要ありません。単にそ
り、源泉徴収税率は20.42%(所得税のみ)
の配当を確定申告しなければよいので
で原則として総合課税となります。
す。
◆確定申告する場合
申告不要については、銘柄ごと、1回
確定申告をする場合、申告する上場株
に支払いを受ける配当等の額ごとに選択
式等の配当等の全額について、総合課税
できます。源泉徴収口座内に受け入れた
と申告分離課税のいずれかを選択しなけ
配当等については、口座ごとに選択でき
ればならず、配当等のうちの一部を申告
ます。
【源泉徴収の上、
総合課税※3】
⑤人的役務提供事業の所得
⑩使用料等
【源泉徴収の上、
総合課税※3】
⑪給 与その他人的役務の提供
に対する報酬、公的年金等、
退職手当等
20.42%
20.42%
【源泉分離課税】
⑫事 業の広告宣伝のための賞
金
20.42%
⑬生 命保険契約に基づく年金
等
20.42%
⑭定期積金の給付補填金等
15.315%
⑮匿 名組合契約等に基づく利
益の分配
20.42%
⑯その他の国内源泉所得
【総合課税※3】
【総合課税※3】
無
※1 恒久的施設帰属所得が、①から⑯の国内源泉所得に重複して該当する場合があります。
※2 源泉徴収税率のうち一定の所得に係るものについては、軽減又は免除される場合があります。
※3 総合課税の対象とされる所得のうち一定のものについては、申告分離課税又は源泉分離課税の対
象とされる場合があります。
※4 ② 資産の譲渡により生ずる所得のうち恒久的施設帰属所得に該当する所得以外のものについて
は、所得税法令で規定するもののみが課税対象です。
90
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91
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■ 一般株式等の配当 ● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
総合課税と配当控除
20.42%(所得税のみ)の源泉徴収が行わ
の特別徴収は行われず、総合課税となり
配当所得(源泉徴収される前の配当金
分は所得税5%・住民税1.4%)です。
れます。一般株式等の配当は、所得税に
ます。所得税において確定申告を行って
額、負債利子がある場合は負債利子控除
例えば、配当所得以外の課税所得金額
ついて1銘柄あたり1回に受ける配当額
いない場合には、住民税について確定申
後の金額)について総合課税を選択した
が930万円の人に150万円の配当所得が
告が必要となります。
場合、配当金額に応じた税額控除を受け
あるとすると、1,000万円以下の部分に
ることができます。これを配当控除とい
対応する配当所得70万円についてはその
います。申告分離課税・申告不要を選択
12.8%の8.96万円、それを超える部分に
した場合は、配当控除の適用はありませ
対応する配当所得80万円についてはそ
ん。
の6.4%の5.12万円、全体で14.08万円を
配当について源泉徴収された所得税と
算出税額から差し引くことができます。
配当控除額が、納付税額の計算上、控除
配当控除を受けるために総合課税を選択
されます。
するか、申告分離課税・申告不要を選択
配当控除額は、配当所得の12.8%(所
するかについては、次ページのQ&Aを
得税10%・住民税2.8%。課税総所得金
ご覧下さい。
が10万円(年1回配当の場合)以下のとき
●配当の課税方法と源泉徴収
平成26年1月1日〜平成49年12月31日
上場株式等
※2
所得税・住民税
申告不要か総合課税・申告分離課税の選択制。申告不要は支払いを受ける配当ご
とに選択可能※1。確定申告をする場合には、その申告をする配当のすべてについ
て、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択。
源泉徴収
(特別徴収)
一般株式等
所得税
所得税15.315%・住民税5%
※3
以下 ・・・・・総合課税と申告不要の選択
◇1銘柄1回10万円(年1回配当の場合)
◇1銘柄1回10万円(年1回配当の場合)※3超 ・・・・・総合課税
源泉徴収
住民税
特別徴収
所得税20.42%
総合課税
なし
※1 源泉徴収口座に配当を受け入れる場合は、口座ごとに申告不要を選択できます。
※2 大口株主が受ける国内上場株式等の配当は、一般株式等の配当への課税と同じ扱いになります。
※3 配当額は、次の算式により計算した金額が基準となります。
配当の計算期間(直前の配当に関する基準日の翌日から今回の配当に関する基準日
10万円 × までの期間)の月数(12ヵ月超の場合は12とし、1ヵ月未満の場合は1とする)
12
配当所得の計算と収入時期
◆配当所得の計算
のうちその年に元本を有していた期間に
株式の配当による配当所得の金額は、
対応する金額を控除した額が、配当所得
原則として、その年に受け取った配当金
の金額となります(確定申告する場合)
。
額がそのまま配当所得の金額となります。
◆配当所得の収入すべき時期
ただし、株式を取得するために要した
配当所得の金額は、配当を支払う法人
借入金の利子(譲渡した株式等を取得す
の株主総会その他正当な権限を有する機
るために要した借入金の利子は除きま
関の決議があった日に収入があったもの
す)がある場合には、その借入金の利子
とすることとされています。
(注2)
額等(注1)
が1,000万円を超えている部
●配当控除額の計算例
1,000 万円
課税所得金額
1,000 万円以下
配当所得を
加えると
1,000 万円超
その他の所得
800 万円
その他の所得
930 万円
16税金読本_p065-120_04.indd 92-93
配当
150 万円
ⓐ
ⓑ
ⓐ=70 万円
ⓑ=80 万円
1,000 万円超
その他の所得
1,050 万円
配当控除額
配当控除率
配当
150 万円
(注1)課税総所得金額等が1,000万円を超えるか
どうかは、土地・建物等の課税譲渡所得、
株式等にかかる課税譲渡所得等、申告分
離課税を選択した上場株式等にかかる課
税配当所得の金額、先物取引にかかる課
税雑所得等の金額を課税総所得金額に加
えた合計額によることになります。課税
退職所得や課税山林所得の金額は含まれ
92
式
にのみ申告不要を選択できます。住民税
株
一般株式等の配当に対する税金は、
配当
150 万円
10%
所得税
住民税
2.8%
所得税
ⓐ について
ⓑ について
10%
5%
住民税
ⓐ について 2.8%
ⓑ について 1.4%
所得税
住民税
5%
1.4%
所得税
住民税
合計
所得税
ⓐ について
ⓑ について
15 万円
4.2 万円
19.2 万円
7 万円
4 万円
住民税
ⓐ について 1.96 万円
ⓑ について 1.12 万円
14.08 万円
合計
所得税
住民税
合計
7.5 万円
2.1 万円
9.6 万円
ません。本書では、これらを「課税所得
金額」といいます。
(注2)所 得税と住民税では、扶養控除などの人
的控除額に差があることから、同じ収入
金額でも住民税の方が、通常、課税所得
金額は大きくなりますが、ここでは、便
宜的に同じ金額として取り扱っています。
93
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総合課税と申告不要の選択
●総合課税と申告不要の比較
[1]上場株式の配当、日本株ETFの分配金
課税所得金額
所得税(復興特別
住民税
所得税除く) 復興特別所
正味税率
課税
得税込みの
の合計
方法の
正味
配当 正味 所得税の正
配当
税率
税率
税率 (①+②) 選択
控除率 税率 味税率(①)
控除率
(②)
195万円以下 5%
0%
0%
7.2%※
195万円超
330万円以下 10%
0%
0%
7.2%
330万円超
695万円以下 20% 10% 10%
10.21%
695万円超
900万円以下 23%
13%
13.27%
900万円超 1,000万円以下 33%
23%
23.48%
1,000万円超 1,800万円以下 33%
28%
28.59%
35%
35.74%
40%
40.84%
2.8% 7.2%
17.41%
総合課税
が有利
30.68%
式
20.47%
10%
上場株式等の配当等につい
配当控除を受けられますので、総合
ては、総合課税・申告分離
課税と申告不要の選択基準も上場株
課税・申告不要の選択制になってい
式の配当の場合と同じになります。
ます。申告分離課税を選択した場合、
損益通算をすることができます。
◆公募株式投資信託、REIT 、
日本株以外に投資するETFの分
配金の場合
いずれの適用も受けない場合は、
公募株式投資信託の分配金につい
[2]公募株式投資信託(非株式割合・外貨建割合がともに50%以下)
総合課税か申告不要のいずれかを選
ては、その商品の非株式割合および
の分配金
択するのが有利になるものと考えら
外貨建割合によって、配当控除を適
れます。ここでは、総合課税と申告
用できる金額が変わってきます
不要の2つについて商品別にどちら
(171ページ参照)
。申告分離課税を
その年や過年度の株式等の譲渡損と
が有利かを検討します。
選んだ場合の正味税率は変わりませ
なお、ここでは単純な税率の比較
んが、総合課税を選んだ場合の税率
を紹介しますが、申告不要を選択し
は、非株式割合および外貨建割合に
た配当等が合計所得金額などに含ま
よって表[2]〜表[4]のように
れないのに対し、総合課税を選択し
異なります。
た配当等はこれに含まれる点にも注
REITや 日 本 株 以 外 に 投 資 す る
意が必要です(108ページ参照)
。
ETFの分配金は、配当控除を受け
◆上場株式の配当、日本株ETF
の分配金の場合
られませんので、
正味税率は表
[4]
上場株式の配当について、総合課
もっとも、これらの商品について
税と申告不要を選んだ場合の正味税
の総合課税と申告不要のいずれが有
率を比較すると、概ね右ページの表
利かの判断基準は、
表
[2]
〜表
[4]
[1]のようになります。課税所得
のどの場合でも同じです。課税所得
金額が695万円以下ならば総合課税
金額が330万円以下ならば総合課税
が有利、695万円超ならば申告不要
が有利、330万円超ならば申告不要
が有利となります。
が有利となります。
日本株に投資するETFの分配金
は、上場株式の配当の場合と同額の
94
16税金読本_p065-120_04.indd 94-95
のようになります。
1,800万円超 4,000万円以下 40%
4,000万円超
45%
5%
株
上場株式の配当について、総合課税とすべきか申告不要
とすべきか迷っています。どのようにして判断すればよ
いのでしょうか? また、投資信託やETFの分配金は、
上場株式の配当の場合と同じと考えてよいのでしょう
か?
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
37.19%
1.4% 8.6%
44.34%
申告不要
が有利
49.44%
※ 配当所得に係る税額から控除し切れない分は、他の所得に係る税額から控除します。
(注1) [1]〜[4]の表において、配当控除以外の税額控除はないものとして計算しています。
(注2) [1]〜[4]の表において、0.01%未満の端数が出る場合は四捨五入により0.01%単位
で表示しています。
課税所得金額
所得税(復興特別
住民税
所得税除く) 復興特別所
正味税率
課税
得税込みの
方法の
正味 の合計
所得税の正
配当 正味
配当
税率
税率
税率 (①+②) 選択
控除率 税率 味税率(①)
控除率
(②)
195万円以下 5%
0%
0%
8.6%
195万円超
330万円以下 10%
5%
5.11%
13.71%
330万円超
695万円以下 20% 5% 15%
15.32%
695万円超
900万円以下 23%
18%
18.38%
900万円超 1,000万円以下 33%
28%
28.59%
1,000万円超 1,800万円以下 33%
30.5%
31.14%
1,800万円超 4,000万円以下 40% 2.5% 37.5%
38.29%
4,000万円超
43.39%
45%
42.5%
1.4% 8.6%
総合課税
が有利
23.92%
26.98%
10%
37.19%
40.44%
0.7% 9.3%
申告不要
が有利
47.59%
52.69%
[3]公募株式投資信託([2]・[4]以外)の分配金
課税所得金額
所得税(復興特別
住民税
所得税除く) 復興特別所
正味税率
課税
得税込みの
の合計
方法の
正味
配当 正味 所得税の正
配当
税率
税率
税率 (①+②) 選択
控除率 税率 味税率(①)
控除率
(②)
195万円以下 5%
2.5%
2.55%
11.85%
330万円以下 10%
7.5%
7.66%
16.96%
330万円超
695万円以下 20% 2.5% 17.5%
17.87%
695万円超
900万円以下 23%
20.5%
20.93%
900万円超 1,000万円以下 33%
30.5%
31.14%
1,000万円超 1,800万円以下 33%
31.75%
32.42%
1,800万円超 4,000万円以下 40% 1.25% 38.75%
39.56%
4,000万円超
44.67%
195万円超
45%
43.75%
0.7% 9.3%
総合課税
が有利
27.17%
30.23%
10%
40.44%
0.35%
9.65
%
42.07%
申告不要
が有利
49.21%
54.32%
95
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● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
譲渡損失と配当所得との損益通算・繰越控除
[4]公募株式投資信託(非株式割合・外貨建割合のいずれかが75%超)
、
日本株以外のETF 、REITの分配金
課税所得金額
所得税(復興特別
住民税
所得税除く) 復興特別所
正味税率
課税
得税込みの
の合計
方法の
正味
配当 正味 所得税の正
配当
税率
税率
税率 (①+②) 選択
控除率 税率 味税率(①)
控除率
(②)
◆(1)損益通算の範囲
申告分離課税を選択した上場株式等の
す)が合計所得金額に含まれます。
配当・公募株式投資信託の収益分配金等
損益通算が可能な範囲を示すと、以下
については、上場株式等の譲渡損と通算
の図表の通りです。
することができます。
申告不要や総合課税を選択した場合は
申告分離課税を選択した場合も、総合
控除できません。
課税を選択した場合と同様に、上場株式
一般株式等の譲渡損を株式等の配当か
5%
5.11%
15.11%
195万円超
330万円以下 10%
10%
10.21%
20.21%
330万円超
695万円以下 20%
20%
20.42%
30.42%
695万円超
900万円以下 23%
23%
23.48%
33%
33.69%
1,000万円超 1,800万円以下 33%
33%
33.69%
43.69%
1,800万円超 4,000万円以下 40%
40%
40.84%
50.84%
等の配当等は、「合計所得金額」(39ペー
ら、上場株式等の譲渡損を一般株式等の
4,000万円超
45%
45.95%
55.95%
ジCheck Point ! 参照)に含まれること
配当から控除することはいずれもできま
になります。損益通算が行われる場合、
せん。
0%
45%
10% 0%
10%
33.48%
43.69%
申告不要
が有利
◆課税所得金額別のまとめ
ては総合課税を選択し、公募株式投
課税所得金額別にまとめると、表
資信託やREIT、日本株以外に投
[5]の通り、330万円以下であれば、
資するETFの分配金については申
すべての商品の配当等について総合
告不要を選択した方が有利です。た
課税を選択した方が有利、695万円
だし、源泉徴収ありの特定口座に配
超であれば、すべての商品の配当等
当・分配金を受け入れている場合
について申告不要とした方が有利と
は、特定口座単位で申告の有無を選
なります。
択することとなり、1銘柄・1回の
悩ましいのが、課税所得金額が
配当・分配金ごとに申告の有無を選
330万円超695万円以下の場合です。
択することはできないので注意が必
この場合は、上場株式の配当や日本
要です。
株に投資するETFの分配金につい
[5]まとめ表
課税所得金額
上場株式の配当、 日本株ETFの分配金
195万円以下
195万円超
330万円以下
330万円超
695万円以下
695万円超
900万円以下
900万円超
1,000万円以下
1,000万円超
1,800万円以下
1,800万円超
4,000万円以下
総合課税が有利
申告不要が有利
公募株式投資信託、REITの分配
金、日本株以外のETFの分配金
総合課税が有利
式
900万円超 1,000万円以下 33%
総合課税
が有利
株
195万円以下 5%
損益通算後の金額(利益の場合に限りま
●損益通算の範囲
利益
損失
上場株式等
一般株式等
公募株式投資信託
譲渡益 配当等 譲渡益 配当等 期中分配金 解約・償還損 譲渡益
上場株式等の譲渡損
○
○
×
×
○
○
○
一般株式等の譲渡損
×
×
○
×
×
×
×
公募株式 解約・償還損
投資信託 譲渡損
○
○
×
×
○
○
○
○
○
×
×
○
○
○
◆(2)損益通算の順序
上場株式等の譲渡損失の損益通算を行
等の配当等があるときには、次の順序で
う場合に、上場株式等の譲渡による所得
控除の対象とすることとされています。
および申告分離課税を選択した上場株式
①上場株式等の譲渡による所得
②申告分離課税を選択した上場株式等の配当等
◆(3)繰越控除
申告不要が有利
上場株式等の譲渡損については、同じ
算することが認められます(注)。
年の上場株式等の配当等だけでなく、翌
繰越控除の順序については、99ページ
年以降3年間の上場株式等の配当等と通
Check Point ! を参照して下さい。
4,000万円超
(注)通 算する前の上場株式等の配当等の金額が
「合計所得金額」(39ページCheck Point ! 参
96
16税金読本_p065-120_04.indd 96-97
照)に含まれます。
97
16.10.31 4:51:43 PM
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
◆(4)損益通算・繰越控除と適用税率
上場株式等の譲渡損失を繰越控除する場合の取扱い
例えば、上場株式等の配当(申告分離
繰越控除の適用がある場合、つまり、
課税)が年150万円あり、他に上場株式
前年以前から繰り越されてきた上場株式
等の譲渡損が60万円ある場合、控除後の
等の譲渡損失がその年の上場株式等の譲
上場株式等の譲渡所得および配当所得等があり、平成25年分から平成27年
配 当90万 円 に 対 し て20%( 所 得 税15
渡所得等や配当等から控除しきれた場合
分の各年から繰り越された上場株式等の譲渡損失を控除する場合の取り扱い
% ・住民税5%)の税率が適用されま
には、その控除後の金額に対して、
20%
については以下のようになります。
す。税負担は18万円(=90万円×20%、
(所得税15% ★・住民税5%)の税率が
★
株
他に復興特別所得税)となります。
この場合、平成25年に発生した損失から順次控除にあてていきます。また、
繰越損失を控除する際には、譲渡益に限らず、上場株式等の配当からも控除
適用されます。
ます(注)。
総合課税、申告分離課税、申告不要の比較
(上場株式等の配当等)
確定申告をする
総合課税
負債利子控除
税率
●繰り越された各年の上場株式等の譲渡損失の金額
確定申告をしない
申告分離課税
配当控除
あり
上場株式等の譲渡
損失との損益通算
なし
なし
20%(所得税15%★・ 下記源泉徴収税率と
住民税5%)
同じ
なし
あり
平成25年発生分
平成26年発生分
平成27年発生分
500,000円
200,000円
100,000円
(申告不要制度適用)
あり
超過累進税率
式
することが可能です。その際、繰り越した損失は、次の①→②の順に控除し
特定口座の場合は口座
内で損益通算可能
扶養控除等の判定
合計所得金額に含ま 合計所得金額に含ま 合計所得金額に含ま
れない
れる
れる※
源泉徴収税率
所得税 15.315%
住民税 5%
※ 上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得との損益通算の特例の適用を受けている場合にはその
適用後で、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けている場合にはその適用前の金額
●平成28年分の株式等の譲渡所得等および申告分離課税を選択した上場株式
等の配当所得等の金額
①株式等の譲渡所得等
②申告分離課税を選択した上場株式等の
配当等
700,000円
200,000円
①株式等の譲渡所得等
700,000円
平成25年分の損失
500,000円
平成26年分の損失
200,000円
②申告分離課税を選択した
上場株式等の配当等
200,000円
98
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平成27年分の損失 100,000円
申告分離課税を選択した
上場株式等の配当等 100,000円
99
16.10.31 4:51:43 PM
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
みなし配当
②発行している株式が2種類以上の場合
自己株式取得等の直前に 自己株式取得に応じた株主等が
おける自己株式取得等に 有していた取得を行う株式と
(A)= 係る株式と同じ種類の × 同じ種類の株式に係る株式数
株式に係る資本金等の
その種類の株式の総数
(注)
額(種類資本金額)
みなし配当は、法人に留保されていた
みなし配当に対する課税方法は、通常
利益が、企業組織再編や自己株式取得な
の配当と基本的に同じです。
ただし、
みな
ど一定の事由を契機として、その法人の
し配当に関しては、その計算期間は12ヵ
株主に移転したと考えられる場合に発生
月と取り扱われます。
したがって、
大口株
します。具体的には、以下の事由に伴い
主が保有する上場株式等に係るみなし配
株主に対して交付される金銭等の額が、
当や、一般株式等に係るみなし配当に関
その交付の基因となった株式に対応する
しては、1回当たりのみなし配当金額が
(2)株式譲渡益の算出方法
式の譲渡代金となります。この譲渡代金
資本金等の額を超える場合の、その超え
10万円以下である場合に限り、申告不要
株主が発行法人から交付される金銭等
が、譲渡した自己株式の取得価額を超え
る部分の金額をいいます。
を選択できることとなります。
のうち、みなし配当以外の部分、すなわ
る場合には、その超過額が株式の譲渡益
ち資本金等の額から支払われる金額が株
となります。
③資本の払戻し(剰余金の配当のうち分割型分割によるもの以外のもの)
または解散による残余財産の分配
④自 己の株式の取得(金融商品取引所の開設する市場における購入によ
る取得等を除く)
例えば、以下のような資本構成のA社(発行済株式数4,000万株。全て普通株)
が1株1,000円で600万株の自己株式を取得した場合、自己株式の取得に応じた株主
の1株当たりのみなし配当額および譲渡損益は次のようになります(自己株式の取
得に応じた株主の取得価額は500円とします)。
A社の純資産の部の株主資本
⑤社員の退社又は脱退による持分の払戻し
1資本金
2資本剰余金
⑴資本準備金
⑵その他資本剰余金
3利益剰余金
⑴利益準備金
⑵その他利益剰余金
任意積立金
繰越利益剰余金
4自己株式
⑥組織変更(組織変更をした法人の株式以外の資産が交付されるものに限る)
◆ みなし配当と譲渡益の計算方法
(1)みなし配当の算出方法
交付された金銭
その法人の資本金等の額のうち、
みなし配当額 = その他の資産の − 金銭等の交付の基因となったその
価額の合計額
法人の株式に対応する部分(A)
上記計算式の(A)は、株式発行法人
2種類以上の株式を発行しているかによ
が1種類のみの株式を発行しているか、
り、次のように計算方法が異なります。
式
②分割型分割(適格分割型分割を除く)
株
①合併(適格合併を除く)
(注)当該価格が0以下の場合は0
株主資本合計
自己株式取得直前
200億円
自己株式取得直後
200億円
80億円
20億円
80億円
20億円
40億円
40億円
160億円
0
160億円
▲60億円
500億円
440億円
(注)設例の簡素化のため、当期利益や配当の支払は考慮していません。
◇みなし配当額の計算
・取得資本金額=(200億円+80億円+20億円)÷4,000万株=750円
①発行している株式が1種類のみの場合
自己株式取得に応じた
自己株式取得等の直前に
(A)= おける発行法人の資本金等 × 株主等が有していた株式数
(注)
の額(取得資本金額)
発行済株式等の総数
100
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・1株当たりのみなし配当額=1,000円−750円=250円
◇譲渡損益の計算
・1株当たりの譲渡代金=1,000円−250円(みなし配当額)=750円
・1株当たりの譲渡損益=750円−500円=250円
101
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(250円)
取得資本金額
750円
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
●個人株主に対して資本の払戻し
(資本剰余金の減少)
があった場合の課税関係
みなし配当=250円
譲渡益=250円
◆ 相続した非上場株式のみなし配当課税の特例
相続または遺贈(相続等)により取得
した非上場株式を発行会社へ譲渡し、か
なし配当ではなく、譲渡所得として課税
・相 続開始日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経
過する日までの間に発行会社に譲渡するものであること
・平成16年4月1日以後に相続等により取得した株式であること
◆ 資本剰余金を原資とする配当(資本の払戻し)があった場合の課税関係
資本剰余金を原資とする配当(「みな
戻しがあった場合、その払戻しがあった
し配当」部分を除く)については、株式
日(その払戻しに係る剰余金の配当がそ
等に係る譲渡所得等の収入金額とみなさ
の効力を生ずる日)以後の当該株式に係
れます。
る取得価額については、当該株式を発行
当該資本の払戻しの金額から取得費を
した法人の純資産減少割合に基づき、取
控除して譲渡所得等が発生する場合、確
得価額の調整(減額)を行います(103
定申告が必要になります(注)。
ページ参照)
。特定口座で保有する場合
また、保有する株式について資本の払
は、証券会社が調整します。
16税金読本_p065-120_04.indd 102-103
B
取得価額
○ 株式等に係る譲渡所得等の金額
・相続等により取得した株式で相続税があること
102
A
株式等に係る譲渡
所得等の収入金額
とみなされる金額
(申告分離課税)されます。
つ、次のすべてに該当する場合には、み
(注)資本の払い戻しが特定口座内の上場株式に係
るものだったとしても、資本の払い戻しに伴
って発生した譲渡所得等は、一般口座におけ
る譲渡所得等とみなされ、原則として確定申
告が必要です(201ページ参照)。ただし、例
えば、特定口座(源泉徴収選択口座)のみで
株式の取引を行っている給与所得者(給与を
1か所から受けていて、その給与の収入金額
C
株式等に係る
譲渡所得等の金額
式
資本金等の
金額から
なる部分
①
交
付
を
受
け
る
金
銭
等
②
みなし配当の金額
株
自己株式の
取得価額
500円
資本金等の
金額以外の
金額から
なる部分
1442443 1444444444244444444443
1,000円
1 4 444444 4 2444444444 3
自
己
買株
取式
価の
格
1442443 1442443
が2,000万円以下である者等に限る)が、当
該源泉徴収口座での取引につき申告不要制度
を選択し、かつ、資本の払戻しによる株式等
に係る譲渡所得等の金額を含む所得金額(給
与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円
以下の場合などは、確定申告を行う必要はあ
りません(48ページ参照)。
A株式等に係る譲渡 ①資本の払戻しにより
所得等の収入金額 = 交付を受ける金銭等 − ②みなし配当の金額
とみなされる金額 の価額の合計額
B取得価額 = 旧株の従前の取得価額の合計額 × 純資産減少割合
C株式等に係る
A株式等に係る譲渡所得等の
=
− B取得価額
譲渡所得等の金額 収入金額とみなされる金額
(注1) 資本の払戻しに係る「純資産減少割合」は、次の算式により算出した割合(小数点
以下3位未満は切上げ)をいいます。
《算式》
その法人の資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額
純資産減少割合=
その法人の負債(新株
その法人の資産
− 予約権に係る義務を
の帳簿価額
含む)の帳簿価額
※この純資産減少割合は、資本の払戻しを行った法人(株式の発行法人)から、そ
の払戻しを受けた株主に対して通知されます。
(注2) Cの金額は、Bの金額がAの金額を上回る場合は、譲渡損失の額となります。
○ 取得価額の調整
(資本の払戻しがあった後のその有する株式
(旧株)
の取得価額の調整)
〔
〕
旧株1株当た 旧株1株の従前
旧株1株の従前
純資産
=
−
×
りの取得価額 の取得価額
の取得価額
減少割合
103
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