O1-1 O1-3 コンポジットメッシュを用い腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復 術を施行した1例 1 1 1 1 北條 誠至 、山本 世怜 、三澤 健之 、秋葉 直志 、 2 矢永 勝彦 1 脾臓嵌頓を伴う遅発性外傷性横隔膜ヘルニアの1例 1 1 2 東京慈恵会医科大学附属柏病院 外科、 東京慈恵会医科大学外科学講座 症例は80歳代女性。約3年前より食後の嘔吐、睡眠中の咳き込 みを自覚していた。検診の胸部単純エックス線検査にて著明な 食道裂孔ヘルニアを認め、当科へ紹介となった。上部消化管エッ クス線造影検査にて食道胃接合部及び胃体部が胸腔内に脱出し ており、高度の混合型食道裂孔ヘルニアと診断した。上部消化 管内視鏡検査では、食物残渣の貯留、胃食道逆流を認めた。症 状も強いことから手術適応と判断し、腹腔鏡下Toupet噴門形成 術を施行した。術中所見では食道裂孔は約6cmに開大しており、 胃穹窿部から胃体上部は完全に縦隔内に嵌入していた。鋭的鈍 的剥離を繰り返しながら、嵌入していた胃を腹腔内に還納した。 食道裂孔は2 ‐ 0プロノバにて数針縫縮後、更にハイアタルメッ シュを用いて補強した。最後に、後方約240度の噴門形成術を 行った。手術時間は160分、出血量は少量であった。術後の上 部消化管エックス線造影検査では、食道裂孔ヘルニアの再発は なく、食道の流れも良好で、狭窄や胃食道逆流は認めなかった。 経口摂取も良好で、術後第8病日に軽快退院となった。本邦では 食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術の絶対数も欧米と比較 して、格段に少ない。また裂孔縫縮にメッシュを用いた報告例 は少ない。今回、大きなヘルニア門を有する混合型食道裂孔ヘ ルニアに対してハイアタルメッシュを用いた腹腔鏡下噴門形成 術を施行した1例を経験したので、文献的考察を含めて報告する。 1 2 2 福岡県済生会大牟田病院 外科、 久留米大学病院 外科学講座 遅発性外傷性横隔膜ヘルニアで、脾臓の嵌頓まで伴うものは稀 である。今回我々は、交通外傷8カ月後に発症した、脾臓嵌頓 を伴う外傷性横隔膜ヘルニアを経験したので報告する。症例は 61歳の男性。8カ月前に、バイク運転中の事故で外傷性血気胸、 肋骨骨折、脾臓損傷、左大腿骨骨折の他院加療歴がある。嘔吐 と上腹部痛を主訴に当院受診。精査の胸腹部CT検査で、横隔膜 左側の異常裂孔から、胃体部を中心に腹部臓器の胸腔側への嵌 頓所見を認めた。外傷性横隔膜ヘルニアと診断し、腹腔鏡下手 術を行う方針とした。手術所見で、ヘルニア門は横隔膜左側の 背側に約4cm。嵌頓臓器は胃体部、小網、大網、脾臓であった。 ヘルニア門部の癒着を剥離すると、胃体部と小網、大網は容易 に腹腔内に還納できた。しかし、脾臓は後腹膜ごと嵌頓しており、 腹腔鏡下での整復は困難であった。開腹手術に切り替え、ヘル ニア門を拡大し、脾臓を脱転しながら腹腔内へ還納したが、脾 実質の損傷強く脾摘を行った。ヘルニア門は、単純閉鎖後にバー ド ベントライトSTで補強した。術後経過は良好で、大きな合 併症なく退院。現在も外来経過観察を行っているが、再発所見 は認めていない。遅発性外傷性横隔膜ヘルニアは外科的修復が 絶対的適応だが、そのアプローチについては未だ一定の見解が 得られていない。本症例でも脾摘を要しており、発症時期や嵌 頓臓器を考慮した適切な術式の選択には、更なる症例の蓄積が 必要と考えられた。 O1-2 O1-4 upside down stomachを伴った食道裂孔ヘルニアに対す る腹腔鏡下修復術の経験 1 2 2 外傷性横隔膜ヘルニアの検討 和田 侑星、金岡 祐次、原田 徹、亀井桂太郎、前田 敦行、 高山 祐一、深見 保之、高橋 崇真、尾上 俊介、宇治 誠人、 森 治樹、渡邉 夕樹、吉川晃士朗、寺﨑 史浩、仲野 聡 2 大谷 裕 、山田 敬教 、倉吉 和夫 、梶谷 真司 、 2 2 2 若月 俊朗 、河野 菊弘 、吉岡 宏 1 1 橋本 宏介 、君付 優子 、高橋 龍司 、内田 信治 、 1 2 堀内 彦之 、赤木 由人 大垣市民病院 外科 2 松江市立病院 腫瘍化学療法・一般外科、 松江市立病院 消化器外科 症例は嘔吐、上腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した80才、 女性。腹部造影CTで、食道裂孔から縦隔内へ胃前庭部および 十二指腸球部が脱出し、その口側の著明な胃拡張と多量の胃液 貯留を認めた.経鼻胃管を留置したところ大量の排液を認め、上 腹部の膨満は消失した。過去に同様のエピソードで数回の入院 歴があり、その際は上部消化管内視鏡での整復が奏功していた ため再施行したが、胃前庭部∼十二指腸球部にかけて頭側に挙 上され、食道裂孔のレベルで締めつけられており、整復不可能 であった。経口摂取が長期間困難になる事を問題視し、外科手 術による症状回避を選択する事とした。手術は腹腔鏡下に施行 した。縦隔内へ脱出した胃および十二指腸は、胃の長軸方向に 180度捻転していた。捻転解除後にヘルニア嚢を食道裂孔レベ ルやや頭側で環状切開して食道をtapingした後、開大した食道 裂孔を縫縮した。そしてtoupe法に準じて噴門形成を行って手 術を終了した。認知症の影響で術後管理にはやや難渋したが、 概ね経過良好であった.胃前庭部や十二指腸球部が嵌頓し通過障 害を来した食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術の報告は比 較的まれであり、腹腔鏡下術式の賛否やmesh補強、噴門形成 術を付加するか否かなどの議論も含め、その治療法については controversialな面が多い。同様の症例との比較や若干の文献的 考察とともに、今回我々が経験した症例に対するその診断・治 療の概要を報告する。 【背景】成人の横隔膜ヘルニアは先天性等を除けば主に外傷を原 因とする事が多く、緊急手術を要する症例が多くある一方、遅 発性に発症する症例もある。 【対象と方法】2007年2月から2016年5月までに当院で経験し た外傷性横隔膜ヘルニアの手術症例7例の患者背景、治療成績の 検討を行った。 【結果】年齢中央値は63歳(42∼81歳) 、受傷機転は交通外傷4例 (57%) 、転倒2例(29%) 、刺傷1例(14%)で、受傷後24時間以 内発症の急性例は3例、24時間以降発症の遅発例は4例だった。 主訴は腹痛6例(86%) 、検診異常1例(14%)で、副損傷として 左肺挫傷を3例(43%)で認めた。受傷から手術までの時間の中 央値は急性例8時間(4∼14時間) 、遅発例10年(3ヶ月∼21年) だった。ヘルニアは全例左で、CTで診断された。脱出臓器は横 行結腸5例 (71%) 、胃4例 (57%) 、脾臓3例 (43%) だった。手術 は全例正中切開で行った。1例は小腸切除、2例は腸管拡張が著 明で腸管切開し減圧ドレナージを施行した。ヘルニア修復方法は 単純閉鎖3例 (43%) 、単純閉鎖とメッシュ3例 (43%) 、大網閉鎖 1例(14%)だった。手術時間中央値は101分(79∼145分) 、出 血量中央値は180g(5-700g)だった。術後合併症は胸水貯留6例 (86%) 、無気肺3例 (43%) 、SSIと麻痺性イレウス1例 (14%) を 認めた。当科術後在院日数中央値は14日 (9∼18日) だった。 【まとめ】急性例は副損傷を伴うことが多く、遅発例の発症中央 値は10年であった。全例手術治療で良好な結果を得た。 - 51 -
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