SURE: Shizuoka University REpository http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/ Title Author(s) 再認判断と確信度評定の関連性における主観的新旧反応 率による分析 日隈, 美代子 Citation Issue Date URL Version 2015-12 http://doi.org/10.14945/00009593 ETD Rights This document is downloaded at: 2016-11-08T18:54:03Z (課程博士・様式7)(Doctoral qualification by coursework, Form 7) 学 位 論 文 要 旨 Abstract of Doctoral Thesis 専 攻: 情報科学 氏 名: 日隈 美代子 Course: Information Science and Technology Name: HIGUMA Miyoko 論文題目: 再認判断と確信度評定の関連性における主観的新旧反応率による分析 Title of Thesis: Analyses of the relationships between recognition accuracy and confidence ratings by subjective rates of old and new responses. 論文要旨: 本論文の主たる目的は,判断の正確さと確信度評定の関連性について,主観 的反応(subjective response)に基づいた分析手法の提案と妥当性の検証である。 第 1 章では,再認判断と確信度評定の基盤となる理論について概説した。確信度評定 (confidence judgement)とは,想起した記憶や解答の正確さについて,想起した本人自 身によって主観的に尺度化し,評定したものである。この確信度評定のベースとなるのは 主観確率である。判断の正確さと確信度の関連は,信号検出理論(signal detection theory) の枠組みを用いて検討されてきた。判断の正確さと確信度評定は,信号検出理論に当ては めると正の相関であると予測される。 第 2 章では,キャリブレーションの概念を説明するとともに,先行研究の知見をまとめ た。キャリブレーション(calibration)とは,確信度評定を用いた研究においては,判断 の正確さと確信度評定の当てはまり具合のことを指す。キャリブレーションに関する研究 は,目撃記憶研究や,一般知識問題を用いた判断研究,未来の予測研究,再認判断研究な どにおいて広く行われている。キャリブレーションの対応関係を調べるためにキャリブレ ーション曲線(calibration curves)が使用される。再認判断研究において,キャリブレー ション曲線を用いて検討を行った場合,新項目の正確さと確信度評定に相関がみられなく なる現象が報告されている。 第 3 章では,従来の分析手法である名義的分類による分析の問題点について指摘すると ともに,主観的反応にもとづいた分析の提案を行った。再認判断と確信度評定は,実験参 加者の主観的判断である。実験参加者は,再認時に提示された項目が,名義的旧項目なの か名義的新項目なのかを知っているわけではない。実験参加者にとっては,あくまでも「あ った」という主観的旧反応(subjective old response)とあくまでも「なかった」という主 観的新反応(subjective new response)が,主観的事実を構成する。しかし,従来のキャ リブレーション研究では,実験者が定義した名義的新旧項目(nominal old/new item)に 当てはめた分析しか行ってこなかった。そこで,再認判断と確信度評定の関連性について, 1 主観的新旧反応に基づいた分析を行い,主観判断の正確さについて検討を行う必要がある と考えられる。 第 4 章では,主観的反応に基づく分析の妥当性について,意味情報と感覚情報を操作し, 実験的検証を行った。3 つの実験において,主観的新旧反応によるキャリブレーション曲線 と名義的新旧項目によるキャリブレーション曲線と比較することにより,意味情報と感覚 情報が再認の正確さと確信度評定の関係に与える影響を調べた。これらの実験において, 学生は単語の意図学習を行い,その後,再認テストと自身の再認判断に対する確信度を評 定した。また,意味情報のキャリブレーション曲線に対する影響を調べるため,新旧の項 目の紛らわしさを変化させた。実験 1(視覚)と実験 2(聴覚)は,学習と再認の提示が, 同一の感覚モダリティで行った。実験 3 は,聴覚提示による学習と,視覚提示による再認 テストを行った。 第 5 章では,本研究での実験結果を踏まえ,主観的反応に基づく分析の妥当性と,主観 的新旧判断のメカニズムに影響する要因について考察した。3 つの実験の結果は,名義的反 応の分析は,先行研究の結果と同様に意味的な紛らわしさが影響し,新項目は傾きが小さ い,もしくは右下がりのキャリブレーション曲線を示した。対照的に,意味情報か感覚情 報のどちらかが再認判断に使える場合,主観的反応分析では良いキャリブレーション曲線 になった。 次に,本論文で提案した主観的新反応率で分析を行うと,意味情報と感覚情報の両方が 再認照合に利用できる場合は,再認の正確さと再認判断の確信度が明確に対応することを 示した。特に主観的新反応率において,感覚情報の照合が非常に重要であることから,新 旧項目の提示時での感覚情報の一致・不一致が,新反応判断に対して非常に重要であるこ とが示唆される。そして感覚情報が一致する場合,その判断の正確さと確信度には対応が 存在することも示唆される。この結果は,従来の名義的新旧項目での分析からは得られな かったことであり,旧反応と新反応の判断メカニズムが異なっていることを示している。 実験参加者は,実験者が名義的に決めた新旧項目を区別しているわけではなく,あくまで も主観的に再認判断と確信度評定を行っている。この実験結果は,実験者と実験参加者と で,違う基準にもとづいた項目分類を行っていることを意味している。先行研究で報告さ れた新項目のキャリブレーション曲線が正の傾きとならない現象は,主観的判断に対して 名義的新旧反応率を使用して分析したために生じた可能性が高い。 以上のことから,主観的新旧反応率による分析の妥当性が示された。そして再認判断と確 信度評定の実験結果は,主観的新旧反応率で分析する必要があるといえる。 2
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