コンテナ収容式キャベツ収穫機の開発

資料4
コンテナ収容式キャベツ収穫機の開発
【農林水産大臣賞】
丸山高史 氏
長田秀治 氏
キャベツ収穫機開発グループ 代表
(ヤンマー株式会社、
オサダ農機株式会社)
1
業績の概要
背景
キャベツは農業産出額で1,000億円(平成26年)に達し、国民生活に欠かせない主要野菜である。
近年の需要は加工・業務用が家計消費向けを上回り、不足分は輸入に頼っている状況にある。一方、
生産現場では10アール当たり8トンにもなる収穫作業の労働時間は全体の30%を占めており、規模
拡大や生産コスト低減を図るためには、キャベツ収穫機の実用化が不可欠である。この課題に対して、
高性能農業機械等緊急開発事業(「緊プロ事業」)を受けて、長年にわたって収穫機の改良が進められて
きた。
研究内容・成果
緊プロ事業で3次にわたり課題化された成果を基に、ヤンマー(株)、オサダ農機(株)が生研センター
(現 農研機構 農業技術革新工学研究センター)の協力を得て実用機を完成させた。
開発したキャベツ収穫機は、切断精度を向上させるためにキャベツの姿勢制御機構及び茎高さを揃
えてカットする機構を備え、クローラ(履帯)式の走行部を持ち、国内初の機上選別調製作業・大型コ
ンテナ収容方式を採用した。これにより、収穫作業の労働時間の40%削減と軽労化、出荷経費の
30%削減を実現するとともに、モーダルシフト(鉄道・船舶輸送への切り替え)にも対応できる仕様と
なっている。
HC125(25馬力)
積載コンテナ1基
HC1400(40馬力)
積載コンテナ2基
普及状況
HC1400の作業風景
本機は、高性能農業機械実用化促進事業の対象となっており、総合農機メーカー4社が販売を表明
している。現場では大規模生産者を中心に本機に対する関心は高い。エンジンの排ガス規制強化に伴
う生産制限があったものの、当初目標としていた50台に対して、53台(受注済みを含む)の普及に
至っている。平成28年現在、排ガス対策の完了と取り扱いメーカーへの供給体制が整ったことを受
け、本格的な普及が始まっている。
2
評価のポイント
本機は、長年の研究開発の蓄積を踏まえて改良を重ね、キャベツの刈取り・選別調製・大型コン
テナへの収納を機上で一貫してできる高能率のキャベツ収穫機である。これにより、収穫に要する
労働時間の削減、軽労化、段ボール等の資材費の低減が達成できたことを高く評価した。
【連絡先】ヤンマー株式会社(住所:〒530-0014 大阪市北区鶴野町1-9
TEL:06-6376-6330)
プリン体に作用する乳酸菌を活用した
機能性ヨーグルトの開発
【農林水産大臣賞】
山田成臣氏
狩野 宏氏
坪井 洋氏
髙林卓也氏
(株式会社明治
1
伊澤佳久平氏
研究本部)
業績の概要
背景
尿酸値の上昇は痛風の発症リスクを高めるだけでなく、メタボリックシンドロームなどとの関連も
報告されており、国民の健康増進の観点からも尿酸値の改善が重要である。そこで尿酸値が上昇する
要因の中で、食物に含まれるプリン体の過剰摂取に着目し、腸管から吸収されるプリン体の量を低減
する機能性ヨーグルトの研究開発を行った。
研究内容・成果
プリン体を腸管で吸収されにくい構造に分解する活性に着目して、 Lactobacillus gasseri を中心
とした乳酸菌192株から、Lactobacillus gasseri PA-3(L. gasseri PA-3)を発見した。さらに
L. gasseri PA-3はプリン体を菌体自身に取り込むこと、動物でプリン体の吸収を低減させることか
ら、ヒトにおいても腸管から吸収されるプリン体の量を低減させ、その結果、尿酸値が低減する可能
性が示唆された(Yamada et al. Milk Sci. 2016)。また、 L. gasseri PA-3を含むヨーグルトを
継続摂取させたヒト試験において、尿酸値が低減することを明らかにした。
8.0
プリン体の吸収量が低減
3.0
3000
プリン体投与
2.5
2500
*
2000
2.0
1500
1.5
プリン体
+L. gasseri PA-3投与
*
*
1000
1.0
500
0.5
00
L. gasseri PA-3
尿酸値(mg/dL)
血中放射能(dpm※)
(×103)
3.5
3500
* : P < 0.05
0
50
100
150
200
投与後時間(分)
※放射能の単位。
プリン体の一部が放射性同位体でラベル化されているため、
放射能の強さが腸管から吸収されたプリン体の量を表す。
L. gasseri PA-3のプリン体吸収低減効果
摂取8週後において尿酸値が低下
7.6
P = 0.031
7.2
6.8
6.4
6.0
L. gasseri PA-3含有
対照ヨーグルト群
ヨーグルト群
ヨーグルト摂取後の尿酸値の変化
(ヒト試験)
(動物試験)
普及状況
L. gasseri PA-3を含むヨーグルトを平成27年4月に発売した。SRIデータ(インテージ社)によ
ると、平成27年度の販売本数は6,800万本であった。また、シェア(金額ベース)については、市
場全体の1.4%を占めている。
2
評価のポイント
プリン体を腸管で吸収されにくい構造に分解する活性が高い乳酸菌を発見するとともに、この乳
酸菌が持つプリン体の吸収低減効果を科学的に明らかにし、機能性ヨーグルトとして製品化と普及
を図ったことを高く評価した。
【連絡先】株式会社明治
研究本部(住所:〒250-0862 神奈川県小田原市成田540 TEL:0465-37-5130)
連続的加熱成形による水産練り製品の製造
【農林水産大臣賞】
吉富文司 氏
水城
健氏
橋立知典 氏
(日本水産株式会社)
1
業績の概要
背景
水産練製品の需要は年々低下し、近年、魚肉ソーセージの生産量は約5.4万トンと最盛期(1972年)
の約1/3以下となっている。これは、市場に競合や代替製品が豊富に供給され、消費者の選択肢が増
えたことに加えて、メーカーが消費者ニーズの変化に十分に対応してこなかったためでもある。そこ
で、最新技術を応用し、消費者・生産者・社会にもメリットのある技術開発に取り組んだ。
研究内容・成果
水産練製品の製造における加熱工程は非常に重要であるが、その機能にはタンパク質の加熱ゲル形
成性による「成形」がある。従来の成形工程は加熱工程の前にあり、予め所望の形状に成形したり、
ケーシング(内装フィルム)等に充填した後、加熱を行っていた。一方、本技術は、垂直に立てた
チューブの中を練肉が上方に送られる途中で、マイクロ波により加熱成形加工を行うことで、従来は
難しかった成形工程と加熱工程を連続的に行うものである。
本技術の導入により、従来の製造工程に比べ、①手順の簡略化や作業量の削減、②製造原価の削減、
③ケーシング等の不要化、④品質の均一化、⑤多品種少量生産への適応性拡大が実現できた。また、
製品に関しては、①ケチャップ等の二次素材を封入した多重構造化、②二次加工適用性の簡便化、③
付加価値の増大を図ることができた。
マイクロ波加熱装置の模式図
(矢印は吐出方向)
マイクロ波加熱
(拡大)
吐出口
普及状況
本技術を利用した製品は、2010年の発売以来、競合品の登場はなく、カテゴリー内のシェアはほ
ぼ100%である。業務用として惣菜、製パン、給食等で広く利用されている。市販用としては、家庭
用冷凍食品原料として、内部にケチャップを充填したアメリカンドッグ等の高付加価値品に寄与して
いる。今後は、使用原料を水産物だけでなく、畜産物にまで広げ、技術の改良や普及を図りたい。
2
評価のポイント
水産練り製品の製造において、原料をチューブ内で垂直吐出しながらマイクロ波により内部から加
熱することで、連続的な加熱成形を可能にし、ケーシング包装を必要としない画期的な製造技術を確
立した。本技術によって、製品の高付加価値化と原価低減に貢献したことを高く評価した。
【連絡先】日本水産株式会社
商品開発センター(住所:〒192-0991 東京都八王子市七国1-32-3
(東京イノベーションセンター) TEL:042-638-0463)