飼料用トウモロコシ収穫用細断型ロールベーラ の開発

飼料用トウモロコシ収穫用細断型ロールベーラ
の開発
【農林水産大臣賞】
髙田雅透 氏
っh
s
松倉崇博 氏
岡嶋
弘氏
正田幹彦 氏
(株式会社IHIスター、株式会社タカキタ)
1 業績の概要
背景
飼料用トウモロコシは、多収量で栄養価が高く、約8割を輸入に頼っている濃厚飼料の栄養価の代
替が可能であり、重要な自給飼料作物である。しかし、収穫調製作業を効率的に行うには5~6人の
作業員を必要とし、サイロ詰め作業が重労働であるため、作付面積がピーク時の66%まで減少した。
輸入飼料価格が高騰する中、トウモロコシの収穫調製を省力的で容易に作業できる機械が熱望されて
いた。
研究内容・成果
細断型ロールベーラは、市販コーンハーベスタで収穫・細断・吹上げたトウモロコシを荷受けし、
ロールベールに高密度成形・梱包できる。コーンハーベスタを装着したトラクタで本機をけん引すれ
ば、収穫・細断から成形梱包作業が1名で可能となる。市販ベールラッパでロールベールを密封すれ
ば、合計2名で収穫調製作業が完了し、重労働だった人手によるサイロ詰めは不要となる。
また、本機で調製したサイレージは、高密度梱包されるため、高品質で長期保存が可能である。
細断型ロールベーラ
(ベールラッパ一体型)
細断型ロールベーラ
V-scoreは80以上で良、pHは4.2以下が良
プロピオン酸、酪酸、VBN/TNは低いほど良
普及状況
平成16年の市販化以来、府県の家族経営酪農家を中心に普及が広がり、大きいサイズのロール
ベールが成形できる型式やベールラッパとの一体型といったシリーズ機種も相次いで市販化され、北
海道の大規模酪農家やコントラクタにも導入されている。平成25年末、シリーズ機種も含めた普及
台数は600台を越えた。
2 評価のポイント
本機の開発により、トウモロコシの収穫調製作業が一貫体系化され、従来5~6人必要であった作
業が2人で完了し大幅に省力化されるとともに、高品質なサイレージ調製を可能にしたことを高く評
価した。
【連絡先】株式会社IHIスター(住所:〒066-8555 北海道千歳市上長都1061-2 TEL:0123-26-1122)
株式会社タカキタ(住所:〒518-0441 三重県名張市夏見2828 TEL:0595-63-3111)
固形化粉ミルクの製造技術の開発
【農林水産大臣賞】
柴田満穂 氏
大坪和光 氏
豊田 活 氏
佐竹由式 氏
(株式会社 明治 研究本部 技術開発研究所)
1 業績の概要
背景
粉ミルクは専用スプーンで所定量を計量して哺乳瓶に入れ、これに温水を加えて撹拌溶解して使用
されるが、使用者からはスプーンでの計量時の粉こぼれ、計量数の数え間違え、持ち運びなどの不便
さが指摘されていた。このような問題を解決し、育児のストレスを解消するためには粉ミルクを固形
化することが有効である。粉ミルクを固形化するアイデアは古くからあったが、実用化された例は世
界的にもなく、製造法と衛生的に大量生産できる製造設備の開発に取り組んだ。
研究内容・成果
原材料、組成はそのままで、添加剤などを一切使用することなく、実用的な溶解性(粉ミルクと同
等、10秒間程度の撹拌で溶解)と輸送中の保形性という相反する性質を両立させることに技術的な高
い障壁があった。様々な検討の結果、粉ミルクを低い圧縮力で成形した後、得られた成形体の表面を
加湿および乾燥する製造法で、成形体表面付近の粉ミルク
の一部が溶解して粒子同士の架橋を形成して保形性を高め、
粒子同士の架橋
一方、成形体の内部は水の浸入路となる間隙を充分に確保
拡大
して溶解性を高めることが可能となった。
幅24mm、奥行31mm、
高さ12.5mm、
1個で出来上がりの調乳液
40mL相当
X300
表面
内部
x 100
哺乳瓶に投入
温水を加える 10秒間程度撹拌 容量を合わせて
完成
x 50
成形体の断面と表面、内部の電子顕微鏡写真
普及状況
出生数の低下などで国内の粉ミルクの生産量は減少の一途を辿っている。しかし、固形化粉ミルク
は従来からの缶入り粉製品と比較して重量換算で40%程度高い実勢価格にも関わらず、その利便性が
認められて普及が進んでおり、市場占有率は平成25年度で9.6%に至っている。
2 評価のポイント
固形化と溶解性を兼ね備えた固形化粉ミルクの大量製造方法の開発により、衛生的で利便性に優れ
た製品が商品化され、母親の就労や家族の子育て支援の一助になっていることを高く評価した。
【連絡先】(株)明治 研究本部 技術開発研究所(住所:〒250-0862 神奈川県小田原市成田540 TEL:0465-37-3661)
オリーブ粕の飼料化技術の開発と地域ブランド化の推進
【農林水産大臣賞】
石井正樹 氏
(農業自営)
1 業績の概要
背景
小豆島での牛の飼育は、西暦700年からと古く、「讃岐牛」としてブランド化を図ってきたが、国
内外の産地間競争の激化から、一層の差別化が求められていた。また、小豆島は、日本のオリーブ発
祥の地であり、全国一の産地であるが、搾油後のオリーブ粕の処理に苦慮していた。そのような中、
平成19年全国和牛能力共進会において、美味しさの審査基準にオレイン酸が取り入れられたことか
ら、オリーブにオレイン酸が多く含まれていることに着目し、オリーブ粕を活用した「オリーブ飼
料」の開発による香川県独自の牛肉のブランド化の取り組みを開始した。
研究内容・成果
「オリーブ飼料」の開発にあたり、最初にオリーブ粕を「渋柿」の原理で天日干しすることにより、
渋みが取れて牛が食べることを発見した。さらに、高温乾燥することにより、糖分がメイラード反応
を起こし、牛の嗜好性が増すこと、「オリーブ飼料」を給与することにより、肥育成績の向上ととも
に、抗酸化物質などが高くなり、さっぱりとした味わいになることを発見した。この成果をもとに、
小豆島の他の2戸とともに「小豆島オリーブ牛」として販売したところ、高い評価を得たので、さら
に「オリーブ飼料」の増産に取組み、県下全域に「オリーブ牛」の生産を拡大し、ブランド化を推進
した。
オリーブの実
オリーブ粕
オリーブ飼料
オリーブ牛
普及状況
香川県の特産品オリーブを活用したオリーブ牛は、県産品のトップブランドとして、全国に向けて
発信され、現在、オリーブ牛生産者は県内83戸、生産頭数は約1500頭(平成25年度)に達した。
指定販売店は県外12店を含め67店、指定料理店は県外5店を含む64店に、取扱店舗は、県内は
もとより、首都圏、関西圏などで増加している。さらに、食肉業界、飲食業界のみならず、うどん業
界、ハンバーガー業界などとの連携により、さらなる地域の活性化が図られ、輸出も始まっている。
2 評価のポイント
高温乾燥技術により地域の未利用資源オリーブ搾り粕の飼料化に成功するとともに、この餌を給与し
た牛を香川県の「オリーブ牛」としてブランド化し、地域振興に寄与していることを高く評価した。
【連絡先】石井
正樹(住所:〒761-4134 香川県小豆郡土庄町滝宮甲54番地 TEL:0879-64-6044)
トリフルオロメチルピリジン系農薬の開発
【農林水産技術会議会長賞
民間企業部門】
芳賀隆弘 氏(元石原産業株式会社)
1 業績の概要
背景
従来の新農薬の探索研究は殺虫、殺菌、除草と言った各分野に分かれ、試行錯誤による互いの研究
が無関係に行われていた。また、各分野で成功裏に見出された新薬でも、それらは独立した別個の発
想に基づくため、他の分野への応用が難しく、探索研究自体が非連続的、非能率的であり、新たな新
農薬創製のデザイン手法の確立が望まれていた。
研究内容・成果
共通中間体の発見:トリフルオロメチルピリジン(TFMP)中間体が見出された。各種の農薬に
TFMP中間体を組み込むことにより多種多様な新薬が創製された。
・除草剤フルアジホップ-ブチルは雑草体内での浸透移行性が向上し、雑草の地下茎まで枯らした。
・殺虫剤クロルフルアズロンは同系列の殺虫剤に比べ100倍の殺虫活性の向上を実現した。
・除草剤フラザスルフロンは数g/haと言った低薬量で効果を発揮し、芝生には安全に使用できる事
が判った。
・殺菌剤フルアジナムは広いスペクトルの病菌に効力を発揮し、抵抗性菌も出現しにくくなった。
・殺虫剤フロニカミドはアブラムシ特効薬であり、土壌処理されると作物の根茎から吸収され作物体
内を上方へ移行し、地上部の害虫を駆除した。
TFMP中間体がなぜこれらの興味ある様々な生理活性をもたらすかその理由も解明された。
共通TFMP中間体の種類を増やすことにより、今後も新たな新農薬が連続的かつ能率的に創製される
可能性が開けた。
F
O
F3C
O
N
O
F3C
N
Cl
O
F
O
フルアジホップ-ブチル
CF3
H H
N N
N
S
N
N
O
O O
O
普及状況
H
N
O
O
Cl
TFMP中間体
X,Y:任意
n:1-4の整数
H
N
フラザスルフロン
O
Cl
クロルフルアズロン
Cl O2N
F3C
N
N
H
CF3
CF3 O
N
H
Cl
NO2
フルアジナム
N
N
フロニカミド
1977年に合成されたフルアジホップは北南米の市場で年商400億円を越え、その後も市場に投入
されたTFMP系農薬はその性能に基づき、世界中の市場で現在も使用されている。TFMP中間体は医
薬等あらゆる有機化学の分野での有効利用が検討され、新たな開発段階に入った。
2 評価のポイント
共通中間体トリフルオロメチルピリジンに着目し、これを活用した独創的な農薬探索方法を開発する
とともに、この方法により開発した除草剤・殺虫剤が国内外で広く普及していることを高く評価した。
【連絡先】芳賀
隆弘(住所:〒520-3034 滋賀県栗東市小平井2-4-8 TEL:090-1159-7803)
新規品質の小麦・米品種を用いた新たなパン
製品の開発
【農林水産技術会議会長賞
民間企業部門】
井上俊逸 氏、藏滿正朋 氏、高光健太郎 氏、伊勢木智行 氏、栗田木綿子 氏
(敷島製パン株式会社)
1 業績の概要
背景
日本の食料自給率は約40%と低く、その対策の一環として、自給率が数%しかない「パン用小麦」
や米の需要拡大を目的とした「パン用米粉」の新品種育成・利用技術開発が進められている。北海道農
業研究センターが品種育成した超強力小麦「ゆめちから」を用いた新たなパン製品の開発に2010年か
ら着手し、国産パン用小麦の新たな市場拡大に取り組んだ。また、東北農業研究センターが米粉パン用
に育成した水稲新品種「ゆめふわり」の育成への協力と製品開発に取り組んだ。
研究内容・成果
超強力小麦「ゆめちから」の製パン研究において、単体では生地の弾力が強すぎて製パン適性に欠
けるが、国産中力小麦とのブレンドの最適化により、輸入強力小麦と同等以上の加工適性、パン品質
を得ることに成功した。「ゆめちから」の澱粉はやや低アミロース性であることから、パンにもっち
り感、しっとり感を付与することができ、この特徴を活かした食パンやベーグル製品などを開発し、
市場導入に繋げた。また、水稲新品種「ゆめふわり」の小麦粉混成米粉パン研究において、米粉にす
る際の製粉特性が製パンに適しており、もっちりとした好ましい食感を付与することを明らかにした。
また、小麦粉に「ゆめちから」を採用することで超強力粉の加工適性を活かすことに成功し、国産原
料にこだわった特徴ある食パンの開発に繋げた。
(輸入強力小麦) ゆめちから60% ゆめちから70% ゆめちから80%
【国産中力小麦とのブレンドの最適化】
食パン試作品の総合評価からゆめちからの最適なブレンド
比率(ゆめちから60%)を求めることができた。
普及状況
【ゆめちから入り食パン】
【米粉入り食パン】
2012年6月に限定発売し、2013年4
月から通年発売を開始、2014年1月
に原料と製法にこだわり、リニューア
ル発売。
2014年6月より通販限
定で発売。
超強力小麦「ゆめちから」を使ったシリーズは、北海道・九州・沖縄を除く地域で販売している。
平成25年度のシリーズ販売金額は20億円(参考小売価格ベース)であり、直近3カ月(平成26年7
月~9月)の月間平均販売金額は2億円(同)である。
なお、「米粉入り食パン」は通販限定で毎月1回、200個限定発売。
2 評価のポイント
小麦品種「ゆめちから」、米粉パン用品種「ゆめふわり」を用いた高品質なパン製造方法を開発
し、国産小麦と米粉の消費拡大に寄与していることを高く評価した。
【連絡先】敷島製パン株式会社(住所:〒461-8721 愛知県名古屋市東区白壁5丁目3番地 TEL:052-933-2111)
国産モミ米を配合した養鶏飼料
「こめっ娘(こ)」シリーズの開発
【農林水産技術会議会長賞
民間企業部門】
宇野秀雄 氏、重城光一 氏、福永菜摘 氏、小笠原由佳 氏
(昭和産業株式会社 飼料畜産部 飼料技術センター)
1 業績の概要
背景
稲作農家と連携して飼料用米の利用を進めていく中で、脱穀後のモミ殻の処理が課題となり、モミ
殻も飼料として利用するために、モミ(籾)米の飼料化に取り組んだ。
鶏は筋胃(砂肝)内で飼料を破砕して消化することから、繊維が固いモミ殻を給与することで飼料
の破砕行動が活発になり、消化に良い影響を与える可能性が示唆された。そこで、飼料用米をモミ付
きのまま飼料へ配合することで、雛鳥の増体改善につながるのではないかと仮説を立て、採卵鶏育成
期用飼料へのモミ米の利用を検討した。
研究内容・成果
モミ米は粒が大きいためそのままでは雛が摂取できず、また、単に粉砕しただけでは粒度が細かく
なり飼料摂取量が低下した。そこで、モミ米を配合した飼料をペレットクランブル(ペレットを粉砕
した形状)に加工して給与することで、孵化直後から摂取可能になった。
モミ米を配合した飼料を給与することで、モミ殻部分に含まれる不溶性繊維が育成前期の鶏に以下
の効果を示した。なお、給与を開始する日齢は若いほど効果が高く、孵化直後から給与すると特に効
果的であった。
① 鶏の筋胃内に不溶性繊維が存在することで筋胃が約1.2倍に発達し、飼料原料の利用性が高まる
ことで、養鶏農家の課題であった育成前期の増体量が改善された。
② 腸内細菌叢の改善効果(大腸菌数の低減)が認められた。
a,b)異符号間に有意差有(P<0.05))
鶏の研究
第88巻・第11号より
写真1:筋胃の比較
普及状況
モミ米を配合した飼料は養鶏場でも育成成績の改善効果が認められ、平成25年度の販売金額は4億
5千万円となり、モミ米を配合した飼料を利用する養鶏場が増加した。それにより、平成25年度産の
モミ米の取り扱い数量は約1,000tとなった。
2 評価のポイント
クランブル加工により、雛にも給与可能なモミ米配合飼料を開発し、国産飼料米の需要拡大に寄
与していることを高く評価した。
【連絡先】昭和産業㈱飼料技術センター(住所:〒325-0103 栃木県那須塩原市青木919 TEL:0287-62-5951)
温州みかん「北原早生」の育成と産地化
【農林水産技術会議会長賞
農林漁業者部門】
永野正氣 氏、北原悦雄 氏、河村孝一 氏、岡 昌則 氏
(南筑後農業協同組合柑橘部会)
1 業績の概要
背景
南筑後農協柑橘部会では、温暖な立地条件を活かし、10月までに出荷される温州みかん(以下み
かん)品種の早場産地として栽培を拡大してきた。しかし、この時期は糖度が低い品種しかなく、み
かんに対する消費者離れを起こし、11月以降に出荷される主力品種の販売価格の下落を招いていた。
このため、10月に出荷される高糖度のみかん品種の育成が生産者から求められていた。
研究内容・成果
平成13年自園地において数千本の樹の中で、着色の良い果実をつける一本の枝を発見し、その後5
年間、この枝の果実特性を調査したところ、果皮の朱色が濃くて、糖度は従来品種より2度以上高く、
10月に成熟する他の品種と比べ極めて品質が高いことが明らかになり、平成21年に品種登録した。
次に、「北原早生」の特性を最大限発揮できる栽培法を明らかにするために、シートマルチや水管
理、摘果方法などの試験を行い、最適な栽培方法を確立するとともに、栽培マニュアルを作成した。
また、他産地を含めた栽培面積の早期拡大を図るため、ウイルスフリー苗木供給のため母樹園を設
置し、穂木の大量増殖を行い、苗木の供給体制を確立した。
一方、 販売においては、高品質を消費者にアピールするため、高級感のある黒箱を使用することで、
他品種・他産地と差別化を図ったことにより、市場で高価格で販売され、高品質みかん品種として認
知されるに至った。
収穫期を迎えた北原早生
シートマルチ栽培でより高
品質に
最高級ブランド「黒箱」
普及状況
導入開始から5年目の平成25年度には、部会面積の12%を占める48ha、出荷量401tに拡大し、
販売額は初めて1億円を突破した。今後も、栽培面積は拡大し、平成27年度では50haで1,000tを
見込んでいる。また、他の県内JA柑橘部会でも導入が進み、栽培面積は平成25年度69.3haに拡大
した。
2 評価のポイント
農業者として、果実の着色が良く、糖度の高い温州みかん品種「北原早生」の開発に取り組む
とともに、栽培法の確立により高品質みかんの産地化に取り組んだことを高く評価した。
【連絡先】南筑後農協柑橘部会(住所:〒835-0101 福岡県みやま市山川町立山964 TEL:0944-67-1211)
バラ「ローテ・ローゼ」の品種開発と普及
【農林水産技術会議会長賞
農林漁業者部門】
浅見 均 氏(農業自営)
1 業績の概要
背景
昭和50~60年代、バラの栽培品種は欧米で育成されたものがほとんどを占めていた。そのため欧
米の需要動向や育種目標にあわせて選抜された品種であり、日本の気候や日本人の好みに合わず、栽
培面・流通面共に問題が多かった。日本人の好みや気候にあった高品質で生産性の高いバラ品種の育
成、市場への供給が求められており、育種を開始した。
研究内容・成果
ローテ・ローゼは昭和59年、(エルマラ×カランボ)に(ビンゴ×メリナ)を交配して育成した。
平成4年9月に品種登録(登録名:アサミ・レッド)され、光沢のあるビロード赤は多くの消費者の
心をとらえ、大輪の赤バラとして人気を博した。生産面でも切り花本数が多く、周年生産に適し、ま
た、アーチング仕立てや養液栽培等多様な栽培方法にも適したことから、発売以来10年以上赤バラ
のトップシェアを有し、現在も主要品種として栽培されている。
国産品種であるローテ・ローゼが、赤バラ品種のトップを維持し続けたことで、バラ切り花の輸出
国からの輸出攻勢を回避することができた。
このほか、独特の茶色品種「ショコラ」など46品種(登録出願中3品種)を育成している。
光沢のあるビロード赤が印象的な「ローテ・ローゼ」
普及状況
品種登録出願中の
「ブルー・ショコラ」
平成2年の赤品種栽培面積で、「ローテ・ローゼ」は5.3%で「カール・レッド」に次いで2位で
あったが、平成6年にはトップの19.3%となり、以降10年以上赤バラ品種の全国1位の栽培面積を
占め、現在でも赤バラの主要品種として栽培されている。
2 評価のポイント
農業者としてこれまで多数の品種を登録しているが、特に、平成4年に登録した「ローテ・ロー
ゼ」は、国際競争の激しいバラ市場において10年以上も国内栽培面積のトップの座を維持するとと
もに、これが結果として海外からの輸出攻勢から国内生産農家を守り、生産農家の経営安定に寄与
したことを高く評価した。
【連絡先】浅見
均(住所:〒673-1312
兵庫県加東市掎鹿谷558 TEL:0795-47-1686)
草刈作業機「e-スタイル・オフセットモア」の
開発
【公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会会長賞】
株式会社 ササキコーポレーション 技術開発部 代表 保土澤 定廣 氏
1 業績の概要
背景
農家の高齢化や過疎化により、草刈等の管理が十分に行き届かない農地やその隣接地が増加傾向に
あり、また、担い手や集団の共同作業等に管理が委ねられるケースが多くなり、農地の大規模化が進
むに伴い、効率よく草刈作業が行える機械が要望されていた。このような状況で外国製の大型機械を
導入した場合、トラクタからの油圧の取り出しが必要であったり、小型の国産トラクタには必ずしも
装着しやすい仕様とは言えない問題等があり、国産トラクタ用の草刈作業機の開発が望まれていた。
研究内容・成果
国産トラクタに容易に装着が可能で、比較的小型のトラクタでも作業が容易に行える草刈作業機を
開発した。この草刈作業機は、刈取作業部のオフセットや回動作動は電動で作動するため、油圧取り
出し部がないトラクタにも装着が可能で、使用するトラクタが限定されない。トラクタへの装着は、
トラクタの装着部を上昇させて草刈作業機を吊上げると自動的に連結される国内規格のクイックヒッ
チで簡単に装着が行え、草刈部の操作は無線操作のため、電動作動部作動用のトラクタからの複雑な
電気配線が不要で、脱着が容易に行える。また、無線リモコンジョイステックレバー、草刈部を地面
の凹凸に追従させるWフローテング機構、草刈高さを調整する大径ゲージローラ等の採用により作業
時の取り扱いが容易に行える。
無線通信ジョイステックリモコン
操作
法面のオフセット草刈り作業
センター位置での草刈り作業
普及状況
近年、農地の大規模化が進むに伴い、草刈作業の省力化が求められ、トラクタ用フレールモアの導
入が急速に増加している。特にオフセットタイプのフレールモアは、取扱性の向上やトラクタへの装
着性の改善とともに、法面の草刈り作業等の多様な作業が可能であることから急速に普及しつつあり、
「e-スタイル・オフセットモア」の販売台数も平成23年度、24年度は280台前後であったが、平
成25年度は400台を超える台数となった。
2 評価のポイント
国産トラクタに簡単に装着でき、作業時の取扱いも容易な軽量の草刈作業機を開発し、水田の畦
や休耕地などの草刈作業の軽労化・効率化に寄与していることを高く評価した。
【連絡先】株式会社ササキコーポレーション(住所:〒034-8618 青森県十和田市三本木字里ノ沢1-259 TEL:0176-22-3111)
飛躍的な軽労化を実現した
にんにくの茎自動切断装置の開発
【公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会会長賞】
株式会社 木原製作所 にんにく茎自動切断装置開発グループ 代表 佐々木 新悟 氏
1 業績の概要
背景
にんにくの国内主産地青森県では1農家平均(70 a)で10万個以上のにんにくを生産している。
にんにくは収穫後、農家が剪定鋏で1個ずつ茎の長さを調整・切断する必要があり、膨大な時間と労
力を要し、堅い茎の切断作業による腱鞘炎に悩まされていた。青森県を中心とした多くのにんにく農
家やJA等から、安価で安全に切断作業ができる茎自動切断装置と簡易に装着できる選別装置の開発
が強く要望されていた。
研究内容・成果
にんにくの茎自動切断装置「にんにく茎切りカッターKC-4」とこれに取り付ける「にんにく選別
装置KC-S」を開発した。その結果、①手作業に比べ4倍の作業効率となり(1時間当たりの手作業処
理量約500個→自動切断装置処理量約2,000個)、②飛躍的に軽労化された(にんにくをカップに
投入するだけで茎の自動切断処理ができ、腱鞘炎等のトラブルを解消)。
茎切りカッターKC-4
選別装置KC-Sを取り付け
た茎切りカッターKC-4
普及状況
茎切りカッターKC-4は、青森県を中心に全国各地のにんにく産地で導入が進み、開発から5年間
で400台を販売。選別装置KC-Sは販売初年度で60台が販売された。にんにく産地の拡大に伴って
更なる普及が期待されている。
2 評価のポイント
にんにくの茎切り作業が大幅に軽労化・効率化されたことにより、出荷コストの削減、外国産
品との価格競争力の強化につながり、国内生産農家の経営安定に寄与していることを高く評価し
た。
【連絡先】株式会社木原製作所(住所:〒754-1102 山口県山口市秋穂西3106-1
TEL:083-984-2211)