第三者意見

第三者意見
「NTNレポート2016」第三者意見書
高崎経済大学 経済学部 教授
水口 剛 様
略歴
商社、監査法人勤務等を経て 、1997年に高崎経済大学経済学部講師、2008年より現職。2015
年には国外研修としてロンドンで英国と欧州の責任投資と非財務情報開示の状況を視察。
これまで 、中央環境審議会・環境と金融専門委員会委員(2009年~2010年)、日本公認会計士協
会・環境会計専門部会部会長(2005年~2010年)、環境経済・政策学会監事(2008年~2014年)
等を歴任。専門は責任投資、非財務情報開示、環境会計。
主な著書に
『 責任ある投資-資金の流れで未来を変える』
( 岩波書店、環境経済・政策学会論壇賞)、
『 環境と金融・投資の潮流』
( 中央経済社)など。
今年のレポートでは
「 NTNの価値創造プロセス」の図で、
この点、本レポートで次の100 年を支える新事業として
人的資本や知的資本、
自然資本などの投入が社会的価
自然エネルギー事業やEV 事業を挙げていることは非常に
値の創出をとおして財務資本と非財務資本の両方の増
的確だと思います。技術特集のページでさまざまな技術が
加につながるという循環が示されました。昨年度も
「価値
説明されていますが、
ここから
「 2 ℃以下」
を実現するため
の創造」
と題して人的資本や自然資本などの指標を示し
のブレークスルーが生まれることを期待しています。
ていましたが、今年は株主価値と社会価値を結び付けた
「統合思考」
がより明確になったと思います。
一方 、世界を見ると、2015 年にCSR に密接に関わる
2 つの国際合意が成立しました。国連による持続可能な
開発目標(SDGs )
と気候変動枠組条約第21 回締約国会
議(COP21)
におけるパリ協定です。特にパリ協定では、
地球の平均気温の上昇を2℃より十分に下回る水準に抑
えることで合意し、今世紀後半には人為的な温室効果ガ
スの排出と吸収を均衡させるとの目標を示しました。実質
排出ゼロを目指すというこの目標は、
これまでのビジネスの
前提そのものを大きく変えるものといえます。
それは、統合
思考がいよいよ本格的に問われる時代の到来ともいえる
でしょう。
気候変動対策として製造過程や物流での地道なCO2
排出削減はもちろん重要ですし、本レポートで報告されて
いる着実な歩みを評価したいと思いますが、社会全体で
実質排出ゼロを実現するためには別次元の取り組みが必
要です。
また、
アフターマーケット事業に注力されている点も評価
します。EUがCircular Economy(循環型経済)
を推進す
るなど、補修ビジネスの重要性は今後も高まっていくもの
と思います。
気候変動問題と並んで国際的に注目を集めている社会
課題がサプライチェーンにおける人権問題です。御社は
CSR 調達ガイドラインに人権・労働の項目があり、雇用と
処遇の箇所でも
「グローバルには強制労働の排除、児童
労働の排除などを確認」
していると記されていることから、
この点での対応は進んでいるものと評価します。
とはいえ、
サプライチェーンの問題は見えにくい面もありますので、
引
き続き注意してほしいと思います。
少子化が社会課題となる中、仕事と育児の両立支援の
取り組みも評価したいと思います。
この面でも実績の開示
があるとなお良いと思います。海外子会社トップの外国人
比率を開示されたこともダイバーシティ促進に向けて一歩
前進と思います。昨年に引き続き、
ステークホルダー・ダイ
アログも開催されました。
メンバーの継続性も重要と思い
ますが、少しずつ幅を広げていっても良いように思います。
第三者意見を受けて
水口様には、昨年に続き、貴重なご意見を賜り厚く御礼申し上げます。
では、昨年度頂戴しました第三者意見や、
ステークホルダー・
今回発行の「NTNレポート2016」
NTNの価値創造、事業活動とCSR 活動の結びつきなど
ダイアログでの有識者のご意見を反映し、
グ
を、可視化を図りつつ、地球温暖化防止と自然エネルギー事業、
サプライチェーンCSRの推進、
ローバル体制の強化、
ダイバーシティの推進、持続的な社会貢献活動など、
さまざまな取り組みを
紹介しました。
見は、実績開示が途上のものとあわせて、真摯に受け止め、今後の展開の参考とし、国際社会に
取締役
CSR(社会的責任)
推進本部 本部長
貢献するもの造り企業として進んでまいります。
仲野 浩史
「気候変動への対応」や、
「サプライチェーンでの人権擁護」
など、今回いただいた貴重なご意
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