やはり俺の異能バトルはまちがっている。 ID:102358

やはり俺の異能バトルはまちがっている。
猫さん
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP
DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
│││能力者。
対価を払い、人外の力を振るう存在。
その存在が当たり前の世界で、彼らは生きていく。血生臭かった
り、ふざけたり、修羅場だったり。まあ、色々あっても生きていく。
あらすじこんなんだけど、作中では割と巫山戯てます。
注意:原作キャラが人を普通にコロコロします。キャラ崩壊もある
と思いますので、それが嫌な方はバックしてください。
追記:契約者︵能力者︶には感情があります。能力を使う上で対価
ありますが。殺人などへの忌避感は多少薄くなっているぐらいです。
本来の合理的な契約者が出てこないと思うので、それが不快に思った
り、嫌だなぁと感じたならそっと閉じてやってください。自分の説明
不足でした、申し訳ない。
あと、更新は不定期です。許して⋮⋮。
目 次 プロローグ:どうしてこうなった、どこで間違えたんだ⋮
│
?
第一話:ストーカー ああ、お嬢様なのね。⋮⋮テンプレだなぁ。
1
││││││││││││││││││││││││││││
第二話:警視庁異能科 ││││││││││││││││││
第三話:能力と対価 │││││││││││││││││││
第四話:雪ノ下班VS影使い │││││││││││││││
5
10
14
19
?
プロローグ:どうしてこうなった、どこで間違えたん
だ⋮
⋮⋮ああ、どうしてこうなった。
紅茶を入れながら、目の前で﹁∼∼∼♪﹂と鼻歌を歌っている女性
魔
王
を見ながらため息を小さく吐く。あれだけ働かないと言って、専業主
夫を目指していた俺が何故、どうしてこの人の下で働いているんだ
ってやつか
やだなにそれ全然笑
⋮⋮。ああ、昔の俺に忠告したい﹁逃げろ﹂と。まあ、いくら頑張っ
て逃げたところで、捕まっちゃうんだけどね
えないんですけど。あれだ、魔王からは逃げられない
⋮⋮魔王って理不尽だなぁー。
﹁ねえー、まだかな比企谷くん。寒いんだけど∼﹂
しは待ちましょうよ﹂
﹁ねえー、まだかな比企谷くーん﹂
﹁ちょっと、ねえ、俺の話を聞いて
﹂
﹁あの、まだ紅茶準備しだしてから五分も経ってないんですけど。少
!
!
魔
王
この人っと。よし、大丈夫。
?
で、紅茶は
﹂
﹁⋮⋮ん、よろしい。素直に謝れるのはいい事だよ、比企谷くん。それ
なさい﹂
﹁なんでわかるんですか怖いんですけど魔王って考えてましたごめん
﹁比企谷くん。今私の事、何か考えなかった
﹂
ち ゃ っ た。こ の 人 ナ チ ュ ラ ル に 考 え 読 ん で く る か ら な ぁ、ん ん っ、
特にあざとい後輩と、目の前の魔王⋮⋮あ、魔王って隠さなくなっ
なんで俺の周りの人たちは、俺の話を聞いてくれないんだろうか。
?
﹁はーい、んーっ、いい香りだね 味の方は⋮⋮おっ、上達したん
﹁もう出来ますよ、急かさんでください﹂
?
!
1
?
じゃない
﹂
比企谷くん
﹁そりゃどうも。まあ、誰かさんに扱かれましたからね﹂
﹁そっかー、じゃあその誰かさんにありがとうだねー
﹂
﹁ええ、俺も自分のこんなところが結構好きですよ﹂
﹁ははは、君は変わらないなぁ∼。そういうところ、結構好きよ﹂
は﹂
﹁そうですね⋮⋮、まあ働かなくていいから楽でいいんですけどね、俺
﹁ふぅ⋮。それにしても、暇だねぇ﹂
もないが。いや、やっぱり楽しくない、怖いな。
あー、この人との会話は神経がすり減る⋮⋮まあ、楽しくないこと
﹁はいはい、そうですね⋮⋮﹂
がここまで上達したのは、その人のおかげなんだしねー﹂
!
俺は自分が好
あと小町とか戸塚とか小町とか﹂
ナルシストとか言わないでくれない
﹁うわあー、ナルシストだー
﹁ちょっと
きなだけですよ
?
!
子だよ
ホモなの、比企谷くん
﹂
﹁相変わらずシスコンだねぇ、比企谷くんは。それに戸塚くんは男の
?
え、なにそれ戸塚は戸塚でしょ
﹁そうなんだー﹂
﹁そうですよ﹂
﹁⋮⋮⋮﹂
﹁⋮⋮⋮﹂
﹁比企谷くん﹂
﹁イヤです﹂
﹁まだ何も言ってないじゃない﹂
﹂
﹁いえ、どうせ碌でもない事を言われると思ったので。先に断っただ
けです﹂
﹁⋮⋮⋮へぇ﹂
怖いからやめて
!
﹁⋮⋮⋮な、なんすか﹂
やめて目を細めないで笑わないで
!
2
?
?
﹁は、貴女に言われたくないですね。あとホモじゃないです。性別
?
?
?
?
・・・・・・
・・・・・・・
﹁比企谷くんはダメダメだなぁ∼﹂
﹂
そう言った瞬間、彼女の周囲の空間が軋む音を立てる。
﹁ちょ、それは洒落になんないでしょ
殺す気ですかあんた﹂
ほら、最近依頼来ないじゃない
﹁ははは、殺す気なんてないよー
の確認だよ
﹂
ただ、比企谷くんが鈍ってないか
﹁まったく、何やってるんですか⋮⋮今日だけで4回目ですよ⋮、俺を
・・・
│││ここで、視界が正常なものに戻り、時間の流れが元に戻る。
彼女の背後に回り込むと、両手首を抑えて机に倒した。
床に滴り落ちた。瞬間、視界が白黒に染まり、時間の流れが遅くなる。
懐からナイフを取り出し、手の甲を薄く斬りつける。血が流れて、
!?
﹁安心出来る要素がないんだよなぁ⋮⋮﹂
﹂
﹁ははは、まあ、冗談だよ。君の体を傷つける気はないしね﹂
﹂
悪戯はするけど
﹁ねえ、この手見て、血が出てるよね
﹁傷つける気はないからね
﹁話を聞いて⋮⋮﹂
!
?
﹂
間違え
!
たら腕とか足とか捥げちゃうかもしれないけど⋮⋮安心してね
﹁ごめんごめん まあ大丈夫だよ、制御は完璧だからね
発動しただけで命に関わるんですから。主に俺や俺や俺が﹂
﹁はあ⋮⋮それだけの理由で⋮。勘弁してくださいよ、貴女の能力は
されたのかよ⋮⋮ええ⋮⋮。
を浮かべた。嘘は言ってない。つまり、それだけの理由で能力を使わ
・・
彼女は俺が掴んでいた手首を摩りながらそう言い、邪気のない笑顔
?
!
│││ピンポーン。
ご依頼でしょうか
?
﹁⋮⋮嫌われてんなぁ、俺﹂
﹁はーい
﹂
依頼来なければいいのになぁ、早くお家帰りたいなぁ⋮⋮。
確かに前よりうまいな。我ながらよく出来ている。ああー、このまま
はあ、とため息を吐いてソファに腰を下ろして、紅茶を飲む。おー、
!
!
!
3
!
電話で応対している彼女、雪ノ下陽乃を横目で見ながら呟いた。ん
!
なんですか⋮⋮、ああやっぱり依頼なのね⋮。はあ⋮⋮。
?
﹁ほら、迎えに行く
﹂
楽しみだなぁー、とニコニコと上機嫌に
﹁へいへい、分かりましたよ⋮っと﹂
久しぶりの依頼だぁー
﹁ようこそ、雪ノ下陽乃探偵事務所へ。どのような依頼でしょうか
﹂
そして、顔を伏せる依頼人の女性に微笑みながら、彼女は言った。
反対側のソファに座った陽乃さんの斜め後ろに立つ。
しているところだった。やっぱ、早いっすね⋮と言いながら依頼人の
直ぐに先ほどの部屋に戻ると、陽乃さんが依頼人の女性に紅茶を出
促して、ドアに鍵を掛けて閉める。
扉を開き、依頼人の⋮⋮女性か。依頼人の女性を﹁どうぞ﹂と中へ
どうしてこうなったんだ、どこで間違えた⋮⋮。はぁ⋮⋮。
テンションを急降下させる。
嗤う⋮⋮失敬、笑う陽乃さんに﹁ああ、今回も扱き使われるのかぁ﹂と
!
はあ、面倒だなぁ⋮⋮。
4
!
?
第一話:ストーカー
ンプレだなぁ。
⋮⋮っ
殺気⋮
ああ、お嬢様なのね。⋮⋮テ
ちょ、陽乃さん睨まないで怖い怖い
!
⋮⋮﹂
﹂
?
心配そうな顔で此方を見上げるお嬢様︵依頼人︶、きっと警察にも断
﹁受けて、くださいますか⋮⋮
﹁⋮ふむふむ。ありがとうございます、それで依頼の方ですが⋮⋮﹂
えっ、怖っ。
サングラスをかけていました﹂
﹁はい、えっと⋮。背は高くて、黒いスーツ。顔にタトゥーがあって、
﹁ストーカーの特徴などを教えて貰ってもよろしいですか
﹂
と陽乃さんを見返すと、ニコッと笑わ
なんで俺を見るんですか
﹁ストーカー、ですか﹂
ちょっと
⋮⋮見えないよね
?
れて顔を逸らされてしまった。え、なにそれ超かわいい。
るの
なに、ストーカーに見え
﹁ス ト ー カ ー に、あ っ て い ま し て ⋮⋮ 身 辺 の 警 護 を お 願 い し た く て
がら口を開いた。あらやだかわいい、って流石に失礼か。
お嬢様︵依頼人︶は俯かせていた顔をバッと上げて、瞳を潤ませな
八幡、お口にチャックします。
﹁はい﹂
﹁お黙り﹂
﹁⋮⋮この男て﹂
﹁あ、申し訳ありません。この男は気にせず、仰ってください﹂
﹁あの、その、依頼なんですが⋮⋮﹂
!?
や つ じ ゃ ん。ふ む、い い と こ ろ の お 嬢 様 ⋮ か。養 っ て 欲 し い な ぁ
高価そうな腕時計に、イヤリング⋮⋮うわ、バックなんてクソ高い
顔を俯かせている依頼人の女性を観察する。
?
?
?
5
!
?
?
私は受けてもいいけど﹂と伝えてくる。まあ、断
られたからこの探偵事務所なんかに来たんだろう。陽乃さんが此方
に目で﹁受ける
る理由もないしなぁ⋮⋮働くのは嫌だけど、仕方ないか。肩を竦め
ああ、そうだ、お名前
て、陽乃さんに﹁ええ、いいですよ﹂と伝える。⋮⋮なんかこういう
のも慣れちまったなぁ。
﹁ええ。貴女の依頼、お受けいたしましょう
因みに私の名前は雪ノ下陽乃、此方の腐っ⋮⋮男
﹁今腐ってるって﹁なぁに
﹂なんでみょないでしゅ﹂
の子が助手の比企谷八幡です﹂
をお伺いしても
!
﹂
!
﹂
!
か
⋮⋮⋮いや、待てよ。この人厄介ごとは大好きだよな⋮⋮
あっ︵察し
にこやかにしている陽乃さんを見やる。
アカンやつやこれー
﹁⋮⋮ふふ﹂
あー
!
まあ、陽乃さんなら分かってるだろうし⋮⋮心配する必要もないの
﹁⋮⋮鬼咲、〝あの〟鬼咲じゃなきゃいいけど﹂
く。
頭を下げるお嬢様⋮⋮、鬼咲さんを見ながら聞こえないように呟
﹁それでも、ありがとうございますっ
関しても別に不満はないですし、気にしなくともいいですよ﹂
﹁⋮⋮自分は助手ですし、決定権は陽乃さんにありますから。依頼に
せませんから﹂
﹁いえいえ、仕事ですから。それに、同じ女性として、ストーカーは許
依頼を受けてくださりありがとうございます
﹁え、えと、私は〝鬼咲千尋〟といいます。雪ノ下さん、比企谷さん。
?
?
∼◇∼
たお昼でした。⋮⋮まじかぁ。
不気味な笑みを浮かべる陽乃さんを見て、思わずそう叫びたくなっ
!
6
?
?
つまり、それは⋮⋮。
?
﹂
と言って目的地も言わずに陽乃さんに引っ張られ
あのあと、鬼咲さんを家︵高層マンション︶まで送り、その後に情
報収集するよ
ていた。
﹁あの、陽乃さん⋮
﹁なんだね比企谷くん﹂
﹁明らかに、あれですよね、裏の⋮⋮﹂
﹁まあねぇ♪﹂
やだはるのんルンルンしてるぅ∼。八幡はドンヨリだわー⋮⋮。
俺が連れてこられたのは東京の地下、着いてから聞かされたけど陽
乃曰く情報屋がこの場所にいるらしい。情報屋ねぇ、こんな場所にい
るんだから碌でもない奴ってのは分かるけど⋮⋮さて、どんな奴なん
だか。
陽乃さんの後ろを付いて歩いていくと、明かりが見え出した。なん
か暖簾がかけられているし、なになに〝地下BAR〟⋮⋮安直だなぁ
おい。バサァッと暖簾を潜ると、煌びやかで立派なBARが現れた。
﹁⋮⋮ええ、考えてたのと違う⋮⋮﹂
エンジェルラ
なんか、普通にお洒落。大人が来るBARって感じがする。あー、
そんな感じだな。
あれだ川崎がバイトしていた⋮⋮デビルズラダー
ダーだっけ
やめてー
?
こっち見ないでー と入り口でキョロキョロしてい
!
﹂
あっそびに来たぞー
﹂
ると、陽乃さんは手をバッと上げて、
﹁おーい
どしたの
﹁アカン﹂
﹁ん
?
﹁相変わらず愛想ないなー、比企谷くんみたい﹂
﹁ああ⋮⋮﹂
﹁変な比企谷くん⋮⋮っと、久しぶりだねマスター﹂
!
超あるじゃん愛想。愛想あり過ぎてウザ
?
ウザがられちゃうのかぁ⋮⋮。というか、何
ちょっと、俺愛想ない
がられるまであるよ
?
7
?
!
というか、周りの客怖っ。さっすが裏の世界の方々⋮⋮。あっ、や、
?
!
!
﹁ナンデモナイデスハイ﹂
?
普通に会話しちゃってんですかこの人。えっ、俺どうすればいいのん
﹁⋮⋮座ったらどうだ﹂
﹁あ、はい。どうも﹂
やだこの人かっこいい
﹁それで、何が欲しいんだ⋮⋮どうせ情報だろうが﹂
グラスを拭きながら、白髪のダンディなオジ様は陽乃さんにそう尋
ねた。⋮⋮今度から略して白ダンオジ様と呼ぼう。心の中で。
﹂
金出す
陽乃さんは笑みを浮かべると、
﹁鬼咲千尋について、情報が欲しいん
﹂
高いのやめてね、ホントに。
だ﹂と言ってグラスを傾けた。⋮⋮いつの間に頼んだんだ
のどうせ俺だよね
﹁鬼咲千尋⋮⋮、〝あの〟鬼咲か
﹁そうそう♪ あの、鬼咲だよ﹂
﹁うぇ、やっぱりあの子って⋮⋮
﹁うん。比企谷くんが考えてる通り、彼女はあの鬼咲だよ﹂
・
五万円だよな
マジかー、やっぱりかー⋮⋮メンドくさいなぁ。
﹂
﹁⋮⋮幾ら払う﹂
﹁これでどう
指を五本立てる陽乃さん。五万円かな
﹁どうもー♪﹂
﹁へ
お、俺ですか
﹂
﹁なら、いいが⋮⋮。おい、坊主﹂
﹁⋮⋮わかってるわよ、そんなの身に染みてるもの﹂
﹁あまり能力を過信するな⋮⋮死ぬぞ﹂
も、私と比企谷くんの力があれば敵にならないしねー﹂
﹁まあね、前回ほど荒れないとは思うけれど⋮⋮。何かあったとして
﹁⋮⋮それにしても、今度は鬼咲か。あの時程じゃないが、大物だな﹂
・・・
あっさりと渡しやがったこの人。さっすが元お嬢様ですこと⋮⋮。
﹁うわぁ⋮⋮﹂
?
?
?
?
?
﹁五十か⋮⋮、まあいい。ほら持っていけ﹂
?
?
?
﹁ああ、⋮⋮分かってるな﹂
?
8
!
?
ああ⋮⋮⋮。そうか、この人は⋮。
褒めてないよね
﹂
﹁ええ、まあ、平気っすよ。生きることに関しちゃ、俺は馬鹿なぐらい
しぶといですからね⋮﹂
それ褒めてるの
﹁ゴキブリ並みにねー♪﹂
﹁ちょっと
?
﹁⋮⋮稼いで、ここで金を落としていきな。サービスはするからよ﹂
もない人だろうとか思ったの訂正するわ。
それを受け取り、頭を下げる。いい人だなぁ、この人。さっき碌で
話したら居場所バレちゃうしね。
そう言ってガラケーをカウンターに置くマスター。ああ、普通に電
﹁ふっ、何かあれば連絡しろ。力になろう﹂
?
訂正するわ、やっぱり碌でもない人だったわ。
9
?
やっはろー
第二話:警視庁異能科
﹁あ、ゆきのーん
﹁あら、結衣さん。おはよう﹂
﹂
ら聞こえる﹁雪ノ下様ァ ﹂や﹁もっと蔑んだ目で見てくだサァイ
﹂
せる事で竦み上がり、変な体勢で後ろに下がって行った。時折遠くか
とする者もいたのだが⋮⋮話しかけたくても、貧乳美女が睨みを効か
ですれ違う男性諸君は見惚れていた。鼻の下を伸ばし、話しかけよう
グ貧乳の美女二人が並んで歩く様は大変絵になる。その証拠に署内
朝の挨拶を交わして合流する。片やポニーテール巨乳、片や黒髪ロン
白いトレンチコートを着ている女性二人が、互いに手を振りあって
!
!
槌を打ち、ふふっと声を出して笑う。天使だった。
あ
いろはちゃんだ
おーい
あの時は普段より凄いカッコよかたなぁ⋮⋮﹂
﹁││でね、その時優美子が﹁子供を守るのは、大人の役目でしょ
て言ってね
﹂
﹂
!
!
﹁ふふ、あの三浦さんがそんなことを﹂
いろはさん
!
﹂っ
グの雪ノ下雪乃に笑顔で話しかける。雪乃はそれに微笑みながら相
と、巨乳のポニーテール⋮⋮ではなく由比ヶ浜結衣は貧乳黒髪ロン
だもの。
│││いや、だって聞こえてたら氷漬け。素敵な彫像の出来上がり
に気づかなかった事は、その者たちにとっては幸運だっただろう。
!
?
いるようで、キョロキョロしていた亜麻色の髪をロングにした女の子
に手を振った。⋮⋮その横で、雪乃は小さく手を振っている。決して
視界にブルンブルン揺れるお山を見ないようにして。⋮⋮うぅ。
手 を 振 ら れ た 女 の 子、一 色 い ろ は は 結 衣 と 雪 乃 を 見 つ け る と 〝
パァッ〟と顔を綻ばせ、髪を抑えながら駆け足で二人の元に向かっ
10
!
﹁あ、あとはねぇ∼⋮⋮ん
﹁あら
?
!
!
結衣はその二つのお山をブルンブルン揺らしながら、誰かを探して
?
た。
﹁おはようございますっ。結衣先輩、雪乃先輩
﹂
!
﹂
︶
すっかり大人っぽくなった一色いろはは、相変わらずあざとかった
︵かわいい
いろはちゃん
⋮。いろはすぅ
﹁やっはろー
です
﹁あ、うん
﹂
!
結衣先輩髪型変えたんですね∼、すっごくお似合い
!
﹂と可愛らしく笑うと、髪をく
﹂と口々に
!
に 変 わ っ て い く。量 産 型 雪 の 女 王 が ⋮⋮
いうか楽しそうな職場ですねっ︵白目
恐 ろ し い ⋮⋮ ッ
と
!
を作ると一言。
﹁ばーんっ♡﹂
どうしたのー
全員が倒れ伏した。
﹁いろはちゃーん
﹁あっ、今行きますぅ∼﹂
∼ニャア∼
何言ってんのこいつ。と、尋ねた人はすぐさま返したらしい。
﹁ハートを撃ち抜かましたぁ⋮⋮ッ
﹂
﹂と尋ねると、倒れ伏した一人はサムズアップしてこう呟いた。
この光景を、後から出勤してきた者たちが訝しげに﹁どうしたんだ
そして部屋に消えていった。
﹂
と消えていく。と、いろはは部屋に入る直前に振り返り両手で銃の形
その姿に気づいていない白コート三人は、談笑しながら部屋の中へ
!
言っている。周りの女性陣からの視線がさらに冷たく刺々しいもの
その場に蹲り﹁おふ、メロンっ﹂
﹁女神っ﹂
﹁おっぱ⋮⋮
るくるといじり出した。その姿にハートを撃ち抜かれた男性諸君は
わ﹂と微笑んだ。結衣は﹁えへへ∼
ちらっと雪乃に視線を向けると、雪乃は﹁大丈夫よ、似合っている
!
!
?
えへへ、そうかなぁ∼﹂
﹁はいっ、あれ
﹁おはよう、いろはさん﹂
!
!
?
11
!
?
!
?
﹁おはようございます
﹂
﹁おはようございます﹂
﹁皆さん、おはようでーす♪﹂
上から結衣、雪乃、いろはだ。分かった人には何もあげない。
彼女達が部屋に入ると、そこは高級感溢れるデスクや椅子、ソファ
や棚など調度品が並んでいた。彼女らの挨拶にその場にいた者たち
は﹁おっはよー﹂﹁おはよー⋮⋮ふぁっ、眠っ﹂などと返していく。
三人はそれぞれのデスクに荷物を置き、白いトレンチコートを脱い
で掛けると椅子に座る。雪乃はよく整理されたデスクで、猫に関する
ものがちらほらと置かれている。しっかりとしている彼女らしいデ
スクだ。あ、あと猫好きらしいね。
結衣のデスクは汚いまでとはいかないが、ごちゃごちゃと色々なも
のが置かれている。可愛らしい置物もあり、女の子らしい。
一方、いろはのデスクは二人と違い置物などは置いておらず、きち
んと整理されている普通のデスクだ。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
スルーと開かれた引き出しの中にはお菓子がたくさんはいってい
る。⋮⋮ 個 性 に 溢 れ ま く っ て い る デ ス ク だ っ た。い ろ は は﹁ふ む ふ
﹂
む、流石ですね⋮⋮﹂と呟きながらお菓子を一つ一つ確認していた。
と、そこにドアが開く音が聞こえる。
﹁皆んな、おはよう﹂
﹁っべー、走りまくったわぁ。っはょーす
に筆を走らせている、そこには二人の男性││戸部翔と葉山隼人が絡
かけた。そして隣にいた海老名姫菜は﹁ぐ腐腐﹂と一心不乱にノート
浦優美子はニンジャばりのスピードで服装を直すと、隼人に甘い声を
隼人が入ってきた瞬間、それまで怠そうにしていた金髪の女性⋮三
煩いのは戸部翔である。
爽やかな笑顔でキラキラしているのは、葉山隼人。っべー、っべー、
!
っべー⋮﹂と苦笑いをしている。いい奴だ。葉山隼人
12
!
み 合 っ て い る 絵 が 描 か れ て い た。そ れ を 見 た 戸 部 は﹁あ、海 老 名 さ
ん、っべー
?
ああ、あいつならあーしさんと戯れているよ。
?
そんなこんなで、騒がしく⋮賑やかにしていると、扉からサングラ
平塚先生だ
おはよーございます ﹂と声をかけた。そ
ス を 掛 け た 黒 髪 シ ョ ー ト の 女 性 が 現 れ た。そ れ を 見 つ け た 結 衣 は
﹁あー
!
と、逞しく笑った。逞しく⋮⋮
﹁三十秒は無理ですよぅ﹂
三人は平塚静の言動に﹁相変わらず﹂と思いながら、白いトレンチ
よっか﹂
﹁たはは、まあ、確かにねー。三十秒とはいかないけど、早く準備し
﹁無視しても構わないわいろはさん。平塚先生の悪ふざけよ﹂
?
出勤早々早速だが│││仕事だ、三十秒で支度しなさい﹂
﹁葉山か、ああ、おはよう。ふむ、全員揃っているようだな⋮⋮さて、
﹁あ、平塚さんおはようございます﹂
れに平塚静は片手を上げて﹁おはよう﹂と口の端を上げる。
!
コートをそれぞれ羽織った。
13
!
第三話:能力と対価
東京の某廃墟ホテル。
そこの一室に、見るからに怪しい奴らが集っていた。彼らはテログ
ループ、グールと呼ばれる集団だ。今まで数多くの犯罪を犯し、人の
命を散らしてきた悪逆非道である。彼らの中には能力者もおり、普通
の人間には対処ができなかったのも、彼らを今まで捕まえられなかっ
た要因だろう。
んだよ、リンダ﹂
﹁おい、ジェルミイ﹂
﹁あ
そのリーダー格、ジェルミイとリンダ。どちらも屈強な体つきの男
だ。かつて傭兵であった彼らはグールの中でも能力者であり、最強と
いっていい。今まで負け知らず、やりたい事を好きなだけやってき
た。
﹁今回の標的だが⋮⋮﹂
﹁ああ、今までとは違うな。相手は国のトップだ⋮⋮くくっ、早く殺り
てぇなぁ⋮﹂
﹁おいおい、興奮してんじゃねぇよ。昨日、それで女殺しちまったろう
が⋮。ま、気持ちはわかるがなぁ。くくっ﹂
下衆な笑い声を上げる。
だが、その笑い声はいきなり止まった。ジェルミイとリンダは目つ
きを鋭くし、この廃ホテルの入り口に当たる場所を睨みつけた。その
リーダー格二人の只ならぬ様子に部下たちに緊張が走った。
﹁ジェルミイ﹂
﹁ああ、わかってる﹂
│││能力者が来たぞ。
二人の殺気を滲ませた一言に、部下たちは武器を強く握った。
14
?
∼◆∼
﹁ここだな⋮⋮。海老名、どうだ﹂
﹁はいはーい。ちょーっと待っててくださいね∼﹂
姫菜は平塚にそう言うと、廃墟ホテルの崩れかけたドアに手を触れ
た。その瞬間、彼女の脳裡に廃墟ホテルの構造、中に入る人数、武装
などの情報が流れ出し、手に持った白紙の紙にそれが書き出されてい
く。その全てが書き出されると、姫菜はドアから手を離して構造が書
き出された紙を平塚へと手渡す。
﹁人数は二十四人、全員が銃火器で武装してます。その中で二人は能
力者ですね﹂
﹂
﹁そうか。ご苦労、君は車両に戻ってサポートを頼む﹂
﹁了解しましたー
姫菜は平塚に敬礼をして、白い装甲車の中へと帰っていく。中では
パソコンを開き、花を食べながら敵の動きを監視し始めていることだ
ろう。彼女自身に戦闘能力はないが、サポートに関しては彼女の能力
は強力である。敵からしてみれば、自分達の動きが全て筒抜けだなん
て考えたくもないだろう。
平塚は白いトレンチコートをバサっと揺らしながら、後ろで待機し
ている者達に笑みを浮かべて振り返る。
﹁話は聞いていたな、マップも端末に入っているはずだ。今回のター
ゲットはテログループ〝グール〟だ。人数は二十四人、内二人は能力
持ち。能力者の数で上回っているが、決して油断するなよ。雪ノ下班
﹄
﹂
は一階から上がっていき、制圧。葉山班は隣のビルからいつでも突入
できるように待機だ。さて、行くぞ
│││﹃了解
力強い声が、彼らから放たれた。
﹃次の曲がり角、三人いるよ。待ち伏せしてるみたい﹄
!
15
!
!!!!!!
インカムから聞こえる声に、雪乃達三人は頷いてそれぞれ交戦準備
をしながら近づいて行く。物陰に隠れながら進んで曲がり角の近く
にまで来ると、武装した三人の男が談笑しているのが聞こえた。気が
抜けているわね、と雪乃は呟き、ハンドサインで結衣といろはに指示
﹂
を出した。二人は頷くとそれぞれ動き出す。
﹁侵入者は能力者らしけど、どう思うよ
﹂
場か
﹁⋮⋮いや、違う
この上は│││ッガア
﹂
・・・
﹁うおっ、冷たっ。たく、ボロいホテルはコレだから⋮⋮この上って水
ピチャ⋮⋮ピチャ⋮⋮。
﹁はは、違いないな﹂
﹁能力者でも所詮は人間だろ。コイツで頭ブチ抜けば死ぬさ﹂
?
っと湿った音を出して床に倒れた彼らは全身から血
!
﹂
﹁ええ、そうね。⋮⋮海老名さん、敵の反応はどこに集まっているの
﹁あれから敵には会いませんでしたね、雪乃先輩﹂
∼◆∼
めに音を立てないよう注意しながら駆け出した。
物言わぬ屍と化した三つの死体を飛び越えると、上の階に向かうた
﹁やっぱり慣れないね⋮⋮っと﹂
﹁うわぁー、凄いですね⋮⋮うぷっ﹂
手持ちのお菓子を確認していたいろはに﹁行くわよ﹂と声をかけた。
ていた本のページの端を折りたたむ。そして水を飲んでいる結衣と、
雪乃はそれを確認すると﹁⋮⋮慣れないわね﹂と一言呟き、手に持っ
を流していた。
ドチャァッ
て、武装していた彼らの体に風穴を開けた。あたりに血が飛び散り、
天井から染み出した水が降り注ぎ、その水が鋭い氷の礫に変化し
!
じゃねぇの⋮﹂
﹁ああ
?
﹃んーっと、最上階だね⋮⋮。一番広い部屋、多分パーティ会場だった
16
!?
?
?
﹂
ね、ねぇ、ゆきのん。厳しそうだし、意表
場所で敵の反応がするよ。男達が集まって⋮な、ナニしてるのかなぁ
﹄
﹁ちょ、姫菜擬態しろし
をついてまた天井からとかどうかな
﹁そうね⋮⋮その案で│││﹂
てくる。
っ、とりあえずそこから離れて
パチパチパチパチ。
ステルス
まさか罠、一色ちゃ
囲まれて│││﹄
﹂
﹁はっは、ご明察の通りだよ。お嬢ちゃん、っ
﹁⋮⋮簡単に認めるのね、犯罪者さん
!
│ │ │ 挑 発 し て ど う す る の
⋮⋮。
⋮⋮どう落とし前つける
な、薄暗い。影が沢山あって、いーい場所だよ。はっは⋮⋮さぁて
お嬢ちゃんたち
?
ム カ つ く け ど ね
挑 発 し た ら
その身体で、払ってくれてもいいん
うちの部下、殺してくれちゃったねぇ
のかなぁ
まあ、その後に殺すがなぁ﹂
?
!
﹁⋮⋮ゆきのん、いろはちゃん⋮⋮﹂
﹁うわぁ、気色悪いですー﹂
﹁お断りよ、下衆﹂
だぜ
?
?
でどうにかなるわけでもあるまいし。この建物は明かりがないから
﹁すぐに分かることを、誤魔化す必要はねぇからな。それに、言った所
?
はぁ、いってぇ⋮﹂
﹁探知能力では気づけない隠形⋮⋮影を操る、能力者ね﹂
⋮⋮、
れ る、ま る で 影 か ら 出 て き た よ う に。そ う グ ー ル の 能 力 者 の 力 は
│││もう遅いと言わんばかりに雪乃達を囲むように人の姿が現
で
なん
瞬間移動ならすぐに気づけ
な、なんで⋮⋮っ
いや、でも⋮
﹃えっ、は、反応が消えた
ドー ル
んみたいな人形能力
!
るし、多少の妨害は出来る⋮能力を使ったなら気づくはず⋮
!
!
!
?
!?
音で遮られた。それと同時にインカムから姫菜の焦った声が聞こえ
いきましょうか、と続けようとしたが⋮⋮。それは、手を叩く拍手
?
!
!
﹁⋮⋮ほぉ、威勢がいいなクソガキ﹂
?
?
17
?
﹁あら、キレやすいのね。気持ち悪い﹂
こうなっちゃうよぉっ
⋮⋮ぶっ殺す﹂
﹁ホントです、雪乃先輩。この人気持ち悪いです﹂
﹁ほぉぉおん
│││ほらぁ
﹁⋮⋮はぁ。もういいや⋮⋮気色悪いなぁ﹂
﹁ですです。甘く見ないで欲しいですねぇ、気色悪い﹂
れが酷いわね⋮⋮気色悪い﹂
﹁あら、もう一人の能力者なしで私たちに勝つつもりかしら
!?
自惚
というぐら
?
よ
おい
こ
テメェらクソガキなんぞなぁ、俺一人で十分なんだ
おまえらは手を出すんじゃねぇぞ、分かったな
前らのお仲間も今頃囲まれて殺されてやがるだろーよ あっちに
いつらクソガキは俺一人で嬲り殺してやるゥ⋮ッ。ああ、そうだ、お
?
﹁はっははは
の状況で自分に楯突く馬鹿な女達を見下し、彼は言ってしまった。
・・・・
い顔を真っ赤に染めた男⋮⋮ジェルミイは﹁ハッ﹂と鼻で笑った。こ
強く現れている。血管がブチギレてるんじゃないか
嘲笑しながら罵倒する彼女達の目には、負けるはずがない⋮⋮と力
?
!
?
!
!
はリンダがいる。テメェラも、テメェラのお仲間もあの世行きだァア
!
﹂
ん だ と ク ソ ガ キ
は は、ぶ っ 殺 す
ぜ っ て ぇ、ぶ っ 殺
はっはははははっ﹁そう、情報提供。ご苦労様、間抜けさん﹂ァ
ア
すゥゥ
?
!
││と。
﹁﹁﹁セリフ長げぇんだよ、下衆野郎﹂﹂﹂
ああ││このあと、きっと君たちはこう言うだろう。
!!
!!
18
!
?
第四話:雪ノ下班VS影使い
﹁⋮⋮⋮殺してやるよ、クソガキ共﹂
怒りで顔を歪ませながらも、スゥっと影の中に消えていくジェルミ
イ。雪乃は﹁相手は影使い⋮⋮、それに元傭兵。油断したら殺される
わよ、二人とも。出し惜しみはしないわよ﹂と周囲に気を配りながら
静かに声をかける。結衣といろはのふたりはそれに﹁わかってるよ、
ゆきのん﹂
﹁了解です﹂と答えると、各々身構えた。すると、インカム
から声がかけられる。
﹃ごめん、皆んな。こっちからじゃ探知できないや⋮⋮役に立てなく
てごめんなさい﹄
﹁いえ、いいのよ。気にしないで、とは言わないけれど⋮⋮。そうね、
雪乃はそれにすぐさま気づき、後ろに飛び去る
しか
!
ちらっと結衣といろはを見ると、二人も雪乃と同じような状況だ。絶
対絶命なこの状況だが、雪乃は冷静に思考をしていた。
︵流石に、使い慣れているわね⋮⋮。範囲も広い、速度も早い、術者は
影の中に潜んでいればいい。はあ、一発でも喰らってしまえば、その
場で串刺しね。⋮⋮でも、対価を支払わなければならないはず⋮確か
19
結 局 戦 わ な け れ ば い け な か っ た の だ し、早 い か 遅 い か の 違 い だ わ。
⋮⋮海老名さん、貴方は三浦さん達のサポートをお願い。きっと外で
も戦闘が起こっているはずだから﹂
﹂
﹃⋮⋮っ、うん。わかった。気をつけてね、三人共﹄
﹁ええ﹂
﹁任せて、姫菜
してきた
が、その瞬間、雪乃の頭上││天井の影から黒い槍が勢いよく突き出
集中しだしたのだろう。雪乃は二人にハンドサインを送ろうとする
それを最後にインカムから通信は途絶える。葉山班のサポートに
﹁すぐに終わらせちゃいますよー﹂
!
し、飛んだ先にも無数の槍が突き出して、雪乃の到着を待っていた。
!
現れた時に﹁痛い﹂と口にしていたわね⋮⋮︶
│││対価は、痛みを伴わなければいけない何か⋮⋮。
雪乃は腰の鞄に入れていたペットボトルを取り出すと、素早くナイ
フをコートの内側から引き抜いて、ペットボトルを切りつけた。中身
が飛び出し、雪乃はそれに手を触れさせた。そして、
﹁凍えなさい⋮⋮﹂
と軋む音がなった瞬間に、水が凍りつき、氷の槍へと
ピキ⋮⋮
人形に関しては脅威にすらならねぇな、この二人を殺した後
あと、私の人形を侮らないでください。殺しますよ、お前﹂
﹁ペラペラと口が減らない男ですねぇ、少し黙ったらどうですか
でも、十二分に嬲り殺せる﹂
なぁ
生み出すには水が必要だろ、あといくつペットボトルはあるんだろう
ションは強力だろうが、連携を取らせなければいいだけ。それに氷を
創 り 出 し 操 作 す る 力、か。は っ、大 し た こ と は ね ぇ な。コ ン ビ ネ ー
た、水を氷に変化させ操作する力・水を生み出し操作する力・人形を
﹁ちっ、今ので仕留められねぇか⋮⋮。だが、テメェらの能力は割れ
る。
ていない。こちらも無事なようだ。雪乃は﹁流石ね﹂と笑みを浮かべ
た。熊のぬいぐるみに影の槍は突き刺さっているが、いろはには届い
一方、いろはは自分の身の丈以上の熊のぬいぐるみに抱かれてい
﹁全くですよ﹂
た。
る。それに背を預けて、結衣は鬱陶しそうな顔をしながら立ってい
槍はジェル状になった水に包まれて、弾力のある物体に変わってい
その声に目を向けると、水を周囲に漂わせる結衣の姿がある。影の
﹁危ないなぁ、もう﹂
の姉に似ていた。
骸に降り立つと、ふぅ、と息を吐いて笑う。その笑みはどこか、彼女
から凍えだし、遂には砕いてしまった。雪乃はそのまま砕けた影の残
飛んでいく氷の槍は、影の槍にぶつかると触れた場所
姿を変えた
!
﹁はっ、やれるもんならやってみな。クソガキが、っと⋮⋮っぅ
﹂
?
!
20
!
?
ジェルミイは鼻で笑うと、突然自らの指を折り曲げた。骨がぽきり
と
と鳴り、ジェルミイは痛みを堪えながら笑う﹁はは、殺してやる﹂と。
しつこい男ね、何回も言わなくてもいいのに。馬鹿なのかしら
を飲み、いろははお菓子を食べていた。これは、おそらく能力の対価
雪乃は本のページの端を折りたたむ。少し離れた場所では、結衣が水
?
いえ、影を介して建物の中を移動できるなら、別の
だろう。⋮⋮だとするとこの男の対価はなんだろうか
︵指を折る⋮⋮
?
後はそうね⋮⋮あの男はしつこ
?
人に指を折るところを見せ、さらに人に﹁殺してやる﹂と言わ
︶
すのか、それを見極める。そして、
︵来た⋮
四方八方から影の槍が襲いかかってくる
隙間はない、完全に仕留め
!
雪乃は笑みを深めた。
当然槍は命を奪おうと突き出している
避けたが、その先にも
次の対価で仕留める。目を細めて殺気を感じる。何処から打ち出
﹁了解しました。⋮行きますよ、ベアーくん﹂
﹁うん、わかってる。任せて、ゆきのん﹂
﹁結衣さん、いろはさん﹂
いった自信満々な顔をしていた。
スゥと無言で影に消えていくジェルミイ。負けるはずがない、と
﹁⋮⋮⋮﹂
ほうが楽かしら︶
にもう一人の能力者と合流するかもしれない。⋮⋮ここで、仕留めた
りなのだけれど、外にも影はある。意味はあまりないわね⋮⋮。それ
れど⋮⋮。本来ならこのビルの一部を壊して影を少なくするのもあ
なければいけない⋮⋮。ふふ、随分と面倒で重い対価ね。好都合だけ
い
いぐらい﹁殺してやる﹂と言っていた⋮⋮。そうしなければ、いけな
ころを見られなければならない
ちの目の前でそれを見せる必要性はないはず⋮⋮。人に指を折ると
階で対価を支払い、能力を使用できるようにすればいい。態々、私た
?
!
る。バシャっと床にぶちまけられた水に触れて、自分を囲う檻を創り
再び鞄からペットボトルを取り出し、それらをナイフで切りつけ
るつもりで放たれたものだ
!
!
21
?
終 わ り だ ⋮⋮ ァ ッ
出して、影の槍を防いだ。ああ⋮これで水が入ったペットボトルはな
くなってしまった。
﹁ハ ッ ハ ー そ れ で 最 後 の よ う だ な ⋮⋮ ッ
﹂
!
影で邪魔をしたはず
そして、雪乃はため息を吐いて⋮冷たく吐き捨てる。
﹂
﹁仕方ないわね⋮⋮死になさい﹂
﹁⋮⋮ァ
間抜けな声をあげ、目を見開く。
な ん で 動 か な ⋮ い
こ の 女
と 思 考 が 纏 ま ら な い 頭 で 考 え
雪 乃 が 掴 ん で い る 手 首 か ら、感 覚 が 無 く な っ て い く。あ れ
か、し い な
﹂
る。冷 た い、い や、冷 た さ も 感 じ な い ⋮⋮ ま さ か
⋮⋮ッ
﹁血、液を⋮⋮凍ら、せた、⋮のか⋮⋮ッ
私 が い つ、水しか凍らせる
・・・・・・・
!
私 の 能 力 は 接 触 し た
?
﹁あ ら、驚 く よ う な こ と か し ら
ことができない な ん て 言 っ た か し ら
・・・・・・・
!
!
?
?
のかしら
﹂
﹂
頭を働かせましょうね
元傭兵さん⋮⋮あら、もう耳も聞こえない
﹁能力を知られたとしても、やりようはいくらでも有るもの。少しは
﹁⋮⋮⋮ッ
│││例外なく、凍えさせたわ。
でも分かる人もいたけれど﹂
てこの能力を見た人はよく勘違いするのよね⋮⋮不思議だわ。まあ、
水分を凍結させるというものよ。まあ、多少応用は効くけれど。初め
・・・・・・・・
お
﹂と唸る。一方いろはは熊のぬいぐるみ⋮ベアーくんがジェルミ
!?
イの部下たちが邪魔をしないように、彼らを蹂躙していた。
⋮
ミイの四肢を絡めとる。ジェルミイは﹁なに
ようと試みる。⋮⋮しかし、結衣が生み出したジェル状の水がジェル
うとするが、ジェルミイは素早く蹴りを繰り出し、雪乃の膝を破壊し
かと思われたが、雪乃はジェルミイの手首を掴む。そのまま捻り折ろ
勢い良く振り下ろされたナイフは無防備だった雪乃に突き刺さる
狂気の笑みを浮かべて影から飛び出し、ナイフを振りかぶる。
!
!
?
!
?
?
22
?
!
?
!
│││随分と、汚い氷の彫像ね⋮⋮。
本のページの端を折りたたみ、その場に座り込む。
﹁⋮⋮。っ、震え⋮⋮やっぱり、慣れないわね⋮⋮⋮﹂
殺人への忌避感が薄くなったとはいえ、未だに慣れない。私や他の
人も、きっと⋮⋮まだ。
ベアーくんに担がれて、お菓子を食べながらこちらに向かってくる
いろは。そして空のペットボトルを手に持ったまま駆け寄ってくる
結衣を横目で見た後、ふぅ、と小さく息を吐いた。
23