による飼料中の動物由来 の検出法 PCR DNA

平成 14 年 4 月
策
定
平成 14 年 10 月、平成 15 年 12 月、
平成 17 年 4 月、平成 18 年 3 月改正
PCR による飼料中の動物由来 DNA の検出法
配合飼料、肉骨粉及び魚粉等の飼料中のほ乳動物由来組織、反すう動物由来組織及び牛、豚、鶏
等の各種動物由来組織の有無を、組織中に含まれるミトコンドリア DNA の各動物特異的配列を
PCR 法で検出することにより確認する。
1
試料及び検出対象
1.1
対象試料
配合飼料、肉骨粉及び魚粉等の飼料を対象とする。
1.2
検出対象生物種
ほ乳動物、反すう動物、牛、豚、鶏、羊・山羊、魚、植物等。
下表に、各種プライマーにより検出可能な生物種を示す。
表
検出対象生物種
プライマーの種類
①ほ乳動物検出プライマ-[anicon5,
anicon3]1)
②反すう動物検出プライマ-[ rumicon52,
rumicon32]1)
③牛検出プライマ-[cow52, cow31]1)
④牛検出プライマ-[L8129, H8357]2)
⑤鶏検出プライマ-[chick5-1, chick3-1]3)
⑥羊・山羊検出プライマ-[SIM, sheep
primer S]4)
⑦豚検出プライマ-[pig5-3, pig32-2]1)
⑧植物検出プライマ-[placon5, placon3]1)
⑨魚類検出プライマー[FM5, FM3]3)
検出確認済の生物種
牛、豚、羊、山羊、馬、鹿、うさぎ、鯨
(人、鳥類、魚介類 注)、植物は検出しない)
牛 、羊 、山羊 、鹿( 豚 、馬 、うさぎ 、鯨 、鳥類 、
魚介類、植物は検出しない)
牛(豚、羊、山羊、馬、鹿、うさぎ、鯨、鶏、
魚介類、植物は検出しない)
牛(豚、羊、山羊、馬、鹿、鯨、鶏、魚介類、
植物は検出しない)
鶏、うずら(牛、豚、羊、山羊、馬、鹿、うさ
ぎ 、鯨 、アジ 、イワシ 、カタクチイワシ 、カツオ 、
サケ、サバ、サンマ、スケソウダラ、ニジマス、
マグロ 、カニ 、エビ 、アサリ 、植物は検出しない )
羊、山羊(牛、豚、馬、鹿、鯨、鶏、魚介類は
検出しない)
豚(牛、羊、山羊、馬、鹿、うさぎ、鯨、鶏、
魚介類、植物は検出しない)
トウモロコシ、イネ、大豆、テンサイ、小麦、
大麦、ナタネ、イネ科牧草(牛、豚、鶏、魚介類
は検出しない)
アジ 、イワシ 、カタクチイワシ 、カツオ 、サケ 、
サバ、サンマ、スケソウダラ、ニジマス、マグロ
(牛、豚、羊、山羊、馬、鹿、うさぎ、鯨、鶏、
カニ、エビ、アサリ、植物は検出しない)
注)魚介類は、スケソウダラ、サケ、イワシ、カニ、エビ、アサリについて確認
1.3
検出感度
本法による飼料中の肉骨粉等の検出感度(原物含量%として)は次のとおり。
①ほ乳動物検出プライマー・・・・肉骨粉(牛由来)として 0.1 ~ 0.01 %
②反すう動物検出プライマー・・・肉骨粉(牛由来)として 0.1 ~ 0.01 %
③,④牛検出プライマー・・・・・肉骨粉(牛由来)として 0.1 ~ 0.01 %
⑤鶏検出プライマー・・・・・・・チキンミール(鶏由来)として 0.1 ~ 0.01%
⑦豚検出プライマー・・・・・・・肉骨粉(豚由来)として 0.1 %程度
⑨魚類検出プライマー・・・・・・魚粉として 0.01 ~ 0.001 %
⑥、⑧のプライマーの検出感度は未確認。
肉骨粉の検出感度は、肉骨粉の原料動物の使用比率、製造方法(加熱処理条件)及び骨成分
の含有比率等によって異なる場合がある。
2
試料の採取及び粉砕
2.1
試料の採取
原則として、試料は、工場内保管時等に他の原料あるいは環境からの汚染物質が混入する可
能性のない包装品から採取する。
採取方法は、微生物試験用試料の採取法に準じ、対象試料以外の物質の汚染がないように慎
重に採取する。
採取時は、プラスチック製手袋をつけ、滅菌済みスコップ等を使用し、約 500g を滅菌済み
採取袋に採取する。
2.2
粉砕等
肉骨粉 、魚粉については 、原則として粉砕は行わない( 粉砕時の汚染の危険性が大きいため )。
荒かす等粒度の大きい骨片等が含まれる場合には、清浄な網ふるい( 1mm)でふるい分けして
通過物を採取する。
配合飼料については、 1mm の網ふるいを通過するまで粉砕する。その際は、試料間の相互
汚染を防止するため、試料ごとに粉砕器を洗浄あるいは交換する。
2.3
試料の保存
試料は冷蔵保存する。なお、微粉砕した試料を長期間(1週間以上)保存する場合には、
冷凍庫(- 20 ℃以下)で保存する。
3
試験方法
3.1
試薬の調製
使用する水は、特記しない場合はイオン交換水または蒸留水とする。 PCR 反応液の調製に
用いる水及び抽出 DNA の希釈に用いる水及び下記に特記したものについては、高圧蒸気滅菌
(121 ℃、 15 分間)した超純水(逆浸透膜で精製した RO 水又は蒸留水を、 Milli-Q 等で比抵抗値
17M Ω・ cm まで精製したもの。以下同じ 。)を用いる。
1)
組織・細胞用ミトコンドリア DNA 抽出キット
mtDNA エキストラクター CT キット(和光純薬)又はこれと同等のものを用いる。
2)
0.5M EDTA 溶液( pH8.0)
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物 18.6g を超純水 60mL に加え、水酸化ナト
リウム( 粒状 )約 2g を加えて溶かし 、pH8.0 に調整した後 、超純水を加えて 100mL とし 、121
℃で 15 分間高圧蒸気滅菌する。
3)
1M トリス塩酸緩衝液
トリスヒドロキシメチルアミノメタン 12.1g を超純水 60mL に加え、塩酸約 4.2mL を加え
て溶かし、 pH8.0 に調整した後、超純水を加えて 100mL とし、 121 ℃で 15 分間高圧蒸気滅
菌する。
4)
電気泳動用緩衝液( TAE 緩衝液)
トリスヒドロキシメチルアミノメタン 4.84g、酢酸 1.14mL 及び 0.5M EDTA 溶液 2mL を水
に溶かして 1,000mL とする。
5)
TE 緩衝液
1M トリス塩酸緩衝液 1mL 及び 0.5M EDTA 溶液 0.2mL を超純水に溶かして 100mL とし、
121 ℃で 15 分間高圧蒸気滅菌する。
6)
アガロースゲル
電気泳動用アガロース(ニッポンジーン)又はこれと同等のもの 2.5g を電気泳動用緩衝
液 100mL に加え、加熱して溶かし、 50 ~ 60 ℃に冷却させた後、ゲルの厚さが 3 ~ 4mm に
なるようゲル形成型に流し込み、ゲルとコームの間に気泡が入らないよう慎重にコームを差
し込み、室温に放置して固化させる。
7)
泳動用色素溶液
ブロモフェノールブルー 25mg、キシレンシアノール 25mg 及びグリセリン 3g を超純水に
溶かして 10mL とし、 121 ℃で 15 分間高圧蒸気滅菌する。
8)
DNA サイズマーカー( 50 ~ 1,000bp)(タカラバイオ等)
9)
臭化エチジウム溶液
臭化エチジウム( Aldrich Chem.) 10mg を超純水 1,000µL に溶かして臭化エチジウム原液
を調製し、使用時にこの原液 50μL を電気泳動用緩衝液 1,000mL に溶かす(用時調製 )。
なお、臭化エチジウム原液は、光分解性があるため、遮光して冷蔵保存する。また、臭化
エチジウムは発ガン性があるため、取り扱う際には必ず手袋を用い、試験終了後、吸着剤の
入ったフィルター等を用いて処理した後、廃棄する。臭化エチジウム染色したアガロースゲ
ルは、 5 %次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸積後、直射日光下に放置して光分解させた後、廃
棄する。
10)
ジルコニアビーズ(径 1.5mm)
YTZ ボール( ニッカトー )又はこれと同等のものを 、121 ℃で 15 分間高圧蒸気滅菌する 。
11)
プライマー
①ほ乳動物検出プライマー[anicon5, anicon3]:検出バンドサイズ
②反すう動物検出プライマー[rumicon52, rumicon32]: 104bp
③牛検出プライマー[cow52, cow31]: 126bp
④牛検出プライマー[L8129, H8357]: 271bp
⑤鶏検出プライマー[chick5-1, chick3-1]: 133bp
⑥羊・山羊検出プライマー[SIM, sheep primer S]: 331bp
176bp
⑦豚検出プライマー[pig5-3, pig32-2]: 126bp
⑧植物検出プライマー[placon5, placon3]: 140bp
⑨魚類検出プライマー[FM5, FM3]: 78bp
12)
PCR 反応用酵素
Ampli Taq Gold( Applied Biosystems)
13)
PCR 緩衝液
PCR buffer Ⅱ( Applied Biosystems)、 PCR Gold buffer( Applied Biosystems)又はこれらと同
等のもの。
14)
2mM dNTPmix( Applied Biosystems)
15) 25mM MgCl2( Applied Biosystems)
16)
陽性コントロール DNA
牛ミトコンドリア DNA、鶏ミトコンドリア DNA、羊ミトコンドリア DNA 等。
牛肉等から 3.4 の項により抽出した DNA を用いる。
17)
クロロホルム
18)
エタノール
19)
次亜塩素酸ナトリウム溶液 (有効塩素濃度 0.5%)
次亜塩素酸ナトリウム液に水を加え有効塩素濃度 0.5%となるように調製する。
20)
0.5M EDTA ・プロテナーゼ溶液 (pH8.0 , 0.25 mg/mL Proteinase K 含有)
プロテナーゼ K (SIGMA、 activity 41 unit/mg) 又はこれと同等のもの 100 mg を 0.5M EDTA
溶液 8 mL に溶かして原液を調製する。使用時に原液 1 mL を 0.5M EDTA 溶液 49 mL に加え
て調製する。
3.2
1)
装置及び器具
サーマルサイクラー
Gene Amp PCR System 9600、 Gene Amp PCR System 9700( Applied Biosystems)、 PCR
Thermal Cycler MP(タカラバイオ)又はこれらと同等のもの。
2)
クリーンベンチ(陽圧のもの)
3)
ビーズ破砕装置
2,000rpm 程度の回転数があり、 2mL チューブに対応するもの。
BC-20(セントラル科学貿易 )、マルチビーズショッカー(安井器械 )、 FastPrep FP120(フ
ナコシ )、 Mixer Mill MM300(QIAGEN)又はこれらと同等のもの。
4)
オートクレーブ
5)
電気泳動装置
Mupid-2(アドバンス)又はこれと同等のもの。
6)
ポラロイドカメラ
7)
UV トランスイルミネーター
コスモバイオ製( 365nm 又は 312nm)又はこれと同等のもの。
8)
高速冷却遠心機
1.5mL 及び 0.2mL チューブ対応、 4 ℃の冷却、 12,000×g の遠心分離が可能なもの。
9)
マイクロピペット( 1000、 200、 100、 20 及び 2µL 用のデジタル可変型のもの)
10) その他 2mL、 1.5mL 及び 0.2mL の各種プラスチック製チューブ及び各種マイクロピペット
用チップ等(滅菌済みのもの)
11)
比重分離用ロート又は分液ロート
比重分離及び次亜塩素酸ナトリウム処理等
3.3
法令上牛用飼料への使用が認められている、脱脂粉乳及び乾燥ホエー等の乳製品、全卵粉及
び卵白アルブミン等の卵製品、並びにゼラチン・コラーゲンが 10 %以下の量で配合されてい
る飼料及びこれらの混入の可能性がある飼料について、これらの影響を受けずに肉骨粉等の動
物由来組織の混入の有無を検査する場合には、本項による処理を行う。
1)
試料 1.0g を量って、あらかじめ 2/3 の高さまでクロロホルムを入れた比重分離用ロートに
入れ、ガラス棒を用いてかき混ぜた後、上部から 5mm の高さまでクロロホルムを加えて 20
分間静置する。上清を捨て、比重分離用ロートの 2/3 の高さまでクロロホルムを加えてかき
混ぜた後、上部から 5mm の高さまでクロロホルムを加えて 10 分間静置する。この操作を 1
回繰り返す。
2)
上清を捨て、沈殿物及びクロロホルムをろ紙 ( No.5A) でろ過し、更に少量のエタノール
で洗浄する。ろ紙を乾燥した後、スパーテルを用いてろ紙上の残渣を 15mL のプラスチック
製遠心管に移し、 0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液 10mL を加えて激しく振り混ぜた後、 10
分間静置する。
3)
上清を吸引除去し、超純水 10mL を加えて振り混ぜ、 5 分間静置する。この操作を 1 回繰
り返した後、上清を吸引除去し、 0.5M EDTA・プロテナーゼ溶液 10 mL を加えて 37 ℃で 18
~ 48 時間静置する。
4)
3,500×g で 10 分間遠心分離し、上清を吸引除去した後、超純水 10mL を加えて混合し、
3,500×g で 10 分間遠心分離した後、上清を吸引除去する。
3.4
DNA の抽出
これまで肥飼料検査所で検討し比較的良好な結果が得られている市販の組織・細胞用ミトコ
ンドリア DNA 抽出キット「 mtDNA エキストラクター CT キット 」(和光純薬)を用いた DNA
の抽出法について説明する。
なお、肉骨粉の DNA の抽出方法としては、他にフェノールクロロホルム法、グアニジンチ
オシアネート緩衝液を用いる方法( Tartaglia ら 2))、キレックス樹脂を用いる方法 (Wang ら5 ))
等の報告がある。
1)
3.3 の処理を行った場合にあっては当該処理により得られた沈殿物を、それ以外の場合に
あっては試料 100mg を 2mL プラスチック製ねじ口チューブに採取し、ジルコニアビーズを
1.5g 程度入れ 、抽出用緩衝液( mtDNA 抽出キットに添付 )1mL を加えて 、ビーズ破砕装置 注)
にセットし、 2,000rpm で1分間振とうする。1分間静置した後、再度 2,000rpm で1分間振
とうし、氷冷後 1,000×g で2分間遠心分離 (4 ℃)する。
注)通常のホモジナイズ抽出でも良いが、試料間の相互汚染に注意を要する。
2)
上清を 1.5mL プラスチック製チューブに採取し、 10,000×g で 10 分間遠心分離(4 ℃)し、
上清を除去する。
3)
DNA 抽出溶液Ⅰ(キットに添付) 50µL を加えてピペッティングによりけん濁させ、さら
に DNA 抽出溶液Ⅱ(キットに添付) 100µL を加えて混合後、 5 分間氷冷する。
4)
これに、予め氷冷しておいた DNA 抽出溶液Ⅲ(キットに添付) 75µL を加え、ボルテック
スミキサーで混合後、直ちに氷冷する。
5) 12,000×g で 5 分間遠心分離 (4 ℃)した後、上清約 200µL を採取し、新しい 1.5mL チューブ
に移す。
6)
これにヨウ化ナトリウム溶液(キットに添付) 300µL を加えて混合し、さらに 500µL のイ
ソプロパノールを加えて混合する。
7)
12,000×g で 10 分間遠心分離(室温下)した後、上清を除去する。
8) 1 mL の 70%エタノールを加え混合後、 12,000×g で 5 分間遠心分離し、上清を除去する。
再度1 mL の 70%エタノールを加え混合後、 12,000×g で 5 分間遠心分離し、上清を除去して
減圧乾燥した後、 20µL の TE 緩衝液を加えて DNA を溶解する。この DNA 溶液は、冷凍保
存する。
3.5
PCR 反応
一般的な PCR 法の操作に準じる。
ほ乳動物由来 DNA の検出にはプライマーセット[anicon5, anicon3]、反すう動物由来 DNA の
検出には[rumicon52, rumicon32]、牛由来 DNA の検出には[cow52, cow31]又は Tartaglia ら 2)の
[L8129, H8357]を用いるとよい。
各プライマーを用いる際の PCR の反応条件は、別紙「 PCR 反応条件」に示した。
以下に、操作法の概略を示した。
1)
200µL のプラスチック製チューブに PCR 反応液 18µL 及び抽出 DNA 溶液の 10 倍希釈液
2µL を加えたものを、 PCR 反応用の試料液とする。
2)
同様に、 PCR 反応液 18µL 及び牛由来 DNA 溶液の 10 倍希釈液 2µL を加えたものを陽性コ
ントロール液、 PCR 反応液 18µL 及び水 2µL を加えたものを陰性コントロール液とする。
3) 試料液、陽性コントロール液及び陰性コントロール液をサーマルサイクラーに入れ、別紙
の反応条件で PCR 反応を行う。
3.6
電気泳動
1) アガロースゲルを電気泳動用緩衝液を入れた泳動槽に入れ、 10 分間 100 Vの定電圧をかけ
て予備泳動する。
2)
DNA サイズマーカー 5µL に約 1µL の泳動用色素溶液を加えて混合し、その全量をアガロ
ースゲルのスロットに注入する。
3)
PCR 反応の終了した試料液 、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれぞれ 5µL に 、
約 1µL の泳動用色素溶液を加えて混合し、その全量をアガロースゲルのスロットに注入す
る。
4)
100V の定電圧をかけ、ブロモフェノールブルーがスロットから 3 ~ 4cm 移動するまで電
気泳動を行う。
5)
電気泳動の終了したアガロースゲルを臭化エチジウム溶液に約 30 分間浸し、染色する。
6)
アガロースゲルを UV トランスイルミネーターに載せ、 365nm 又は 312nm の紫外線を照射
し、試料液で検出された DNA バンド位置を、サイズマーカーのバンド位置と比較して DNA
断片サイズを求める。
白黒フィルムを用いてポラロイド写真を撮影する。
3.7 判定方法
1) 陽性コントロールで検出サイズのバンドが検出され、陰性コントロールでバンドが検出さ
れず、かつ試料において陽性コントロールと同一サイズのバンドが検出された場合は陽性と
する。
2) 陽性コントロールでバンドが検出されない場合、及び陰性コントロールでバンドが検出さ
れた場合には、 PCR 反応が正常に行われていない可能性があるため、再試験が必要である。
4
検査に当たっての注意事項等
試験操作上の注意事項
4.1
PCR 法は、検出感度が高く、極微量の DNA でも検出されることから、分析操作中は、目的
外の DNA の混入防止に細心の注意を払う必要がある。また、 DNA は微生物や人の皮膚等に存
在する DNA 分解酵素により分解されることから、この酵素の混入防止のため、滅菌などの適
切な操作を行う必要がある。
マイクロピペット用チップは 、滅菌済みのものを用い 、操作毎に毎回新しいものに変える 。
1)
フィルター付きのチップを用いるのが望ましい。
2)
分析操作中は、プラスチック製手袋を着用し、さらに手袋は消毒用アルコールでふく。
3) サンプリング及び粉砕を行う場所、 PCR 操作を行う場所及び電気泳動を行う場所は分離す
るのが望ましい。 PCR 反応液の調製は、清浄な場所で行う。
検査精度の確保上の注意事項
4.2
1) 1検体の試料について、 DNA の抽出は2点並行で行い、2点の抽出 DNA について PCR 反
応をそれぞれ2点並行で実施する。
2) PCR 反応を行う際には、必ず陽性コントロールと陰性コントロールを同時に反応させる。
3)
ダブルチェックのため、プライマーは2種類以上を用いて行うことが望ましい。例えば、
牛、羊等の動物種を識別する際には、ほ乳動物検出プライマー及び各種動物検出プライマー
を用いるとよい。
4.3
試験結果の取り扱い
1検体当たり2点の抽出 DNA のうち、2点ともに陽性の結果が得られた場合にのみ陽性と
判定する。
参考文献
1)
T. Kusama, T. Nomura and K. Kadowaki ; Journal of Food Protection Vol.67 ( 6), 1289-1292 (2004)
(国内特許出願:特願 2001-366120,特願 2004-116302)
2)
Marco Tartaglia, Ernestina Saulle, Simonetta Pestalozza, Luisella Morelli, Giovanni Antonucci, and Piero
A. Battaglia ; Journal of Food Protection 61 ( 5), 513 (1998)
3) 野村哲也,草間豊子;飼料研究報告 vol. 30( 2005), 52(国内特許出願:特願 2005-100884)
4)
T. Matsunaga,
K. Chikuni, R. Tanabe, S. Muroya, K. Shibata, J. Yamada and Y. Shinmura; Meat
Science 51, 143 ( 1999)
5)
R-F. Wang, M.J. Myers, W. Campbell, W-W. Cao, D. Paine and C.E. Cerniglia; Molecular and Cellular
Probes 14, 1 (2000)
6)
A. Toyoda, T. Nakajo, H. Kawachi, T. Matsui and H. Yano: Journal of Food Protection, Vol.67( 12),
2829-2832 (2004)
PCRによる動物由来DNAの検出法
試
料 (配合飼料及び飼料原料)
・ 1 mm 程度まで粉砕 (配合飼料のみ)
(乳製品、卵製品、ゼラチン及びコラーゲンが含まれている場合)
比重分離
・試料1gを比重分離用ロートに採取
・クロロホルムを加えて 20 分間静置
・ろ過により沈殿物を採取
次亜塩素酸処理
・次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度 0.5 %)を加えて 10 分間処理
・洗浄(水)後、上清除去
EDTA・酵素処理
・ 0.5M EDTA 溶液(0.25mg/mL プロテナーゼ K)を添加(37 ℃で 18 ~ 48 時間処理)
・遠心分離(3,500×g、 10 分間)後、沈殿物を採取
DNA の抽出 (市販組織・細胞用 DNA 抽出キット使用)
・試料 100mg(又は沈殿物の全量)に約 10 倍量の緩衝液添加 (キット添付)
・ビーズ破砕法により破砕
・遠心分離 (1,000×g、 2 分間) 後、上清採取
・遠心分離 (10,000×g、 10 分間) 後、上清除去
・キットの手順に従って DNA を抽出精製
PCR 反応
・検査対象のプライマーを添加した PCR 反応液を調製 (PCR 反応チューブ)
<プライマーの種類>
・ほ乳動物検出プライマー
・反すう動物検出プライマー
・牛、豚、鶏、魚、植物等各種生物検出プライマー
・ PCR チューブに抽出 DNA、陽性コントロール、陰性コントロールを添加
・ PCR 反応による DNA 増幅
電気泳動
・ PCR で増幅した DNA をサイズで分離 (2.5%アガロースゲル使用)
・ DNA をエチジウムブロマイドで染色
・ 365 nm 又は 312 nm 紫外線照射下で画像撮影
判
定
陽性コントロールと同一サイズのバンドが検出されたものを陽性とする。
別紙
PCR 反応条件
①ほ乳動物検出プライマーセット[anicon5, anicon3]
Primer
②反すう動物検出プライマーセット[rumicon52, rumicon32]
③牛検出プライマーセット[cow52, cow31]
⑤鶏検出プライマーセット[chick5-1, chick3-1]
⑦豚検出プライマーセット[pig5-3, pig32-2]
⑧植物検出プライマーセット[placon5, placon3]
⑨魚類検出プライマーセット[FM5, FM3]
なお、④牛検出プライマーセット[L8129,H8357]及び⑥羊・山羊検出プライマーセット[SIM,
sheep primer S]の PCR 反応条件は、参考文献 2) 及び 3) のとおり。
2. PCR の反応液組成 (酵素として Ampli Taq Gold を使用の場合)
1PCR チューブ (20 µL 当たりの組成)
H2O(超純水 )
4.7 µL
10×PCR Gold Buffer
(non-MgCl2)
2.0 µL
dNTP mix (2 mM)
2.0 µL
MgCl2
(25 mM)
1.2 µL
primer5’(2 µM)
4.0 µL
primer3’(2 µM)
4.0 µL
Ampli Taq Gold
0.1 µL (0.5 unit)
Template DNA(10 倍希釈液 )
2.0 µL
合計
20.0 µL
注 ) Template DNA は 、「 mtDNA エキストラクター CT キット」 (和光純薬 ) により抽出した
DNA を使用。
3.反応条件
サーマルサイクラー (Gene Amp PCR System 9700 (Applied Biosystems) を使用の場合 )
1) Primer ①③⑤⑧⑨使用時
95 ℃ 9 分
↓
92 ℃
30 秒
55 ℃
30 秒
95 ℃ 9 分
↓
92 ℃
30 秒
45 サイクル
72 ℃
30 秒
↓
72 ℃ 5 分
95 ℃ 9 分
↓
92 ℃
30 秒
60 秒
72 ℃
60 秒
↓
72 ℃ 5 分
50 ℃
30 秒
72 ℃
30 秒
↓
72 ℃ 5 分
3) Primer ⑦使用時
60 ℃
2) Primer ②使用時
45 サイクル
45 サイクル