政策過程と政策形成

2016年年10⽉月21⽇日
第4回「地⽅方⾃自治論論Ⅱ」
政策過程と政策形成
社会学科
⾼高橋 洋
政策過程=Policy Cycle
②政策⽴立立案
①課題設定
③政策決定
⑤政策評価
④政策実施
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外部環境:社会・住⺠民
政策に関係するサイクル
●予算のサイクル
・単年年度度主義
●⼈人事のサイクル
・国:2年年単位
・⾃自治体:3〜~5年年単位
●選挙のサイクル
・⾸首⻑⾧長選挙、議会選挙:4年年単位
・マニフェスト選挙⇒総合計画などへの影響
●総合計画のサイクル
・基本構想10年年、基本計画5年年
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①課題設定
●課題の発⽣生
・公共的な課題:何を政策として扱うか?その範囲、優先順位
・要素・契機:重⼤大事件の発⽣生、社会指標の悪化、違憲判決
・制約条件:予算、⼈人員、時間
●争点化
・社会的関⼼心:「保育園落落ちた⽇日本死ね!」
・政治的意思:「郵政⺠民営化」
・争点化させない、扱わないという決定
●課題設定の主体
・政治家:選挙の⾒見見返りに?⾃自らのライフワーク?
・官僚僚制:専⾨門性、継続性、公共性
・利利益集団:個別利利益の実現
・マスメディア、学者・有識識者:中⽴立立的?
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②政策⽴立立案
●課題に対して解決⼿手段を策定
・技術的側⾯面、法制的側⾯面、予算的側⾯面
・そのための調査研究:役所内勉強会、審議会の活⽤用、アウトソース
●⽴立立案主体
・官僚僚制(未だに最⼤大の役割):専⾨門性、情報の独占
・審議会:地⽅方⾃自治法138条4、「隠れ蓑」批判
・議員(与党・野党):議員⽴立立法
●介⼊入・影響主体
・学者、シンクタンク、NPO、住⺠民
・マスメディア
・利利益集団、利利害関係者
・国、他の⾃自治体
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③政策決定
=⺠民主的⼿手続きを経て、正統性を確保する必要性
・ボトムアップ型、トップダウン型
●国の場合
・省省議⇒事務次官等会議(事実上の決定?)⇒閣議決定
・⾮非公式に:与党事前審査、根回し
・国会:法案の審議→修正、付帯決議、会期切切れで廃案
・両院において過半数で可決、2/3再可決(憲法59条)
●⾃自治体の場合
・庁議:⾸首⻑⾧長+幹部職員⇒⾸首⻑⾧長が決定
・議会:条例例案の審議、根回し
⇒問い:国と地⽅方の本質的な違いは?
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政策決定のモデル
●エリート論論
・⼤大衆は政策に無関⼼心・受動的
・限られたエリートが政治を⽀支配
(「鉄の三⾓角形」)
⇒官僚僚を中⼼心として、現状秩序維
持的な決定が多くなる
●多元主義論論
・官僚僚や政治家以外に多数の利利益
集団が競合し、権⼒力力は分散的
・これら主体間の相互作⽤用を通じ
て、個別的・結果的に意思決定
⇒現状変更更是認的
●合理理的選択モデル
・政治主体があらゆる選択肢を考慮
し、⽬目的合理理的に⾏行行動
・解決策の費⽤用対効果を評価し、
効⽤用最⼤大化の⼿手段を採⽤用
●増分主義 : Incrementalism
・過去の政策の成果を所与のもの
とし、その延⻑⾧長線上で考える
・利利⽤用可能な資源の増加部分のみ
を配分対象とする
●ゴミ箱モデル
・政治主体の選好や関連技術は不不
明瞭、参加のあり⽅方は流流動的 7
・「組織化された無秩序」の中で、
偶然の産物として政策決定
④政策実施
●実施=⾏行行政機関の本分
・国、その下部組織・地⽅方組織
・地⽅方⾃自治体:都道府県、市町村
⇒国⺠民から⾒見見れば、実施こそ政策そのもの!
実施段階①:法令令をより具体化
・法律律・条例例は抽象的レベルの規定のみ
⇒政令令、省省令令、規則、基準、⼿手順の制定
例例:道路路交通法⇒道交法施⾏行行令令⇒各道路路で最⾼高速度度を設定
実施段階②:具体的に現場にて基準を適⽤用
・⾏行行政裁量量の問題:法令令・規則で全てを規定するのは不不可能
○⾏行行政の現場での最適な判断、柔軟な対応
×⾏行行政による公権⼒力力の濫濫⽤用、恣意的決定の恐れ
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地⽅方公務員と政策実施
<部⾨門別地⽅方公務員数:平成27年年4⽉月1⽇日時点>
⺠民⽣生・衛⽣生関係を
除く⼀一般⾏行行政関係
7%
⺠民⽣生・衛⽣生関係
23%
12%
教育関係
地⽅方公務員数
(普通会計)
238万⼈人
43%
15%
警察関係
消防関係
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出典:総務省省『平成28年年版 地⽅方財政⽩白書』
実施の裁量量とストリート・レベルの⾏行行政官
●M. Lipsky “street-‐‑‒level bureaucrats”
例例:外勤警察官、学校教員、ケースワーカー
・広い裁量量を持って、現場で対象者と直接接触しながら職務遂⾏行行
・上司の監督が⽇日々細かには⾏行行き届かない
①法適⽤用の裁量量(全ての執⾏行行段階で発⽣生)
・千差万別の対象者に対して、どう判断するか?
・社会福祉⼠士:どのような⽣生活指導をするか?
②エネルギー振り分けの裁量量
・限られた時間と資源をどう効率率率的に使うか?
・警察官:駐在するか、お巡りか?
●職員管理理⽅方法
・細かな通達で縛る、⼀一定期間ごとに転勤、頻繁な教育訓練
・「業務記録」を基に勤務評定
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官⺠民連携:Public Private Partnership
個別委託 指定管理理者制度度
PFI
コンセッション⽅方式 完全⺠民営化
施設所有権
ー
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ー
ー
○
経営・計画
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○
設計・建設
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ー
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○
法的管理理
ー
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○
○
○
運営管理理
○
○
○
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○
維持管理理
○
○
○
○
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○
出典:岩崎(2013)
⑤政策評価
〜~なぜ評価が必要か?
・限られた⾏行行政資源の有効活⽤用、成果主義 ⇔財政⾚赤字
・情報公開、説明責任 ⇔政府の無謬性
事 前 評 価
・政策⽴立立案段階で、その必要性・妥当性を検証
・環境アセスメント、⼊入札
内部評価主体
・実施省省庁、総務省省
・⾃自治体
政策実施
外部評価主体
・会計検査院、国会
・NPO、シンクタンク
事 後 評 価
・政策執⾏行行後に、事業活動の有効性や結果を評価
・プログラム評価
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評価の基準と指標
●評価基準
・必要性、 有効性効率率率性、公平性、協働性
●評価の指標・データ
・投⼊入資源(input):予算、⼈人員
・産出量量(output):具体的な数値としての活動実態
・影響(outcome):間接的・社会的な影響まで含めて
●評価の問題点:
・定量量的指標の乏しさ、有効活⽤用のなさ、膨⼤大なコスト
⇒問い:道路路建設の場合の具体的評価指標は?
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⽇日本の政策評価制度度:⾃自治体が先⾏行行
●1990年年代〜~:先駆的地⽅方⾃自治体において政策評価実施
・緊縮財政下で政策に優先順位を付け、⾏行行政資源を効率率率活⽤用するため
三重県:事務事業評価システム
・1996年年〜~:⽬目的評価表によって事務事業を評価し、予算編成に反映
・総合計画の中での事業の位置づけ、数値指標による⽬目的に鑑みて
北北海道:時のアセスメント
・1996年年〜~:⻑⾧長期間停滞している施策を再評価する
具体例例:1976年年〜~:⽩白⽼老老ダム建設計画⇒1998年年:中⽌止に
⇒⾏行行政機関が⾏行行う政策の評価に関する法律律(2001年年6⽉月制定)
・3条:⾏行行政機関は、(※中略略)政策効果を把握し、(※中略略)必要
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性、効率率率性⼜又は有効性の観点(※中略略)から、⾃自ら評価するととも
に、その評価の結果を当該政策に適切切に反映させなければならない。
⑥政策継承と政策⾰革新
〜~政策評価を以て、政策過程は終わる?
1:継承、改善して継承(課題は未だ存在)
2:廃⽌止(課題は解消)
●ホグウッドの研究:Policy Succession
=組織創設・継承・廃⽌止を調査
・戦後、組織創設が多かったが、70年年代以降降は組織継承が多くなった
・政策継承の背景:初期費⽤用の抑制、継続への期待、政策空間の飽和
⇒⼀一度度始めた政策は継承され易易い!
●政策⾰革新:Policy Innovation
=全く新たに政策を⽴立立ち上げる:⼤大きな変化をもたらす
○社会的注⽬目が⾼高くなり、政治家のクレジットになり易易い
×既存の制度度や知識識が活⽤用できず、展開が困難
×既存の政策に対する⽀支持、その廃⽌止に対する反対
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まとめ:⾃自治体の政策過程の特徴
●⾸首⻑⾧長のリーダーシップ
・独任制、役所内部での⼈人事権:トップダウン型
・議会との関係
●国との関係の重要性
・権限上の制約:旧来の機関委任事務
・利利益誘導型政治:公共事業の獲得
・財政上の制約:3割⾃自治、地⽅方交付税や補助⾦金金への依存
●実施の現場の重要性
・ストリートレベルの⾏行行政官:警察官、消防⼠士、教員
●住⺠民⾃自治の役割
・直接請求権:条例例の制定・改廃、事務監査
・住⺠民参加条例例、住⺠民投票条例例
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