京都大学経営管理大学院 導入科目「基礎経営学」 企業統治 (コーポレート・ガバナンス) 曳野孝 企業統治? コーポレート・ガバナンス? • 主体: 株主、従業員を中心とする企業への 必要資源(resources)の提供者 • 対象: 主体のエイジェントとしての経営者 • 内容: 経営者が誰の利害、利益を極大化し ているのか? 株主? 従業員? 会社? 自己? • 「会社は誰のものか?」とは別の議論 1 なぜ企業統治は必要か? • 「経営者の自己利害の追及」をどのようにモ ニター(監視)して、企業の収益性、成長性を 極大化するか 経営者の利害=株主の利益 経営者の利害=従業員の利益 経営者の利害=会社の利益 企業統治の観点から見た 企業の発展モデル • 個人企業 一般的に企業規模が小さい 所有者 = 経営者 = 従業員 (企業者企業、家族企業等の中間形態) • 経営者企業 一般的に企業規模が大きい 所有者 ≠ 経営者 ≠ 従業員 2 なぜ企業内分業は進むか? 1:必要資金量と資金供給可能量 • (株式)所有と(企業)経営との分離 Adolf Berle & Gardiner Means, Modern Corporation and Private Property (1932年) 資金需要 資金供給 巨大資本設備に対する投資 個人投資家が供給できる資金 機関投資家の発展 ↓ 投資銀行の成長 分散的な株式所有と専門経営者の確立 なぜ企業内分業は進むか? 2:提供資源の補完性 • 所有者(株主)あるいは従業員の能力と 経営者能力の分離 所有者(株主)=金融資源の提供 従業員=労働資源の提供 経営者=経営資源の提供 =金融資源、経営資源等の 諸資源の有効な利用 3 分業関係の合理性と問題点 • 特定の能力に専門化した企業の競争優位 • 分業関係の問題点 情報の非対称性 (asymmetry of information)に起因する エイジェンシー・プロブレムズ (agency problems) 情報の非対称性 • 経営者への戦略情報の集積、集約 意思決定の必要性 • 株主、従業員が同質、同量の情報を共有でき ない • 経営者による情報独占 ↓ 情報の私情報化(private information) 4 エイジェンシー・プロブレムズ • 私情報化された戦略情報が、経営者の自己 利害の追求に用いられる ↓ エイジェンシー・プロブレムズ 本来的には、株主、従業員のエイジェント (agent)であるはずの経営者が、プリンシパル (principal)の利害ではなく、自己利害を極大 化するように行動すること エイジェンシー・プロブレムズを どのように防止するか • 経営者の行動のモニタリング(monitoring) 株主、従業員が、経営者の行動を監視、モ ニターして、自己利害の追求を防止する • モニタリングに必要なツール 情報の共有〓情報独占の阻止 ↓ 透明性(transparency)のある経営 5 透明性のある経営 • 経営者のアカウンタビリティ(accountability)、説明 責任の確立 情報開示によって株主、従業員のモニタリングが 可能になる • 株主によるモニタリング機関としての取締役会(the board of directors)の再構築 モニタリング機関としての取締役会と 執行機関としての執行役員(executive officers) の分離 企業統治の問題は解決したか? • 取締役会はモニタリング機関として有効か? 取締役と執行役員の職務分離は実際の企 業において可能か? • 情報の共有あるいは公開は有効か? 戦略情報の株主あるいは従業員への公開 は、株主あるいは従業員にとって利益となる か? 6 企業は誰のものか? • 株主中心、株主重視の資本主義 (shareholder capitalism) アメリカ、イギリス型モデル • 「みんなの会社」 利害関係者の資本主義 (stakeholder capitalism) 日本、大陸ヨーロッパ型モデル 競争優位はどのモデル? • Shareholder Capitalismが国際的には優勢 • 日本、ヨーロッパにおいてもShareholder Capitalismの方向に推移して来ている ↓ 国際的にShareholder Capitalismに 収斂するか??? 7
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