測量学実習の現状と改善

(02)専門科目の講義・演習 -Ⅱ
講演番号:2B18
測量学実習の現状と改善
The Present Condition and Improvement of the Surveying Practice
源 貴志※
Takashi MINAMOTO
キーワード:測量学,実習,改善
Keywords: Surveying,Practice,Improvement
1. 測量学実習の概要
徳島大学で行われている測量学実習では、従来は、
光波測距儀とトランシットを利用したトラバース測量、
平板測量ならびに水準測量を課題としていた。しかし
ながら、実務においては GNSS 測量が普及し、平板測量
は測量士補の資格取得に必要でなくなったことから、
2010 年度には GNSS とトータルステーションを導入し
て実習内容の刷新を行なった。GNSS 測量の実習を実施
している機関はまだ少ないと思われるため、本学の測
量学実習について以下に紹介する。
1.1 授業の目的 1)
以下の「測量学」における講義目的・目標について
実習を通じて理解を深める.
・測量に用いる器械・機具の使用方法等
・野外での測量作業の方法および野帳の記入方法
・内業として,測定結果を計算し,精度を調べ,製
図を行う
1.2 授業の概要
・GNSS 測量の観測結果ならびに測量作業に習熟し,
調整計算ならびに成果物の作成方法を修得する.
・トランシット・トラバース測量および経緯距計算
測量において最も重要な器械であるトータルステ
ーションの使用方法を修得し,トラバース測量を
行う.その測定結果を調整計算し,精度を調べ,
面積計算も行う.そして,トラバースの製図を行
う.
・トータルステーションを用いた地形測量を行う.
測量機械に習熟するとともに成果物の作成方法を
学ぶ.
・スタジア測量および水準測量では現場に即するよ
うに交互水準を含んだ,路線水準測量を行う.そ
れら測点間の距離をスタジア測量により求め,上
の水準測量の結果を調整する.
1.3 到達目標
・GNSS 測量の観測計画ならびに測量作業に習熟し,
調整計算ならびに成果物の作成方法を修得するこ
と.
※
・トータルステーションの使用方法とトラバース測
量ならびに細部測量の測量作業に習熟し,野帳へ
の記録方法,誤差の評価方法,ならびに成果物の
作成方法を修得すること.
・レベルとスタッフの操作方法ならびに水準測量と
スタジア測量の測量作業に習熟し,野帳への記録
方法,誤差の評価方法,ならびに成果物の作成方
法を修得すること.
2. 測量学実習の現状と課題
実習は,機械の台数の関係上,学生を1班が5~6人の
16班に分け,8班ずつ交代で課題を実施する.課題は4
つ(GNSS基準点測量,TS多角測量,TS地形測量,水準
測量(TS:計測機械のトータルステーションの略称))
あり,各課題で外業(計測)と内業(計測結果を元に
した図面の作成など)を行う.また,指導教職員とTA
は各課題で異なっている.
GNSS基準点測量では,外業の計測は機械の数が少な
いことなどからTAが計測作業を行い,学生は側点付近
にて計測状況の説明を受ける,質疑を行う,上空視界
図の作成などを行う.上空視界図が時間内に作成でき
ない場合は,授業終了後に作成作業を継続して行う.
TS多角測量,TS地形測量,水準測量では,複数の測
点を計測する際に,図1や図2のように計測係や記録係
などいくつかの役割に分かれ,各役割でどのようなこ
とが求められるかを経験するため,交代しながら各側
点で計測を行う.計測者は計測機械の設置も行う.TS
多角測量,TS地形測量では,実際には役割を交代せず
に課題を行う班が見られる.交代せずに課題を終了す
ると機械操作を行うことなく実習を終了してしまう学
生が出てきてしまうことになり,技術修得の妨げとな
る.図3はTS地形測量とTS多角測量の測点を示しており,
計測時は4班ずつそれぞれ図中の丸と菱形の箇所付近
の指定された測点で計測を行う.各測点では,各班の
測点が密集しているため,他班の測点を間違えて使用
する班がまれにある.実習では,すべての計測が終了
しない場合,授業時間終了後も計測を行う.
徳島大学大学院理工学研究部総合技術センター
公益社団法人日本工学教育協会 平成 28 年度
工学教育研究講演会講演論文集
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図1
授業風景イメージ(地形測量)
図3
測点箇所(TS 地形測量,TS 多角測量)
4
2
3
1
図2
授業風景イメージ(水準測量)
3. 測量学実習の改善
GNSS 基準点測量では,課題のタイムスケジュールど
おりに進行させ,授業時間内に終了させるために,教
職員,TA がほぼ一日かけて事前に入念な打ち合わせを
行っており,今後も継続して行う.
課題当日に機械の操作方法についての指導を行うと,
授業時間内に課題が終了しないため,課題実施日以前
に機械の操作方法および計測方法について指導する日
を設けている.教職員,TA が測点を密に巡回し,不明
点への質問の回答や役割を交代せずに計測を行ってい
る班に交代を指示し,適切に計測できているか確認を
行っている.測点を取り違えないようにするために,
図 4 に示すように各測点に対応した班番号を割り振っ
た資料を配布している.また,TS 地形測量でも,建物
の計測箇所を分かりやすくするため,図 5 に示すよう
な資料を配布している.今後は,関係者で話し合いの
場を設け,授業内容や現状および改善方法についてさ
らなる検討を行う予定である.
図4
測点位置図
図5
計測箇所
注および参考文献
1) :平成 27 年度徳島大学工学部授業概要(専門科目シ
ラバス),
徳島大学工学部 HP(http://www.tokushima
-u.ac.jp/_files/00234986/h27_syllabus-day.pdf),
p.16
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