Kit リガンドが皮膚・毛包のメラニン産生に及ぼす影響 ○青木 仁美 岐阜大学大学院医学系研究科 再生医科学専攻 Kitl(Kit ligand:受容体型チロシンキナーゼ Kit のリガンド、別名 SCF)は、体色 (Cell,131,1179-1189,2007)や毛色(Nature Genet 39,1443-1452,2007)に強く相関す る因子であることが知られているが、しかしながら、Kitl はメラノサイトの発生や生後の 毛包内での増殖を制御する遺伝子として同定・解析されてきたこともあり、Kit シグナル がメラノサイトのメラニン合成や毛色を制御する分子機構は研究されていない。 本研究では、Kit シグナルがメラノサイトのメラニン合成や毛色に及ぼす影響を詳細 に解析するため、時間・空間特異的に Kitl の発現を制御することができる遺伝子改変 マウスの作成を試みてきたが、この ES 細胞から作成されたキメラマウスで germline transmission が起こらず、現在も継続的にマウスを作成している。 そのため、本報告会では山形大学との共同研究で新規に作成した複数の hk14-Kitl トランスジェニックマウスの結果を報告する。このマウスでは、通常色素細胞 が維持されない毛包間表皮に色素細胞が生涯に渡って維持され、従来我々が使用し ていた hk14-Kitl マウスで問題視された表皮の過剰すぎる色素細胞やメラニン量が日 本人に近い、減少した状態に改良した。さらに、ヒト皮膚のモデルとするため、ヘアレス マウス株に戻し交配したマウス株も作成した。複数の Tg 株間で、Kitl の発現量と皮膚 色を比較し、Tg 株間で差やばらつきはあるものの、Kitl の発現量と皮膚色には相関関 係があることを発見した。 Kitl-Kit シグナリングとメラニン産生量や色彩との関連を調べるため、色素細胞特 異的に Kit の量を半減させた Kit ヘテロ CKO マウスと、これまでに作成してきた色素 細胞分化増殖因子である Kitl や ET3 を皮膚で強制発現する遺伝子改変マウスを交配 し、これらの因子が色素細胞で Kit をヘテロ欠損するマウスの毛色やメラニン産生量、 色彩に与える影響を現在測定中である。
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