東京世田谷区幹部が公金で玉串料支出? 支出政教関係正す会

東京世田谷区幹部が公金で玉串料支出?
R&R
No333
三か月も前のいささか古い話で恐縮ですが、去る六月十五日に開かれた東京都の世田谷
区議会において、同区の幹部職員らが区内の神社の祭礼に出席して公金が支出されたこと
を一区議が問題視し、憲法の定める政教分離原則に違反するのではないかとの論議に発展
したのです。
この糾問に対して、まず区側は、区民や地域団体などと協働して「地域のまちづくりを
進めていく必要」から、
「地域行事等への参加を通じて地域とのきずなやネットワークを築
いていく」ために、毎年行われる区内の神社の「お祭りやその後の懇親会など」に参加し、
その際、
「交際費よりお祝い金を参加費として」一五、〇〇〇円の公費を支出したことを認
めました。
しかし、行事の一連の流れで祭典にも参列したことから、当初は「祭礼の懇親会に参加
する趣旨であったものの、宗教団体に公費を支出し、結果として玉串奉奠を行うことにな
ったことは不適切であった」と言明し、過去の事例も十分調査することを約束。
その結果、平成二十三年から二十七年までの五年間に同種の行為が四十八件あったことが
判明、お祝い金を受けた九人の区幹部や小学校長が自主的に返納を申し出て、計四一七、
六八九円が区に返還されたのです。
この措置を経て、世田谷区は各部長に対して副区長二人の連名で「神社仏閣等の祭礼に
関わる公費の取扱いについて」と題する一通の依命通牒を発しました。
そこでは「地域との絆をより強固にするべく地域との親睦の機会として行事に参加してき
た」のだが、
「政教分離の主旨を踏まえ慎重に判断すべき」であるところ、「結果的に区民
に疑念を生じさせたことは、適切ではなかった」と結論づけ、次のような基本方針を決定
したのです。
曰く、
「宗教法人等が行う祭礼に職員が公費で参加する場合は、憲法の政教分離の原則を
踏まえ、地域との交流を目的とした懇親会(直会)への参加に留め、宗教的色彩のある式
典への参加はしないものとする」と。
ひょっとすれば、区側は「愛媛県玉串料訴訟」最高裁判決(平九)を念頭に置いている
かもしれませんが、どうも分別ある対応とは思われません。これまで縷述(るじゅつ)してき
た本件の経緯は主として区議会の議事録と一、二の新聞記事に拠っていますが、これだけ
で区が支出した「お祝い金」が玉串料と同視されるものなのか、という点について少なか
らぬ疑義が生じます。本件を伝えた数少ないメディアの一つ、毎日新聞(平二八・七・二
九)が「公費からの玉串料支出はなかった」と報じていることにも留意したい。
間違いなく、区側は懇親会の費用に充てるべく普通の交際費として支出したのでしょう。
しかし、神社の主催する行事に出席しながら、飲み食いだけで済ませることなどできるわ
けがありません。祭典への参列はごく当り前の社会的儀礼ではありませんか。
(九月二十日)