サウジアラビア医療情報 以下は必ずしも最新の医療事情では

サウジアラビア医療情報
以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の
服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバ
イスを受けるようにしてください。
最新更新履歴:2004 年 11 月
1.赴任前の準備
(1)予防接種
入国に際して法的に定められた予防接種はない。乾燥した酷暑の気候のせ
いか風土病はほとんどなく、他の熱帯地域に見られるマラリア、黄熱病、害
虫の心配も少ない。
子供の予防接種は WHO モデルに従っており、病院や診療所で受けることが
できるが、日本より対象年齢が低い。
サウジアラビアの接種規定は次のとおりである。
・新生児に BCG と B 型肝炎の初回を接種
・生後 6 週目に B 型肝炎 2 回目と三種混合(DPT)とポリオの初回を接種
・生後 3 カ月と 5 カ月に DPT とポリオのそれぞれ 2 回目と 3 回目を接種
・生後 6 カ月で麻疹・風疹・おたふく風邪(MMR)の初回を接種
・生後 12 カ月で MMR の 2 回目を接種
・生後 18 カ月で DPT とポリオの追加 1 回目を接種
・4~6 歳で DPT とポリオ追加 2 回目を接種
なお、手術や負傷の際、破傷風の予防接種の有無をたずねられることがあ
る。1969 年以前の出生者は受けていない場合もあるので確認しておくとよい。
(2)その他の準備
歯科治療院はたくさんあるが、技術的な格差が大きい。基本的には抜歯治
療が多いため、できるだけ日本で治療を済ませたほうがよい。
また、眼鏡専門店はあるが、技術は高くないので日本から予備を含めて眼
鏡を持参することを勧める。また、現地では夏は日差しがかなり強いため、
サングラスもあると重宝する。コンタクトレンズについては、ハードレンズ
は入手困難であるが、ソフトレンズと使い捨てレンズは日本より安価で、簡
単に入手できる。しかし、砂漠の国のため微少な砂がレンズの裏側に入り、
目によくない場合もある。
2.医療事情
(1)医療機関
現地には国立・私立病院ともに数多くあり、おおむね満足できるレベルに
ある。特に日本人がかかる私立病院は医療施設や機器も高級なものを備えて
いるところが多く、見た目には欧米並みの水準であるが、受診料金が高い。
王立病院、各省庁直轄の病院、軍関係の医療機関などの国公立病院は、原則
的にサウジアラビア人のための病院であり、外国人は緊急時を除いて利用は
困難である。国公立病院は原則的に無料だが、一般の外来はいつも混雑してい
る。
整体・整骨のよい医院はない。また鍼灸院もない。
リヤド、ジェッダの主な病院は以下のとおりである。
【リヤド】
<総合病院>
・Kingdom Hospital (総合)
Ring Rd. Exit4 の北。Al-Thumamah St.との交差点
TEL:01-275-1111
最新設備を備えた新しい総合病院で、日本人の利用が増えている。会員
(500 リヤルの年会費)になると優先的に受診できる。救急受付があり、
緊急の場合は便利。
・Specialized Medical Center (総合)
King Fahd Rd.と Makkah Rd.のジャンクション近く
TEL:01-416-4000
ほぼすべての診療科があり、外来関係の受診は専門科が多く設備がよ
い。
・Dallah Hospital (総合)
King Fahd Rd.と Exit9 の通りに近接
TEL:01-454-5277
心臓病関係では高度の医療水準を誇る。
<開業医>
・GAMA Dental Clinic (歯科)
Old Airport Rd.沿い。ファルタミミの 2 階
TEL:01-454-2929
アメリカ人の歯科医師がいる。信頼できるという評判であるが、料金
は高い。
<国立総合病院>
・King Faisal Specialists Hospital
Makkah Rd.と Takhassosi St.の交差点
TEL:01-464-7272
【ジェッダ】
・G.N.P. (Pharaon Dr. Ghassan Najib) (総合病院、歯科を含む)
Amir Sultan St.
TEL:02-682-3200
診療時間:9:00~13:00、17:00~21:00
歯科もある。ジェッダ在留の日本人が一番利用する病院。診察を受け
るには予約が必要。入院費用は 1 泊 5 万~10 万円程度。全室個室で、
全室テレビ、シャワー付。フィリピン人、エジプト人、アメリカ人な
どの医師が所属していて、優しい、親切と評判。
・エルファン病院 (Dr. Erfan & Bagedo General Hospital) (総合病
院、歯科を含む)
Amir Fahd St.
TEL:02-682-0022
診療時間:9:00~13:00、17:00~21:00
歯科もある。日本人がよく利用する病院で、初診は予約なしでも受診
できる。再診からは日時が指定される。
(2)緊急時の対応と措置
緊急の場合は救急車(電話 :997)を呼ぶ。ただし、希望する病院に行け
るとは限らない上に、サウジアラビアでは地名と番地がないので、車の到着
が遅れることが予想される。
私立病院でも救急車を備えているところがあるので、かかりつけの病院が
あればそこから救急車を呼ぶとよい。会員制病院ならば、病院に行った時に
自宅の地図を預けて「緊急の場合はここへお願いします」と依頼しておく。
緊急で病院治療を受けた場合は、関係者が入院先を探したりしないように、
速やかに配属先などに連絡すること。
3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
持病があって治療薬が必要な人は、薬を携行することが望ましい。ただし、
現地では睡眠薬は麻薬とみなされており、多量の持ち込みはできない。
日本の「正露丸」、風邪薬、目薬、胃腸薬は持参するとよい。婦人体温計、
「アイスノン」、耳かき、マスク、低周波治療器、磁気ネックレス、遠赤外線
靴下なども現地では購入できない。
「養命酒」は持ち込み禁止なので注意する
こと。
(2)現地で調達できる医薬品
薬局は多数あり、薬品名さえわかれば避妊薬(ピル)や抗生物質なども処
方箋なしで入手できる。また、現地には欧米の優れた薬品が豊富に輸入され
ており、ヨーロッパ製の薬品は製品名がわかれば購入できる。日本製は「サ
ロンパス」を除いてほとんど入手できない。
なお、日本と欧米では同じ薬でも製品名が違ったり、同じ製品名でも成分
比が違ったりするので、必ず医師の指示に従うこと。
(3)現地で調達できる衛生用品
生理用品はタンポンやパッド式のものが多種あり、スーパーマーケットで
容易に購入できる。また、包帯、ガーゼはスーパーマーケットで、避妊具は
薬局かコンパウンド内のスーパーマーケットで入手できる。
(4)薬局
街中のショッピングセンターをはじめ、薬局薬店は数多くある。24 時間営
業である。
4.妊娠、出産、育児
(1)妊娠した場合の対応
多くの外国人が現地で無事に出産しており、基本的に問題はない。医療施
設はよく整っていて、帝王切開や未熟児にも対応しているので技術的にも心
配はないが、言葉や慣習の違いから、医師とのコミュニケーションに不安が
感じられることはある。しかし、最近では Kingdom Hospital(「2(1)医療機
関」を参照)で出産する在留日本人も増えており、英語がある程度できれば
問題はなくなっている。
(2)出産後の対応
母子検診は義務づけられておらず、特に異常がなければ欧米式に出産後数
時間での退院も可能である。新生児の予防接種などを含めて、検診は病院や
クリニックできちんと受けることができる。
(3)育児
空気が乾燥しているので、鼻腔粘膜の保護に気を配り、水分をこまめに補
給し、クーラーの効きすぎに注意する。
ミルク、離乳食は現地で各種売られている。哺乳瓶、紙おむつ、肌着、乳
母車、おもちゃなどの育児用品も多数売られているので問題はない。ただし、
哺乳瓶専用の洗剤など、特定用途に特化した商品はない。
5.手術
(1)現地で可能な手術
盲腸などの手術は問題ないが、高度な技術を要する手術や婦人科の手術に
ついては難しい場合がある。全般的に医療水準は高いが、一部の医師や看護
師は総合力および専門分野の技術力が低いという情報もある。臓器移植や外
科手術に関しては、世界的に高い水準の医師もいる。
(2)手術設備の状況
設備は近代的で整っている。
(3)その他の留意点
現地では輸血は一般的に行われている。
6.現地での傷病
(1)一般の疾病
気候の変わり目や、クーラーの効きすぎによる軽い風邪、扁桃腺肥大、軽
い下痢を起こす程度である。現地の衛生状態はきわめてよく、問題はない。
まれに、砂嵐の塵によってアレルギーや小児ぜんそくにかかる人がいる。
(2)風土病、感染症
2000 年 9 月に、サウジアラビア南西部のジザン市を中心に、ジザン州、ア
シール州、ナジラン州、メッカ州南部で、Rift Valley Fever (リフト・バ
レー・フィーバー)と呼ばれる風土病が流行して 750 人以上が罹患し、うち
110 人が死亡した(2000 年 12 月時点)。これは主に羊、ラクダ、牛などの家
畜の病気で、家畜の体液や蚊が媒介して人間に感染する。症状としては発熱、
倦怠感、背部痛、めまいがあり、悪化すると眼疾患、脳炎、出血熱へと進行
することがある。
病気治癒に効くワクチンなどがないので、蚊に対して完璧に防御するとと
もに、発病地域産の羊肉や牛肉は食べないようにするなどの注意が必要であ
る。2000 年 9 月のケースでは、病気の伝播を防ぐために 12 万頭の羊が政府に
よって処分された。人間に感染した例としては 1977 年に約 500 人の死者を出
したエジプトの例が最大で、1977 年末にはケニア東北部で 300 人以上、ソマ
リア南部で 80 人以上が死亡している。
このほかにサウジアラビアでは、巡礼月にメッカやジェッダ地域で髄膜炎
などが流行したことがあるが、これはワクチンの予防接種があるので事前に
防ぐことができる。また、学童や幼児の間で水ぼうそうが流行することがあ
るが、空気が乾燥しているので治りは早い。
(3)有害動物、病害虫
市内で見られるのは、蚊、ハエ、ネズミ、ゴキブリなどで、数は少ない。
スーパーマーケットで電気蚊取り器、
「ベープマット」などが購入できる。ゴ
キブリ、ネズミは殺虫剤や粘着シートで駆除する。
砂漠にはサソリや毒ヘビがいるといわれているが、日中のピクニックや野
営で、咬まれたり見たりした人はほとんどなく、あまり心配はいらない。
7.保健衛生
(1)飲料水
上水道は、淡水化した海水と地下水を混ぜたものが供給されており、水自
体は飲用に適する。ただし、水道管や貯水タンクが老朽化して不衛生な場合
があるので、実際には浄水器を使用したり、ミネラルウオーターを購入した
りすることになる。ミネラルウオーターは外国製品、国産品のさまざまな種
類の製品がスーパーマーケットで購入できる。
(2)濾過器の入手
特に必要としない。
(3)その他の留意点
衛生環境がよいので特に留意すべき点はないが、暑さと乾燥への対策を怠
らないようにしたい。暑さで体力を消耗するため、サウジアラビア人は昼寝
を習慣にしている。また、空気が非常に乾燥しているため、かかとや唇、手
足の指先が割れることがあるので、肌の敏感な人はクリームなどで保護する
必要がある。
プールから上がった時などは、すぐにタオルで水を拭き取ることが重要で
ある。特に子供の場合は励行したい。これを怠ると、気化熱により身体が急
激に冷え、摂氏 50 度の気温でもガタガタと震えがくることがある。また、プ
ールの水に含まれる塩素のために乾燥に拍車がかかり、皮膚炎になることも
ある。
そのほか、日ごろから努めて水分をとるようにすることが肝要である。特
に砂漠へ出かける時は、半日(4~5 時間)につき 1 人あたり最低 1 リットル
の水を持参し、のどの渇きを感じる前から少しずつ飲むようにするとよい。