小林光一先生

保健
どんな授業なのか
知っているつもりのことを
より深く多角的に考える
ることが多いので 、
﹃ なんと な く わかり
を痛 感しました。少し前の僕は、生 徒と
﹃ 理 解しているつもり ﹄
にすぎなかったの
てよ く 考 え ないと 判 断 でき ず 、自 分 が
一緒 だったんです 。保 健に限 ら ず 、社 会
徒をしゃべらせます。でもその解 答には
根 拠がない。だから﹃ なんで? ﹄と 問 う
に出たら、正 解がわからないことを今あ
そうな保 健クイズ﹄を出 題し、まずは生
と 言 葉に詰まります 。そうして 生 徒た
解ではな く 根 拠 。答 えにたどりつく ま
増えます。だから生 徒に求めるのは、正
での道のりを 、自 分で描けるようになっ
る 知 識で 考 え なければいけない場 面が
とを突き付けます︵ 笑 ︶。それをくり返
てほしいと思っています ﹂
ちに、みんなが﹃ 理 解しているつもり ﹄の
し、
3学 期には﹃ なぜそう 思うか根 拠ま
ことは
﹃ 聞いたことがある ﹄
にすぎないこ
でちょっと 話せるようになった ﹄状 態に
授 業では1学 期からグループ学 習 も
行うが、ここでもおのおのが自 分の考え
ゼンに挑む機 会も増やしている。
事 参 照 ︶。そのうえで生 徒が論 述やプレ
教 材 をもとにレクチャー︵ 左 上カコミ記
なることを目 指します ﹂
を 見つめ直 す 。そのために小 林 先 生が
﹁ 自 分の考 えを 説 明 することは、どん
小 林 先 生はまた、考えたことを﹁ 伝え
る 技 術 ﹂についても 、実 体 験 やリアルな
生 徒に授ける魔 法の言 葉が﹁ なんで?﹂
な 仕 事でも 必 要だと思 うからです 。生
徒には、ただ正 論を言うのではなく 、相
徒が意 見を出したら﹁ なんで?﹂と根 拠
を求めてみんなで﹁ その考えを深める﹂。
手に思いを 届けられるよう な 伝 え 方 を
と﹁でもさー﹂だ。グループ内で、ある生
あるいはその意 見に﹁でもさー﹂と 何ら
身に付けてほしいんですよね﹂
視 点を変える﹂。
﹁ 僕は大 学まで競 技やスポーツ社 会 学
いう実 感が小 林 先 生にあるからだ。
ある授業では、たばこの依存性の怖さを訴えるキャッチコピーを考えた。
教科書の知識に加えて、伝える技術や感性が問われる。
かの反 論 を 試みて﹁ その考 えに対 する
﹁ 話し合うときに﹃ 深 く 考えろ ﹄﹃ 視 点
を 変えろ ﹄と言っても 、生 徒はどうすれ
ばいいかわかりません。けれど も﹃ なん
で?﹄﹃でもさー﹄という〝オモチャ〟を与
えると、
生 徒は面 白がってやってみて、
そ
こから議 論が広がるんです ﹂
思 考 を 深めること を 重 視 するのは、
小 林 光一先 生の 月の保 健の授 業は、 社 会に出たらその営みが大 事になる、
と
毎 年﹁ 甘いものをたくさん食べたらどう
なる?﹂といった問いかけから始まる。生
ばかりやっていたので 、保 健のことは教
何が健 康に良いか悪いかはいろいろ 調べ
師になってから学び直しました。すると、
徒は﹁ 太る!﹂などと答えてくる。そこ
小 林 先 生の授 業はこれが基 本 形だ。
﹁ 保 健の学 習 内 容はなんとなく 知ってい
でさらに問いかける。
﹁ なんで?﹂
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2016 OCT. Vol.414
1834年創立/普通科・理数科/生徒数783人
(男子375人・女子408人)
/進路状況
(2015年度実績)
大学221人・専門学校3人、
その他28人
学校データ
「なんで?」
「でもさー」の魔法の言葉で
思考を深め、
「伝え方」もみがく
順天高校(東京・私立)
小林光一先生
教員歴9年。大学卒業後、
ドレス
ショップ営業やサッカー社会人リ
ーグ(現J3)選手を経て教員に。
生徒に頑張れと言う以上は自分
も頑張らねばと、
日本一の保健
の 教 師を目指すと宣 言してい
る。
【Report 07】保健
「授業」で社会を生きる力を育む
小林先生の授業の主なリソース
1 保健を学び直すなかでの気づき
生徒はどう変わったか
つ力 、それを見せたり聞かせたりする力 、
多 くのことが身に付きました﹂
﹁ 正 直 、最 初はなんで 先 生は︵ 自 分の
今 後行いたい授業
考えるようになりました﹂
クイズ、正
もう一つ目 指しているのは、
解のない問いを 考 えるグループ学 習 、
レ
もらえたのに。その分 、晴れをもらえた
﹁ 日 常で考えたり言い合ったりする機 会
﹁ 型 ﹂をよりきっちり教えることだ。
小 林 先 生が今 関 心 を 強めているのは、
ロジ カルシンキング や プレゼンな ど の
﹁ 僕 自 身 も 、生 徒 も 、﹃ あの子はこれが
が活 躍できる授 業にすることだ。
良い子からビリの子までいろいろな生 徒
多様な題材と活動を通して
生徒全員が活躍する授業に
ときは本 気で喜びました。
﹃ わかった ﹄だ
授業で学んだことを
何につなげるかまで考える
こうした授 業 を 受けてきた生 徒たち
の 変 化 は 、3 学 期 最 後 の 振り 返りシー
けで片 付けない。何かを 学んだあとに、
得 意でこれは苦 手 ﹄というのを 、もっと
順天高校には、授業を通して生徒の人格や教養を高めることを研究する分掌
があり
(英・社・理・国・保健体育の先生が所属)、同僚からも学んでいる。
1 導入 …… 身近な話題や対話から入り、授業に集中しやすい環境をつくる。
2 知識提示・理解 …… 教科書の内容を日常生活と絡めた「コバヤシート」や、
自作のクロスワード式の用語確認シートを導入。面白
がる生徒が増えた。
5 表現 …… お互いの発表を批評し合うこと(上の写真右)や、みんなの前で発
表して批評をもらうことで、伝え方をみがく。3 学期最後にはクラス
全員でオリジナルの教科書作りに挑戦。一人2ページを自由に表
現する。
トプットの場を創 出することで、成 績の
トに寄せられた感 想に見てとれる。
が減ったからか、思 考や伝え方の基 礎か
知ることができたらいいな 、と 思 うんで
ポート、プレゼン、テストなど様々なアウ
﹁ 知 識がないと 考 えることができなかっ
自 分がそこから発 展して何 を 考えられ
ら身に付いていない子が増えたように感
す 。そのうえで、他の子のできないこと
記 述に︶晴 れ︵ 高 評 価 ︶を くれないんだ
た。疑うことも大 切だと思いました﹂
るか、何につなげられるかが大 切だと教
を自 分のできることで補い合う 、
そんな
小林先生の授業デザイン
ろ う と 思いました 。中 学では評 価して
﹁ 生 活に役 立つ知 識が身に付いて誰かに
ずは﹃ 型 ﹄を示し、それを生 徒が自 分の
授業研究プロジェクト
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じるんです 。スポーツもそうですが、ま
ドに記入するのが基本。クイズ番組のようで生徒ものりやす
い。
えてもらうことができました﹂
4 議論・調査 …… グループで議論・調査するときは、
まとめた意見をフリップボー
﹁1年 前の自 分が今の僕 を 見たら 驚 く
TV 番組の芸人の話し方やテロップ、広告のコピーやデザイン、
ビジネス書など
から、伝え方や思考法の「型」
を学習。それも生徒に伝授している。
話したくなって、水 曜 日の夕 食は習った
3
世の中にあるリアルな教材
ことを 母に話 す 時 間になりました。保
通事故が増える?」
「なぜ日本は平均寿命が世界一なのか?」等。
空 間を実 現できたら嬉しいです ﹂
3 発問 …… 誰も答えは知らず、今ある知識で考える発問をする。
「なぜ冬に交
ものにしていく のも 有 効 ではないかと
小林先生は教員になる前に営業職や記者職を経験。そこでは「大学で教育
のために磨いた伝える技術(話の展開の工夫、視線や身ぶりの工夫)
が仕事
全般に生きた」
という。その実社会に生きる「伝える技術」
そのものを生徒にも
教え、授業の発表や記述に生かせるようにしている。
と思います ﹂
2
教育学部で学んだ「伝える技術」
健の知 識 だけでな く 、自 分の考 え を も
小林先生は、授業準備として保健のことを「なんで?」の視点をもって最新の
情報も追いながら学び直した。生活習慣、性の問題、労働問題など。そのなか
で「知識をもって深く思考しないと何が良いか判断できない」テーマが多いの
を実感。そこを生徒にも考えさせている。
取材・文/松井大助