佐久総合病院 後期臨床研修プログラム (平成 29 年度) 産婦人科 1 地 域 医 療 部 産婦人科後期臨床研修プログラム プログラム責任者:産婦人科部長 小口治 1.目的 産婦人科医として必要な基礎的な知識・技術・倫理を学習し、さらに専門的な知識や技術を習得し、 患者およびその家族と信頼関係を構築できる人間性を磨くことを目的とする。それは即ち、主治医と して診断し治療方針を立て、それを適切に行える独立した産婦人科医となることを意味する。さらに、 多種職がチームとして働く病院(医療施設)で情報や意志の交換共有を行い、チームの 1 員として行 動できる人間関係能力の構築も進める。 2.内容 ① 病棟において担当医として担当患者の状態を把握し治療方針を立てて実行する。 ② 外来業務を補佐し、その後外来を単独で担当し患者の病態を診察し診断し治療を実行する。 ③ 当直を補佐し当直業務を経験し、その後産婦人科当直医として業務を行う。 ④ 妊娠・母児・保険に関係する倫理・法規を理解し履行する。 ⑤ 生殖医療に関する倫理・法規を理解し履行する。 ⑥ 地域医療の実践に関与し、医療と地域の関係を経験し理解する。 ⑦ 関連学会に参加し学術研修を行い、また発表も行う。 ⑧ 看護学生の産婦人科領域の教育指導を行う。 ⑨ 初期研修医の指導の補佐を行う。 ⑩ 臨床実習学生の指導を行う。 A 視診・触診・内診・直腸診を行い正確な所見を把握する。 B 細胞診の採取・組織診を行う。コルポスコープ所見をとる。 C 経腹超音波・経膣超音波検査を行い所見をとる。 D 妊婦検診を行い、母児の指導教育管理を行う。 E 分娩に立会い、正常分娩の介助を行う。異常分娩を発見し適切な対応を行う。 F 新生児の出生時の蘇生を行う。 G 手術の助手を務め手術操作と術式を理解し単純子宮全摘出術・帝王切開術を文字通り執刀できるこ とを目指す。 H 悪性疾患患者の担当医となり集学的な治療を計画する。 I 終末期患者の担当医となり全人的な医療と緩和医療を行う。 J 流産手術・人口妊娠中絶術を行う。 K 地域保健活動の一環として婦人科癌検診活動に参加する。(人間ドックでの検診も含む) L 母児保健活動の一環として母親学級に参加する。 最初に達成すべき修得事項として、産婦人科急性腹症の診断と治療の能力・流産手術を確実に行える 能力。分娩時の遂娩が必要な病態の診断能力とその技術などが上げられる。これらが行えないと当直 業務は困難である。当科は指導医・上級医が休日夜間でも常にバックアップ体制、チーム体制をとっ ている。 平成 26 年 3 月より、当院は機能を一部移転し、産婦人科は「佐久医療センター」に機能全体が移転 した。「佐久医療センター」では、 「がん診療拠点病院」機能は維持しさらに「周産期センター」をも 2 うけてこれまで以上に周囲地域(東信地域)の合併症妊娠、異常妊娠、異常症例を引き受けている。 もともと当科は東信地区において現在最も規模の大きい施設であり、年間分娩数は 600~700 あり、 周囲の診療所や病院よりの母体搬送症例も受け入れ、さらには正常分娩も地域の周産期施設の一つと して担ってきた。平成 26 年度から小児科との連携も周産期センターとして一つのチームになり、正 常分娩から異常分娩までの幅広い産科診療を受け入れるている。また、婦人科領域では悪性腫瘍患者 も多く、大学病院に匹敵する程度の数を診療している。放射線治療医や腫瘍内科医と連携し、放射線 治療、癌化学療法を含めた集学的治療を行っている。また終末期患者も病診連携を図りつつ緩和ケア を行い患者家族の希望に対応している。良性疾患の手術に関しては、大学病院以上の症例を手術して いる実績を持っている。 3.経験 当院において 3 年間で修練できる症例(1 研修医の場合を参考に) ○症例 産科異常症例 分娩経験 ・重症妊娠悪阻 14 例 ・切迫流産 16 例 ・切迫早産 70 例 ・PIH 4例 ・双胎妊娠 9例 ・前置胎盤 4例 ・合併症妊娠 8例 ・正常分娩(初産)191 例 ・正常分娩(経産)206 例(TLAC) ・吸引分娩 5例 ・双胎経腟分娩 3例 ・骨盤位経腟分娩 ・帝王切開 100 例 婦人科担当症例 ・子宮筋腫 (良性) 48 例 ・子宮内膜症 17 例 ・卵巣腫瘍 30 例 ・子宮外妊娠 8例 ・子宮脱 3例 ・PID 2例 ・CIN 28 例 婦人科担当症例 ・子宮頸癌 (悪性) 1例 29 例 ・子宮体癌 27 例 ・卵巣癌 21 例 ・絨毛性疾患 1例 ○手術経験 産科 流産中絶術 帝王切開 32 例(中期 2 例) 100 例 3 婦人科 子宮全摘出術 筋腫核出術 46 例+α (3 年目の良性疾患はほぼすべて執刀) 9例 付属器切除術(卵巣腫瘍摘出術) 17 例 円錐切除術 10 例 広汎性(準広汎)子宮全摘出術 4例 腹腔鏡手術 (3 年目の悪性疾患はほぼすべて第 1 助手) 平成 22 年 8 月より連携病院で研修開始、 平均 1-2 例/週 ○その他の症例 放射線治療症例、癌化学療法、緩和終末期ケア(及び看取り)多数 ○そのほか 人間ドック、施設内検診、バス検診、母親学級指導、看護学校講義、学会参加あり 4.カンファレンス 週 1 回ずつ「病棟カンファレンス」 :看護師、栄養士、薬剤師、MCWを含む病棟スタッフで症例の問 題点を発表 「症例カンファレンス」 :産婦人科医同士で治療方針を検討 週1回 「化学療法カンファレンス」 :腫瘍内科医と癌化学療法を行う症例に関して開催 随時 「総合腫瘍検討会」 :全科横断的にキャンサーボードとして土曜に開催 5.1 週間のスケジュール 後期研修初期は、基礎的な診療を習得するため上級医について外来、病棟、手術、分娩、当直などの 研鑽を積むことから始まる。十分な技量を習得してからは、病棟業務、手術、外来業務、当直業務と 一つずつ独り立ちして進めることになる。 午前中:週 1 コマずつ産科外来、婦人科外来、結果並びに定期受診外来を担当 週 1 回産褥回診、週 1 回以上分娩室担当 午後 :担当症例の回診、担当症例の手術(週 1-2 例) 、非担当症例の手術(週 2-3 例) 当直 :4-5 日に 1 回、拘束週 1-2 回 6.平成 26 年 3 月に開院した「佐久医療センター」に関して 平成 26 年 3 月に佐久市内に本院と別れて「佐久医療センター」が開院となった。現在の産婦人科機 能はこの新しいセンターに移行しました。ここではこれまで当院が行っている産婦人科医療に加えて、 周産期センターを併設することになっている。これまで以上に、地域の周産期の高度医療を受け入れ、 小児科との連携を深めています。そのため、産婦人科スタッフの増員を必要としています。 7.専門医教育施設の認定状況 当院は、日本産婦人科学会、日本周産期・新生児医学会の認定施設となっている。 8.各種資格について ○専門医 当院は日本産婦人科学会の卒後研修指導施設となっています。3 年間の後期研修を受けた後には日本 産婦人科学会の専門医を申請し受験することができます。ほかの施設で研修を既に開始していて、そ の後当院で研修を継続しても当院では経験できる症例が多いため、申請するに十分な症例数のほとん どは当院での研修で経験で足りるでしょう。 4 平成 25 年度より日本産婦人科学会の方針により研修方法が変更になりました。常勤産婦人科専門医 が 4 人以上いる「総合型専攻医指導施設(総合型施設)」であれば単独で研修が完了できますが、当院 は「連携型専攻医指導施設(連携型施設) 」となるため、3 年間の後期研修のうち 6 か月以上を総合型 施設で研修を行う必要性があります。当院では、信州大学附属病院産婦人科学教室と連携しこの研修 を遂行できる体制をとっていますし、希望の総合型施設での研修に応じることができます。 ○母体保護指定医 母体保護指定医は、今後専門医機構の基準に変更予定ですが、産婦人科としても当センターとしても 対応可能です。 5
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