「エコノリーガル・スタディーズのすすめ」講義概要 第1回(平成 28 年 9 月 6 日)法学と経済学の複眼思考 1 神戸大学法学研究科教授 高橋 裕 神戸大学経済学研究科教授 柳川 隆 今回と次回の講義は、神戸大学で現在展開されている学際的教育研究「エコノリーガ ル・スタディーズ」の紹介・導入として、法学的思考と経済学的思考それぞれの特徴を 総論的に説明することを通じて、第 3 回以降に行なわれる各論的講義への橋渡しをしま す。第 1 回は、具体的な裁判事例を素材にしながら、法学的判断がどのような論理でな されているか、そして経済学的視点からはそれがどのように批判できるか、を説明しま す。今回・次回は、法学者と経済学者が討論を行なう形式で行ないます。 第2回(平成 28 年 9 月 13 日)法学と経済学の複眼思考 2 神戸大学経済学研究科教授 柳川 隆 神戸大学法学研究科教授 高橋 裕 第 1 回に引き続いて、 「エコノリーガル・スタディーズ」の基本発想を説明します。今 回は、より理論的な観点から、法学的なものの見方と経済学的なものの見方が、どのよ うな点で異なりまたどのような点で共通するのか、そしてどのようにすればそれらは調 和させられるか、を説明します。今回も、神戸大学における授業「法経総合概論」のイ ントロダクションと同様に、経済学者と法学者が討論を行なう形式で行ないます。 第3回(平成 28 月 9 日 20 日)「もの」を所有する権利とは:知的財産法 神戸大学法学研究科准教授 前田 健 この授業では、人が何かを「自分のもの」であると主張する権利について扱います。 そのような権利としては、土地・貴重な財産などの有体物に対する「所有権」、知識など 形のないものに対する「知的財産権」があります。なぜ国家は、ある「もの」を「自分 のもの」として独占する権利を認め、保護する必要があるのでしょうか。それは「みん なもの」であるとして、誰の独占も許さないとしてはいけないのでしょうか。経済学と 法学の両方の視点から、この問題についての今までの議論をわかりやすく紹介します。 第4回(平成 28 年 9 月 27 日)会社関係者の利害を調整するルールとは:会社法 神戸大学法学研究科准教授 飯田 秀総 株式会社の基本的な仕組みを概観した後、取締役の報酬・利益相反取引・株主代表訴 訟・社外取締役といった制度について、法的規制の内容の説明と、経済学から見た場合 の制度の合理性についての分析を紹介します。法学・経済学のいずれについても前提知 識は全く必要ないですが、論理を理解しようとする意欲をもって受講してください。 第5回(平成 28 年 10 月 4 日)労働市場の望ましいルールとは:労働法 神戸大学経済学研究科准教授 勇上 和史 本講義は、労働市場を律するルールがなぜ存在し、どのように機能するのかについて、 法学と経済学の見方を紹介します。賃金と雇用保障に関する政策介入を具体例として取 りあげ、課題の解決に対する法学と経済学のアプローチの異同を理解することを目標と します。 第6回(平成 28 年 10 月 11 日)競争を公正に行うためのルールとは:独占禁止法 神戸大学法学研究科教授 泉水 文雄 独占禁止法について、それがどのような役割を担っており、機能しているのかを見て いきます。とくに再販売価格維持行為(再販)と抱き合わせ販売をとりあげます。再販 は、メーカーが小売価格を指定するような行為を指します。抱き合わせ販売は、ある商 品の購入を希望するものに他の商品の購入を強制する行為です。このような行為がなぜ 規制されるのか、どの範囲で規制されるべきかについて、法学と経済学からのアプロー チがどう異なるのか、どういう制度が望ましいのかを考えます。 第7回(平成 28 年 10 月 18 日)セーフティ・ネットの公平と効率とは:社会保障法 神戸大学法学研究科教授 関根 由紀 社会保障は、我々市民の生活の安定のために整備された、年金や医療保険、労働保険、 介護保険、生活保護など、様々な制度で成り立っていますが、これらはできる限り公平 であり、また公正であると同時に、効率的に実施・運営されることが求められています。 このため、社会保障を法学的観点、経済学的な観点から分析する必要があり、これらを 融合させて最も望ましい制度のあり方が探られます。今回はそれぞれの観点で行われる このような分析について、解説します。 第8回(平成 28 年 10 月 25 日)「契約を守る」とは:契約法 神戸大学法学研究科准教授 田中 洋 「契約を守る」ことは、われわれの社会におけるもっとも基本的なルールの1つとい えます。それでは、契約に違反した者は、その相手方に対して、法律上どのような責任 を負うでしょうか。こうした契約違反に対する法的対応には、いくつかの可能性があり、 その内容は国によって異なることもあります。この講義では、契約違反に対する法的対 応のあり方について、法学的視点と経済学的視点から検討し、どのような制度が望まし いのかを考えます。 第9回(平成 28 年 11 月 2 日)損害を賠償することの意味とは:不法行為法 神戸大学経済学研究科准教授 水野 倫理 ある行為が不法行為に該当する場合、故意又は過失の存在が必要となる。しかしなが ら、被害を生じさせた者の心情を直接観察することはできない。そのため、故意又は過 失があったかについて判断するための基準を定めなければならない。この講義では、判 例などを参考にしながら、過失認定の基準に関する経済学的視点を解説する。そして、 基準の変更がその後の不法行為の発生可能性について、どのような影響をもたらすのか を考える。 第 10 回(平成 28 年 11 月 8 日)環境を守るためのルールとは:環境法 神戸大学法学研究科教授 島村 健 環境を守るためのルールは、人々に一定の行為をするように、あるいは、一定の行為 をしないように求めます。誰に対してそのような行為を求め、あるいはどの程度厳しい ルールを設定すべきでしょうか。この講義では、環境を守るためのルールのうち、廃棄 物・リサイクルに関する法制度を、経済学的な視点を含めて解説します。
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