9月16日開催 第4期わかやま塾(第4回)の概要

平成28年9月29日
資 料 提 供
担当課
企業振興課
担当者
柏木、城(じょう)
電話
073-441-2760
9月16日開催
第4期わかやま塾(第4回)の概要
第4期わかやま塾(第 4 回)を中野塾頭(中野BC(株)代表取締役会長)、高田
師範(みずほ総合研究所(株)常務執行役員・調査本部長・チーフエコノミスト)、
藤本師範(藤本食品(株)創業者)、塾生 52 名が出席し、アバローム紀の国にお
いて開講しました。
つきましては、知識編講義、心掛け編講義の概要を報告します。
概
要
○知識編講義「2017 年の世界はどうなるか日本はどうなるか」
<みずほ総合研究所株式会社
常務執行役員・調査本部長・チーフエコノミスト 高田
創 師範>
・今や日本や海外の国境が無くなった時代である。国内のことを考える上でも、
海外のことも同時に考えないといけなくなっている。様々なことが海外のこと
を通じて影響を受けるような時代になってきている。
・今年は非常に変動の年であり、想定外のことが非常に多く起こっている。来年
2017 年も乱世であると思われる。
・アベノミクスが 始 まったのは、2012 年後半からであり、 そ の頃の日経平均は
8,000 円台、為替は 70 円台であった。これがアベノミクスにより 2012 年~2015
年で円安株高となった。去年は株が 21,000 円まで、為替が 125 円までいった。
しかし、今年になって、為替が 100 円近いところ、株も 16,000 円台にまでなっ
ている。このような大きな転換の背景も、やはり海外の状況にある。
・去年の今頃、世界は新興国、特に中国の状況を懸念していた。一方で、先進国、
中でも米国は今年は景気がよくなるのではないかと思われていた。しかし、新
興国が意外とよくなり、先進国の方は減速するという状況になってしまった。
・今の世界経済は「3 つの L の状態」だといわれている。L は低い(Low)という
こと。3 つの L とは「低成長」「低インフレ」「低金利」である。
・いま、どこの国も自国通貨を下げて、安売り競争をし、世界で自分の地位を確
保しようという通貨戦争を行っている。
・アベノミクスがスタートした 2012 年末には、米国がドル高を許容する状況と
なっていた。そこに第一の矢である金融政策で円安を加速させた。その期間が
2013 年~15 年と続いたが、今年になり米国がドル高是正の方針になったこと
で、円高への転換となってしまった。
・さらにイギリスの EU 離脱問題が起こり、ポンド安、ユーロ安という状況とな
り、さらに中国の人民元も下がった。円だけが高い状況となった。今年の日本
は通貨戦争の完全な負け組である。日本は円高で困っているが、他の国はドル
安を望んでいる状態である。少なくとも年内、来年くらいまでは、この円高の
状況を覚悟しなければならない。
・来年は政治の年である。日本は極めて政治的には安定をしており、2020 年くら
いまでを展望できる初めての状況になってきたと考えられる。しかし、世界で
は乱世の状況である。来年、米国の大統領が変わるし、ヨーロッパにおいては
主要国の有力な選挙がたくさん行われる。
・中国については昨年来、非常に不安視されてきた。日米欧が同時に危機に陥っ
た中で、世界を救った救世主は中国であった。しかし、その結果、債務が 2008
年以降、急拡大した。また、過剰な設備により、世界中に安値の鉄鋼製品等を
売らざるを得ない状況である。
・日本は 1990 年のバブル崩壊以降、資産デフレと円高の 20 年間であった。設備
等を「持たない経営」と「リストラ」をしないと企業は生き残れなかった。20
年間こういうようなことが繰り返され、その意識が染み付いてしまった。アベ
ノミクスはその意識を、いかに戻せるかという形で取り組んできたが、20 年間
で染みついた意識というのは、3 年くらいでは戻せていない状況である。
・世界経済に占めるアジア経済のウエイトは、2000 年頃では 2 割くらいであった
が、今や 3 割を超え、2025 年になると 4 割くらいになる。日本は世界で一番成
長しているアジアの中にある。日本の内需は少子高齢化で厳しい状況にあるに
しても、アジアをめがけていけば、ベネフィットを受ける可能性があると考え
られる。
・インバウンドについて、今年の訪日観光客数は今の状況でいくと、2,500 万人
ペースである。去年より約 2 割増えている。このまま増加していくと、2020 年
には 4,000 万人を超える。しかし、県別の訪問率では、いまだにゴールデンル
ート(東京、大阪、京都等)と言われているところに集中しており、その他の
地域に波及することを期待したい。
・現在は、海外の状況が国内にも影響し、それらを一体として考えるような時代
である。単に日本の国内に目を向けているのではなく、より世界に目を見開い
ていく必要がある。
○心掛け編講義「経営45年を振り返って思う事」
<藤本食品株式会社
創業者
藤本 輝司 師範>
・20~30 年前、日本は人口が増え、経済も順調に成長していた。そんな時に自
分は商売が出来たが、今の若い人たちは、経済環境が厳しい状況で事業を行わ
なければならない。こんな時にこそ、プラス発想を持って、イノベーションを
どの様に高めるか、情熱と知恵をもって前進してほしい。企業にとって経営者
の情熱が全てである。
・企業の成長とは、「 人を育てる」ことに つきる。スタッフが 成長すれば「物・
金」は後からついてくる。スピードのあるワンマン経営は、決して悪いとは思
っていない。しかし、ある人から「衆知を集めて己を通す」というアドバイス
を頂いた。これは、会議で皆の意見を聞き、それをまとめたうえで、経営者の
考え方や経営方針をスタッフに納得してもらう様にステップを踏むことだと。
自分ががむしゃらに働いていた時にはわからず、相当月日が経ってから理解で
きた内容である。
・問題解決の答えは、全て現場にある。現場で「なぜ・なぜ・なぜ」を繰り返す
ことで必ず答えが出てくる。新製品が売れなかった時に、他社製品と徹底的に
比較し、どこが悪いか、どこが負けているかなど「なぜ・なぜ・なぜ」を繰り
返し、改善を行うことで、売り上げを伸ばしてきた。
・基本的にプラス発想をする。諦めないこと。すぐに行動すれば今より悪くなる
ことはない。
・絶対に売り負けしない商品を出し続ける。そのためには全員がコスト・商品開
発等で協力しなければ達成できない。自社では高級品は作らず、大衆商品のみ
に絞って、少品種多量生産を行ってきた。少品種なので売り負けしない商品を
作る必要がある。
・スタッフとコミュニケーションを取って能率を上げ、賃金UPにつなげる組織
作りをする。人員確保のため、他社に負けない時給を出すことも大切。質の良
い人材を集めて、ミスをしない、クレームを出さないようにする。この方が会
社にとってプラスになる。
・生産、配送の合理化に向かって、工場の稼働率が 100%以上になれば 130~180
km圏内に次の工場を作り、30%位の生産を新工場に移し、早く黒字化する。
あまり距離が離れすぎていると営業、物流でコストがかかって黒字工場にはな
らない。順番に広げていって、緊急の場合は近くの工場から営業・物流などで
助け合える仕組みを築いている。
・お得意様とのパイプを多く作り、営業・配送・生産の合理化に繋げるようにし
ていく。パイプとは自社で言うと、弁当・惣菜・カット野菜・サンドイッチ・
麺。卸す量が増えることで物流コストが下がるメリットがある。またパイプが
一つなら何かのミスで取引が止まれば終わりとなるが、他のパイプで繋がって
いる間に営業と工場の努力で元の状態に戻すよう行動してきた。
・労働集約産業と設備産業の違いを知って経営することが大切である。資金力と
営業力のバランスが重要であり、よく考えて設備投資すること。今は食品企業
でも自動化が進んでいるが、まだまだこれからも進んでくると思われる。
・自分は今まで失敗もしてきた。ちゃんと収益の計算をしたうえでのアクション
でないと後で大きな失敗となる。
・コストを下げるというのは細かいことの積み重ねである。自社では物流や設備
面において、細かなコストダウンの検討を行い、実施してきた。
・いま自分の行っている仕事を人生の 1 つの仕事にする。今の仕事に自分がほれ
込む、納得する。それが情熱の原点である。嫌々やっている仕事や、誰かにさ
せられている仕事ほどつまらない仕事はない。
・異業種・同業種・先輩・後輩が一つになって、いろんな議題を話し合うことで、
何か一つ前進できるものがある。そこに新しいイノベーションが生まれる。