地域システムとは?

火5 「地域システム論」
1.「
「システム」
システム」とは,どういうもの?
◇目的 … 「地域」または「地域的現象」の「システム」としての成り立ち
について、社会・経済・文化・自然の諸側面から学ぶ。
・個々の「部分」や「要素」が互いに関係・関連しあいながら,まとまった「全体」
として認識できる「秩序」ある働きや現象を生じさせている状態。
◇学科課程の位置づけ … 学科専門基礎科目(2015入学者より)
また,そうした状態にある物事
◇講義内容 … 1〜6:原理, 7〜11:社会経済, 12〜15:環境・防災
★そのように「見える」事象を,私たち
は「システム」的だと認識する。
松本担当
2..「システム」的現象の特徴比較
◇達成目標
★「地域」の二つの意味
①空間的「まとまり」としての「地域現
象」に気づく目を養う。
①対象=現場としての「地域」
②それを成り立たせている社会・経
済・文化・自然の諸要素の結びつきの
「定石」を知る。
③現代の「地域」の「システム」として
のありようを理解する。
◇成績評価
… 第6回,11回,15回終了時に
レポート課題(各1300字程度)
+出席点
②方法=見方としての「地域」
⇒②の定石を知った上で,
①の現実を理解する
★「システム」の二つの意味
①秩序だった「見え方」としての
②目にみえない連関構造としての
⇒ 地域の諸事象は,個々バラバラに
そこにあるのではなく,「場」を同じくす
る限り,互いに関連しあいながらつな
がっている … ②
同時に,相互につながった地域事象
には,一定の秩序立った「見え方」
(pattern,まとまり)がある … ①
(「ヒト」ではなく)
システム的現象
その2
4.「地域システム
地域システム」の特質
地域システム
(1)「メタ・システム」
・ある「全体現象」としての「まとまり」をもつ「地域」は,それ自体が「要素」
と「関係」に分解できる「システム」であるだけでなく,より大きな「まとまり」
=「地域システム」を構成する「要素」でもある。
・逆に,より小さな「まとま
り」である「部分地域シ
ステム」を内包する。
⇒ 「入れ子」構造
「地域システム
地域システム」
地域システム
の特質性
3.「地域システム
地域システム」とは?
地域システム
(2)時空間
システム
・「地域」には「社会」,「自然」,「環境」が含まれる。
四次元システム!
・では,社会,自然,環境ではなくて「地域」と呼ぶのはなぜ?
(3)スケール
⇒それは,具体的な場所や土地に根差していることを考慮する場合。
・同時に「地域」は,理論的・抽象的・観念的なものというよりも,
具体的=客観的・実証的に認識できる「広がり」や「範囲」=
「まとまり」を持つ現象だということ。
・その場所や土地を構成する諸要素(人間,社会,自然,環境etc.)
を含む具体的な場としての「まとまり」が,すなわち「地域」。
・そんな「地域」をどうやって認識できるか。
⇒ それに「システム」の見方が役に立つ。
… 「見え方」としてのシステム,「連関構造」
としてのシステム
・その「原理」と「定石」を
知ってもらおうというのが,
本講義の目的。
・meso:regional,
local
②垂直 … 土地環境―生活―生業・産業
③歴史性 … 歴史的慣性や遺産,経験の蓄積
・同類の地域現象でも,どの空間規模で観察・分析対象
とするかで,構成要素や関係,説明原理も違ってくる。
・macro:national,
continental, global
・micro:local,
individual,
personal
①水平 … 地域間関係=他地域との相補関係
システム的見方とは
「地域システム」と「地域構造」
5.物事を「地域システム」として見るには
★世の中の現象を「システム
システム」とし
システム
て見るには …
⇒「地域」の「システム」的見方とは,
・「地域」における輻輳した現象を,
・構成要素となる「部分」が互いに
「関連」しあいながら「全体」を構成
し,その全体があたかもある目的に
沿って自己変容していく,というふ
うに世界の様々な現象を認識する
こと。
②その様相を,互いに「関連」する「要素」
や「部分地域」に分けて把握すること。
・地域,環境,社会は,本質的にシス
テム的。
④より広い地域,より長期間の歴史的流
れにおける位置づけをふまえて
・また,物事を論理的,分析的に考
える時,我々は何がしかの「システ
ム的」思考をしている。
認識すること。
①秩序ある「まとまり」として認識し,
③その際,その関連性を,その土地の自
然的・社会的立地環境を考慮し,
★こんな複合的な思考が必要だからこそ,
地域構想学科が教養学部にある!
地域システムの骨格
(日本の場合)
大都市
(首都)
世界都市
現
代
中央独占・寡占市場
global linkage
近
代
市場圏
市場=都市
前
近
代
中世の領国
土地
自然
自然
地域
自然村
・地域に関する文献には,「地域システム」よりも「地域構造」という
言い方のほうが多く用いられる。
・木内信蔵(1968)『地域概論』によれば,「地域構造」の語は次の
2つの内容で用いられるという。
①地域を構成する諸要素と諸因子の相互関係
②複数の地域の間に存在する相互関係
※要素:構成要素
因子:要素に影
響する条件
・これは「地域システム」の説明にもそのまま合致するので,「地域
構造」も「地域システム」も基本的に同義といえる。
・しいて雰囲気の違いを指摘すると:
・「システム」 … 相互関連しあう事象
や状態そのもの
・「構造」 … その背後にある容易に変
わらない仕組み
・後者は社会経済的視点の研究で,
前者は自然科学や工学で好まれる
傾向がある。
(おまけ)
・なお木内は,「地域構造」と呼べる条件に
ついて,次のように述べている:
「要素や因子の羅列だけでは地域構造を
述べたことにはならない。それらの関係を
平面的にも成立順序においても明らかに
することが必要。」
… 本授業の「地域システム」の説明
と変わるところはない。
「システム論」小史
・「システム」的な見方・考え方は古くからある。
・しかし,このことが意識的に重視されるようになったのは1960年頃。
・この時期,コンピューターの発達で数値実験(シミュレーション)が容易になり,複
雑な社会経済現象の数理モデル化と予測技法の開発が進む。
・その基本的方法 … 予測すべき全体現象を明確化し,それを計量可能な要素(
=変数)に分解し,それらの関係を「数式」で近似するシステム・プログラミングの
技術が大発展。
・1975〜80年頃,システム工学,システム・プログラマーは大人気に。
・他方,1970年代,経済や環境で,グローバルな問題が次々に表出
⇒ 個別の専門分野にとらわれない分野横断的な問題連関を重視する
「システム的見方」は,社会科学でも重要となる。
⇒「システム」はすっかり社会の流行語に
※「一般システム論」,「社会システム論」
「システム的見方」が重視されるようになった社会状況は,資本主義経済が大量生産システ
ムを生み出し,多国間の大戦争(軍隊こそ最高度のシステム機関)を経験した1920・30年代頃
から進行していた。 勘の鋭い哲学者や社会学者たちは「システム的なものとは何か」を根
本的に考える中で,「一般システム論」や「社会システム論」を提起。
eg:ベルタランフィ,パ ーソンズ, ルーマン etc.