美 耕作放棄地の現状 毎 年、野球場 個分の 耕作放棄地が発生 しい里山の風景を 守りたい 他業種連携が糸口に 五十嵐さんは「茅ヶ崎産の酒 米で、日本酒を作ったらどうな 適 米 )が 不 足 し た。「 多 く の 蔵 元 年ほど前に、世界的な日本 さかまい (酒造好 酒ブームで原料の酒米 性もあるのではないか」と収穫 もかかり、稲が病気になる可能 「荒れた土地から作るのは時間 るだろう。楽しみでわくわくし が酒米の確保に奔走しました」 まで不安な気持ちも抱いてい 酒 米作りで 耕作放棄地を活用 と、熊澤酒造で杜氏を務める五 た。収穫まで、大竹さんから育 国的に高齢者の離農が進み、今 後ますます耕作放棄地の増加が なり、新たな耕作放棄地が生ま いうわけでなく、土の中の雑草 ごみや雑草を取り除けばいいと 土地をよみがえらせるのは容 易なことではない。目に見える め、大竹農園の挑戦が始まった。 そして茅ヶ崎の景観を守るた 用。農家として規模拡大のため、 すことを目的に耕作放棄地を活 されない」ため、収穫高を増や 模が大きくないと市場で相手に 一方で、農家として生き残る ために規模拡大を目指した。「規 てよみがえらせる活動を始めた。 醸造を諦めか 地元産の酒 米を使っての めだった。 を危惧したた 作付けしてい ことで、現在 を新たに作る かった。酒米 農家は現れな 首を縦に振る か」とお願いに回った。しかし、 に「酒米を作ることができない 無事に収穫。放棄地を活用した 氾濫する事態に見舞われたが、 年前、農業生産法人株式会 社大竹農園を設立。耕作放棄地 ル茅ヶ崎産の日本酒作りが始 百万石」を大竹農園に提供。オー されている。 農家を支援 市の取り組み(一部) 広域連携で 新規就農者を支援 市では、藤沢市、寒川町 との広域連携で、耕作放棄 地の発生を未然に防ぐ取り 市 町で協定を結び、新規就 組みを行っています。 農者の受け入れ要件を統一 化。就農希望者が農家にな る資格を得て農地を貸し借 りし、農業委員会の審査を 受けるまでの手続きを円滑 に行うことが可能となりま した。また、就農後も安定 して農業が行えるようサ ポートを行っています。こ れにより農家でなかった方 の新規就農が増えていま す。また、貸し出しを希望 している農地の情報を共有 化し、他の農家の方が農地 を活用できる環境を整備し ています。 耕作放棄地再生へ ボランティアにご協力を 耕作放棄地の再生には多 くの人手が必要です。市で は、耕作放棄地解消ボラン ティア制度を設け、市民の 方にボランティアとして、 協力いただいています。現 在 人の方が登録、解消依 頼があった際に除草作業な ます。耕作放棄地に悩む地 どを手伝っていただいてい い」と思いをはせた。 し、作業した耕作放棄地は 年度は 月、 月に堤、 室田で作業を行い、雑草で 民農園などに活用されます。 農地へと生まれ変わり、市 権者とボランティアが協力 挑戦は、これからも続いてい く。 がる活動の一役を担っていきた 年目の事業は成功を遂げた。 の種まで取り除く必要があるか る米への影響 らだ。元の状態に戻るまで「畑 けていた昨年 変わっていった。台風で、川が ました」という気持ちと同時に 十嵐哲朗さんは、当時のことを 成状態を確認し、不安は希望へ 「この美しい里山の風景がい つまで続くのか、時々考えてし 黙っていられなかった」 。そし 振り返る。 日本の農業就業人口は200 万人を割り込み、1990年の れてしまうことになる」と大竹 て、父親の反対を押し切り、耕 農作業を続けることができなく 懸念されている。 農園を経営する大竹孝一さんは 作放棄地を再生させ、農地とし 生する。また、ごみが くの時間と手間 は 年~ 年」 、「田んぼは 年」 の活用事業のさらなる促進と農 まった。 るという。「今後も継続してこの 1 投棄されるなど、周辺 の営農や生活環境に悪 多 それでもやる意義がある 大竹農園が現在保有する約 ㌶の農地のうち約 ㌶は元々耕 作放棄地だった。増え続ける耕 月、話は 大きく動き出した。青年会議所 の は多くの時間と人件費がかかり 主催の他業種との懇親会の席 の時間が必要だという。「再生に ます。お金のことだけを考える で、熊澤酒造社長の熊澤茂吉さ 作放棄地を活用し、規模を拡大 してきた。 ならきっとやらない方がいい。 果てた耕作放棄地が 業を志す若者の育成のための仕 問題に取り組むために規模を拡 悪天候の合間を縫って行われた稲刈りで収穫した 酒米 影響を及ぼす。 茅ヶ崎も例外ではな い。農業従事者は 年 年間で160㌶が 間で半減し、耕地面積 は 個分にあたる約 失われた。毎年、野球 場 ㌶が耕作放棄地 ㌶の耕作放棄地が発生。昨年の 集計では ・ となっている。耕作放棄地の増 加は、食料の生産をはじめ、耕 地が持つ洪水を防ぐ機能の低 下、景観など私たちの生活に大 きく関係している。 耕作放棄地に対し 思いを抱くように んが大竹さんから「耕作放棄地 で酒米を作りたい。それでお酒 を作ってもらえませんか」との 提案を受けた。お酒を作ること あり、害虫や雑草な 組み作りに取りかかった。昨年 田んぼは耕作放棄地の 反を 合わせた計 反で始められた。 本 ると思い続けてきました」 。 それでも私たちがやる意義はあ 年ほど前、大竹さ なったのは、今から んが農家になって間 もない 歳代半ばの ど悪影響が出ていた。 には、父親が手放す田んぼを引 酒米は一般の食米より米粒が大 で地域に貢献できるならと意気 「 父 親 か ら は『 人 の土地に手を出す き 取 り 米 作りに進出。だ が、 本 きく、茎が長いため倒れやすい。 格的な対策へ会社を設立 米作りに進出 な』と反対されまし 業の畑とは違う田んぼで自分た 一般の食米より育成が難しいと 時だった。大竹さん た。しかし、農家と ちができるやり方を模索してい 大竹さんは「今年は台風で、な 1 投合し、 保有していた種もみ「五 して、また景観の面 た。 作放棄地と 茅ヶ崎の農家の未来 未来へ続く挑戦 耕 しかし、耕作放棄地は増え続 けている。大竹農園には、耕作 かなか収穫できず苦労しました 大し、もっと効率的に取り組ん 4 の畑の周りには荒れ から一市民として そして、 年目の今年、田ん ぼを 反に増加した。日照不足 た」と感慨深げに語った。 オール茅ヶ崎産の誕生 ヶ崎産の米で作った 日本酒が完成 響があり、想定を下回ったもの 茅 「全国のほとんどの蔵元が地 さかまい 元産の酒米を使って酒造りをし の約2000㌔の酒米を収穫。 や収穫間際に度重なる台風の影 ています。蔵元として、いつか 茅ヶ崎産の酒米で造りた いと夢見ていました」と 五十嵐さんは振り返る。 今年 月に販売された 「茅ヶ崎産米 かっぱの純 米吟醸」は、茅ヶ崎産の 酒米と工場敷地内の井戸 からくみ上げた水、オリ ジ ナ ル 酵 母 と「 オ ー ル 茅ヶ崎産」を使い醸造さ れた日本酒。「少しバニラ の香りがし、すっきりと した飲み口に仕上がりま した」と五十嵐さん。こ のお酒を目当てに、熊澤 が、耕作放棄地に明るい未来が でいきたいです」と大竹さん。 【農業水産課農業担当】 さい。 水産課へお問い合わせくだ お持ちの方は、市役所農業 ボランティア制度に興味を かった」と話していました。 なっていくのが気持ちよ 分の手で農地がきれいに りました。参加した方は「自 きれいな農地に生まれ変わ 覆われた約800平方㍍が 7 できなくなった畑を請け負って 苦労して作り上げた初めての 酒米。大竹さんは「熊澤さんと 見えてきた気がします」と達成 5 酒造へ訪れる人も多いと の巡り合わせがなかったら存在 感を口にした。 くれないかという依頼がきてい しなかったお酒。すごくおいし 使ったビール作りの実現に向け 熊澤酒造でも地元産の小麦を いお酒に出来上がっていまし いう。 巨大な釜で酒米を蒸し上げ、仕込工程へ進む 2 ボランティアの協力で、耕作放棄地の 除草作業が行われる 動き始めている。五十嵐さんは 65 3 田んぼの手入れをする大竹農園 の大竹さん 5 25 1 とう じ 一度耕作を止めた農地には、 かんぼく 雑草・灌木が繁茂し病害虫が発 まいます。高齢の農家が多く、 田んぼ再生プロジェクトでは、参加者自 らかかしを作成 茅ヶ崎では酒米を作る農家は なく、五十嵐さんは地元の農家 割程度にまで落ち込んだ。全 1 言葉を漏らした。 4 1 5 協力して、放棄地の減少につな 日本酒の香りや色合いを確認する熊澤酒造杜 氏の五十嵐さん 豊かな農地を守るため、取り組みは続いていく 2 3 「これからも地元の農家さんと とう じ 実った稲を手に取り笑顔を見せる大竹さん 7 3 3 20 5 5 1 20 6 大竹農園が生産した酒米を使用し、熊澤酒造の井戸水と 敷地内で採取された天然酵母。オール茅ヶ崎産にこだわり 作られました。ラベルは熊澤酒造近くの酒にまつわる か っ ぱ どっくり 「河童徳利伝説」をモチーフにデザインされました。作り 手の思いが詰まった一品をご賞味ください。 容量 720ml・価格1490円 問合 熊澤酒造株式会社 ☎ (52) 6118 ( 土・ 日 曜 日、 祝 日を除く9時~17 時) 28 大竹農園が農業を身近に感じてもらうために実施している「田んぼ再生 プロジェクト」。参加者は田植えの他、田んぼでの草取りを体験 4 15 1 オール茅ヶ崎産の日本酒 「かっぱの純米吟醸」 収穫時期を迎えた田んぼの前で握手を交わす熊澤酒造社長の熊澤茂吉さん(左)と大竹農園の大竹孝一さん 二者が取り組んだ、米作りと酒造りの挑戦。農業と他業種がつながり、耕作放棄地を変える。 度重なる台風の影響を受けたが、2年目も無事に収穫を終えた 4 平成28年(2016年)10月1日号 広 報 No.1055 5 耕作放棄地を再生した田んぼに、今年も米が実った。 荒れ果てていた場所が、生命感あふれる田んぼへとよみがえった。 近年、耕作が行われなくなった農地いわゆる「耕作放棄地」が茅ヶ崎でも増加している。増 え続ける耕作放棄地をどうすれば減らすことができるのか。この難題に対し、昨年、市内二つ の事業者が協力し動き始めた。 耕作放棄地の田んぼを耕し、農地としてよみがえらせた葉物専門農家「大竹農園」 。そして、 大竹農園と思いを同じにし、生産された酒米から作った日本酒を商品として売り出した湘南唯 一の蔵元「熊澤酒造」 。
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