先天性心疾患 Congenital heart disease (CHD) 心臓の進化発生学 先天性心疾患とは、 1.心臓発生の停止あるいは異常 2.肺循環と体循環の不分離 D-loop 総動脈幹 右心房 左心房 右心室 左心室 先天性心疾患の分類 1.非チアノーゼ性心疾患 (ASD, VSD, PDA, ECD, COA) 動脈血が静脈血へ混合(左右短絡:L-R shunt) チアノーゼ性心疾患 (TOF, TGA, TAPVC, HLHS) 静脈血が動脈血へ混合(右左短絡:R-L shunt) 2.遺残性心疾患(心臓の正常の発生過程で一度は出現 ) (PFO, VSD, PDA, ECD, DORV, TAPVC) 奇形性心疾患(心臓の発生過程では出現しない) (ASD, TOF, TGA, HLHS) 3.単心室性心疾患 (SV, TA, MA, PPA, HLHS) 二心室性心疾患 5-step approachによる分類 卵円孔開存 、心房中隔欠損、単心房 心房逆位、心房相同 Step.1 Step.4 心室中隔欠損、心室逆位 Step.2 Step.5 Step.3 単心室、僧帽弁閉鎖症、三尖弁閉鎖症 心内膜床欠損症、修正大血管転位症 ファロー四徴症、両大血管右室起始 両大血管左室起始、Taussig-Bing奇形 大血管転位症、修正大血管転位症 総大動脈幹症、大動脈・肺動脈中隔 大動脈縮窄症 心房中隔欠損症 Atrial Septal Defect (ASD) 心房中隔欠損(二次孔型)について ・心房中隔欠損症は心室中隔欠損(VSD)についで多く、先天性心疾 患の約7〜10%を占める。 ・本症に対する欠損口閉鎖術は根治性が高く、安全性が高い開心術と して古くから行われている。 ・心エコーの技術が進歩し、生後ただちに診断確定されることが多く なり、現在の手術年齢は就学前になっている。 ・通常、学童期、青年期を通じて、ほとんど心房中隔欠損症に由来す る症状はなく、30歳〜40歳ぐらいから心不全症状や心房細動 などの 不整脈が出現してくる。 心房中隔の発生 原始心房 前 方 後 方 一次中隔 右 方 二次孔 一次孔 二次中隔 左 方 右心房 左心房 卵円窩 心内膜床 一次中隔 右心房内構造 ( 静右 脈心 洞房 由洞 来部 ) (原始心房由来) 発生機序 (僧帽弁) (三尖弁) 一時中隔の形成不全が二次孔型ASD ASDの部位別診断 1.二次孔欠損型ASD 最も多く認められるタイプ 2.静脈洞欠損型ASD SVC接合部直下に欠損部位 部分肺静脈還流異常が合併 3.一次孔欠損型ASD 心内膜床欠損症 心房中隔欠損症の血液の流れ 肺 上下大静脈 拡張期の左右短絡 ASD 右心房 左心房 右心室 左心室 (容量負荷の増大) (容量負荷の減少) (心拡大) 体血流量 肺血流量の増加 肺動脈 (低形成ぎみ) 大動脈 全身 肺高血圧 =肺血流量↑×肺血管抵抗 肺対体血流比:Qp/Qs 心房中隔欠損症の心エコー所見 (四腔断面像) 心房中隔欠損症の右室拡大所見 正常心臓の輪切り ASD心臓の輪切り(短軸像) 右心室 右心室 左心室 左心室 心房中隔欠損症の術前血行動態的特徴 ・心房中隔欠損口を介して拡張期の左右短絡が持続するため、肺血流 量の増加とそれによる肺高血圧が発症する(年齢に比例) ・左右短絡による右心房・右心室の容量負荷により、右心房・右心室 が拡大する。 ・左心室に流入するべき血流が欠損口を介して右心系に逃げるため、 左心室が小さい(低形成)傾向にある。 ・心房負荷が持続すると、心房細動などの心房性不整脈が出現するよ うになる(年齢とともに増加)。 心房中隔欠損の不整脈の年齢別頻度 心房中隔欠損症の手術適応 心房中隔欠損症の自然歴:10ミリ未満の欠損孔は、1歳ぐらいまでに自然閉 鎖する可能性がある。また、自然閉鎖しなくても、血行動態的に心臓に強い 負荷が加わることは少なく、正常生活を全うできる。 血行動態的には、 欠損口の大きさが直径1.0 cm以上、肺対体血流比2.0以上 が将来的に心不全、不整脈などの症状が出現するため手術適応となる。 心房中隔欠損症の手術術式 送血管 脱血管 脱血管 心房中隔欠損症 心房中隔欠損閉鎖術 心房中隔欠損 直接閉鎖法 先天性心疾患の術後管理の特徴 ・術前と術後の血液の流れが全く異なってくることが多い ・術後にかえって心臓に負担が加わることがある ASDの術後血行動態 肺 右心房 ASD (心拡大減少) 右心室 (容量負荷の減少) 左心房 左心室 (低形成) (突然の容量負荷の増加) 肺血流量の正常化 肺動脈 大動脈 急性左心不全 発症の可能性 ASDの術後血行動態 心房中隔欠損症の術後の血行動態の特徴 ・心房中隔欠損を通過する血流が消失し全血液が左心室に流れるため、 左心室の容量負荷が増大する。⇨ ・肺血流量が減少するため、術前の肺高血圧が軽減または消失し、 右心系の圧・容量負荷は減少する。 ・心房性不整脈、特に心房細動などが残存。 最近の手術術式の特徴 ・現在の心房中隔欠損症の手術危険率は、高齢者を除くと限りなく 0%に近い。従って、より付加的な要素が重視される傾向にある。 1)低侵襲手術(美容的要素が加わる) ・なるべく小さな皮膚切開(特に切開上端を低くする) ・適齢期の女性に対しては乳房下切開 2)異物をなるべく使用しない ・欠損口の直接縫合 ・パッチ閉鎖の場合は、自己心膜を使用 3)無輸血手術 ・術前病棟での自己血貯血、手術場での自己血貯血 ・術中の自己血回収、濃縮、返血 ・術中血液濃縮のための一時的な透析の使用 ・術後の鉄剤などの造血剤の使用 経皮的(カテーテル的)欠損孔閉鎖術 Amplatzer septal occluder ニッケル及びチタンの形状記憶合金によるメッシュ構造 術式 Amplatzer septal occluder 手術とカテーテル治療数の比較
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