主 动 脉 瘤 主动脉窦动脉瘤 Aortic aneurysm of the sinus of Valsalva 主动脉窦 大動脈バルサルバ洞動脈瘤の 外傷性破裂1剖検例 朱 宝利, 権 力, 石田 香, 織谷茂樹, 藤田眞幸, 前田 均 大阪市立大学医学部法医学教室 バルサルバ洞動脈瘤 Aneurysms of the sinus of Valsalva バルサルバ洞部の大動脈壁の拡張 (Thurman, 1840) 右冠状動脈洞 に好発 (70%) 頻度: 心臓外科患者の0.23~0.69% (男性 80%) 大部分は先天的原因 後天性の原因: 梅毒,感染性心内膜炎など 破裂年齢: 平均40歳, 小児まれ 症状: 破裂しないと無症状 破裂 大動脈と破裂部位との間に左-右短絡,臨床では突然 の胸痛,呼吸困難など,急速に心不全に陥る 右冠状動脈洞瘤の破裂 右室内 70% ,右房 25%,心嚢内まれ 事例の概要 51歳,男性.自宅にて息子と口論,手拳で胸部を殴られたという. その直後にはめまいを訴えて横になっていたが,15分程度後に 両手が痙攣して意識が消失. 救急車で病院へ搬送,呼吸と心拍を認めるも,血圧低下,意識 不明.その後,一旦は意識が回復したが,再び症状悪化,事件 発生から約7時間後に心肺停止状態,蘇生術に反応せず死亡. 既往症・既存症: 特になしとのこと. 死後約9時間で司法解剖. 98-117 98-117 98-117 98-117 98-117 主要剖検所見 身長160.8cm,体重60.7kg 死斑・死後硬直: 強,顔面・結膜: うっ血,結膜溢血点多数 右乳房外側10×6cm大の皮下脂肪織内・筋肉内出血,右第3~5肋 骨骨折・胸膜下出血 右肺中葉内側縁挫傷・前縦隔血腫 心膜腔内凝血を混じる血液約200ml 大動脈起始部右バルサルバ洞拡大(径2cm),嚢状動脈瘤形成(径 8cm),動脈瘤開口部上縁裂傷(5.5cm),一部穿孔.動脈瘤前面外 膜不全裂傷(2cm) 98-117 98-117 98-117 98-117 組織学的所見 右心室外膜下局所性出血・多核球浸潤,心筋局所性挫傷 動脈瘤壁浮腫状,弾性線維・筋組織乏しく,裂傷部出血, フィブリン沈着・多核球浸潤.瘤前面不全裂傷部生活反 応乏しい 瘤の壁を走る右冠状動脈は高度硬化・狭窄. 肺うっ血,マクロファージやや多数,右肺挫傷部局所性 出血・軽度炎症細胞浸潤. 心臓マッサージの合併症 心臓大血管損傷 発生率: 剖検例中 約8%~10% 心のう血腫,心室心内膜下挫傷 心臓裂傷: 左心 (左心室>左心房) >右心 (右心房・室) 大動脈・大静脈外膜下出血,裂傷 骨折: 胸骨および肋骨 (両側 78.8%, 片側21.2%) その他: 肝臓裂傷など (Adelson L, 1957; Krischer JP, 1987) ま と め 本例の死因は,バルサルバ洞動脈瘤破裂に基づく心 のう血液タンポナーデと判断された. 胸部の皮下・筋肉内出血,肋骨骨折,肺および心臓挫 傷の位置関係,動脈瘤破裂部の生活反応などから,右 胸部の打撲によって破裂したものと考えられた.
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