こちら - 工学院大学

2016 年度 後期
化 学 実 験
工 学 院 大 学
工 学 部
工学院大学 基礎・教養教育部門 化学 編
学部:
学科:
学籍番号:
氏名:
曜日:
時限:
実験台番号:
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
受講のための準備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 2
第1回
化学実験の説明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 11
第2回
炎色反応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 12
第3回
無機陽イオンの反応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 14
第4回
第 I 属陽イオンの系統的分析 ・・・・・・・・・・・・・ p. 18
第5回
第 III 属陽イオンの系統的分析 ・・・・・・・・・・・ p. 19
第6回
第 I,III 属陽イオンの混合試料の分析 ・・・・ p. 20
第7回
第 I,III 属陽イオンの未知試料の分析 ・・・・ p. 22
第8回
レポート指導と分子模型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 23
第9回
硫酸銅の合成と精製 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 25
第10回
アルカリ標準液の調製 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 27
第11回
市販食酢中の酢酸の定量 ・・・・・・・・・・・・・・・ p. 30
第12回
蒸留水の製造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 32
第13回
ナイロン 6 10 の合成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 35
第14回
学習内容の振り返り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 37
資料1
周期表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 38
資料2
原子量表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p. 39
1
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
受講のための準備
0-1. 準備・購入するもの

実験ノート : 大学生協で販売されている A4 ノート(オレンジ色の表紙)を購入すること。
ノートを忘れた者、または、予習を行っていない者は実験禁止(欠席)とする。

筆記用具 : 黒の油性ボールペン(指定はないが、後から消す機能がないものとする)

関数電卓 : 分子量や収率の計算に必要となる。普通の電卓でも良いが、関数電卓を購入
することを推奨する。携帯電話やスマートフォンを電卓として使用することは禁止
する。
0-2. 実験のルール


遅刻について

理由なく実験に遅刻した者は、実験禁止(欠席扱い)とする。

電車やバスの遅延が理由の場合は、遅延証明書を授業担当者に提出し、指示を仰ぐこと。
欠席について

欠席を1回でも行った場合は、以降の実験が禁止となり、単位を取得することはできない。
病欠や忌引きの場合は、医療機関等の証明書を授業担当者に提出し、指示を仰ぐこと。

服装について

実験では、危険な薬品や火の取り扱いを行う。このため、実験に適した服装をする必要があ
る。通常の私服で実験を行っても問題ないが、動きやすく汚れてもよい服装を着用すること。
白衣や作業着を所有している者は、着用を推奨する。ハイヒール・サンダル・スリッパなどの履
物は危険なため、禁止とする。髪の長い者は、ゴムひもなどで束ねること。
0-3. 実験器具
実験台の中のコンテナに、表 0-1, 0-2 のリストの実験器具・試薬を各個人用に用意している。
実験開始時、および、実験終了時に、リストの器具が揃っていることを確認すること。器具の不足があ
る場合は、授業開始時前に申し出ること。実験器具は、他のクラスの人との共用である。実験器具に
不足があると、次の時間に実験を行う際に支障を来たす。必ず、実験開始前の状態に戻すこと。
実験器具をコンテナにしまう際は、水を良く切ること。表 0-1 に記載されていない試薬は、共用で
使用する。試薬の所在は実験冒頭に説明するので、確認すること。
2
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表 0-1.コンテナ内の実験器具と試薬
器具名・薬品名
数量
試験管
12
器具名・薬品名
数量
試験管立て
1
ビーカー(100 mL)
3
ビーカー(200 mL)
1
ガラス棒
1
試験管はさみ
1
ろうと
1
着火器
1
駒込ピペット (2 mL) + ニップル
1
駒込ピペット (5 mL) + ニップル
1
三角フラスコ(100 mL)
2
3 mol/L HCl(120 mL)
1
3 mol/L NH4OH(120 mL)
1
3 mol/L HNO3(60 mL)
1
3 mol/L NaOH(60 mL)
1
油性マジック
1
※ スポイト滴瓶のラベルでは、「mol/L」の略号である「M」を使用している。
表 0-2. コンテナ外の実験器具
器具名
数量
器具名
数量
ポリ洗瓶(イオン交換水)
1
保護めがね
1
ガスバーナー
1
三脚
1
ろうと台
1
セラミック金網
1
0-4. 実験の後片付け
実験終了時は、以下の項目をチェックする。

イオン交換水を補充する。

不足している試薬と実験器具を補充する。

コンテナと実験器具を元の位置に戻す。

実験台を雑巾で拭く。
0-5. 実験廃液・実験廃棄物処理
化学実験では、重金属のように人間や自然界の動植物にとって有害な化学物質も取り扱う。このため、
実験で生じた廃液を、適切に処理しなければならない。
表 0-3 は、工学院大学で実験廃液を分別回収する際のカテゴリーを示している。本実験で使用する
化学物質のうち、特に表 0-4 に示す有害物質については、廃液原水および3回目までの器具洗浄水を
適切なポリ容器に捨てること。器具洗浄水は、できるだけ少量にすること。
また、表 0-5 に示すように、重金属を含まない酸や塩基は、一旦バケツに回収し、中和してから流しに
捨てる。ろ過によって出るろ紙のゴミは、重金属が付着しているものと付着していないものを分けて回収する。
3
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表 0-3.工学院大学における実験廃液カテゴリー
重金属類
無機実験廃棄物
酸・アルカリ廃液
有機溶媒
水銀化合物
B1
カドミウム・鉛・クロム・砒素化合物
B2
クロム酸混合液
B3
シアン化合物
B4
その他の重金属・塩含有廃液
B5
写真現像液廃液
B6
定着液廃液
B7
弗素含廃液
B8
酸廃液・有害物質を含まない
B9
アルカリ廃液
B10
可燃性廃液(アセトン、エーテル、ベンゼ
ン、トルエン、フェノール、アルコール等)
石油系廃液(灯油、重油、機械油、切
有機実験廃棄物
削油、焼入油等)
廃油等
C2
C3
廃油
C4
難燃性有機溶剤
C5
有機水銀化合物廃液
C1
表 0-4.化学実験でポリ容器に回収する実験廃液
カテゴリー
B2
B5
化学物質
容器ラベル
2+
3+
鉛・クロムおよびその化合物(例: Pb , Cr など)
+
3+
黄
2+
その他の重金属・塩含有廃液(例: Ag , Fe , Cu など)
青
表 0-5.化学実験で用意する廃液・廃棄物用のバケツ
名前
用途
ろ紙用バケツ
重金属が付着していないろ紙を回収する。
重金属ろ紙用バケツ
重金属を含む沈殿が付着したろ紙を回収する。
酸・塩基用バケツ
酸性および塩基性の水溶液を回収する。中和したのち、流しに捨てる。
ナイロン用バケツ
ナイロンを回収する。
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0-6. 実験の予習、実験ノートの書き方
 実験ノートへの記入
 黒の油性または耐水性のボールペンを用いること。消しゴムで消せる鉛筆やシャープペンシル、
消せるボールペン、水でにじむ水性のボールペンは、実験ノートへの記入には不適切である。
 記入した年月日を書くこと。
 記入を誤った場合は、修正液を使用したり、塗りつぶして消してはいけない。なぜなら、もとも
と書いてあった内容を確認する必要が出てくる場合があるからである。何が書いてあったか後
で確認できるように、修正箇所は横線か横二重線で記すこと。
 予習で記入した部分と、実験中に記入した結果が区別できるように工夫すると良い。(下
記の『「3. 実験」の書き方』も参照のこと)

予習の構成
 下の 1 ~ 3 は予習の段階で、実験ノートにまとめておくべき項目である。
1. 目的 : 本実験の目的を簡潔に書く。
2. 理論 : 実験の背景や原理を説明する。
3. 実験 : 実際に行う予定の操作を書く。(現在形)

1 では、実験テキストの内容全体と把握し、目的を簡潔に書く。

2 には、実験の背景や、関連する化学反応式・計算式を書く。

3 には、使用試薬の化学式(分子式)、分子量、融点、沸点、密度、溶解性、性状
(固体、粉末、液体)、使用器具(ビーカー、漏斗、フラスコなど)を書く。また、実験操
作の手順を箇条書き、またはフローチャートにしてまとめる。予習の段階では実験はまだ行っ
ていないので、「現在形」で書く。ただし、レポートを書くときには、既に行った操作なので、3 は
「過去形」で書くこと。
※ 試薬データの例として、塩化セバコイルのデータを以下に示す。
分子式: C10H16Cl2O2
融点: -2.5 ℃
分子量:239.14
沸点: 220 ℃
性状: 橙黄色液体
密度 (20℃): 1.119 g/cm3
溶解性: エタノールに数 mg/mL 以上
 「3. 実験」の書き方

予習の書き方に決まりはないが、本人はもちろん、他人(教員)が実験ノートを見たときに、
どの部分が操作でどの部分が記録(行った実験手順の変更点(滴下量など)や観察した
結果)なのかを容易に理解できるように書く必要がある。また、記録を書きこむためのスペー
スをあらかじめ確保しておく。以下に予習の書き方の一例を示す(例であり、必ずしもこの書
き方を真似る必要はない)。
5
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
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実験の手順は、基本的にはテキストに記載の手順そのままで良い。しかしながら、テキストの
文章は 1 つ 1 つが長いため、読みながら実験するのには適していない。そこで、予習の段階
で、長い文章を 1 つ 1 つの操作に分割して、箇条書きにするのが良い。例えば、実験 3 回
目の ① Ag+ イオンの c ) の操作は、
a) で分けた他方の試験管に 3 mol/L-NH4OH(3 規定のアンモニア水)を滴下し、よく
振って沈殿を溶かし、溶けた液に更に 3 mol/L-HNO3(3 規定の硝酸)を滴下する
(再び、液を酸性にする)と、再び白色の沈殿を生じる。
とテキストに書かれおり、読みながら実験するのは難しい。そこで、予習ノートに、
✔・a ) で分けた他方の試験管に 3 mol/L-NH4OH を滴下する
○●滴、滴下した
✔・よく振って沈殿を溶かす
沈殿がすぐに溶けた
✔ ・溶けた液に更に 3 mol/L-HNO3 を滴下する
○●滴、滴下したところ、
○●色沈殿が生じた
と書き直す。得られた結果や滴下量を右ページ(もしくは、箇条書きの右側)に書くと、操
作と結果を区別しやすい。すでに終わった操作に✔を入れると、操作ミスを避けることができる。
箇条書きの行間を 1 行空け、そこに結果を書く方法もある。
0-7. 実験レポートの書き方

レポートの書式に関しては、担当教員の指示に従うこと。手書きの場合は、黒の油性ボールペン
を用いること。消しゴムで消せる鉛筆やシャープペンシル、消せるボールペン、水でにじむ水性のボ
ールペンは、実験レポートの執筆には不適切である。

間違えた箇所の修正には、修正液を使用すること(実験ノートのように、横線で消さない)。修
正箇所が多い場合は、新しいレポート用紙に書きなおすこと。

レポートの構成

一般的に、1. 目的 2. 理論 3. 実験 4. 結果 5. 考察 6. 結論 7. 参考文献
の順序で書く。各項目の主な内容を下に示す。
1. 目的 : 本実験の目的を簡潔に書く。
2. 理論 : 実験の原理を説明する。
3. 実験 : 実際に行った操作を書く。 過去形
4. 結果 : 実験により得られた結果を書く。 過去形
5. 考察 : 結果を化学的に説明し、議論する。
6. 結論 : 本実験の 1-5 をまとめ、簡潔に書く。 過去形
7. 参考文献: 参考にした書物や論文の名前や出典情報などを書く。
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
同じページに複数の項目が含まれても問題はない。

丁寧な字で、A4 サイズのレポート用紙の片面のみに手書きで書くこと。長い線は定規を用
いて書くこと。

表紙

実験題目、実験日、気温などの必要事項を記入する。

基本的には個人実験だが、数人で行う共同実験の場合は、共同実験者の名前を備考欄
に書く。

1. 目的

今回の実験は何を目的としているのかを具体的かつ手短にまとめて書く。

「実験器具の使い方・実験操作を学ぶ」といったことを目的に書く者がいる。実験全体を通し
ての目的の 1 つであることに間違いはないが、各回の目的としては不適切である。
 2. 理論
 「原理」と書くこともある。
 何も考えずに勘で実験操作を行っているわけではない。「目的」を達成するために次の「実験」
を行うのであり、そのような「実験」を行うのには、明確な根拠がある。「理論」の項目では、
「実験」の根拠・原理を化学的に説明する必要がある。
 化学反応が関係する場合は、化学反応式を必ず書いて説明する。化学反応式に番号をつ
けておくと、「考察」で化学反応式を引用できて便利である。
 化学反応式などは、書物などで調べた内容を書き、想像で書かないこと。過去のレポートで、
明らかに間違った化学反応式を書いている者が見受けられる。
 定性分析実験などにおいては、どのような実験結果になるのが正しいのか調べること。考察で
実験結果の妥当性の判断の参考となる。
 レポートの読み手がこの「理論」の項目を読んで、次に続く「実験」の意味を理解できなければ
ならない。
 この項目をどの程度詳しく書くかは、読み手の化学の知識レベルによって違ってくる。諸君の化
学実験を担当する教員は、この項目を読まずとも原理を理解しているわけだが、諸君は大学
受験レベルの化学の知識を持った人に読んでもらうことを想定して書くこと。
 3. 実験

「実験操作」や「操作」と書くこともある。

使用試薬の化学式(分子式)、分子量、融点、沸点、密度、溶解性、性状(固体、粉
末、液体)、使用器具(ビーカー、漏斗、フラスコなど)を書く。

実験操作の手順を箇条書き、またはフローチャートにしてまとめる。
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
実験装置を組む場合は、その簡単な図を書く。

実験操作は、すでに行った行為であるので、必ず過去形で書く(~滴下した。~加熱し
た。)。実験ノートに予習する段階では、まだ行っていないので、現在形で書く。

自分の行った操作を正確に記述する必要がある。仮に操作を間違えたとしても、その間違え
た操作をその通りに書かなければならない。偶然の操作ミスが新発見につながることもある。
このような習慣をつけることが、研究において大事になる。

実験操作を記述する際は、曖昧さを残してはいけない。テキストでは、「数滴滴下する」「数
分加熱する」といった曖昧に記述されているが、実験ノートやレポートには「~溶液を 3 滴滴
下した」「~溶液を 2 分間加熱した」と、具体的かつ明確に書かなければならない。

4. 結果

「実験結果」と書くこともある。

「結果」は、必ず過去形で書く(~色に変化した。~が生じた。・・・)。実験ノートに結果を
書くときも過去形で書く。

「実験」を行ったことによる変化を具体的かつ正確に記述する。細かい変化も見逃さずに記
述すること。このことも、新発見につながる大切なポイントである。

溶液の状態の変化の記述には特に注意する必要がある。溶液は、「透き通っている」場合と
「濁っている」場合のどちらかである。溶液が濁っているのは、沈殿が生じている証拠である。
「沈殿」だからといって、いつも試験菅の底に溜まっているとは限らず、浮遊している場合もあ
る。また、沈殿にも様々な形がある(粒状沈殿、雲状沈殿、など)。

溶液が「透き通っている」場合は、「○色透明溶液」と表現すればよい。溶液が「濁っている」
場合は、その色を観察して、「○色沈殿が生じた」と表現すればよい。

温度計や比抵抗計などの数値は、通常、最も細かい目盛りの 1/10 まで読む(例:1 ℃
刻みの目盛りが付いている棒状温度計であれば、10.1 ℃)。

必要に応じて、図表を用いるとよい。図表にはタイトルを付けること。通常、図のタイトルは図
の下に、表のタイトルは表の上に付ける。図表の線は定規で引くこと。

5. 考察

「結果」と「考察」の違いを理解すること。「結果」は、「実験」の操作により起こった変化を正
確に書くだけでよい。「考察」では、その変化を化学的に説明し、議論する。
例)Ag+ を含む溶液に塩酸を 2 滴滴下した。
白色沈殿が生じた。
+
-
Ag + Cl
「実験」に書く内容
←
「結果」に書く内容
←
「考察」に書く内容
⇄ AgCl の化学反応が起こり、
生じた AgCl が沈殿したため。

←
化学反応が関係する場合は、必ず化学反応式を書いて説明すること。「理論」の項目にす
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化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
でに化学反応式を書いている場合は、その式番号を引用しても良い。

実験3無機定性分析実験1で、金属イオンの分離・検出の結果を考察する場合、系統
分析図(流れ図、フローチャート)を作成すること。

濃度や収率などの計算は、この項目で行う。有効数字の間違いが非常に多いので、注意す
ること。

実験が予想通りに上手く行った場合も、その結果を説明しなければならない。時折、「テキス
ト通りの結果になったので、実験は上手くいった。」とだけ書いて考察を終らせる者がいるが、
これは考察とは呼べない。化学反応式を用いて説明すること。

実験で予想外の結果が得られた場合は、そのような結果になった理由を説明する必要があ
る。

「結果」と「考察」の項目をまとめて「結果と考察」とするスタイルもある。この場合は、実験の
結果と説明を一緒に書く。本実験のレポートでは原則として、「結果」と「考察」を分けて書く
こと。

6. 結論

本実験で何を目的に実験を行い、何が分かったのかを含め、具体的かつ手短に「結論」をま
とめる。

「結論」は「目的」に対する答えである。「目的」の後に「結論」を読んだとき、意味が通じなけ
ればならない。

「色が綺麗だった」「操作が難しかった」といった感想や、「実験器具の使い方を学んだ」といっ
た手段に関することを書く者がいる。このようなことを書いても構わないが、これは「結論」では
ない。必ず、化学的な観点から結論を書くこと。
 7. 参考文献

レポートを書く際に参考にした書物を書く。

テキストを参考文献に書く必要はない。

「書名」「著者」「ページ番号」「出版社」「出版年」のデータは必須である。

例 1:「実験データを正しく扱うために」、p.10-11、化学同人編集部 編、化学同人
(2007)

例 2:今田泰嗣、大嶋孝志、廣瀬敬治「化学を学ぶ人のレポート・論文・発表マスターガ
イド」、p. 11-20、化学同人(2010)

インターネットを参考にしてはならない。情報に信ぴょう性がないためである。インターネットから
ヒントを得ることは良いが、その後、必ず書物でその情報の信ぴょう性を確認してから、レポー
トに書くこと。
9
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
0-8. 参考書
下の参考書は、すべて大学図書館に置いてあるので、活用すること。

「大学と高校を結ぶ 化学基礎演習」 佐藤光史 他著、2015 年、培風館

「-視覚でとらえる-フォトサイエンス化学図録(新課程改訂版)」 数研出版編集部 編、
2013 年、数研出版

「DVD 教材 化学:未来をひらくサイエンス CHEMISTRY シリーズ 第 10 巻 酸と塩基」

「実験を安全に行うために(第 7 版)」 化学同人編集部 編、2006 年、化学同人

「続 実験を安全に行うために(第 3 版)」 化学同人編集部 編、2007 年、化学同人

「改訂 化学のレポートと論文の書き方」 泉 美治 他監修、1999 年、化学同人
10
化学実験(工学部)
【 第1回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
化学実験の説明
講義室にて、化学実験の概要の説明と基礎的な内容の演習を行う。講義室は、

木曜 2 時限 工学部 機械工学科: 04-255

木曜 3 時限 工学部 機械システム工学科: 04-255

金曜 2 時限 工学部 電気システム工学科: 15-208

金曜 3 時限 工学部 機械工学科: 1W-116
である。
11
化学実験(工学部)
【 第2回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
炎色反応
<理論>
太陽光をプリズムに通してスクリーンに投影すると、7 色に分かれることが分かる。これは、太陽光が様々な
波長の光を含んでいることを示している。様々な波長の光が混ざると、人間の目には白色に見える。
我々は普段の生活で、赤や黒など、物質の色を認識することができる。物質の色は、通常は、その物質
が光を発しているわけではない。物質に白色光があたると、特定領域の波長の光は吸収され、その他の波
長の光は反射される。この反射された光の波長の違いによって、我々は色の違いを認識できる。
例えば、赤い光は波長が長く、紫の光は波長が短い。長波長の光が物質に吸収されると、反射波には
短波長の光が多く含まれるため、その物質は紫や青に近い色に見える。短波長の光が物質に吸収されると、
その物質は赤や黄に近い色に見える。白い物質は、光が吸収されていないことを示す。逆に、黒い物質は、
光が多く吸収されていることを示す。
中性の原子には、原子核にある陽子と同じ数の電子が存在する。原子核の周りの電子は、原子核に近
いところから K 殻、L 殻、M 殻と呼ばれる電子殻に存在する。電子のエネルギーは、K 殻、L 殻、M 殻順に
増加する。また、同じ殻には s 軌道、p 軌道、d 軌道と呼ばれる軌道が存在し、これらの順にエネルギーは
増加する。ただし、K 殻には s 軌道だけ、L 殻には s 軌道と p 軌道、M 殻には s 軌道と p 軌道と d 軌道
が存在する。s, p, d 軌道にはそれぞれ 1, 3, 5 個の同じエネルギーを持つ軌道が存在し、それぞれの軌道
には最大 2 個の電子が収容される。
以 上 を 踏 ま え る と 、 電 子 を 11 個 も つ Na の 最 も 安 定 な 基 底 状 態 の 電 子 配 置 は 、
(1s)2(2s)2(2p)6(3s)1 で表される。基底状態の Na に光をあてたり、熱を加えると、不安定な状態(励
起状態)へと変化する。最もエネルギーの低い励起状態の電子配置は、3s 軌道の電子が 3p 軌道にとび
移った(1s)2(2s)2(2p)6(3p)1 で表される。基底状態を励起状態のエネルギー差のことを励起エネルギーと
呼び、波長との関係は次の式で表される。
∆E = E1 - E0 = hν = hc / λ
(2-1)
ここで、E0, E1, ∆E はそれぞれ基底状態のエネルギー, 励起状態のエネルギー, 励起エネルギーを表す。ν
と λ は励起エネルギーに対応する光の振動数および波長である。h, c はプランク定数と光の速度を表す。
炎色反応で見える光は、熱により励起された原子が、基底状態に戻るときに発する光である。基底状態
と励起状態のエネルギー差の違いにより、発する光の波長が異なるので、人間の目にも異なる色として観測
されるのである。
<予習課題>

可視光線の波長と色の関係を調べ、図で示せ。

プランク定数 h と光の速度 c を調べよ。単位を忘れずに書くこと。
12
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
<実験操作>
1.
KCl 0.75 g, CaCl2 1.11 g, SrCl2・6H2O 0.27 g, BaCl2・2H2O 0.24 g をそれぞれ電
子天秤ではかりとり、別々のビーカーに入れる。それぞれにイオン交換水 各 10 mL を加え、良く
撹拌し溶かすことにより、1.0 mol/L-KCl 水溶液、1.0 mol/L-CaCl2 水溶液、0.10
mol/L-SrCl2 水溶液、0.10 mol/L-BaCl2 水溶液を調製する(※1)。
2.
油性マジックで、試験管に化学式を書く。1 で調製した 1.0 mol/L-KCl 水溶液、1.0 mol/L
-CaCl2 水溶液、0.10 mol/L-SrCl2 水溶液、0.10 mol/L-BaCl2 水溶液 各 2 mL を
別々の試験管に取る(※2)。 また、既に調製済みの 0.010 mol/L-NaCl 水溶液 2 mL
を別の試験管にとる。
3.
3 mol/L-HCl 2 mL を試験管に取る。
4.
白金線を 3 mol/L-HCl に浸した後、ポリ洗瓶のイオン交換水を吹きかけて洗浄する。洗浄液
は 200 mL ビーカーに集める。
5.
白金線を酸化炎の上から 1/3 程度の部分に入れる。
6.
炎に色が付いているときは白金線が汚れているので、色がつかなくなるまで 4 と 5 の操作を繰り返
す。
7.
白金線の先に 0.010 mol/L-NaCl 水溶液をつけて炎の中に入れる。観測される炎の色や炎
の強さを実験ノートに記録する。
8.
他の試料溶液について 4~7 の操作を繰り返す。
9.
実験終了後、使用した白金線は所定の場所に返却する。
※1 これらの水溶液の調製は、数名で分担して行う場合がある。教員の指示に従うこと。
※2 駒込ピペットで異なる溶液を取るときは、その都度、必ず洗浄すること。
<廃液・廃棄物の処理>

Na+, K+, Ca2+, Sr2+, Ba2+は表 0-4 のカ
テゴリーに含まれないので、流しに捨てて良い。

HCl は、「酸・塩基用ポリバケツ」に捨てる。
<課題プリント>

自分の調製した試料溶液の調製方法と濃度
について答えよ。

実験で観測した炎の色、炎の強さを記録せよ。

観測された炎の色から、電磁波のおおよその波
長とエネルギーを見積もれ。
13
図 2-1. ガスバーナーの構造と炎
化学実験(工学部)
【 第3回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
無機陽イオンの反応
<理論>
自然界に存在する物質は 100 種類以上の元素からできている。ある物質が、どのような元素(または原
子団)から構成されているかを研究することを定性分析という。定性分析は、湿式法と乾式法に大きく分け
られる。この授業では、湿式法に重点をおいて実験を行なう。湿式法という呼び名は、被検体すなわち試料
を水溶液にして調べることに由来している。この方法では、混在する物質でも様々な試薬を作用させて、そ
の中の特定のものを沈殿などとして分離し、その性質を調べることによって系統的に分析することが可能であ
る。湿式法では大部分の確定的な結果を得られるので、一般的に定性分析とは湿式法による方法を指す。
湿式法では、試料を適当な溶媒(通常は水とする)に溶かし、その試料溶液に試薬を加えて化学反
応を観察したり、沈殿物を分離して性質を調べることで分析を行なう。観察する現象の例としては、沈殿物
の生成、反応系の色の変化、気体の発生や臭気などが挙げられる。
定性分析の基本的な原理を考えてみよう。一定温度の水溶液中で A と B を反応させて C と D が生成
し、定常状態(平衡状態ということもある)になったとき、質量作用の法則が成立し次のような反応式とな
る。
A + B ⇄ C + D
(3-1)
この反応において、各成分の平衡状態における濃度を[ ]で表すと、次のような式が成立する。
[C]×[D]
[A]×[B]
=K
(3-2)
このときの K を平衡定数と呼ぶ。今、この式に塩化銀の沈殿反応を当てはめるために、次のような反応式を
考える。
Ag+ + Cl- ⇄ AgCl
(3-3)
塩化銀は水に難溶性であるから、反応系の外に出ているものとして、微量に溶けている塩化銀はすべて電
離しているものと考える。温度が一定ならば溶ける塩化銀の量は一定であるから、この場合は、平衡定数を
次の式で表すことができる。
[Ag+]×[Cl-] = Ksp(一定)
(3-4)
すなわち、難溶性塩の各イオン濃度の相乗積は、一定温度では、その塩に固有の一定値を示す。このとき
の Ksp は溶解度積と呼ばれ、物質の溶けにくさの程度を表す定数である。
14
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
金属陽イオンの系統的な定性分析では、陽イオンをその化学的性質によって I ~VI 属に分類する(表
5)。ここでは、I 属および III 属の金属イオンを、それらの混合物からそれぞれ分離検出する。
<加熱に関する注意点>
試験管に入った水溶液をガスバーナーで加熱する場合、試験管の上端に近いところを素手で持ち、試験
管を斜めにして振り混ぜながら弱い炎で加熱するのが最も良い。このようにすると、やがて指が熱くなり試験
管を持てなくなるので、溶液を加熱しすぎることを未然に防ぐことができる。しかし、実験に慣れていない人は、
この方法では火傷をする恐れがあるので、木製の試験管ハサミを利用するのが良い。この場合には、加熱の
しすぎで沸騰した溶液が周囲に飛び散ることのないよう気をつける。また、加熱する際に、試験管の口を人に
向けてはいけない。試験管が破損する場合があるので、試験管ハサミを速く動かしたり、大きく振り回したりし
ないこと。
表 3-1. 金属陽イオンの分類
第I属
硫酸酸性において、Cl-によって塩化物の沈殿を生じるもの
Ag+, Hg22+, Pb2+
第 I 属を除いた弱酸性において、H2S によって硫化物の沈
第 II 属 殿を生じるもの
Hg2+, (Pb2+), Bi3+, Cu2+, Cd2+, As3+, 5+, Sn2+, 4+
第 I 属、第 II 属を除いた液に NH4Cl 共存の下に NH4OH
第 III 属 によって沈殿を生じるもの
3+
2+, 4+
3+
3+
Al , Fe , Cr , Mn
上記 I ~ III 属を除いた液で (NH4)2S(硫化アンモニウム)
第 IV 属 により硫化物の沈殿を生じるもの
2+
2+
2+
2+
Ni , Co , (Mn ), Zn
第V属
第 VI 属
上記 I ~ IV 属を除いた液で (NH4)2CO3(炭酸アンモニウ
ム)により炭酸塩の沈殿を生じるもの
以上の操作によって沈殿物を生じないもの
2+
+
+
Mg , K , Na
15
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
<予習課題>

実験操作 1. a) ~ 4. b) で起こる化学反応式を調べよ。
<実験操作>
1. Ag+(銀イオン)
a) 0.1 mol/L-AgNO3 水溶液 2 mL を試験管にとり、これに 3 mol/L-HCl を 1 滴滴
下すると沈殿を生じる。この沈殿の半分を他の一本の試験管にピペットで分けて、次の b)と
c) の実験を行う。
b) a) で分けた一方の試験管をバーナーで軽く温め、沈殿が溶けるかどうかを調べる。溶液が
突沸しないよう、気を付けること。
c) a) で分けた他方の試験管に 3 mol/L-NH4OH を滴下し、よく振って沈殿を溶かし、溶
けた液に更に 3 mol/L-HNO3 を滴下する(再度、溶液を酸性にする)と、再び沈殿を
生じる。
2. Pb2+(鉛イオン)
a) 0.1 mol/L-Pb(NO3)2 水溶液 1 mL に 3 mol/L-HCl を 1 滴滴下すると沈殿を生
じる。
b) この溶液をバーナーで軽く温め、沈殿が溶けるかどうかを調べる。
c) 別の 0.1 mol/L-Pb(NO3)2 水溶液 1 mL に 0.5 mol/L-K2CrO4(クロム酸カリウ
ム)水溶液を 1 滴滴下すると沈殿を生じる。
3. Al3+(アルミニウムイオン)
a) 0.1 mol/L-Al(NO3)3 水溶液 1 mL に 3 mol/L-NaOH 水溶液を滴下すると沈殿
を生じ、さらに滴下するとこの沈殿は溶ける。この溶液に 3 mol/L-HCl を滴下すると再び
沈殿を生じ、さらに滴下するとやはり溶ける。このときにできた沈殿は両性化合物で、酸にも
塩基にも溶ける。
b) 別の 0.1 mol/L-Al(NO3)3 水溶液 1 mL に 3 mol/L-NH4OH を滴下するとどうな
るか調べる。
4. Fe3+(鉄(III)イオン、第二鉄イオン)
a) 0.1 mol/L-Fe(NO3)3 水溶液 1 mL に 0.1 mol/L-KSCN(チオシアン酸カリウム)
水溶液を滴下するとどうなるか調べる。
b) 別の 0.1 mol/L-Fe(NO3)3 水溶液 1 mL に 3 mol/L-NH4OH を滴下すると沈殿を
生じる。この沈殿を含む溶液に 3 mol/L-HCl を滴下すると、沈殿が溶ける。
16
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
<廃液・廃棄物の処理>

Pb2+, Cr3+を含む廃液はすべて、カテゴリーB2 のポリタンクに捨てる。

その他の重金属(Ag+, Fe3+)を含む廃液は、カテゴリーB5 のポリタンクに捨てる。
<レポート>

今回行った実験についてレポートを書き、提出すること。

実験操作 1. a) ~ 4. b) で起こる化学反応式を書物で調べて「理論」に書くこと。
17
化学実験(工学部)
【 第4回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
第 I 属陽イオンの系統的分析
<予習課題>

Ag+, Pb2+の系統分析図を作成せよ。
<実験操作>
1.
ビーカーに 0.1 mol/L-Ag(NO3), Pb(NO3)2 混合溶液を 5 mL とり、3 mol/L-HNO3 を
1 滴加えて酸性とし、これに 3 mol/L-HCl を 3 mL 滴下し、液をよくかき混ぜて静置した後、
ろ過する。このろ液をろ液 A とする。
2.
ろ液 A の一部(0.2 mL)を駒込ピペットで試験管にとり、0.5 mol/L-K2CrO4 水溶液を 1
滴加え、沈殿が生じないことを確かめる(※1)。
3.
5 mL のお湯(イオン交換水)を試験管で沸かし、ろ紙上に注ぐ。出てきたろ液 B を別のビーカ
ーにとり、すべて試験管に移す。ろ液 B に 0.5 mol/L-K2CrO4 水溶液を滴下すると、沈殿が
生じる(Pb2+ の検出)。
4.
次に、ろ紙上に残った沈殿物に、5 mL のお湯をピペットで注ぎ、洗浄する(出てきたろ液は捨て
る)。さらに、3 mol/L-NH4OH 4 mL をろ紙上に注ぎ、最初のろ液だけ(1 mL)を試験管
に分け取る(※2)。このろ液に 3 mol/L-HNO3 を加えて酸性にすると、沈殿が生じる
(Ag+ の検出)。
※1使用した駒込ピペットを洗浄すること。沈殿が生じた場合は、ビーカーに残ったろ液に 3
mol/L-HCl を 1 mL 追加し、液をよくかき混ぜて静置した後、同じろ紙を用いて再度ろ過
する。ろ液の一部(0.2 mL)をとり、K2CrO4 を加えて、沈殿が生じないことを確かめる。
※2 ろ液の一部が白濁しているときは、指導教員の指示に従い操作を行うこと。
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は Pb2+, Cr3+を含む可能性があることから、すべてカテゴリーB2 のポリタンクに
捨てる。

使用済みのろ紙は、すべて「重金属ろ紙用バケツ」に捨てる。
<課題プリント>

実験結果に基づき、 Ag+と Pb2+の系統分析図を作成せよ。加えた溶液の濃度や量、溶液や
沈殿の色、化学式、化学反応式を詳細に書くこと。
18
化学実験(工学部)
【 第5回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
第 III 属陽イオンの系統的分析
<予習課題>

Al3+, Fe3+の系統分析図を作成せよ。
<実験操作>
1.
ビーカーに 0.1 mol/L-Al(NO3)3, Fe(NO3)3 混合溶液を 5 mL とり、2 mL の 3 mol/L-
NH4Cl 水溶液を加える。次に、3 mol/L-NH4OH を十分に加えると沈殿を生じるので、完全
に沈殿させるためによくかき混ぜる。その後、溶液を一度煮沸して過剰の NH3 を追い出し(※
1)、ビーカーを素手で持てる程度に冷却後(※2)、ろ過する。
2.
ろ紙上に残った沈殿物に 3 mol/L-NaOH 水溶液 3 mL を加え、ろ液をビーカーにとる(ろ液
C)。ろ液 C からその 1 mL を取り、さらにその 1/3 量の 3 mol/L-HCl を加える。その後、加
えた HCl より少し多めの 3 mol/L-NH4OH を静かに加えて弱アルカリ性として煮沸し、放置す
れば沈殿を生じる(Al3+の検出)
3.
次に、実験操作 2 のろ紙上に残った沈殿物のごく一部をガラス棒で試験管にとる。これに、3
mol/L-HCl を 2 mL 加えて沈殿物を溶かし、さらに 0.1 mol/L-KSCN 水溶液を 1 滴滴
下し、色の変化を確認する(Fe3+の検出)。
※1 アンモニア臭が消えれば良い。手であおぐようにして臭いを確かめること。
※2 試験管はさみや白衣を使用して、熱いビーカーを持たないこと。
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は Pb2+, Cr3+を含まないことから、すべてカテゴリーB5 のポリタンクに捨てる。

使用済みのろ紙は、すべて「重金属ろ紙用バケツ」に捨てる。
<課題プリント>

実験結果に基づき、 Al3+と Fe3+の系統分析図を作成せよ。加えた溶液の濃度や量、溶液や
沈殿の色、化学式、化学反応式を詳細に書くこと。
19
化学実験(工学部)
【 第6回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
第 I,III 属陽イオンの混合試料の分析
<予習課題>

Ag+, Pb2+, Al3+, Fe3+の系統分析図を作成せよ。
<実験操作>
1.
ビーカーに 0.1 mol/L-Ag(NO3), Pb(NO3)2, Al(NO3)3, Fe(NO3)3 混合溶液を 5 mL と
り、3 mol/L-HNO3 を 1 滴加えて酸性とし、これに 3 mol/L-HCl を 3 mL 滴下し、液を
よくかき混ぜて静置した後、ろ過する。このろ液をろ液 A とする。
2.
ろ液 A の一部(0.2 mL)を駒込ピペットで試験管にとり、0.5 mol/L-K2CrO4 水溶液を 1
滴加え、沈殿が生じないことを確かめる(※1)。ろ紙の上に残ったものは第 I 属の塩化物だけ
である。
3.
5 mL のお湯(イオン交換水)を試験管で沸かし、ろ紙上に注ぐ。出てきたろ液 B を別のビーカ
ーにとり、すべて試験管に移す。ろ液 B に 0.5 mol/L-K2CrO4 水溶液を滴下すると、沈殿が
生じる(Pb2+ の検出)。
4.
次に、ろ紙上に残った沈殿物に、5 mL のお湯をピペットで注ぎ、洗浄する(出てきたろ液は捨て
る)。さらに、3 mol/L-NH4OH 4 mL をろ紙上に注ぎ、最初のろ液だけ(1 mL)を試験管
に分け取る。このろ液に 3 mol/L-HNO3 を加えて酸性にすると、沈殿が生じる(Ag+ の検
出)。
5.
ろ液 A に、2 mL の 3 mol/L-NH4Cl 水溶液を加える。次に、3 mol/L-NH4OH を十分に
加えると沈殿を生じるので、完全に沈殿させるためによくかき混ぜる。その後、溶液を一度煮沸し
て過剰の NH3 を追い出し(※2)、ビーカーを素手で持てる程度に冷却後、新しいろ紙を用い
てろ過する。
6.
ろ紙上に残った沈殿物に 3 mol/L-NaOH 水溶液 3 mL を加え、ろ液をビーカーにとる(ろ液
C)。ろ液 C からその 1 mL を取り、さらにその 1/3 量の 3 mol/L-HCl を加える。その後、加
えた HCl より少し多めの 3 mol/L-NH4OH を静かに加えて弱アルカリ性として煮沸し、放置す
れば沈殿を生じる(Al3+の検出)
7.
次に、実験操作 6 のろ紙上に残った沈殿物のごく一部をガラス棒で試験管にとる。これに、3
mol/L-HCl を 2 mL 加えて沈殿物を溶かし、さらに 0.1 mol/L-KSCN 水溶液を 1 滴滴
下し、色の変化を確認する(Fe3+の検出)。
※1 使用した駒込ピペットを洗浄すること。沈殿が生じた場合は、ビーカーに残ったろ液に 3
mol/L-HCl を 1 mL 追加し、液をよくかき混ぜて静置した後、同じろ紙を用いて再度ろ過
する。ろ液の一部(0.2 mL)をとり、K2CrO4 を加えて、沈殿が生じないことを確かめる。
※2 アンモニア臭が消えれば良い。手であおぐようにして臭いを確かめること。
20
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は Pb2+, Cr3+を含む可能性があることから、すべてカテゴリーB2 のポリタンクに
捨てる。

使用済みのろ紙は、すべて「重金属ろ紙用バケツ」に捨てる。
<レポート>

今回行った実験について、レポートを書き、提出すること。

実験結果に基づき、 Ag+, Pb2+, Al3+, Fe3+の系統分析図を作成せよ。加えた溶液の濃度や
量、溶液や沈殿の色、化学式、化学反応式を詳細に書くこと。
21
化学実験(工学部)
【 第7回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
第 I,III 属陽イオンの未知試料の分析
<予習課題>

Ag+, Pb2+, Al3+, Fe3+の系統分析図を作成せよ。
<実験操作>
配布された未知試料について、【 第6回 】 と同じ実験操作を行う。実験終了後、未知試料の入っ
ていた試験管をよく洗浄し、所定の場所に返却すること。
未知試料の溶液には、Ag+, Pb2+, Al3+, Fe3+のうち、数種類が含まれている。系統分離分析によ
り、これらのイオンを確定する。
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は Pb2+, Cr3+を含む可能性があることから、すべてカテゴリーB2 のポリタンクに
捨てる。

使用済みのろ紙は、すべて「重金属ろ紙用バケツ」に捨てる。
<課題プリント>

未知試料に含まれていた金属イオンを報告せよ。

そのように判断した理由を簡潔に説明せよ。
22
化学実験(工学部)
【 第8回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
レポート指導 と 分子模型
8-1 レポート指導
講義室にて、これまでのレポートの講評を行う。講義室は、

木曜 2 時限 工学部 機械工学科: 04-255

木曜 3 時限 工学部 機械システム工学科: 04-255

金曜 2 時限 工学部 電気システム工学科: 15-208

金曜 3 時限 工学部 機械工学科: 1W-116
である。
8-2 分子模型
<説明>
分子は、原子と原子が結合することにより出来ている。特に、炭素を含む分子は、共有結合により
形成されているものが多い。結合には、単結合、二重結合、三重結合の 3 種類がある。各原子が作
ることのできる結合の数は原子の種類により決まっていて、炭素:4 つ、酸素:2 つ、水素:1 つであ
る。例えば、メタン分子(CH4)では、炭素と水素の間に 4 つの単結合が存在する。また、エチレン分
子では、炭素は 1 つの二重結合と 2 つの単結合を形成するので、炭素周辺の結合は合計で 4 つと
見なすことができる。
このように、分子の結合をあらわに書いた化学式のことを構造式という。構造式を見れば、ある原子
の周りの結合の数を知ることができるが、やはり紙上のみで分子の構造をイメージするのは難しい。そこ
で、分子を立体的な模型で表すための分子模型が重要になってくる。
この実験では、分子模型を使用して、分子の立体的な構造のイメージをつかむことを目的とする。
<器具>

市販されている分子模型セット Molymod®を用いる。棒と玉のセットのうち、次のページの表 8-
1, 8-2 に示すものを使用する。
<予習課題>

エタン(C2H6 )、エチレン(C2H4 )、アセチレン(C2H2 )、エタノール(C2H5OH)、メタン
23
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
(CH4)、水(H2O)、アンモニア(NH3)、二酸化炭素(CO2)の構造式を調べる。
<実験操作>

予習した構造式を見ながら、次の手順に従って分子模型を作り、立体的な構造を確かめる。
1.
エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、アセチレン(C2H2)を作る。
2.
エタンの 1 個の H 原子をヒドロキシ基(-OH)に置き換え、エタノール(C2H5OH)を作
る。
3.
1 と 2 で作成した分子模型を分解する。
4.
メタン(CH4)を作成する。4つの H 原子のうち 3 つを、F、Cl、Br に置き換える。自分の
作製した分子と、周りの人の分子が一致するかどうか確かめる。自分の分子と一致しないも
のがあれば、その分子と自分の分子が互いに鏡像異性体の関係にある。
5.
水(H2O)、アンモニア(NH3)、二酸化炭素(CO2)を作り、分子の形を確認する。
6.
分子をすべて分解し、分子模型セットを前に返却する。
表 8-1. 使用する棒(結合)の種類
棒の種類
色
用途
棒の本数
短いもの
灰
単結合
18
長細く柔らかいもの
灰
二重結合・三重結合
5
表 8-2. 使用する玉(原子)の種類と数
元素(元素記号)
色
穴の数
玉の個数
水素(H)
白
1
12
炭素(C)
黒
4
6
窒素(N)
青
3
1
酸素(O)
赤
2
6
フッ素(F)
緑
1
1
アルミニウム(Al)
黄
6
1
塩素(Cl)
灰
1
1
臭素(Br)
紫
3※
1
※ この演習では、分子模型セット内容の都合上、穴が 3 つある玉を Br 原子とみなして用いるが、実際は
Br 原子が作る結合は 1 本だけである。
<課題プリント>

エタン、エチレン、アセチレン、水、アンモニア、二酸化炭素の構造式を書け。また、形状を答えよ。

メタンをもとにして作成した鏡像異性体(2 つ)を書け。
24
化学実験(工学部)
【 第9回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
硫酸銅の合成と精製
<理論>
硫酸銅の製法は、工業的手法と実験室的手法に大きく分けられる。本実験では、後者の実験室的手
法により合成し、精製する。この方法では、CuO(酸化銅)を硫酸に溶解・反応させ、生成した粗製硫酸
銅を再結晶化し、5 分子の結晶水を持った硫酸銅五水和物 CuSO4・5 H2O の結晶を析出させる。通常
は、CuS(硫化銅)を焼いて作った CuO を用いるが、今回は試薬の CuO を用いる。
酸化銅から硫酸銅が生成する反応式:
CuO + H2SO4 → CuSO4 + H2O
(9-1)
硫酸銅水溶液から硫酸銅五水和物が析出する反応式:
CuSO4 + 5 H2O → CuSO4・5 H2O
(9-2)
物質の精製法としては再結晶法が最も多く用いられている。今、ある物質の純度を高めようとするとき、そ
の物質を適当な溶媒に溶かして飽和溶液を作製する。このとき、不純物が溶媒に不溶であれば液中に固
体として存在するため、そのままの条件でろ過することによって取り除くことが可能である。不純物が溶媒に可
溶であっても、温度を下げるなどして目的物を析出させて不純物を溶けたまま液中に残し、ろ過することによ
り分離することが可能である。硫酸銅の場合は溶媒として水を用い、その温度差による溶解度の差を利用
する。硫酸銅の水に対する溶解度の温度による変化の割合は大きく、水 100 g に対して 10 ℃で 17.0
g しか溶けないのに対し、80 ℃では 56.0 g も溶ける。したがって、80 ℃の硫酸銅飽和溶液を 10℃まで
冷却すると、溶けきれない分の硫酸銅が析出する。このとき、析出する固体は硫酸銅五水和物 CuSO4・5
H2O であるので、固体の析出に伴い溶媒の水が減少することも考慮しなければならない。
<予習課題>
1.
酸化銅 CuO と硫酸銅五水和物 CuSO4・5H2O の分子量を求めよ。P.36 の資料 2 の原子量
表を用い、有効数字に注意して計算で求めること。
2.
硫酸銅五水和物の収率(%)を計算するための式を以下の手順に従って導出せよ。
収率(%)=
得られた CuSO4・5H2O の質量(g)
得られるはずの CuSO4・5H2O の質量(g)
x 100
(9-3)
①
CuO 2.00g の物質量(mol)を求めよ。
②
CuO 2.00g からできる CuSO4・5H2O の物質量(mol)を求めよ。
③
CuO 2.00g からできる CuSO4・5H2O の質量(g)を求めよ。
④
①~③の結果を用いて、CuSO4・5H2O が m (g) 得られたときの収率 (%) を計算する
ための式を、m を用いて表せ。
25
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
<実験操作>
1.
100 mL ビーカーに 1.5 mol/L (3 規定)-H2SO4 30 mL をメスシリンダーで取り、それに電
子天秤ではかりとった 2.00 g の CuO を加え、よくかき混ぜながら温めて溶解させる。溶けるにし
たがって CuSO4 溶液が青色を呈してくるので、完全に溶け終わったことを確認したら、さらに加熱
して液量が約 20 mL になるまで濃縮する(※1)。この液を、始めのうちは放冷し、最後にビー
カーの外側を水道水でよく冷やす。すると、CuSO4・5H2O が析出してくるので、ビーカーを傾けて
他のビーカーに上澄み液を移せば、ビーカー中に固体の粗製 CuSO4・5 H2O が得られる。水で
冷却しても CuSO4・5 H2O が析出しない場合は、再び加熱して液量を減らし冷却する。
2.
この物質の純度を高めるために再結晶を行う。まず、新しいビーカーにお湯(イオン交換水)を作
っておく(お湯 A)。次に、粗製 CuSO4・5 H2O の入っている実験操作 1 のビーカーに、10 mL
のイオン交換水を加えて加熱し、粗製 CuSO4 ・5 H2O を完全に溶かす(※2)。さらに 3
mol/L-HNO3 を 2 滴加え、よくかき混ぜながら温める。ろ紙とろうとにお湯 A を注ぎ、ろ紙とろう
とを温める。このときのろ液は不要なので、捨てる。ろうとと CuSO4 水溶液が冷めないうちにろ過し、
ろ液を加熱して 3 ~ 4 分さらに濃縮する(※3)。実験操作1と同様に冷却して CuSO4・5
H2O を析出させ、上澄み液を除去する。
3.
再結晶した CuSO4・5 H2O をろ紙で挟んで水分を吸い取ったあと、薬包紙に包み、重さを測る。
4.
予習した計算式に基づき、収率を計算し、報告する。薬包紙に包んだ硫酸銅五水和物を、所
定の場所に提出する。
※1 突沸に十分注意すること。
※2 イオン交換水をまず 10 mL 加えて加熱し、粗製 CuSO4・5 H2O を溶かす。10 mL で
溶けきらない場合は、イオン交換水を追加する。
※3 突沸に十分注意すること。水が枯渇しないように気を付けること。
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は Cu2+を含むことから、カテゴリーB5 のポリタンクに捨てる。

使用したろ紙は、すべて重金属ろ紙用バケツに捨てる。
<レポート>

今回行った実験について、レポートを書き、提出すること。

硫酸銅五水和物の結晶構造を書物から調べ、図示せよ。参考文献を必ず書くこと。

硫酸銅五水和物の収率を計算せよ。有効数字に注意すること。
26
化学実験(工学部)
【 第10回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
アルカリ標準液の調製
<理論>
定性分析に対し、物質の構成要素を量的に定める方法を定量分析という。容量分析もその中のひとつ
で、その操作により滴定法といわれている。この原理は、正確に濃度が分かっている標準液を、定量すべき
物質の一定量に加えて反応させ(反応の終点を知るために、通常は指示薬を入れておく)、反応し終わ
るまでに要した標準物質の容積から試料溶液の濃度を決定する、というものである。代表的な滴定法は中
和滴定法である。酸と塩基の反応の一例を示す。
HCl + NaOH → NaCl + H2O
(10-1)
または
H+ + OH- → H2O
(10-2)
酸と塩基の反応で水が生じ、酸や塩基の性質がなくなるので中和反応という。
酸と塩基が過不足なく中和するためには、酸の H+と塩基の OH-の物質量が等しくなければならない。こ
の際、酸と塩基の価数を考慮する必要がある。例えば、1 価の塩基である水酸化ナトリウム NaOH 1 mol
をちょうど中和するのに要する酸の物質量は、1 価の酸である塩化水素 HCl なら 1 mol、2 価の酸である
硫酸 H2SO4 ならば 0.5 mol である。すなわち、次の式が成り立つ。
(酸の価数)×(酸の物質量)=(塩基の価数)×(塩基の物質量) (10-3)
したがって、濃度 1 mol/ L の塩酸または硫酸のそれぞれ 1 L をちょうど中和するのに必要な水酸化ナト
リウム水溶液の濃度と体積の関係は、次のようになる。
塩酸中の H+の物質量
1 価 × 1 mol/L × 1 L = 1 mol
硫酸中の H+の物質量
2 価 × 1 mol/L × 1 L = 2 mol
水酸化ナトリウム水溶液中の OH-の物質量
1 価 ×
2 mol/L × 0.5 L = 1 mol
1 価 ×
1 mol/L ×
1 L = 1 mol
1 価 × 0.5 mol/L ×
2 L = 1 mol
水酸化ナトリウム水溶液中の OH-の物質量
1 価 ×
2 mol/L ×
1 L = 2 mol
1 価 ×
1 mol/L ×
2 L = 2 mol
1 価 × 0.5 mol/L ×
4 L = 2 mol
27
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
濃度 c [mol/L]、体積 V [mL] の a 価の酸の溶液と、濃度 c ’ [mol/L]、体積 V ’ [mL] の b 価の
塩基の溶液がちょうど中和する条件は、
+
H の物質量 = a × c ×
−
V
1000
OH の物質量 = b × c' ×
V′
[ mol ]
1000
(10-4)
[ mol ]
(10-5)
であるから、
a × c × V = b × c’ × V’
(10-6)
となる。この式を用いて、c または c’ のうち、分からないものを求めることができる。
滴定操作の概要を図 10-1 に示す。
標準液
ろうと
ビュレット
① 標準液をビーカーにとる
② ホールピペット
で試料溶液を
10.00 mL とる
③ 指示薬を加える
④ 標準液をビュレット
に注ぐ
V’
先端まで
液を満たす
⑤
⑥ 目盛りを読む
⑦ 変色するまで注ぐ
⑧ 目盛りを読む
図 10-1. 中和滴定の操作手順
<予習課題>

フェノールフタレインとメチルオレンジの変色域と色の変化を調べよ。

NaOH の分子量を求めよ。P.36 の資料 2 の原子量表を用い、有効数字に注意して計算で求
めること。

次の実験操作において、NaOH 水溶液の滴下量が V’ (mL) であったとする。このとき、NaOH
28
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
水溶液の濃度 c’ (mol/L) を求めるための式(c’ =・・・)を V’ を用いて表せ。
<実験操作>
1.
電子天秤で NaOH を約 0.60 g(数粒)はかりとる(※)。これを 200 mL ビーカーに入れ、
イオン交換水を約 150 mL 注ぎ、ガラス棒でよく撹拌し、完全に溶かす。
2.
ビュレットに、調製した 0.1 mol/L-NaOH 標準液をろうとを用いて入れる。残った 0.1 mol/L
-NaOH 標準液をボトルに入れてフタをする。
3.
0.1000 mol/L-HCl 100 mL を 100 mL ビーカーに取る。これを、10.00 mL ホールピペッ
トを用いて、三角フラスコに 10.00 mL とる。約 10 mL のイオン交換水で薄めてかき混ぜやすく
し、さらに 0.2%フェノールフタレイン溶液を 1 滴加える。
4.
滴定する前のビュレットの目盛りを最小目盛りの 1 / 10(小数点以下第 2 位)まで目測で読
んで記録する。
5.
酸の入った三角フラスコをよくかき混ぜながら、ビュレットから NaOH 標準液を滴下していく。液を十
分にかき混ぜても液の色(薄いほどよい)が消えなくなったときが滴定終点である。このときのビュ
レットの目盛りを読み、予め記録しておいた目盛りを差し引く。これにより滴定に要した NaOH 標
準液の滴下量 V ’ が求まる。以上を計 3 回測定し、その平均値を求める。
6.
指示薬としてメチルオレンジを用いて、3~5 の実験操作を繰り返す。
NaOH 標準液の残りを次週の 【 第 11 回 】 で使用するので、少なくとも 70 mL は残すこと。
※ NaOH は大き目の粒状のため、0.60 g ちょうどにならなくても良い。
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は、酸と塩基であり、有害な重金属は含まれていない。余った塩酸や、調製に
失敗した水酸化ナトリウム水溶液は、酸・塩基用バケツに捨てる。
<課題プリント>

NaOH 標準液の滴下量を表にまとめ、滴下量の平均値を求めよ。

滴下量の平均値を用いて、NaOH 標準液のモル濃度を計算せよ。
29
化学実験(工学部)
【 第11回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
市販食酢中の酢酸の定量
<予習課題>
 メチルオレンジは、水酸化ナトリウムと酢酸の中和滴定の指示薬には適さない。その理由を答えよ。
 食酢中の酢酸の質量パーセント濃度(mass %)は次のように定義される:
質量パーセント濃度 (mass %) =
酢酸の質量(g)
食酢の質量(g)
x 100
(11-1)
実験結果から質量パーセント濃度を求めるための式を、以下の手順で導出せよ。
①
酢酸の化学式と構造式を書き、分子量を求めよ。P.36 の資料 2 の原子量表を用い、有
効数字に注意して計算で求めること。
②
1 L の食酢に含まれる酢酸のモル濃度が c (mol/L) であるとき、1 L の食酢に含まれる
酢酸の質量(g)を、c を含む式で表せ。
③
食酢の密度が d (g/cm3)であるとき、1 L の食酢の質量(g)を、d を含む式で表せ。
④
①~③の結果を用いて、質量パーセント濃度 (mass %) を d と c を含む式で表せ。
<実験操作>
1.
電子天秤の上に、100 mL メスフラスコを置き、表示を 0.00 g にする。メスフラスコに、ホールピ
ペットで市販の食酢を 10.00 mL 加え、質量をはかる。(この結果から、食酢の密度 d
(g/cm3)が求まる。)
2.
メスフラスコを実験台に持ち帰り、イオン交換水で標線まで希釈し、よく撹拌する(10 倍希釈)。
これを、きれいで乾いた 100 mL ビーカーに移し、試料溶液とする。
3.
試料溶液 10.00 mL をホールピペットで三角フラスコにとる。この三角フラスコに 10 mL のイオン
交換水を加えて、さらにフェノールフタレイン溶液を 1 滴加える。これを、【 第 10 回 】 で調製し
た NaOH 標準液を用いて滴定する。計 3 回測定し、その平均値を測定値(V’ mL)とする。
4.
指示薬としてメチルオレンジを用いて、3 の実験操作を繰り返す。
5.
実験終了後、NaOH 標準液の入っていたボトルのラベルをはがし、良く洗い、所定の場所に返却
する。また、ホールピペット、安全ピペッター、メスフラスコも所定の場所に返却する。
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は、酸と塩基であり、重金属などの有害なものは含まれていない。余った食酢と
NaOH 標準液は酸・塩基用バケツに捨てる。
30
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
<レポート>

今回行った実験について、レポートを書き、提出すること。

実験で求めた V’ を用いて、市販食酢中の酢酸のモル濃度 c(mol/L)を求めよ。

実験で測定した食酢の質量より、食酢の密度 d(g/cm3)を求めよ。

さらに、c と d の値を用いて、質量パーセント濃度(mass %)を計算により求めよ。

フェノールフタレインを使用して得られた結果とメチルオレンジを使用して得られた結果は、どちらが
正しいか。理由も説明せよ。

食酢に含まれる酸の質量パーセント濃度は、「酸度」として食酢のラベルに記載されている。実験
結果で得られた値とラベルの値とを比較・検討せよ。
31
化学実験(工学部)
【 第 12 回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
蒸留水の製造
<理論>
液体の精製で一番多く行なわれる方法は蒸留(Distillation)である。以前には純水も水を蒸留し
て製造していたが、現在では特殊な目的を除いてイオン交換樹脂による製造が行なわれている。このイオン
交換法の欠点は、非イオン性の不純物は取り除けないという事であり、もし、そのような不純物が含まれてい
る場合には、蒸留またはその他の方法によらなければならない。
一般に蒸留とは、その液体を加熱して沸騰させることによってできる蒸気を冷却して再び液化させて純粋
なものを得る操作であるが、液体の沸騰現象は、その液体の蒸気圧がそのときの外気圧に等しくなったときに
起こるものであるから、その温度は外気圧に左右される。したがって、同一の液体であっても日時により沸点
(Boiling Point)が少しずつ異なるため、沸点を測るときは必ずそのときの気圧を確認しておく必要があ
る。ただし本実験では、不純物の有無や蒸留装置の組み立て方の差などが温度計の示す値により大きく影
響するので、必ずしも理論的な沸点と温度計の値は一致しない。
蒸留操作によって水道水に含まれている不純物が除かれることを、水道水の比抵抗と蒸留して出てくる
水の比抵抗を測定することで確かめる。蒸留の際に温度計の値を同時に記録して、比抵抗値との関係の
有無を考察する。
電解質と非電解質
塩化ナトリウムのように、水に溶けたときイオンに分かれる物質を電解質という。また、塩化水素や硫酸のよ
うな酸や、水酸化ナトリウムのような塩基も電解質である。電解質水溶液は水溶液中でイオンが移動して
電荷を運ぶため電気を導く。エタノール、ショ糖のように、水に溶けてもイオンに分かれない物質を非電解質と
いう。非電解質水溶液は電気を導かない。
比抵抗の測定
液体を測定容器に入れ、その溶液の抵抗(通しにくさ)を測る。図のような比抵抗測定容器に入れた
電解溶液の抵抗 R は極板の面積 S に反比例し、距離 L に比例する。ρ を比抵抗(L = 1 m、S = 1
m2 の抵抗)とすると、R は次式で表される。
R=ρ(L/S)
(12-1)
2
ここで、L = 1 m、S = 1 m の容器で測れば
R=ρ
(12-2)
となる。この ρ は溶液の種類、濃度、温度等によって異なる。ここでは、水道水中の鉄イオンなどの不純物
濃度に関係する。
32
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
L
1 m2
図 12-1. 比抵抗の測定
<比抵抗の測定法>
1. A を指針調整にまわす。
2. B を右に回し、メーターの針を 0 に調整する。
3. 試料をいれ A を純水にまわす。(その後、容器は純水ですすぐ)
B
A
図 12-2. 比抵抗計
<予習課題>


枝付フラスコ中に毛細管を入れる理由を調べよ。
蒸留水、イオン交換水、水道水の比抵抗値はどのような順序になると予想されるか。
33
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
<実験操作>
下図の蒸留装置を組み立て(※1)、枝付フラスコ中に水道水約 100 mL と毛細管 2, 3 本を入れ
る。このフラスコに温度計のついたゴム栓をして、冷却器に水を通しながら徐々にフラスコを加熱する。液が流
出したら、始めは不純物の多い部分(初溜)が流れてくるので、これを 2 ~ 3 mL ずつ試験管に受け、ど
の程度の純度の水が得られたかを比抵抗計により測定し、同時にそのときの温度計の読みを記録する(※
2)。比較の基準とするため、水道水とイオン交換水の比抵抗値も調べよ。
※1 蒸留装置の組み立ては、冷却用のゴム管が流しに届く位置にすること。
※2 フラスコの中の水道水が無くなるまで、この操作を続ける。ただし、空焚きをすると危険なので、
水道水が完全に無くなる直前に加熱をやめること。
<廃液・廃棄物の処理>

今回の実験廃液は、重金属や酸・塩基を含まないことから、流しに捨てて良い。

毛細管は回収して、もとの場所に返却すること。
温度計
300 mL 枝付フラスコ
ゴム栓
リービッヒ冷却器
毛細管
アダプター
ゴム栓
金網
冷却水
ゴム栓
三脚
ゴム管
試験管
ガスバーナー
図 12-3. 蒸留装置
<レポート>

今回行った実験について、レポートを書き、提出すること。

比抵抗を調べると何がわかるか調べよ。比抵抗値が大きくても水の純度がよくないことがある。これ
はどのようなときか。

比抵抗と蒸気の温度の表とグラフを作成し、これらの間に何らかの関係があるか考察せよ。グラフ
は、方眼紙に書くか、パソコンを使用して書くこと。
34
化学実験(工学部)
【 第 13 回 】
第 1.5 版(2016/09/17)
ナイロン 6 10 の合成
<予習課題>
塩化セバコイルとヘキサメチレンジアミンからナイロン 6 10 ができる化学反応式を調べよ。

<理論>
塩化セバコイルとヘキサメチレンジアミンからナイロン 6 10 の反応は、互いに混じり合わない 2 液の
境界面で重合が起こるので、この重合方法を界面重合とも呼ぶ。この実験では界面が小さいので生
成するナイロンは細く、少量の試薬でも数メートルのナイロンを得ることができる。
<試薬・器具>

試薬: A 液 ヘキサメチレンジアミン 4 mL を水 50 mL に溶かした溶液
B 液 塩化セバコイル(セバシン酸ジクロリド)2 mL をヘキサン 50 mL に溶かした溶液
※ A 液,B 液は、調製済みである。

器具: 細いサンプルびん 1 個(直径 18 mm, 高さ 40 mm)
太いサンプルびん 1 個(直径 24 mm, 高さ 50 mm)
ナイロンを引き上げるための針金 1 本
ナイロンを巻きとるための試験管 1 本またはビーカー1 個
<実験操作>
駒込ピペット
針金
サンプル
びん
ナイロン
を壁に
つけない
A液
B液
A液
1
2
試験管
二層
3
図 13-1. ナイロン合成の手順
35
4
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
1.
サンプルびんに、A 液を壁につけないようにして約 1 mL 入れる。
2.
サンプルびんに、B 液を A 液と混ざらないように壁を伝わらせて約 1 mL 入れる。
3.
界面にできたナイロンを針金にかけて上げる。
4.
試験管またはビーカーにナイロンをまきつける。
5.
2 種類のサンプルびんそれぞれについて、1 ~ 4 の実験操作を行い、結果を記録する。
6.
実験終了後、使用したサンプルびんと針金をよく洗浄し、所定の場所に返却する。
<廃液・廃棄物の処理>

作ったナイロンは、所定の「ナイロン用バケツ」に捨てる。

サンプル瓶に溶液が残っている場合は、針金でかき混ぜて玉にし、「ナイロン用バケツ」に捨てる。
<課題プリント>

合成したナイロンの長さを答えよ。

ナイロンを巻き取る速さを大きくすると、ナイロンの形状はどのように変化するか。理由も答えよ。

サンプルびんを太くすると、ナイロンの形状はどのように変化するか。理由も答えよ。
36
化学実験(工学部)
【 第 14 回 】

第 1.5 版(2016/09/17)
学習内容の振り返り
第 1 回~第 13 回の実験内容、課題プリント、レポートを総復習する。
37
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
【 資料 1 周期表 】
38
化学実験(工学部)
第 1.5 版(2016/09/17)
【 資料 2 原子量表 】
39