修正版 金沢工業大学④露本教授

ホウ酸塩による新しい難燃化技術
−集成材からウレタンフォームまで−
金沢工業大学 バイオ・化学部 応用化学科
教授 露本伊佐男
1
ホウ酸塩の溶解度について
Bについて重量モル濃度換算
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ホウ酸,ホウ砂は
溶解度 小
本研究では
20℃で 5.24 mol/kg
まで高めることに成功
特許第4439234号
m (m ol/kg)
既知の塩, 20℃
1.7mol/kgが最大
20
15
非晶質
ホウ酸ナトリウム
Na/B=0.22
10
5
Na2O・5B2O3・10H2O
0
H3BO3
Na2O・B2O3・8H2O
Na2B4O7・10H2O
0
50
100
t (℃)
ホウ酸塩の溶解度曲線
2
高濃度溶液の調製
Na/B比0.22で、
5.24 mol/kg まで溶解可能。
pH 6.9、密度1.14 g/cm3
Na/B比0.22∼0.27が高溶解度
特許第4439234号
80℃では 24.1 mol/kg まで
溶解可能
特許第5079983号
3
非晶質ホウ酸ナトリウムの
発泡性、造膜性
水溶液
蒸発乾固
発泡体状の非晶質塩
(比重0.1∼0.3)
容易に再溶解
水溶液
難燃メカニズムに寄与
4
非晶質ホウ酸ナトリウム水溶液の
ラマンスペクトル
3
新規高濃度水溶液
I (a.u.)
I (a.u.)
ホウ酸飽和水溶液
ポリホウ酸イオン
の生成を示唆
2
1
ホウ砂飽和水溶液
ホウ酸+ホウ砂飽和水溶液
0
0
1000
2000
3000
4000
-1
k (cm )
Tsuyumoto et al., Inorg. Chem. Commun. 10 [1], 20-22 (2007).
5
紙の難燃化
名刺用厚紙
5.2 mol/kgに10秒∼3分常圧含浸 → 乾燥
重量増加率10∼30%で効果あり
難燃効果と風合いはトレードオフ
6
木材の不燃化
不燃性能試験について
国土交通省不燃認定のための必要条件
750℃で20分加熱し、質量減少率30%以下
または
コーンカロリメータ(CCM)で
20分の総発熱量が 8 MJ/m2以下
50kW/m2
※準不燃は10分で同量以下
木材には前者の方が厳しい。
7
木材の不燃化
加圧含浸処理について
105℃で24時間乾燥
1MPa(10気圧)で1時間加圧含浸
※ 1時間と24時間で浸透量が同じ
だったので、1時間で行っていたが、
最新の知見では20∼30分で充分
8
不燃木材(スギ無垢)の
元素マッピング(EDX像)
SEM
Na
C
O
750℃で20分 加熱後
9
スギ集成材の不燃化
発熱量 (MJ/m2)
30
■ 20分間
▲ 10分間
20
10
基準
16mm厚
0
0
20
40
含浸量(%)
60
不燃成分の含浸量とCCM発熱量
含浸量50%以上で不燃基準クリア
10
スギ集成材の不燃化
CCM試験後の外観
100mm角
16mm厚
上半分のみ炭化
下半分は無変化
発泡層により、
酸素と熱を遮断
11
非晶質ホウ酸ナトリウムの
難燃メカニズム
ホウ酸ナトリウムの発泡層で可燃物を包
み込む
可燃物
酸素、熱を遮断
炭化を促進・・・難燃効果の大きさに影響
炭化層と発泡層で内部を保護
12
初の不燃集成材として実用化
加賀木材(株) 国土交通省 不燃材料 認定番号NM-1716
13
硬質ウレタンフォームの含浸による
難燃化
断熱材(建材用)
密度 0.056 g/cm3
厚み 1.0 cm
常圧では浸透しない
■ 加圧法・・・オートクレーブで10気圧
■ 減圧法・・・減圧下に試料を置き液を導入
14
難燃処理した硬質ウレタンフォーム
バーナーで12分加熱後の外観
加熱面
裏面
加圧含浸試料 1.0 cm厚
15
硬質ウレタンフォームの難燃化
CCM試験結果
10
不燃認定基準
80
8
発熱速度
総発熱量
60
6
40
4
20
2
0
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
総発熱量(MJ/㎡)
発熱速度(kW/㎡)
100
20
時間(min)
減圧法による重量増加率400%の試料
プラスチックで初めて不燃認定基準をクリア
16
含浸でなく、塗布で難燃化できないか?
非晶質ホウ酸Naによる難燃化の成果
加圧含浸: 木材,硬質ウレタンフォーム
常圧含浸: 紙, etc
塗布では粉化
塗膜化用バインダー探索
非晶質ホウ酸Naはセルロースに著効
分子式の同じデンプン(C6H10O5)n に想到
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難燃塗布剤の調製
難燃剤
ホウ酸塩水溶液100部 + デンプン3∼6部
(5.4 mol/kg, Na/B=0.22)
基材
硬質ウレタンフォーム
ポリプロピレン不織布
無色透明
少し粘性有
刷毛で塗布,
乾燥
18
塗布処理した硬質ポリウレタンフォーム
バーナー燃焼試験後の外観
塗布なし、
デンプン単独
塗布は焼失
ホウ酸塩+デンプン
塗布
ホウ酸塩単独塗布
10mm厚、12分のバーナー加熱でも、着火・貫通なし
12分後の裏面温度95℃
19
塗布処理した硬質ウレタンフォーム
ガスバーナー加熱時の裏面温度
1cm厚の試料を
炎長10cmで加熱
20
ホウ酸塩+デンプン塗布硬質ウレタンフォーム
燃焼試験後の試料断面
内部を保護する発泡層・炭化層が形成
21
塗布処理したポリプロピレン不織布
45°燃焼性試験結果
未処理
ホウ酸塩
単独塗布
炭化面積
(cm2)
―
7
残炎時間
(s)
7
67
試験後の
外観
焼失
デンプン
ホウ酸塩+
単独塗布 デンプン塗布
―
35
28.3
着火なし
焼失
22
ホウ酸塩+デンプンの
難燃メカニズム
ホウ酸塩
→発泡層
基
熱
(C6H10O5)n →
6n C+ 5n H2O
デンプン
→炭化層
糖
ホウ酸塩
材
酸素、熱を遮断
炭化層・発泡層が
熱・酸素を遮断
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ま と め
■ ホウ酸ナトリウムが非晶質となる組成範囲で,ホウ酸
ナトリウム水溶液を高濃度化することに成功した。含
浸により,木材,集成材,紙,ウレタンフォーム等を不
燃・難燃化することができた。
■ ホウ酸ナトリウム水溶液とデンプンを混合することで,
塗布により難燃処理が可能な水溶液を調製すること
に成功した。硬質ウレタンフォーム,ポリプロピレン不
織布などを難燃処理することに成功した。
■ ホウ酸ナトリウムとデンプンの片方を別の物質に変え
ることで,新たな難燃処理剤が創製できる可能性が
ある。
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詳しくお知りになりたい方のための参考文献
■ 全般
『難燃剤・難燃化材料の最前線』(シーエムシー出版),共著,2015.
■ 非晶質ホウ酸塩水溶液
特許4439234号,特許5079983号.
I. Tsuyumoto et al., Inorg. Chem. Commun. 10 [1], 20-22, 2007.
■ 塗布用の糖類・非晶質ホウ酸塩混合溶液
公開特許公報2011-162743.
『難燃化の最新技術と難燃剤の選定・使用法』(R&Dサポートセンター),共著,2013.
I. Tsuyumoto et al., J. Mater. Sci. 46 [16], 5371-5377, 2011.
■ 木材の不燃化
『難燃剤/難燃材料の難燃化機構,および製品応用』(情報機構),共著,2008.
露本伊佐男,尾塩友和, 「材料」 56 [5], 472-476, 2007.
■ 有機ポリマーの難燃化・不燃化
『難燃剤の最適処方と燃焼試験』(技術情報協会),共著,2011.
I. Tsuyumoto et al., J. Mater. Sci., 45 [9], 2504-2509, 2010.
I. Tsuyumoto et al., J. Appl. Polym. Sci. 122 [3], 1707-1711, 2011.
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お問合せ先
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産学連携局 産学連携東京分室
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