寄 稿 三菱総合研究所 【特 集】 脱・偶発的イノベーション 【海 外】 対ベトナム事業展開は中長期視点で 【エネルギー】 水素社会の一翼を担う人工光合成 SEPTEMBER.2016 FFG MONTHLY SURVEY Vol.94 48 MRI MONTHLY REVIEW いでいる。当 社の調 査では、 この1∼2 年の動きとして オープンイノベーションプログラムに関する発表が相次 ている 。専 門 組 織の 新 設 や 社 内 外 との 連 携 を 狙った イノベーション創 出の取り組みが国 内 外で活 発 化し ねしてみたがなかなかうまくいかない﹂ ﹁このまま続け 一方で、 コンサルティングの現 場では﹁ 成 功 事 例をま 期待の高まりがうかがえる。 を 占めており 、イノベーション創 出に対 する 経 営 層の ﹁ 経 営 層からのメッセージが多くなっている﹂が約 7 割 の実情が見えてきた。 5 割 前 後を占めており、 ﹁ 壁にぶつかりつつある﹂現 場 がはっきりしない﹂ ﹁ 取り 組みの成 果が出ていない﹂が ようになった。前 述の調 査でも﹁ イノベーションの定 義 ていいのか確 信がもてない﹂といった声もよく聞かれる 壁 に ぶつかる イ ノベー ション創 出の現 場 1 【特 集】 脱・偶発的イノベーション ●イノベーション創出の現場の多くは今、壁にぶつかっている。 ●戦術(施策)はあるが戦略(全体設計)を欠いたまま走り出した現場は多い。 ●脱・偶発的イノベーションには組織的な仕組みと調整コストを抑える運用が必要。 [図1]イノベーション創出に関わる状況(上) と課題認識(下) 【イノベーション創出に関わる状況(直近2年程度) 】 Q1_1 経営層からのメッセージが多くなっている Q1_2 Q1_3 31 68.9% 24 53.3% 外部連携によるイノベーション(オープンイノベーション) 13 が増加している 28.9% イノベーション創出に関わる社内活動が増加している (例:社内アイデアコンテスト研修など) Q1_4 イノベーション創出のための専門組織を新設した 16 35.6% Q1_5 イノベーション創出のための予算が増加した 7 15.6% Q1_6 イノベーション創出のためのプロセスを整備した 5 11.1% Q1_7 すでにイノベーション創出に成功している 2 4.4% Q1_8 上記に該当する動きはない 6 13.3% 【イノベーション創出に関わる課題】 Q2_1 そもそも手の付け方がわからない N 6 13.3% 24 53.3% Q2_3 取り組みを始めたが、その取り組みに確信がもてない 14 31.1% Q2_4 取り組みの成果が出ていない 21 46.7% 12 26.7% 6 13.3% Q2_2 Q2_5 イノベーションの定義がはっきりしない (社内で捉え方がバラバラ) 偶発的なイノベーションにとどまり、 継続的な取り組みとならない Q2_6 その他 出所:三菱総合研究所 (N=45:国内企業のイノベーション担当のマネジャー) 49 FFG MONTHLY SURVEY Vol.94 N MRI MONTHLY REVIEW ■失 敗 例 1 社 内でアイデアコンテストを開 催 。発 表 会には経 営 層も参 加し、想 定 以 上の盛り上がりをみ せた。しかし、 コンテスト終 了 後のプロセスを整 備し これらにあてはまると、偶 発 的なイノベーション創 出を と。次に、仕 組みはあるが、運 用が不 十 分であること。 まず、戦 術︵ 施 策 ︶ はあるが、戦 略︵ 全 体 設 計 ︶がないこ 壁にぶつかっている 現 場の多 くには共 通 点 がある 。 根 強 く 、その成 否は偶 然に左 右 されることが多い。偶 ティブな個 人から自 発 的に生まれてくるという意 識が が 、日 本 企 業の 現 場では 、イノベーションはクリエイ 方 法 論や 成 功 事 例 が 広 く 知られるようになってきた オープンイノベーションやデザインシンキングなどの 企 業は期 待に反 して自 社 事 業の枠 を 大 き くはみ出 創 出のワークショップを 開 催した 。しかしベンチャー 延してしまった。 いた 応 募 者はもとより 社 内に白 けた 雰 囲 気 がまん 脱・偶 発 的 な イ ノベー ション 脱することはできない。 発 的 なイノベーション創 出 を 脱 するポイントは、優れ して考 える余 力はなく 、新 しいアイデアは得られな イ ノベー ション創 出の取 り 組 み が 壁 に ぶつかる 背 景 例 えば、オープンイノベーションやデザインシンキン たアイデアをもつ個 人の発 現 を 待つのではなく 、組 織 かった。逆に、 ベンチャー企 業からは、参 加はしたもの ておらず 、アイデアは塩 漬 け 状 態に。やる気になって グなどの方 法 論や 成 功 事 例 を 参 考にしながら 、施 策 的なイノベーションプロセスの確 立にある。以 下 、その の自 分たちにメリットはなかった、と距 離を置かれる 複 数のベンチャー企 業を集めてアイデア ︵ 戦 術 ︶を起 点に走り始めた現 場は多い。しかし、多 産 仕 組みづくり︵ 全 体 設 計 ︶と運 用︵ 運 用 設 計・マネジメ イノベーションを 定 義 すること 。実 現 したいのは新 事 全 体 設 計のポイントは3 点 ある。まず 、実 現したい ■失 敗 例 2 多 死を基 本 原 則とするイノベーション創 出で、自 社は ようになってしまった。 か、生み出したアイデアをどのように扱うか、そのため に 必 要 な 社 内 の 仕 組 みや 評 価 手 順 な ど 、最 終 的 な ゴールを見 据 えた戦 略︵ 全 体 設 計 ︶が事 前に構 築され カスするあまり 、生み出したアイデアを成 長 軌 道に乗 に多 死できない。アイデアを 生み出 す 仕 組みにフォー が実 現できていない。多 産は実 現 したもののスムーズ すい、報 告しやすい施 策 をまず 走らせてしまう 。全 体 トやオープンイノベーションプログラムなど、分かりや ない。一方で、経 営 層の関 心は高 く 、アイデアコンテス ての取り組みでノウハウがなく、何をしてよいかわから し 何 をするか検 討 することから始める。しかし 、初め ノベーション創 出の取り 組みは、まず 担 当 組 織を設 置 全 体 設 計がおろそかになるのはなぜか。組 織 的なイ る﹁ビジネスモデル構 築 ﹂ステージ、事 業としてスケー る﹁アイデア創 出 ﹂ステージ、ビジネスモデルを構 築 す えば、無 数のアイデアからビジネスアイデアを 創 出 す 次に、イノベーションのステージを理 解 すること。例 られない。 ば、実 施すべき施 策 、設 計すべきプロセスや組 織は決め 域なのか。実 現したいイノベーションが定 義できなけれ 開 発なら、既 存 事 業の周 辺 領 域なのか、全くの新 規 領 業 開 発なのか、業 務 プロセスの再 構 築なのか。新 事 業 せる 仕 組みの運 用 がおろそかになっている 。いずれも 設 計がおろそかなまま個 別の施 策を展 開すると、イノ ルアップする﹁スケールアップ﹂ステージなどが考 えら 環 境 に応 じ た 仕 組 み づく り 戦 略︵ 全 体 設 計 ︶がないか 、仕 組みの運 用 が 不 十 分で ベーション創 出 が 進 まないだけでなく 、以 下に示 すよ れる。ステージの理 解 を 欠いたまま、 ﹁アイデア創 出 ﹂ ていることは少ない。アイデアの絶対数が足りず、多産 ある。 うな副 作 用を生じる恐れすらある。 1 イ ノベー ションのステー ジ と ント︶ について考えてみたい。 3 年 間にどれくらいのアイデアを 生み出 す 必 要 がある 2 50 FFG MONTHLY SURVEY Vol.94 MRI MONTHLY REVIEW ■ すでにさまざまな事業を運営している (多角化が進んでいる) ステージや﹁ビジネスモデル構 築 ﹂ステージで既 存 事 業 事業立ち上げ と同 等の評 価 基 準を当てはめると、有 望な芽をつまん でしまう恐れがある。ある欧 州の製 造 業では検 討 終 了 ※1:自社で作成したアプリケーションのインターフェースの仕様を公開することで他社がサービスを連携。アプリケーションの付加価値が高まる。 ※2:大企業などがスポンサーとなり、 スタートアップの成長を加速する仕掛け。 のプロセスと基 準を整 備し、 ﹁ビジネスモデル構 築 ﹂ス テージの終 了 件 数をK P I 化している。このことによ り﹁アイデア創 出 ﹂ステージの多 産 が 加 速 され、事 業 化ステージに進むアイデアを確 保でき 、結 果として事 業化件数が増える結果を生んでいる。 最 後に、イノベーションのステージと取り巻く環 境に 応じた仕組み ︵ 施策、プロセス、組織︶を構築すること。 例 え ば、既 存 事 業 と 市 場 も 商 品 も 異 なる飛び地のイ ノベーションでは、社 外の人 材・知 見をフル活 用する仕 組 みが 必 要 となる 。事 業 戦 略 は 自 社で 描 き 、社 外 リ ソースに期 待する役 割を明 確 化する場 合もあれば、ビ ジネスアイデアから広 く 公 募する場 合もある。これま でにさまざまなイノベーション創 出の仕 組みが編み出 されているが、これから新 たに編み出 される仕 組みも 想 定 される 。多 様 な 選 択 肢 から 最 適 な 組み合わせを デザインする力が求められる。国 内のあるインフラ事 業 者では試 行 錯 誤の結 果 、飛び地のイノベーションは 業務提携 買 収 外部連携 プロジェクトチーム 主体で構成 パートナー企業(販社など) と体制構築 社外の知見/ 社外の人材の活用 既存事業から物理的に 切り離した組織 自社中心で体制構築 既存事業をよく知っている メンバーの活用 to C ビジネス モデル構築 分野探索/ 研究開発 主要事業の比重 ビジネスモデル 領 域 to B ■B ■ 飛び地に近い新規 企業環境 イノベーションの種類 スケールアップ ステージ ビジネス アイデア創出 ビジネスモデル構築 ステージ アイデア創出ステージ ■ 一本足打法 ■B ■ 既存領域に近い場合 公 募 型のアクセラレータープログラム、既 存 事 業の周 アイデアソン ビジコン 特許・API公開(※1) 公募型 51 FFG MONTHLY SURVEY Vol.94 辺 領 域は社 内 公 募 型のプログラムと、位 置づけを明 確 研修型・出島型 社内公募型 プロジェクトチーム型 社 内 出所:三菱総合研究所 にして並 行 して実 施 することで、成 果 を 生み出 しつつ ある。 [図2]イノベーションのステージに合わせた仕組みづくり (上図) と環境に合わせた仕組みづくり (下図) 事務局型 アクセラレイター(※2) 協 業 MRI MONTHLY REVIEW 調 整コスト を ション創 出に求められる多 様 な 能 力はチームで補って いく必 要がある。ある欧 州のインフラオペレーターでは 高くつく。高い調 整コストは時 間をロスし、担 当 者の負 イノベーション創 出は、関 係 者との﹁ 調 整コスト﹂が の経 験 値が高まった 段 階でチームをばらし、新 たに未 一組のチームでプロジェクトを実 行している。メンバー などに分 類 。異なるタイプの人 材を組みあわせて4 人 人 材をアイデア創 出 型 、洗 練 型 、実 行 型 、 マネジャー型 荷 を 高める 。例 え ば、実 績 がある 既 存 事 業に比べ、社 経 験 者 を 加 えチーム編 成 することでネズミ算 的に社 抑 え る・超 え るマネ ジメント 内 承 認に必 要なエビデンスを用 意しにくい。既 存 事 業 内のイノベーション担当チームを増やしている。 透が鍵となる。例えば﹁アイデア創 出 ﹂ステージであれ に加 えて、既 存 事 業 とは異 なる 評 価 基 準の設 定 と 浸 事 業と既 存 事 業の違いを社 内で共 通 認 識 化すること を 下 げる工 夫である。トップからの意 識 喚 起や、新 規 運 用 設 計のポイントは2 点 ある。まず 、調 整コスト 極的になるなどの問 題が想定される。 アップ時に事 業 移 管する際 、規 模の小さな事 業には消 を期 待したい。 そのものをイノベーションし続 ける現 場が増 えること 応させる。同 様に、自 社にあったイノベーションプロセス イデアが壁にぶつかったらピボット︵ 方 向 転 換 ︶して適 かっている現 場は多い。イノベーションプロセスでは、 ア たばかりで、経 営 層の高まる期 待とは裏 腹に壁にぶつ るべき最 重 要 機 能である。本 格 的なチャレンジは始まっ 脱・偶 発 的 イノベーションはこれからの組 織 が 備 え き ないと 壁 を 乗 り 越 え るのは 難 しい 。ま た イノベー のあるチームを 作ること 。ビジネスアイデアに共 感で 次に、調 整コストが高くても乗り越える能 力や意 欲 る必要がある。 転 換 ︶するのは当たり前という認 識を組 織に浸 透させ 反 応を手 掛かりに、ビジネスアイデアをピボット︵ 方 向 性 を 評 価 する 。なにより 前 半のステージでは、顧 客の イプが売れたかどうか、さらには市 場 規 模の拡 張 可 能 ﹁ビジネスモデル構 築 ﹂ステージでは、実 際にプロトタ われないよ う 、外 部︵ 顧 客 な ど ︶を 入 れて 評 価 する 。 を重 視して評 価 する。さらに、既 存の社 内 論 理にとら ば、R O Iではなく、 ニーズの有 無やアイデアの斬 新さ 事 業の部 署では手 間がかかることを理 由に、 スケール への影 響が予 想された途 端に抵 抗が生じやすい。既 存 2 52 FFG MONTHLY SURVEY Vol.94 MRI MONTHLY REVIEW 約 1, 600となり、ASEAN加盟国の中ではタイ、 ものである。2015年末時点で日系企業の進出数は 海 外 直 接 投 資の大 幅な増 加は輸 出 拠 点 化を意 図した じめメガF T A 大 国としても 注 目 されている。事 実 、 力に期待したい。 チェーン構 築へ、日 系 企 業の中 長 期 視 点の戦 略と実 行 業 の 発 掘 、活 用・育 成 、内 外 向 けの 強 固 な サ プラ イ 成 長 を 志 向 する現 地 企 業 も 存 在 する。意 欲のある企 インド 4,315 11.2 4 ドイツ 1,777 5.5 5 タ イ 1,725 5.1 6 インドネシア 1,697 -3.9 7 ベトナム 1,578 8.7 8 フィリピン 1,448 -4.8 9 マレーシア 1,383 2.7 台 湾 1,125 1.2 ﹂︵ 納期 ︶。 Delivery 3 ﹂︵ 費 用 ︶、﹁ Cost ︵ ※ 1 ︶﹁ 日 系ベトナム進 出 企 業に対しては、先 進 国のみなら 0.4 ﹂︵ 品 質 ︶、﹁ Quality インドネシアに次ぎ第 3 位 、世 界 全 体でも第 7 位であ 屈 指の親 日 国であるベトナムは、極めて安 定した経 ずアジア、A S E A N 市 場への輸 出 拠 点 化 、そして冒 前年比(%) る。また対 前 年 比 増 加は約 9%と、A S E A Nで第 1 済 成 長 を 遂 げている。2 0 2 0 年 代 前 半には1 人 当 頭に記した消 費 地のポテンシャル双 方を視 野に入れた [図]国・地域別日系企業(拠点)数上位10位(2015年度) 位、世界でもインドに次ぐ第2位の増加率となった。 実 際には、同 国 民 間 企 業の歴 史が浅いこともあり 、 日系 進 出 企 業からは、原 材 料・部 品の現 地 調 達の難し さ 、現 地 企 業の力 不 足への不 満 も 聞こえていた 。とこ ろが、個々に見ればこうした状 況に変 化が起きている。 一部の既 進 出 外 資 系 企 業が現 地 企 業の育 成に一役 買 い、現 地 企 業が主 要なサプライチェーンを担 う 例が増 加 している。例 え ば韓 国のサムスン電 子は、技 術 指 導 などを 行いながら 、直 近 1 年 間で現 地 取 引 企 業 を 3 倍に増やした 。日 系 企 業 も二輪 自 動 車 などで先 駆 的 に現 地 企 業を育 成 、調 達 率 向 上を実 現しているが、全 たりG D Pが3, 0 0 0ドルを超 え、四 輪 自 動 車の本 中 長 期 視 点での事 業 展 開 を 勧めたい。その鍵は現 地 出所:外務省「海外在留邦人数調査統計 (2016年) 」 体的には現 地 企 業 活 用に積 極 的とはいえない。現地 企 業のQ C D︵ ※ 1 ︶ が日 本 基 準 を 満 たさ ず 、先 進 国 市 格 的 普 及・拡 大 期に突 入 する。人口も 堅 調に増 加し、 企 業 を 活 用 し な がら 、育 成 す ることである 。分 野に 場向け生 産には不 適との認 識がある。 2 0 2 0 年には1 億 人 を 突 破 する 。消 費 地 としての %の調 達コストが低 よっては現 地 企 業との取 引で約 ●現地企業の活用に遅れを取る日系企業は、中長期視点での戦略と実行力が求められる。 中 長 期ポテンシャルは、成 長 著しいA S E A N 諸 国の 53 FFG MONTHLY SURVEY Vol.94 ●最近では、既進出の外資系企業が現地企業を育成し、積極的に活用する例が増えている。 減 可 能との試 算もある。あえて品 質 水 準 、納 期などの 7,849 2 ●日系企業のベトナム進出は活発化しているが、現地調達の難しさがボトルネック。 中でも目を引く存在である。 アメリカ 中 国 海外事業センター ディン ミン フン 厳しい条 件を課す日系 企 業と取 引することで、自らの 2.2 1 対ベトナム事業展開は 中長期視点で 他方、 ベトナムはT P P 、E U・ベトナムF T Aをは 33,390 10 10 日系企業(拠点)数 国(地域)名 順位 【海 外】 MRI MONTHLY REVIEW 万 台を超えた。 に依 存している。より多くの燃 料を消 費する発 電にも 水 素が用いられるようになれば、需 要サイドばかりで 称で市 販され、昨 年 末に普 及 台 数が 後 者は水 素を燃 料にして発 電し、 モーターを駆 動させ 的な水素 社会の到 来となる。 はなく 供 給サイドの電 気もC O 2から解 放され、本 格 ンピックまでに水 素ステーションを1 6 0カ所 設 置し、 ソーラー水素供給量は水素ステーション(24h 稼働)供給能力の20‒36%相当 ︵ ※ 1 ︶改 質 とは、天 然ガスなどの炭 化 水 素の組 成・性 質 を 改 良 すること。 ソーラー水素プラント みに電 気 自 動 車の普 及 台 数は、2 0 1 4 年 度 末 時 点 Sun で約 7 万 台だ。 ともに日 本が強みをもつ需 要サイドの水 素 利 用 技 術であるが、水 素 製 造まで含めると、残 念ながら必 ず しも環 境に優しいとはいえない。現 状ではL P G 改 質 ︵※1︶ や天 然ガス改 質によって水 素 を 製 造しているた 出所:人工光合成化学プロセス技術研究組合 (ARPChem) 資料より三菱総合研究所作成 め、CO 2の排 出を伴うからだ。 真の水 素 社 会 を 構 築 するためには、水 素 製 造 も 含 めて環 境に配 慮しなければならない。再 生 可 能エネル ギーで発 電 した 電 気はC O 2フリーであるから 、この 電 気 を 用いて水 を 電 気 分 解 すればクリーンな 水 素が 得られる。福 島 県では再 生 可 能エネルギーの余 剰 電 力 2 ※NEDO 燃料電池・水素技術開発ロードマップ2010 圧縮水素供給技術/圧縮水素ステーション 2020年達成目標規模より 日本国内(日照:1,400kWh/Y㎡, 1,900h/Y) 変換効率 η=10%想定時 水素生産量:44.8㎏/h(233㎏/day) 水素ステーション 300‒500N㎥/h(27‒45㎏/h) ソーラー水素プラント 2ha を用いて水 素を作り、活 用しようという動きもある。 また、生 物の光 合 成を模した人工光 合 成でもC O 分︵ 明 反 応 ︶と同 様 、太 陽 光によって水から水 素を作る 排 出 ゼロの水 素 を 製 造できる 。光 合 成 反 応の前 段 部 水 素 社 会とは、電 気やガソリンのような二次エネル のプラントを 約 3∼5カ 所 設 置すれば全 水 素ステーションの供 給 量をまかなえ プラントのめどがつく 。2 水 素 社 会を構 成する重 要な要 素が、家 庭 用 燃 料 電 るようになる。 クリーンな社会が実 現できる。 池と燃 料 電 池 自 動 車である。前 者は水 素 を 燃 料とし 自 動 車 用 燃 料と発 電 用 燃 料は今のところ化 石 燃 料 ha て電 気と熱 を 作 り 出 す 機 器で、 エネファームという 名 [図]人工光合成化学プロセス技術研究組合の目指す水素製造プラント 燃 料 電 池 自 動 車 4 万 台の普 及 を 目 指 している。ちな て走る。国は、2 0 2 0 年の東 京オリンピック・パラリ 15 研 究 開 発が国 内 外で進められている。国 内では﹁ 人 工 ●水素製造もCO2フリーの環境に優しい方法が必須であり、人工光合成はその一つ。 ギーとして、水 素 を 活 用 する社 会のことである。利 用 ●発電にも水素が用いられれば、需供両面から本格的な水素社会が実現。 光 合 成 化 学 プロセス技 術 研 究 組 合 ﹂が 組 成 されてお ●家庭用燃料電池、燃料電池自動車は水素社会の重要な構成要素。 時にはN O x ︵ 窒 素 酸 化 物 ︶も S O x ︵ 硫 黄 酸 化 物 ︶も 政策・経済研究センター 清水 紹寛 り 、計 画 どおりに進めば2 0 2 0 年 代には水 素 製 造 水素社会の一翼を担う 人工光合成 C O 2も排 出せず、出てくるのは水だけという、究 極の 【エネルギー】 54 FFG MONTHLY SURVEY Vol.94
© Copyright 2024 ExpyDoc