null

寄 稿
三菱総合研究所
NOVEMBER. 2016
【特 集】
電力自由化半年後、
これから広がるビジネスチャンス
【ICT】
マイナンバーカード 健康保険証への適用が多様なサービスを創出
【セキュリティー】
サイバー攻撃から工場やインフラを守る
【数字は語る】
52% 65∼69歳男性の就業率
FFG MONTHLY SURVEY Vol.96
36
MRI MONTHLY REVIEW
電 力 自 由 化 後の市 場 動 向 と
市 場 活 性 化 に向 け た 方 策
電力自由化半年後、
これから広がるビジネスチャンス
●日本でもこうした取り組みを通じて多様な業種でビジネスチャンスが拡大。
電 力 小 売に新 規 参 入する新 電 力の事 業 者として登 録
る有 力な手 段となる。イギリスでは国 内 消 費 電 力の
%以上が卸電力 取引市場から
れば2 0 1 6 年 9 月 末 時 点で電 力 会 社を切り替えた
環 境が存 在する。これに対し、日本の卸 電 力 取 引 市 場
調 達 されており 、新 規 参 入 者 が 電 源 を 調 達 しやすい
%以上、
フランスでは
家 庭の需 要 家は3 % 程 度と、大 手 電 力 会 社の寡 占 状
である日 本 卸 電 力 取 引 所のシェアは2 % 程 度である。
され、市 場 競 争の活 発 化が期 待されたが、ふたを開け
況が継 続している。自 由 化で先 行 する欧 米 諸 国では、
特に明確な理由はない
14%
2
月々の電気料金があまり安く
ならなそうだから
13%
3
切り替えの手続きが面倒だから
12%
% 程 度が切 り
1
例 えばイギリスで自 由 化 後 1 年 間に
5%
替えており、日本は非 常に低 調な水 準である。
月々の電気の利用でポイントが付くから
① 日本 と 海 外の電 力 会 社 選 択 理 由
3
当 社が実 施したアンケート調 査によれば、電 力 会社
8%
を 切 り 替 える 最 大の理 由は﹁ 月々の電 気 料 金 が 安 く
現状の電力会社に不満があるから
なりそうだから﹂が大 半を占めている︵ 図 1 ︶
。また、電
2
力 会 社を切り替えていない理 由も、電 気 料 金に関する
理 由が上 位に位 置 しており 、自 由 化 後 、まずは、需 要
家の多 様なニーズに訴 求するサービス競 争というより
も、価 格 競 争が先 行している状 況である。一方 、すでに
自 由 化が進む海 外 諸 国に目を転じれば、
﹁ 再 生 可 能エ
ネルギー 電 力 1 0 0 % プラン﹂
﹁ 他 商 材︵ 通 信サービ
ス、商 品 券など︶とのセット販 売 ﹂
﹁ I Tを活 用したエ
ネルギーマネジメントサービス﹂など、新 規 参 入 者が多
様 なサービスを 提 供 し 、価 格 以 外の理 由 からも 電 力
会社の切り替えが活 発 化する様 子が見 受けられる。
② 日本 と 海 外の電 力 小 売 市 場 環 境
海 外の電 力 小 売市 場が活 性 化している要 因として、
新 規 参 入 者にとっての電 源 調 達のたやすさが挙げられ
[図1]電力会社の切り替えを「する」
・
「しない」最大の理由(上位3項目)
10
る 。自 社で 発 電 所 を 保 有 しない新 規 参 入 者にとって
●世界中で電力需給管理の高度化に向けた技術開発が進展。
2016年4月に電力小売の全面 自由化が実施さ
●再生可能エネルギーの効果的な活用が電力市場活性化の鍵。
は、卸 電 力 取 引 市 場の活 用が安 定 的に電 力 を 確 保 す
市場動向と課題
20
月々の電気料金が安くなりそうだから
切り替えを
「しない」
最大の理由
【特 集】
れてからはや半年が経過した。300を超える企業が
37 FFG MONTHLY SURVEY Vol.96
50
出所:三菱総合研究所
47%
1
切り替えを
「する」
最大の理由
1
1
MRI MONTHLY REVIEW
を超える将来像が示されている。
おり 、
﹁ 長 期エネルギー需 給 見 通し︵ 経 済 産 業 省 ︶﹂で
の固 定 価 格 買 取 制 度︵ F I T ︶﹂導 入 以 降に急 増して
る発 電 量は、2 0 1 2 年 7 月の﹁ 再 生 可 能エネルギー
大 規 模 水 力 発 電 を 除いた 再 生 可 能エネルギーによ
は、再生可能エネルギー電源の有効活用である。
中で、新 規 参 入 者にとって有 効な選 択 肢となりうるの
取 引 量を増 大させる方 向で議 論が進 展している。その
については、取 引ルールなど制 度 設 計の途 上であるが、
市 場 活 性 化の鍵である卸 電 力 取 引 市 場の取 引 増 加
大きな理由の一つといえるだろう。
%︶
営を直撃する。これも電力会 社の切り替えが進まない
引 市 場が活 発でないことは新 規 参 入 者の安 定 的な経
様な企業が参画可能なビジネスチャンスを生み出す。
時に、発電事業者や電力小売事業者にとどまらない多
化 後の電 力 小 売 市 場の一層の活 性 化に貢 献すると同
となる。こうした課 題 解 決のための取り 組みが、自 由
わせた、新たな電 力 需 給 管 理のシステムづくりが重 要
に加 え、蓄 電 池などの分 散 型のエネルギー源を組み合
度を向 上するだけでは不 十 分だ。再 生 可 能エネルギー
に運 用していくためには、従 来の電 力の需 給 管 理の精
将 来 的に再 生 可 能エネルギーによる電 力 を 効 果 的
ントロールするためのシステムの普及が求められている。
電と自 家 消 費を、蓄 電 池などの活 用により効 率 的にコ
る住 宅が増 加する。こうした状 況に対 応して、自 家 発
も、家庭で消費して電気料金を節約することを選択す
太陽光発電設備で発電した電力を電力会社へ売るより
太 陽 光 発 電 設 備が徐々に増 加する。その結 果 、住 宅 用
年 度 以 降にF I Tによる買 取 期 間が終 了する住 宅 用
出力を抑制することも検討されている。また、2019
た電力の需給バランスを崩すことが想定され、強制的に
る。太陽光発電、風力発電の急増は、
これまでの安定し
として、小 規 模 電 源を複 数 集めて需 給 調 整 市 場︵※2︶
電 力 需 給 調 整 機 能の代 替が必 要 となり 、その受 け 皿
力 電 源の設 備 稼 働 率 低 下 を 引 き 起こした 。そのため
イギリス︶
では、再 生 可 能エネルギーの大 量 導 入 が 火
で、VPPの事業化が進みつつある。欧州︵特にドイツ・
海 外では、欧 州・アメリカそれぞれ異なった背 景の中
所︵ 仮想発 電所、 Virtual Power Plant
︹VP P︺︶
の
ように機能させることが可能となる。
I C T 技 術の活 用により 統 合 制 御 し 、あたかも 発 電
ギ ー・リソース︵ 発 電 設 備 、蓄 電 設 備 、需 要 設 備 ︶を
ション︵ ※ 1 ︶
だ 。これによ り 、分 散 設 置 されたエネル
高 度 化する仕 組みがエネルギー・リソース・アグリゲー
する分 散 型エネルギー源を活 用して電 力 需 給 管 理を
ど︶が導 入される見 込みとなっている。このように増 大
コージェネレーションシステムで火 力 発 電 所
向 けて相 当 程 度︵ 住 宅 用 太 陽 光 発 電 、
エネファーム、
革新による価 格低下が予想されており、2030 年に
イオン二次 電 池などの蓄 電 技 術は、生 産 量 拡 大・技 術
太 陽 光 発 電 をはじめとする分 散 型 電 源やリチウム
力発電の発電量はリアルタイムな天候、風況︵風速や風
固 定 価 格 買 取 制 度で買い取られた再 生 可 能エネル
生 活 者にとっては、自 由 化 進 展による電 気 料 金の低
に市 場 参 画 させる取り 組みが行われている。アメリカ
多 くの新 規 参 入 者は、大 規 模な火 力 発 電 所に設 備 投
ギーによる電 力は、2 0 1 7 年 度 以 降に卸 電 力 取 引
減などの価 格 面のメリットに加 え 、電 力 需 給 管 理シス
では電 気 事 業 制 度 改 革によって発 電 設 備 投 資が抑 制
電 力 需 給 管 理 高 度 化 に向 け た
取 り 組み
市 場で 取 り 引 き されるよ うに、制 度 設 計 が 進 んでい
テムを 通 じた 自 宅の省エネ 化が期 待 される。同 時に、
され、供 給 力 不 足の解 消 が 課 題 となっている 。このた
向 きなど風の吹 き 方 ︶
に左 右 されるため、不 安 定であ
る。再 生 可 能エネルギーの普 及 拡 大は、新 規 参 入 者へ
既存 電 力 会 社や新 規 参 入 者がハウスクリーニングや見
め、デマンドレスポンス︵ ※ 3 ︶
を供 給 力として活 用する
資 し 自 社で電 源 を 保 有 することは難 しい。卸 電 力 取
の電 源 調 達の容 易 化 、電 力 市 場の活 性 化にとって追い
守り・駆けつけサービスなどの生 活 者を支 援 するサー
ことが 制 度 化 されており 、需 要 設 備 を 制 御 する 取 り
電 力 市 場 活 性 化の可 能 性
は2 0 3 0 年 度に %︵ 2 0 1 4 年 度 時 点では
24
再 生 可 能エネルギ ーの活 用 による
風となる。
ビスを始めており 、これらの付 帯サービスが生 活 利 便
組みが行われている。
3.2
基 分な
再生可能エネルギーによる電力を効果的に活用する
性向 上に役 立つ。
2
ためには課題もある。導入が進んでいる太陽光発電、風
13
2
38
FFG MONTHLY SURVEY Vol.96
MRI MONTHLY REVIEW
年の5 年 事 業 として推 進 されており 、 M W 以 上の
ワー プラント構 築 実 証 事 業 ﹂が 2 0 1 6∼2 0 2 0
指している。具 体 的な取 り 組みとして、
﹁バーチャルパ
り 上 げ 、東 京 オリンピックの際のショーケース化 を 目
プロジェクトの一つとしてこの統 合 管 理の仕 組みを 取
に改革・イノベーションを加速していく﹁改革2020﹂
日本でも、重 点 政 策 分 野を決 定し、2 0 2 0 年まで
る 企 業はエネルギーの制 御に関わる 通 信 技 術や分 析
益 ︶を得ることが可 能になる。また、通 信やI Tに関わ
など を 、アグリゲーターに提 供 することで 、対 価︵ 収
できる。企業は自社で保有する蓄電池・自家発電・EV
で取り引きすることで、対 価︵ 収 益 ︶を獲 得することが
﹁ネガワット 取 引 市 場︵※4︶
﹂や﹁ 需給 調 整市 場 ﹂など
は、統 合 制 御する分 散 型エネルギー源を有 効 活 用し、
企業のみならず、情 報・通信など異業種 企業、さらには
ジーとなる。その意 味において、従 来のエネルギー業 界
能の活 用 を 含 む ︶といった I C T 技 術がキーテクノロ
収集されたデータ利活用による制御の高度化︵人工知
今後、通信規格整備やサイバーセキュリティー確保、
ナジー、
ローソンといった多様な業種が参画している。
関西電力︶
のほか、N E C 、
アズビル、
エナリス、S Bエ
などを進めている。同 事 業には、電 力 会 社︵ 東 京 電 力 、
可 能エネルギー導 入 拡 大や省エネルギー・負 荷 平 準 化
仮 想 発 電 所の制 御 技 術の確 立に向 け 、さらなる再 生
の選 択 肢や企 業の事 業 機 会の拡 大が掲 げられている
供 給 確 保 、② 電 気 料 金の最 大 限の抑 制 、③ 電 気 利 用
も 生まれる。電 力システム改 革の目 的として、① 安 定
関するアイデアの統 合を促 進し、そこにイノベーション
企 業の協 働は、
エネルギー供 給に付 随 するサービスに
な事 業 機 会 を 望 むことができる。また 、これら多 様な
このように多 岐にわたる業 種において、図 2のよう
アグリゲーターに提 供することが可 能となる。
生 活 者にとっては、自 宅の太 陽 光 発 電・蓄 電 池・E Vを
アルゴリズムを提 供するチャンスが生まれる。加 えて、
が、
このような取り組みを通じて、生 活 者にとっても企
業にとっても真に効 果のある電 力 自 由 化が実 現するも
のと考えられる。
家庭も含めた地域の
あらゆるエネルギー・リソースを
需給調整
ビルマネジメントの
新しい付加価値としての事業展開
工場を起点として、
自社リソースおよび地域の電源などを
活用した事業展開
•家庭のPV、蓄電池、
EVなどの制御
•空調、ヒートポンプ、
照明などの制御
対価
対価
リソース提供
対価
リソース提供
•空調、照明、
生産ラインの制御
•自家発電、再エネ電源、
蓄電池の活用
ベンチャー企業などの積極 的な参画が期待される。
さ ま ざ ま な 業 種 に広 が る
企 業のビ ジ ネスチャンス
電 力およびガスのシステム改 革を契 機として、分 散
型エネルギー 源が活 用 されるようになると、企 業がエ
39 FFG MONTHLY SURVEY Vol.96
ネルギー 市 場に参 画 する方 法は、従 来の発 電 、送 電 、
小売という枠組みを飛び越え、多方面に拡大する。
分 散 するエネルギー・リソースの統 合 を 担 うエネル
︵ ※ 1 ︶再 生 可 能エネルギー、蓄 電 池 、需 要 家などのエネルギー・リ
ソースを 通 信 技 術により集 約し、一つのエネルギー・リソー
スとして機 能させ、電 力 系 統への貢 献 など 新たな 価 値 を
創 出すること。
︵ ※ 2 ︶電 力の需 要と供 給 をリアルタイムに一 致させるために必
要な需 給 調 整 能 力を調 達するための市場 。
︵ ※ 3 ︶需 要 家 側が空 調や家 電 などの電 力の使 用 を 抑 制 するよ
う電 力 消 費パターンを変 化させること。
︵ ※ 4 ︶需 要 家が節 電した電 力 量︵ ネガワット︶
に対して、対 価 を
支 払う﹁ ネガワット取 引 ﹂のための市 場が2 0 1 7 年 度に
整 備される。
リソース提供
エネルギー・リソース・
アグリゲーター
•エネルギー・リソースをアグリゲートする
技術提供、解析アルゴリズム提供など
機能提供
対価
リソース提供
IT、通信
取引市場
対価
2017:ネガワット取引市場
2020:需給調整市場
50
ギー・リソース・アグリゲーター
︵以下、
アグリゲーター︶
出所:三菱総合研究所
3
[図2]エネルギー・リソースを活用したビジネス展開の概念図
MRI MONTHLY REVIEW
算も固まった。健 康 医 療 分 野では、電 子お薬 手 帳や医
度 改 修 も 進み、関 連 する準 備 事 業の2 0 1 7 年 度 予
創出され、最先端I D利用国への可能性が拓かれる。
れまでの不 安が払 拭されるとともに新たなビジネスが
生 活を便 利にする魅 力 的なサービスの充 実により 、こ
︵ ※ 1 ︶政 府は2 0 1 7 年 1 月に個 人 用サイト﹁マイナポータル﹂
を開 設 予 定 。
マイナンバーで役 所の利 用 履 歴が確 認でき
る。付 随して﹁ 電 子 私 書 箱 ﹂サービスも 計 画しており 、保
育 所への入 所や介 護サービスへの申 請 をオンラインで行っ
たり、書 類を受け取ったりできる。
療 画 像 管 理など、クラウドを利 用したオンラインサー
ビスも 出 始めている 。政 府は、健 康 情 報や個 人のネッ
ト通 販の購 買 履 歴などを一括 管 理する﹁ 情 報 銀 行 ﹂の
仕 組みを検 討しており 、
マイナンバーカードは、
﹁情報
銀 行 ﹂から 大 切 な 自 分の情 報 を 引 き 出 して安 全に使
うための﹁ 鍵 ﹂となる。この鍵が、服 薬や健 康 状 態 管 理
トしたドイツでは3,
0 0 0 万 枚 以 上が配 布 済みであ
[図]新たなインフラがデジタル社会の豊かな生活サービス利用を可能にする
などの日 常 的なヘルスケアから、再 生 医 療や遺 伝 子 治
療などの先 進 医療まで、本格 的な総合サービスを実 現
する。
8,
0 0 0 万 枚の配 布 を 目 指 している 。しかし 、活 用
る 。サービスには 政 府への登 録 が 必 要 だが 、すでに保
り 、着 実に普 及しているようだ。日 本でも 全 国 民が利
マイナンバーカードによる公的個人認証基盤
(デジタル社会生活の新インフラ)
すでに実 施されている住 民 票の写しをコンビニで取
得できるサービスに加え、ネットショッピング、チケット
レス、防 災や避 難 情 報の確 認などはサービス実 証まで
済んだ。子 育てや介 護などで官 民 連 携サービスの要と
なる﹁マイナポータル﹂と 電 子 私 書 箱︵ ※ 1 ︶
の実 証 も
今 年 度 中に行われる。政 府 機 関では職 員 証としての活
用が始まっているし、企 業でも社 員 証として入 退 管 理
場 面はまだ少なく、身 分 証 明 書として使われている程
険 、銀 行 、モバイルなど
とした不安感を抱いているのが現状だろう。
用 する健 康 保 険 事 業への適 用で、
マイナンバーカード
のサービスが 登 録 されてお
度だ。国 民も企 業もマイナンバーカードの利 用に漠 然
そんな中 、2 0 1 8 年 度からマイナンバーカードに
金融
医療
からデータベースへのアクセス管 理 、社 会 保 険や税 務の
各 種 申 請 など 、
ワンストップサービス化 を 目 指 すとこ
月からe I D︵ 電 子 身 分 証 ︶がスター
ろが出てきている。
●魅力的なサービスの充実で不安を払拭し、最先端ID利用国へ。
マイナンバーカードの配 布は、現 在 1 ,
000万枚
●健康保険証としての活用が、新サービスの出現を一気に拡大する。
2010年
●マイナンバーカードは1,000万枚普及するも、利用には不安感が残る。
に達 し た ところであ り 、政 府 は 2 0 1 8 年 度 までに
企業・経営部門 中村 秀治
を使ったオンラインサービスが一気に拡 大するだろう。
出所:三菱総合研究所
マイナンバーカード
健康保険証への適用が
多様なサービスを創出
健 康 保 険 証の機 能が追 加 される。厚 生 労 働 省の法 制
37
エンター
テインメント
生涯学習
11
ショッピング
介護
【ICT】
40
FFG MONTHLY SURVEY Vol.96
MRI MONTHLY REVIEW
社会ICT事業本部 松崎 和賢
●工場の制御システムなどがサイバー攻撃の対象として狙われ始めている。
●指針への対応が国により義務化されたが、それにとどまらない対策も必要。
●「必要だから」ではなく「メリットがあるから」へ発想を転換。
ではいかない。指 針に基づいて対 策を具 体 化する場 合
しかし、制 御システムのセキュリティー対 策は一筋 縄
めていこうという発 想の転換が求められる。
要 だからという 理 由ではなく 、メリットがあるから 進
守るための対 策は、現 場の効 率 化にも寄 与する。必
日頃から行われている作 業や慣 習が役 立っている部 分
2.0
も、どこまでやれば良いのかの判 断が難しい。そもそも
害が目 立 ち始めている。工 場のラインがウイルスで止
も 少 なくない。セキュリティー 対 策の運 用の詳 細 を 明
[図]制御システムの脆弱性対策を進める上での課題
制 御システムは、一般の情 報システムと異なる。実 際に
稼 働 している 環 境 を 再 現 しづらく 、セキュリティー 対
策の検 証が困 難だ。さらに、現 業とセキュリティーの双
方を理 解できる人は少なく 、
コスト増となるため当 面
必 要ないと、現 場が判 断する場 合が多い。こうした背
景のもと、対 策の重 要 性を訴えるだけでは現 場の理 解
を得るのは難しい。
まるという話に加 え、ドイツの製 鉄 所では溶 鉱 炉 損 傷
文 化 することは攻 撃 者 を 利 するため、指 針や標 準 規
2.0
43.0
37.0
現 場の理 解 を 得る際のポイントは二つだ 。一つは現
場にもともとある目 標と連 動させることである。例 え
ば、サイバー攻 撃の検 知や対 策の有 効 性を監 査する際
が起きた。複 雑な装 置 群を稼 働させる制 御システムが
格 文 書に具 体 的に記 載 することはできない。その分 、
出所:情報処理推進機構「制御システムユーザ企業の実態調査報告書」2016年
に必 要なデータを、業 務や保 守の効 率 化にも活 用する
ことが挙 げられる。ちなみに、これらのデータは、熟 練
した保 守 要 員の不 足をデータ解 析で補 うという 現 在
の潮 流にも乗るものだろう。
もう一つは、目 標を達 成するための手 段の共 有 化を
確 認することである。サイバー攻 撃を防ぐには、セキュ
リティーベンダーの製 品やサービスを 調 達 することが
攻 撃を受けると、物 損や人 的 被 害 、事 業 停 止にまで直
現 場 が 中 身 を 通 常 業 務 と 連 動 させつつ、正 しく 認 識
イメージされやすいが、実 際には、現 場で安 全のために
結する。電 力 分 野では、政 府がサイバーセキュリティー
していることは、対 策を円 滑にする重 要なポイントと
なる。
に関する規 定を整 備し、先 行して定められていた指 針
近年、工場や発電所がサイバー攻撃の対象となる被
サイバー攻撃から
工場やインフラを守る
︵ガイドライン︶
の順守が義務化された。
41 FFG MONTHLY SURVEY Vol.96
●重要な課題である ●課題の一つである ●特に課題ではない ●無回答
2.0 2.0
84.0
12.0
その他
18.0
制御システムオーナー部門の理解不足
2.0
47.0
37.0
14.0
経営層の理解不足
2.0
23.0
2.0
10.0
2.0
17.0
50.0
2.0
16.0
59.0
16.0
ルールや手順が定まっていない
31.0
社内外の脆弱性対策の体制・人員の不整備
22.0
技術の習得が難しい
52.0
36.0
脆弱性対策にコストを要する(検証環境など)
2.0
60.0
22.0
15.0
42.0
53.0
脆弱性に関する情報がどこにあるかわからない 3.0
1.0
61.0
23.0
リスクの見積りが難しい
2.0
24.0
51.0
23.0
経営リスク
48.0
28.0
脆弱性対策を適用できない
100(%)
80
60
40
20
0
(n=100)
【セキュリティー】
MRI MONTHLY REVIEW
∼
政策・経済研究センター 佐野 紳也
%に達 した 。一般 的 な 就 業パターンは、 歳で
歳 男 性の就 業 率が大 きく 上 昇し、2 0 1 5
69
働 く 理 由 は 生 き がい と 社 会 参 加
歳 以 上を対 象にした全 国 調 査︵ ※ 1 ︶
によれば、働
く理 由は﹁ 経 済 上の理 由︵ ・1 % ︶﹂
﹁ 生きがい、社 会
参 加のため
︵ ・7 % ︶﹂
﹁ 健 康 上の理 由︵ ・2 % ︶﹂と
∼
歳 以 上の継 続 雇 用 制
歳 男 性の就 業 率は今 後も上 昇していく 傾 向
にあるが 、半 数の大 企 業では
度 がない︵ ※ 3 ︶
。彼らが 活 躍 し 、生 活 も 楽 しめるよう
な就 業制度を整備していくべきだろう。
74
44
なっている。高 齢になるにつれ﹁ 経 済 上の理 由 ﹂は低 下
︵ ※ 1 ︶厚 生 労 働 省﹁ 平 成 年 版 厚 生 労 働 白 書 ﹂ ページ。
︵※2︶
三 菱 総 合 研 究 所﹁ 生 活 者 市 場 予 測 システム
︵ m i f ︶﹂
2016年6月調査。
︵ ※ 3 ︶労 働 政 策 研 究・研 修 機 構﹁ 高 年 齢 者の雇 用に関する調 査
︵企業調査︶
﹂2016年6月。
45
し、
﹁生きがい、社会参加のため﹂
﹁健康上の理由﹂が増
歳 男 性の価 値 観︵ ※ 2 ︶
を 見ると 、就 業 者 は
46
加する。 ∼ 歳で両者は逆転する。この年齢層は主に
∼
65
47
﹁生きがい、社会参加のため﹂に働いていると見られる。
﹁ 新たなアイデアを考えたい﹂
﹁ 他 人が必 要としている
ことに対 応したい﹂
﹁ 周 囲の人を助けたい、面 倒をみた
い﹂と 考 える 割 合 が 高い。自 立 、慈 善の価 値 観 をもつ
者 が 働いていることがうかがえる。一方 、非 就 業 者は
出所:総務省「労働力調査」
より三菱総合研究所作成
2015(年)
2014
2013
2012
﹁ 人 生を楽しみたい﹂
﹁ 気ままな人 生をしたい﹂という
49
快 楽 主 義の価 値 観 をもち 、残 りの人 生 を 束 縛 されず
歳 男 性 就 業 者 ﹂の生 活 行 動 を 分 析 すると
ンにお金をかける。インターネットやスマートフォンも
注:2011年は東日本大震災のため、推定値。
28
49
50
に楽しみたいようだ。
∼
就 業 環 境の整 備 が 必 要
﹁
﹁クール・シニア﹂と呼ぶべき特 徴をもつ︵ ※ 2 ︶
。都 市 部
の年 金 支 給 開 始とともに引 退すると考えられている。
使いこなす。健 康を気にするものの、運 動 不 足で、サプ
に居 住 し 、食 事・飲 酒では雰 囲 気 を 重 視 し 、
ファッショ
だが、2 0 1 5 年の ∼ 歳 男 性︵ほぼ団 塊 世 代に相
51
51
23
した 高 品 質な消 費 財・サービス、健 康 関 連サービスが
有 望だ。
52
38
69
69
52
(%)
53
65
リに頼りがちである。彼らを対 象としたネットを活 用
69
% ︶と比 較すると約 5ポイント高く
当 ︶は半 分 以 上が働いており 、2 0 1 0 年の ∼
男 性の就 業 率︵
なっている︵図︶
。
65
69
65
[図]65∼69歳男性の就業率
68
40
65
歳
定 年となり 、その後 再 雇 用で就 業を継 続し、 ∼ 歳
年に
52%
69
69
65∼69歳男性の
就業率
65
2011
2010
43
65
65
【数字は語る】
47
46
47
47
48
63
60
65
52
42
FFG MONTHLY SURVEY Vol.96