寄 稿

寄 稿
三菱総合研究所
FEBRUARY.2017
【巻頭言】
イノベーションの波に乗る
【特 集】
社会課題はイノベーションの母
ビジネス型解決で持続可能な
21世紀社会を実現
【施設運営】
スタジアム・アリーナ改革で
スポーツ産業を活性化
【海外戦略】
ベトナム自動車産業に
日系企業の出番はあるか
【雇 用】
AI・ロボット・IoEが変える
2030年の日本
【数字は語る】
42% サービス支出割合は横ばい
:原因はサービスの内部化
FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
36
MRI MONTHLY REVIEW
ノキア、
モトローラ、サムスンだったが、2 0 1 5 年では
サムスン、
アップル、
ファーウェイと変わっている。トップ
3を維 持しているのはサムスンのみで、
ノキア、
モトロー
ラともに携 帯 電 話 部 門はすでに売 却されてしまってい
る。この差はどこで出たか。i P hone 発 表 当 時 、サ
ムスンを除くメーカー各社は冷ややかな反応だった。サ
ムスンのみがi Phoneにイノベーションの芽を察 知
し、対 抗 機 種の検 討を開 始した。その後 、i Phone
が順 調に販 売 台 数 を 伸 ばしていったのに対して、追 従
月に携
できた 大 手メーカーはサムスンのみであり 、この結 果
として1社 生き残ったのである。
グーグルもいち 早 く 反 応 し 、2 0 0 7 年
アップルがi Phoneを発 表したのが2 0 0 7 年
対 応できるものが 生 き 残るのだ ﹂とダーウィンは言っ
﹁ 強い者 、頭の良い者が生き残るのではない。変 化に
一つであるといっても異論はないだろう。
文 化を生み出し続 けている。これは、イノベーションの
マートフォン上のいろいろなアプリケーションが新しい
が 出 荷 され 、先 進 国のみなら ず 途 上 国 まで 普 及 。ス
象 を 注 意 深 く 観 察 し 、イノベーションの兆 候 をつかん
波に乗ることは誰にでもできる。世 界で起こっている事
ことは誰でもできることではないが、イノベーションの
では正 しい意 見 だと 思 う 。イノベーションを 生み出 す
14 10
だときに素 早く行 動できるかが鍵になる。
スマートフォンは世 界 中で年 間
1 月 9 日 。今 年はi P hone
周 年にあたる。今や
ある。
は、
ほとんど早期にこのアライアンスに参加した企業で
ン 市 場で 大 き なシェアを 占 めるアップル以 外の 会 社
結 集してi P honeに対 抗した。現 在 、
スマートフォ
カーやサムスンに加 えて 新 興の 端 末メーカー な ど を
﹁ Open Handset Alliance
﹂を 設 立 した 。ここで、
Android を 無 償 提 供 するとともに、チップメー
帯 電 話 用 O Sの An droid をベースに規 格 団 体
11
たとされている。その真 偽は別にして、ビジネスの世 界
常務研究理事 森 義博
億 台︵ 2 0 1 5 年 ︶
イノベーションの波に乗る
2 0 0 7 年 当 時 、携 帯 電 話の世 界シェアトップ3は
37 FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
【巻頭言】
MRI MONTHLY REVIEW
もっとも 、解 決 すべき 社 会 課 題 もまた 多 様 化・複 雑
化 している。社 会・制 度 など 技 術 だけでは解 決できな
課 題であ り 、そ れは 世 界 全 体の 課 題でも ある 。 世
紀 、世 界 人口1 0 0 億 人の時 代を展 望し、リソースの
界もある。だからこそ、既成概念にとらわれないスター
い要 素もあり、また私 企 業として取り得るリスクの限
多 様な要 素をもつ﹁ 質 ﹂
︵=QOL︶
の改 善を目 指す。
トアップの発 想や技 術 と大 企 業の事 業 実 現 力 を 組み
利用 効 率を飛 躍 的に高め、すべての国で﹁ 量 ﹂の充足と
かけがえのない地 球 環 境を維 持し持 続 可 能な社 会の
合 わせ 、さらには規 制 改 革 や 社 会の受 容 性の検 証 な
山 積 する社 会 課 題 を 列 挙し
会課 題解決への有効な手 法となると考えられる。
ど、産 官 学 連 携による﹁オープンイノベーション﹂が社
実 現に向 け 、複 雑 な 社 会 課 題の解 決に知 恵 を 絞 り 汗
を流すことが、人 類共 通のテーマとなる。
知 識 、イノベーション、ビジ ネスの組み合 わせ
従 来 、社 会 課 題の解 決は政 府の責 任と意 識され、多
が財 政 困 難 と 高 齢 化の時 代 を 迎 え 、新 興 国でも一部
いる。2 0 1 5 年 、国 連で開 催された﹁ 持 続 可 能な開
こうした 問 題 認 識は国 際 的 な共 通 認 識 ともなって
総 合 的 に取 り 組 む
に減 速の兆 しがみえる一方 、資 源・地 球 環 境への配 慮
発サミット﹂で採 択 された﹁ 持 続 可 能な開 発のための
画 期 的︵ 破 壊 的 ︶なイノベーションが次々と生まれてい
ボティクスなどの高 度 化により 、従 来の想 像を超 える
ストのデータ処 理 能 力 とこれに裏づけられた A I 、
ロ
を中 心に画 期 的な革 新が続いている。大 量・高 速・低コ
幸い、解 決の原 動 力となる技 術 面では、I C T 分 野
知恵・知 識を出 発点とすべきである。
SDGsの大きな特 徴は、
﹁ 民 間 企 業の活 動・投 資・
祉の促進など のエリアの開発目標が掲げられている。
言および貧困の解消、食糧安全保障・栄養改善、健康・福
めぐる格差や不平などを是正するための行動として、宣
続可能な水準にまで抑えつつ、資源や機会、人権などを
象としている。そこには、経済活動による環境負荷を持
標︵ SDGs : Sustainable Development Goals
︶﹂は、
﹁先進国を含む世界全体の、経済・社会のあり方﹂を対
2030アジェンダ﹂の中核となる﹁持続可能な開発目
る。社 会 課 題の解 決にも 、そ うした 新 技 術 を 起 点に、
イノベーションは、生 産 性および包 摂 的な経 済 成 長と
世 紀 型の解 決 モ デルが 必 要
世 紀の工業 化と経 済 成 長により豊かな社 会と長
指 針 として、S D Gs を 積 極 的に使いこなすことは、
17
世 紀の課 題 解 決は、無 限の持 続 性と発 展 性 を 備 えた
ビジネスとして成 立・持 続できるモデルにより 民 間セ
21
持 続 可 能 な 社 会 の 実 現 には
寿 を 享 受 した 先 進 諸 国は、成 長 から 成 熟の局 面に移
雇 用 創 出 を 生み出 していく 上で重 要 な 鍵である ﹂と
ど有 限の物 量に依 存するモデルが限 界に達した今 、
の必 要 性はますます 高まる。モノ、カネ、
エネルギーな
くの資 金と資 源が投 入されてきた。しかし、先 進 諸 国
2
クターの企 業 家 精 神 とスピードを 最 大 限 引 き 出 すの
21
21
行し、地球温暖化、少子高齢化などが切実な問題とな
●課題解決から新事業が生まれ育つ「エコシステム」を日本にも実現しよう。
したことにある。持 続 可 能 なグローバル社 会 創 出への
●持続可能な21世紀社会を産官学連携とオープンイノベーションで共創。
が合 理 的である。政 府・公 共 部 門はそのサポートに徹
●複雑化する社会課題は「知識」
「イノベーション」
「ビジネス」で解決を図る。
りつつある。新 興 諸 国は、人口爆 発と経 済 成 長に加 え
ビジネス型解決で持続可能な
21世紀社会を実現
するのがよい。
社会課題はイノベーションの母
て環境保全とも調和を図りつつ貧困から脱することが
【特 集】
1
20
38
FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
MRI MONTHLY REVIEW
〝 I N C F 〟
では、世 界 共 通の社 会 課 題の中で、わが
〝I NCF〟︶﹂の構想を提唱した。
ム = 未 来 共 創 イ ノベー ション ネットワ ー ク︵ 以 下 、
用 して解 決 策 を 共 創・実 現 するためのプラットフォー
社 会 課 題を整 理し、革 新 的 技 術とイノベーションを活
三 菱 総 合 研 究 所も、昨 年 6 月 、
﹁ 山 積する国 内 外の
リーダーが増えている。
企 業 活 動においてもメリットになると考 えるビジネス
それらはイノベーションの糸口でもある。ウーバーがサ
ない移 動 難 民など、深 刻な問 題を発 生させているが、
故の増 加 、新 興 国の渋 滞・環 境 問 題 、移 動 手 段をもた
資 源 、環 境 、安 全 面の外 部 不 経 済が大きい上 、交 通 事
自 動 車に依 存している。豊かさの象 徴である自 動 車は
先 進 国では、モ ビ リ ティー = 移 動 手 段の約 8 割 が
じて提 供することが求められる。
求められる能 力を身につけるための教 育を、生 涯を通
その確保・生産に向けた技術開発などが急務である。
の保 護 などにより 、急 速に不 足 することが予 想 され、
性たんぱく質は飼 料の穀 物 供 給 量の制 約や海 洋 資 源
め、食糧や水の確保は世界的な課題である。特に、動物
新 興 国・途 上 国を中心にこれからも人口は増 加するた
最 後に水・食 糧の問 題である。地 球レベルで考えれば
渋 滞 があったからだというのが 定 説 だ 。また 、E Cや
ンフランシスコから生まれたのは、タクシー不 足と交 通
育 、モビリティー 、
エネルギー・環 境 、防 災 、水・食 糧 を
宅 配サービスの需 要 増に対 応 するため、大 都 市 圏・地
国が率 先して取り組むべき課 題として、ウェルネス、教
項 目も参 考にし
持・Q O L 向 上 と 医 療 費の削 減 を 同 時に達 成 するこ
スにある。高 齢 者に限らず 、現 役 世 代も含めた健 康 維
社 会に突き進む一方 、医 療 費 負 担も世 界のトップクラ
まず、ウェルネス。日本は世 界のトップを切って高 齢
考慮して、当面 、
この6項 目に絞り込んだ︵図1︶
。
パクトの大 きさ 、ビジネスとしての成 立 可 能 性などを
つつ、日 本の経 験の活 用 可 能 性 、課 題 解 決によるイン
やかである。また、資 源 循 環 社 会の構 築は持 続 可 能 社
る。しかし、各 国の利 害が対 立し、その歩みは極めて緩
について国 際 的 協 調に向けた取り組みが進められてい
再 生 可 能エネルギーへの転 換や、徹 底 的な省エネなど
題である。従 来の化 石 燃 料 依 存からの脱 却を目 指し、
エネルギ ー・環 境 問 題は、国を超 えた地 球 規 模の課
システム構 築も重 要な課 題となっている。
方 都 市・過 疎 地 それぞれの状 況に応 じた 高 効 率 物 流
すべての人が災害から
生命を守れる社会
取り上げることとした。SDGsの
とが喫 緊の社 会 課 題となっている。世 界 各 国でもこれ
ネスによる解 決にも期 待がかかる。
会の必 要 条 件である。この分 野では国 家レベルの取り
防災には、予防、事前準備、応急対応、復旧・復興の四
から日 本を追って高 齢 化が進むことを考 えれば、日 本
つの局面がある。このうち、予防や復旧・復興は一般にイ
組みのほか、
エコビジネスも 盛んに行われており 、ビジ
日 本の教 育 水 準は、O E C D 諸 国 を 中 心に実 施 さ
ンフラ整備を伴うことが多く、
コストや時間がかかるこ
とが問題であった。これからは、イノベーションの余地が
出所:三菱総合研究所
がこのウェルネス分 野で課 題 解 決の糸口を見つけるこ
れた 調 査によると 、科 学リテラシーが世 界のトップク
との意義は大きい。
世 紀の工 業 社 会に対 応したも
の。A Iをはじめ新 技 術を利 用して、個 人の習 熟 度や
大きい事 前 準 備や応 急 対 応を工夫して人 的 被 害を最
ラスであるが、これは
能 力に合った教 育を効 率 的に提 供する一方で、
コミュニ
小化し、生活環境を早急に確保することが重要である。
防災
水・食糧
すべての人に安全・安心な
食糧が行きわたる社会
持続可能社会
すべての人がクリーンで持続
可能なエネルギーを使える社会
豊かに暮らせる
エネルギー・環境
すべての人が社会に
貢献する力を得られる社会
100億人が
すべての人がクリーンで
自由・安全に移動できる社会
教育
モビリティー
17
ケーション力 、協 調 性 、協 働 力 などこれからの社 会で
39 FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
20
[図1]INCFが目指す未来の社会イメージ:100億人が豊かに暮らせる持続可能社会
ウェルネス
すべての人が健康で
生き生きと輝く社会
MRI MONTHLY REVIEW
ビ ジ ネスアイ デアコンテスト
社会課題解決から新事業が生まれ育つ
ネスによる解決策を創り出すチャンスととらえることが
するさまざまな社会課題も、
イノベーションを生み、
ビジ
だ。睡 眠 改 善は広く認 知された社 会 課 題であり、日本
善 ﹂が選 ばれ、
﹁ 大 気 汚 染・感 染 症 対 策 ﹂がこれに次い
最 優 秀 賞には﹁ 体 内 時 計 の 可 視 化による 睡 眠 改
有識者5名による審査を経て受賞者を決定した。
術 的 先 進 性 などの観 点から評 価 し 、最 終 的に国 内 外
さ 、社 会へのインパクト、ビジネスとしての実 現 性 、技
果 、約 1 0 0 件の熱 心な応 募を得た。アイデアの斬 新
トアップ企 業などからビジネスアイデアを募 集した結
も 大 きい﹁ウェルネス﹂をテーマとして提 示 し 、スター
記テーマの中でも最も緊急度が高く社会的インパクト
スアイデアコンテスト2 0 1 6 ﹂を 試 行 開 催 した 。前
﹁ビジネ
先ごろ、当 社は、〝 I N C F 〟発 足に先 駆け、
さなアイデアを大きな社 会 課 題 解 決に結びつけていく
加 され充 実 するのがイノベーションの特 徴である 。小
こうしたプロセスの中で新 たな発 見 、アイデアが追
いくことも〝 IN CF 〟
の視 野に入れている︵図2︶
。
本調 達・M& A 支 援などの面から企 業として育 成して
い。また、起 業 、
スタートアップを支 援し、経 営 戦 略・資
証 実 験 、規 制 緩 和の 働 き かけのプロセスが 欠 かせな
ネスとして成 立させるには、プランの具 体 化・改 良 、実
アないし構 想レベルのものが多い。これを実 用 化しビジ
ではあるが、そこから得られるのは文 字 どおりアイデ
は、短 期 間で的を絞ったアイデアを発 掘できる仕 組み
だ けではない。社 会 課 題 を 起 点 と するアイデア 募 集
〝 I N C F 〟
の活 動は、ビジネスアイデアコンテスト
通じ、微力ながら当社もその一翼を担いたいと考える。
の活動を
目指すべき一つの方向ではないか。〝INCF〟
課題解決先進国の実力を世界に示すことが、わが国の
できるだろう。こうした取り組みを出発点に、成熟した
エコシステムの実現を目指す
では 睡 眠 で 休 養 が 十 分 に 取 れていない 人 の 割 合 は
倍 以 上 ︶。このよ
万人以上が大気汚染を主因として亡くなっているとの
も 、地 球 規 模の社 会 課 題 だ 。全 世 界では年 間 7 0 0
︵ 厚 生 労 働 省 ︶も ある 。大 気 汚 染 対 策 や 感 染 症 予 防
造 改 革 を 促 していく た めには 、少 数 精 鋭 の 人 材 、ス
フォーム︶が求められる。また 、産 業 界の新 陳 代 謝・構
ベー ション = 協 働・共 創 す る 場 と 仕 組 み︵ プ ラット
や業 界の発 想 、個 別 企 業の限 界を超えるオープンイノ
募れば、インパクトの大きいビジネスアイデアを発 掘で
うに、テーマ= 解 決すべき社 会 課 題を明 確に提 示して
年、
シリコンバレー発のグローバル企 業の躍 進を支えて
ヤーの協 働・共 創の連 鎖︵エコシステム︶が 必 要 だ 。近
タートアップ・ベンチャー 企 業 を 育てる 多 様 な プレー
調 査︵ W H O ︶もある︵タバコ被 害の
きることが 確 認できた 。今 後 、大 企 業 との連 携・協 働
いるのも、
この地 域で長 年 築かれてきたエコシステムに
負うところが大きい。
ビジネスとしての成功
持続的な社会課題解決
スモールスタート・
リーンスタートアップ
(解決策の有効性検証)
PoC
ビジネスプラン
検討
解決アイデアの
募集・評価
適切な社会課題の
設定
出 口
育 成
発 掘
社会的変革
イノベーション
革新的技術
10
などを通じ、早 期に事 業 化されるものも出てくるかも
しれない。
過 去 、わが国は、国 土や資 源の制 約を克 服し多くの
課 題 を 解 決 してきた 。プラス思 考に立てば、今 、直 面
出所:三菱総合研究所
ため、産 官 学を交 え 複 数の関 係 者が、現 行 制 度・規 制
4
% 、その 比 率 は 年々有 意に増 加 しているとの 調 査
2 0 1 6の成 果
3
20
[図2]社会問題を解決する仕組みの例(未来共創イノベーションネットワーク)
ミッションを実現する活動
1
世界の「人」と「知」を集めてネットワーク化し、社会課題解決への取り組みを加速します
2
アイデア×革新的技術×ビジネスモデルを最適に組み合わせ、オープンイノベーションを促進します
3
社会的障壁を低くする取り組みを推進、共創による社会実装を目指します
イノベーションは、ある日偶然に起こるものではありません。INCFでは、イノベーションを革新的な技術を用いて
社会の課題解決・変革に結びつけるプロセス・組織的活動ととらえ、その実現を図ります。
ビジネスによる解決のプロセス
40
FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
MRI MONTHLY REVIEW
▶
スポーツツーリズムなど
1.4
3.7
4.9
⑤IoT活用
▶
施設、サービスのIT化進展とIoT導入
ー
0.5
1.1
⑥スポーツ用品
▶
スポーツ実施率向上策、健康経営促進など
1.7
2.9
3.9
5.5
10.9
15.2
として、収 益 性および観 戦 者の視 点から改 革を図るも
のである。
※1:日本政策投資銀行「2020年を契機としたスポーツ産業の発展可能性および企業によるスポーツ支援」
に基づく。
収 益 性の視 点からは、
﹁ 多 様 な 活 用 ﹂がポイントと
出所:スポーツ庁・経済産業省「スポーツ未来開拓会議中間報告」2016年6月
なる 。黒 字 経 営 を 実 現 しているスポ ーツ 施 設 は 、ス
1.1
④周辺産業
ポーツ以 外に、音 楽コンサート、展 示 会 などさまざま
0.7
▶
なイベントを 誘 致 し 、収 益 性 を 高めている 。最 近のア
0.3
③プロスポーツ
リーナの整 備 計 画では、
ステージ設 営のための大 型ト
興行収益拡大(観戦者数増加など)
大学スポーツなど
ラック搬 入 路を確保するなど、多 様な主 催 者の利 便 性
0.3
▶
に配 慮し、需要の取り込みを企 図するものもある。
0.1
②アマチュアスポーツ
さらに重 要となるのは、
﹁ 観 戦 者の視 点 ﹂である。収
(主な増要因)
(兆円)
[表]日本のスポーツ市場規模の拡大について(試算)
2025年
2020年
※1
スポーツ産業の活性化の主な政策
益 性が高 まっても 、スポーツ施 設で四 六時 中 音 楽コン
ー
スタジアムを核とした街づくり
サートが 開 催 されていては、本 末 転 倒 だ 。スポーツを
3.8
▶
観 戦 する 人々にとって魅 力 的 な 施 設 整 備 を 行 うこと
3.0
①スタジアム・アリーナ
で、
スポーツ観 戦のコンテンツとしての価 値が高まり 、
に家 族で出 掛け 、おのおのスポーツや映 画を楽しんだ
2.1
合 計
ひいてはそれが施 設の収 益 性 向 上にもつながる。
例 え ば、観 戦 中に手 元のスマートフォンで飲み物 を
スポーツ庁と経 済 産 業 省は、
スポーツ産 業の活 性 化
後に、
レストランに集 合 して食 事 をするような楽 しみ
15 5.5
2012年
(主な政策分野)
注 文 したり 、気になった 場 面のリプレイをいつでも 専
門家の解説つきで見たり、自 分が好きな選 手だけを追
いかけるカメラの映 像を映すことができたらどうだろ
に向 けて﹁スポーツ未 来 開 拓 会 議 ﹂を 立ち上 げ 、 兆
先 進 技 術の活 用や施 設の複 合 化により、
スポーツ施
う。また、
スタジアムと映 画 館やレストランの複 合 施 設
2
円︵2012年︶
のスポーツ市場を2025年に .
兆 円に拡 大することを目 指すとした︵ 表 ︶。その実 現に
設 が 新 たな 観 戦スタイル、試 合 前 後 を 含 む 新 たな 楽
方ができたらどうだろうか。
向 けた 柱の一つが 、
﹁スタジアム・アリーナ 改 革 ﹂であ
しみ方を提 供できれば、集 客 力が高まり 、持 続 可 能な
●先進技術と施設の複合化で持続可能な運営とスポーツ産業の活性化を実現。
る。日本のスポーツ施 設は、赤 字 経 営の施 設が多く、
コ
●改革で重要なのは「観戦者の視点」に立った魅力的な施設の整備。
運 営が実 現する。それによりスポーツ産 業の活 性 化を
●スポーツ市場の拡大のため、国が「スタジアム・アリーナ改革」を推進中。
ストセンター化している。この認 識のもと、
スタジアム
ヘルスケア・ウェルネス事業本部 横田 匡俊
加速できるだろう。
スタジアム・アリーナ改革で
スポーツ産業を活性化
やアリーナをスポーツ産 業 活 性 化の核となるインフラ
41 FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
【施設運営】
MRI MONTHLY REVIEW
ベトナム自動車産業に
日系企業の出番はあるか
海外事業推進センター 櫻田 陽一
●ベトナム企業の生産体制強化に日系企業のアクションが求められている。
約
万 5,
0 0 0 台で、うち約
万 3,
0 0 0 台は国
と 高 く 、タイ 、
マレーシアなどのA S E A N 先 発 国に
の規 模も技 術レベルも将 来 需 要に対し十 分ではない。
カーが
ベトナムの国是である国内自動車産業育成に貢献でき
15
10
5
2015年
る。今まさに、日系企業のアクションが求められている。
続 く 有 望 市 場 として注 目 されている 。同 国の自 動 車
ここに日系 自 動 車 部 品メーカーのビジネス・チャンスが
20
産 車である。国 産 車は主 要 部 品 を 輸 入 し 国 内で組み
年比 .
5%増に達している。
A S E A Nではタイが 東 洋のデトロイトと 呼 ばれ
て 久 しい 。2 0 1 5 年 の 同 国 の 国 内 生 産 台 数 は 約
とベトナムの8 倍ほどで、第 三 国への
1 9 0 万 台︵※1︶
輸 出 拠 点として大きく発 展している。2 0 1 8 年には
A S E A N 自 由 貿 易 協 定に基づいて輸 入 完 成 車の関
税が撤 廃 される。関 税 漸 減の影 響で近 年 輸 入 車が増
えており、関 税 撤 廃 後のベトナム国 産 自 動 車 業 界が輸
入 完 成 車 との厳 しい価 格 競 争にさらされることは確
実である。さらにその先にはE Vや自 動 運 転などの新
産 業は、国 内の旺 盛な需 要を背 景に、堅 調な成 長が見
あり、進 出する余 地が残されている。
2015(年)
14
13
12
11
技術の普 及による競 争激 化も予 想される。
このような状 況のもと、
ベトナム商 業 工 業 省は自 動
車を主 要 産 業と位 置づけ 、2 0 1 6 年 2 月に国 産 自
込 まれる。部 品が2 万 点 以 上に上る自 動 車 産 業の振
すでに進 出 済みおよび今 後 進 出する日 系 自 動 車 関
●生産台数 ●販売台数
(万台)
25
(単位:%)
注:国内販売台数には輸入完成車が含まれる。
動 車 産 業 振 興のための政 令﹁ 自 動 車 産 業 開 発 戦 略 ﹂
%を国 産
興は、関 連 産 業 が 多いことから一 国の経 済 成 長に最
連メーカーは、
ローカル企業への新技術を含めた技術移
出所:ASEAN Automotive Federation 2007∼2015
を 公 布した 。その中で2 0 3 5 年の自 動 車 国 内 生 産
台 数を1 5 0 万 台 強と見 積もり 、内 需の
車で賄うという政 策 目 標を掲げた。
も威 力を発 揮するといわれる。
ベトナム自 動 車工業 会
社ほどあるが、部 品 供 給を担うサプライヤー
現在、
ベトナムではローカル・外 資を含め自 動 車メー
80
転により、自動車の品質向上と生産コストが圧縮でき、
[図]ベトナムの国産自動車生産台数と国内販売台数の推移
︵ ※ 1 ︶ ASEAN Automotive Federation 2015
17
立て販 売するものを指し、全 体の約 7 割を占め、対 前
24
によると、2 0 1 5 年のベトナムの自 動 車 販 売 台 数は
ベトナムは2 0 0 0 年 以 降 、経 済 成 長 率が ∼ %
●ベトナム政府は2035年の国産車製造台数目標値を150万台強に設定。
7.8
10
09
08
07
2006
0
●2018年以降、ベトナム自動車産業は輸入完成車との競争にさらされる。
6.8
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
生産台数伸び率
ー
2.14
1.53
0.94
0.99
0.95
0.73
1.27
1.29
1.43
販売台数伸び率
ー
1.97
1.37
1.08
0.94
0.98
0.73
1.23
1.35
1.83
48
20
【海外戦略】
42
FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
MRI MONTHLY REVIEW
産 業 革 命による日 本の社 会・経 済への影 響を試 算した
当 社では、将 来シナリオ想 定に基づき 、この第 四 次
とで﹁ 革命﹂の果 実を最大限に享 受したい。
れない変 化を正しく恐れ、むしろ積 極 的に適 応するこ
[図]第四次産業革命の社会影響の5視点と2030年の社会シフト
(当社試算)
︵図︶
。機 械による﹁ 人 間の代 替 ﹂により、2 0 3 0 年ま
でに商 業 、建 設 業 、各 産 業 分 野のホワイトカラーなど
で日 本の 従 来 雇 用 は 7 4 0 万 人 減 少 する 。一 方で 、
﹁ 人 間 と 機 械の協 調 ﹂
﹁ 人 間の能 力 拡 張 ﹂
﹁ 人 間の活
動 空 間 拡 大 ﹂などの新たな領 域で、A I・ロボットなど
のシステム創 造に関わる技 術 者 、それを活 用した新た
な製 品・サービス提 供の従 事 者など、5 0 0 万 人の新
知識産業、対人サービスへのシフト
必要な人的資源の転換支援
■
たな雇 用が創 出される。
■
失われる職 から 創 出 される職への雇 用 転 換 が 実 現
できれば、雇 用喪 失は差し引き2 40 万 人にとどまる
のに対して、転 換が進まなければ7 4 0 万 人がそのま
既存産業が生まれ変わる転機に
新産業の拡大
(記憶産業、バーチャル・リアリティーなど)
・災害・テロなどの拡大
・新技術自身のリスク
・守るべきものの変化
■
・空間距離短縮
・遊休リソース活用
・仮想空間
創出される新たな付加価値50兆円
⑤新たなリスクへの対応
■
④人間の活動空間拡大
ま雇 用 喪 失となり 、大きな社 会 影 響は避けられない。
・身体
・感覚
・思考
一方 、前 者であれば、影 響は比 較 的 小 さく 、今 後 人口
減 少・高 齢 化 進 展で懸 念 される労 働 力 不 足の緩 和 要
因と捉えることもできる。
では、円 滑な雇 用 転 換はどう 実 現するのか。よき手
本となるのは、社 会 保 障と職 業 訓 練の組み合わせで、
より 安 心して転 職できる社 会 を 実 現 した 欧 州のフレ
キシキュリティー施 策であろう。だが、第四次 産 業 革 命
えば採 用 通 年 化やワークシェアなどによる多 様な雇 用
教 育 からの教 育 改 革 なども 重 要 となる 。雇 用の受 け
数 兆 個のセンサーにより 世 界がつながる
E v e r y t h i n、
gす な わ ち Io E の 時 代 で あ る 。セン
サー 、ウエアラブル機 器 、自 動 運 転 車 などあらゆるも
皿 となる 新 たな 産 業 を 育てるためには、
ベンチャーや
機 会の創 出 、新 技 術 を 使いこなす 力 を 養 成 する基 礎
のから 集められるデータが 、新 たなビジネスやサービ
Internet of
A I・ロボットなどの新 技 術による社 会と産 業の変
●新規に創出される雇用への転換を円滑に進め、豊かな末来につなげよう。
への対 応には、それにとどまら ず 社 会 全 体の変 革 、例
●2030年までに500万人の新規雇用創造と740万人の既存雇用喪失の可能性。
革、
いわゆる﹁ 第 四 次 産 業 革 命 ﹂が進 行している。次は
●AI・ロボット・IoEという三大技術による「第四次産業革命」が進行中。
中 小 企 業が大 企 業と対 等に活 躍できるオープン・ネッ
43 FFG MONTHLY SURVEY Vol.98
政策・経済研究センター 白戸 智
スを 生み出 し、その結 果 、雇 用や働 き 方 などわれわれ
トワーク型の産 業 構 造への転 換 も 欠かせない。避けら
出所:三菱総合研究所
AI・ロボット・I oEが変える
2030年の日本
の生活を一変させる。
・協調作業
・協調分析
・チームワーク
新規雇用500万人の創出
③人間の能力拡張
■
ロボット
AI
既存雇用740万人の喪失
①人間の代替
雇用影響はホワイトカラーにも
農業、建設などは労働者不足が改善
■
・無人化
・自動化
・過酷労働代替
雇用▲240万人
(<人口減少・高齢化による労働力減)
②人間と機械の協調
IoE
【雇 用】
MRI MONTHLY REVIEW
のサービスを 実 現 することだ 。食 料 支 出︵ ※ 1 ︶
でみる
つまり 、出 来 合いのサービスを利 用せずに自 前で同 等
摘 されている。簡 便にニーズを 満 たすことで消 費 者の
日本ではかねてよりサービス業の生 産 性の低さが指
%である。旅 行 代 理 店を通さず、自ら宿
︵ ※ 1 ︶総 務省﹁ 家 計 調 査 ﹂。
︵ ※ 2 ︶2 01 6 年 月 日付日本 経 済 新 聞 朝 刊 。
緩和といった効果も期待できるだろう。
Q O Lが向 上するとともに、サービス業の労 働 力 不 足
%、
と、2 0 1 0∼2 0 1 5 年における調 理 食 品︵ 中 食 ︶
% 、調 理 食 品 以 外は
%である。サービスの外 食 支 出がモノの中 食
支 出の年 平 均 増 加 率は
外 食は
支 出を下 回っている。昨 年 注 目された﹁ 家ナカ﹂クリス
マスもその一例だ。外 食するより、自 宅を飾り付け、
フ
ライドチキンやケーキなどを買って家 族や友 人と食べ
る人が増えている︵※2︶
。
旅 行 支 出︵ ※ 1 ︶
も、2 0 1 0∼2 0 1 5 年のパック
旅 行の年 平 均 増 加 率が▲ %であるのに対し、宿 泊 料
の増 加 率は
42
42
泊施設や交通手段を手配したり、
マイカーを利用する
割合が増えており、個人旅行へのシフトが進んでいる。
40
41
サー ビスの内 部 化 が 新 た な 市 場 を 創 出 す る
サービスの内 部 化は周 辺 産 業の拡 大にも 寄 与 して
いる 。高 度 なサービスを 提 供 する 家 電︵ホームベーカ
ビスが充 実している。また健 康 分 野では、
マッサージ器
出所:消費者庁「平成28年度版消費者白書」
リー、家 庭 用の製 麺 機やエスプレッソマシンなど︶
の価
格 が 下 がり 、性 能 が 向 上 している 。オンラインでは料
最 近﹁モノ消 費からコト消 費へのシフト﹂という記 事
やマッサージチェアの利 用が進んでいる。人 間ドックの
理レシピサービスや国 内 外の交 通 機 関・宿 泊 予 約サー
を新聞などで目にする。これは物品の購入が減少し、体
代 替に、今 後は自 宅で測 定できる唾 液 、尿 、血 液 など
サ ー ビス 支 出 割 合 の 増 加 傾 向 が 止 ま る
験 型のサービス支 出が増 加することを意 味するが、そ
の検 査 機 器・キットの利 用 も 広がるだろう 。美 容 分 野
30
37
10
の割合は2010年以降、 %と横ばいである︵図︶
。
80
1.1
では、
エステティックサロンに代わり 、美 顔 器 、美 顔ロー
90
1.0
背 景には 、サー ビスの 成 熟 化︵ 普 及 率 が 上 限 近 く
50
33
20
政策・経済研究センター 佐野 紳也
ラー、家 庭 用脱 毛 器などを使 用する人が増えている。
1980
1990
2000
2010
2015(年)
注:1.総務省「家計調査」
により作成。
2.2人以上の世帯
(農林漁家世帯を除く)
の一世帯当たり支出の構成比。
3.財・サービス支出計には、
「こづかい」
「贈与金」
「他の交際費」
および「仕送り金」
は含まれていない。
0
15
60
:原因はサービスの内部化
になり 成 長 率が低い状 態 ︶
に加 え 、
﹁ 内 部 化 ﹂がある。
[図]サービス支出割合は2010年以降横ばい
2.4
1.7
12
59
2.8
58
63
58
67
70
サービス支出割合は横ばい
42
●サービス ●財
(商品)
(%)
100
【数字は語る】
42%
44
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