マルチセルを用いた双方向単相中圧Solid-State

平成 28 年度電気関係学会北陸支部連合大会
マルチセルを用いた双方向単相中圧 Solid-State Transformer
青柳
和樹・中西
俊貴・伊東
淳一
(長岡技術科学大学)
1. はじめに
中圧(6.6 kV)電力系統から各需要家への配電には一般
的に柱上変圧器が用いられるが,重量やサイズに課題が
ある(1)。そこで近年,絶縁と降圧機能を保持した上で,力
率改善や高調波抑制などの機能を付加した Solid-State
Transformer (SST)が研究されている(2)。SST は高周波でト
ランスを励磁するため,従来の変圧器と比較して大幅な
小型化が可能である。一方,従来の回路構成では,各回
路ユニットに設けられたコンデンサの電圧を一定にする
ことが前提であるため大容量のコンデンサが必要となり,
更なる小型化を阻む一因となっている。
本論文では,システムの小型化に向けた新たな単相
SST の回路構成および制御系を提案し,その動作をシミ
ュレーションにより検討したので報告する。
2Vin
N1

N 2 2mVout
······································ (1)
ここで,m はセルの段数,は変調率である。
図 2 に制御回路を示す。提案回路では,二次側のコン
デンサ電圧を一定に制御し,一次側の昇圧リアクトル Lb
に流れる電流の指令値を決定する。また,一次側に接続
されている各コンデンサの電圧制御は不要である。
3. シミュレーション結果
図 3 に一次側コンデンサ容量が 50 µF,セルの段数が
6 段の時の SST の双方向動作波形を示す。このとき,シ
ステムの定格容量は 10 kVA としている。
動作波形より,双方向動作が達成できていることが分
かる。さらに,両動作において歪みのない入力電流波形
を取得している。
一次側コンデンサ電圧については,各セルで平均値が
一致している。また,コンデンサの電圧にばらつきが生
じた場合でもいずれ,各セルの出力電圧の平均値は一致
する。これは,容量のばらつきや負荷の過渡現象によっ
Spfc11
Cs
Vin
6600 V
50Hz/60Hz
Spfc12
C1
50µF
fo=50kHz
N1 : N2
Ls
C2
Vout
5000µF 320V
10µF 1µH
Cell No. 2
Cell No. m
50Hz/60Hz operation
Fig. 1. Single-phase bidirectional multilevel SST
+
-
図 1 に回路構成を示す。提案回路では,高周波トラン
スの一次側に力率改善回路 (PFC)と LLC 共振型コンバ
ータを接続し,これらを 1 セルとして多段に積み重ねる。
また,システムの小型化のために一次側にある高圧コン
デンサ C1 は静電容量の小さいものを用いる。さらに,ト
ランスの漏れインダクタンス Ls とコンデンサ Cs の間で
直列共振させ,ターンオン・ターンオフ時にゼロ電流ス
イッチング (ZCS)を達成する。
トランスの巻数比 N は,一次側で常に昇圧動作をさせ
るために(1)式を満たすように設計する。
LLC
Lb
70mH
Vout*
2. 回路構成
N
Cell No. 1
PFC
PI
BEF
1
N
*
+
+
PI
-
-
*
ILb
Vd
1
Vc1
1
m
+
-
1
0
Spfc11
NOT
Spfc12
Vout
vin
ABS
1
Vin
1
Vcm
1
0
+
-
Spfcm1
NOT
Spfcm2
Fig. 2. Control circuit for bidirectional SST
10 ms
Input voltage vin [kV]
10
0
-10
THD=1.72%
Input current iin [A]
4
0
-4
Boost inductor voltage vLb [kV]
2
0
-2
Output sum voltage of each cell Veq [kV]
10
5
0
Primary side capacitor voltage VC1, VC2, VC3, VC4, VC5, VC6 [V]
1732
1728
1724
Output voltage (secondary side capacitor voltage) Vout [V]
321
320
319
THD=1.66%
(a) Power running
(b) Regeneration
Fig. 3. Operation waveform of bidirectional SST
(C1 = 50 μF and m = 6)
て一次側コンデンサの電圧がアンバランスしても,その
電圧に応じて各セルの出力電力が増減し,自動的に補正
されるためである。
二次側コンデンサ電圧については,平均値が指令値の
320 V に追従し,一次側コンデンサ容量が小さい場合で
も安定した動作が行えることを確認した。
今後は,実機実験による提案回路の動作検証を行う。
文
献
(1) 中西,伊東:JIASC2015, No. 1-29 (2015)
(2) Xu She et al.: IEEE Journal, Vol. 1, No. 3 (2013)