1立地条件2農林業の現況3目指すべき姿(PDF:274KB)

は
じ め に
県央地域は,県都水戸市近郊に広がる広大な平坦地,それを取り巻く水や森など豊かな
緑環境に恵まれ,さまざまな農林業が営まれています。
また,県央地域は,道路や鉄道網が東西南北に交わる交通の要衝であり,さらに常陸那
珂港や茨城空港が整備されるなど,交通網の充実がめざましく,水戸や笠間,大洗などの
観光資源とも連携した都市農村交流の活発化が期待されており,さらなる地域発展の可能
性が広がっています。
一方,農林業を取り巻く環境は,少子高齢化による食料消費の減少が見込まれるなか,
平成 27 年末にはTPPの大筋合意を見たことから,国内だけでなく,海外との産地間競争
の激化が想定され,他産地との差別化や一層の低コスト化,高付加価値化が必要となって
います。また,林業については,戦後,植林された人工林が木材資源として充実し,本格
的な利用期を迎えていますが,長期にわたる木材価格の低迷や採算性の悪化により,森林
所有者の経営意欲の減退・担い手の高齢化など,引き続き厳しい環境に置かれています。
そのような環境のなか,茨城県では,平成 15 年から「消費者のベストパートナーとなる
茨城農業」をめざした茨城農業改革に取り組み,平成 20 年には全国第2位の農業産出県の
地位を奪還するとともに,平成 23 年の東日本大震災・福島第一原発の放射能事故後も,早
急な復興を図り,全国第2位の地位を堅持してきました。
この茨城農業改革の強化,継続を図るため,県は平成 27 年度に,『人と産地が輝く,信
頼の「いばらきブランド」~消費者のベストパートナー茨城農業~』をスローガンに新た
な茨城農業改革大綱を策定し,農政の推進方向を打ち出すとともに,林業・木材産業の一
層の活性化と機能豊かな森林づくりの推進に向けて5カ年の新たな林業振興計画を策定し
ました。
そこで,当農林事務所では,茨城農業改革大綱や林業振興計画の主要テーマを踏まえ,
また,地域の農林業を取り巻く情勢を俯瞰して,平成 28 年度から 32 年度までの5カ年間
で取り組むべき農林業の課題を整理し,対応すべき方向と目指すべき目標,そのための施
策を示す「県央地域農林振興計画」をここに策定いたしました。
今後とも,この計画に基づき,関係機関と連携して,地域農林業の更なる発展に向けて
取り組んでまいりたいと考えておりますので,各位のご協力ご支援をよろしくお願いいた
します。
平成 28 年3月
茨城県県央農林事務所長
1
県央農林事務所管轄図
部 門 等
企画調整部門
経営・普及部門
土地改良部門
管内市町村
水戸市,笠間市,ひたちなか市,那珂市,小美玉市
茨城町,大洗町,城里町,東海村
水戸市,ひたちなか市,那珂市,小美玉市
茨城町,大洗町,東海村
水戸市,笠間市,ひたちなか市,小美玉市
茨城町,大洗町,城里町
笠間地域農業改良普及センター 笠間市,城里町
2
目
次
Ⅰ
立地条件
4
Ⅱ
農林業の概況
主要な農産物の生産状況
耕地面積
販売農家数
農業就業人口
新規就農者
森林面積
水田・畑の基盤整備状況
4
4
4
5
5
5
5
6
Ⅲ
目指すべき姿
6
1
2
3
4
5
6
7
Ⅳ
地域施策の展開方向
1 農林畜産物の生産振興
(1)園芸
ア 野菜
イ 果樹・花き・特用作物
(2)農産
(3)畜産
(4)林業
7
7
7
7
9
11
13
14
2 安全・安心への対応と生産を支える基盤づくり
(1)食の安全と環境に配慮した生産対策
ア 農畜産物の安全性確保
イ エコ農業の推進
(2)農地の集積・集約化と優良農地の確保
(3)水田・畑地の基盤整備
16
16
16
17
18
19
3 販売力強化と販路開拓
(1)ブランド力強化と販売促進
(2)6次産業化・農商工連携の推進
(3)輸出の促進
(4)食育の推進と県産農産物の消費拡大
20
20
22
23
24
4 経営体の確保・育成
(1)強い経営体の育成
(2)新規就農者等の確保・育成
(3)多様な経営体の確保・育成
25
25
26
28
5 魅力ある農村の創生
(1)地域資源を活用した農村の活性化
(2)ふるさとの風景と環境を守る取組の推進
ア 多面的機能の発揮促進と農村環境の整備
イ 鳥獣害対策の推進
29
29
30
30
31
Ⅴ
重点的取組
地域特産品と加工・業務用野菜の振興プロジェクトチーム
地域資源活用プロジェクトチーム
人づくり・農地集積プロジェクトチーム
水田農業・畜産の国際競争力強化プロジェクトチーム
32
32
35
37
39
Ⅵ
推進体制
42
Ⅶ
参考資料
44
1
2
3
4
3
Ⅰ
立地条件
県央地域は,県のほぼ中央部,久慈川と霞ヶ浦との間に広がる,水と緑に恵まれた自然豊かな
平坦地を中心に位置し,水戸市,笠間市,ひたちなか市,那珂市,小美玉市,茨城町,大洗町,
城里町,東海村の9市町村で構成され,面積は 1,145 ㎢と県土の約 19%,人口は 730,929 人と県
人口の約 25%となっています。
水田は大部分が久慈川,那珂川および涸沼川流域の沖積地,畑は洪積火山灰土の石岡台地と涸
沼台地,那珂台地に分布しています。
平均気温 13.6℃,年間降水量 1,354 ㎜で,海洋性気候の影響を受けて冬は温暖な条件にありま
す。
首都圏から 100 ㎞圏内にあり,鉄道は常磐線,水郡線,水戸線,ひたちなか海浜鉄道,大洗鹿
島線が通り,高速道路は常磐自動車道,北関東自動車道,東関東自動車道,東水戸道路が整備さ
れています。また,茨城空港や茨城港常陸那珂港区・大洗港区が整備されたことから,北関東地
域や北海道,関西,九州及び東アジアなど国内外との観光交流や物流の拡大が期待され,農産物
等の新たな販路を開拓するうえで恵まれた環境にあります。
Ⅱ
農林業の概況
1
主要な農産物の生産状況
県央地域の耕地面積及び総農家数は,県内の約2割を占めています。米麦を中心とした大規模
な土地利用型農業に加え,銘柄産地の指定を受けているにらや小ぎく,生産量日本一を誇るくりな
どの園芸,特産品のほしいも,酪農や採卵鶏等の畜産など,多種多様な農業が営まれています。
さらに,キャベツ等の加工・業務用野菜の契約栽培や,耕畜連携による飼料用稲(飼料用米,稲
WCS)の生産が増加しています。
北西部の中山間地域では,気候・風土などの地域性を活かして,食味にこだわった米や,特産
物の赤ねぎ等が生産されています。
2
耕地面積
耕地面積は,33,688ha で県全体の約2割を占め,その構成は水田が 16,732ha(49.7%),畑地
が 16,942ha(50.3%)となっています。一方,管内には 5,611ha の耕作放棄地があり,5年前と
比較して 1,097ha 増加している状況です。
4
(ha)
3
販売農家数
管内の販売農家は 12,491 戸で,5 年前に比べ 3,027 戸減少し,専業農家は,3,884 戸(31.1%),
兼業農家は 8,607 戸(68.9%),第1種兼業農家は 1,260 戸(10.1%),第2種兼業農家は 7,347
戸(58.8%)で,専業農家の割合は,県平均(29.5%)とほぼ同程度となっています。
4
農業就業人口(販売農家)
農業就業人口は,19,003 人(県全体の 21.2%)で,5年前に比べ 5,531 人減少しています。
また,70 歳以上の農業就業人口は 9,641 人で全体の 50.7%を占め,高齢化が進んでいます。
5
新規就農者
青年就農給付金制度を活用したUターンや新規参入等が増加しており,管内で年間 50 人程度
が新規に就農しています。
6
森林面積
森林面積は,約 30,000ha,林野率で 27%を占めており,県全体の 31%とほぼ同じ割合です。
所有形態別では,民有林 25,400ha,国有林 5,400ha で民有林の割合が高く(82%)
,その中でも
私有林が高い割合となっています。民有林のうち,山岳部を中心にスギ・ヒノキなどの人工林が
5
11,000ha あり,その中には,スギ・ヒノキの 11 年生から 45 年生まで,間伐などの森林整備を必
要とする森林が 3,600ha あります。
7
水田・畑の基盤整備状況
水田・畑の整備状況は,平成 26 年度末現在で約 10,000ha が完了しており,整備率は約 53%と
なっています※。
水田に対しては,低コスト化や生産性の向上を図るため,農地の集団化,ほ場の大区画化及び担
い手への農地の利用集積を一体的に図り,中干しや間断かんがい等きめ細かな水管理ができるよう
用排水施設整備や,高品質な米づくりや麦・大豆等の生産を可能とする汎用化を進めています。
また,畑地に対しては,消費者に高品質で安全な青果物を安定的に供給できる収益性の高い産地
の育成を図るため,道路・排水路等の面整備とともに,畑地かんがい施設の整備を総合的に実施し
ています。
※県央農林事務所土地改良部門管内の状況
Ⅲ
目指すべき姿(10年後を想定)
水田農業については,基盤整備事業や農地中間管理事業などにより,担い手への農地集積・集約
化が進み,経営規模の大きい効率的な営農が行われています。また,飼料用稲等の生産・活用を通
じた地域内の耕畜連携の取組が活発化するとともに,需要に応じた主食用米の生産が行われていま
す。
園芸については,ICT 等を活用したデータに基づく栽培管理が進み,高品質な農産物が生産され
ています。加工・業務用野菜は品質が向上し,生産量が増加するなど,実需者に信頼される産地と
なっています。ほしいも・くり産地においては,衛生管理の強化や品質向上,新商品開発等の6次
産業化の取組を通じて,ブランド力の強化が図られています。また,農業法人等への雇用就農が増
加するとともに,親元や法人から独立する者など若い経営者も育っています。
6