EU Indicators 欧州経済指標コメント：８月英国小売統計発表日：2016年9月15日(木) ～まぼろしの英衰退論～第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト田中理 03-5221-4527 ・８月の英国の小売売上数量（ガソリンスタンド含む）は前月比▲0.2％と小幅減。前月（同＋1.9％、改定前は同＋1.4％）に急伸した割に落ち込みは限定的。前月値が上方修正されたこともあり、国民投票後に予想外に水準を切り上げた小売売上は、８月もほぼ同水準を維持した。・内訳は、前月に力強い伸びを記録した衣料品店（７月：同＋6.1％→８月：同▲3.3％）や家庭用品店（同＋2.7％→同▲5.3％）が反動減に見舞われた。他方、百貨店・スーパー（同＋3.9％→同＋0.8％）が前月の急伸後も底堅い伸びを記録し、全体の計数を下支えした。生活必需品が中心の食料品店（同＋0.8％→同＋0.7％）やガソリンスタンド（同＋0.7％→同＋0.5％）も２ヶ月連続で増加した。・前月の小売好調は、夏季商戦時の温暖な天候や海外からの旅行客増加が後押しした。こうした上押し要因は今月も大きく損なわれず、反動減を相殺した模様。また、最近発表された雇用関連統計からは、企業の採用意欲がやや低下しているものの、足許の雇用環境にはまだその影響が現れていないことが確認される。ポンド安による輸入物価上昇の川下段階への価格転嫁も限定的で、家計の実質購買力も今のところ殆ど損なわれていない。英国のＥＵ離脱ショックは、英国景気を鋭角的に下押しするのではなく、長い時間を掛けて企業や家計の経済活動を下押しするプロセスと考える。 ■英国：小売売上数量と消費者信頼感（％） 8 7 6 5 4 3 2 1 0 -1 -2 12 ■英国：失業率と失業給付申請件数小売売上数量（前年比、右）（％） 9 20 消費者信頼感（左） 10 8 0 7 -10 -20 6 -30 5 -40 13 14 15 16 4 11 注：小売売上数量はガソリンスタンドを除く、３ヶ月移動平均出所：英統計局、ＧｆＫ 12 失業給付申請件数（前月差、右）（千人）失業率（左） 40 30 20 10 0 -10 -20 -30 -40 -50 -60 13 14 15 16 出所：英統計局 ■英国の小売売上数量（季節調整済み、前期<月>比、％）小売売上数量・合計除くガソリンスタンド食料品店非食料品店百貨店・スーパー衣料品店家庭用品店その他非店舗型小売ガソリンスタンド小売売上高・合計 2015 2016 2016 3Q 4Q 1Q 2Q 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 0.8 0.8 1.2 1.2 2.1 -0.4 -0.4 1.7 0.9 -0.8 1.9 -0.2 0.9 0.7 0.7 1.2 1.9 -0.1 -0.6 1.7 1.0 -0.8 2.0 -0.3 0.5 0.4 1.2 1.4 0.5 0.1 -0.3 0.2 1.4 -0.8 0.8 0.7 1.1 0.5 0.0 1.0 3.5 -0.2 -1.2 3.0 0.3 -1.2 3.6 -1.9 0.5 2.6 2.0 2.0 2.5 -1.2 -1.1 2.6 1.2 -3.3 3.9 0.8 2.8 -1.5 -2.3 -2.0 2.5 -1.3 -1.4 1.1 2.2 -1.3 6.1 -3.3 1.2 2.5 0.5 0.7 3.7 1.8 -4.1 1.2 1.4 -1.5 2.7 -5.3 -0.3 -0.3 0.5 3.5 5.0 -0.1 0.8 5.9 -2.6 0.3 1.9 -0.1 2.0 4.0 2.2 1.0 1.9 -1.0 0.7 3.8 2.5 1.2 0.3 2.6 0.2 1.4 5.2 1.1 3.0 -2.8 1.0 0.8 0.5 -0.3 0.7 0.5 0.5 0.0 0.2 0.7 2.2 -0.7 -0.7 1.2 1.3 -1.0 2.2 -0.5 注：四捨五入の関係で前月比の伸び率はプレスリリースと一致しない。　出所：英統計局本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1