魔女ヲ喰ウモノ - タテ書き小説ネット

魔女ヲ喰ウモノ
苦重苦
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タテ書き小説ネット[R18指定] Byナイトランタン
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︻小説タイトル︼
魔女ヲ喰ウモノ
︻Nコード︼
N3847V
︻作者名︼
苦重苦
︻あらすじ︼
少年が会った美女は未知の怪物と戦う女戦士だった。
彼女と出会った直後、少年の肉体にも異変が!
この小説は以前作者が打ち切りになったとも知らず続編を待ってい
たジュブナイルポルノ、﹁白いマルタの十字の下に﹂の続編を自分
で書いてやれと無謀なことをした結果です。
展開等は途中まで同じですが、設定などが分からないためほとんど
1
を自分で考えるしかなく原作を再現することが技術的にも不可能な
こと、自分の願望も反映させたいこともあり、ほとんどオリジナル
となりました。そのため一応オリジナル作品としています。リイマ
ジネーション、本歌取りとお考えください。
こういう言い訳が許せる方だけお読みください。
>タグ追加 男の娘 TS 洗脳 調教 近親相姦
2
Boy meets Lady Soldier︵1︶
その日、
僕は<運命>に出会った
ひと
あの女、
冴子さんに
彼女に会った日、その日こそ僕の運命が変わった日。
退屈だけど平和な日常は消え去り、血の臭いと死臭に満ちた日々
がやってきた。
それでも僕は後悔していない。
彼女に会えたから。
後ろを振り返ったりもしない。
彼女がいるから。
僕はあの彼女に会うために、彼女を守るために生まれてきたのだ
から。
その日、彼女に出会ったその日、その日こそ僕の平穏な日常の終
3
わった日だった。
その日、退屈な授業をあくびをかみ殺して聞いていた、午後のけ
だるさがいきなり破られた。
学校の近くの下水道で有毒ガスが発生したため避難しろとのこと
だ。
教室で悲鳴があがった。
授業がなくなったこと、日常の退屈さを破る事件が起こったこと
に対する、うれしい悲鳴だ。
校舎を出れば、黒いボックスカーが停車するところだった。
そして僕は<運命>に出会った。
車から降りてきたのは、黒のコートに身を包んだ美女だった。
コートの上からでもわかる均整のとれたしなやかな体つき。
濡れたように黒く長い髪。
透き通った白い肌。
サングラスに隠されているが、鼻筋の通った整った顔つき。
﹁すっげー!﹂
﹁モデルかよ﹂
﹁少佐ァ⋮ハアハア﹂
僕の周りで歓声が上がる。
それらの声は僕の耳を通過するだけだった。
彼女を一目見た時、僕の時間は停止していたのだ。
再び時間は動き出す。
彼女がこちらを向いた。
4
そして左手でサングラスを外した。
﹁きれいだ⋮﹂
周囲がまたも歓声を上げるなか、僕は熱病に浮かされたように一
言漏らした。
すると。
彼女は一瞬当惑したような表情を浮かべると、僕を見た。
﹁!﹂
さらに目が合うと、にっこりと僕にほほ笑んだのだ。
周囲の声がさらにひどくなる。
さすがに誰かが解散を命じたのだろう。
気がつくと、みなバラバラに歩き始めていて、僕の腕を同級生の
金子が引っ張っていた。
それはもう、面白そうなものを見つけたという表情で。
﹁おんや∼、受け少年の芳賀くぅ∼ん、ついに女に目覚めたかなぁ
∼﹂
普段はこんなこと言われたら、梅干し、要するに拳でこめかみを
グリグリしてやるところだが、今日はそんな気がしなかった。
なお受け少年というのは、僕が女の子みたいな顔だもんだから、
漫研という大義名分を掲げた腐女子が
勝手に作品のモデルとしてくれたことに由来する。
彼女がいればそういううわさも出なかったのかもしれないが、な
5
ぜかその気にならなかったのだ。
﹁カネコ⋮﹂
﹁あん?﹂
﹁あの人恋人いるのかな?﹂
﹁そりゃいても、おかしく、っておい﹂
﹁セックスとかしてるのかな﹂
﹁ま、まて、お前何いってるか、わかってる?﹂
﹁やだな、他の人とセックスしてるの﹂
﹁おーい、もどってこい﹂
﹁やだな、そんなの﹂
﹁⋮ダメダコイツ﹂
金子が言うには、僕はこの後十分ぐらい同じようなことを言い続
けていたらしい。
いつまでもそうしているわけにもいかないので、とぼとぼ家路に
就く。
頭の中には彼女のことしかない。
ぼんやりとしながら歩いていると、奇妙な違和感を感じた。
︵?︶
悲鳴?
誰かが助けを求めている?
気のせいと無視すべきだったのかもしれない。
それでもなぜかその気にならなかった。
普段入らないような細い裏通り、ビルとビルの隙間に駆け込む。
エレベータが動き出すような一瞬の浮遊感。
6
﹁な、なんだよ﹂
初めての感覚に戸惑い、周りを見渡す。
そこにそれはいた。
﹁イヤァ、タスケテェ、モウヤメテェ﹂
うつろな目で力ない声で助けを求める女性。
その体にはかろうじてスーツの残骸と分かる布切れと、赤黒い触
手がまとわりついていた。
職種の一部は自制の果敢に埋没し、そこから白っぽい粘液が垂れ
て水たまりを作っている。
﹁なんだよ、何なんだよ、これ!﹂
恐怖と驚愕で叫ぶ僕。
体は金縛りにあったように動かない。
ズルリ
重いものを引きずるような音がした。
女性の後ろから触手と同じ色のラグビーボールのような肉の塊が
現れた。
鉛のように重い体が動いた。
後に一歩だけ。
ラグビーボールの上のとがった部分が上下に開き、黄色く光る球
体があらわになった。
7
それが目だとわかった時、その眼の下からラグビーボールが縦に
さけ鋭い牙の生えた口が開いた。
﹁うわああ!﹂
僕は悲鳴を上げて逃げようとした。
しかし僕が振り向くより早く、触手が僕に襲い掛かり手足をとら
えた。
そのまま口のところに運ばれる。
︵食われる!︶
迫る死を実感した僕は、暴れて逃げようとしたが果たせず、足か
ら食べようというのか空中で仰向けにされた。
﹁うわあ!いやだー!﹂
絶体絶命の僕。
そこに救いの天使が舞い降りた。
今日学校であったあの人が、体の線があらわとなる黒いボディー
スーツに身を包み、ビルの屋上から飛び降りてきたのだ。
﹁はあ!﹂
気合一閃。
彼女は背中から日本刀を抜くと僕を拘束していた触手を一気に切
り落とした。
そのまま左手をついて着地。
8
﹁やあ!﹂
今度は下から切り上げるようにラグビーボールを真っ二つにした。
耳障りな断末魔を上げて地に落ちるラグビーボール。
しばらくは痙攣を繰り返していたが、やがて動かなくなった。
化け物が完全に動きを止めるまで、彼女は刀を構えていた。
僕に形のいいお尻を向けて。
そして化け物が全く動かなくなると、ようやく僕に振りかえった。
﹁大丈夫?﹂
なんの感情のこもっていない冷たい声。
彼女のお尻に見とれていた僕は、同じ高の視点︱︱股間のあたり
から胸を伝って彼女の顔に目を向ける。
彼女と目があった。
無表情だが美しい顔︱︱そう思う間もなく当惑したような表情が
浮かぶ。
﹁⋮⋮あなた、さっきの﹂
﹁!﹂
覚えていてくれた!
さっき目があったと思ったのは間違いじゃなかった!
まさに天に昇るような思い。
9
﹁は、は、はい!そ、そそ、そうです!ぶぶぶっぶじです﹂
我ながら何を言ってるのか、自分を殴り付けたくなる。
そんな僕に彼女は笑って答えた。
﹁そう、よかったわ﹂
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼!﹂
その笑顔を見たとき、僕の心は完全に彼女にとらわれていた。
彼女のために死んでも悔いはない。
むしろ本望だと。
ファム・ファタール
僕は出会ったのだ。
僕の運命の女に。
10
Lady Soldier meets Boy︵1︶
私はいつも一人だった。
名前だけの仲間に囲まれていても、ひとりで生きて、一人で戦い、
ひとりで死んでいく。
ずっとそれが当たり前と覚悟していた。
それなのに⋮
私は今シャワールームにいる。
此処とトイレだけが、本当の意味で私が一人になれる空間。
私の監視が外される数少ない場所。
出動の後はいつも体がほてっている。
クールダウンさせるためには、冷たいシャワーが必要だ。
だがその日のほてりは戦いによるものではなかった。
﹁はぁ、ん、くぅ、あ、ああ、ふぅ﹂
熱を持って、体液が溢れ出す局部を、私は冷水で洗い流す。
しかし体の熱は収まらず、体液もますます流れだす。
いつしか私は体を洗うという建前すら忘れ、自慰行為に没頭しだ
した。
﹁あん、あふぅ、ひゃん!﹂
11
脳裏に浮かぶは先ほど二度目の邂逅を果たした少年。
女の子のような、なよなよした少年、しかし忘れられない印象の
少年だった。
﹁あの子、きれいといった。わたしのこときれいといった⋮﹂
右腕を股間から腹を経由して胸に移す。
水と愛液で陰毛が重力に逆らって上に向かって張りつくが、すぐ
に流されて下を向く。
標的が出現したという報告があったのは、都内の高校、それも男
子高だった。
車から降りた私を、いつものように男の欲望に満ちた視線がいく
つも突き刺さる。
しかもやりたい盛りのエロガキどもの群れのど真ん中、いやらし
い視線の集中砲火はいつにも増して激しい。
そんな時だった、彼の声が聞こえたのは。
﹁綺麗だ﹂
その声は周囲の雑音を制して聞こえてきた。
その瞬間、私にはその彼の言葉しか聞こえなかった。
声の主を探した私は、すぐに彼を見つけた。
石炭の中からダイヤモンドを見つけ出すように、すぐに彼は見つ
かった。
彼は私に見とれていた。
12
珍しくもない、私の﹁本性﹂を知らずに、私を見た男がよく浮か
べる表情。
普段は完全に無視するその表情を、このときだけは無視できなか
った。
何となくうれしくなった私だが、隊長の呼ぶ声が聞こえてすぐに
その場を去った。
﹁うれしそうだな、なんかいいことがあったのか?﹂
﹁?﹂
隊長が私を一目見てかけた言葉だ。
この時初めて、私は自分が笑っていることに気がついた。
﹁生徒の一人がね、私のこときれいだって言ってくれたんですよ﹂
﹁なんだそりゃ?﹂
心底わけがわからんといった顔の隊長。
﹁ん、もう、失礼ですよ、隊長。私だって女です、きれいだと言わ
れたらうれしいんですよ﹂
﹁そ、そうか﹂
なぜか、隊長その他全員顔を赤くした。
左手のシャワーヘッドを股間にこすりつける。無数の細い糸状に
噴き出る水が性器をたたく。
残る右手で右の乳房をもむ。
13
﹁あの子、見てたァ、私のゥ、オシリ、オッパイ、食いつきそうに
見てたァあ﹂
二度目の彼との邂逅は戦場でだった。
最初に﹁ヒメーラ﹂の痕跡が発見された学園から、その気配を追
って追跡を続けた私は、あるビルの屋上でその気配を見失った。
ヒメーラ︱︱いつのころかは分からないが、さまざまな超能力を
使い、闇に潜み人を襲う異形の化け物、人間の天敵ともいえる謎の
生命体である。
奴らの生態について、わかっていることはあまりに少ない。
宇宙あるいは異次元からの侵略者という説すらある。というより
そう信じている者がほとんどだ。
豪胆、あるいは好戦的な者は言う。
奴らは敵だ、それで十分だ。確かにそうだろう。
ヒメーラは人間を襲う。
あるものは寄生する宿り木として体内に侵入するために、あるも
のは繁殖用の母体として凌辱するために。
そして単純に餌として狙うやつもいる。地上で少年を襲っている
奴のように。
﹁!﹂
どうやら何らかの能力を使い、充分の周囲をさらにその周りから
・・
隔離して隠れていたのだろう。
人間なら絶対に気付くことができなかったろう。
私はコートを脱ぎ、戦闘服姿になると、刀を抜き、ビルから飛び
降りた。
体重すべてを刀に込めて叩きつける。
触手を一刀両断。
14
続いて下からの会心の一撃が決まった。
敵が動かなくなるまで、残心を保つ。
絶命を確認して残心を解くと、お尻に視線を感じた。
私は一瞬にして不愉快になる。
その感情をあらわにしないよう無表情を保ちながら振り向く。
私のまとう戦闘服は動きやすさを重視しているため、体の線がき
っちり出る。
だからこんな視線を浴びるのは珍しくない。だからといって慣れ
ることもない。
嫌みの一つも言ってやろうと思っていたが、ひとまず安否を確認
する。
﹁大丈夫?﹂
幻魔の餌食になりかけた少年は、私のお尻に向けていた視線の高
さを変えず、自分の目の前に出た私の股間をじっと見た。そのまま
視線を上にあげ私の胸を見る。
私はさらに不愉快になった。
私のまとう戦闘服は動きやすさを重視しているため、体の線がき
っちり出る。
だからこんな視線を浴びるのは珍しくない。だからといって慣れ
ることもない。
少年の視線がさらに上がる。
嫌みの一つもぶつけてやろうと待ち構えていた私だが、思わぬ顔
を見て当惑する羽目になった。
﹁⋮⋮あなた、さっきの﹂
それは先ほど私に、強い印象を残したあの少年だった。
私がその言葉をかけると、少年は天に登るような表情で立ち上が
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って、私に応える。
﹁は、は、はい!そ、そそ、そうです!ぶぶぶっぶじです﹂
﹁そう、よかったわ﹂
このとき私の中から一切の不快感が消え去っていた。
むしろ自分の一挙一足にかわいらしい反応する少年に、好ましい
ものを感じていた。
同時に悪戯心を。
﹁!﹂
私が胸を強調するように腕を組むと、彼はゆでダコのように真っ
赤になった。同時にズボンの前がテントを張り始める。
﹁あら、どうしたの、顔が赤いわ﹂
わかっているくせに私は彼に近寄る。
﹁な、な、な、な、なんでもありません﹂
かわいらしい反応をする彼、その時私の鼻腔を一つの臭いが刺激
した。
﹁!﹂
それは彼の股間から匂う彼の先走りの臭い。
それに気がついたとき私が自分が濡れたことを、欲情したことを
知った。
16
﹁そ、そう、大丈夫ならいいわ﹂
我ながらそっけなく言って彼から離れた。
そしてようやく合流した部隊に後を任せて基地に帰還、すぐにシ
ャワー室に飛び込んだ。
そうしないと自分が何をするか自信が持てなかったからだ。
私はますます自慰にのめり込んでいた。
シャワーヘッドを放り捨て、自分の手で体を激しく犯す。
何度も絶頂に達した。
それでも欲望と妄想と手が止まらない。
妄想の中で私は何度も彼を犯した。
妄想の中で私はテントを張った彼の股間をつかむ。
︵どうしたの、そんなにオチンチン大きくして︶
︵あ、この、それは︶
︵ごまかさないで!私のお尻見てたでしょ!命の恩人だというのに
私のお尻見てオチンチン立ててたんでしょ!︶
︵ああ!ごめんなさいごめんなさい!︶
︵ふん、そんなにセックスしたい?︶
︵はい!したいです!冴子さんとセックスしたいです!︶
︵そう、ならセックスしてあげる。その代わりきみは永遠に私のも
のよ!︶
︵はい!冴子さん!︶
︵ふふふ、いい子ね。一生かわいがってあげる︶
そういって妄想の私は彼にまたがって犯した。
今度は彼が私を犯そうとする妄想が浮かんできた。
︵さ、冴子さん、冴子さんがほしい!︶
17
︵ふん、私を犯そうとは生意気な!そんな奴はお仕置きだ!︶
︵ああ!ごめんなさい!冴子さん!︶
︵勘弁出来ん!こうしてやる!︶
妄想の私は彼の服をはぎ、その服で彼を縛る。
︵私が欲しいなら私に忠誠を誓え!そうすれば望みをかなえてやる
!︶
︵誓います!誓います!冴子さん!︶
︵冴子さん?︶
︵冴子様ぁ!︶
︵よし、それでいい︶
そのまま彼の唇を奪い、押し倒した。
ときにはソフトに彼を誘う。
︵ねえ、貴方、私のお尻見てたでしょ、ううん、お尻だけでなくお
っぱいも、そんなに見たい?私のカ・ラ・ダ︶
全裸でいやらしく媚を売る妄想私。
︵もう我慢できない!冴子さん!︶
︵いやん、もうあせらないの︶
そのままお互いの肉体を貪った。
果てることないかと思われた欲望も、やがて落ち着いた。
そうすると今度は後悔とと自己嫌悪が私を襲う。
﹁馬鹿みたい⋮何を考えているのよ⋮化物が⋮﹂
化物。
そう、私は化物だ。
先にも述べたがヒメーラは、繁殖の母体として女性を襲う。
そうしてヒメーラに凌辱された女性はほとんどがショックで死ぬ
が、まれに人間とヒメーラの混血児を生むことがある。
18
そうした混血児︱︱ブリードと呼ばれる︱︱には主に3つの特徴
がある。
一つはヒメーラの超能力が効きにくい。
もう一つは驚異的な肉体能力を誇る。
最後の一つは、闘争本能あるいは性欲から来る衝動が高まると、
完全なヒメーラになることである。
そして私もそのブリードの一人だ。
そしていま私は、ヒメーラの超能力に対抗できる戦力として期待
ジョーカー
され、対ヒメーラ特殊チーム、ACTに所属している。いつ裏返る
か分からない鬼札として監視を受けながら。
半分同じ仲間を狩るため、もう半分だけ同じ人間たちに飼われる
猟犬⋮
それが私だ。
そんな私が人並みに恋などできるはずがない。
そう、ここまで来て私は自覚していた。
私はあの少年を一目見たとき、恋に落ちていたのだ。
しかしこの恋はかなうはずがない。かなえてはいけない。
恋人と初めて愛をかわそうとした時に覚醒したブリードの例が2
件もある。
二人とも理性を失い恋人を殺した後、自分も殺された。自分を取
り戻すことなく。
3件目にはなりたくない。そう思っていつも自分を抑えてきた。
アイアンメイデン
心に鉄の鎧を着て。
ついたあだ名が鉄の処女だ。
しかし、彼に出会って、その鎧にひびが入った。
もう一度彼に会えばその日々は大きく広がり、先ほどの妄想のよ
うに私は彼を襲い、その挙句ヒメーラと化すかもしれない。
彼を殺したくない。
もう二度と彼に会いたくない。
本当は会いたい。
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でも会えない。
私は久しぶりに自分の運命を呪って泣いた。
冷えた体を震わせながら、報告書を書きにオフィスに行くと、再
び出動がかかっていた。
冷えた体が一瞬にして燃え上がる。
私の体にやつあたりの闘志という火が付いたのだ。
しかし、その火もすぐに凍りつく。
﹁ついてねえな、あのガキ、一日に二度もヒメーラに襲われるなん
てよ﹂
20
Lady Soldier meets Boy︵1︶︵後書き
︶
感想お待ちしてます。
21
ア
Boy meets Lady Soldier︵2︶
僕の頭は混乱していた。
Team︶の隊員。
ト
あの人の名前は影山冴子さん。対幻魔特殊部隊︵Anti
ク
imäre
あの化け物はヒメーラ。人を襲って喰う化け物。
冴子さんはヒメーラと戦っている。
Ch
あんなきれいな人が、あんなおぞましい化け物と戦っている。
あの時、彼女が空から飛び降りてきて、あっという間に化け物を
切り伏せたあの時、僕は命が助かったことに安堵するのも忘れて、
ただただ彼女の美しい肢体に心を奪われていた。いいや、今も目を
閉じると、脳裏に引き締まった彼女の裸体が浮かぶ。
ここで我に返った。
全く何を考えているのだろう。
普段は草食男子の代表例とまで言われているぐらい、女に対して
淡白だというのに。
さっき危うく死ぬところだったというのに。
まともに頭が働かない。
彼女のことしか考えられない。
もっと端的に言うなら彼女とセックスすることばかり考えている。
あの赤い唇にキスしたい。
あのまぁるいオッパイに顔を埋めたい。
そして。
彼女の肉体に僕のペニスを突き立てたい。
彼女の胎内に僕の分身をいっぱい注ぎ込みたい。
僕の所有物だとしるしをつけたい。
だめだ。
22
頭がもうテンパリ過ぎている。
少し冷やさなきゃ。
僕は車道沿いの歩道を離れ、人気のない暗い公園に入った。
目指すは水飲み場。
顔でも洗えば落ち着くだろう。
あとから考えれば、ここが運命の分かれ道、平和で退屈な生活と
危険で命がけの生活との境界線だったのだろう。
水飲み場で何度も水を出して顔を洗う。
しぶきが飛び散る。
どこからか、AV女優のような声がする。いわゆるよがり声だ。
﹁あん、ああん、ああーん!だめぇ!気持ちいい!﹂
その声がまたもや僕に冴子さんを想起させる。
僕の体の下で、声を上げる彼女の姿を。
︵いい、きもちいい、甲児くん、いい!きて!もっと!︶
﹁くそっ、幻聴まで聞こえるなんて⋮﹂
水を思い切って頭からかぶる。
これでようやく幻聴もやんだ。
寒気を感じるぐらいに水をかぶり続ける。
これでようやく頭が冷えた。
悟りを開いたお坊さんの気持ちがわかった気がする。
顔を上げたが、髪を拭くものがないことに気付き困惑する。
とりあえず髪を手でかき混ぜ、できる限り水気を飛ばす。
ある程度髪が落ち着いたら、手櫛で整える。
23
その時またあの声が聞こえた。
﹁いく!また、いく!いっちゃう∼∼!﹂
︵くそ!また幻聴かよ!︶
そう思ったが、次の言葉に違和感を感じた。
﹁ああ、いったの、ワンちゃんもいったの、ワンちゃんの精液流れ
てくるぅ﹂
︵わんちゃん?︶
ワンちゃん。
この言葉を聞けば、日本人なら大抵、犬を連想するだろう。
意外な言葉を聞いて凍りつく僕に構わず、女の声が続く。
﹁妊娠、しちゃう、犬の子、妊娠しちゃう!私も犬になっちゃう!
だめぇ!﹂
﹁!﹂
全然シャレにならないことが聞こえてきた。
思わず声の聞こえてきたほうへ歩き出す。
事実を確かめてどうしようとしていたのか自分でも分からない。
助けようとしていたのか、ただの好奇心か。
ともかくそこに向かわずにいられなかった。
その声は公園の奥の林の中から聞こえていた。
﹁ああん!射精、止まんない、おなかの奥、びゅくびゅく、とまん
24
ない!気持ちいいのぅ!﹂
またあの声だ。それも近い。
僕は目の前の植え込みをかき分ける。
そして僕はおぞましいものを見てしまった。
まず目を引いたのは裸の女だった。
服は引き裂かれて原形をとどめていない。
全身の至る所に擦り傷がある。
しかしそれらを見ても痛々しさを感じない。
感じるのはいやらしさだけ。
女が悦んでいるのは、一目瞭然だったからだ。
﹁ひゅご、びゅくびゅく、しなが、ら、バコバコ、オマンコイイ!
オマンコイイノ!﹂
白目をむき、舌を出し、よだれを垂らし、四つん這いになって、
大きな胸と尻をブルンブルンと振る。
もはや理性ある人間とは思えない。
その淫らさはもはや醜悪といっていいものだった。
なのに。
それなのに。
僕は目を離せなかった。
女の痴態に圧倒されていた。
いつしか僕は、僕自身が眼の前の女を犯しているような幻覚にと
らわれていた。
﹁いやぁ、だめぇ、トモユキィ、ごめんなさいぃ﹂
︵甲児くん、好きよ、甲児くん︶
25
﹁わたしぃ、おかしくなっちゃうぅ。わんちゃんの、ものになるぅ、
もうだめぇ﹂
︵私はもうあなたのものよ︶
幻覚の中で女の姿が冴子さんの姿に変わった時。
﹁あひいいい!﹂
女が遠吠えする狼のように、天に向かって甲高い悲鳴を上げる。
同時に僕もズボンの中で射精していた。
﹁はぁ、はぁ、すごい、もぅ、だめ﹂
脱力した女が地に額をつける。
の頭が出てきた。
と呼んでいいのか。
犬
固定されたように尻を突き上げたそのざまは、まるで土下座して
許しを乞うているかのようだ。
・・
そして僕はそれを見た。
犬
女の尻の向こうの闇の中から
いやそれを
犬の眼はカタツムリの触角のように突き出てたりしない。
犬の舌はイソギンチャクの触手のように何本もうごめいていたり
しない。
何より蛇のように首が伸びたりしない。
犬
はよだれを垂らしながら、
常識ではありえない光景に僕の思考は凍結する。
デクの棒のように立つ僕の前で、
伸ばした首を女の顔に近づける。
首には一本の毛も生えてない。というより皮膚すらない。筋肉が
毛皮という殻から抜け出したように伸びている。
26
よだれのしずくが女の顔に落ちる。
女がのろのろと顔を上げる。
﹁ああ、暑いの、ワンちゃんの唾ぁ、飲ませてぇ、喉渇いたのぉ﹂
上からポタポタと落ちるよだれを、舌を出して口に入れようとす
る女。
にねだる女。
は強引にキスするかのように、女の口に無数の舌を突っ込
犬
﹁ああ、おいしいぃ、唾おいしぃ、もっと、もっとちょうだぁい、
のませてん﹂
犬
鼻にかかった声で媚びるように、
んだ。
﹁んぐっ、ぐ、ぐうぅぅぅ!﹂
女が白目をむいて痙攣を始めた。
同時にうつ伏せだった女の体が起き上がる。
犬の股間から生えた幾本もの太い触手によって持ち上げられたの
だ。
まるで女の体を見せつけるように。
犬
の舌が抜き取られると、すぐに女の
﹁イヤァ!見ないで!お願い!﹂
音を立てて女の口から
悲鳴が響く。
どうやら初めて僕の存在に気づいたらしい。
しかしその悲鳴も、触手がうごめくと別の声に変わった。
27
﹁あぁ、だめぇ、これ以上気持ち良くしないでぇ、わらしぃ、しん
じゃう、こわれちゃう﹂
またも女が快楽によがりだす。
女の股間で、乳房の上で、触手が動き回るたびに、悲鳴を上げる。
しかし女のその抵抗は形だけのもであることはすぐに分かった。
再び快楽と狂気に飲み込まれてゆく女。
もはや僕の視線さえ快楽の誘因でしかないようだ。
﹁見てぇ!坊や!見てぇ!私ワンちゃんのものなのぅ!ワンちゃん
に犯されて気持ちいいのぉ!もうワンちゃんの女なのぉ!雌犬なの
ぉ!﹂
先ほどまで嫌がっていた女が、今は僕に痴態を見せつけていた。
同時に僕のペニスも射精寸前の状態にまでいく。
犬
が笑っていたのは。
その時だった。
確かににやりと笑っていた。
僕に自分の女を見せつけるように。
僕の体は恐怖に凍りついた。
犬
の触覚の根元、つまり本来は両目の間にある黄色い眼だっ
そしてもっとも僕の恐怖をあおったもの、それは。
た。
僕は先ほどその眼を見たばかりだった。
あのヒメーラという化け物の目と同じものだった。
﹁うわああああああ!!!﹂
28
自分の上げたものと思えない叫びをあげて僕は逃げ出した。
恥も外聞も理性もない。
ただただ恐怖のままに逃げ出した。
林の中から出て、車道に向けてまっしぐらに走る。
後から木の枝の折れる音。
その音を耳にした瞬間、後に弾き飛ばされた。
﹁うわ!﹂
とっさに頭をかばって倒れる。
普段ろくに働いてくれない運動神経が、最低限の仕事をしてくれ
た。
犬
の姿。
頭こそ打たなかったものの、全身を地面に打ち付けた痛みをこら
えて正面を見る。
そこには女の体を恐竜の尻尾みたいに引きずった
﹁わわわ!﹂
地面を転がるように林の中に逃げ込む。
体中が痛んだがこの判断は正解だった。
鞭のような触手が、寸前まで僕のいた場所に叩き込まれたからだ。
僕は木の陰に隠れて、ポケットから携帯を取り出した。
先ほどACTの人で、中山さんという人と番号を交換したのだ。
冴子さんとは正反対の明るく親しみやすい人で、番号を交換しよ
うと言い出したのだ。
なんでそんなことを言い出したのか分からない。
しかしなんとかして冴子さんにまた会いたいと思った僕は、深く
考えず了承してしまった。
しかし今は好都合だ、助けを呼べる。
29
僕の隠れていた木が
た。
犬
の前足と触手の連打で、たたき折られ
呼び出し音を聞きながら、あわてて逃げだす。
目の前に建物があった。
トイレだ。
犬
がドアを破壊して個室に乱入する。その時にはすでに僕は
個室に飛び込む。ドアを閉める。
窓から逃げ出していた。
ここでようやく中山さんが電話に出た。
﹁はいはーい、由美ちゃんでーす。君は誰かな∼﹂
緊迫した状況にもかかわらず聞こえてきた能天気な声に、思わず
こけそうになる。
﹁な、中山さん!羽賀です!羽賀甲児です!さっきたすけてもらっ
た!﹂
﹁ああ、羽賀君?どうしたの∼﹂
﹁ヒメーラです!ヒメーラが出たんです!﹂
電話を通してでも相手の雰囲気が変わるのが分かった。
﹁あのね、羽賀君、冗談はやめてよね、とゆうか冗談じゃ済まない
のよ﹂
先ほどまでの能天気振りが嘘のような冷たい声だ。
しかしそんなことにかまっていられない。
30
﹁本当なんです!今、襲われているんです!うわぁ!﹂
触手に足を取られて倒れる。
そのまま地面を引きずられ本体へ引き寄せられる。
﹁もしもし、羽賀君?どうしたの?!って、佐藤さん、ええ!マジ
!﹂
電話の向こうで何かあったのか。
こちらにも状況の変化があった。
﹁逃げろぉ!坊主!﹂
和製ターミ〇ーターみたいな黒服黒眼鏡の男が、映画でも見たこ
犬
犬
はその液体を振り払おうと体を激しく動かしていたが、液
の全身に白い液体がぶちまけられる。
とないようなでかい銃をぶっ放していた。
体が透明になってゆくにつれその動きが鈍くなってゆく。
おそらくあの液体は強力な瞬間接着剤みたいなものなのだろう。
同時に僕のもとに中肉中背のやはり黒服黒眼鏡男が駆け寄り、妖
しく光るナイフで触手を切り落として助けてくれた。
﹁ACTの鈴木だ。すまない、状況の把握が遅れてしまった﹂
そういって僕に謝る。
この時僕はようやくACTの隊長さん︱︱大山さんと言ったか︱
︱に言われたことを思いだしていた。
幻魔の存在は秘匿されているため、他人に口外しないように言わ
れたこと。そして僕が秘密を漏らすかどうか監視がつくこと。
おそらく中山さんの番号交換もその一環なのだろう。
31
監視されるというのは、いい気分ではないが、おかげで助かった
のだから文句は言えない。
﹁あ、ありがとうございます﹂
﹁⋮気にするな、さあ行くぞ、動きを止めていられるのはわずかな
時間だけだ﹂
ポンポンと背中を叩いて返された。
やっぱ、子供扱いだよなぁ、さっきも坊主呼ばわりされてるし。
助かる見込みが大きくなって、ほっとした僕は大事なことを思い
出した。
﹁そうだ!あの人はどうしました?﹂
﹁あの人?﹂
﹁ええ、ヒメーラに襲われていた女の人がいたんです﹂
﹁なに!﹂
﹁どこだ!﹂
﹁ええっと、さっきまで幻魔にくっついて⋮﹂
犬
の傍から消えていた。
今はいなかった。
あの女は
﹁田中!上だ!﹂
﹁ぐわっ﹂
女の姿を探していた僕の背後で、鈴木さんの警告と、大男の悲鳴、
そして銃声が響く。
僕が振り向いたとき、銃を弾き飛ばされた鈴木さんが蹴り飛ばさ
れていた。
32
見たことのある裸の女に。
僕のほうにゆっくり振り向く女。
その額にはヒメーラと同じ黄色い眼があった。
﹁くそ!乗っ取られたか!﹂
﹁逃げろ!坊主!﹂
再び響く銃声。
しかし銃弾は天に向かって発射された。
女の蹴りが、大男の拳銃をはじいたのだ。
﹁うおおおお!﹂
いきなり公園に車が突入してくる。
女に向かって一直線に。
しかし女は動ずることなくふわりとボンネットの上に飛び乗ると、
フロントガラスを突き破る蹴りを放ち、離脱する。
車は木に衝突した。
しかし激突寸前の車から小男が転がり出てきた、そのまま銃を抜
き女に発砲。
銃弾は女の胸に命中、女の乳房が点状にへこむ、しかし血が飛び
出る様子もない。
一拍置いて乳房から銃弾が零れ落ちた。
まるで弾力あるゴムのようだ。
女は挑発するように、黒眼鏡たちを見渡して両胸をたたく。
二つの肉の球体が弾む。
そしていやらしく胸を揉みし抱きながら僕を見る。
舌なめずりをしながら、だ。
﹁逃げろ!坊主!﹂
33
﹁お前が逃げ切ったら、おれたちの勝ちだ!﹂
﹁すぐに応援が来る!早く逃げろ!﹂
傷ついた体を押して立ち上がる三人の男たちが、みな僕に逃げろ
という。
僕は情けなさと無力感をかみ殺して逃げ出した。
そのまま何分走っただろうか。
気が付いていると僕は闇の中にいた。
人の気配も、街灯の明かりも何もない。
おかしい。
この公園は大きな車道にはさまれた場所にある。
そしてそれほど広い場所でもない。
こんな風に暗闇を何分も走り続けるはずがない。
それに気づくと急に疲れが襲ってきた。
足が止まる。
そしてそのすぐ前にあの女がいた。
﹁どこに行くの坊や?﹂
女が優しげな声で聞いてくる。
﹁逃げることないじゃない﹂
女がゆっくり歩みよる。
﹁私が犯されるの見てたんでしょう﹂
34
女の髪が無数の蛇のようにうごめき僕の手に絡みつく。
僕の手はまるで操り人形のように勝手に動き、女の乳房と女陰に
押しつけられる。
﹁私のこといやらしい眼で見てたでしょ﹂
女の手が僕のズボンのジッパーを下し、先ほど射精して出した精
液まみれの僕のペニスをあらわにする。
僕の手は、僕の意思に反して女の乳房を揉みしだき、股間をなで
まわす。
生まれて初めて触る女性器の感触に、僕のペニスは固さを増して
ゆく。
﹁おっきくなってきたわね﹂
女が笑う。
僕は周知のあまり顔を真っ赤にしてそむける。
﹁恥ずかしがることないわ、素敵なおチンチンよ、それにこのザー
メン﹂
指についた僕の精液をなめとる。
﹁うふふ、すごいわ、口の中で、元気な精子ちゃんが暴れてるわ﹂ 女がひざまずき、顔を僕の股間に近付ける。
大口を開けて。
僕は全身の力を込めて腰を引いた。
バランスを崩して倒れる。
35
﹁あら、私を誘っているの、お姉さんのオマンコにオチンチン入れ
てほしいのね、でもまだダァメ﹂
女が両ひざで僕の腕を抑える。
当然女性器が僕の目の前に来る。
そしてその女性器から何かが出てくる。
舌だ。
蛭のような舌だ。
それも何本も。
﹁うふふ、わたしの赤ちゃん、かわいいでしょ。坊やのミルク早く
飲みたいって、でもまずは私に味あわせてね﹂
女は体勢を入れ替える。
いわゆるシックスナインという体位だ。
顔のすぐそばに妖しい舌がうごめく女性器が、そして視線を下げ
るとぶら下がった大きな乳房、その向こうに僕のペニスがあり、さ
らにその向こうからよだれを垂らした女が僕を見ている。
﹁ザーメンまみれの坊やのソーセージ私とこの子たちでおいしくい
ただくわ。キンタマの中のザーメン全部吸い出して天国に送ってあ
げる﹂
﹁い、いやだああ!﹂
恐怖に凍りついていた僕の体はようやく再起動した。
むちゃくちゃに暴れるが女の体はびくともしない。
﹁大丈夫、怖くなんかないわ、すぐ気持ち良くしてあげる。私のオ
マンコ以外何も考えられないようにしてあげる﹂
36
そして女が僕のペニスに食らいつこうとした瞬間。
黒い疾風が女を弾き飛ばした。
﹁がああ!﹂
﹁ふうううあああ!!﹂
疾風の正体は黒いボディスーツに身を包んだ女性だった。
顔は見えなかった。
でもあの後姿でわかる。
短い時間で強烈に僕の魂に焼き付けられたあの姿。
あれは間違いなく冴子さんだ。
冴子さんは獣のような唸りを上げて女を殴り続ける。
その彼女の後姿を見て、僕は情けないことにまた射精していた。
37
Boy meets Lady Soldier︵3︶
獣のように雄叫びをあげる冴子さんが、怪物となった女を殴る。
殴る。
殴りつづける。
自動車事故を思わせる音が立て続けに起こる。
女の顔はもう原形をとどめていない。
顔の左半分は陥没し、オタマジャクシのように眼球が垂れ下がっ
ている。
冴子さんのしなやかな脚が一閃し、弧を描いて女の首に叩きつけ
られる。
首から上が消し飛んだ。
いや違う。
ころしてやる
先ほどの犬のように女の首が伸びていた。
よくも
まるでろくろ首だ。
おのれ
﹁おノRE!よグモ!ごROじデヤる!﹂
聞き取りにくい発音で呪いの声を吐く女。
その口が大きく裂ける。
人間のものとは思えない牙が顔を出す。
﹁ジネえ゛エエ゛!﹂
まるで蛇のように女の首が空中に半円を描き、背後から女の牙が
冴子さんを襲う。
38
首を視線で追って振り返る冴子さん。
そのとき僕は見た。
冴子さんの後ろで女の体の筋肉が破裂するように膨れ上がったの
を。
﹁あぶない!﹂
﹁く!﹂
筋肉の塊が冴子さんの動きを背後から封じた。
同時に女の股間から飛び出てきた無数の触手が、冴子さんの股下
を通って全身に絡みつく。
﹁し、しまった﹂
﹁ウふふフふ﹂
触手が冴子さんの体の凹凸を強調するように締め上げる。
勝ち誇って冴子さんの目の前に顔を持ってくる女。
﹁いイよぅニ殴ってくれタねえ﹂
﹁ぐぅ!﹂
近づく女の顔から、逃れるように顔をそむける冴子さん。
その頬を女はぺろりと舐める。
﹁お礼にいイコとしてあげるよ!﹂
冴子さんの脚の下でうごめいていた触手が一本にまとまる。
まるで巨大なペニスのように。
﹁この邪魔っけな服を剥いで、お前のマンコにこいつを突き込んで
39
やるよぉ∼!﹂
女が頬から首筋、胸の谷間から腹へと舌を這わす。
嫌悪にゆがむ冴子さんの顔。
それを見て僕は叫び、立ち上がった。
﹁やめろぉ!﹂
冴子さんたちに駆け寄ろうとする僕。
しかしそれは出来なかった。
ずり落ちたズボンに足を取られ、転んでしまった。
﹁あらあ?僕ぅ?どうしたのぅ?﹂
いつの間にか傷の消えていた女のが僕をあざ笑う。
しかし次の瞬間。
女が悲鳴を上げた。
﹁ぎゃあああッゲジファ■■■■■■!﹂
すさまじい悲鳴だ。しかも途中から人間、いやどんな生物でも絶
対に出せないだろう耳障りな声にかわっていった。
女の蛇のように長く伸びた首が地面に落ちる。
何か地面にたたきつけられた音がした。
振り向けば、女の拘束をふりほどき、冴子さんがその体を踏みつ
けている。
はし
右手が煙る。
疾走る銀線。
40
腰のところで女の体が真っ二つになる。
﹁■■■■■■■■■■■■!﹂
空に向かい悲鳴をあげる。
そこに落ちる白銀の稲妻。
女のこめかみを貫いて地に串刺しにする刀。
一瞬にして移動した冴子さんのしたことだ。 女の首が大蛇のようにのたうちまわるが、やがて静かになった。
冴子さんが長い息を吐くと、僕に声をかけた。
﹁大丈夫?﹂
それにこたえるのも忘れて、僕は彼女の顔に見とれていた。
彼女の口の周りは赤く染まっていた。
それに気がついた彼女はあわてて口元を手で拭った。
唇が口紅を塗ったように、赤くなった。
気まずげに、目をそらす冴子さん。
そんな彼女にただ見とれるだけの僕。
奇妙な沈黙の時間。
その時間は唐突に破られた。
﹁うわあああ!﹂
女の上半身がいきなり動き出し、僕に覆いかぶさってきたのだ。
その首の根元には食いちぎられたような咬み跡があった。
﹁ちょ∼だ∼い∼、ぼ∼やの∼せいし∼ちょ∼だい∼、ほし∼の∼﹂
41
不気味に響く女の声。
女の上半身が僕の体を裏返し、再びペニスをあらわにする。
女の胸の谷間が上下に割れる。
細い牙と触手が無数に生えた顎になった。
﹁ちょ∼だ∼い∼!!﹂
女の乳房が独立した生き物のように動き出し、そのまま蟹の鋏の
ように僕のペニスを奥へと運ぶ、化物の口の中に。
︵食われる!︶
ペニスを食いちぎられる恐怖と同時に、蠢く肉球から与えられる
快感に僕の心は破裂した。
﹁あああああ!!﹂
僕が射精する寸前、女の上半身はものすごい勢いで飛んできた物
に弾き飛ばされた。
僕の吐き出した精液は、女の上半身を蹴飛ばした冴子さんのブー
ツを白く汚した。
それが僕が意識を失う寸前に見た光景だった。
42
間章︱︱古参兵の災難
約40年生きているが、女ってのはわかんねえ。
おれは目の前のでかい乳を揉みながらぼやいた。
﹁どうした?﹂
氷の魔女
何の感情も感じさせない声が響く。 それがこの女、氷室鞘香の異名であることを、充分思い知らせて
くれる声だ。
この女との付き合いは長い。
ベッドを共にするようになってからもだ。
なのに、いまだにこの女が何を考えているかわからねえ。
現に今、胸をもてあそんでいるのに何の反応もしねえ。
この女の鉄面皮が崩れるのは、最後の最後、イクときだけだ。
本当に人間か疑わしくなってくる。
それなのにこの女と別れようという気にならねえってのは⋮
﹁惚れてるのかね、やっぱ﹂
﹁何の話だ﹂
思わずもれた言葉に、やはり無感情な言葉がかえってくる。
ごまかそうとしても、どうせこの女にはごまかしきれない。
ちょうどいいから胸の中の疑問を少し出してみるとしよう。
﹁いや、影山のことなんだがな、ちょっとおかしいと思ってな﹂
﹁ほう﹂
43
軽く微笑んでこちらを見る。
⋮⋮背筋が寒くなる笑顔だぜ。
鞘から抜かれた日本刀みたいな。
﹁いやあの、なんていったっけ、ハガとかいう小僧に対してのめり
込み過ぎじゃねえか﹂
﹁ああ、たしかにな﹂
﹁だろう?まさか、惚れちまったわけじゃ⋮﹂
﹁わからんぞ、あれも女だ﹂
﹁はい?﹂
思わず呆けてしまった。
何やら凄まじい違和感を感じた。
﹁女、ね﹂
﹁なんだ?﹂
﹁いや、別に﹂
あわててごまかす。
なんかさらに気温が下がった気がするのは気のせいか?
﹁影山にとって運命の出会いだったのかもな﹂
思わず胡散臭いものを見る目で相手を見てしまった俺を、誰が責
められようか。
だって氷の魔女だぞ。
鞘香はそんな俺を馬鹿にしたような眼で見返してきた。
くだん
﹁件の少年だが、1日に2度もヒメーラに遭遇した﹂
44
﹁?﹂
﹁そんなことが確率的にありうると思っているのか﹂
﹁!﹂
言われてみれば確かにそうだ。
この世界にどれほどヒメーラが紛れ込んでいようが、そう多くは
ないはずだ。さもなきゃ情報の秘匿なんて不可能だ。
ほとんどの人間は一生会うはずの無いものだ。
﹁さらにいえば最初のヒメーラとの遭遇時の証言によると、ヒメー
ラの認識欺瞞能力が彼に影響を及ぼさなかったと思える節がある﹂
﹁あ!﹂
偶然だと思い込んでいた俺のミスだ。
自分のうかつさが頭にくる。
﹁さらに影山だけじゃなく、二匹目のも彼に執着を見せていたこと﹂
間抜けな俺にも、ここまで言われたなら、鞘香の言いたいことが
分かった。
したのも⋮⋮﹂
﹁つまり、あの小僧は⋮⋮﹂
保護
﹁そういうことだ﹂
﹁じゃあ、小僧を
﹁ようやくわかったか﹂
ここで鞘香はベッドに仁王立ちになった。
一切の恥じらいを見せずに、その均整のとれたプロポーションを
俺に見せつける。
豊かな肉の球体を揺らして、おれの愚息を踏みつけた。
45
﹁イテェ!何しやがる!﹂
﹁女とベッドを共にしているときに、他の女のことを考えるのはマ
ナー違反だと思うが?﹂
冷たく見おろしてくる。
まさか、やいているのか?
﹁躾の足りない犬にはお仕置きだ﹂
﹁ワ、バカ!やめろ!﹂
⋮⋮まさかな。
46
間章︱︱古参兵の災難︵後書き︶
3月17日、タイトル修正です。
47
モノ
Lady Soldier Meets Boy︵2︶
﹁さ、冴子さん!何をするんですか!﹂
﹁何って、決まっているじゃない。貴方を私の所有物にするのよ﹂
ベッドに横たわる彼が私に悲鳴をあげる。
ベッドの四隅の支柱に両手両足を縛り付けられた少年の、哀れな
姿を見て私は婉然と微笑う。
﹁冴子さんの物って⋮⋮﹂
彼の男性が目に見えるほどズボンを押し上げる。
﹁あら、何を期待してるのかしら?﹂
﹁だ、だって⋮﹂
彼があたふたと言い訳しようとする。
食べちゃいたいほどかわいい、というのはこういうことだろう。
少し笑った私は右手のナイフを振るった。
ズボンの前の山が割れて、彼のペニスが顔を出す。
﹁だって、何?﹂
﹁そ、そんな恰好してたら⋮﹂
言われて自分の格好を見直す。
薄いグレーのスポーツブラとショーツだけの挑発的な姿だ。
﹁あらあら、じゃあこんなことしたらどうなるのかな?﹂
48
私は胸の谷間にナイフを突き入れ、スポーツブラを切り裂く。
抑えを無くしたバストが弾力を取り戻して弾む。
﹁ああ!﹂
彼が悲鳴を上げる。
ペニスから白いしぶきが噴き出る。
﹁あはははははは!出た出た!生のおっぱい見ただけで射精しちゃ
ったのね!﹂
﹁ううう﹂
羞恥で赤くなる彼の顔が、私の嗜虐心に火をつける。
射精しても硬さを失わないペニスを、私は二つの肉球で挟む。
﹁そんなにおっぱいが好きならこうしてやる!えい!﹂
﹁あううう!﹂
﹁すごい⋮熱くて硬い⋮﹂
私が手の中の球体を動かすたびに彼は大げさに反応する。
それにつられて私もさらに刺激を強め、ついには口に含む。
﹁ああ!﹂
再びの射精。
口から熱い液体があふれ出す。
彼の精液のにおいが私の脳を焼く。
ナイフでショーツを切り裂いた私は、いまだ硬さを失わないペニ
スを、胎内に飲み込んだ。
49
﹁ふわあああ!﹂
三度目の射精。
彼
は萎えたりしない。
彼の体温が私の中にほとばしる。
それでも
むしろさらに力強さを増してくるようだ。
﹁あはははは!君!すごい!すごすぎる!Hすぎるわ!﹂
体を躍らせ、彼を犯しながら哄笑する私。
﹁そんなんだから、あんな醜い化け物にまで欲情なんかするのよ!
私が全部搾り取ってあげる!君の全て!私の!私だけのもの!全部
!全部出すのよ!私の中に!全部!頂戴ィ!﹂
私は狂ったように彼を犯し続ける。
﹁もう離さない!あなたはずっとこの部屋で暮らすの!私が飼って
あげる!ずっとこの部屋で私とセックスだけして生きていくのォ!﹂
﹁そんな!ああああ!﹂
抗議の声を上げながらもまた彼が射精する。
﹁お風呂もいっしょよ!ご飯は裸エプロンで作ってあげる!口移し
で食べさせてほしい?何でもしてあげる!だからだからァ!﹂
その時、獣の唸り声が聞こえた。
﹁な、なに?きゃあ!﹂
50
部屋がひっくり返った。
違う。
ひっくり返ったのは私だ。
そしてひっくり返したのは彼だ。
﹁こ、甲児君?﹂
﹁!!!!!﹂
人とは思えない叫び声をあげて私を押さえつける。
眼の光が普通じゃない。
獲物を狙う肉食獣の眼だ。
﹁オカシテヤル!オカシテヤル!オカス!オカス!﹂
︵ああ!︶
彼の眼光に貫かれ、彼の唸り声に身を震わし。
私の中で何かのスイッチが切り替わる音がした。
︵いいわ、来て!︶
私の体から力が抜けて、自ら両脚を開く。
﹁ああああああああ!!!﹂
さらに凶暴さを増した彼のペニスが私に打ち込まれた。
﹁好きィ!甲児君!好きィ!もっと!もっとシテェ!私はあなたの
もの!あなたの好きにシテェ!﹂
51
支配するものとされるもの。
その立場は完全に逆転した。
サディズムとマゾヒズム。
正反対に見える性癖であるが、根はまったく同じものだそうだ。
ただ、衝動が他者に向くか、自分に向くか、の違いでしかないら
しい。
私は苦痛と快楽と幸福感を感じながら、自らの肉体を蹂躙する暴
君の暴虐を受け続けていた。
頭の中で耳障りな電子音が響く。
その音を打ち消そうと一層よがり声を出す。
﹁ああ!あひぃ!気持ちいい!気持ちいいのぉ!﹂
電子音がさらに大きくなる。
無視しようと彼の体臭と精液のにおいを肺いっぱいに吸い込む。
彼が体を私から話した。同時に接合部を軸に私の体を裏返し、後
から私を攻め立てる。
﹁しゅごひぃ、しゅごいぃ、もうらめぇ﹂
私の体が支えを失ったように落ちてゆく⋮⋮
同時に電子音もさらに大きく⋮⋮
ベッドから落ちたことにより目が覚めた。
52
普段の鍛錬によりすぐに意識が鮮明になる。
自分の有様を自覚して顔から火が出る思いだった。
胸ははだけ、両手はぐっしょりと湿ったショーツに突っ込まれた
状態。
上半身がベッドから落ちているため、自然と尻を天井に向けてい
ることになる。
はっきりいって、全身でレイプしてほしいと言っているようなも
のだ。
﹁⋮⋮﹂
自分がこんなに淫乱だとは思わなかった。
自己嫌悪に浸りながら枕もとにあった携帯をとる。
﹁⋮⋮もしもし﹂
﹁やっとおきたか、このアマ、さぞかしいい夢だったんでしょうね﹂
受話器の向こうからあきれ返った機嫌の悪い声が返ってくる。
﹁ごめん﹂
﹁まったく、監視の当番が私だったからいいものを⋮⋮何とかごま
かしてあげるから、しゃっきりしなさい﹂
彼女の名前は中山由美。
私の数少ない友人だ。
眠っている時ですら監視のつく身分の私だが、監視役が彼女のと
きだけは幾分気が楽になる。
⋮⋮今回はリラックスしすぎて、欲望があふれ出てしまったよう
だが⋮
53
﹁ところで、その、彼の容体は?﹂
に襲われていたところを、間一髪救出した羽賀
﹁⋮⋮まだ意識は戻らないみたい﹂
魔女
﹁⋮⋮そう﹂
あの晩、
甲児君だが、すぐに倒れてしまった。
抱き起してみるとすごい熱だった。
感染
の可能性だ。
精神的ショックによるものと信じたいが、もっと恐ろしい可能性
がある。
ヒメーラの
ヒメーラについて我々の知ることはあまりにも少ない。
その数少ない情報の一つとして、彼らの地球上での生存法だ。
原住
本来彼らにとって、この地球という惑星はかなり過酷な環境であ
るらしい。
だ。
その過酷な環境で生きるために彼らの選んだ方法、それが
生物との融合
を足がかりに生物の脳を、
と呼ばれる黄色の眼球のよ
コア
コア
粘液という形で地球上の生物の体内に侵入したヒメーラは、まず
その生物の細胞を変質させて、
うな器官を作りだす。そしてその
そして全身の細胞を変質させて、完全にその肉体を乗っ取るのだ。
そうして、ほかの生物に自らの細胞を注入して、同族に変えるの
ブリード
が一般的なヒメーラの繁殖方法だ。
私のような混血を作る︱︱他の生物の出産機能を利用するのはむ
しろ少数派だ。
さらに今までのデータから、より進化した脳をもつ生物を支配し
たヒメーラのほうが、全てにおいて優れた能力を持つことが分かっ
ている。
54
すなわち地球上でもっとも脳の進化した生物︱︱人間の体を乗っ
取ったヒメーラは、まさに恐るべき敵といえる。
さらに理由は不明だが、支配されたのが女性の場合、さらに事態
は悪化する。
男性の場合はまだましだ。
超能力こそ強いが、本能に従って暴れまわるだけの獣でしかない。
しかし女性の場合、人間のもつ知性や理性、知識や技術をすら使
いこなす最強最悪の敵となる。
魔女
と呼ばれ
また知性の高さゆえか、幻魔の中でも支配者的なヒエラルキーに
あるようだ。
それゆえ、ヒメーラに体を乗っ取られた女性は
別格扱いされているのだ。
⋮⋮。
そして、あの時彼を襲っていたのも、生まれたばかりとはいえ
魔女
強敵であり、苦戦の可能性の高い相手だというのに⋮⋮
思い出すたびにあの時の自分を殴ってやりたくなる。
あの時、犬魔女にレイプされようとしていた彼を見た時、私の中
嫉妬
以外の何物でもなかった。
にあったもの。
感染
の危険性が減少するからだ。
殴り飛ばす
という愚
ヒメーラは短時間で、それも瞬間的に殲滅するのが理想だ。
それだけ
それなのに嫉妬に突き動かされた私は、
行に走ってしまった。
その時飛び散った体液から幻魔の細胞が彼の肉体に侵入していた
としたら⋮⋮
︵その時は二人で死ぬのも悪くない⋮⋮︶
55
私は首を振って危険な考えを振り払う。
彼は平穏に幸せに生きるべきなのだ。
私のような化け物にこれ以上かかわるべきではない。
﹁はあ、そんなに気になるなら会いに行けばいいじゃない﹂
﹁⋮⋮だめよ、だめなのよ﹂
私は一度も彼の病室を訪れていない。
会いに行けば、自分を抑えられないことが分かっているからだ。
魔女
として覚醒する。
おそらく彼の顔を見れば、先ほどの夢のようにあさましく彼をレ
イプするだろう。
そしてその結果は破滅しかない。
私はヒメーラとして、それも最悪の
そして彼を同族に変えて、理性のないケダモノとなった彼に犯さ
れる喜びに浸るだろう。
わかっているのだ。
処分
される時も近いだろう。
あれは私のヒメーラとしての欲望と本能が見せた夢。
こんな夢を見るようでは
絶望に沈む私を救ったのは出動指令だった。
心が凍りつく。
冷酷な死神として。
こんなときに現れてくれたヒメーラにはたっぷり八つ当たりさせ
てもらおう。
そして、帰還した時。
私の心はさらなる絶望に犯された。
その絶望はとても甘美なものだった。
56
Boy Meets Lady Soldier ︵Final
︶
あの晩、冴子さんに間一髪助けられたあの時、僕は倒れた。
あとで聞くと40度近い熱が数日続いたそうだ。
苦しいのも無理はない。
風邪で伏せったことはある。
でもあんな苦しかったことは生まれて初めてだ。
脳みそが沸騰し、体が爆発しそうな苦しみの中、僕はずっと悪夢
にさいなまれ続けていた。
それも一つじゃない。
悪夢にうなされ、目を覚まし、熱に苦しみ、また眠りに落ちて悪
夢を見る。その繰り返しだ。そして眠りに落ちるたびに別の悪夢を
見るのだ。
ある時は、闇の中後ろから追ってくる、牙の生えた大きな口から
逃げ続ける夢。
ある時は自分が殺人鬼となって人を殺し続ける夢。
ある時は無数の蟲や獣に、体を食いちぎられ続ける夢。
ある時は何もない砂漠を、焼けつくような太陽の下、えんえん歩
き続ける夢。
57
ある時は女性をレイプしては殺すことを繰り返す夢。
ある時は、飢えのあまり冷たくなった人の死体を貪り食った夢。
正直詳しい内容なんて覚えていない。
忘れてしまっている夢もあるだろう。
だがその方がいい。
精神衛生上、絶対そのほうがいいに決まっている。
しかし、最後に見た夢は忘れたくない。
ひどい夢だし、他人に絶対言えない夢だが。
冴子さんが、僕のことを愛するあまり、僕を監禁してレイプする
なんて、こんな夢、絶対他人にいえない。
さらにそのあとがひどい。
いつの間にか立場が逆転して、僕が冴子さんを死ぬまでレイプす
るなんて⋮⋮
レイプするにしても、されるにしても、あんな欲望が自分の中に
あったなんてショックだ。
ぼんやりと目覚めたとき、僕の頭にあったのはこんなことだけだ
った。
正直憂鬱だった。
そのために現実への対処が遅れた。
5分ぐらいたってようやく頭が、働きだした。
ようやく自分が見覚えのない場所にいることに気が付いたのだ。
58
そして、ひどくのどが渇いていることにも。
ベッドのまくら元の台に水差しが置いてあった。
それに気が付くと、貪るように飲んだ。
だが足りない。
体はさらなる水分を欲していた。
僕は水差しを持ってベッドから降りた。
足に何か違和感を感じた。
しかしクラクラする頭で考え事をするのは億劫だったので、後回
しにした。
病室を出ようとドアノブに手をかけた。
動かない。
鍵がかかっている。
︵こんなときに︶
我ながら、ものすごい短絡的な行動に出てしまった。
思わずドアを蹴飛ばしてしまったのだ。
その結果は意外なものだった。
大きな音を立ててドアがはじけ飛んだのだ。
︵し、しまった︶
僕の頭はまだ寝ぼけていたのだろう。
鍵のかかったドアを蹴飛ばしたらはじけ飛んだ、そのことに違和
感を感じるよりも、壊したことにより叱られるかもしれないことの
方が気になったのだから。 僕はひきつった顔でドアが倒れるのを見ていた。
その時がちゃんとガラスの割れる音がした。
直後女性の悲鳴が上がる。
59
さらには神経に触るサイレンの音。
続いて大人数の足音が聞こえてきた。
足音の聞こえてきた方に振り向くと、銃を持った男たち。
﹁てーっ!﹂
﹁え?﹂
現実に対応しきれず、間抜けな声を出す僕に対し、男たちは発砲
してきた。
壁や天井をけって、銃弾をよけて逃げだす。
僕は飛びあがって逃げ出した。
体が勝手に動いていた。 まるでそうするのが自然なように。
そのためなんで自分にこんなことができるのか考えもしなかった。
階段を見つける。
壁
に
踊り場まで一気に飛び降りた。さらに下の階まで飛び降りる。
同じことを繰り返してさらに下の階を目指す。
そこで女の人とぶつかりそうになった。
見覚えのある女性だ。
そうだ、由美さんだ。
空中で姿勢を制御してぶつからないようにして、近くの
着陸する。
しかしぶつかりこそしなかったものの、驚いたのだろう、由美さ
んは持っていた書類の束を落としてしまった。
﹁わわわ、すみません!﹂
あわてて僕は書類を拾い集め、彼女に手渡すと逃亡を再開した。
60
﹁すみません、て、ええええ!なんで!ど−ゆーことー!﹂
後ろで由美さんがなにやら叫んでいるが、気にせず逃げる。
しかし僕の逃亡もすぐに終わりを告げた。
追い詰められた。自分から。
下へ下へと逃げ続けていたら地階に入り込んでしまったのだ。
集まってくる人の気配。
周りを見渡す。
ロッカールームだ。
僕はその部屋に入り込み中から鍵をかける。
同時にロッカーを動かしバリケードを作る。
で
天井
に張りつく僕。
あとから考えれば全く意味の無い行動だが、とにかく僕はようや
く落ち着いた。
近くにあった椅子に腰かける。
不気味な白い触手が目に映った。
触手
こんな特徴を持った生き物といえば⋮⋮
﹁え?﹂
︵ヒメーラ!︶
﹁うわあああ!﹂
恐怖のあまり飛び上がって、
61
﹁⋮⋮え?﹂
ここでようやく僕今までの異常事態に関心を持った。
蹴飛ばしたらはじけ飛んだ鍵のしまったドア。
天井や壁を歩いたこと。
空中で姿勢制御をおこなったこと。
﹁なんだよ、これ?﹂
62
それらを可能にしていたものが僕の目の前にあった。
十本以上の白い触手に変わった僕の脚。
そしてへその代わりに見覚えのある黄色の眼が⋮⋮
﹁なんなんだよ!これは!どうなってるんだよ!﹂
僕の疑問に答える者はいない⋮⋮
63
間章︱︱堕鬼尼︵1︶
都会の片隅に、忘れられたようにその寺はあった。
人通りの多い市街地から、薄暗い林で隠されたその寺は荒れ果て
ていた。
屋根からは瓦が落ちて、壁土は剥がれている。
周囲の墓地は雑草が生い茂り、墓石の幾つかは傾き倒れている。
もはや廃寺としか思えない。
そんな寺でありながら、本堂から読経の声が聞こえてくる。
それも女の声だ。
﹁⋮⋮色即是空 空即是色⋮⋮﹂
しかし読経につきものの、木魚の固く乾いたポクポクポクという
音は聞こえない。
代わりにタプタプタプと柔らかい音と、クチュクチュクチュと湿
った音が一定のリズムで聞こえる。
﹁⋮⋮般若波羅蜜多⋮⋮﹂
寺の中は外観以上に荒れていた。
御本尊は埃まみれで蜘蛛の巣が張られている。
腐った床には大穴があき、地面が顔を出している。
その大穴の中央に木の根が絡まってできた台があり、そこで尼僧
が経を読んでいる。
いや、その女を﹁僧﹂と呼ぶのは罰あたりもいいところだ。
その女は仏の弟子にしてはあまりに淫らで浅ましかった。
64
墨染の衣の裾は思い切り捲り上げられ、白くむっちりと脂ののっ
た尻と太股がその丸みを晒している。
数珠を持ち合掌した両手のすぐ向こう、胸元では襟を押しのけ、
やはり丸い二つの乳房が溢れ出している。
一定のリズムで女が尻を振ると、乳房や尻、太腿の脂肪が揺れて、
同じリズムで肉を叩く音がする。
股間からは濡れて湿った音がやはり同じリズムで発生している。
女の尻の下、絡み合った木の根の間には男が横たわっていた。
骨と皮だけとしか言いようがないほど痩せ細った男だ。
水気も精気も脂肪もすべて搾り取られたようだ。
そんな男が堅い木の根で厳重に縛りあげられ、半ば土に埋まって
いる。
﹁⋮⋮般若波羅蜜多⋮⋮﹂
男は女に犯されていた。
女性器を隠語で下の口ということがある。
その下の口が飢えた獣のように男のペニスに食らいつき、ネズミ
をもてあそぶ猫のように攻め立てる。
﹁⋮⋮羯諦菩提薩婆訶 般若心経﹂
読経が終わった。
合掌を解いた女は、数珠で大きな輪を作り、右の乳房を締めあげ、
男を挑発するかのようにその大きさを強調する。
﹁ほほほほほ、どうじゃ?わらわの経は極楽じゃろ?法悦じゃろ?﹂
左の乳首をなめ上げて、嘲笑とともに男に語りかける。
男は荒い息をするだけで答えない。
65
いや、かすれた声で、やめてくれ、助けてくれ、と哀願したよう
だ。
女は大仰に眉をしかめる。
﹁ええい、まだ往生せぬか。まあいい、すぐに引導を渡してくれる
わ!﹂
女が再び両の掌を合わせる。
同時に尻の動きに左右へのひねりが加わる。
男がのけぞり声にならない悲鳴を上げる。
﹁往生せいやっ!喝っーーー!﹂
叫びとともに女が天を拝む。
すると女の股間から緑色の粘液が、大量にあふれ出た。
そしてそのまま男を呑み込んだと思いきや、乾いた男の体にしみ
こむかのように消えていった。
﹁おほほほほほほほほほほほほ!極楽往生じゃ!お前は生まれ変わ
るのじゃ、人を超えた者として!﹂
狂ったように笑う女。紅い唇からサメのような白い歯がのぞく。
その笑い声にこたえるかのように男の体に異変が起こる。
水気を吸って乾ききった男の体が元に戻るかと思いきや、逆に一
層干からび黒い枯れ木のようなミイラのような姿になる。
体を縛りつけていた木の根を弾き飛ばさんとばかりにはねる。
そしてしまいには股間のペニスが、女に咥えこまれたまま、タケ
ノコのように伸びあがった。
﹁おごおおおお!﹂
66
地面にしゃがんでいた状態から、つま先立ちしなければならない
高さまで突き上げられた女。
しかしこの女にはむしろ快感だったらしい。
白目をむいてほえる。
軽いエクスタシーに達したようだ。
﹁ほ、ほほほ、いい、いいぞ、やはりお前はアタリだったようだね﹂
赤い舌で垂れた涎をなめとって、男をほめる女。
﹁さあ、今度はわらわを極楽に送っておくれ、おご、おごおお!﹂
女の依頼を最後まで言わせず、タケノコが前後左右に踊りだし女
の内部を蹂躙する。
﹁おごおお!おぐぅ!あがぁ!﹂
女の体は振り回され、衣服や頭巾が遠心力で飛んでゆく。
すぐに女の身を隠すものは何もなくなった。剃りあげた頭すら露
わだ。
﹁いくぅ、いくのじゃ、わらわと一緒に極楽いきじゃああ!﹂
女の股間がしぶきを上げた。
同時に女の腹部が内部からハンマーで連打されたように、でこぼ
こに盛り上がる。
﹁おごっ!おぐっ!おっごぅ!ごおおおお!﹂
67
女の腹が元に戻った。同時に大量の逆流した精液が股間からあふ
れる。
そのあふれた精液を指につけてなめる女。
﹁ほほほ、やはりアタリじゃ、ここまでイキのいい種は久しぶりじ
ゃ﹂
見えない糸に釣りあげられたようにふわりと女の体が浮き上がる。
ミイラとなった男は体に絡みつく木の根によって、地中に引きず
り込まれた。
女が本尊の前に体重を感じさせない動きで降り立つ。
その快感の余熱をかみしめていた顔が苦悶に歪む。
﹁う、ぐ、こちらも、アタリか﹂
女が口元と腹に手をあてる。
女の腹が風船のように膨れ上がった。
﹁うおおお﹂
本尊に両手をつき脚を広げる。
膣口が大きく開きソフトボール大の肉の球体を三つ吐きだした。
荒い息を吐きながら女が崩れ落ちる。
幾分やつれた顔で肉の球を、期待に満ちた見つめる女。
しばらくそうしていると、肉の球に変化が生じた。
表面の一部に裂け目が走り、黄色い眼のような器官が生じた。
目はあやしく光りだし、光とともに多数の触手が伸びてきた。
それは不気味でおぞましくはあったが、確かに新しい命の誕生で
あった。
しかしその新しい命たちが、産みの母から最初に送られたもの、
68
それは失望と憎悪の声だった。
﹁おのれぇ!おまえたちもか!おまえたちまでもぅ!﹂
﹁きいいいいい!﹂
女は己の子供の二体をつかんで、果物のようにかじりついた。甲
高い断末魔の声を上げる肉の球たち。
血を流しぴくぴく動く肉塊を咥えたその姿はまさに鬼女。
残った一体は文字通り転がるように母親から逃れようとする。
その肉球を受け止め、やさしく抱き上げた者がいる。
それは異様な女だった。
真珠のような白い肌に銀の髪、金色の目。
しなやかであり肉感的でもある豊かな肉体を、飾り気の無い黒い
ライダースーツで隠している。
何より目を引くのは彼女が従えている獣の存在であろう。
見た眼は狼を思わせるシベリアン・ハスキー犬だ。
しかし体長5mもある犬などいようはずがない。ヒグマですら3
mがいいところである。
その巨獣が銀の女を守るように、控えている。
﹁ル、ルナ様﹂
鬼女が平伏した。
怒りも殺気も消えうせ、ただただ震えあがっている。
﹁お、お見苦しいところを見せました。お、お許しを!﹂
必死で許しを乞う鬼女。
ルナと呼ばれた女は興味なさげに、無表情に答えた。
69
﹁気にすることはない、立て、ダキニ﹂
﹁か、寛大なお言葉、ありがとうございます!﹂
その時ルナの手の中の肉球に変化が生じた。
触手が長く伸びてルナの体に巻きつく。
﹁ひ!﹂
ダキニと呼ばれた女の表情が恐怖にひきつった。
母の心子知らず、肉球は触手をルナの股間に伸ばす。
しかしその動きはいきなり凍りついたように止まった。
ルナが無表情に肉球を一瞥しただけで。
再び平伏するダキニ。
そのダキニに対し、予想外のことを言い出すルナ。
﹁元気のいい子だな。私にくれないか﹂
﹁はあっ!﹂
唖然とした顔を上げるダキニ。
﹁し、しかしそれはご覧のように出来損ないで⋮⋮﹂
﹁生かす価値があるかどうかは私が決める﹂
言外にお前の意見に価値などない、というニュアンスがにじみ出
ている。
三度平伏するダキニ。
しかしその手は悔しげに握り締められている。
その時、巨大な犬が唸りだした。
立ち上がり周囲の気配を探るダキニに、やはり無感動に問いかけ
70
るルナ。
﹁ACTか⋮。招かれざる客だが、手に余るなら手伝おうか?﹂
﹁心配ご無用に願います。ここは私のテリトリーです﹂
己の力と自信を上位者に見せつけたいのだろう。
ダキニは不敵に、そして淫蕩に笑った。 71
間章︱︱堕鬼尼︵2︶︵前書き︶
間章が予想以上に伸びてしまいました。
あと1回続きます。
72
間章︱︱堕鬼尼︵2︶
ビルの屋上は月の光に満ちていた。
妖しく、冴え冴えとした月の光が、闇を、そしてけばけばしい人
工の光を押しのけ、洗い流していた。
古より、月は狂気と関係あるものとされていた。
英語で狂気を意味するLunacyは、月︵Luna︶を語源と
する。
実際、満月の夜には殺人事件や放火などの犯罪が多くなるという
データもある。
そして今この場に満ちる月光を浴びた者は、そのことを理屈抜き
に実感するであろう。
人の心の奥底まで照らし、そこに眠る獣を呼び覚ますような妖し
い光であった。
そんな光の中に、著しい違和感を感じさせる者たちがいた。
体長5mに達する巨大なハスキー犬。
黒いライダースーツをまとい、ビルの屋上でありながら大型のオ
フロードバイクに跨った銀髪の美女。
そして犬の尾に遊ぶようにぶら下がる触手付きの目玉である。
女と犬はそこから地上にある墓地を見つめていた。
明るい月光の下から暗い地上を、それもビルの屋上からである。
常識的に見えないはずのものを彼らは凝視していた。
墓石の影に隠れながら進む、武装した一団を。
女が地上から視線を外し、自分の右方に目をやる。
何もない。
ただの夜空だ。そのはずが⋮⋮
73
突如、空中に水がわきだした。
湧き出る水は重力に逆らい、水平に広がり、宙に浮く直径10m
の水面を作り出した。
さらにその深さ0のはずの水底から、何かが浮かび上がった。
女だ。
帆立貝をかたどった椅子に座った、ほとんど全裸の女だ。
その女の特徴を一言でいえば、﹁豊満﹂となるであろう。多くの
女性が憎む脂肪という存在が、必ずしも女性の美を損なうわけでは
ないという見本がそこにあった。
ルーベンスの裸婦像のように脂肪がさらに色気を強くしている。
まるで熟れきって腐り落ちる寸前の果実が甘い香りを出すように。
その白く丸みを帯びた彼女の体をおおうのは彼女の長いウェーブ
のかかった金髪と、無数の真珠を通した飾り紐と、大粒の宝石のみ
だ。むしろ全裸より淫靡である。
その女は左右に武装した少女を侍らせていた。
右に侍るは黒いショートヘアの少女。肘、肩、膝、そして乳房と
臀部、陰部を大小さまざまな二枚貝の貝殻で覆い、背中に両刃の戦
斧を背負っている。
最も露出する肌のほうが多いので鎧の意味があるとは思えない。
左に侍るは、銀髪を結いあげた褐色肌の少女。右の少女と違い巻
ランス
貝の貝殻を鎧としている。やはり露出は多い。股間からは細長い巻
貝がペニスのように突き出ている。武器は螺旋をなす騎兵槍だ。
海から生まれた淫らなビーナスと護衛の女騎士たちといった趣向
か。
男の獣欲を刺激する淫らさを持っていたが、確かに芸術的な美し
さをもった光景であった。
﹁来たか、ヴィヴィアン﹂
﹁今晩は、ルナさん、もう始まったかしら?﹂
74
﹁いや、これからだ﹂
魔性の女たちは、天上の女神のように地を這う者たちを見下ろし
た。
夜の墓場を進軍する者たちがいる。
﹁法治国家、平和な日本﹂の面目丸つぶれ、むしろ﹁何それ、お
いしいの?﹂といわんまでの重武装だ。
全員その体を隙間なく黒い服で覆い、その上から急所を守る装甲
を身につけている。
顔は髑髏のようなガスマスクで隠されわからない。
手にはそれぞれ武器を持っている。
軍事的知識の一切ない素人がみても﹁強そうだ﹂としか思うまい。
少し知識のあるものが見れば呆れるであろう。
アンチマテリアルライフル
みな一般の軍隊が使う武器より一回り以上強力で大げさだからだ。
歩兵用自動小銃を強化した物というより、対物ライフルを軽量化
したような銃だ。
対物ライフル、かつては対戦車ライフルといわれた武器で、人間
相手に使うようなものではない。
現実の軍隊というより、特撮などフィクションに登場する軍隊と
しか思えない。
しかしそれも当然である。
彼らが戦うのは人間ではなく、この世ならぬ化物︱︱ヒメーラだ
からだ。
リベンジャーズ
ACT日本支部、殲滅部隊第二小隊、それが彼らの名称である。
通称、復讐鬼隊。ヒメーラに対し強い憎悪を有する部隊である。
それもそのはず、彼らは皆、ヒメーラに家族や知人を奪われた被
害者であるからだ。
75
中には前身が戦いに縁がない一般人だった者もいる。復讐への執
念が彼らを兵士へと作り変えたのだ。
当然ヒメーラとの混血児である影山冴子を擁する第一小隊とは折
り合いが悪い。
そんな集団の中にひときわ小柄なものがいた。体つきはその人物
が少女であることを示している。
なぜか部隊の中で彼女の動きにだけわずかな無駄がある。
オバケ
﹁何を怖がってるんだよ、穂村。まさか幽霊が怖いなんて言うんじ
ゃないだろうな﹂
近くにいた隊員が少女に声をかけた。
確かに夜の墓場である。肝試しには丁度よい。
﹁ち、違うわよ!確かに気味悪いけど、幽霊なんて珍しくないし!
なんかちょっと変な感じがするだけよ!﹂
﹁変な感じ?どんな感じよ?香代﹂
聞き咎めた女性隊員︵もっとも声を聞かねば女性とはわからない
体型︶が問いかける。この女性赤城京子は少女︱︱穂村香代の姉代
わり、年若い彼女の補佐役を自任している。
﹁んー、なんというか、やけに疲れるというか、視界がクラクラす
るというか⋮﹂
﹁体調、よくないの?﹂
﹁そんなことないけど⋮⋮﹂
﹁むう﹂
香代の言葉に部隊の中央にいた小隊長も首をかしげる。
なぜ年若い少女がこのような部隊に参加しているか、さらに部隊
76
内で発言力を有しているか、その理由は彼女の持つ特異な能力によ
る。
穂村香代は、いわゆる超能力者なのだ。
超心理学によると超能力とは二種類に大別される。
一方は予知や透視、千里眼など通常知りえないことを感知するE
SP。いわゆる霊能者などもこの超能力者の一種と考える者もいる。
もう一方は念力、念動力などと呼ばれるPKである。
そして香代は特殊で強力なPKの持ち主である。復讐鬼隊のエー
スアタッカーと認められるほどの。
それだけでなく、ESPの能力ももっている。こちらは危険を予
知したり、悪意を感知したりと、鋭い第六感ぐらいの評価だが、部
隊を何度も全滅から救った実績がある。
そのため﹁香代の勘﹂は、彼らにとって絶対に軽視できない情報
源である。
余談だが、先ほどの﹁幽霊なんて珍しくない﹂という香代の発言
も、彼女の持つESPの効果の一例である。幽霊、というより残留
思念を感知しているようだが。
﹁しかし、まあ、こう墓場が広くちゃ、疲れても来るぜ﹂
﹁!﹂
何気ない一言に隊長が激しく反応した。
腕時計を一瞥して、部下たちに確認する。
﹁おい、今何時だ!﹂
﹁え、いまは021⋮⋮え!﹂
作戦開始から既に2時間以上経過していた。
異常な事態だ。
2時間かけて横断しきれない墓地、そんな墓地がこの狭い東京に
77
あるはずがない。
そして彼らはなぜ時間の経過に気が付かなかったのか?
﹁時間感覚を狂わせられていたのか、それとも空間が歪んでいるの
か⋮⋮﹂
できれば前者であってほしい、後者の場合、予想以上の強敵にな
る。
そこまで考えた時、隊長の頭に閃くものがあった。
ヒメーラがどちらの手段を使用したにしろ、自分たちの近くにい
なければ不可能だ。
すなわち。
﹁注意しろ!敵が近くにいるぞ!﹂
その命令に反応して円陣を組む復讐鬼隊。中心にいるのは隊長と
香代だ。
しかし円陣が完成する直前、香代の鋭い声が飛ぶ。
﹁下!﹂
全員円陣を解いて、墓石に飛び乗った。地中からの攻撃を想定し
た動きだ。相手は幽霊より恐るべき幻魔である。
そしてその行動は正しかった。
彼らが直前までいた地面から、無数の手が生えた。
﹁ぞ、ゾンビ?﹂
そう、まさにゾンビ映画のようだ。
そして手だけでなく、全身も現れた。
78
ミイラ
﹁というより木乃伊ね﹂
京子の言う通り、現れた死者の群れは黒く捻じれた枯れ木のよう
に干からびたミイラだった。
眼球の抜けた眼窩と大きく開いた口は、見ていると魂を吸いこま
れそうだ。
﹁てえ!﹂
隊長の命令に、正気を取り戻した隊員たちは手にした銃の引き金
を引く。
対ヒメーラ突撃銃、ウッドペッカー。
人間に使えば、ハチの巣どころかミンチでも残ればマシ、といわ
れる凶悪な銃である。
先端に極短の時間差で爆発する爆薬を詰めた弾丸を、特殊な炸薬
を使いヒメーラの生体エネルギーバリヤーをも貫く超音速で打ち出
すのだ。
円陣の内側に現れたミイラたちは、即座に殲滅された。
しかし直後、悲鳴が上がる。
﹁た、隊長!﹂
﹁!﹂
自分たちの周囲を囲むように、新たなミイラたちが地の底からよ
みがえりつつある。
﹁香代!﹂
﹁まかせて!﹂
79
ミイラたちを睨みつける香代。
親の仇をみるように、という言葉がある。
彼女にとってまさにヒメーラは親の仇だ。
幼い彼女の眼の前で母は犯された。
助けに入ろうとした父は、触手の一振りで首をはねられ、壊れた
人形のように倒れた。
そして、母は今まで見たことのない表情をしながら、腹をひきさ
かれて絶命した。︱︱快楽にあえぐ女の顔のまま。
その時だった、彼女の力が目覚めたのは。
﹁汚物は消毒だー!﹂
妙なことを叫ぶ彼女の視線の先、何もない空間に火がともる。
火は渦を巻いて大きくなり、生き物のように墓石の隙間を走り、
パイロキネシス
ミイラたちを呑みこんだ。
精神発火能力。
PKの一種で、御覧のように物質を燃焼させる超能力である。
ミイラたちはあっという間に炭と灰になった。
灰になったミイラたちに残心を怠らない、復讐鬼隊。
﹁ほほほ、面白いことをするの、小娘﹂
誰だと、誰何することもない。
問答無用の銃撃が声に向かって叩きつけられる。
しかしサイレンサーで弱められた銃声とともに聞こえてきたのは、
断末魔の悲鳴ではなく、快楽のあえぎ声だった。
﹁あああ∼ん、いい∼﹂
その声を聞いて、かっとなった香代が敵をにらむ。
80
しかし火は出ない。
それどころか、崩れ落ちるように膝をつく。
﹁ふむ、連続しての使用は不可能、と﹂
銃撃がやむとハチの巣のように穴だらけになった、全裸で坊主頭
の女がいた。
女が体をゆすると、肉から押し出された弾が、金属質な音を出し
てすべて地に落ちた。
女の体には傷一つもない。
﹁そ、そんな﹂
﹁ほほほ、今まで下等な連中しか相手にしなかったようじゃの﹂
わら
口に手をあて嘲笑う女︱︱ダキニ。
﹁く!ひる⋮﹂
ひるむな、と喝を入れようとした隊長だが、それは果たせなかっ
た。
ダキニが飛びかかってきたからだ。
左手で銃を抑えたダキニは、右手で隊長の頭部をつかみ、握りつ
ぶした。
﹁隊長!﹂
隊長の死体から銃を奪うダキニ。
・・
それを使うかと思いきや、銃口を自分の女陰につき込んだ。さら
に器用に足の指で引き金を押す。
連続して弾丸を吐きだす反動、それがダキニに快感を与える。
81
全身を震わせ、巨乳を揺らしてよがるダキニ。
﹁おおおおおおお∼、いいぞいいぞ、この子宮を叩く感じ、頭まで
届く振動、気もちいい∼!﹂
﹁!!!!!!﹂
復讐鬼隊は怒りと屈辱で頭が真っ白になった。
ヒメーラを倒すための武器が、自分たちの隊長の武器が、ヒメー
ラに対し全く無力どころか、オナニーの道具に、バイブ代わりに使
われているのだ。
﹁き、きさま∼!﹂
銃が駄目ならと、ナイフや斧を抜く復讐鬼隊。
彼らの辞書にあきらめという言葉はない。
死んでもヒメーラに一矢報いる、そのために生きてきたのだ。銃
が役に立たなくても問題ではない。
何より香代が回復するまで時間が稼げれば、チャンスはまだある。
しかし、現実は非情であった。
周囲の墓石がふわりと浮きあがったと思うと、煉瓦のように積み
上げられ、壁を作りだす。
﹁!集まれ!﹂
次席指揮官の副隊長が命令を下す。
しかしその言葉も遅く、復讐鬼隊は分断されてしまった。
﹁おほほ、小娘の手品はもう少し後のようじゃ。まずは前座から片
82
付けようか﹂
背後の声に振り向く副隊長。
股間からウッドペッカーを振り子のようにぶら下げて、悠然と立
つダキニ。
﹁殺す!殺してやる!﹂
ナイフを鋭く突きだす副隊長。
そのナイフを首を後ろに跳んでよけたダキニは、そのままの勢い
で背中をそらして倒れ、いわゆるブリッジの態勢になる。ウッドペ
ッカーを咥えこんだ陰部が副隊長に向けられる。
次の瞬間。
﹁が!﹂
高速で吐き出されたウッドペッカーが副隊長の鳩尾に叩きつけら
れた。
くの字になってうめく副隊長の頭を両手でつかむダキニ。
そのまま頭を股間に押し付ける。
驚くべきことにダキニの股間から滴る液体は、副隊長のガスマス
クを溶かし始めた。
顔から白い煙を上げながらもがく副隊長。
しかしその必死な動きも快楽にしてしまうダキニ。
﹁くくく、いいぞいいぞ、もがけもがけ、みな極楽に送ってくれる
わあ!ほほほほほ!﹂
悪夢は始まったばかりだ。
83
香代の能力はビルの屋上の魔女たちの興味も引いていた。
﹁面白い力を持っている娘だ﹂
﹁ええ、ターゲットと違いますが、ほうっておくのも惜しいですね﹂
ルナに応えたヴィヴィアンは、自分の腹部に両手をあてる。
ナメクジ
そのまま脂肪を揉みだすようなしぐさをすると、脂肪の塊が彼女
の体から離れて蛞蝓のような肉塊となる。
﹁そうだな、そろそろ準備しておくか﹂ 己の足元の影を見つめるルナ。
不思議なことに彼女の影が伸び始めた。
光源の移動など一切ないにもかかわらず、だ。
そして伸びきった影は、人ではない別の形を取り始めた。
84
間章︱︱堕鬼尼︵3︶
﹁くそ!ここまで強力とは!化け物め!﹂
赤城京子は石造りの迷宮を走りながら毒づいた。
﹁香代さえ、香代と合流できさえすれば⋮⋮﹂
それが彼女に残された最後の希望である。
そして彼女の願いはかなった。
一つだけ。
﹁京ちゃん!﹂
﹁香代!﹂
墓場の端、森との境界線で二人は出会った。
京子はもっともききたい事を聞く。
﹁あんた超能力は?もう回復してんの?﹂
﹁ごめん、あと少し⋮⋮﹂
﹁そう⋮⋮﹂
期待が裏切られ、少し沈む京子。
﹁で、でも大丈夫だよ!たぶん!もう3時間も連絡がないんだから、
すぐ援軍が来るよ!﹂
京子を励まそうとする香代。
85
しかしその﹁援軍﹂という一言が京子の気に障った。
﹁冗談じゃない!化物の助けなんかいるか!﹂
ブリード
この状況で、自分たちの援軍として派遣されるのは混血の影山冴
子を擁する第一小隊だ。
京子にとって絶対認められないことだ。
辟易とした感じで反論をしだす香代。
﹁い、いや、そこまで嫌うことないんじゃないかと⋮⋮﹂
その言葉が京子の怒りに火を注ぐ。
﹁何でよ!あんただって、あの化け物嫌ってたじゃない!﹂
﹁うん、そうなんだけど、考えてみればあれも被害者といえないこ
ともないし∼、それにこの間助けてもらったから、きついこと言え
ないし∼﹂
たじたじとなりながら、﹃この間﹄のことを思い出す香代。
あの時に自分を助けた黒いしなやかな美獣のことを。
なぜか胸がときめく。
︵だ∼!あたしはレズでも何でもない!これは吊り橋効果!ただの
錯覚なんだから!︶
香代の懊悩にも気付かず、さらに激する京子。
﹁被害者?馬鹿を言うんじゃない!あいつはヒメーラなの!人間の
振りしているだけ!ただの化け物!﹂
﹁ちょっと、それは言いすぎじゃない?﹂
86
さすがにカチンと来たらしい。
香代の雰囲気も険悪になる。
にらみ合う二人。
そこに思わぬ仲裁が入った。
﹁仲間割れとは醜いことよ﹂
突如聞こえてきたダキニの声に、二人は戦慄する。
森の木々が動き出し、上から何かを吊るした枝が下りてきた。
﹁な!﹂
﹁き、貴様!﹂
おりてきた物をみて香代は凍りつき、強化はウッドペッカーを構
えた。
それは自分たちの戦友だったものだ。
彼らの首はない。替わりに木の枝が突き刺さっている。
おそらく木の枝が脳を失った死体を動かしているのだろう。
裸の下半身の中央でペニスが怒張している。
そしてダキニはハンモックのように横につるされた死体を騎乗位
で犯しながら、宙に浮いた死体のペニスを煙草を吸うようにしゃぶ
っていた。
﹁殺す!殺してやる!﹂
京子が吼える。
ぬらりとダキニの眼が光った。。
87
不可視の衝撃を受けて若い女戦士二人は吹き飛んだ。
吹き飛んだ先で木の枝が上から襲いかかり、二人を吊るしあげた。
﹁はなせ!離せ化け物!﹂
﹁この悪魔!殺してやる!殺してやる!﹂
指を鳴らすダキニ。
﹁ほほほ、憎いかえ、わらわが﹂
再び枝がのびて二人の口に侵入し、発言を禁じた。
﹁くくく、決めた。お前たちにはわらわ直々に孕ませてやる﹂
ダキニの肉体が膨れ上がった。
肩幅は広くなり、女性特有の丸みを帯びた体は、男性のように筋
肉質になった。
クリトリスが肥大化し、臍まで反り返ったペニスとなる。
唯、乳房だけは変化を拒んだようにそのままであった。
腕を曲げて力瘤を誇示するダキニ。 恐怖と嫌悪の表情でダキニを睨む香代と京子。
﹁くっくっく、そのわらわを憎む目がいずれは媚を売る眼に変わり、
自ら足を開いて尻を振るようになる。肉欲に負けて自分自身を裏切
り、堕ちてゆくのは何度見ても面白い。さあ、たのしませておくれ﹂
木の枝が香代たちのボディーアーマ︱を引き裂き全裸に剥く。
両手と膝で宙吊りになった香代たちにゆっくり歩み寄るダキニ。
まるでネズミをなぶる猫のようだ。
ダキニの手が京子の胸に伸びる、その時だった。
88
サメの背びれのように何もない空間から突き出た刃が景色を切り
裂いた。ダキニの右腕ごと。
﹁ぎあ!﹂
悲鳴をあげて、傷を抑えながら飛び退るダキニ。
空間の裂け目から黒髪の美女が刀を構えて飛び込んでくる。
即座に香代たちを束縛する枝を切り落とし、ダキニに相対する。
以上の動作は0.1秒もかかっていない。
自分たちを助けた美女に対し、助けられたものたちはそれぞれ違
う表情を浮かべた。
嫌悪と怒りの表情の京子。
赤くなった香代。
︵うう、どうしよー、吊り橋効果じゃないかも⋮⋮︶
そんな二人を気にする様子のない冴子。
﹁おのれ!空気の読めぬやつ!ACTの半端者か!﹂
ブリード
冴子が半端者、すなわち混血と見破ったダキニ。
答えず、冴子は逆袈裟に刀を切り上げた。
その刀が止められた。
刀の切っ先がダキニの乳房に突き刺さっていた。
傷口から緑色の松脂のようなものが滲み出て、切っ先をからめ取
っている。
動きの止まった冴子に、ダキニの回し蹴りが襲いかかる。
ダキニの脚は大きく開かれ、股間の奥底まであらわになり、胴体
に加わったひねりは乳房を揺らす。
冴子は刀を手放し、後ろに飛んで逃れた。
89
自分の胸に刺さって刀を、切っ先近くでへし折り、自ら手にする
ダキニ。
﹁自分の武器で死ね!﹂
大上段に構えてきりかかるダキニ。
半身となった冴子は振り下ろされる刀身のすぐ左を通って、ダキ
ニの手を抑え、巻き込むようにして刀を奪い返した。いわゆる無刀
取りである。
﹁使いなれない武器は使うものじゃないわ﹂
ボソリとつぶやいて、振り向いたダキニに刀を横に振る。
ダキニの頭が円盤のように飛んだ。
一瞬顔をしかめた冴子の、左回し蹴り。しなやかな脚線美がダキ
ニの体をホームランにする。
ダキニの体は石壁に蜘蛛の巣状のひび割れを作った。
﹁や、やったの?﹂
全裸の体を手で隠しながら、香代が尋ねる。
しかし冴子は首を振った。
﹁こいつ、本体じゃないわ。使い魔よ﹂
﹁え!﹂
力の強いヒメーラは、自らの細胞組織から下級のヒメーラを作り
出すことができる。
魔女と呼ばれるものは特に好んで作る。
ACTでは便宜上これを使い魔と呼ぶ。
90
﹁⋮⋮なんでそんなことがわかる?﹂
剣呑な声の京子の問いに、事務的に返答する冴子。
﹁手ごたえがないのよ、脳に核もなかったし、たぶん自分の細胞か
ら作った操り人形の類ね﹂
﹁なんだと⋮⋮﹂
の脳裏を黒い考えがグルグル回る。
自分たちが倒せなかった敵を簡単に倒した⋮⋮
その倒せなかった敵はただの操り人形⋮⋮
自分以上にヒメーラを倒している⋮⋮
⋮⋮同じ化物のくせに!
幸運にも京子が黒い感情を爆発させる前に、怒りのぶつける相手
が現れた。
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁ほほほほ!よくぞ見破った半端者!﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹂
全く同じ口調、同じ声の複数の嘲笑が響きわたる。
同時に地面から花の蕾のようなものが、冴子たちを囲むように8
本突き出てきた。
すぐに蕾が花開く。
そこには先ほどと変わらない姿のダキニが結跏趺坐で座っていた。
それも8人。
﹁ほほほ﹂
91
﹁おまえたちに﹂
﹁もう希望はない﹂
﹁分身すべてを使って﹂
﹁抑え込み﹂
﹁ねじ伏せて﹂
﹁犯してやる﹂
﹁まわしてやる﹂
8人のダキニが飛びかかってきた。
一瞬、冴子は香代と京子を見た。
自分の殺意に反応されたようでひるむ京子。
しかし冴子はすぐに振り返り、両脚蹴りを放ってきたダキニを迎
え撃つ。
ダキニの蹴りの威力を殺さず、その力のベクトルを変えるように、
足首の関節を決め振り回す。
ハンマー投げのハンマーのごとく振るわれたダキニの体は、空中
の姉妹を弾き飛ばした。
そこに我に返った京子のウッドペッカーの一斉射撃。
三人ほど頭が吹っ飛んだ。
﹁言ったでしょう、使い慣れない武器は使うもんじゃないって﹂
﹁なんだと?﹂
わら
ダキニを冷たく嘲笑う冴子。
﹁あなた分身を8体も使うのって初めてでしょ。1体の時に比べて
動きとか雑なのよ﹂
﹁そ、そんなはずない!﹂
﹁その割にはウッドペッカーが通用していたようだけど﹂
﹁!﹂
92
愕然とするダキニ。
その10の眼は冴子と京子に集中している。
わずかとはいえ自失していたダキニだが、突如含み笑いを始めた。
﹁ふふふ、そうかそうか﹂
﹁まだまだ甘く見ていたか﹂
﹁しかしもう油断せぬ﹂
﹁分身すべて使い捨てても﹂
﹁お前たちを殺す﹂
己の余裕を見せつけるダキニ達。
しかし冴子は冷笑するのみ。
ダキニ達が怒りの声を上げようとしたその時、異変が起こった。
﹁ぎゃああああああ!﹂
いきなりダキニの一人が燃え上がったのだ。
ダキニ達は、自分たちが冴子に気を取られ過ぎ、香代に対して警
花
の一つが燃えている。
戒するのを忘れていたことに気付いた。
分身を操るアンテナでもある
しかし時すでに遅し。
﹁導火線くれて、ありがと!﹂
花のすべてが燃え上がった。
同時に分身すべてが燃え上がる。
それだけではない。
茎から根を伝って炎が本体に向かって走ってくる。
93
﹁いかん!根を切って逃れなければ!﹂
導火線となった根を切って、本体の安全をはかろうとするダキニ。
しかし炎は切られた根に飛び火してさらに本体に迫る。
﹁ば、ばかなぁああ!﹂
普通の炎なら、根を切るだけで十分だろう。
しかしその炎は怒りと憎しみと恨みと絶望が、文字通り生み出し
た炎なのだ。
たやすく消せるはずがない。
地中から燃え盛る球根が現れた。
﹁がああああああああああ!﹂
断末魔の悲鳴を上げながら炭となって崩れ落ちようとする球根。
冴子たちの気がわずかに緩む。
その虚を突かれた。
﹁ジネェげげええ!﹂
﹁本体か!﹂
球根が割れて全裸のダキニが無傷で現れた。
両の脚で冴子の頭部を挟む。
﹁このまま首をへし折ってくれるわアア!﹂
体をひねって反転させるダキニ。
94
脚の力だけでなく、遠心力も使って冴子の首を折ろうとしている
のだ。
その動きに合わせて冴子も跳んだ。
﹁しつこいぞ!﹂
再びダキニがはねる。
冴子も跳ぶ。
﹁くそ、狙いがつけられない!﹂
ウッドペッカーをダキニと冴子に向ける京子。
﹁ちょっと、影山まで撃つ気?﹂
﹁構うものか!どうせ化け物だ!﹂
﹁助けてもらったのに!それはないでしょ!﹂
﹁邪魔するな!﹂
冴子ごとダキニを撃とうとする京子と、それを止めようとする香
代。
二人のいさかいが一瞬、ダキニの動きを止めた。
﹁!﹂
冴子が手に持った刀をダキニの太股に突き刺す。
一瞬、わずかに力が緩む。
その緩みを逃さず冴子は首をを動かし、ダキニの太股にかみつい
た。
﹁ぎい!な、なんのー!﹂
95
痛みをこらえて再び体をひねるダキニ。
今度は冴子は動かない。
その動きを利用して太股の肉をかみちぎる。
﹁うぎゃが!﹂
たまらず足を開いたダキニ。そのまま頭から落ちる。
冴子がその頭を掬うように蹴り上げた。
ダキニの体が半回転し頭が上になる。
その頭に冴子の刀が振り落とされる。
折れた刀が鉈のようにダキニの坊主頭を叩き割った。
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼!!!﹂
計上しがたい断末魔の声。
どろりと傷口から黄色い眼玉が現れる。
しかしすぐに力尽きたように崩れだした。
真っ二つにされたダキニの顔が嘲笑の表情を作る。
﹁み、見事、見事よ、半端者。し、しかしいずれは貴様も、こ、こ
うなる運命。みたか。あのお前を撃とうとした女を。いずれはお前
も⋮⋮﹂
﹁⋮⋮それがどうした﹂
冷たい冴子の言葉に、一瞬だけ面食らったダキニ、すぐにまた嘲
笑を浮かべる。
﹁ジ、地獄で待っておるぞ∼∼∼!﹂
96
呪いの声を残してダキニは幻のごとく消滅した。
冴子は無表情にそれを見ていた。
97
Lady Soldier Meets Boy︵Final︶
第二小隊救出任務を完了した私たちが帰還した時、基地は大騒ぎ
だった。
基地内にヒメーラが侵入したという。
最悪の可能性の一つに私は凍りついた。
はずれていてほしいと、切に願う。
しかし現実は非情であった。
﹁あの小僧がヒメーラになっちまった﹂
人生で初めて気が遠くなるという感覚を味わった。
﹁ふーん、せっかく助けたのに、結局殺さなきゃいけないんだ。誰
のせいかしらねー﹂
日ごろから私に憎悪をぶつけてくる赤城京子が、嫌みたらしく言
う。
うるさい。お前に言われなくてもわかっている。
私のせいだ。
私のあさましい肉欲と嫉妬が、彼から未来も人の尊厳も奪ってし
まった。
私のように愛される資格も愛する資格もない化け物が。
死のう。
彼を殺して。
すとんと結論が胸に落ち着いた。
98
自分でも意外に思うほど未練を感じない。
そんな私を現世に引き戻したのは友人の中山由美の言葉だった。
﹁んー、誰か悪いっていうか、無茶苦茶運が悪いというか、ある意
味奇跡というか⋮⋮﹂
運が悪いのは確かだ、私とかかわったばっかりに。
﹁とりあえず状況説明すると、あの子残ってんのよ、理性とか人格
が﹂
﹁⋮⋮⋮⋮は?﹂
あまりに意外なことを聞いて、全員理解に時間がかかった。
普通ヒメーラに寄生された男性は、破壊衝動の塊となって暴れま
わるはずだ。
﹁いやー、いきなり目の前にチンコイカが現れたと思ったら、書類
拾って﹃すみません﹄と謝るわ、更衣室に籠城したと思ったら、﹃
なんじゃこりゃあ!﹄と絶叫するわ、もー、こっちこそ、なんじゃ
こりゃー、よ﹂
﹁チンコイカって⋮⋮お前、その若さで女捨てんなよ、羞恥心とか
ないのか﹂
﹁そんなもん持ってたら、こんなとこで働けませーん。その後も情
99
報部の凸凹トリオと普通に会話しているし、ちょーっとパニクって
るけど、それは無理ないわよね﹂
⋮⋮由美と大山隊長のやり取りとか、色々と突っ込みたかったり
同意したいこともあるが、最初に確認したいことを口にする。
﹁つまり、彼はヒメーラに寄生されても、まだ脳までは支配されて
いないということ?﹂
救いがあるように聞こえるが、実は全くない。
一度ヒメーラに寄生された後、宿主とヒメーラを分離する方法な
どない。
また、今までにも寄生されてしばらくは正気を保っていた事例が
わずかにあるらしい。
人間
のままであ
しかしその状態はごく短い時間しか保たなかったそうだ。
獣に堕ちた後ならともかく、心だけとはいえ
る彼を殺すことが私にできるだろうか。
いや、できるできないではなく、やらねばならない。これは私の
義務だ。
彼の怒りと憎しみ、絶望をすべて甘んじて受けとめよう。
それが私への罰だ。
心を決めながら、由美の返答を待つ。
しかし返ってきた返答は意外なものだった。
﹁寄生?されてないよ﹂
理解するのに、再度時間を要した。
﹁ちょ、ちょっと、ふざけてるの!﹂
﹁ふざけてないよ。結論から言うとね、あの子、アンタの同類なん
100
だな、おサエ﹂
軽く言われたその言葉に息をのむ。
﹁いやー、あの子のデータどっかで見たような気がすると思ってた
ら、アンタのデータに似てたんだわ、これが、どこがと聞かれても
ブリード
微妙なとこなんでうまく説明できないけど﹂
﹁やはり、あの小僧、混血か⋮⋮﹂
隊長のつぶやきを聞いて反射的に問い詰める。
﹁隊長!知ってたんですか!﹂
私の剣幕に、普段豪胆な隊長もたじろぐ。
ちから
﹁い、いや、最初にヒメーラにあったとき、なんか奴らの能力が効
かなかったみたいだし、たてつづけにやつらに会うからなんかある
かと思ってな、ブリードならある程度説明できるなと﹂
おおー
さすが隊長、と周囲から感嘆の声が上がる。
なぜかきまり悪げな隊長。
﹁つまり、閉じこもってる奴の父親が化物だったわけ?﹂
ツインテールの少女︱︱穂村香代の言葉に彼の家族について思い
出す。
心配でやつれた母親と、仕事中で忙しいいうことで見舞に来ない
父親。
101
実の父でないということなら⋮⋮
﹁いや、両親ともに人間﹂
﹁なによ、それ﹂
矛盾したことを言う、由美に怒りと殺意がわいてくる。
﹁おい、俺たちだって、疲れてるんだ、話を早く進めてくれ﹂
怒り出したのは私だけではない。
由美は両手で押さえる仕草をしてから語り始めた。
﹁実はブリードの可能性ありと分かった時点で、情報部に両親の遺
伝子とか調べてもらったのよ、で結果は両親ともに人間、しかも血
のつながった親子﹂
皆が首をひねりだす。
﹁ただ母方の曽祖父、お祖母ちゃんの父親について全く情報がない
のよね﹂
﹁!﹂
﹁しかも曾お祖母さんはお祖母さんを産む直前に神隠しにあってい
るのよ、見つかった時には気がふれていたそうよ﹂
現代でもヒメーラの被害者の多くは行方不明として扱われている
⋮⋮
﹁いや、時代的に言って、終戦直後だろ、だったら⋮⋮﹂
確かに治安が悪い時代だ⋮⋮
102
﹁うん、その可能性もあるけど、この曽祖父=ヒメーラ説が一番可
能性が高いのよ、いわばあの子は先祖返りってわけ﹂
皆に納得した空気が流れた。
同時に同情に満ちた空気も。
﹁何というか、運のない奴⋮⋮﹂
﹁⋮⋮ひでー運命⋮⋮﹂
運命。
その言葉が私の胸に響いた。
﹁そんなことはどうでもいいでしょう!早く殺さないと!﹂
苛立ちに満ちた声を上げる京子に、白い眼が向けられる。
雰囲気が険悪になりかけた時、冷たい声が割って入った。
﹁いいや、捕獲だ﹂
ACT極東支部の司令、氷の魔女、氷室鞘香だ。
捕獲用装備、ボンド・ランチャーを装備した第三小隊をひきつれ
ている。
﹁何故ですか!今は正気を保っていても、いずれ完全に化物に⋮⋮﹂
﹁黙りなさい!﹂
103
ヒステリックな声で京子を止めたのは、司令ではなく研究部部長
の里見智子博士だ。
最も彼女に慈悲とか人道など期待してはいない。
﹁貴女には分からないでしょうけど、﹃アレ﹄は貴重なサンプルな
のよ﹂
やっぱり。
新しくて珍しいモルモットを失いたくないだけだ。
﹁アイノコだったら、ここにもいるじゃないですか!﹂
私を指さして叫ぶ京子。
﹁それとは希少価値が違うの!隔世遺伝とか、先祖返りとか、男性
のブリードでありながら理性を保っている。まさにイレギュラーの
塊、研究のし甲斐があるわあ﹂
恍惚とした表情のマッドサイエンティスト。
それでも人間味がある分司令より理解できる。
﹁ただ今戻りました﹂
白けた空気の流れる中、彼の立て篭もる更衣室の方から、黒眼鏡
の三人組が帰ってきた。
司令が確認する。
﹁説得に応じたか﹂
﹁言え、我々のことは一応信用してくれたようですが、殺すにしろ
104
捕獲するにしろ、影山を出せとの一点張りでして﹂
その言葉が私の胸を打つ。
彼が私に会いたがっている。
﹁ふん、運命の女というわけか﹂
司令が私を一瞥して何を思ったかそう言った。
運命。
確かに私たちが出会ったのは運命だ。
私は彼を失いたくない。
天啓。
私の脳裏に電撃が閃いた。
﹁かまうことないわ!司令!突入を!﹂
キャンキャン吠えたてる博士に制止をかける。
﹁待って下さい、博士。ここは私に任せて下さい﹂
かみつくように博士がわめきだす。
この性格を上手く利用すれば⋮⋮
﹁あなたね!聞いていなかったの!アレはあなたよりずっと価値あ
るサンプルなのよ!殺すなんてもったいないことできるわけないで
しょう!﹂
﹁はい、私も彼を殺すつもりはありません﹂
﹁じゃ、どうするつもり!殺ししか能のない低能のくせに!﹂
﹁彼を自分の意思で我々に協力させます﹂
105
博士は少し冷静さを取り戻したようだ。
﹁説得するつもり?﹂
﹁はい、鈴木さんの報告では彼も私を指名しているようですし﹂
﹁危険はないの?あなたの価値はもうないというわけではないのよ﹂
本当にモルモットのことしか気にしていない。
しかしこんな性格だからこそ、さらに興味を引くことがあれば⋮⋮
﹁大丈夫です。私と彼はいわば﹃同じ生き物の雄と雌﹄です。雄が
子供を産む雌を殺すとは考えにくいでしょう﹂
由美が額を抑えた。
私が何を考えているかわかったのだろう。
﹁色仕掛けでもするというの?﹂
﹁はい、私の肉体を彼に与えます﹂
ざわりと周囲がどよめいた。
﹁ちょっ、ちょっと、なんで影山がそんなことしなきゃいけないの
!セクハもがっ﹂
香代が何か言おうとしていたところ由美が押さえた。
ありがたい、もうしばらく邪魔しないでいてほしい。
﹁博士の仮説では確か、人間のヒメーラ化には性衝動が関わってい
る可能性が強いということでしたね。男性のブリードは第二次性徴
を迎える13歳前後ですべて覚醒してしまうことはその傍証だと﹂
106
男性陣から納得した空気が流れる。
﹁そうなんだよなー、13の時ってエロい事ばかり考えてたよなー﹂
﹁ズボンの前隠すの大変だったぜ﹂
﹁一生で一番エロイ時期じゃね?﹂
女性陣が一瞬冷たい視線を送った。
﹁そう、そのとおりよ﹂
周りの雰囲気もモノともせず得意そうな博士。
﹁つまり、性欲を解消できる相手、セックスの相手がいればヒメー
ラ化を止めることができると考えられませんか?﹂
博士の顔に両目と口で3個の〇ができた。呆れているのであろう。
すぐにさげすみの表情になる。
﹁単純な!アレが覚醒したのは生命の危機に陥ったからよ!そうに
決まっているわ!﹂
﹁そして生命の危機に陥った生物は、子孫を残そうと異性を探す、
違いますか﹂
反論が思いつかず黙りこむ博士。
追撃開始。
﹁さらに、この実験が成功して上手くいけば、ブリード同士の間に
生まれた子供という、さらに貴重なサンプルが手に入りますが﹂
ひどい。
107
罪深い女だ、私は。
彼の未来だけでなく、これから生まれてくる子供の未来すら売り
渡そうとしている。
それでも私は彼が欲しい。
唾を呑み込んだ博士が司令に向き直る。
作戦成功のようだ。
皆の注目を集めながら、私は体に一枚のシーツだけをまとって階
段を下りる。
﹁本当はさー、ウェディングドレスぐらい着せてあげたいとこなん
だけど、駄目だって﹂
由美はぼやいた。
﹁すぐに脱ぐんだから必要ないわ、というよりあるの?そんなの﹂
﹁なぜかあるんだな、これが。結婚式の偽装でもしたのかしらね﹂
そこで、黙りこくる由美。
﹁⋮⋮本当にいいの?﹂
﹁ええ﹂
心配する彼女に自信を持って答える。
108
﹁はー、全くそんなきれいな顔されちゃ、反対できないじゃない、
もーいい、幸せになんな﹂
処置なし、といった顔で首を振る由美。
﹁ふふ、ありがと﹂
﹁ええい、くそ﹂
いきなり隊長が髪をかきむしった。
﹁どうしたんです?隊長﹂
﹁娘を嫁にやる親父に気持ちがわかった気がするんだよ﹂
思わず口を抑える。
﹁⋮⋮調査によるとおとなしそうな奴だが、これから先どう変化す
るかわからん。嫌なことがあったらすぐ相談しろ﹂
隊長の後ろで、そうだ、そのとおり、といった声が上がる。
私は初めて自分が周囲に受け入れられていたことを知った。
﹁ありがとうございます﹂
精一杯の感謝をこめて頭を下げる。
なぜか皆どよめいた。
109
暗い廊下を一人で歩く。
閉ざされた更衣室の前に立つ。
扉の向こうにから震える彼の息遣いが聞こえてくる。
これから私と共に歩んでゆく彼の名前を呼ぶ。
もしかして初めてのことではなかろうか。
﹁甲児くん﹂
我ながら甘やかな響きの声だった。
110
Lady Soldier Meets Boy︵Final︶
︵後書き︶
今回はエロなしです。すみません。
このあと二人の初夜になりますが、もう少し納得いくまで仕上げて
から投稿します。
111
初夜︵前書き︶
もっと甘甘な感じにしたかったんですが、これが限界です⋮⋮︵嘆︶
112
初夜
甲児は混乱していた。
自らの指定した死刑執行人、死ぬ前に一目会いたいと願った女性
が。
自らの前で美しい裸身をさらしていることに。
夢にまで見たものが眼前にあった。
胸の膨らみはまん丸な球体をなし、腰のくびれから太腿まで美し
くも、弓のようなしなやかさを感じさせる。
白い肌はほんのりと赤みをさしていてもなお白く、長い黒髪とコ
ントラストを作る。
そのような美しさを誇る生き物が、自分の前で無防備に裸身をさ
らしていた。
﹁や、やめろぉお!﹂
自らの体の一部である忌わしい触手の群れが、無防備な全裸の冴
子に襲いかかった。
持てる意志の力すべてを使って、制止する。
触手たちは冴子の眼の前で凍りついたように停止した。
﹁なんで、どうして!裸なんですか!僕を殺しに来たんじゃないん
ですか!﹂
泣きが入った、甲児の叫びに冴子は微笑みを返し、目の前の触手
をなでる。
何度も刀で切り落とし、歯で噛みちぎったいまわしい肉の蛇。
それがこんなに愛しく感じるとは⋮⋮
113
﹁甲児君﹂
愛しい少年の名を半ば陶酔しながら呼ぶ。
﹁私を抱いて﹂
﹁え?﹂
その言葉に、少年の脳は混乱したが、肉体︱︱触手たちは素直に
反応した。
冴子に巻きつき締め上がる触手の群れ。
﹁ん、んんん、はう﹂
触手から伝わる熱い体温が、冴子の体の火をさらに燃やす。
触手がうごめく。
胸や尻の丸みが波打ち、その豊かさを強調する。
触手に頭を押さえられていた乳首が、乳房の弾力で跳ね上がる。
﹁さ、冴子さん⋮⋮﹂
己の下半身の行動を呆然と魂を抜かれていたように見ている甲児
の肉体に、またも変化が現れる。
かつての股間、ペニスが生えていた場所から一際太い触手が伸び
て、犀やカブトムシの角のようにそそり立つ。
﹁うわ!こ、これは!﹂
羞恥心がよみがえり、両手で股間を隠す。そして完全に泣きなが
ら、冴子を詰問した。
114
﹁なんですか!抱いて、って!怪物を、僕を殺すのが仕事でしょう
!下手な同情はやめて下さい!﹂
﹁同情なんかじゃないわ!﹂
自分でも驚くほど強く否定する。
一拍置いてから続ける。
﹁甲児くん、貴方が、今の姿になった原因は聞いた?﹂
息をのむ甲児。
見た眼に分かるほど落ち込んで答える。
﹁⋮⋮僕の先祖がヒメーラだったらしいって聞きました⋮⋮﹂
できる限り、何でもないように、彼を安心させようとする冴子。
﹁そう、貴方は人間とヒメーラの混血、私と同じ、ね﹂
同じ。
その言葉を聞いて甲児の首が跳ね上がる。
﹁さ、冴子さんも?﹂
﹁ええ﹂
絡み合う二人の視線。
二人にはお互いの顔しか見えていなかった。
﹁だからこそ、私たちは惹かれあった。貴方がわたしのことをきれ
いだと言ってくれた時、大勢の中から一目で貴方を見つけ出した﹂
115
﹁さ、冴子さん⋮⋮﹂
﹁きっと二人とも本能でわかっていたのよ、自分たちが同じ生き物
の雄と雌だって。同情なんかじゃない。わたしはあなたに抱かれた
い。貴方と一緒に生きていきたい。だから今ここにいるの﹂
﹁冴子さん⋮⋮﹂
﹁私はずっと一人だった。私を受け入れてくれる人もいる。だけど、
何かにつけ、自分が人とは違う生き物だと思い知らされてきた。だ
からずっと一人で生きて、一人で死んでいく、そう思っていた﹂
﹁冴子さん⋮⋮﹂
﹁でも、私はあなたに出会えた。もう一人は嫌!貴方なしなんて考
えられない。貴方が欲しい!﹂
﹁冴子さん⋮⋮﹂
呆けたように冴子の名前を呼び続ける甲児。
﹁愛してるわ、甲児くん、貴方のすべて、私にちょうだい!私を貴
方のものにして!﹂
﹁冴子さん!﹂
触手の群れが美しい獲物を本体に引き寄せる。
急所に太い牙が撃ち込まれる寸前、冴子から制止が掛けられる。
﹁ま、待って。お願い、ちょっと待って﹂
両腕を伸ばし、かなり強い力で、甲児と距離を取る冴子。
﹁お願い。まずはキスをして、その、初めてなの⋮⋮﹂
裸身をさらしていながら、今更のように赤くなる冴子。
その表情が甲児の、独占欲、征服欲に火をつける。
116
甲児は両腕と触手の力すべてを使い、己の体に冴子の体を密着さ
せる。
﹁好きだ!冴子さん!﹂
甲児は、獲物に食らいつく獣のように冴子の唇を奪った。
二人の歯がぶつかる。
そのまま互いの呼気を貪るように口を吸いあい、より深く結びつ
こうとするかのように舌をからめ合った。
既に高まっていた甲児の興奮が頂点に達したのだろう。
触手の群れが白い粘液を吐きだし、冴子の体を汚した。
思わず唇を離して、冴子にわびる甲児。
﹁ご、ごめん、冴子さん﹂
しかし冴子は気にするなと甲児にほほ笑む。
﹁いいのよ、私にもっと印をつけて!貴方のものだって!貴方の匂
いで私を染めて!﹂
﹁冴子さん!﹂
自分を求める冴子の唇を再びふさいでから、触手を操り冴子の体
を持ち上げる。
甲児の眼前に冴子の豊かな乳房が現れる。
﹁冴子さん、このおっぱいはもう、僕のものなんだね⋮⋮﹂
﹁ええ、そうよ﹂
熱に浮かれたように確認する甲児に、うっとりと応える冴子。
117
その答えを聞いた甲児は、両手で肉の球体を鷲掴みにして、乳首
を吸った。
﹁ん、ちょっと痛いわ⋮⋮﹂
甲児に抗議する冴子。
しかし積極的にやめさせようとするつもりはないようだ。
むしろその痛みを快感としていた。
冴子の乳房をぺろりとなめ上げた甲児は再び触手を操り、冴子の
体を裏返しにしながら持ち上げ、臀部を目の前に持ってくる。
先ほどまで舌と両手での愛撫を受けていた両の乳房には、その形
を強調するように触手が巻きついた。
﹁このお尻も僕のものだ⋮⋮﹂
﹁ああ!そうなの!﹂
冴子の尻に対する所有権を宣言した甲児、その甲児の宣言が冴子
の性感を刺激する。
さらに甲児の手による愛撫を受け、冴子の秘所から愛液があふれ
だした。
また触手を操り、冴子の体をくの字型に折り曲げる。
冴子は両足を大きく広げた態勢で、自分の脚の間から顔を出すよ
うな態勢になる。
当然秘所は、甲児の目の前だ。
﹁冴子さん、こんなに濡れてる⋮⋮﹂
呆然とした声で、冴子の股間の状態を口にする。
118
﹁あなたの、あなたのせいよぉ、貴方に抱かれたくて、わたし、こ
んな淫乱になっちゃったのぅ、だから、お願いィ、責任とってぇ!﹂
﹁冴子さん!﹂
少年は股間の牙を冴子につきたてた。
後ろから獣の体位で冴子を犯す。
﹁ひぐぅう!﹂
﹁ああああ!﹂
甲児と冴子が一つになった瞬間、甲児は精を放ち、冴子は破瓜の
痛みと絶頂を同時に味わっていた。
﹁さ、冴子さん、ごめん、中に出ちゃった﹂
﹁いいの、いいのよ、もっと出して﹂
﹁で、でも﹂
﹁あなたの子供が欲しいの!あなたの赤ちゃん産みたいのぉ!﹂
甲児の男としての支配欲、征服欲が加速する。
そのまま、腰を、触手を、全身を動かして、冴子の体を蹂躙する。
﹁ああ!すごいぃ!すごいのぉ!﹂
﹁好きだ!冴子さん!愛してるぅ!﹂
﹁私もぉ、私も好きィい!愛してるぅ!﹂
﹁出すよ!冴子さん!僕の子供産んで!たくさん産んで!﹂
﹁ああ!ちょうだいィ!甲児クンの精液全部ちょうだいィ!﹂
冴子の女性器を貫いていた触手だけでなく、すべての触手が精を
放ち、冴子の体を白く汚す。
119
﹁やだぁ!外に出さないでぇ!中に!中にいっぱい出してほしいの
ぉ!﹂
﹁大丈夫、絶対、冴子さんを、妊娠させるから﹂
触手の群れが、冴子の体をひねる。
冴子を貫いている触手が軸となって、冴子の体が半回転して裏返
る。
向かい合って交わる態勢になった二人。
なぜかいきなり、冴子は両手で顔を隠した。 ﹁だめぇ!お願い!顔を見ないで!﹂
﹁見せて!﹂
﹁いやぁ!わたし!感じすぎて、おかしくなってる!絶対変な顔し
てるぅ!見ないでぇ!﹂
﹁いやだ!見る!﹂
顔を隠す冴子の両手を、自らの両手で抑え、舌を出してあえぐ女
の顔をあらわにする。
甲児はその舌に吸いつくように、冴子の唇を貪る。
舌で冴子の口をたっぷり犯した後、口を話して宣言する。
﹁冴子さんはもう僕のものなんだ!だから、冴子さんがどんないや
らしい顔していても、見ていいのは僕だけなんだ!﹂
再び蹂躙を始める甲児。
さらに余っていた触手が、冴子の口と肛門に押し入った。
﹁∼∼∼∼∼∼!!!!﹂
120
最初苦悶の表情を浮かべていた冴子だが、だんだんその顔が快楽
に酔う表情となってゆく。
﹁気持ちいい!冴子さん!気持ちいい!﹂
冴子を完全に征服した満足感を覚えた甲児。
その満足感は冴子が白目をむいて、断末魔の悲鳴を上げるたびに
最高潮に達した。
﹁ひぐっ!まだひぐぅう!﹂
﹁いって!﹂
﹁らめぇえ!﹂
﹁出る!﹂
幾度絶頂に達したか。
ありったけの肉欲を吐きだしあった二人は、奇妙に澄んだ心境に
なっていた。
いつの間にか甲児の下半身は元に戻っていた。
未だ力を失わないペニスを除いて。
冴子はそのペニスを見て優しく微笑み、ゆっくりと両腕を、両脚
を開いて甲児を誘う。
同じようにゆっくりと優しく甲児は冴子に覆いかぶさり、緩やか
に波打つように腰を動かしだした。
そして緩やかに二人は高まってゆく。
﹁さっきみたいに激しいのもいいけど、こういう穏やかなのも素敵
ね﹂
﹁うん、本当の意味で愛し合ってるって感じがする﹂
121
微笑みあった二人は、穏やかに唇を重ねて、緩やかに絶頂に至っ
た。
﹁愛してるわ、甲児クン﹂
﹁僕も冴子さんが好きです。愛してます﹂
122
間章︱︱暗躍する影
AMT極東支部地下の更衣室に侵入した、幻魔殲滅部隊の見たも
の。
それは幼いイエスを手に抱く聖母マリアのような、眠る甲児を抱
いて微笑む冴子の姿だった。
だがそのとき誰も気づかなかった。
物陰に潜む蛞蝓のような小さい生物に。
そして、なぜか狼の姿をとる何かの影の存在に。
﹁うおおおおお!﹂
﹁ああああああ!﹂
海底の洞窟に嬌声が二つ響き渡る。
肉の球体が4つ踊る。
銀髪の細身の女が、金髪の豊満な女性にのしかかり、腰を振るた
びに、二人の女の乳房が暴れまわる。
みずみずしい果実のような銀の女の乳房がゴム鞠のように弾む。
脂肪がたわわに詰まった金の女の乳房が嵐の海のように波打つ。
二人の下半身に目を向けると、そこには異様な光景があった。
銀の女の陰核が長くのびて陰茎となって金の女の秘裂を貫いてい
る。
そして銀の女の秘裂は、金の女の蛞蝓のように変化した右脚に貫
かれている。
二人の女は互いに相手を犯しながら、相手に犯されていた。
123
﹁ううううぐぐ﹂
﹁あああああああ!﹂
銀の女︱︱ルナの動きが激しくなる。
歯をくいしばって耐えるルナ。
対照的に口を大きく開けてよがる金の女︱︱ヴィヴィアン。
﹁イキますわ!ルナさん!﹂
﹁私もイク!﹂
ルナが背を反らして叫ぶ。月に吠える狼みたいに。
二人の秘裂から白い液体が洪水のようにあふれ出す。
同時に二人の腹が風船のように膨れ上がる。
荒い息を吐きながら離れる二人。
﹁すごかったですわ、ルナさん﹂
膨れ上がった腹部を愛おしげにさすりながら淫蕩に微笑むヴィヴ
ィアン。
﹁私もだ。こんなに燃え上がったのは久しぶりだ﹂
顔を赤らめて満足そうにうなずくルナ。
﹁男の子だといいな﹂
﹁あらあら、せっかく見つかったというのに、まだ男の子が欲しい
のですか﹂
膨れた腹に満足そうに手をあてながら続けるルナに、呆れたよう
124
に答えるヴィヴィアン。
﹁確かに、あの小僧は純血種に近い雄だ。間違いなかろう。だが我
々の王足りうる器とも思えない。保険は多いほうがよい﹂
真剣な顔になるルナに、ヴィヴィアンは余裕の表情を崩さない。
﹁うふふ、気にすることはありませんわ。私たちであの王子様を導
けばいいのですわ﹂
﹁逆光源氏計画というわけか。だがどうするのだ?﹂
当惑するルナに、おかしそうに笑うヴィヴィアン。
﹁うふふ、簡単なことですわ。ただ、教えて差し上げればよいので
す。雌を支配して、その肉を貪る喜びを。薄皮一枚の人間性など、
すぐに消えてなくなりますわ、はぁ!﹂
ヴィヴィアンの秘裂から毛の生えた獣の尾のようなものが数本顔
を出した。
尾が動くたびにヴィヴィアンの顔が快感に歪む。
この淫らな魔女は、己が腹の子供に胎内から犯されてよがってい
るのだ。
﹁既にもう手は打ってあります、あおお!﹂
﹁手回しのいいことだ⋮⋮む﹂
ルナのマニキュアを塗ったように銀色に輝く爪が刃のように伸び
た。
ルナがその爪の伸びた手刀を振ると、三日月型の銀の光の刃が通
路の奥へ飛んでゆく。
125
﹁気のせい⋮⋮か?﹂
﹁あひいい!いく!いくぅう!﹂
不審を覚えるルナの背後で、ヴィヴィアンが絶頂を迎えながら出
産を始める。
彼女が産んだのは、人間で言うなら三歳ぐらいの幼女、ただし太
く毛深い尾が何本も生えている。
﹁やれやれ、騒がしいことだ⋮⋮むぐっ!﹂
いきなり腹を抑えて座り込むルナ。その股間からは水晶のように
透明な犬の頭が出てきた。
背をそらし、いわゆるブリッジの態勢になるルナ。
その秘孔を無理やり通って、透明な魔犬がこの世に生れ出ようと
していた。
﹁うふふ、聞いちゃった∼﹂
ルナとヴィヴィアンから大分離れた岩壁から、にじみ出るように
裸の女の姿が現れた。
まん丸で大きめな乳房に、大きい乳輪、陥没した乳首、髪は短い
が前髪が眼もとを覆い隠している。
﹁一人占めは、よくないよね∼﹂
126
女は踊るように、自らの胸を揉み、乳首をなめる。
﹁気持ちいいおチンポ様は、みんなで共有しなきゃね∼﹂
ブリード
その舌が勢いよく伸び、自らの秘裂を貫いた。
里見智子はご機嫌であった。
初めて発見された第二次性徴を乗り越えた混血の雄。
さらに既に確保してある雌との交配で子供が期待できる。
これだけでも、涎が出そうな研究材料だが、さらにすばらしいこ
とに魔女クラス、それもかなり強力なヒメーラの細胞がサンプルと
して入手できたのだ。
元々ヒメーラという生物の肉体には奇妙な性質がある。
強力な個体であればある程、その個体が死亡すると細胞組織が腐
敗を始めるよりより先に崩壊するのだ。
大抵は死体が液化、蒸発といったプロセスで消滅するが、今回は
すぐに蒸発した。
つまりそれだけ強力な個体だったと言える。痛ましいことだが第
二小隊が全滅したことからもわかる。
しかし今回はその魔女の使い魔︱︱いわば超能力で作り出したク
ローン体を入手できた。
表面は香代のパイロキネシスで黒こげとなっていたが、中身はま
だ生きているらしい。
ヒメーラの生体活動を示す特殊振動波︱︱Cパルスが確認された
のだ。
智子は透明な特殊強化樹脂の窓の向こうの、黒こげの女の死体を
127
見てにやにやしている。
メガネをあやしく光らせるその姿は、子供が見たら泣くこと必定
である。
なまじ知的な美人であるだけに一層恐ろしい。
誤解のないよう断わっておくが、彼女は決して悪い人間ではない。
今は亡き夫に操を立て、シングルマザーとして残された子供を立
派に育てている。
部下への気遣いも忘れない。
彼女の欠点としてあげられるのは二つ。
少々ワーカホリック気味であること、ヒメーラやその血をひく者
に研究対象あるいは実験動物以上の価値を認めていないことだ。
前者はともかく後者は致命的である。
作業用マニュピレータで、窓の向こうの黒こげの死体の解剖を始
める。
作業に携わっているのは智子一人だ。
部下たちはもう帰宅した。
明日より本格的な調査に入る。今夜ぐらいは休んでもらおうとの
親心だ。
しかし、研究意欲が抑えられなかった智子は、大雑把に見るだけ
との名目で、一人で解剖を始めてしまった。
それも上司には無断で。
結局彼女はヒメーラを報告書や映像を通してしか知らなかった。
直接その脅威を目の当たりにしたことがなかったのだ。
そのことが悲劇につながった。
黒こげの死体がぶるぶる震えると、その表面が砕け散って落ちた。
黒こげとなった表皮の下から、無傷の全裸の女が現れる。
128
﹁そんな!黒こげから生き返ったというの!﹂
智子が歓声を上げる。
歓声だ、悲鳴ではない。
たとえヒメーラが生き返ったとしても、この厚さ60センチの特
殊強化樹脂なら心配ないと思って、解剖を始めたのだ。
今、彼女はヒメーラの強力な生命力の実例を目の当たりにしては
しゃいでいた。
女が目を開ける。
瞳孔が縦に伸びた眼だ。人間のものではない。
女が右手をふるうと、その腕はタコの足のように吸盤を持った触
手に姿を変えて、マニュピレータをなぎ払った。
メタモルフォース
﹁すごい、これがヒメーラの変身能力。植物系と聞いていたけど、
頭足類にも変身できるなんて!﹂
この期に及んで、まだ危機感を抱いていない智子。
ただし、彼女が意外に思ったことは間違いではない。
ヒメーラの形態は最初に寄生融合した生物に強く影響される。
これは宿主を変えた場合も維持される。
つまり植物がベースとなっている幻魔は、その後宿主を人間や蛸
に変えたとしても、基本的に植物の特徴を強く残した姿しか取れな
たのしみ
いはずなのだ。
智子はまた研究内容が増えたと喜んでいるが、真相を知ればさす
がに恐怖を感じたであろう。
この魔女の使い魔︱︱ダキニのクローン体が完全に息絶える前に、
別の魔女の使い魔が融合していたなどということは考えもしなかっ
たのだ。
智子の眼の前で幻魔のメタモルフォースは完了していた。
129
肌は蝋のように真っ白になり、両腕が触手と化している。他にも
くびれたウエストからロングスカートのように十本以上の触手が生
えている。
まさに蛸女と呼ぶにふさわしい姿だ。
﹁い、いけない、救援を呼ばないと!﹂
コンソールの緊急ボタンを押そうとする智子。
ようやく危機感を感じたようだが遅かった。
蛸女の全身があやしい光を発した。
﹁!﹂
とっさに目を隠そうとする智子。しかしすでにその体は自由にな
らない。
︵か、金縛り!光による催眠術だというの!︶
金縛りとはよく心霊現象の一つとされているが、何のことはない。
脳が目覚めているのに体が眠っている状態、要するに寝ぼけている
だけである。医学的には睡眠麻痺という。
蛸女の放った怪光が、智子の脳に作用し、その睡眠麻痺の状態を
作り出したのだ。
身動きとれない智子の前で、蛸女は次の行動に移った。
息を吹きつけるように、口をすぼめてとがらせる。そしてその口
から黒い液体を放った。
ジョア!
智子が完璧と信じていた特殊強化樹脂が、蝋細工のように溶けて
130
ゆく。
蛸女と智子を遮っていた透明な壁に、大きな穴が開いた。
﹁ひい!﹂
蛸女の乳房が一回り大きくなり、乳首が智子に向く。
その乳首から黒い液体がほとばしり、智子の白衣を黒く染めた。
どうやら先ほどの液体より危険はないらしい。
衣服は朽ちるようにボロボロになってゆくが、あまり体には影響
がないようだ。
少しピリピリするような感じはあるが、大したことはない、安心
した。
しかし彼女の考えはまだまだ甘かった。
ボロボロになった衣服の残骸が全部床に落ち、智子が全裸となる
と黒い液体は、それ自体が独立した生き物のように動き出し、智子
の体を覆った。
まるで黒いボディースーツを着たような姿になった智子を快感が
襲う。
﹁いや!だめっ!﹂
智子ははっきりと感じていた。
黒い液体が自らの体の中にしみ込んで、自分の体を作り変えてゆ
くのを。
快感を感じる神経とは実は痛みを感じる神経と同じだ。彼女の末
梢神経はその感度を高められてゆく。
﹁あひいい!だめぇ!おかしくなるぅ!﹂
いつの間にか金縛りが解けていたのか、尻もちをつく智子。
131
しかし自由を取り戻しても、逃げ出すどころではない。
全身を覆う黒い液体が、全身性感帯となった彼女を愛撫する。
発狂寸前の快感が彼女をさいなんでいた。
そこににゅるりと窓の穴を抜けて、蛸女がやってきた。
さすがに逃げ出そうとする智子だが、体がまともに動かない。
犬のように四つん這いになったところで、すぐ後ろに蛸女が立つ。
もはや尻を蛸女に差し出しているようにしか見えない。
蛸女もそう思ったのか、腕の触手を鞭のように智子の尻に叩きつ
ける。
﹁あひいいい!﹂
絶頂に達した智子。
天に向かって吠える。
蛸女はさらに続けて腕を振るう。
﹁あひ!あひい!だめぇ!お尻!お尻叩かれて行っちゃうぅ!あた
し、変態じゃないのにぃ!お尻叩かれていきまくっちゃうぅ!いや
ぁ!﹂
拒絶の言葉を吐きながらも、もはや智子の肉体は、鞭の痛みを快
感と受け入れ求めるようになっていた。
﹁あひい!叩いて!もとっ叩いてぇ!気持ちィいの!変態でいいか
ら叩いてぇ!﹂
そこにはもう知的な美女の面影はない。肉欲に狂った淫女がいる
だけだ。
﹁あん!﹂
132
蛸女が智子の体をひっくり返した。
同時に智子の体を覆っていた黒い液体に変化が生じた。
智子の股間と両胸を避けるように、丸い穴が開いた。
黒い体に、突如出来た白い穴。乳房と股間を強調しているかのよ
うだ。
﹁ああん、なにするのぅ﹂
不満そうな智子を、蛸女の触手が襲う。
触手の吸盤が乳房に乳首に吸いついた。
﹁ああん、おっぱい、だめぇ!乳首イィイ!﹂
智子の股間から水しぶきがほとばしる。
その股間を別の触手が撫で上げた。
突き出た吸盤が陰毛とこすれあって、かすかな音を立てる。
﹁きゃひぃ!キューバン、コリコリで、ザリザリしているぅ!﹂
しばらくその愛撫が続いた。
﹁死ぬ!気持ち良すぎて死んじゃう!殺してぇ!﹂
蛸女は彼女の哀願に応えなかった。
それどころかすべての触手を引き上げた。
﹁どうして?もっと、もっとしてよぉ!﹂
智子と蛸女の眼が合う。
133
蛸女は智子を嘲笑っていた。
顔を見て一目でわかった、蛸女が自分に何をさせようとしている
かも。
しかしその嘲笑が、智子のプライドを刺激してわずかに正気を取
モルモット
り戻させた。
実験動物に下に見られたことが、よほど気に障ったらしい。
﹁あん、ああん﹂
しかしその怒りも、絶えず体を襲う、黒い液体の愛撫に散らされ
てしまう。乳房と股間には何の攻撃もないのでもどかしい。
﹁うぐ、ひい!らめぇ!﹂
意識をはっきりさせようと唇をかんだが、それすら快感に感じて
しまう。
絶望に浸りながら、智子は今までに読んだ資料を思い返していた。
ヒメーラにレイプされた女性たちの史料だ。
あるものはショックで死んだ。自殺した者も多い。
またあるものは影山冴子の母親のように、ヒメーラの子供を産ん
だ。
またあるものは自らヒメーラに、最強最悪の魔女に成り下がった。
そしてヒメーラによって与えられた、常識を超える快楽に狂い、
彼らの性奴隷に堕ちた者もいる。
︵私はどれになるのかしら⋮⋮︶
彼女はここで命が助かっても、もとの自分に戻れるとは思えなか
った。
それほどのこの快感は凄まじい。
134
夫とのセックスなぞママゴトにもなりはしない。もう夫の顔も思
い出せない。
子供についてはさすがに胸が痛んだ。
しかし、もう、母親に戻れない。
こんな化け物の快感に汚された自分は、もう元に戻れない。
この体の火照りと疼きに逆らえない。
︵ゆるして、まーくん、お母さん、もう戻れない。もうだめなの︶
心の中で息子に別れを告げて、彼女はすべての未練を捨てた。
左手で乳房を揉みながら乳首をなめ上げる。
右手で自らの秘裂をこじ開ける。粘り気のある液体がポトリと落
ちた。
そして、自らの意思で蛸女を誘惑する。
﹁きてぇ、犯してぇ、マンコに欲しいの、チンポ欲しいのぉ﹂
自らの意思で怪物の娼婦に堕ちた智子の蛸女は満足そうに笑った。
爆発するように、蛸女の触手が智子を襲った。
性器だけでなく、肛門、口を一度に犯す。
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼!!!﹂
白目をむいて声にならない絶叫を上げる智子。
その智子に蛸女が語りかけた。
﹁オマエハナカマニシナイ。ヤッテホシイコトガアル﹂
口を解放された智子が必死に答える。
135
﹁はいぃ!なんでもしますぅ!ご命令をぉ!オチンチンをください
ぃ!﹂
この日、ACT極東支部、研究部は敵の手に堕ちた。
136
間章︱︱氷の魔女
ACT極東支部。
表向きは外資系製薬会社の研究所となっている。
某学園都市の片隅にあるその白い建物は、健康的な日の光を浴び
ていた。
よく手入れされた青々とした芝生の照り返しが目にまぶしいぐら
いだ。
しかしその芝生のさらに下では、さまざまな思惑と異形の化け物
がうごめいていた。
人の恐怖と不安をあおる警報音が鳴り響き、赤いランプが点滅す
るなか、大柄な女が廊下を歩いていた。
いや女と呼んでいいものか。
それは異様な姿をしていた。
肌は死蝋を思わせる白さで、両腕は蛸の足のような触手。腰にも
同じような触手が多数生えている。
まさに蛸女だ。
何より目を引くものはその触手に捕らわれた人物だ。
海老反りになった体を、まるでチャンピオンベルトのように横に
巻きつけるように蛸女の腰のところに固定されている。その女の口
と性器と肛門は細い触手がうごめき、体液を滴らせていた。
ヒメーラの虜となった里見智子のなれの果てである。
己の捕えた獲物を自慢げにさらしながら、蛸女は新しい獲物を追
っていた。
怯えて腰を抜かした研究員たちを、猫が瀕死のネズミをなぶるよ
うに、ゆっくりと追い立てる。
137
﹁逃げろ!﹂
蛸女の前に拳銃を構えた1人の白衣の男が立ちふさがる。
それを見た蛸女は嘲笑を浮かべながら、腰の触手を操り、智子の
体をたすき掛けのように斜めにして、己の体の露出を少なくした。
智子が盾とされたことにより、わずかに躊躇する男。
訓練された兵士なら生じなかったであろう、わずかな時間が彼の
運命を断ち切った。
蛸女が口をすぼめ、黒い球体を吹きつける。
その黒い球体が男の頭に命中すると、男の頭は黒砂糖の塊のよう
にどろりと溶けた。
悲鳴のフルコーラスが響き渡る。
その惨劇は指令室のモニターに映し出されていた。
﹁第一小隊!出動準備にかかれ!﹂
﹁避難の状況は!﹂
︵基地への侵入を許すとは。責任を取ってもらうぞ、里見︶
目の前で状況を把握、対処しようと焦る部下たちに、ACT極東
支部司令、﹃氷の魔女﹄氷室鞘香の命令が下される。
﹁隔壁を下せ﹂
﹁な!﹂
﹁まだ、避難が終わっていません!﹂
﹁見捨てるんですか!あそこにいる彼らを!﹂
138
部下たちの抗議を一蹴する鞘香。
﹁聞こえなかったのか。隔壁を下せ﹂
決して大きくはなく、けれど絶対に聞き逃しようのない声で、再
度命令が下る。
抗議を続けようとした部下たちは、司令の顔を見て黙らざるを得
なかった。
ありとあらゆる感情を排し、不退転の決意と覚悟に満ちた、その
氷の刃のような美しい顔を見て。
﹁くそう!﹂
無念を吐き捨てる勢いで、コンソールを叩くオペレーター。
﹃B5Gブロック閉鎖します。B5Gブロック閉鎖します﹄
人間味の無い、人工音声が無情に響く。
﹃いやああ!﹄
﹃おいてかないでくれぇ!﹄
モニターの向こうでは腰を抜かしていたはずの研究員たちが、我
先に出口に向かって逃げ出す。
蛸女も状況を理解したのか、重しとなる里見を捨て、研究員たち
を飛び越して出口に向かう。
しかしその脱出行は成功しなかった。
重い金属がぶつかりあう耳障りな音が響くと同時に、蛸女は大き
な鉄の爪に殴られ床に転がった。
139
﹁わはははは!いざ見参!鋼の救世主!﹂
そこには思わず自分の目を疑うものが存在した。
一言で言うならロボットである。
大小様々な四角い箱を人の形に組み合わせたような無骨なロボッ
トが二体。
蛸女を殴り飛ばしたロボットにはX1とマーキングされ、X2と
マーキングしたロボットが隔壁が降りるのを防いでいる。
﹁どうじゃあ!対ヒメーラ用強化外骨格プロトタイプX、略して﹃
リプリィちゃん﹄の力はぁ!﹂
どこをどう略したらそういう名前になるんだ、という突っ込みは
出ない。
ACT極東支部の誇る?マッドサイエンティスト2人に常識は通
じない。彼らは自らの衝動の赴くまま、ノリと勢いで生きる。なぜ
ならマッドサイエンティストだからだ。
そしてここにいる人間は皆そのことをよく知っていた。
﹁西島と浦原か⋮﹂
眉間を抑える氷室。
研究部第二課︵別名武器開発課︶課長・西島京介と、副課長・浦
原哲也。
研究に多大な予算を使い、試作品のテストで破壊をまき散らす彼
ら二人は彼女の頭痛のタネであった。
それでも処分できないのは、時に極めて役に立つからだ。たとえ
ば今のような時。
まさに﹃非常の男たち﹄である。﹃非常識の男たち﹄でもあるが。
140
声からすると、X1を操縦しているのが浦原、X2が西島だろう。
﹁ワイヤァー・ウェブ!﹂
妙に巻き舌な声で叫ぶX1。
X1の右手から金属製の投網が射出され、里見を確保した。
﹁こりゃ、速く逃げんかぁ!﹂
X2が叫ぶ。
激変する状況に呆然としていた研究員たちは、我に返ってX2の
股をくぐるように逃げ出した。
網から出された里見も、部下に背負われて後に続く。
﹁オノレェ!ニガサンゾォ!﹂
ダメージを回復した蛸女が、復讐とばかりX1に襲いかかかる。
﹁なんのぉ!マイクロシャワー!﹂
X1の型の装甲が展開しバラボラアンテナのようなものが現れる。
同時に、蛸女が耳を抑えてひっくり返り、そのまま身を守るよう
に丸くなった。
﹁どうよ!こいつの味は!﹂
﹁貴様らの苦手な波長の高周波じゃあ!﹂
ヒメーラは確かに非常識なまで強力な生物だが、全く弱点がない
わけではない。
致命的とは言えないが、ある一定の波長の電磁波を嫌うというの
141
もその一つだ。
しかし、実際にダメージを与えるとなると、高出力の電源が必要
となり装備全体の重量が増す。
極端な話、彼らの操る強化外骨格は、この問題を解決するための
ものであって、怪力やその他の装備はいわばおまけである。
﹁ようし、ウラ!とどめじゃ!﹂
﹁おう!おやっさん!﹂
嬉しそうな二人に冷たい声で命令が下る。
﹁西島、浦原、よくやった。もういい、下がれ﹂
﹁なんじゃと?﹂
﹁これからが、いいところなのに﹂
不満げな二人。
だが氷室が命令を繰り返す前に異変が起こった。
﹁うわああ!﹂
X1の一部が爆発炎上したのだ。
﹁あり?どこかショートしたか?﹂
当然、マイクロシャワーも停止する。
その結果は言わずもがな。
蛸女が立ちあがる。
﹁クラエエエエ!﹂
142
怒りに燃えた蛸女の飛び蹴りがX1を弾き飛ばした。
﹁まるみえ∼!﹂
わけのわからん悲鳴を上げながら吹っ飛ぶX1は、隔壁の向こう
に逃げようとしていたX2を巻き込んでさらに飛んでゆく。
そこに下ろされる隔壁。
﹁シマッタ!﹂
飛び蹴りの反動で後に飛んだ蛸女は逃げ遅れた。
一応結果としては、西島と浦原は逃げ遅れた生存者を全員救出し、
幻魔にある程度のダメージを与えたのちに、撤退したことになる。
それだけ聞けばヒーローといってよい。
しかし今は、複雑に絡み合うガラクタにしか見えない二人だった。
﹁あ∼あ、途中まではよかったのにな﹂
いつの間に来ていたのか、氷室の隣で大山がぼやいた。
﹁いつものことだ﹂
﹁⋮⋮まーな﹂
相も変わらず冷静な氷室に、大山の疲労は増したようだ。
﹁影山を呼べ﹂
﹁いや、今日はまずいだろう﹂
143
冴子を気遣う大山。
処女喪失したのち半日以上も、性交を続けていたという。
さすがに体への負担が気になる。
﹁違う、用があるのは影山ではない﹂
ブリード
﹁なに?﹂
﹁混血はもう一人いる﹂
﹁な!本気か!あの餓鬼は素人だぞ!﹂
血相を変えての大山の抗議は、冷たく妖艶な氷室の笑みにはねつ
けられた。
﹁⋮⋮あの小僧を殺す気か?﹂
﹁この程度で死ぬなら、その方が幸せだ﹂
氷室鞘香。
︱︱仇名は﹃氷の魔女﹄⋮⋮
144
アンケート 終了
皆様たくさんのご意見、誠にありがとうございます。
さんの﹁使用を避けた方が無難﹂というご意見に
いただいたご意見で最も多かったのは、﹁幻魔で問題ない﹂でした
が、加知 悪造
従うことにしました。
新しい名称ですが、﹁ヒメーラ﹂とします。
①のキマイラのドイツ語訳です。
ステテコ21さんがフランス語を基にした名前を考えてくださった
ことにより、自分が英語と日本語にこだわり過ぎていたことに気付
きました。
なぜドイツ語かというと、設定上﹁鍵十字﹂が絡んでいるから⋮⋮
といえばご理解いただけるかと。
これより、時間を見つけて改訂に入ります。
最新話もできるだけ早く投稿いたします。
最後にご協力いただいた皆様に、あらためて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
145
初陣︱︱男の使命︵前書き︶
お待たせしました。
146
初陣︱︱男の使命
時はしばし遡る。
甲児は朝日を浴びて目を覚ました。
体中に力がみなぎるような心地よい目覚めだ。
体を起こして、ベッドから立ち上がろうとする。
足が毛布から顔を出す寸前、また足が触手になっているのではと、
嫌な予感が頭をよぎる。
深呼吸して、覚悟を決めて毛布をまくる。
﹁うわ﹂
安心すべきことに両脚は元に戻っていた。
しかし困ったことにペニスが以前よりふた回りは大きくなってい
た。
しかも目覚めたばかりのため、当然朝だちの状態である。
自分でも恐ろしくなるほど、力強く脈打っている。まるで心臓が
もう一つできたようだ。
﹁どうしよう、これ⋮⋮﹂
困惑しているとノックのあとに涼やかな声が響く。
﹁甲児くん?起きたの?﹂
﹁サ、サエコサン?!﹂
冴子がドアを開けるのと、甲児が毛布でペニスを隠すのはほとん
147
ど同時だった。
朝だからであろうか、妖しい美しさは影をひそめ、健康的な生命
力にあふれた笑顔を見せる冴子。
﹁おはよう、甲児くん。安心したわ。元気そうね﹂
﹁は、はい﹂
﹁うふふ、もう、今更恥ずかしがることないじゃない﹂
甲児の隣に腰かける冴子。
﹁い、いや、でも、まだ慣れないし⋮⋮﹂
冴子の体臭にどぎまぎする甲児。
冴子は返事をしない。
おかしいと思って顔を見れば、赤くなって一点を凝視している。
毛布を突き上げている自分の股間を。
﹁すごい⋮⋮昨日あんなに出したのに、こんなに元気⋮⋮﹂
冴子の呼吸が荒くなり、熱に浮かされたような言葉が漏れる。
気のせいか胸の先端がとがっているような気がする。
︵冴子さん、欲情しているんだ⋮⋮︶
とたんに、先日感じた征服感、独占欲、満足感を思い出す。
そう、自分は目の前の女性のすべてを喰らいつくしたではないか。
その身も心も。
全身がかーっと熱くなった。
148
﹁⋮冴子さん!﹂
眼の前の美女に抱きつく。
同時にTシャツの上からその乳首に食らいつく。
﹁きゃ!や、ちょ、ちょっと、だめ﹂
﹁駄目じゃない!冴子さんは僕のものだ!﹂
﹁!ええ、そうよ、でもね、見られてるの⋮⋮﹂
﹁え?﹂
あわてて冴子以外の人の気配を探す甲児。
誰もいない。
冴子の視線を追うと、監視カメラが作動していた。
︵⋮⋮あ⋮⋮︶
頭に登った血が下がる。
自分はこれから、危険な怪物として一生監視される。
冴子から聞いてはいたものの、実感させられたのは初めてだった。
﹁そんな顔しないで、トイレとお風呂にカメラはないから⋮⋮﹂
甲児の耳元でささやく冴子。
﹁これからは毎日一緒にお風呂に入りましょう、ね﹂
﹁冴子さん!﹂
赤くなってほほ笑む冴子を抱きしめる甲児。
もう見られても構わないとばかりに強く抱きしめる。
そこに響く携帯電話の音。
149
それは二人の蜜月の終わりを告げる音だった。
﹁はい、影山で⋮⋮﹂
﹃このエロバカップル!また盛ってんの!﹄
﹁ゆ、由美、盛ってるって⋮⋮﹂
友人の露骨な物言いに憮然となる冴子。
由美は構わず冴子の身を凍らせる一言を出す。
﹃いーかげんにして出てきなさい、鬼より怖い司令がお呼びだよ﹄
﹁いやああああ!やめてえええ!﹂
﹁やめて!出さないで!妊娠しちゃうぅ!﹂
﹁ぐすっ、ぐすっ、お願い、家に帰して⋮⋮﹂
﹁やだ!やだ!感じたくないのにいい!﹂
﹁いくぅ!やだぁ!またいくぅ!﹂
﹁駄目!もう駄目!気持ちいぃ!﹂
﹁もっとぉ!もっとしてぇ!きもちいいぃ!﹂
﹁だしてぇ!もっといっぱいだしてぇ!﹂
﹁やだぁ!やめないでぇ!﹂
﹁すきぃ!すきなのぉ!あいしてるぅ!﹂
それは淫らな悪夢そのものの光景だった。
大型犬用の首輪をつけた裸の女達が四つん這いになって一列に並
150
んでいる。
まるで家畜小屋のようだ。
女たちは皆、犬のような生き物たちに獣の体位で犯されている。
あくまでも、犬のような、である。
あるものは牛や犀のような角を生やし、ある物には烏や蝙蝠のよ
うな翼が生えている。
あるものは人間の上半身に犬の頭と下半身をつけたような形だ。
またあるものは、大型犬の背中から人間の女の上半身が生えてい
る。
みな異形の怪物と言っていい姿なのだが、その姿を構成するパー
ツの大部分が犬のものなのだ。
その怪物たちに犯されている女達は、列の手前の方では必死に凌
辱に抗おうとしているが、奥の方へ行けばいくほど怪物たちを受け
入れ快楽を貪るようになっていき、しまいには愛の言葉すら吐くよ
うになっている。
まるで女たちが時間の経過とともに堕ちてゆく様を見ているよう
な錯覚すら覚える。
そんな彼女たちの痴態を冷たい目で見ている者がいた。
女達の前に横たわる、巨大な狼のような犬、その背中に横たわる
全裸の女だ。
灰色の毛皮に、白く輝くような肌が映える。
細身で引き締まったその体には、絵画のようなエロチシズムに満
月の魔女
狼姫
と異名をとる、魔女型ヒメーラ、ルナであ
ちた美しさと、日本刀のような危険な美しさが同居していた。
る。
ルナは女達を見ながら、考え事を続ける。
︵あのちょび髭の一党に、この世界に引きずり出されて以来、我々
151
は数を増やしてはいるものの、実質的には弱体化しつつある︶
オス
を損なう原因となって
の弱体化だ︶
純粋性
︵肉体をこの世界に適応させるため、この世界の生物と融合を続け
てきたが、そのために我々自身の
しまった︶
メス
︵その結果として最たるものが、
︵
株分け
や
種付け
純度
親
をし
が身を削っ
種付け
オス
の低い子どもしか生まれない︶
を作り出そうとも、同族同士で
は結局のところ、我々
に子供を孕ませることすらできないほど弱ってしまった︶
︵
オス
ているだけだからな︶
︵人工的に
て子供を作ろうとも、
︵我々には必要なのだ、淀んだ血をよみがえらせる、強い
が︶
︵あの少年には間違いなくその力はある︶
﹁くっ﹂
ルナは自分の陰部が濡れたことを感じた。
カゲロウ
︵影狼を通して見ただけで、子宮が燃え上がった︶
︵ヴィヴィアンとはもう子供を作る気はなかったが、交尾せねば体
がおさまらなくなった︶
︵それほどすごい力だった︶
︵何の覚悟もないまま目の前に現れたら、身を投げ出していたかも
しれない︶
雌
が今も叫んでいる︶
︵抱かれたい、愛されたい、犯されたい︶
︵私の
︵だが、あの少年に身をまかしてもいいのか︶
︵種馬として使えるならいい︶
︵しかし、目覚めたばかりであれだけの力をもっているのだ︶
︵種馬でおさまるような器なのか︶
152
︵ヴィヴィアンは彼を使って自分の、権力を増すつもりだろう︶
︵しかし逆に屈服するのは我々の方ではないか︶
シャラリと鎖がこすれる音がする。
見れば、妊娠したのか腹を膨らませた女が、首輪についた鎖を犬
妄想
頭人に引っ張られて移動するところだった。
その光景がルナの脳の奥で、新たな淫夢を作りだした。
街中の人ごみの中、彼女は少年と一緒に歩いていた。
自分は全裸で犬の首輪をつけている。
人間
通行人の視線が痛いほど全身に突き刺さる。
下等生物からの視線を受ける羞恥と屈辱、主人への忠義を示して
いることに対する誇りと被虐が彼女の体を火照らせる。
いきなり尻を叩かれる。
愛する主人を見れば地面を指差している。
犬なら這え
無言の命令を聞き取り、地に手をつき四つん這いになって歩き出
すルナ。
首輪から伸びる鎖が生き物のように動く。
胸の谷間を通り、股間の割れ目をふさぐような形になる。当然歩
けば股間が刺激される。
愛液をぽたぽた垂らしながら歩き続けるルナ。
電柱のところで主人が歩みを止める。
美しく長い片足を上げて排尿する。
また歩き出す。鎖は容赦なく彼女を責め続ける。
ついに限界に達した。
腹を見せて倒れ、主人に対し屈服のポーズをとる。
主人がペニスをあらわにする、そしてそのペニスを⋮⋮
そこでルナは現実に返った。
153
いきなり巨大犬に振り落とされたのだ。
巨大犬はペニスをたぎらせ、ルナにのしかかる。
淫らな妄想にふけり、ルナの流した愛液の匂いに発情したのだろ
う。
無意識に自慰まではじめていたルナは、正気にかえると巨大犬を
蹴り上げた。
天井まで巨大犬が弾き飛ばされた。
そこに、手刀から三日月型の光線を放つルナ。
巨大犬の首が飛び血の雨を降らす。
﹁きゃあああああ!﹂
﹁ひいいいいい!﹂
女達の悲鳴が響く中、ルナは無表情で血の雨を浴び続けていた。
﹁司令!命令を撤回してください!私がやります!﹂
必死で氷室に取りすがる冴子。しかし氷室は一顧だにしない。
﹁駄目だ、あのヒメーラは芳賀甲児、君に処理してもらう、これは
決定事項だ﹂
震え上がる甲児。
154
﹁彼はろくに訓練もしていないんですよ!﹂
﹁しかし彼は、いちど変身している。ならばそれなりの戦闘能力も
期待できよう﹂
そう言って冴子から甲児に視線を移す氷室。
﹁きみはどうする?まさかこのままヒモのように彼女に生活の面倒
を見てもらい、セックスの相手もしてもらい、彼女に依存して生き
てゆくのかね?﹂
はっとなる甲児。
震えが止まる。
﹁それに影山が妊娠したらどうする?我々としても戦力が減ること
は避けたい。彼女の代わりとなる者が必要だ。﹂
甲児の両手が固く握られる。
﹁要するに自分の女と子供ぐらい自分で守れということだ﹂
真っすぐ目を見てくる氷室の顔を見て、少年は覚悟を決めてうな
ずいた。
﹁甲児くん!﹂
冴子が悲鳴のような声をあげる。
その声を押しのけるように、暑苦しいテンションの高い声が響く。
﹁いいぞ!小僧!それでこそ男だ!﹂
155
細身のメガネの男︱︱なぜか包帯を巻いている︱︱が、前に出て
きた。
ACT狂気の技術力のナンバー2、浦原哲也である。
﹁もってけ!きっとお前の力になるぞ!﹂
そう言って甲児に色々渡している。
﹁おやっさん、あんたからは何かないのか﹂
﹁ううむ、といっても、わしの発明品は素人さんに扱わせるのは致
命的過ぎるからな﹂
顔にやけどの跡がある老人が唸る。
致命的という単語を聞いて引き攣る甲児。
彼は知る由もないが、彼こそACT狂気の技術力のナンバー1、
西島京介である。
﹁ここは年寄りらしく説教させてもらうかの﹂
改めて甲児に向き直る。
﹁よいか、坊主。人間何時かは必ず死ぬ。そして、まあお前さんに
いうのもなんだが、ヒメーラとはとんでもない化け物じゃ。それで
も生き物である以上やはり死ぬ。自分も死ぬが、敵も死ぬ。その覚
悟であたれば道も開ける﹂
﹁は、はい﹂
﹁うむ、自爆特攻こそ日本男児の死に様。骨は拾ってやる。見事散
れ﹂
﹁散っちゃ駄目えぇ!﹂
156
﹁途中までいい感じだったのに⋮⋮﹂
﹁いつものことだ﹂
所詮マッドはマッドだった。
157
初陣︱︱肉の海︵前書き︶
お待たせしました。
158
初陣︱︱肉の海
海に貝の船が一艘が浮かんでいる。
女の肢体が絡み合う肉の海だ。
女たちは互いの乳首を、乳房を、尻肉を、性器を舐め合い、愛撫
しあって快楽を貪り合う。
揺れる肉の動きは波、嬌声は潮騒か。
その中央に位置する帆立貝形の寝台の上で、少年が呻いていた。
﹁うー!ううー!うー!﹂
ナメクジ
まだ男になりきらない華奢なその体には、蛞蝓を思わせる肉塊が
無数にまとわりついていた。
少年の体を這いまわる肉塊の動きは、その性感を刺激する。
いくつもの肉塊の女性器を思わせる腹部が、少年のペニスを呑み
こみ射精に導こうとする。
口一杯に拡がった肉塊は、少年の苦悶の声と唾液をすすり、自ら
の甘い体液を喉へ流し込む。
そして一際大きな肉塊は、少年の肛門にもぐりこみ、体の内部か
ら焼けつくような、そして蕩けるような快感を与え続けていた。
﹁うー!﹂
少年がひときわ大きな声で叫び、がくがくと腰を前後させる。ま
るで見えない女を犯すように、あるいは見えない男に肛門を犯され
るように。
少年のペニスが、彼の体のサイズに比して異常なまでに大きさを
増す。
159
少年がのけぞると同時に、ペニスが白いしぶきを吐いた。
のろま
天に向かって放たれた精液が重力の導くまま少年の体に降り注ぎ、
彼の体を汚す。すると肉塊どもがその鈍重そうな見かけとは裏腹な
動きで、あっという間にその汚れを吸い取ってしまった。
御馳走をたらふく食べた肉塊が一か所に集まり、何かの形を作り
出した。
女だ。
肉塊はわずか数秒でほとんど全裸の女と化していた。
その姿は聖書に記された、バビロンの大淫婦を思わせる、退廃的
で背徳的な色気を撒き散らす女だ。
﹁おいしぃわぁ、やっぱり精液はけがれの無い少年がフレッシュで
いいわぁ﹂
エキドナ
大淫婦︱︱魔女、ヴィヴィアンがうっとりと言う。
彼女の右手は少年のペニスをしごき、左手は肛門を責めている。
その金髪は猿轡のように少年の顔に巻きつき、彼女の唇に引き寄
せる。
﹁どう?坊や?私と一つにならない?﹂
ぼんやりとした表情でヴィヴィアンを見る少年。彼女が誘惑して
いることが理解できないらしい。
その少年の様子をむしろ愛おしそうに見て、ヴィヴィアンが少年
の正面に回ってその体を抱えあげる。
胸の二つの巨大な脂肪塊が独立した生き物のように蠢いて、少年
のペニスをとらえる。
﹁うー!﹂
﹁あらあら、また出したいの?でもだ∼め﹂
160
再び金髪がうごめき、射精を許さないように少年のペニスを締め
上げる。
陸に上がった魚のように、身をくねらす少年。
なか
﹁さ、正直におっしゃい。坊やはどうしたいの?私とセックスした
い?私の胎内に入りたい?とろけるぐらい気持ち良くしてあげる。
貴方のミルク全て呑み込んであげる﹂
流し眼をくれるヴィヴィアンの目の前で、少年の口が解放される。
﹁⋮⋮たいです⋮⋮﹂
﹁なあに?もっとはっきり﹂
﹁セックスしたいです!ヴィヴィアン様のオマンコに精液出したい
です!﹂
羞恥のあまり涙を流しながら、それでも淫欲への屈服の言葉を吐
く少年。
﹁ほほほ、よく言えました﹂
少年のペニスが解放される。
せき止められていた奔流が放たれ、魔女の顔と胸を汚す。
﹁うふふ、まだまだ元気、おいしいわぁ﹂
・ ・
細長い7本の舌で顔と胸の精液をなめとるヴィヴィアン。
荒い息を吐く少年から離れ、脚を開いて横たわるヴィヴィアン。
既に少年を迎え入れる態勢だ。
露わとなったヴィヴィアンの女陰から甘い果実酒のような臭いが
161
立ち上り、少年の鼻腔を刺激し、脳を焼き、飢えを刺激する。
﹁さあ、いらっしゃい、坊や、私を犯しなさい、雄々しく獣のよう
に﹂
﹁ヴィヴィアン様!﹂
魔女にのしかかる少年。
肉の牙が、吸い込まれるように魔女の下の口に呑みこまれる。
胸の谷間に潜り込むように、顔を突っ込み、余った肉を両手で揉
みし抱く。
﹁ヴィヴィアン様ぁ!気持ちいぃ!﹂
﹁いいわぁ、私もいぃ!﹂
既に快感が限界に達し、射精する少年。
しかも射精しても少年の飢えはおさまらず、少年の動きが止まる
ことはない。
少年は途切れなく射精を続けながら、腰を振り続けていた。
﹁気持ち良いよぉ!気持ち良すぎて止まんないよぉ!﹂
﹁いや、だめ!やめちゃダメ!全部全部私にちょうだぃい!﹂
そうして幾度も幾度も、少年は魔女の子宮に精を吐きだし続けた。
だが、無限とも思えるその欲望にも限界が来る。
﹁はあ、はあ、もう⋮⋮駄目⋮⋮﹂
少年が力尽きたように倒れ伏し、ヴィヴィアンの豊乳の谷間に顔
をうずめる。
162
﹁あん、大丈夫、まだまだ大丈夫よ﹂
ヴィヴィアンが少年の顔を持ち上げて、その位置をずらす。
乳首が独立した生き物のように少年の唇を割る。
たちまちあふれだす白い液体。
﹁うふふ、私のおっぱい、いっぱいお呑み。いやらしいミルク、い
っぱい飲んで、坊やもいっぱいミルクを出すのよ﹂
﹁ううううー!﹂
魔女の魔乳を呑んだ少年が、再び腰を振り始める。
再び始まる射精の連射。
﹁気持ち良いよぉ!気持ち良すぎるよぉ!﹂
﹁いい!私もいいぃ!﹂
消えかかっていた火に、再び燃料を注入され燃え上がる肉欲の火。
しかしそれすらも、いずれは限界に達する。
﹁はぁはぁ﹂
﹁もう、ぼうや、しっかりなさい!﹂
﹁だって、だって﹂
苦しそうに息をしながらも、少年の腰は止まらない。
その呼吸と同じように、弱々しい物ではあったが。
しかしヴィヴィアンは不満らしい。
﹁あらあら、私のミルクじゃ物足りないの?仕方ないわねぇ、ロー
ラ!いらっしゃい!﹂
﹁御前に﹂
163
絡み合う二人の側に、人影が現れる。
褐色の肌に銀髪、露出の高い巻貝の貝殻の鎧を身にまとった少女
だ。
その眼は殺気立ち赤く血走り、整った顔は嫉妬に歪んでいる。
おびえて逃げだそうとする少年の両脚を、ヴィヴィアンが両足で
抱え込むようにして動きを封じる。
﹁うふふ、駄目よ。ローラ。そんなに殺気立たないの﹂
﹁はっ、申し訳ありません。ヴィヴィアン様﹂
謝罪の言葉とともに、ローラの姿が変わる。
胸元の大きく開いた、ミニスカートのメイド姿だ。
白いエプロン、ガーターで吊った白いニ︱ソックスが、褐色の肌
に映える。
騎士からメイドへと、少女は変身していた。
少女?
いや、違う。
大きく開いた胸は、凹凸がない。
これだけなら胸の小さい少女と主張できよう。
しかし、あまりにも丈の短いミニスカートを突き上げるように、
怒張したペニスがその存在を主張していた。
﹁ローラ、坊やにお前のミルクを飲ませておやり﹂
﹁かしこまりました。ヴィヴィアン様﹂
ローラのメイド服が煙のように消えうせる。
露わになったのは女性のような細身でありながら、針金のような
164
筋肉の付いた少年の肉体。
腰をずらして、少年の臀部をローラに向けるヴィヴィアン。
﹁や、やめて!﹂
何をされるか悟って、より強くもがきだす少年だが、ヴィヴィア
ンの脚は哀れな獲物を逃さない。
少年の背中にのしかかるローラ。
そのペニスが少年の肛門を貫いた。
﹁ぐーーーっ!﹂
犯される痛みと屈辱に、歯を食いしばり涙を流す少年。
しかしその表情は、ローラの腰が動き出すとともに変わっていく。
食いしばっていた口は、半開きとなって涎を垂らし。
涙を流す目は、快楽に潤み。
悲鳴は喘ぎ声に変わっていった。
﹁ああ!なにこれ!いい!きもちいい!おかしくなる!﹂
﹁おほほ、お尻犯されて気持ち良いのね。坊やのオチンチン!さっ
きよりも元気になったわ!私の体の中で、大きく硬くなったの!﹂
﹁ああ!またでる!でそう!﹂
﹁ローラ!貴女も!あなたも坊やの中に!三人でイクのよ!﹂
﹁はい!ヴィヴィアン様!﹂
ローラの腰が少年の尻に深く打ち込まれる。
ハンマーでたたかれた釘のように、少年のペニスがヴィヴィアン
に叩きこまれる。
﹁でるー!﹂
165
﹁いきますぅ!﹂
二人の少年が吼えた。
一瞬遅れてヴィヴィアンも吼える。
﹁ああーーー!﹂
絶頂に達した直後の、虚脱状態。
少年たちは体を重ね合ったまま、ヴィヴィアンの両の乳首にむし
ゃぶりつく。
その姿を愛おしげに、ほほ笑んでみていたヴィヴィアンだったが、
何かに気付いた様子を見せる。
﹁始まるみたいね、ローラ﹂
名前を呼び、目配せだけで命令するヴィヴィアン。
その命令を理解して、うなずくローラ。
少年の脚を抱えて立ち上がる。
むろんそのペニスは少年のアナルを貫いたままだ。
ローラはその体勢のまま少年を運んで、ベッドから床に降りる。
振動で少年が反応し、ひときわ巨大になったペニスが揺れる。
ベッドに腰掛け、少年の股を開いた状態でその膝に座らせる。
ごくり
誰かが唾を呑んだ音がする。
見れば女達が少年の前に集まっていた。
ローラが少年に何事かをささやく。
ローラに対し許しを乞うような目を向けるが、冷然とした無表情
で返される。
166
絶望した表情でうつむく少年に、拒否は許さないとばかりに腰を
揺らすローラ。
﹁んああ!﹂
もはや、それだけで少年の理性とプライドは決壊する。
﹁お願いです!お姉さまたち!僕はエッチで変態です!お姉さまた
ちに犯されたくて気が狂いそうです!お願いです!僕をめちゃくち
ゃにして!セックス以外何も考えられないようにして!﹂
ペニスを誇示しながらの哀願する少年に、女達が襲いかかった。
ローラごと少年を押し倒し、そのペニスに食らいつく。陰部と臀
部で少年の顔を圧迫する。少年の腕や脚を胎内につき込む。
肉の海に溺れる少年をほほ笑みながら、見守っていたヴィヴィア
ンだったが、顔を引き締める。
﹁さて、あちらの坊やにも会い行きましょ﹂
目をつむる。
スッと眠りに落ちるような感覚を感じた直後、ヴィヴィアンは暗
く暖かい海の中にいた。
子宮内の羊水に浮かぶ胎児とは、このような気分であろうか。
上を見上げる。
地下水脈から泉や井戸を見るとこんな感じであろうか。
暗い海面に、何条もの光がさしている。
その光のうち、はるかかなたにある物を目指してヴィヴィアンは
泳ぎだした。
泳いでるうちにヴィヴィアンは水と一体になり、一筋の流れにな
167
った。
そのまま光に向かって流れてゆき、光の中に飛び出した。
一筋の流れになっていた自分が拡がる感覚。
見たことのない地下通路であった。
わずかに抵抗を感じるが押し流し、自分自身を﹃器﹄に満たす。
直接は
目を開く。
そこは
﹁ここがACT極東支部ね、さあ、王子さまはまだかしら﹂
自分の歯がガチガチ鳴っているのがわかる。
喧嘩一つまともにしたことのない自分が、これから﹃殺し合い﹄
を挑むのだ。
それも人食いの化物と。
恐ろしい。
膝がガクガク震える。
胃の中身が今にも逆流しそうだ。
心臓が痛いぐらいに鼓動を激しくする。
逃げ出したい。
誰か代わってくれとわめきたい。
そんな弱い自分を必死で抑える。
男としてのなけなしの意地とプライドで。
ここに来るまで何度も確認した銃の使い方を、もう一度確認する。
安全装置も解除してある。
それにしても馬鹿でかい鉄砲だ。
自分が特撮番組の登場人物になったようだ。 最もこれは正確に
いうと、﹃銃﹄ではない。
正しくは﹃スタンガン﹄といった方が近い。
高速で展開されるワイヤーネットが敵を捕らえて、高圧電流を流
168
し、感電させて動きを止める。
ショットガン
広範囲に広がる﹃網﹄は、点と線の攻撃である銃器よりも命中す
る可能性が高い。︵散弾銃は危険すぎるということで見送られた︶
動きの止まったところを、ナイフで切り刻んでとどめをさす。
銃の訓練など、当然の如くしたことのない甲児のために、西島と
浦原が考えた作戦だ。
司令としては、武器など持たせず、甲児自身の能力で戦わせたか
ったらしいが、西島たちの剣幕、大山の口添えもあって結局は持た
せることにした。
⋮⋮西島及び浦原の作った物に対する信頼が、あまりないことも
後押ししたようだが⋮⋮
頭を振って、弱気を追い出す。
恐怖と不安を呑み込むように深呼吸をする。
﹁行きます!開けてください!﹂
その声とともに隔壁が上がる。
そこで甲児が見た物は!
﹁い、いない﹂
隔壁の向こうには、いるべきはずの敵がいなかった。
虚をつかれ、甲児の動きが停止する。
ここで素人ゆえの、致命的失敗が出てしまった。
訓練や経験を積んだ兵士なら、何らかの行動に移っていた。
上からの奇襲を警戒する。
牽制のため、銃を乱射する、手榴弾を投げる。
後退して様子を見る。
どれが正解にしても、案山子のように突っ立って的になる愚は犯
すまい。
169
・・
その時、壁の一部が人型にめくれ上がった。
そこから蛸の様な触手が伸びて、甲児の武器を弾き飛ばす。
﹁な、なに、うわあ!﹂
たたらを踏み、尻もちをつく甲児の前で、平面から立体へ、二次
元の人型が厚みを増して三次元の存在に変わっていく。同時に表面
がむき出しのコンクリートから、白い人の肌に変わってゆく。
数秒のうちに、坊主頭の裸女がその姿を現した。
﹁あいたかったわ、ぼうや﹂
﹁え?うわ!﹂
蛸女の乳首から黒い粘液が噴出して、甲児を覆う。
その粘液は、甲児の着ていたACT隊員用防御服をどろどろに溶
かし、少年を裸にする。
﹁え?わ!﹂
羞恥心から前を隠そうとする甲児だが、黒い粘液から伸びた触手
がその両腕を拘束する。
拘束は全身に及び、甲児は口すら封じられ、芋虫のように転がる
しかなくなる。
﹁むぐー!むぐんぐ!﹂
﹁うふふ、苦しいの?苦しいのね?でも⋮⋮﹂
嗜虐的な笑みを浮かべる蛸女。
170
﹁んんー!﹂
甲児が魚のように跳ねる。
その股間では刃をつきだしたように、巨大な肉の牙が生えていた。
﹁まあ!なんてすばらしいのでしょう!﹂
甲児の肉の牙を見て歓声を上げる蛸女。
腕を触手に変えて甲児をとらえ、自分の目の前で逆さづりにする。
﹁ああ⋮⋮素敵⋮⋮﹂
熱病に浮かされたような表情で、甲児のペニスを口に含む蛸女。
甲児の体が痙攣するように跳ねる。
﹁もう大人しくしなさい﹂
蛸女の腰から生えた無数の触手が、女の体に押し付けるようにし
て甲児の体を固定する。
甲児の顔は、蛸女の股間に押し付けられ、両側から太腿で挟み込
まれている。
甲児のペニスは、女の乳房で挟まれて固定され、先端が女の口元
に届いている。
﹁うふふ、さらに元気になったわね。このス・ケ・べ。どこが一番
気持ちいい?﹂
もはやわずかな身じろぎしかできない甲児。苦悶の声も女の女陰
に吸い込まれているようだ。
171
﹁うふふ、素敵なオチンチン、でも混ざりものの味と臭いがするの
はいやね。すぐに奇麗にしてあげる。貴方もすぐ知ることになるわ。
あんなのより私の方がいいって﹂
窒息したように動かなくなる甲児。
﹁さあ!あの女の前で逝かせてあげる。そして快楽に身を任せ、本
能を解放しなさい!﹂
勝ち誇ったように宣言した蛸女が、甲児のペニスに食らいついた。
172
初陣︱︱牙の目覚め
﹃行きます!開けてください!﹄
少年の決意のこもった声が、スピーカー越しに響く。
その時指令室にいた一同の視線が、甲児に注がれていた。
ある者は期待を、ある者は不安を、そしてある者は無力感をこめ
て、初めて死地に踏み入る少年を見守っていた。
そう、その時誰もが甲児を見ていた。
隔壁の向こうの、﹃敵﹄を監視していた職員も!
﹁隔壁を開けろ﹂
﹁了解!﹂
あくまで冷静な氷室の声に、その職員は己の役目を思い出す。
モニターに再び目を向けて、彼は叫んだ。
﹁い、いない!﹂
驚愕が伝染する。
﹁馬鹿な!どこに行った!﹂
アルト
動揺する一同の頭を、恐ろしいほど冷静な低女声が冷やす。
﹁すぐにわかる﹂
全員、一瞬だけ氷室に顔を向け、すぐにモニターに視線を戻す。
173
そこには全員の疑問の回答が映っていた。
壁の一部からまず蛸の脚が伸びて、壁と同じ色の人型が動き出す。
﹁甲児くん!﹂
悲鳴を上げる冴子。
彼女の目の前で、最愛の少年が触手に襲われ、武器を弾き飛ばさ
れる。
﹁くそ、保護色か!﹂
大山がうめく。
蛸は、保護色とその柔らかく、変形可能な体で隠れるのがうまい、
海の忍者ともいえる生物である。
﹁蛸に似ている時点で予想すべきだったな﹂
大山に冷ややかな声をかける氷室。
大山は、一瞬氷室を睨むが、自制してモニターに集中する。
敵の戦力の予想を怠るとは、確かに﹁作戦指揮官﹂として、不覚
だったかもしれない。
それでもミスの再生産だけは避けねばならない。
しかしモニターを見守る者たち、それぞれの心中をよそに、事態
は悪化してゆく。
﹃あいたかったわ、ぼうや﹄
﹃え?うわ!﹄
姿を現した蛸女の乳首から黒い粘液が噴出して、甲児を覆う。
その粘液は、甲児の着ていたACT隊員用防御服をどろどろに溶
174
かし、少年を裸にする。
さらに黒い粘液は独立した生き物のように触手を伸ばし、少年の
自由を奪う。
あっという間に甲児の体は、黒いラバースーツを着たように拘束
されていた。
﹁いやあ!甲児くん!﹂
再度悲鳴を上げる冴子。
ヒメーラの排出する体液には強い媚薬作用がある。
普通の人間なら一滴でも皮膚に触れただけでも、色欲の虜となり
正気を取り戻すのは難しい。
現に少年の顔は紅く上気して、欲情していることを示している。
そして⋮⋮
﹃まあ!なんてすばらしいのでしょう!﹄
﹁いやあああ!﹂
絶叫する冴子。
オンナ
モニターの中で少年のペニスが、粘液を切り裂くようにしてその
姿を現す。
最愛の少年が、自分のすべてをささげた少年がほかの雌に欲情し
ている。
冴子の胸に嫉妬と、怒りと、憎しみと、絶望が渦を巻く。
﹁司令!お願いです!行かせてください!﹂
﹁駄目だ﹂
冴子の哀願に答えたのは氷室の冷酷な声と、銃を構える京子たち
の姿。
175
観客を無視して、凌辱劇は進行する。
蛸女は腕を触手に変えて甲児をとらえ、自分の目の前で逆さづり
にする。そのまま、自分の口元に来た甲児のペニスを愛おしそうに
呑みこむ。
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼!!!﹂
表現しがたい奇声を上げ、かけだす冴子。その彼女をワイヤーネ
ットが捕える。
﹁!!!﹂
﹁すまん!﹂
﹁こんな使い方するとは思わなかったんだ!﹂
感電して痙攣する冴子に、勢いよく土下座して詫びる西島及び浦
原。
死地に向かう恋人の役に立たなかったにもかかわらず、その恋人
の危機にかけだす女の足止めには役立ったのだから皮肉としか言い
ようがない。
モニターを見るとさらに事態は悪化していた。
蛸女の腰から生えた無数の触手が、女の体に押し付けるようにし
て甲児の体を固定している。
甲児の顔は、蛸女の股間に押し付けられ、両側から太腿で挟み込
まれている。
甲児のペニスは、女の乳房で挟まれて固定され、その先端を女の
口元に突き付けている。
そのペニスがマイクであるかのように語りかける蛸女。
176
﹃うふふ、さらに元気になったわね。このス・ケ・べ。どこが一番
気持ちいい?﹄
もはやわずかな身じろぎしかできない甲児。苦悶の声も女の女陰
に吸い込まれているようだ。
﹁コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル⋮⋮﹂
涙を流しながら怨嗟の声を上げる冴子。
その体からどす黒いオーラが立ち上っているのが見えるようだ。
﹃うふふ、素敵なオチンチン、でも混ざりものの味と臭いがするの
はいやね。すぐに奇麗にしてあげる。貴方もすぐ知ることになるわ。
あんなのより私の方がいいって﹄
冴子の長い黒髪が燃える炎のように逆立つ。
﹁こ、こっちのほうがやばいんじゃない?﹂
﹁もう撃ってもいいんじゃない?﹂
恐れる香代に嬉しそうな京子。
﹃さあ!あの女の前で逝かせてあげる。そして快楽に身を任せ、本
能を解放しなさい!﹄
勝ち誇ったように宣言した蛸女が、カメラに見せつけるように甲
児のペニスに食らいついた。
わずか数秒。
177
蛸女の口から白い液体があふれ出て、その股間から熱い液体がほ
とばしる。。
同時に蛸女が白目をむき、腰を落とす。
その体勢はプロレス技のパイルドライバーに似ていた。
﹁あぶねえ!首折れるぞ!﹂
﹁!﹂
大山の叫びに冷静さを取り戻す冴子。髪の毛も元に戻る。
しかし二人の危惧は杞憂に終わった。
甲児の脳天が地に叩きつけられる寸前、甲児の体を覆っていた粘
液が、五本の触手となって二人の体を支える。
床からわずかに浮いた尻の下で、断続的に飛沫がほとばしってい
る。
﹃あ、ああ、す、すごい、く、口で、いっちゃう、熱くて、こんな
に濃い⋮⋮坊やの、精液、すごい、胃の中、暴れてる、焼けそう⋮
腰、抜けちゃう﹄
そのまま全裸となった甲児の体を抑え込むように、ゆっくりと体
を倒す。
甲児の両手両足には、蛸女の四肢が絡みつき、動きを封じる。
甲児の顔は蛸女の股間の下敷きになり、愛液をすり込むように擦
りつけられる。
二つの巨乳は、生き物のように甲児の腹の上で波打つ。
そして、口からよだれのように甲児の精液を垂らした顔で、甲児
のペニスに頬擦りする蛸女。
﹃ああ、まだこんなに硬いぃ。それにいい臭いぃ。頭まで突き抜け
178
て、犯されてるみたいぃ﹄
股間から塩を拭きつけながら、うわ言のようにつぶやく蛸女。
その姿はあまりに淫猥で、男たちは前かがみになり、女達は顔を
熱くした。
﹃ああん、もぉだめぇん、ごめんなさいぃ、私の体全部味わっても
らうつもりだったけど、もう我慢できないぃ﹄
甘たっるい声をあげると、蛸女の四肢がゴムのように伸びあがり、
その体を垂直にはね上げる。
そのまま半回転して甲児の体の上に尻から着地する。
まるで獲物を狩る肉食獣のように狙いたがわず、蛸女の女陰は甲
児のペニスを呑み込んだ。
電流に打たれたように痙攣する蛸女。
﹃あおおおお!力がァア!いいーっ!逝くうぅうううう!﹄
﹁いやああああああああああああああああああ!﹂
蛸女の絶頂の断末魔と冴子の悲鳴が響く。
短時間のうちに絶頂を繰り返し、イク!イク!と吠えながら腰を
振る蛸女は、獲物の喉笛に食らいつく獣のように甲児の唇を奪おう
とする。
﹁やめてえええ!甲児くん!いやあああ!﹂
冴子の声に応える者はいない。
179
甲児は絶望していた。
彼が戦いを決意したのは冴子のため。
彼女のそばにいる資格があると自身に証明するためであった。
それなのにあっという間にやられてしまった。
それどころか、自分は敵の女、いや、女の姿をした怪物に無理や
り欲情させられ、犯される。
いや、今でこそ理性が何とか持っているが、限界を超えた時自分
は自ら魔女の肉を貪るだろう。それが本能的にわかっていた。
冴子を、自分に身も心も捧げてくれた女性を裏切ることになる。
それが何よりつらかった。
絶望と欲情に身を焦がしていた甲児だが、ついに最後の時がきた。
自分の体の一部がついに魔女の肉壺に喰いつかれたのだ。
先に射精していたため、何とか歯を食いしばってこらえることが
できた。
だが、そう長くは持たない。
魔女が腰を振るたびに全身に快感が走り、自制心が削られてゆく。
涙でゆがんだ視界に、魔女の顔が映る。
魔女の顔が自分の顔に迫ってくる。
長く伸びた舌はペニスだと思った。
二つの乳房もだ。
あれが自分に触れた時、自分の心がレイプされてしまい、目の前
の敵に完全に屈服してしまうのだろう。
壊れかけた頭でそう考えていた。
その時、冴子の声が聞こえた気がした。
180
その聞こえるはずの無い声は、彼の脳裏に今までに見た冴子の姿
を浮かばせた。
︱︱怪物を狩る、刃のように美しい冴子
︱︱既に裸になっていながら、まずキスをしてと、赤くなる冴子
︱︱一人にしないでと泣きわめく冴子
︱︱今朝、自分を起こした時に、解き放たれたように明るく笑う
冴子
︱︱自分の触手でよがる冴子
何かのスイッチが入り、動き出したような感じがした。
同時に気力も戻ってきた。
目をしっかりと開いて、蛸女の姿を見る。
腰を動かすたびに絶頂に達しているのか、白目をむき口を開けた
だらしない顔だ。
その顔を見たとき、優越感と復讐の喜びを感じた。
こんな化け物でも自分のチンポでよがる雌にすぎない。
恐れることはない。
オス
まだ自分にも武器はあった。
ならば自分のすることは一つ。
オカスソメルウマセルシハイスルオカスソメルウマセルシハイス
ルオカスソメルウマセルシハイスルオカスソメルウマセルシハイス
ルオカスソメルウマセルシハイスルオカスソメルウマセルシハイス
ルオカスソメルウマセルシハイスルオカスソメルウマセルシハイス
ルオカスソメルウマセルシハイスル
異形の思考が滝のように脳内を流れ落ちる。
そのことに対し甲児は何の違和感も持たない。
181
魔女に犯されるのではない。
自分が魔女を犯すのだ。
犯して身も心も屈服させ、支配するのだ。
そのうえで殺してやる。
そして帰るのだ、冴子の元に。
魔女の子宮に精液を叩きこむつもりで、自ら腰を動かす。
そして爆発寸前だった精液を解放する。
同時に何かがはじけた。
﹃くるぅ!﹄
再び上がる断末魔。それと同時に甲児の体から無数に生えた、白
い牙のような触手が蛸女の肉体を貫いていた。
モニターを見ていた氷室は、身震いするような笑みを浮かべた。
﹃ヒギいいいいいいいいいい!!!﹄
悲鳴を上げる蛸女。
それを聞く者の何人が気付いたであろうか。
それが絶頂の悲鳴でもあることに。
触手が無茶苦茶に暴れまわり、蛸女の体を引き裂いた。
﹁やったか!﹂
182
﹁まだだ!﹂
地に堕ちた肉片は白い粘液となり、地を這い一体に戻ろうとして
いる。
操り人形のような不自然な動きで立ち上がる甲児。
粘液が一つにまとまり、再び蛸女の姿をとった。
対峙する二人。
生気の無い甲児に比べ、ギラギラと目を輝かせる蛸女が口を開く。
﹃うふふふ、すごかったわぁ、坊や、欲しぃ、欲しいわぁ、坊やの
すべて、ちょうだいィいい!﹄
乳首から大量の黒い粘液がほとばしり、甲児に襲いかかる。
左手を前に出す甲児、触手がその左腕に巻きつき渦を作り、粘液
を弾き飛ばす。
﹁ドリルだぁあああ!﹂
﹁あれこそ、まさに漢の浪漫!﹂
﹁だぁとれ!おまえら!﹂
西島と浦原の妄言も、大山の叫びもきかず、触手ドリルとなった
左手を構えて突進する甲児。
蛸女は触手を伸ばして天井に張り付け、体を引き上げてよける。
さらに上から脚の触手を伸ばして襲いかかる。
左腕に巻きついていた甲児の触手が再び動き出し、今度は全身の
各所に巻きつく。
まるで骨に絡みつく筋肉のように。
一瞬にして甲児はその姿を変えた。
触手は捻じれた筋肉を思わせる白い鎧と化し、顔を含む左半身の
すべてと右半身の70%前後を覆っている。
183
全身の各所から頭を出している触手の先端と、勃起したペニスは
白い牙
と呼ばれた戦士の誕生であった。
ホワイトファング
白い硬質な表皮に覆われ、その様は牙を思わせる。
後にACT極東支部の
右の手刀をふるって、蛸女の脚を切り裂く甲児。右手は牙のよう
な刃と変わっていた。
はじめて味わう肉を斬る感触に、震えが来るほどの快感を感じる
甲児。
返す刀で、かまいたちを作り出し、蛸女の腕を切り裂く。
そして落ちてくる蛸女の体に、全身から伸ばした触手、否、牙で
切り刻む。
顔を、舌を、乳房を、腹を、内臓を、子宮を。
新しいヴァギナを作り、そこにペニスをつきこんでゆくような感
覚。
女の肉体のすべてを支配している実感。
全身を走る快感に歓喜が爆発する。
蛸女は蒸発するように消滅していった。
﹁甲児くん!甲児くん!﹂
また、冴子の声が聞こえる。
目を開けて映ったのは、涙流す冴子の顔。
人間
の手を見て、先刻の自分が人間ではなくなっていた
疲れてだるい手を挙げて、その涙をぬぐう。
その
ことに気付く。
﹁⋮⋮冴子さん⋮⋮僕⋮変わってない?﹂
﹁大丈夫よ、替わってなんか、いない﹂
感極まった冴子が自分を力いっぱい抱きしめる。
184
そのぬくもりを感じながら、甲児は再び眠りに落ちていった。
︵⋮⋮これが冴子さんの生きてきた世界⋮⋮︶
︵⋮⋮そしてこれから僕が生きてゆく世界⋮⋮︶
ぼんやりと、そんなことを考えながら。
185
蠢きだすもの︱︱海︱︱︵前書き︶
お待たせしました。
第一部のエピローグを数回に分けてお送りします。
⋮⋮なんでこんなに長くなった?
186
蠢きだすもの︱︱海︱︱
乗っ取ったダキニの体で、甲児をがんじがらめにしたヴィヴィア
ン。
力強い甲児のペニスを眼前に、彼女は快楽への多大なる期待と、
甲児の弱さにわずかながらの失望を感じていた。
︵あらあら、もしかしてはずれだったかしら?これほどのオチンチ
ンの持ち主ならもっと強いかと思っていたんだけど⋮⋮︶
強い雄のほうがより強い子孫を期待できる。
その点、普通の人間並みの甲児は不合格と言ってもよい。
また他の雌、それも人間臭さが濃い雌の匂いも気に入らない。
︵⋮⋮もうあの半端者に奪われてしまったのね。悔しい。初物を頂
きたかったわ︶
ヴィヴィアンは人間の雄の中では少年が一番好きだ。
瑞々しい精気に満ち溢れた若い肉体。
性技こそ稚拙だが、何度でも射精できそうな回復力。
なにより女に慣れていな初心な少年が、泣きそうな顔で自分の肉
に溺れていくのを見るのは、楽しいを通り越して愛しさすら感じる。
しかし既に他の雌の唾がついた相手では、魅力も半減である。
そのはずなのだが目の前のペニスを見ていると涎が止まらない。
︵まあいいわ。こんなにおいしそうなオチンチンだもの。他のこと
は後にして、とりあえず味見してみましょ。これが切っ掛けで力が
目覚めるかもしれないし︶
187
﹁さあ!あの女の前で逝かせてあげる。そして快楽に身を任せ、本
能を解放しなさい!﹂
眼の前のごちそうに食らいついて数秒。
﹁!!!!!!!!!!!!!!﹂
口の中に熱い迸りを感じる。
衝撃が脳天を貫いた。
子宮が悲鳴をあげ、腰が砕ける。
﹁!﹂
尻もちを突き、甲児の頭を床にぶつけそうになり、あわてて態勢
を立て直す。
﹁あ、ああ、す、すごい、く、口で、いっちゃう、熱くて、こんな
に濃い⋮⋮坊やの、精液、すごい、胃の中、暴れてる、焼けそう⋮
腰、抜けちゃう﹂
口から出したペニスはまだ硬いままだ。
︵⋮⋮素敵⋮⋮︶
甲児の体をゆっくりとできるだけ丁寧に、震えて落としそうにな
るのをこらえながら、床に横たえ、そのまま全身で押さえつける。
いわゆるシックスナインの態勢だ。さらにそのまま自分の全身をを
使って愛撫する。
密着すればするほど、目の前のペニスから感じる力強さが増して
188
ゆく。
なんと愛おしいことか。
頬擦りしてみる。
顔がやけどしそうに熱い。
射精したばかりの精液の匂いが、鼻腔から脳天まで貫く。
何より甲児の顔を抑えつけてる股間がすごい。
熱く荒い息が子宮まで届いている。
もはやヴィヴィアンは限界であった。
﹁ああ、まだこんなに硬いぃ。それにいい臭いぃ。頭まで突き抜け
て、犯されてるみたいぃ。ああん、もぉだめぇん、ごめんなさいぃ、
私の体全部味わってもらうつもりだったけど、もう我慢できないぃ﹂
力
ヴィヴィアンは素早く態勢を入れ替えて、甲児のペニスを胎内に
迎え入れた。
その瞬間、爆発が起こった。
膣口から子宮、心臓、脳天までキノコ雲がたつような激しい
の奔流を感じる。
間違いなく自分たちと同質の生命エネルギー、それも感じたこと
がない巨大なエネルギーだ。まさに爆発的というよりない。
魂が宇宙まで飛んでゆくような絶頂感。
ヴィヴィアンは断末魔ににも似た悲鳴を上げる。
それでも快感は止まらない。
連鎖爆発のように立てつづけに、逝きまくるヴィヴィアン。
︵いい!すごい!すごいわ!この子!いい!もういいわ!弱くても
!これだけですごい価値があるわぁ!この子のこと忘れられなくな
っちゃう!欲しい!欲しいわ!︶
ヴィヴィアンは逝きながらも、自分の所有権を明記するかのよう
189
に甲児の唇を狙う。
﹃いやあああああああ!﹄
気のせいか女の悲鳴が聞こえた。
圧倒的な征服感と勝利の喜びが揺れる胸を満たす。
その瞬間。
全身を鋭い痛みと快感が襲う。
軽く意識が飛ぶが、ギリギリで意識をつなぎとめ、自らの状態を
確認する。
﹁!﹂
甲児の体から無数の白い触手が伸びて、自分の肉体を串刺しにし
ている。 ﹁ヒギいいいいいいいいいい!!!﹂
触手が動くたびに、痛みと快感がヴィヴィアンをさいなむ。
クローン
さらに時間の経過とともに痛みより快感が優ってゆく、いや痛み
すら快感に変わりつつある。
しかし同時に肉体が切り裂かれバラバラになってゆく。
も
︵いけない!この体じゃ保たない!︶
ヒメーラ
今使っている肉体はもともと自分より下等な同胞のダキニの分身
190
の死体を再利用している物だ。
ヴィヴィアン
いわば壊れた物を無理やり使用しているだけにすぎない。
間違いなく甲児の強力な力には耐えられない。
フィードバック
遠隔操作しているとはいえ、この肉体の損傷は本体にも強い影響
を及ぼす。
最悪、死だ。
それがわかっていながらヴィヴィアンは躊躇した。
命と快楽が天秤に乗せられたのだ。
結局は命の方に天秤が傾き、甲児に切り刻まれる前に自ら肉体を
分解して難を逃れる。
分解した肉体を急ぎ再構成しながら、冷静さを取り戻そうとする
が、歓喜がその努力を無に帰した。
︵目覚めた!目覚めたのね!︶
甲児が同胞として目覚めたことに気が付き、喜びに満ちるヴィヴ
ィアン。
まだ上手く力を扱えないようだが、それは自分が導けばいい。
何が何でもこの少年を手に入れる、固く決意するヴィヴィアン。
目がギラギラと輝きだす。
﹁うふふふ、すごかったわぁ、坊や、欲しぃ、欲しいわぁ、坊やの
すべて、ちょうだいィいい!﹂
になるの!私たちで新しい世界を作るのよ!︶
︵そして私たちは新しいアダムとイブに!ううん、一つになって
神
しかしここは怨敵ACTの地下基地、甲児を連れて帰るどころか、
逃亡も至難の業である。
甲児の能力の確認、後々のための布石といった目的を果たした以
上、この肉体はもう破棄しても問題ない。
191
しかし彼女はもう少し甲児のことが知りたかった。
その戦力と快感を。
胸から墨乳を発射する。
甲児はその触手を横向きの竜巻のように旋回させて弾き飛ばし、
そのまま弾丸のごとく突進してくる。
その突進を子宮で受け止めたいという誘惑に駆られるヴィヴィア
ン。
何とか振り切って天井に逃れ、上から甲児を襲う。
今度は甲児の触手がその体に巻きついて、鎧のように変化して身
を守る。
全身から白い牙を生やした異形の騎士。
ヴィヴィアンは震えた。
︵すごいわ!みせて!もっと見せて!貴方のすべて!︶
甲児の右手が牙のような形の刀と変わって、ヴィヴィアンの手足
を斬り落とす。
支えを失って落下するヴィヴィアン。
その真下には甲児が、無数の牙を光らせて待ち構えている。
自分を貫こうとする愛しい男に、その身を投げ出すヴィヴィアン。
そして最期の時。
無数の牙で貫かれ、これまで感じたことのない快感を感じるヴィ
ヴィアン。
しかしその快感は絶頂に達することはなかった。
なぜならその肉体は、甲児の力に耐えきれず霧散したからだ。
192
﹁はあ、はあ﹂
意識がダキニの分身体から、自分の肉体に戻ったヴィヴィアン。
幸いにもほとんどダメージがない。
おそらく、ダキニの分身体が一瞬にして霧散したため、ダメージ
を脳が感じる前に、意識が元の体に戻ったのだろう。
しかし彼女はそのことに安堵するどころではなかった。
﹁はあああん!なんでぇ!どうしてぇ!もう少しだったのに!もう
少しで逝けたのにぃ!﹂
泣きわめきながら股間をかきむしり、胸を揉みしだく。
全身に熱い疼きを感じる。
見れば全身のいたる所︱︱甲児の牙に刺し貫かれたところ全てに、
口をあけている物がある。
傷ではない。
女性器だ。
血ではなく愛液を垂らした女性器が、物欲しげに口をあけている。
﹁くうん﹂
ヴィヴィアンが頭を振る。
美しい豊かな金髪が縒り合わさって何本もの触手となる。その先
端はペニスと同じ形だ。
﹁はぁう、あぁ﹂
触手の群れが、ヴィヴィアンの全身の女性器に潜り込む。
濡れた音の大合唱だ。
193
それでも満ち足りないらしい。
﹁ああ!足りない、足りないのぉ!﹂
切なげに吼えると、きっと、とある方をにらむ。
そこには二人の少年がペニスを立てて、硬直して自分を見ている。
﹁何をしているのローラ!それに坊やも!早く来なさい!﹂
﹁は、はい!﹂
﹁申し訳ありません、ヴィヴィアン様!﹂
飛び跳ねるように近寄る二人。
﹁二人ともそこに向かい合って座りなさい。そうもっと近く、脚を
伸ばして組み合わせるように﹂
少年たちに命令を下して、Vの字に開いた両脚を互い違いに組み
合わせる形で密着するように座らせる。
いわゆる松葉崩しの体位だ。
彼らの中心、つまり二本のペニスをまたぐように仁王立ちするヴ
ィヴィアン。
褐色の少年の目に真っ白い桃のような臀部が、もう一方の少年の
目には巨大な乳房と濡れに濡れた陰部が映る。
﹁足りないの、足りないのよ、こんなオチンチン一本じゃ⋮⋮﹂
うわごとのようにつぶやきながら腰を下ろすヴィヴィアン。
自らの背後で褐色の少年が、悔しげに歯を食いしばるのに気付か
ない。
右手で二本のペニスをつかんで、まとめて胎内に咥えこむ。
194
﹁あんんん!﹂
﹁アーー!ヴィヴィアン様ァ!﹂
﹁気持ち良いい!﹂
重そうな尻を大きく開いた脚で宙に浮かせ、前に後ろに、右に左
に、時にはひねりを入れて、少年たちのペニスを食いちぎらんとば
かりに責めるヴィヴィアン。
褐色の少年の眼前で巨大な尻が踊り、もう一方の少年の眼前で二
つの乳房が跳ねる。
二本のペニスはヴィヴィアンの蚯蚓千匹の肉壺に締め付けられ、
こすれあい、弾力で弾き合い、少年たちに刺激を快感として与える。
その快感による反応が跳ね返るようにヴィヴィアンにも刺激を与
え、さらなる快感を呼び起こす。
﹁いいわぁ!これいい!﹂
﹁ああん!ヒロシのコック堅くて、ヴィヴィアン様のプッシー締め
付けるのぅ!﹂
﹁ローラさんのチンポ、コリコリィ!オマンコ、ぐちゅぐちゅぅ!﹂
透明な涎を垂らして狂態をさらす三人を女達が囲む。
﹁ヴィ、ヴィヴィアン様ぁ⋮⋮﹂
﹁わ、私たちも我慢できませんん﹂
﹁お願いですぅ﹂
﹁わ、わかったわぁ!少し待ちなさいぃ!﹂
ヴィヴィアンの髪のうち、自らを犯しているもの以外の髪が伸び
る。
それも先端に行くにつれ太くなりながら。
195
その先端は鰓の張った魚の頭部のような、見ようによっては亀頭
のような形をとった。
そして女達に襲いかかり、性器を、肛門を、口を、胸の谷間を犯
し始めた。
﹁あひぃ!ヴィヴィアン様ぁ!﹂
﹁すごひぃ!すごすぎるぅ!﹂
﹁らめぇ!いつもよりすごひぃ!﹂
﹁そうよ!みんなで気持ち良くなるの!一つになるのよ!すべては
私のものにぃ!﹂
吼えるヴィヴィアンを中心に、淫らな肉の華が咲く。
あるいはヴィヴィアンを中心とする世界を映す曼陀羅か。
嬌声に満ちる空間。
しかしその空間に耐えきれないものも出始める。
﹁ああ!ヴィヴィアン様ぁ!お許しをォ!﹂
﹁ローラさんのチンポ!びくびくして!ああ!僕も駄目!﹂
最初にローラが射精した。
そのペニスの痙攣に刺激され、僅かに遅れてヒロシも射精する。
﹁なんてことなの!ローラ!だらしないわよ!﹂
﹁お許しくださいぃ﹂
﹁駄目よ!許さないわ!﹂
事前にさんざん搾り取られていたヒロシの方が長くもったのは当
然であろう。
しかし彼の女主人の理不尽な怒りは治まらない。
ヴィヴィアンの乳首から白い乳液が泉のように溢れ出す。
196
乳液はヴィヴィアンの胸から腹、陰部を通過してベッドに落ち、
そこでナメクジのような姿を形作るとローラの肛門に潜り込んだ。
そのまま性器として使用可能に調教された、肛門の蹂躙を開始す
る。
直腸の壁から、媚薬成分を含んだナメクジの体液が吸収され、そ
の動きは前立腺を刺激して、ローラのペニスにさらなる力を与えた。
﹁あぎいぃいい!﹂
﹁ほほほ、いつもより大きく、硬くなったわ。それでいいのよ﹂
白目をむき、歯を食いしばって悲鳴を上げるローラ。それを嘲笑
う魔女。
﹁ローラさん、また固くなって、気持ちよさそう⋮⋮ヴィヴィアン
しゃま∼、僕もぉ、僕のお尻もぉ!﹂
﹁いい心がけよ、坊や。お尻でローラとつながりなさい﹂
さらなる快楽をねだる少年に応え、ローラの肛門を犯しているナ
ディルドウ
メクジの体が伸びて、ヒロシの肛門を犯し始めた。
ローラとヒロシは、肛門に咥えこんだ疑似男根で、お互いに犯し
合い、犯され合う態勢になった。
﹁ああああああ!あづいぃぃい!﹂
﹁ラメェ!ヒロシうごいちゃらめぇ!﹂
﹁暴れてるぅ!お尻が暴れてるぅ!﹂
﹁気持ぢ良ズギルノヴォー!﹂
﹁うふふ、坊やのオチンチンも大きくなったわ!さあ!もっと楽し
みましょう﹂
再び魔女は快楽地獄に苦しむ二人の獲物を貪り始めた⋮⋮
197
狂宴はどれほど続いたか⋮⋮
さすがに少年たちも限界に達した。
特に、経験の少ないヒロシはもう、声も出ない。
﹁も、もうらめぇ﹂
﹁ヴィ⋮⋮ア⋮さ⋮も⋮⋮るし⋮﹂
だが、まだ魔女は彼らを解放する気はないようだ。
﹁うふふ、坊や。喉が渇いたのね﹂
嫣然と笑って母親が赤子を抱きあげてするように、自らの乳首を
ヒロシの口に含ませる。
﹁栄養たっぷり、愛情たっぷりの私のミルクを飲めばすぐに元気に
なるわよ。さあ、たんとお飲みなさい﹂
甘いミルクの匂いが漂う。
少年の喉が何度も上下する。
同時にそのペニスが再び力を取り戻す。
﹁うふふ、元気になったわね。ローラもいらっしゃい﹂
ランス
ヴィヴィアンの声を聞いて、のろのろと体を動かすローラ。
その手にいきなり巻貝で作られた騎兵槍が現れヴィヴィアンを貫
かんとする。
198
﹁!﹂
しかしその槍がヴィヴィアンに届くことはなかった。
蟹の鋏が槍を受け止めたのだ。
ただしその鋏は三本爪だったが。
見ればヒロシの体も蟹や海老のような甲殻に覆われつつある。
冷や汗を垂らし、顔をひきつらせるヴィヴィアン。
﹁⋮⋮やりすぎちゃった?私?﹂
や
明らかに姦り過ぎだ。
だれか胸の内で突っ込んだかは定かでない。
しかしヴィヴィアンは確かにやり過ぎたのだ。
現在、ヒメーラにとって最大の問題は、雄の出生率の低下と弱体
化である。
どうやらこの世界には、彼らの雄にとって有害な因子があるらし
く、雄がなかなか生れず、生まれてもほとんど長生きできない、で
きても子供を作れないという事態になった。
挿木
そこで問題を解決するために様々な方法が考えられた。
1、
これは自分の一部を切り離して新しい個体を作る方法である。
イコール
この方法は新しい個体の能力の劣化が著しく、この世界に適応で
を作るのがその名残でしかない。
きない=生命力の弱い個体が生まれやすい。今では全く使われてい
ない。
使い魔
接木
上級種が
2、
人間など他の生物にヒメーラの因子を注入することによって、自
分たちの同胞として作り変える方法である。
199
この方法によって雄なしでも繁殖が可能になったが、そうやって
生まれた子供たちはやはりどうしても母体となった生物の因子が強
く、ヒメーラとしての能力は低い。
さらに代を重ねるごとに、ヒメーラの因子が弱体化していくとい
う欠点があった。
そのため使われたのは初期のうちであり、非人間型の下級ヒメー
ラの多くは過去にこうして生み出されたものである。。
3、性転換
これは、ヒメーラの自己進化及び肉体変化能力を応用した、雌の
一時的雄化による交配である。
この方法により、ヒメーラ同士で交配して生まれた幼生こそ、ヒ
メーラとしての純度が最も高い。
また純度は落ちるが他の生物に自分の幼生を産ませることも可能
だ。これは異種交配という別の方法として次に述べる。
力
がほぼ同等のものでなけれ
しかしこの方法はリターンも大きいが、リスクも大きい。
まずヒメーラ同士の交配だが、
ばできない。
特に雄役を務める個体は、絶対に強い方でなくてはならない。
実力に差があり過ぎると、強い方に吸収されてしまうのだ。 次に親同士の相性によって、生まれてくる幼生の能力に著しい上
下が生じる。
親より強い幼生が生まれることもあれば、すぐに死ぬような弱い
ものが生まれることもあり得る。
そして親より強い幼生が生まれた場合は脅威である。
ヒメーラといえども生まれてすぐは、自分たちの能力、社会、掟、
上下関係など知識は全くない。
人間の赤子と同じだ。
そのような存在が、いたずらに力をふるったらどうなるか。
想像してみてほしい、ゴリラ並みの腕力をもった赤子が親にじゃ
200
れついたらどうなるか。
大惨事である。
何より、本来不自然な形で子供を作るためか、能力的にバランス
を欠いた幼生が生まれやすい。
たとえばある者は高い知性を持つが戦闘力が皆無出会ったり、ま
たある者は攻撃力こそ強力だが、生命力が低くて撃たれ弱い、とい
った具合だ。
このように、この方法はハイリスク・ハイリターンなのだ。
4、異種交配
上で述べたように、一時的に雄化したヒメーラが他の生物の雌に
子を産ませることである。
もともとこの世界に存在した生き物との間に作るためか、生まれ
てきた幼生はこの世界に完全に適応している、すなわち生命力が全
体的に高い。
しかしヒメーラ同士の間で生まれた幼生に比べれば、比較的能力
は低めだ。
接木
のように代を重ねるごとに弱体化していくという
そもそも母体の方が妊娠出産に耐えられないこともある。
また、
欠点もある。
最大の欠点はACTのように、人間側に戦力を与える恐れがある
ということだ。
接木
と異種交配を合わせたような方法である。
5、眷族化
人間などの雄を、自分たちの同胞に作り変えて交配する、あるい
はその逆である。
接木
して仲間にしてから幼生を産ませてみ
この方法を考え出したヒメーラは、もともと人間の雌を犯してい
るときに、この雌に
たらどうだろう、と考えたらしい。
201
こうして作った交配相手は、
いという利点もある。
力
に差があっても吸収されにく
やはり代を重ねた場合の弱体化は避けられないが、傾向としては
接木
を繰り返して、新しい交配相手を作り続ければ、弱体化
非常に緩やかであり、幼生の能力もバランスが取れて安定している。
も抑えられる。
単純に数を増やしていくだけなら最も適した方法で、現在もっと
もよくつかわれている繁殖方法だが、やはり問題もある。
一つはやはり弱体化。
純血性
も失われ
確かに弱体化は抑えられてはいるが、あくまででなくなったわけ
ではなく緩やかに進行していること、比例して
てゆくこと。
ルナのような長老たちはこの点を憂いている。
自分たちが全く違う別の生き物になることを恐れているのだ。
もう一つは人間の雄を眷族化する際の暴走の危険性。
人間の雄を眷族化する際、暴走︱︱完全に知性の無い獣のように
暴れまわる︱︱して死ぬ可能性が極めて高いのだ。
これはヒメーラに変化する時に感じる、破壊衝動、性衝動、苦痛、
快感に脳が持たないからだろうと言われている。
手綱
をつけねばならない。あ
そのため人間の雄を眷族化する際には、暴走させないように細心
の注意をもって因子を注入して、
る者は暴力で、ある者は毒や薬で、ある者は脳に直接手を加えるこ
とで。
ヴィヴィアンは人間の少年を性奴隷として調教することにより、
暴走を抑えていた。
少年に快楽を教え、なじませ、自分への忠誠を刻み込み、身も心
も完全に支配して飼いならしていたのだ。
まさに趣味と実益を兼ねた方法である。
そうして100%飼いならしたのがローラであり、99%飼いな
らしていたのがヒロシであった。
202
そして画竜点睛を欠くように、残っていた1%が今、彼女に牙を
むいた。
甲児に出会い自制心を失っていた彼女は、残りの1%を見逃し、
暴走させてしまったのだ。
︵ああん、もったいない。坊やの可愛い顔が⋮⋮︶
ヒロシの可愛い顔は、尖った赤い甲殻で覆われたザリガニのよう
な顔になった。しかしその口はザリガニなどの甲殻類とは異なり、
サメのように牙が並んでいた。
︵やっぱり我慢するべきだったわ⋮⋮我慢⋮⋮無理ね⋮⋮新しい子
に手を出す前に在庫を一気にと思っていたんだけど⋮⋮︶
後悔して眉根を寄せるヴィヴィアンに襲いかかるヒロシ。
﹁お゛っばい゛りぎぃ!﹂
ヴィヴィアンの右の乳房に食らいつくヒロシ、さらに棘のように
なったペニスを彼女の女陰に突き込んだ。
﹁あ∼ん私、坊やに犯されちゃう∼、おっぱい食べられちゃう∼﹂
わざとらしい顔と声で悲鳴を上げるヴィヴィアン。
全く危機感を感じられない。
﹁あ∼ん、たすけて∼ろ∼ら∼﹂
﹁ヴィヴィアン様!く!﹂
ふざけた悲鳴で助けを求めるヴィヴィアンと、あくまで真剣な表
203
情で立ち上がろうとするローラ。
しかしローラは全く動けない。
腰が抜けたようだ。︵先ほどの運動量を考えれば無理のない話で
ある︶
さらに言うなら、周囲の女どもは未だヴィヴィアンの髪に犯され
よがっている。
孤立無援のヴィヴィアン。
なのに彼女から余裕が消えることがない。
﹁うーん、しかたないわねえ﹂
その一言とともに異変が起こった。
ヴィヴィアンの右の乳房、ヒロシが食らいついている乳房がいき
なり膨れ上がり、ヒロシの頭部を呑み込んだ。
同時にヴィヴィアンの腹部が、真っ二つに割れ大きな口を開き、
そこから無数の触手が躍り出て、ヒロシをとらえて呑み込んだ。
一瞬ののちそこには、妊婦のような大きな腹をして、右の乳房が
不自然に膨らんだヴィヴィアンの姿があった。
ヒロシはもう両脚しか見えない。
それも、逆子の出産の巻き戻し映像のように、大きく広がったヴ
ィヴィアンの膣口に呑みこまれてゆく。
そして一分もしないうちに、ヒロシの姿はヴィヴィアンの胎内に
消えた。
その頃には右の乳房も元の大きさに戻っていた。
普通の妊婦のように腹をかばいながら座るヴィヴィアン。
ふと気持ちよさそうに﹁アン﹂となく。
なか
﹁うふ、わかる、わかるわぁ、坊や。私の胎内気持ち良いんでしょ、
蕩けるほどよくて、精液ビュービュー止まらないんでしょ﹂
204
その言葉が切っ掛けになったのか、ヴィヴィアンの腹が不自然に
波打つ。
まるで内部から殴られているかのように。
その腹を愛おしげにさするヴィヴィアン、狂気の笑みを浮かべて。
﹁いいわぁ!いい!坊や!出して蕩けて出して蕩けて!貴方のすべ
て、精液にして出しておしまい!貴方は精液になるの!ああ!逝く
!﹂
髪を振り乱し大口を開けて絶頂に達する。
その股間から白い液があふれ、腹がへこみ、髪が波打つ。
そしてヴィヴィアンの髪に犯されていた女達の腹も膨らみ、膣口
から白い液があふれ出た。
﹁あははは!喜びなさい、坊や!貴方の命はこの娘たちが引き継い
でくれるわ!この娘たちがあなたの子供を生んでくれるのよ!満足
していきなさい!﹂
海の魔女は笑い続ける。
背後で悔しさと恐怖に震える少年に気付きもせずに。
205
蠢きだすもの︱︱月︱︱︵前書き︶
お待たせしました。
今回時間がかかった理由は使い捨ての雑魚のヒメーラがなかなか決
まらなかったためです。︵途中の戦闘シーン書き終えたのが一番最
後︶
こんなのどう、というアイデアがありましたら教えていただければ
幸いです。
お願いします。
206
蠢きだすもの︱︱月︱︱
甲児の戦いを見ていたのはヴィヴィアンだけではなかった。
﹁むう、ここでもか﹂
とある資材置き場で、血だまりを目にして女が呻く。
ハリウッドのアクション映画から抜け出してきたような、黒いラ
イダースーツとミラーグラスを身につけ、ドレッドヘアーを後頭部
で束ねた黒人の美女だ。
女が鼻を鳴らして息を吸う。
女の眉根が歪んだ。
﹁やはりルナ様の匂い。どういうことだ﹂
女は夜空を見上げ、三日月を睨みつける。
そのまま数秒。
女の後ろに伸びる影がもりあがり、数匹の黒い犬が現れた。
そして女の命とともに飛び散った。
カゲロウ
﹁影狼ども、探せ!ルナ様を!﹂
影
を媒介として作った分身である。
影狼とは、ルナとその眷族︵子孫あるいは分身たちのこと︶が使
う、自らの
純血種
細胞や遺伝子ではなく直接自らの生体情報を無生物、それもただ
の物理現象たる個体数を増加させることができるのは、
207
始祖
にきわめて近いルナとその血を色濃く引く者たちのみである。
この、同族からはジャッカルと呼ばれる女もまた、ルナを
とする上級魔女の一体だった。
ぼろぼろの廃ビルに巣食うは、アウトローを気取る少年たち。
己の溢れんばかりの体力と性欲にふりまわされる彼らは、狩だ獲
物だと称して女たちをなぶっていた。
女の一人は泣きじゃくりながら鼻ピアスのヒゲ面に後ろから犯さ
れ、スキンヘッドの男に無理矢理口を犯されている。もう一人は人
形のように虚ろな表情で、ニット帽の大男にのしかかられている。
そしてその光景を携帯のカメラで撮影している眼鏡の小男。
おそらくは彼の本意ではないが、他の三人に逆らえないのだろう。
カメラの向こうで、三人の男どもが腰を振り続ける。
その時、空っぽの空間に、機械のような正確なリズムで堅い足音
が響いた。
一斉に男たちが振り返れば、輝くような銀髪の美女がいた。
飾り気のない黒いライダースーツも黒いサングラスも、その女の
妖しい美しさを隠すどころか引き立てる。
一瞬にして魅入られ、凍りついた男たちであったが、鼻ピアスの
男がどもりながら問いかける。
﹁ね、姉ちゃん、な、仲間に、は、は、入りてぇのかよ?﹂
その問いに女は無言で、ライダースーツの前のジッパーを勢いよ
く引き下ろすことによって答える。
開いたジッパーの間から、透き通るように白い乳房が踊り出る。
208
雲間から月が現れたようにまぶしく感じるそれらは、ブラジャー
など不要と叫ばんばかりに、均整のとれた丸みを見せつけていた。
腰に角度をつけ、挑発するように胸を突きだす。
呆けた表情の男たち。
彼らは自分たちが射精したことにも気づいていない。
そのままノロノロと立ち上がろうとする。
その肉欲の象徴は萎えたりしていない。それどころかさらにいき
り立ってゆく。
男たちの動きに合わせるように、女のライダースーツがひとりで
に滑るように脱げ落ちてゆく。
男たちが立ち上がった時、女はその輝くような裸身をさらしてい
た。
それを見ただけで噴水のように、白いしぶきを上げる男たち。
女の方にも飛んでゆくが、一滴たりとも女の肌を汚すことはない、
蒸発するように消えてゆく。
女︱︱ルナが身につけた最後のものであるサングラスを外して投
げ捨てる。
銀色に輝く視線が、歪む真珠色の唇が、男たちを侮蔑、挑発する。
そして男たちの欲望が爆発した。
﹁うがあああああああああ!﹂
ケダモノ
男たちが獣の叫びをあげる。
同時にその体が膨れ上がり、異形の怪物と化していった。
鼻ピアスは豚のような鼻をした狒狒のような怪物に。
スキンヘッドの皮膚は沸騰してあぶくを出す湯のように、毒々し
い色のいぼに覆われた。まるで蝦蟇蛙だ。 大男は小さい角が7本生えた牛と熊のあいのこのような姿になっ
た。
もっとも姿が変わったのは小男だ。
209
顔が伸び、口が裂けて狼のような顔になったかと思うと、その顔
ケルベロス
が真ん中から割れ、細胞分裂のように、新しい二つの顔になった。
まるで、ギリシャ神話のオルトロス︵地獄の番犬の兄弟︶だ。
いぼ蝦蟇が跳び上がった。その舌が槍のように伸びる。
ルナが掃うように左手を振る。
五条の閃光が走った。
長く伸びたルナの鋭い爪、銀色に輝く凶刃が肉の槍をバラバラに
切り裂いたのだ。
激痛のあまり口を押さえて空中でバランスを崩しながら、落下す
るいぼ蝦蟇をゴムマリのように蹴り上げるルナ。
大きく開いた長い脚の付け根から、雌の匂いがその濃さを増す。
その臭いに引きつけられたように牛熊が、地を這うように低い態
勢から角を突き上げる。
ルナは突き上げていた脚を弧を描くように振り、牛熊の側頭部に
踵を叩きこむ。
弧を描くように、と見えたのは残光が眼に映ったからだ。実際は、
牛熊が反応できず横向きに倒れるまで0.5秒もかかっていない。
そのまま牛熊の体を踏み台にして、いぼ蝦蟇への追撃に天井に向
かって飛びあがろうとする。
そこに豚狒狒が襲いかかる。
ルナの乳房に食らいつかんと耳まで裂けた口を開き、股間からは
大蛇のような触手となった男根がルナの下半身を狙う。
再び蹴りで迎撃しようとしたルナだが、何かに気付いたようにそ
の動きが止まる。
﹁ふん﹂
何の足場もない空中を蹴るようにして体をひねる。
下から槍のように伸びてきた牛熊の7本の角が、鉄格子のように
豚狒狒の動きを遮り、ルナのしみ一つ黒子一つない白い尻をかすめ
210
た。
ヒメドコロ
その牛熊の角をかいくぐり、豚狒狒の蛇男根がルナの姫所を急襲
する。
ルナの背中から尻にかけて銀色の炎が燃え上がり、彗星の尾の如
く角と蛇男根を薙ぎ払った。
・・・・
その勢いに乗って態勢を入れ替え、上下さかさま、四つん這いに
なって壁に着地する。
完璧なバランスの尻を誇示するかのように天に向け、乳房は重力
を無視するかのように垂れることがない。
ルナが再び銀炎の尾を振る。
炎が枝分かれして無数の光の鞭となる。
光の鞭が折り重なった豚狒狒と牛熊を切り刻んだ。
隙有りと見たか、口から血を垂らすいぼ蝦蟇が、全身のいぼから
粘液を噴き出しながら襲いかかる。
ルナの右の手刀が光に包まれる。
光の剣となった右手をルナが降れば、空間そのものが切り裂かれ
たかのように、粘液が左右に弾き飛ばされた。預言者の奇跡の小規
模な再現だ。
さらに返す刀を伸ばして、いぼ蝦蟇の腹を刺す。
﹁ぐぎゃあああ!﹂
﹁ふふふ、温かいな﹂
悲鳴をを上げるいぼ蝦蟇。
ルナは陶然とした表情で、いぼ蝦蟇の内臓を掻きまわすように、
手を大きく動かして抜く。
その手には白くて長い物︱︱いぼ蝦蟇の腸が握られている。
傷口から腸を伸ばしながら、いぼ蝦蟇が落ちていく。
鋭い牙で腸を咬み千切り、血を啜るルナ。
その唇が赤く染まった。
211
そしてほんの一瞬︱︱彼女は敵がもう一匹いることを忘れていた。
﹁!﹂
サーモンピンクの無数の触手が彼女を拘束した。
ルナの肉体の凹凸を強調するように締め上げる。
妖しい快感に襲われるルナ。
その触手はすべて、双首犬の右の口から生えていた。
触手が壁からルナを引き寄せた。
ルナは抵抗するがびくともしない。
双首犬の両手が、ルナの両腕をつかむ。
空中で固定されるルナ。
左の首から太く長い舌が伸びた。
鞭のように撓る舌が、ルナの股間を打ち、そのまま彼女の臍、胸
の谷間から首筋まで舐め上げる。
﹁ああ!﹂
顔を紅潮させて、快感の叫びをあげるルナ。
おとめ
先ほどとは全く違う、男を喰らう女の妖艶さではなく、初めての
快感に戸惑う処女のような初々しさだ。
再び舌が動く。
﹁はん!﹂
二つの乳首が弾かれ、乳房が波打つ。
鞭の責めと舌による愛撫を兼ね備えた攻撃に、身をよじるルナ。
﹁あん!﹂
212
背中から巻きつくように尻を打つと、透明な雫がこぼれおちる。
快楽によりルナの表情がだんだん無防備になってゆく。
﹁いい!﹂
再び股間への一撃、銀の陰毛が風に舞い散る。
堅く閉じられていた両脚から力が抜けてゆく。
﹁だ、だめぇ!﹂
ルナの全身から放たれていた、硬質な雰囲気が消えていく。 その様を見て、勝利を確信したように双首犬が笑う。
﹁ん、んぐ﹂
長い舌が伸びて、半開きになったルナの唇を割って入る。
そのまま触手を口にゆっくりと戻し、ルナの体を引き寄せる。
毛むくじゃらのペニスが、ルナの股間に触れるか否かの瞬間。
ルナの脳裏に、一人の少年の面影がよぎった。
﹁駄目だ!﹂
首を振って双首犬の舌を咬み千切る。
同時にルナの右の乳房が大きく膨らみ、横一文字に裂けたと思う
と、その右の乳房は狼の首となり、左の犬頭を噛み砕いた。
さらにルナの全身が凍えるような冷たい光を放つと、全身を拘束
していた触手が消滅した。
﹁ふふふ、惜しかったな﹂
213
誰に向けていった言葉なのか。
﹁私をものにするには少々力不足だったようだ﹂
双首犬を見下して嘲笑うルナ。
哀願するような眼に、形のいい足の親指が突き刺さる。
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼!﹂
目をつぶされ金切り声をあげる双首犬。
種皮を破って根が出るように、その体から新しい触手が何本も顔
を出す。
双首犬だけではない。
他の獣どもの体からも、まるで太陽を求める植物のように触手を
伸ばしていた。
必死で生きようとする生命を嘲笑うルナ。
﹁あさましいやつらだ。この上まだ女が欲しいか﹂
再びルナの尾が、無数の光の鞭が振るわれる。
今度は鞭の先がさらに枝分かれして、輝く狼の姿になる。
その尾はへその緒のようにルナの尾と繋がっている。
そんな狼が10匹以上も現れた。
﹁私の尾で逝かせてやろう﹂
ルナが手を振ると、狼たちは二匹を除いて、獣どもに襲いかかっ
た。
獣たちの体が、またたく間に喰いちぎられてゆく。
214
行動を共にしなかった二匹の狼たちは、放置されていた女達に歩
み寄る。
犯されて泣いていた女も、虚脱していた女も、今は顔を赤らめ潤
んだ目でルナの裸身に見とれている。
そして、自分たちに近づく狼たちに気付くと、泣いていた女は両
腕と両脚を広げて仰向けに横たわり、虚脱していた女は狼に尻を突
き付け挑発するように揺らす。
狼たちは女達に襲いかかり、女達は喜びの声をあげて狼のペニス
を迎えいれた。
﹁あひいいいい!﹂
﹁ひいいん!奇麗にして!私を清めてえ!﹂
正常位で犯される女は顔をなめる狼の舌を吸い、涎を美味そうに
飲みこむ。
後背位で犯される女は自らも獣になったように吠える。
﹁アン、おいしぃ、もっと、もっとちょうだいィ﹂
﹁あおおお!あおおお!いいいー!﹂
あっけなく短い時間で絶頂に達する女達。
﹁いくううううう!﹂
﹁あおおおおおおお!﹂
快楽の断末魔の叫びをあげる女達の体の上で、一吠えした狼たち
はぼんやりとした光る霧のような姿に変わり、そのまま女達の体に
まとわりつく。
﹁ああ、また、またしてくれるの﹂
215
﹁あん、もっともっとぉ﹂
後背位で犯されていた女が、正常位で犯されていた女の上に来る
と、その唇を奪った。
光の霧が女達の股間に集まって、二人の体を繋げる。
﹁すごいぃ!おマンコもお尻もいいのぅ!﹂
﹁アヤコォ!もう我慢できないぃ!﹂
﹁私もぉ!メイぃ!﹂
アヤコと呼ばれた上に位置する女が、腰を前後に振りだした。
二人の体を繋げている光る霧は、レズビアン用の双頭ディルドゥ
の役を果たしているようだ。
﹁はぁん、あん﹂
﹁んむ、ん﹂
メイが起き上がり、対面座位の体位となる。
抱きしめあう二人の間で四つの乳房がつぶされ変形する。
﹁⋮⋮﹂
絡み合う二人の女を見て、姫所の秘裂を指でなでるルナ。
﹁んむ﹂
鞘から抜かれた刀のように、秘裂からペニスが顔を出す。
しかし、すぐに力を失ったように引込んでしまった。
ルナの指はそのまま秘裂をなぞり続ける。
216
﹁はあ、ん、コージ⋮⋮﹂
愛液で濡れた手で乳房を揉み、自ら乳首を吸う。
ルナの眼には見えていた。
触手をくねらせ、自分を犯そうとしている少年の幻影が。
﹁アア!コージ!﹂
感極まったように叫び、その場に脚を大きく開いて横たわり、自
らを激しく愛撫する。
白い肌が真っ赤に染まる。
うるんだ目で少年の幻影を迎え入れる。
ルナの異変とともに、周囲にも変化が生じる。
女達は、お互いの尻を突き合わせるように四つん這いになり、尻
を激しくぶつけあうようにして快感を貪る。
乳房が振り子のように揺れ、やわらかい音が響く。
獣たちの肉を貪っていた狼たちは、その姿を変えていた。
ルナとそっくりな、しかし何かが欠けたうつろな感じの美女たち
に。
狼女達は獣たちの体に跨った。
そしてペニスを、触手を、その他体の突起を姫所で呑みこみ、肉
レイプ
を食いちぎるような勢いで腰を振る。
それはもう強姦ですらなかった。
獣が肉を、生命を喰らう捕食行為でしかなかった。
獣たちが上げるのは苦痛の悲鳴か、快楽の叫びか。
女達の嬌声と合わせて不協和音を奏で出す。
そしてクライマックス。
﹁コージ!イッヒ、リーベ、ディッヒ!﹂
217
ルナが絶頂に達すると、女達も絶頂に達し、獣たちはこと切れた。
そして狼女達は幻のように消えてゆく。
﹁ああ⋮⋮コージ⋮⋮﹂
快楽の熱が冷めるとともに消えてゆく少年の幻影。
しかしルナはもう少し少年の幻影を見ていたかった。
﹁アヤコ、メイ、来い﹂
ルナは女達に命令する。
女達はルナの眼を見ただけで命令の内容を理解した。
アヤコとメイはルナの姫所をなめ始めた。
同時に自分タイトの姫所を、ルナの脚に押し付け、自分も快感を
得るのも忘れていない。
再び高まって行くルナの性感。
﹁は、んん、ああ⋮⋮﹂
突如ルナの眼が大きく開かれる。
再び発行するルナの全身。
黒い犬の影が光にかき消されてゆく。
﹁ジャッカルか、何用だ﹂
ルナが起き上って不機嫌な声で問いかけると、いつの間にか背後
に跪くジャッカル。
﹁ルナ様のお姿が見えぬと、皆総出で探しておりました﹂
218
﹁む、そうか﹂
ジャッカルの答えに気まずげなルナ。 ﹁すまない、どうにも血が騒いでな⋮⋮﹂
﹁今夜は満月ではありませんが⋮⋮﹂
当惑するジャッカル。
彼女たちの始祖は、普段は厳格だが冷静沈着、同胞の繁栄を第一
に考えている指導者だが、ただ一つ欠点がある。
それは満月の夜になると、性欲、闘争本能、破壊衝動といった、
狩
を行い、男は獣に変えて殺し、
非理性的な衝動を自制できなくなることだ。
そのため満月の夜に、ルナは
女は犯す。
発作
発作
が起こると
に備えて、満月の夜は彼女をフォローする人
女は人間のまま犯すか、同胞に変えて犯すかは、その時の気分し
だいだ。
このルナの
員が付く。
しかし今夜は満月ではないため、誰もルナの
は予想しておらず、ルナを一人で行動させる羽目になったのだ。
﹁そういえば、ヴィヴィアン様ですが⋮⋮﹂
﹁どうかしたのか?﹂
殺気すら放って確認する。
やはり普段の彼女ではない。
﹁ACT日本支部に急襲をかけたそうです﹂
﹁馬鹿な、ヒムロの娘がそんな簡単なわけなかろう﹂
219
あの小娘とも長い付き合いだが、自分たちの拠点が知れてそのま
まにしておくはずがない。
﹁ええ、実際罠にはまって大打撃を受けたそうです﹂
﹁あたりまえだ、そうじゃなかったら⋮⋮﹂
自分も、と内心で続ける。
正直、あの少年が覚醒した時においても対して期待などしていな
かった。
肉欲こそ刺激されたものの、あの少年の種が欲しい、子が産みた
いとは思わなかったのだ。
それがヴィヴィアンの分身との戦いの時、第二の覚醒を遂げたこ
とで、ルナの少年への評価は一変した。
コージに抱かれたい。
コージを犯したい。
コージと戦いたい。
コージを戦士として育てたい。
コージに愛されたい。
コージを屈服させたい。
コージの子を産みたい。
コージを殺したい。
女として、戦士として、雌として、そしてヒメーラの長として、
さまざまな顔を持つルナの心が、脳裏でせめぎ合っていた。
要するに、ルナは今、迷いの中にいるのだ。 ﹁ルナ様?﹂
黙り込んだ始祖を気遣うジャッカルに何でもないと答え、跪く彼
女の前に仁王立ちする。
220
股間を突き付け、顎で指示する。
﹁⋮⋮ご奉仕いたします﹂
﹁ん、は、ん﹂
ルナの姫所に口をつけるジャカル。
ルナのあえぎに自らも感じてきたのか、ライダースーツの上から
胸を揉みしだくジャッカル。
﹁い、いいぞ﹂
﹁ありがとうございます﹂
奉仕を続けるジャッカル。
ライダースーツのジッパーを下すと、黒い肉の球体が弾むように
躍り出た。
ルナへの奉仕を続けながら、自らへの愛撫を始めるジャッカル。
胸を揉んでいた手が股間に伸びた時、
﹁!﹂
逝きなるルナに蹴飛ばされた。
仰向けに倒れるジャッカル。
ライダースーツのジッパーの間から、二つの乳房と一本のペニス
が顔を出している。
﹁なんだ、これは?﹂
ジャッカルのペニスを踏みつけるルナ。
﹁ル、ルナ様許して!﹂
221
﹁許さん!私に種をつけようなど、思い上がるな!﹂
ルナは交配時には男役、つまり父親になるのを好む。
自分で子を産むときの相手は、自分の同格と認めた相手と決めて
いる。︵下手に格下のものに抱かれたら、相手を吸収してしまうか
らでもあるが︶
そして、格下のものが自分を女として扱おうとするのは、彼女の
逆鱗に触れる行為であった。
﹁あーっ!﹂
ルナがジャッカルのペニスを踏みにじると、被虐の快感でジャッ
カルは射精した。
白い精液が彼女の黒い肌を汚す。
﹁ふん、踏まれていったか、変態が﹂
ルナの両目が黄金色に輝く。
その光に吹き飛ばされるように、ジャッカルのライダースーツが
ちぎれ飛ぶ。
﹁や、やめてください!ルナ様!﹂
﹁駄目だ!﹂
ルナの姿が変わる、銀色の毛皮を持つ巨大な狼に。
恐怖に駆られ逃げ出そうと、ルナに背を向けるジャッカルだが、
それはルナから見れば誘っているようにしか見えなかった。
杭のように太いペニスを、ジャッカルの尻に突き込むルナ。
﹁ひいいいい!﹂
222
悲鳴を上げるジャッカル。
しかしその眼は快楽に潤んでいる。
﹁欲しいか!もっと欲しいか!﹂
﹁はいぃ!くださいぃ!﹂
逃げようとしたことを忘れたように、ルナにおねだりするジャッ
カル。
アヤコとメイもジャッカルに並んで、狼となったルナに尻を振る。
狂気の宴はまだまだ続くようだ。
223
蠢きだすもの︱︱涙︱︱︵前書き︶
甘くねえ⋮⋮
224
蠢きだすもの︱︱涙︱︱
冴子は待ち続けた。
少年が眼を覚ますのを。
初めての戦いの後、力尽きたように眠る少年の寝顔を見守りなが
ら。
早く彼の声を聞きたいと思う。
とっかん
死の恐怖による悪夢に襲われていないかと心配する。
彼を守れなかったことを悔やむ。
さまざまな感情が彼女の中でせめぎ合う。
ふと彼が寝返りをうった。
布団から腕が出ている。
苦笑して布団を直した時。
いやな臭いが鼻をついた。
ユルセナイ
コンナニオイ
ケシテヤル
スポーツブラとショーツだけで
甲児を抱えた冴子は、下着姿になってバスルームに吶喊した。
体が熱い湯を浴びる感触で、甲児は目を覚ました。
目を開くと、そこには般若のような顔をした冴子がいた。
225
﹁さ、冴子さん?﹂
甲児が声をかけると、冴子は花が咲いたような笑みを浮かべた。
しかしその笑みは一瞬にして変容した。
笑っているのに笑っていない。
表面上はにこやかながら、その実殺気すら感じさせる笑みを浮か
べる冴子。
甲児は逃げ出したくなった。
﹁さ、冴子さん?﹂
恋焦がれていた声が聞こえた。
当惑する少年の表情を見て、微笑みを浮かべる冴子。
しかし安堵の思いを塗り替えるように、理不尽な怒りが湧き上が
る。
笑みが凍りつく。
おびえる甲児の顔を見て、冴子の中でスイッチが入ってしまった。
﹁駄目よ、甲児君、動かないで﹂
ボディーシャンプーのボトルの首を文字通り引きちぎって、中身
を甲児の体に振りかける。
甲児の体にかかる粘性のある白い液体。
思わず精液を連想した冴子は、甲児に襲いかかるようにしてその
体を固定する。
﹁な、なにを﹂
226
﹁臭いの、嫌なの、あの女の臭いがするの、だから洗うの﹂
﹁あ、ああ!﹂
甲児の体に、ボディーシャンプーを塗り込むように洗いだす冴子。
その動きは甲児の官能を刺激した。
﹁あ⋮⋮﹂
ペニスがいきり立ち、羞恥で赤くなる甲児。
そのペニスを仇のような目でにらむ冴子。
﹁これよ、ここが一番臭うの﹂
﹁うう!﹂
呪詛のようにつぶやきながら、泡の付いた両手で握り締める冴子。
そのまま勢い良く洗いだす。
その動きは当然、甲児の官能をさらにあおる。
﹁うくぅ!﹂
あっけなく果てる甲児。
その様を見てぽろぽろと涙を流し始める冴子。
目を見開く甲児。
冴子の口から自分でも理不尽と思う言葉がほとばしる。
﹁なんでよ!なんでそんな簡単にいっちゃうの!﹂
﹁え?﹂
﹁あの魔女相手の時だって、そう。私のこと愛してるって言ったで
しょ!なのになんで簡単にいかされて!犯されちゃうのよー!﹂
227
もはや自分で自分が制御できない。
顔を伏せる甲児のペニスを踏みつける。
無言で痙攣する甲児。
再び大きくなるペニス。
﹁何よ。私の足に踏まれただけで気持ち良いの?あなたってマゾな
の?だったら!﹂
︵やめて!彼を追いこまないで!︶
足の裏で甲児のペニスを扱く。
サディスティック
足裏の刺激が子宮を刺激し、脳を灼く。
嗜虐的な自分を止められない。
再び甲児を射精に追い込む。
﹁ああ!﹂
さらに冴子の嗜虐心が燃え上がる。
﹁ふーん、やっぱり甲児君てマゾなのね。いじめながら気持ちよく
されたら誰にでも精液出しちゃうのね﹂
﹁違う!﹂
一生懸命かぶりを振る甲児。
そんな少年を冴子は挑発する。
﹁そう。私のことが好きなのね。本当に。だったら私を見てオナニ
ーしなさい!本当に私が好きなら何度でも逝けるはずでしょ!十回
射精したら許してあげる!﹂
︵何言ってるのよー!私!︶
228
もはや完全にパニック状態の冴子。
そんな冴子を無視するように、うつむいてペニスを扱きだす甲児。
実のところ十回も射精する必要などなかった。
甲児の荒くなった息遣いに合わせて、冴子の呼吸も荒くなってい
った。。
自ら壁に背を預ける冴子、まるで少年に押し付けられたかのよう
に。
少年はおそらく、脳裏で自分を犯しているのだろう。
その淫らな白日夢を想像し、実際に犯されているかのように官能
を高めていく雌獣。
﹁ああ!甲児君!いいわ!どんどん来て!私をむちゃくちゃにして
!﹂
スポーツブラをめくり上げショーツの上から陰核をいじる冴子。
甲児の息と手も加速していく。
はあはあはあはあ
頭の中でセックスしながら、絶頂するまで二人はオナニーを続け
た。
﹁いく!﹂
﹁くう!﹂
同時に絶頂に達した二人。
ここでようやく正気を取り戻す冴子。
229
﹁ご、ごめんなさい甲児君。わ、私、頭に血が上って⋮⋮﹂
言い訳しながら、シャワーを使い、ボディーシャンプーと精液ま
みれの甲児を洗い流す。
うつむいた甲児の表情は冴子からは見えない。
甲児の顔を見ようと屈んだ瞬間、冴子は甲児に押し倒された。
そのまま冴子の両脚を広げて、胎内に割って入ろうとする。
豹変した少年に恐怖を感じ、抵抗する冴子。
しかし。
﹁だ、だめ!甲児君、謝るから、やめて﹂
口では抵抗するものの、欲情した肉体の方はすでに甲児を受け入
れる態勢だ。
抵抗も形だけのものだった。
簡単に甲児を受け入れる。
﹁ああ!﹂
甲児を迎え入れ、欠けていたものが満たされたような満足感を得
る冴子。
彼女は思い知らされた。
あの激しい一時が既に自分の体に変化をもたらしていたことを。
自分の体が甲児のための体に作りかえられていることを。
がむしゃらに腰を振る甲児。
快感に耐えられず、よがりだす冴子。
﹁ああ!だめぇ!だめよ!だめぇ!だめになっちゃうぅ!いい!﹂
230
無言で胸の谷間に飛び込むように顔を押し付ける甲児。
胸の谷間に二点、熱い感触を感じる冴子。
︱︱泣いているの⋮⋮?
﹁冴子さん⋮⋮ごめん⋮⋮僕、強くなるよ⋮⋮絶対に⋮⋮冴子さん
を泣かさないように⋮⋮﹂
今さらながら自分が泣いていたことに気付いた。
冴子の心のしこりが溶けていった。
少年が自分のことで泣いている。
自分はいったい何を考えていたのだ。
彼はこんなにも自分のことを愛してくれているのに。
こんなにも自分のことを思いやってくれているのに。
こんなにも自分のことを受け入れてくれているのに。
自分を責めることもせず。
﹁甲児君⋮⋮また戦いに繰出されても⋮⋮カッコ悪くったっていい、
みっともなくてもいい、今回みたいに襲われてもいいから⋮⋮絶対
に私のところに帰ってきて⋮⋮焼餅はすごく焼いちゃうだろうけど
⋮⋮﹂
冴子の胸に顔を伏せたまま甲児は黙ってうなずいた。
甲児への愛おしさが増した冴子はキスがしたいと思ったがやめて
おいた。
231
男の子はきっと泣き顔なんか見せたくないだろうから。
甲児が冴子の奥に精を放つ。
熱い液が子宮を叩く感触とともに、冴子は束の間の幸福を感じて
いた。
そう、まさに束の間の︱︱ 232
蠢きだすもの︱︱謀︱︱
人間は水がなくては生きていけない。
だから人間が生きる場所には、どんな形であれ必ず水がある。
それが世間に知られていない集団の本拠地であっても。
誰もいない、照明が落とされた女子トイレ。
その洗面所の自動水栓が、誰もいないのに何故か作動した。
しかし流れ出したのは水ではない。
出てきたのはチョコレート色の粘液だった。
排水口に流れ込まずに、洗面台からあふれ出た粘液は人型を形作
り、全裸の美少年となった。
少年と断言できるのは、彼の股間で男性のシンボルが力強く主張
しているからだ。
それがなければ胸がない少女と言われても違和感がない。
その肉感的でしなやかな細身の肢体は、男であろうと女であろう
と、見た者の劣情を誘う妖しい色気を放っていた。
その場で軽く伸びをした少年は、洗面台に手を突っ込み自動水栓
を作動させる。
その後ろに突きだすような尻を見た男は、同性愛者でなくとも振
るいつきたくなるだろう。
蛇口から流れ出る水。
その水流の中から、蚤のように飛び跳ねて出てくる者たちがいる。
それは青黒い鯛のような魚が二匹。
トイレの床に着地した彼らはシーラカンスの鰭のような手足を生
やしてトイレの床に着地した。
一瞬にして魚類から原始的両生類に進化した、彼らは次に風船の
ように膨らみ身長150㎝ほどの半魚人となる。
233
半魚人たちは少年にかわって洗面台の前に陣取る。
そして同じように水を出して、仲間を呼ぶ。
一つの洋便器のふたが跳ね上がり、そこからも半魚人が出てくる。
少年はそれを見て、そばに寄るなとばかりに手で追いやる。
さすがに便器からの侵入は嫌だったらしい。
それはともかく増えていく半魚人の群れ。
前世紀とある作家の想像した港町のようだ。
その様子を見守りながら、壁際に下がり左の中指を口に入れる少
年。
たっぷり唾をつけたその指を自らの肛門に突き刺すと、少年の口
からため息が漏れた。
﹁あいつ⋮⋮許さない﹂
ミストレス
今度は口から大量の涎を垂らして、ペニスを濡らし扱きあげる。
少年は脳裏で愛する女主人の関心を奪った男を犯す。
男でありながら女のように他者のペニスで犯される屈辱に、涙を
流して許しを乞う恋敵の姿を想像して少年は高ぶる。
﹁二度と女を抱けない体にしてやる﹂
そして恋敵に自分の無力を思い知らせ、男としてのプライドを完
全に打ち砕き、さらには女に興味を持てなくなるまで尻の快楽に狂
わせ、肉奴隷として忠誠を誓わせてやるのだ。
そうすれば、愛しい女主人はまた自分を愛してくれるだろう。
﹁ああ∼!ヴィヴィアン様ぁ!好きですぅ!ローラは、ローラは、
ヴィヴィアン様が全てですぅ!﹂
少年の白日夢が変わった。
234
夢の中で少年︱︱ローラはヴィヴィアンの髪が変じた触手に拘束
されながら肛門を犯され、豊満な肉体に押し潰され、魔乳に溺れな
がら、犯されて精液を搾り取られていた。
この快楽の地獄こそ彼のすべて、彼にとっての幸福。
﹁ヴィヴィアン様ぁ!﹂
ローラが大量の精液を放つ。
トイレの床に二つの大きな、水たまりならぬ精液だまりを作る。
渦を巻く精液だまり。
その渦は貝殻のように堅くなり、古生代のアンモナイトのような
生物へと変化した。
そのアンモナイトが宙に浮く。
精液がアンモナイトに引かれるように盛り上がり、アンモナイト
が頭部となった人型を形作る。
貝殻をかぶり、長い触手の髭を生やした屈強な男たちが現れた。
男たちのペニスに、ちらりと目をやったローラが指を鳴らす。
ローラの褐色の肌から、汗のように滲み出る真珠色の液体。その
ランス
液体が、防具としては露出過剰な、扇情的な貝殻の甲冑を形作る。
またその両手にはヤリガイのような騎兵槍と平たい巻貝のような円
楯を構えている。
アンモナイト男たちも同様の武装だ。ただしこちらは全身を貝殻
がくまなく覆っている。
この二人はローラの分身︱︱使い魔だ。
本来なら人間の男に寄生したヒメーラは性欲や破壊衝動などの本
の成果により、そ
というよりは、暴走する寸前まで快楽という餌をや
調教
能に引きずられて暴走し、使い魔を作るなど複雑な能力を使用する
ことはできない。
しかしローラの場合、ヴィヴィアンの
調教
の不可能を可能にしていた。
最も
235
りながら、暴れるだけの体力と精力をとことん搾り取って、無理や
り大人しくさせたという方が正しい。
半魚人たちも20人を超える。広めのトイレでもいい加減、鮨詰
だ。個室に入ってまでスペースを確保している。
槍でドアを指すローラ。
半魚人たちは流れるようにトイレから廊下へ出ていく。
廊下に出た半魚人たちは横列を作って進む。
そのあとを追うローラ。その左右をアンモナイトの騎士たちが固
める。
まるで将棋の駒だ。ローラが﹁王﹂、騎士たちが﹁金﹂、半魚人
が﹁歩﹂に当たる。
ただしこの﹁歩﹂はただの歩兵ではない。
重機関砲にも耐えうる強固な鱗を持ち、口からテッポウウオのよ
うに吐き出す高圧水流は戦車の複合装甲やコンクリートすら貫く。
至近距離での撃ち合いに限れば戦車と互角に戦える、いや的が小
さくあたりにくい分、戦車を上回るといっていい。
いわば半魚人たちは人の大きさの戦車の軍団と言える。
立ちふさがる敵を全て踏みつぶして前進する軍団だ。
しかし結果から言えば、この軍団は役に立たなかった。
︵人間の気配がない?︶
しばらく進んでも警備の人員すら出てこないことに、違和感を感
じるローラ。
その時、壁と天井がめくれ上がった。
顔を出したのはスピーカーのような機械。
自分たちの苦手な高周波を発する機械だ。
﹁しまった!罠だ!﹂
236
気付いた時にはもう遅い。
頭を抱え、口から泡を吹いて倒れる半魚人たち。
ローラも頭痛に襲われるが、耐えられないほどではない。
親指を使って槍を高速で回転させる。
その槍で床をつくと、人一人入れそうな穴が開いた。
その穴に飛び込むローラ、さらに槍を回転させトンネルを掘り進
む。
そのあとを追う騎士たち。
そして︱︱
どかーん
237
﹁⋮⋮製薬会社の工場爆発、原因は薬品の管理ミス、首脳陣は引責
辞任とな。トカゲの尻尾切りかよ⋮⋮﹂
アクト
﹁当然だ。元々そのために雇っていた人間だからな﹂
﹁おーこわ﹂
・・・
海の
東京湾埋立地の新しいACT極東支部の司令室での大山と氷室の
会話である。
来客用のソファーに座って新聞を広げている大山。
親父臭い。
﹁それにしても、ロス支部つぶした時の手をまた使うかね、
とは水棲の軟体生物をベースとする上級魔女であり、
ともあろうもんが﹂
海の魔女
魔女
同じ水棲生物をベースとする魔女たちの首魁である。水道から大量
に侵入し、米軍の監修を受けて要塞と化したACTロサンゼルス支
部を内部から壊滅させた強敵である。
現在も新聞沙汰にならないが、様々な情報を分析すれば、密かに
勢力を広げているらしく、知能も極めて高いと推測されている。
﹁何かの陽動かもしれん。まあ下の者の暴発かもしれんが﹂
後の想像が正しいのだが、彼らに確かめるすべはない。
さて、なぜ彼らがこんな会話をしているかというと、採取したサ
ンプル︱︱ダキニの死体が原因である。
海
元は植物ベースのヒメーラであったダキニの死体が、蛸、すなわ
ち水棲生物の特質を有する別の姿に変貌したことから、氷室は
238
の魔女
の関与を確信した。
さらに極東支部基地の位置を知られたと判断、敵の襲撃を予想し
て極秘の地下道を使用することにより基地機能を予備の第二基地へ
と移行したのだ。
悪辣なことに、敵の侵入を感知すれば爆発する罠まで仕掛けて。
基地に立てこもり防衛戦、という手段は取らなかった。
ヒメーラに数で攻められたら極東支部も、ロサンゼルス支部と同
じ運命をたどることになる。
そしてその判断は正しかった。
迷惑なのはダミー会社の首脳陣︵偽︶である。
ろくに仕事をしなくても高い給料がもらえる、天国のような職場
を失う羽目になったのだ。
﹁責任と言えば、里見のことなんだが﹂
何気ない大山の一言に、氷室の雰囲気が変わる。
表情に全く変化はない。
しかし長い付き合いの大山だけにそれとわかる変化があった。
︵地雷踏んだか?︶
﹁降格と減俸、それだけだ﹂
﹁えらく軽いな?﹂
﹁今回のことで研究者が減った、それに彼女ほどの研究者はざらに
ない、とのことだ﹂
﹁⋮⋮スポンサーがそう言ってると﹂
﹁そうだ﹂
︵機嫌も悪くなるわな、そりゃ︶
239
スポンサー
どんな組織も、資金がなければ動かない。
そしてACTの資金源は、各国国家、軍、企業、宗教団体などさ
まざまである。
彼らはヒメーラをこの世に呼び出した独裁者の私兵どもと同様、
ヒメーラの利用価値に高い関心を持っていた。
その戦闘力と非科学的な超能力、何より圧倒的な生命力に。
そのためACTでは実戦部隊と上層部の意識に常に温度差があり、
時として問題を起こすのだった。
そのあおりを一番受けるのが氷室のような司令職である。
﹁まあいい。埋め合わせはしてもらった﹂
寒気のする微笑み。
︵一体なにをやった!︶
恐ろしくて聞けない。
﹁ま、まあ、しばらく骨休みしてもらって、退院したらこれまで以
上⋮⋮﹂
﹁退院ならしたぞ﹂
フォローしようとする言葉を遮った、その言葉に眉をしかめる大
山。
﹁大丈夫なのか?﹂
﹁ああ、なんともない﹂
何か含む様子の氷室。
240
﹁中毒は?﹂
﹁あらかじめIKを呑んでいたので、大丈夫だそうだ﹂
﹁効くのかよ﹂
﹁だめだな﹂
IK︱︱インキュバスキラーとは、ヒメーラの血液に含まれる催
淫成分の中和剤である。
ヒメーラに凌辱された女性の、性欲の異常亢進の治療薬として開
発されたが、信頼性は乏しい。
﹁PTSDとか⋮⋮﹂
﹁それもない﹂
何か言うそばから遮られ、内心不快に思うが、氷室の考えを理解
した。
﹁なんともなさすぎる、と﹂
﹁そういうことだ﹂
苦い物を呑んだ表情で天を仰ぐ。
この仕事を続けていると、人間というものが、信頼や絆といった
ものが、はかなく薄っぺらに思えて仕方ない。
オセロのように白と黒が簡単に入れ替わる。
自分の隣にいる者が実は人間の皮をかぶった怪物だとか、あるい
は悪魔に魂を売り渡した外道だなんて珍しくもない。
ある意味一番怪しいのが目前にいる。
﹁監視は?﹂
﹁当然だ﹂
241
煙草を吸いたくなった。
うんざりしながら氷室を見ると、立ち上がってだらりと垂らした
左腕のひじ関節を右腕で掴んでこちらを見ている。
両腕に囲まれ、さらに右腕に持ち上げられた乳房が、その大きさ
を強調されている。
これは二人だけの暗号。
ベッドへの誘いだ。
︵ここんとこ毎晩だが、さすがにストレスとかたまってんのか?︶
正直疲れ気味なのだが断る気はない。
既に愚息は今夜への期待に燃え上がっている。
︵なんでこの女が相手の時は、こんな童貞みたいになっちまうんだ
?俺は︶
他の女を抱いたことがないわけではない。
なぜかこの女には逆らえない。
そしてこの女に飽きることもない。
複雑な心中の大山を見て、挑発的な笑みを浮かべる氷室。
﹁ふん、お疲れのようだな﹂
﹁あ、いや﹂
きまり悪げに生返事する大山の脚を開くようにして、氷室が跪く。
そのまま大山のズボンのジッパーを下す。
﹁ど、どうしたんだよ、今までこんなこと⋮⋮﹂
﹁今日は特別だ﹂
242
肉体関係を結んで何年もたつが、仕事場でこのような行為に及ぶ
ことは一度もなかった。
大山が出来心を起こして行動を起こす前に、氷室に拒絶されるの
が落ちだった。
﹁大仕事が待っている、浮ついた気持ちでいい加減な仕事をされて
は困る﹂
大山のペニスを取り出しながらの氷室の言葉に、さすがに腹を立
てる大山。
﹁馬鹿にすんなよ、おれはプロだ。そんなこと言うなら誘うな﹂
大山の抗議を無視して、氷室は大山のペニスを呑み込んだ。
﹁く!うぉ!﹂
大山の背を怖気のような妖しい快感が走る。
普段は自分を見下している女が、自分に跪き、ペニスに奉仕して
いるのだ。
しかも上からは細い体に合わせて作ったスーツのせいで、浮き上
がる女の肉体の曲線が、何度も見ているだけに鮮明に裸身を思い出
させ、征服欲をそそる。
﹁う、うおお!﹂
氷室の頭を固定する。
ソファーの上で勢いよく腰を動かし、氷室の口を犯す大山。
あっけなく果てる。
それでも大山は氷室を征服したような気になった。
243
しかしペニスの精液を吸いつくし、顔を上げた氷室は常と変らぬ
無表情で、大山の満足感はしぼんでしまった。
そして口からあふれた精液をハンカチで拭きとりながらの、氷室
の言葉に全面降伏した。
﹁おまえは私のものだ。勝手に死ぬことは許さん﹂
自分は一生この女から離れられず、こき使われるんだろうと思っ
た。
しかし今日ばかりは悪い気はしなかった。
退院して久々に帰宅した里見は風呂に入ろうとしていた。
︵見られているんでしょうね︶
服を脱ぎながら内心考える。
あの氷室が自分を警戒しないはずがない。
自宅のどこか、素人の自分には絶対わからないように、隠しカメ
ラや盗聴器が仕掛けられているはずだ。
︵まあ、いいわ。見られたって︶
ブラジャーから解放されて波打つ乳房を手で抑える。
覗き見している連中の目を意識して、それとなく挑発してみたの
だ。
︵ああ、駄目。そろそろ薬が切れてしまう︶
244
自分が欲情しているのがわかる。
監視している人間がとち狂って襲ってきたら、無抵抗で受け入れ
てしまうだろう。
インキュバスキラー
今まで肉欲を抑えていた薬が切れかけているのだ。
IKではなく、あのすばらしい出会いの日にヴィヴィアンの下僕
が体に打ち込んでくれた薬︱︱使い魔の精液が。
︵ああ、ヴィヴィアン様、早くお会いしたい⋮⋮︶
こがれる身をシャワーで洗い流す。
湯船に入る時は、恥毛を見せつけるように、高く脚を上げてまた
いで入る。
そのまま湯の中でゆったりと体を伸ばすと、湯の中で尻が滑った
か、一度頭のてっぺんまで沈むがすぐに出てきた。
それを見ていた監視員は一瞬あわてるが、すぐに出てきたため気
にすることはないと思ってしまった。
彼は知らない。
湯船の中の水面が、別の空間との境界に変わっていたことを。
水面から異空間に沈んだ里見は、自分とそっくりな女体が、自分
と入れ替わりで浮き上がるのを見た。
彼女自身はそのまま溺れることもなく、温かくも激しい水の流れ
に身をまかす。
複雑な水の流れが千の手、万の舌となって彼女の肉体を愛撫する。
肉の球が激しく踊る。
短時間に何度も軽い絶頂に達する。
そしてついに水が彼女の胎内、膣と肛門に侵入を開始した。
︵いぐっ!ひぃ!気持ち良いぃ!わらひ、あらわれてる!きれいに
されるぅ!﹂
245
水面
からイルカのよう
まさに洗われるように、彼女から理性や人間性が消えていく。
残るのは快楽のみ。
︵いっちゃうううううう!︶
侵入した水に突き上げられるように、
に飛び出す里見。
飛び出した先には会いたかったモノがいた。
貝殻の玉座に座ったバビロンの大淫婦。
﹁退院おめでとう、トモコ﹂
﹁ヴィヴィアン様ぁ!﹂
こけつまろびつ、倒れるように彼女の前に跪く。
彼女が脚を差し出す。
ためらわずに口に入れ、夫のペニスより情熱的にしゃぶる。
口の中で足の指が伸び、舌をもてあそび、行内の性感帯を蹂躙す
る。
潮を吹いていってしまった。
﹁うふふ、かわいいわ﹂
﹁ヴィヴィアン様ぁ﹂
ヴィヴィアンが脚をを開く。
白い肌の中に金色に輝く茂みが露わになる。
甘えるように、里見はその茂みに顔を埋める。
その頭を愛おしげにさするヴィヴィアン。
﹁そんなに好き?私のプッシー﹂
246
﹁はいぃ、だいしゅきれすぅ、とってもいいにほひれふぅ﹂
﹁そう﹂
いきなり自分の陰部に里見の顔を押し付けるヴィヴィアン。
そのまま腰を動かす。
里見の顔を使った自慰行為だ。
窒息しかけて暴れ出す里見。
﹁あら、いけない﹂
解放される里見。
力いっぱい酸素を取り込む。
﹁ごめんなさいね、トモコがあんまりかわいくて、つい苛めたくな
るの﹂
﹁ヴィヴィアンしゃま∼、もっといじめてください∼﹂
一見邪気のない顔で微笑むヴィヴィアンに、甘える里見。
白い太腿を枕にして、ヴィヴィアンの顔にだらしなく緩みきった
顔を向ける里見。
我が子を見る母親のような表情で、里見の頭をなでるとヴィヴィ
アンは用件を告げた。
﹁いい?トモコ。貴女にやってほしいのはね、王子様の観察と報告、
チャンスがあれば指導もお願いね﹂
﹁王子様って、芳賀甲児のことですかぁ?﹂
呆けた表情と口調で聞き返す里見。
﹁そうよ、いずれは私たち魔女を支配し、妻とされる王になる方﹂
247
歌うようなヴィヴィアン。
﹁でも今のままではだめ﹂
﹁あん﹂
蛸の触手と化したヴィヴィアンの脚が、里見の秘裂を貫いた。
そのまま彼女の子宮まで蹂躙する。
﹁ああ、吸盤が、いいのぉ、これなしじゃだめぇ﹂
里見の意思にかかわらず右腕が動いた。
触手を通じてヴィヴィアンが操っているのだ。
ヴィヴィアンの子宮に呑みこまれる里見の右腕。
いわゆるフィストファックだ。
﹁はあ!いい!いいわね!王子様の様子を報告するの!お風呂に入
ったとき思い浮かべればいいわ!望ましくない方向に行ったら矯正
するの!特に性欲!性欲を増進する方向で!女をすべて!自分のも
のにしたくなるぐらい!﹂
﹁わか、わかりましたぁ!い、いぐ、いくぅ!﹂
﹁わ、わたしもぉ!﹂
﹁ヴィヴィアン様ぁ∼∼∼∼∼!許して!入れさせて!﹂
絶頂寸前の女達だったが、いきなり飛んできた情けない悲鳴に興
がそがれた。
248
﹁あ、あの馬鹿﹂
怒りの表情のヴィヴィアンの視線を追うと、美少年︱︱ローラが
蛸の触手に四肢を拘束され、肛門を貫かれていた。
少年の巨根に目を奪われ、さらに触手に犯されて羨ましく思う里
見。
﹁あ、あの、彼は?﹂
﹁うふふふふふ。あの子ったら焼餅焼いた揚句、王子様を襲おうと
したのよ。そのうえ罠にはまって、ドラちゃんたちをいっぱい死な
せたから罰を与えているの﹂
青筋浮かべるヴィヴィアン。
彼女に哀願するローラ。
その哀願を斬って捨てるヴィヴィアン。
﹁ヴィヴィアン様ぁ、お願いですぅ、ゆるしてぇ﹂
﹁駄目よ。罰なんだからお尻だけで逝きなさい。大体ドラちゃんの
補充だってしなくちゃいけないでしょ﹂
ドラちゃんというのがヴィヴィアンの手駒である、半魚人のこと
ドラーダ
だと思い当たる里見。
たしかに鯛に似ている。
しかしその補充とはどういうことか。
その疑問にはすぐ答えられた。
少年の前に女が腰を下ろす。
全裸の女のからだのところどころには鱗が生えている。
その女が眼を閉じて歯を食いしばると、女の秘裂が割れると、そ
の中からテニスボール大の赤い透明な球体が数個、ポロポロと零れ
249
落ちた。
なんとなくイクラを連想した里見、たぶんその連想は正しいだろ
う。
﹁さあ!ローラ!種付けしなさい!﹂
﹁ぎひ∼∼∼∼!﹂
少年を犯している蛸の脚が眼に見えるほど暴れている。
涙と涎を垂らし、白目をむいて悲鳴を上げる少年。
﹁でるぅ!﹂
射精する少年。
その倒錯的な美しさに目を奪われる里見
赤い球に降り注ぐ白濁。
精液を吸い取った赤い球を、女がどこかに運んでいく。
﹁まったく、未だ種馬は必要だけど、他にいいのはいないかしらっ
て、そうだわ﹂
わざとらしく手を叩くヴィヴィアン。
﹁トモコ、確か貴女、息子さんがいたわね﹂
﹁!﹂
里見に残っていた母としての本能が拒絶する。
しかし拒絶の言葉を吐くより先に、ヴィヴィアンの乳首から噴出
した黒い粘液が彼女を襲う。
﹁あ、あああ!﹂
250
粘液は網のように彼女にまとわりつき、その体を締め上げる。
﹁一度息子さんを連れてらっしゃい。私が男にしてあげる﹂
﹁ひ、ひいい!﹂
粘液が体内にも侵入し、神経を刺激して、快感を叩きだす。
滝のようにあふれる愛液。
﹁ローラなんか問題にならないくらいの男に育ててあげる﹂
ローラのペニスに目を奪われる里見。
︵あ、あれよりも?︶
﹁そうしたら、きっと親孝行してくれるわよ﹂
ここで粘液が一層彼女を責めたてる。
︵親孝行って、息子とセックスするの?だ、駄目、そんなこと、で
も!︶
勝負はとうの昔についていた。
最初にこの黒い粘液に襲われた時、既に彼女はすべてを投げ出し
て屈服していたのだ。
研究者の道も、モラルも、人間としての誇りも、母としての愛情
も。 そう、すべてはいまさらなのだ。
﹁ヴィ、ヴィヴィ、アン様ぁ!﹂
251
﹁なあに?﹂
﹁む、むすこを、おねがいひましゅ∼!むすことしぇっくすしたい
ですぅ∼﹂
勝ち誇った、蔑むような笑みを浮かべるヴィヴィアン。
その笑みがとどめとなって絶頂に達する里見。
﹁ひ、ぐううううううう!﹂
すべてを投げ出す、吐き出すように吠える里見。
こうして彼女は魔女に息子を売った。
252
重要登場人物紹介︵前書き︶
第一部完ということで、重要人物をまとめてみました。
ネタバレにならない程度に、色々ぶっちゃけてます。
253
重要登場人物紹介
芳賀 甲児︵強さ 10∼1000?︶
主人公のくせに名前が第一話の執筆途中まで決まらなかった困った
人。
名前の由来は元祖スーパーロボットのパイロット。たぶん父親が好
きだったんだろう。もう少しで勇者王と同名になるところだった︵
にあわねー︶
普通の人間にはちょっと可愛い坊やだが、ヒメーラから見たらフェ
ロモン垂れ流しまくりの雄。
その気になれば︵魔女で︶ハーレムを作れるが、そんな甲斐性は無
い。
襲われるか襲うかはその時の気分次第。但し傾向的には前の方。︵
作者の陰謀︶
一応男の子としての意地は持っている。男になるのは難しい。
外見イメージは碇〇ンジかキ〇・ヤ〇トのようなヘタレ系で。
影山冴子︵強さ 250︶
恋人と違って真っ先に名前が決まった人。影を走る牙を持った獣。
見た目のイメージは某退魔忍の人。
恋人が魔女に︵性的に︶襲われる度に嫉妬に身を焦がす、作者の陰
謀の最大の被害者。
小さいころの夢はお嫁さん、しかし周りになれるはずないと言われ、
傷ついた。
暴走を恐れて長いこと性欲を抑えてきたため、恋人が出来てからは
反動で弾け気味。
実は月経の周期が年単位であり、いくらやっても当分は妊娠しない。
254
大山巌︵強さ 50︶
ACT極東支部の良心、もとい常識、もとい実行部隊隊長。
人柄はいいので部下からの信望は厚いが、地位とか権力とかいう以
前の問題で、氷室に逆らえない人。
元自衛隊レンジャー部隊所属。
問題を起こした部下をかばって辞表を出したところ、氷室にスカウ
トされた。
名前の由来は日本軍人。
氷室鞘香
目指せ、女ゲ〇ドウな人。
常に無表情で、
言動には元テロリストの合体ロボットパイロットも混ざっている。
名前の由来は氷と刀、冷たく切れる人のイメージで。
彼女の名前がさやかと決まった途端主人公の名前が決まった。
西島&浦原
ぶっ飛んだ武器を出したいということで出てきた男たち。
モデルは某研究所の武器開発の研究者と、花の名前の宇宙戦艦のメ
カニック。
西島は破壊力にこだわり、浦原はガ〇ダムを作りたがっている。
書いてみてわかったが、マッドサイエンティストとは多少の理不尽
はマッドだから済ませられるという便利なギミックである。
中山由美
ACTの常識の砦。
マッドぞろいの研究部で数少ない常識人である。
もっとも、冴子の友人をやれるあたり器はでかいかもしれない。
実は研究者としては里見に次ぐ。
武器開発も行っているが、威力よりも使いやすさと秘匿性を重視し
255
ている。
隠し武器にこだわるのは、007シリーズの影響、ブースロイド少
佐のファンだから。
里見智子
快楽堕ち、悪堕ちした研究者。
定期的にヴィヴィアンかその眷族の精液を摂取しないと禁断症状を
起こす色情狂。
ヴィヴィアンの指示を受けて暗躍の予定。
もっとも氷室には、ばれて泳がされているが。
鈴木、田中、佐藤︵強さ 三人まとめて80︶
諜報部の黒メガネ三人組。
名前はコードネームではなく本名。
リーダーが鈴木、大男が田中、小男が佐藤。
ルナ︵強さ 1200以上︶
別名、月の魔女。
イメージはギリシャ神話のアルテミス。
見た目は若いが、実は最長老の特上級魔女。
実験動物のドイツシェパードの寄生させられたヒメーラが、ナチス
の女性研究者の肉体を乗っ取ったもの。その後、ロシア方面に脱出
サガ
し、シベリアの狼やロシア人を吸収して今の姿になる。
犬科の性か、ドイツ人の気質か、秩序と統率を重視して、下位者の
反抗を一切許さない。
ところが、長いこと頂点にいた反動で、下位者に犯されることをひ
そかに望んでいるマゾヒスト。
量より質を重視しているため、むやみやたらに仲間を増やそうとは
考えず、配下も少数精鋭で、数の力で他の上級魔女におされぎみ、
それを本人の力だけで抑え込んでいる。
256
やたら、純血にこだわるのはナチスの思想の影響かもしれない。
肉体が甲児を求めているのだが、甲児が黄色人種だとか、先祖帰り
の安全性とか色々気にして、二の足を踏んでしまっている難儀な人。
ダキニ︵強さ 180︶
中級魔女。
元ネタは某密教系の漫画。
これに堕鬼尼︵鬼に堕ちた尼︶という当て字を思いついたんで、使
いたかった。
尼⇒寺⇒死体⇒ゾンビということでゾンビマスターに決定。
植物系なのは仏が座っている蓮の花のイメージ。
植物なので体の一部が切り離されても生長する︵某グロ〇ギのキノ
コ種怪人のイメージ︶ので、基地にいる甲児の初陣の相手に決定。
しかしその後﹃坊主頭だから蛸にすればよかった﹂とかんがえたた
め、急遽ヴィヴィアンの操り人形に変更。
ヴィヴィアン︵強さ 1000︶
上級魔女。
ルナと同時期に脱走したヒメーラが、海で産んだ子供。
見た目はヴィヴィアンの方が年上だが、実はルナより一世代下。
水棲生物を貪欲にとり込んだため、本人すら原形を忘れてしまった。
たぶん蛸や貝、ウミウシなどの軟体生物を大量にとりこんだのであ
ろう。
真珠貝を取り込んでいるので、自分で真珠を作って売りさばいて荒
稼ぎした。
自らをビーナスの生まれ変わりと信じるナルシスト。やたら貝にこ
だわるのはそのためでもある。
作者が初めて読んだエロマンガが﹁巨乳豊満熟女が少年二人︵一人
は息子︶を逆レイプ﹂という内容だったので生まれた人。
現在全登場人物中一番エロイ人。
257
ローラ︵強さ 500︶
ヴィヴィアンの護衛も務める肉奴隷。
現在いいとこまるでなしだけど、実は結構強い。
モデルは女装が似合う髭ガ〇ダムのパイロット。
男の娘、男魔女と呼ぶべき存在。
ジャッカル︵強さ 250︶
邪狩とも書く。
ルナの一族の人攫い担当。
258
同棲前夜
﹁それでは芳賀さん。御子息は我々が責任もってお預かりします﹂
ガラスの向こうで、中年の男女に黒服の男たちと、長身の美女︱
︱冴子が頭を下げる。
タテマエ
ACT極東支部は、甲児が未確認の伝染病に感染したため、政府
イレギュラーのカタマリ
機関で治療観察を行うという理由で甲児を親元から引き取った。
ヒメーラについての常識を打ち破る甲児の価値を思えば、絶対に
保護は必要。ましてや蛸女などは明らかに甲児を狙っていたとしか
思えない。
ゆえに一般社会から隔離する必要があった。
問題になったのはその理由である。
真実︱︱実は息子さんはヒメーラという未知の怪物の子孫だの、
先祖返りで怪物になっただの言う訳にはいかない。機密保持とかい
う以前に正気を疑われるのは間違いない。
そのために、先述の理由で甲児を引き取ったのだ。
モルモット
もっとも一部は嘘ではない。
実験動物も仕事のうちだ。
幸い甲児の父、健一郎は物分かりのいい男で、食い下がる甲児の
母、道代の説得に力を貸してくれた。
もっとも無菌室のガラス越しに父を見ている甲児からすれば、単
に面倒だと思って人任せにしているだけだとよくわかる。いかにも
仕事人間の父らしい。
やつれている母を見た時は、さすがに心が痛んだ。
しかし母のためにもウソをつき徹さなくてはならない。
頭を何度も下げ、最後に甲児の顔を見る母に弱々しく手を振る甲
児。
259
その母に深々と頭を下げる冴子。
冴子がこの場にいる理由、それは甲児の両親に挨拶をしたかった
からだ。
甲児の恋人として、ではない。
確かに甲児の両親に好感を持ってもらいたいとは思うものの、自
分の正体を含めて話すわけにはいかないことが多すぎる。
特に今話した場合、ショックが大きくなりそうだ。
そこで甲児との関係については、時間をおいてから話すという結
論になった。
しかし冴子にとって、甲児の覚醒は自分が原因である可能性が極
めて高いということにより、大いに良心が疼くものであった。
そこで真実を話すことはなくとも、せめて彼らの顔を見て頭を下
げたいという思いが強く、氷室もただの自己満足と思ってはいても
却下することはなかった。
冴子に視線を走らせる甲児。
その視線に気づいてわずかに表情を緩める冴子。
初々しい若い恋人たちの何気ないしぐさ。
しかし気付く者は気付くのだった。
﹁あいつも、もう年頃か﹂
病院を出てぼやく健一郎。
親を甘く見てはいけない。
さすがに甲児が冴子に対し好意を持っていることは気付かれてい
た。
ただし冴子が甲児に対し、どういう感情を持っているかは分から
なかったようだ。
冴子がかなりの美貌を持つため、あのような高嶺の花が自分の息
260
子に興味を持つとは思えなかったのも大きい。
﹁まあ、麻疹みたいなもんだろ﹂
すぐに仕事のことを考え始める。
しかし道代は違った。
彼女は二人の関係に気付いていた。
夫、健一郎との結婚は現実との妥協によるものだった。
彼女は一度も恋を知ることなく結婚した。
結婚してしばらくすると、夫は自分に興味を持たなくなった。
に求めたのだ。
道代の行き場のない愛情は甲児一人に向けられることになる。
甲児の母親
そのため道代は甲児に依存していた。
自分のアイデンティティーを
そしてその甲児を自分から奪っていきそうな存在︱︱冴子が現れ
た。
道代にとって冴子は敵でしかなかった。
血
は誰から伝えられたのか。
このとき誰も気づいていなかった。
甲児の
そのことで彼らは後悔することになる。
今日から冴子と一緒に暮らせるのだ。
ブリード
モルモット
母親を騙すことに心の痛みは感じても、甲児の心は喜びに満ち溢
れていた。
人間とヒメーラの混血の雄と雌、実験動物の扱いであっても、彼
女を独占し、日常を共にできることに甲児の心は舞い上がっていた。
261
黒い戦闘服姿の彼女の次の言葉を聞くまでは。
﹁ごめんなさい。残念だけど1時間後に出動に決まったわ。甲児君
は今日はこのままね、もう少し検査したいって﹂
目に見えて落ち込む甲児に苦笑して、ベッドに備え付けのテーブ
ルを用意する。
﹁これ、私が作ったの。食べてくれる?﹂
泣いた烏が何とやら、パッと顔を輝かす甲児。
好きな女が自分のために作ってくれた手料理、少年にとってあこ
がれのシチュエーションである。
テーブルに置いたのは、肉と野菜の具だくさんのシチュー。
とろとろの具は消化によさそうだが、病院食とは思えないボリュ
ームである。
その量に圧倒された甲児。
その甲児に笑顔で言う冴子。
﹁すご⋮⋮﹂
﹁たくさん食べてね、甲児君はきっとタンパク質が必要だから﹂
﹁タンパク質⋮⋮﹂
﹁もう!何を考えてるの!﹂
思わず、タンパク質の卑猥な消費法を想像して顔を赤らめる甲児
を、軽く殴る振りでたしなめる冴子。
﹁そうじゃなくて、体作りに必要だって事﹂
︵特に甲児君の場合、変身にもタンパク質を使っているようだし⋮
⋮大量に精液出してるのも確かだけど︶
262
事実、今の甲児は少しやつれていた。
二度も全身に新しい器官=触手を大量に作り出したのだ。
加えて三日間、点滴だけで眠り続けていたのだから無理もない。
おかげでうまく病気の振りができたが。
﹁そっか、体作りか⋮⋮﹂
自分の手を見る甲児。
その手からあっさり跳ね飛ばされた武器を思い出す。
自分は弱い。
敵にいいように玩具にされ、冴子を泣かせてしまうほど情けない
ぐらいに弱い。
正直、冴子が泣く姿をみて、甲児は凄まじいショックを受けた。
冴子は強いから、泣くことなんかないと決めつけていたのだ。
その前に自分は冴子の、孤独な内面を見ているというのに⋮⋮
結局、また変身して敵を倒したそうだが、目が覚めてすぐ忘れて
しまった悪夢のように、はっきり思い出せない。
映像記録を見ても全く現実感が湧かない。
これでは戦力として当てにされるとは思えない。
さいわい大山が氷室に対し、﹁火事場の馬鹿力を当てにして素人
を危険にさらせるか﹂と、強硬に自分の訓練の必要性を主張してく
れたため、しばらくは自分が戦場に出ることはない。
しかし甲児にとって、冴子と同じ線上に立つことができないとい
うのは、とてもつらく悔しいことであり、同時に戦場で死んで冴子
を泣かすことになるのも恐ろしいことであった。
︵強くならなきゃ、強くなるんだ︶
決意を秘めた顔になる甲児。
263
その甲児を見て胸をときめかせる冴子だが、重荷を軽くするよう
に甲児に声をかける。
﹁さあ、冷めないうちに食べて﹂
﹁う、うん、いただきます﹂
甲児はスプーンでシチューを一口食べると、あとは無言になって
しまった。
すごい勢いでシチューを口に放り込んでゆく。
冴子が感想を聞こうとする間もなく、皿が空になった。
ため息をつく甲児。
﹁おいしかった⋮⋮﹂
﹁そ、そう!﹂
﹁あ、ごめんなさい。途中で止まらなくなって⋮⋮﹂
﹁ありがとう、最高のほめ言葉よ﹂
天にも昇りそうな表情の冴子。
どうやら自分の料理は彼の口に合ったようだ。
自分で食べてみるとおいしいのだが、彼女の料理は他者に評判が
悪い。 彼女は知らない。
問題なのは味ではなく量であることを。
自分が大の男以上の量を、食べることに気が付いていない。
小食の女性の場合、見ただけで胸やけを起こすのは必至である。
特に大量の肉を食べるその姿が、周囲に脅威を与えていることに
気付いていない。
ヒメーラの血のことも併せて、肉食の猛獣のように思われている。
﹁⋮⋮﹂
264
冴子の笑顔に見とれる甲児。
口の周りをスープで汚したままの恋人を見て、なまめかしい笑み
を浮かべて近づく。
﹁さ、冴子さん⋮⋮﹂
﹁動かないで﹂
甲児の口の周りを指でぬぐう。
そしてその指を口に入れた。
白い指を赤い舌が舐め上げる。
甲児が身じろぎする。
膝を立ててごまかそうとしたようだが、冴子の鋭い感覚をごまか
すことはできなかった。
胸に尖った熱い空気のカタマリを押し付けられたような感触。
﹁まあ﹂
﹁ご、ごめん﹂
勃起したことを悟られ真っ赤になる甲児。
﹁甲児君、来て⋮﹂
立ち上がり、甲児の手を引く冴子。
甲児が立ち上がると、肩を抱くように抱え込まれ、風のようにト
ブリード
イレの個室に運び込まれてしまった。
混血の高い肉体能力の無駄遣いである。
﹁えっち﹂
﹁さ、さ、さえこさん?﹂
265
甲児のパジャマのズボンをおろしてペニスを露出させる冴子。
顔を出した肉の牙に陶酔したような溜息をつき、頬擦りする冴子。
﹁熱い、それに堅いわ﹂
うるんだ目で見て、口に含み、喉の奥まで呑み込む。
﹁ああ!﹂
冴子の頭を押さえつけ、さらに奥までペニスを入れようとする甲
児。
しかし冴子はその手を抑えて、甲児の様子を上目遣いで挑発する
ように笑う。
﹁おいしいわ、甲児君﹂
﹁さ、さえこさ∼ん﹂
﹁うふふ、情けない声出さないの﹂
冴子は戦闘服の前を開く。
束縛から解放された二つの肉球が躍り出る。
﹁服越しなんて嫌。直接感じたいの﹂
そう言って胸の谷間に甲児のペニスをはさむ。
﹁すごい、熱くてやけどしそう。それにビクビク脈打ってる。甲児
君私の胸すごいドキドキしてるのわかる﹂
﹁わかる、わかるよ、冴子さんのおっぱい柔らかくて熱くて気持ち
良い﹂
266
﹁そう?気持ち良いの?もっと気持ち良くなって﹂
両の乳房で甲児のペニスを愛撫する。
谷間から顔を出した亀頭を咥えこむ。
甲児のペニスの熱が、感触が冴子の口中の性感帯を刺激する。
﹁いく!﹂
冴子の口に放つ甲児。
そのほとばしりと、精液の臭いが冴子の脳を焼く。
﹁はぁああん!﹂
冴子は軽いエクスタシーを味わった。
一瞬我を忘れた冴子だが、溢れる精液を一滴も残さないとばかり
に、吸い込み呑み尽くす。
荒い息をつく甲児に、少々怖い笑顔で甘えるように言う。
﹁甲児君。私が帰るまでタンパク質ためといて。帰ってきたらいっ
ぱい私をかわいがって﹂
﹁う、うん。待ってる﹂
﹁看護士さんに出しちゃだめよ﹂
﹁浮気なんてしないよ!﹂
前回のことで冴子が結構嫉妬深いことを痛感した甲児だった。
甲児のその言葉に満足した冴子は、自分の顔を甲児の顔に寄せる
が、ふと気付いたように口を抑える。
﹁ごめんなさい、おちんちん舐めた口は嫌よね﹂
267
甲児は関係ないとばかりに冴子の唇を奪った。
再び軽く絶頂に達した冴子。
﹁あ、ありがとう、甲児君、愛してる﹂
甲児の胸に顔をうずめ、思い切り体臭を吸いこんだ後、彼女は体
を離した。
﹁いってくるわ﹂
身支度をしてトイレを出る冴子。
ハンター
そこには年下の恋人に甘える女はいなかった。
ただ冷静に、冷酷に獲物を狩る女狩人がいるだけであった。
268
復讐の女王蜂
二人の人物が体を重ねていた。
片方が仰向けになり、両脚を大きく開き、もう片方がその脚の間
に体重を乗せるようにのしかかって、腰を動かしている。
周囲には、男と女の、苦痛と快楽のあえぎ声が響く。
﹁ぐうっ﹂
・・・・・・・
・・・・・・・・
男がうめくと、天を突いていたペニスが、大量の精液をすごい勢
いで吐き出した。吐き出された精液は仰向けに寝ていた男の体に降
り注ぎ、顔まで汚す。
ガンシャ
﹁あはははは!出た出た!ガンシャ!自分に顔射ァ!﹂
﹁ううう!﹂
男にのしかかっていた女がけたたましく笑う。
屈辱にうめく男。
よく見れば男の顔は不自然にひきつった顔が、凍りついたように
動かない。
麻痺でもしているのか。
﹁何よ?文句あんの?あんただってさんざん私の顔にかけたじゃん
!何度もやめてっ言ったのに、何度も出したじゃん!﹂
男を詰問する女が腰を振る。
引き締まった尻が揺れる。
その尻の中心から、尾骶骨が蜂の腹のように肥大化したような器
269
官が、会陰部を通って前に伸びて、両脚を開いた男の肛門をペニス
のように貫いている。
当然、女が腰を振れば、その不気味な器官は男の肛門を蹂躙する。
﹁ぎ、ぐう﹂
再び男がうめく。
精を出しきり萎えていたペニスが、再び勃ち上がる。
﹁あはは!立った!ケツ穴犯されて立ちやがった!人のこと犯され
て感じる淫乱とかいって!自分は汚ねえケツ犯されておっ立ててる
変態じゃねえか!﹂
女が胸を揺らして嘲笑う。
その乳首は鋭い棘だ。
﹁あげげぐげごげがが﹂
﹁何言ってんか分かんねえよ﹂
涙を流して何かを言おうとする男の顔を、無情に女が叩く。
長く鋭く伸びた爪が男の顔を抉った。
﹁∼∼∼∼∼!!!!﹂
﹁イケメン台無しぃ!そらそらそらぁ!二度と女口説けないように
してやるよぉ!そらぁ!﹂
さらに手を、いや爪を男の顔に叩きつける。
﹁!!!!!!﹂
﹁あはあ!いい!もっとー!﹂
270
痛みに暴れた男の動きが女に刺激を与えた。
どうやら男のペニスと同様の感覚があるようだ。
さらなる刺激を得んと、腰を荒々しく振る女。
﹁ウゴウゴ言ってぇ!面白ぉい!私の動きに反応しちゃってるぅ!﹂
自らの腰の動きにいちいち反応する男を見て、男を支配している
ことを実感し、征服感に酔いしれる女。
﹁あはははは!なるほどぉ!レイプって楽しいねぇ!今ならあんた
ヤク
の気持ちわかるわぁ!でも駄目!許さない!あんたのせいで!あた
しの人生むちゃくちゃよぉ!あんたのせいで!﹂
男は今さらながら後悔していた。
確かに彼女の人生を無茶苦茶にしたのは自分だろう。
まわ
自分の整った顔を使って、世間知らずの小娘を誘い出し、薬も使
って仲間と一緒に輪姦した。
お嬢様
を、徹底的に貶めてやりたかった
さらにはその時撮影した写真を使い恐喝した。
自分と違う恵まれた
のだ。
その後、彼女は麻薬の使用と妊娠が発覚し、学校を退学になった。
彼女の両親が娘よりも世間体を重んずる性格だったため、家も追
い出されたと聞く。
その後どこで何をしていたのやら。
街を歩いているのを見つけ、久々に楽しもうと裏道に連れ込み、
胸をつかんだら掌に鋭い痛みが走った。
その途端、体の自由が利かなくなった。
関節のさびたマネキン人形のように、ぎくしゃくした動きで、彼
女の命令に体が勝手に従うようになっていた。
271
そして今に至る。
﹁あはははは!また逝く!いっちゃうんだ!﹂
再び射精に追い込まれる。
女は責めを緩めない。さらに腰を振って責め立てる。
男の眼前で揺れる乳。
男は萎えることを許されない。
﹁今度は元気だねえ。よっと﹂
尾゛は未だ男を犯し続けている。
女が立ち上がって、男をまたいで立つ。
女の
女が腰を下ろし、男のペニスを胎内に迎え入れた。
﹁ふぅーっ。少しは懐かしいかと思ったけど、駄目ね。こんなお粗
が暴れ出した。
末なものに処女を捧げたなんて、悔しい!﹂
尾
男の上で女が暴れ出す。
同時に男の腸内で女の
﹁ぐがあああ!﹂
﹁あはははは!空になるまで搾り取ってやる!そらそらそらそら!﹂
後ろに両手をつき、男の上で接合部を見せつけるように脚を大き
く開く女。
その体勢で腰を振る。
揺れる乳。
ペニスと肛門を蹂躙された男は、あっけなく三度目の射精に追い
込まれる。
272
同時に女も絶頂に達した。
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼!!!!!!﹂
﹁あああああああ!いいいいいい!くるううう!﹂
女の胎内に精液があふれる。
﹁うふふふふ。いっぱい出したねえ。少し気持ちよかったよ。でも
こんなに出したら私また妊娠しちゃうね﹂
ぞっとする笑顔の女。
震え上がる男。
﹁知ってる?妊娠ってね、とても辛いんだよ。女ばっかり辛いのは
不公平だよね。男も苦労すべきだと思わない?﹂
女の言うことが理解できない男。
・・
急に肛門に無理やり大きい物を詰め込まれたような違和感を感じ
る。
﹁!!!!﹂
﹁だめよう。パパ。私たちの赤ちゃん、大事にしてね﹂
﹁!!!!﹂
男は少年時代に読んだファーブル昆虫記を思い出していた。
麻痺させた獲物に卵を産みつける狩人蜂の話を。
卵からかえった幼虫は麻痺している獲物を喰って成長するのだ。
そしてこの場合の獲物とは⋮⋮
﹁おなかに子供がいるって素敵でしょう。大丈夫、すぐ大きくなる
273
わ﹂
﹁ぎいいい!﹂
﹁あら、もう生まれたの?﹂
男の腹を激痛が襲う。
内臓に鋭い牙が食い込む痛み。
男はいっそ殺してくれと思う。
しかし、女はそんな男を嘲笑うように見ているだけであった。
男は思った。
自分が破滅させた女はもう死んだのだろう。
ここにいる女は、おそらく蜂に取りついた女の怨霊だろう。
そんな迷信的な恐怖に襲われていた。
一時間が経過した。
男は既にこと切れていた。
そして男の腹を引き裂いて、異形の虫たちが空に舞い上がる。
その虫は全体的には蜂に似ていた。
特徴的なのは細長い腹部と、頭部であろう。
その虫の頭部が、女の上半身に似ていた。
複眼が乳房のような形で、顔に女性のウエストのようなくびれが
あり、大顎は女性器を思わせる。
さらに頭のてっぺんに小さな人間の女の顔が乗っている。
両腕のない上半身のみの裸婦像に見えないこともない。
﹁はじめまして。坊やたち。私がママよ﹂
274
虫たちに愛情をこめて笑いかける女。
どことなく嬉しそうな虫たちが、女の胸にたかる。
﹁んー。おっぱいが欲しいのね。ちょっと待って﹂
乳房から、やんわりと虫たちを離す。
手で乳房を支えると、乳首から白い雫が噴き出し、虫たちの口に
収まる。
不気味な母乳を呑んだ虫たちは、人間とほぼ同じ大きさになった。
﹁さあ、いっぱい飲んでね。おなかいっぱいになったらお仕事よ﹂
女の体から殺気が膨れ上がる。
﹁人間たちをレイプするのよ。男も女も。男どもはペニスを食いち
ぎってやりなさい。女は絶対孕ませるのよ。レイプされた私を汚い
と言った女も!レイプした男も!みんな許さないわ﹂
女の怨嗟の声に、羽音が応えた。
275
修羅と狂気︵前書き︶
マッドどもが暴走しています。
全ては這い寄る混沌のせいです。
276
修羅と狂気
リベンジャーズ
ACT日本支部、殲滅部隊第二小隊、通称、復讐鬼隊。
魔女型ヒメーラとの戦闘により壊滅。
生存者は赤城京子と穂村香代の二人のみ。
現在、No.3であった赤木京子を新隊長として再建中である。
訓練過程を終了した新人が加入したりしてはいるが、欠員の補充
にはまだ時間がかかる。
他の小隊から人員を融通すれば良いという考えもあるが、元々第
二小隊とは有能であっても、ヒメーラへの復讐心が強すぎるため、
・・・
他者との連携に難がある者をまとめておいたものである。
復讐鬼隊の異名は伊達ではないのだ。
それでも結果を出してきたのは、激しい憎悪から生まれる狂気と
もいえる闘志のなせるわざである。
命に換えても敵を討つ執念の賜物である。
またその狂気を、執念を共有出来るからこそ、彼等は仲間たりえ
たのだ。
それゆえたった二人とはいえ、生き残った古参兵の眼鏡に適う新
人をみつけるのは少々骨である。
故に現在、第二小隊は実戦部隊としては活動休止中である。
かといって彼女たちは休むつもりはない、復讐のために更なる力
を得ようとしていた。
﹁刮目せよ!﹂
顔に火傷のある老人が吠える。
277
﹁これが試作対ヒメーラ戦用強化外骨格、その名も阿修羅一号だぁ
っ!﹂
不健康なまでに痩せたメガネの男が叫ぶ。
ロボット
である。
同時に布をかぶっていた物体が露わになる。
それを一言で言うならば
身長2メートル50センチほどの、金属製の人型だ。
胴体と一体化したドーム状の頭部の前後左右にはセンサーらしき
機器が設置され、両肩には楕円形の楯が装着されている。
両腕は人間の物に近い形状で、拳を保護する突起付きの装甲が装
備されている。
背中にはもはや大砲といっていい重火器と、自動車も真っ二つに
しそうな大剣が、折り畳んだ両翼のように装備されている。
胸部には一対のレドームが乳房のように並んでいる。
太腿のハードポイントにはAA12に似た銃が取り付けてある。
みたところ、マニュピレーターは殆ど人間の手と変わらない大きさ
であるから普通の人間用の武器も問題無く使えるだろう。
全体的に流れるような曲線で構成されたその姿は、力強さよりも
空気抵抗を受け流して疾走する速さを想像させた。
誇らしげに胸を張る男たち。
しかし目の前の二人の女は無表情で白けていた。
﹁だーっ、ノリ悪いなぁ﹂
女たちの反応が薄いことにがっくりして見せる眼鏡の男︱︱浦原。
大柄な、男と間違われそうな女︱︱京子が白けた表情で答える。 ﹁あんたらのノリについてけんなら人生おわってるわ﹂
﹁ま、確かに﹂
278
﹁納得してるよ、この人﹂
浦原の態度に、引き攣るツインテールの少女︱︱香代。
その様子を見てやけどの老人︱︱西島が狂乱の叫びをあげる。 ・
﹁ふはははは!男の逝き様とは死に場所見つける事なり!わしらの
人生、一片の悔いなぁし!﹂
﹁今なんかおかしくなかった?﹂
﹁いや、お迎えの近い爺といっしょにすんな!俺はまだ若い!﹂
﹁そういう問題じゃないでしょ﹂
うんざりした表情で首を振った京子が話題を変える。
﹁前のと大分見た目が違うわね﹂
・・・・・・・・
﹁うむ、あれは元々予算獲得のためのコンセプトモデルとして、適
当にでっち上げたもんじゃからな﹂
﹁後から思いつくままに機能を追加してああなったんだ﹂
﹁い、いいかげ∼ん﹂
﹁⋮⋮今ここで聞きたくなかったわね﹂
まさかそんな風に作られたとは。
マッド二人の言葉に冷や汗を流す。
﹁気にすんな。おかげでいろいろ実験できたしな﹂
﹁それじゃ試作機どころか実験機じゃない﹂
﹁そうともいう﹂
香代と浦原のやり取りに頭を抱えたくなる京子だが、何とかこら
える。
女を捨てる覚悟で鍛えてきた自分をものともしなかった魔女。
279
そしてその魔女を圧倒した混血の化物女。
あの化け物どもとの力の差を埋めるためには手段を選んでいられ
ない。
特に仲間であった香代が、化物女と馴れ合い始めた今となっては
特に。
悪魔に魂を売るよりはましなはずだ、多分。
ある意味悪魔よりたちが悪そうだが、気のせいだと思いたい。
﹁しかし見た目はともかく名前は変えないで欲しかったなあ﹂
﹁それは確かに﹂
香代に同意する京子。
時代を超えて凶悪な寄生生物︵ここが重要︶と戦い続ける女性の
名前は、極めて縁起がよさそうだ。
﹁いやー、俺らもそうしたかったけどスポンサーがなぁ。日本語の
名前にしろって﹂
﹁スポンサーって自衛隊?﹂
﹁あと消防庁もじゃ﹂
﹁⋮⋮将来、赤いパワードスーツ着た消防士さんが火事を消すわけ
ぇ?﹂
﹁ふふふふふ、燃える!燃える光景だぜ!﹂
﹁いや、燃えちゃだめでしょ、消さなきゃ﹂
消防士が聞いたら激怒されそうだ。
﹁まあ、改名の理由は他にもあっての、それは試してもらう方が早
いわい﹂
﹁そうさせてもらうわ﹂
280
これ以上くだらない戯言を聞きたくない。
﹁まあ、アンタだったら、男用でも大丈夫だしな﹂
ほっといてくれ。
﹁んじゃ、開けるぞい﹂
西島がロックを外すと、阿修羅一号の胴体が縦に開いた。
なんとなく河馬の口を思い出す香代。
彼女の目の前で京子は阿修羅一号に搭乗する。
胴体内部に吊り下げられたようなシートに座り、シートベルトを
締める。
両手両足を機体の腕部と脚部に通すと、展開していた装甲が体に
合わせるように閉じる。
浦原の言う通り、大柄な京子にはサイズの問題はないようだ。
﹃ふーん、頭の内側全部、モニターになってるんだ﹄
京子の感心する声が響いた。
﹁五箇所のセンサーが捕えた映像を死角なく映し出す。これぞ全周
囲モニターよ﹂
﹁一応有視界モードもあるが装甲を開く必要があるからの。防御力
はガタオチじゃ﹂
﹁さぁらに!自動的にセンサーが周囲を警戒し、高速で動く物体、
光学的に観測不可な異常な音源、熱源などの存在を警告してくれる
優れものよ!﹂
﹁あー、それで阿修羅なんだ⋮⋮﹂
281
・・
テンション上がってきた浦原にひきつりながら納得する香代。
日本で阿修羅と言えば興福寺の三面六臂の阿修羅像である。
前後左右、上方を同時に監視できるその性能にはふさわしいかも
しれない。
﹁ふふふ、それだけではぬぁい!﹂
﹁名前の由来は他にもあってな、まあ、テストを見ればすぐわかる
じゃろ﹂
京子を残して別室に移動した一同。
マイクロシャワー
モニターに映る京子の顔に語りかける浦原。
﹁準備はいいか﹂
﹃OKよ﹄
﹁いよし、説明開始すっぞ。まずは胸部の高周波輻射砲だ﹂
﹃旧型で肩についてたやつね﹄
ヒメーラの弱点である波長の電磁波を発する兵器。
途中で故障したものの、分身とはいえ魔女を追い詰めたその威力
は素晴らしい。
ヒメーラ
﹁うむ、肩に新装備をつけたことと、小型化に成功したことにより、
胸に装備したんじゃ﹂
﹁新装備は後にしてテストするぞ。この阿修羅のコンセプトは﹃敵
にマイクロシャワーを浴びせ続けて、防御力と回復力を低下させな
がら、他の武器でその肉体を破壊して殲滅する﹄だからな。一番大
事な武器だ﹂
﹃⋮⋮必殺技ってわけにはいかないのね﹄
282
﹁残念じゃがの、無理をするとこの前みたいに火を吹くことになる﹂
﹃なるほど﹄
残念だが仕方ない。
今までは強力な銃火器に頼るしかなく、いやそれすらも頼りにな
るか怪しかったのだ。
それに比べれば大いなる進歩である。
﹁理解してもらえたなら、そこの水槽の前に立ってくれ﹂
﹃了解﹄
﹁じゃあ胸の装甲をはずしてくれ﹂
﹃こう?﹄
京子は言われた通り両手で、胸の装甲を外した。
半球の装甲が両手に収まる。
その様子はブラジャーをはずす女性のようだった。
﹁ちょっと、これって⋮⋮﹂
﹁ぐふふふ!オッパイこそ女の武器!男のロマッ!﹂
浦原の尻に香代の回し蹴りが決まった。
﹁セクハラすると、グーでぶつよ!﹂
﹁蹴りならいいのか!こら!﹂
﹁じゃあ燃やす?﹂
﹁すんませんっしったー!﹂
冷たく光る香代の視線に貫かれ、あわてて平身低頭する浦原。
次に香代は西島に視線を動かす。
悪びれずに答える西島。
283
﹁これについて、わしはノータッチじゃ﹂
﹁⋮⋮ならいいけど﹂
﹁うむ、続けるぞ。トリガーは音声認識になっておる。装甲を外し
てMSファイアと叫べば高周波が出る。ためしに水槽の水を沸騰さ
せてみてくれ﹂
﹃⋮⋮了解。MSファイア!﹄
︵電磁調理器じゃあるまいし︶
内心ぼやくが、それでもちゃんと叫ぶ。
多少投げやりになってしまったが。
人間が三人ぐらい入れる水槽の水がまたたく間に沸騰していく。
頭を押さえながらモニターを確認する浦原と時計を見ている西島。
十分ほど経過して香代が退屈し出したところで、男たちはようや
く満足したらしい。
﹁機体、搭乗者ともに問題なしということで、次に行くぞ。太腿に
あるのはAA12を改造した対ヒメーラ連射式散弾銃﹃サウザンド﹄
⋮⋮﹂
﹁ちょっ、ちょっと!連射式散弾銃ってショットガンをマシンガン
みたいに撃ち続けるわけ?﹂
何やら物騒な言葉に突っ込む香代。
﹁如何にも﹂
﹁やばくない?それ﹂
﹁やばいにきまっとろうが。大体やばくない武器でヒメーラに勝て
るか?ん?﹂
﹃というより、やばくない武器なんかないでしょ﹄
﹁あはは、確かに⋮⋮﹂
284
パイロキネシス
冷や汗を滝のように流す香代。
発火能力の持ち主である香代は銃器にあまりなじみがなかった。
そのためこの辺の感性はむしろ一般人に近い。
﹁説明続けっぞ。知ってるかもしれんが、AA12ってのは米国で
マッドども
開発されたフルオート可能な散弾銃だが⋮⋮﹂
︵あるんだ⋮⋮もともとそういうの⋮⋮この連中の独創じゃなくて
⋮⋮︶
もう香代は力なく笑うしかない。
﹁反動でかいわ、重いわ、威力強すぎるわ、弾ばらまくならサブマ
シンガンの方が使いやすいわ等々の理由でいまいち使われていない﹂
﹁それをさらに強化改造したものがこのサウザンドじゃ﹂
︵強化じゃなくて狂化でしょ。なんでいまいち使われてないものを
わざわざ⋮⋮︶
役に立たないというより、強力すぎて使いにくい物をさらに強化
する。
確かに狂気の沙汰である。
﹁右手にコンクリートの塊があるじゃろ。そいつを撃ってくれ﹂
﹃了か⋮⋮﹄
了解、と言い終わる前にクイックドロー。
軽自動車のエンジン音に似た音と、角砂糖を噛み潰すような音が
耳を襲う。
両手で耳を抑える香代の前でコンクリート塊が、蜂の巣、いや軽
石の如く穴だらけになってゆく。
285
﹁すご⋮⋮﹂
﹁普通、散弾というのは小さい球状の弾を出すんじゃが、こいつの
は堅く鋭い無数の細い針になっておるため弾の一つ一つの貫通力が
増しておる﹂
﹁それってフレシェット弾ってやつ﹂?
﹁それよりも細く!小さく!鋭く!そして大量に!まさに針千本!
この針を連続して広範囲にばらまくことで敵を牽制するわけじゃ﹂
﹁牽制って⋮⋮これで?﹂
ボロボロのコンクリート塊を見て引き攣る香代。
しかし香代は理解していない。
魔女など強力なヒメーラにはこの程度の威力でも牽制にしかなり
えないということに。
そしてそのような敵に対する切り札を持つ自分がいかに恵まれて
いるかを。
﹁牽制用の武器は他にもあるぞい﹂
﹁むしろ防御用と言うべきだな、しばらく動くなよっと﹂
浦原がキーボードを叩くと、天井から四方向に突起の付き出た黒
いゴム毬がいくつも落ちてきた。
ゴム毬は床に落ちるとランダムに周囲を跳ねまわる。
﹁あれが新装備?﹂
﹁いんや、あれは没になった射撃訓練用自動球じゃ﹂
三人の見守る前で、自動球の動きが加速してゆく。
残像を残し、目で追うことすら困難になってゆく。
そして背後の二方向から阿修羅に襲いかかる。
286
﹁!﹂
両肩の盾が飛んだ。
阿修羅の両肩から生えた二匹の蛇が自動球を迎え撃つ。
さらに自動球が別方向から襲う。
蛇たちは体をしならせ、鞭のように自動球を切り裂いた。
﹁なにあれ?﹂
﹁あれぞ自動防御迎撃兵装、スネークアーム!﹂
その形態はまさに蛇。
それも毒蛇の代名詞、コブラだ。
両肩に装備されていた盾が、おそらく裏側に折りたたまれていた
のだろう、多関節のアームによって本体を守るように動いている。
これも内部に収納されていたのか、盾の縁からは三本の刃が生え
ている。
﹁頭部のセンサーと連動し、高速で接近する物体を迎撃する第二の
腕!まさにアシュラテンッ!﹂
テンプル
浦原のこめかみに香代の右フックが突き刺さる。
﹁視線による自動照準と音声認識で攻撃にも使えるぞって、何すん
じゃ、いきなり﹂
﹁危ないこと言いそうだったから潰したの﹂
平然とうそぶく香代。
何やら耐性ができてきたようだ。
287
﹁まあ、構わんが、ほどほどにしといてくれ。これ以上おかしくな
られたら困る﹂
﹁あんたがいうな!﹂
﹁マゾになったらどうする?﹂
﹁うげぇ﹂
薄情な西島の言葉に、心底気持ち悪そうな香代。
﹁て、てめえらぁ⋮⋮いーかげんにしろぉ∼∼﹂
﹃あんたもよ﹄
力なく抗議する浦原。
激しい頭痛を感じた京子。
こめかみを押さえようとしたが、装甲に阻まれできなかった。
浦原の回復を待ってテストは続行される。
﹁背中の91式銃架には⋮⋮﹂
﹁きゅうじゅういっしき⋮﹂
無表情でつぶやく香代にあわてる浦原。
﹁じ、自衛官にも好きな奴ぁいるはずだ!ぜってーうける!﹂
﹁そういう問題?﹂
﹃いいから説明して﹄
スルー
もういちいち相手にしていられるかと無視する京子。
288
斬魔刀
を装備してある﹂
﹁おう、右にはウッドペッカーを強化した
闘兵装
︵ザンマトウ⋮⋮セーフかな︶
虎徹
を、左には重格
﹁脇を開くように腕を上げて、右手の親指と薬指で輪を作ってくれ。
そうすると虎徹が使用可能になる﹂
京子が西原の言うように動くと、脇の下を通るように銃身と刀身
が持ち上がり、水平になった。
﹃なるほど﹄
右腕で抱え込むように虎徹を構える京子。
香代がやっぱりとつぶやいているが気にしない。
﹁斬魔刀も同じようにできるが⋮⋮﹂
最後まで聞かずに試す京子。
左手の親指と薬指で輪を作る。
斬魔刀は切先から刀身の半ばまで両刃となっており、峰の刃の付
いてない部分には持ち手が付いている。
﹃今のって、不意打ちにも使えそうね﹄
﹁ふふふ、それも計算のうちよ﹂
敵に指呼の間合いまで接近され、剣を抜くことも銃を抜くことも
できない場合、指で輪を作るだけで下から斬りあげることもできる。
﹁まあ、そのままでも峰の持ち手を取って使うこともできるが、普
通に上から抜く場合は肩の前で左手の親指から中指だけ開いてくれ﹂
289
﹃こう?﹄
柄頭が左手の中に収まった。
引き抜くように前に向かって振る。
前方のなにもない空間の仮想敵に突き付けられる大剣。
﹃案外軽いのね。竹刀みたい﹄
﹁おいおい、あんたの筋力も強化されてるのを忘れちゃ困るぜ﹂
﹁そいつを生身で持ち上げられたら、オリンピックで金メダルじゃ﹂
﹃そうね﹄
苦笑する京子。
動きに違和感がないので、強化されていることを本気で忘れてい
た。
﹁そのパワーと剣の重量で戦車もぶったぎれるぜ﹂
﹁それはチト大げさじゃが、ま、砲塔ぐらいは一刀両断できるじゃ
ろ﹂
﹃それは素敵ね﹄
単純明解な破壊力。
それだけに信頼性も高そうだ。
﹁順序が逆になったが、虎徹の方は先端に超硬金属を使用した特製
弾丸によりストッピングパワーを強化しながら、なお!貫通力もさ
ぁらに!増してある!ゆえに!どんな装甲であろうと!ぁ!撃ちつ
らっ!﹂
﹁そっちかああ!いいかげんにしろぉ!﹂
香代の踵落としが炸裂した。
290
﹁どうでもいいが、なんで浦原のネタにいちいち突っ込めるんじゃ
?わしゃ全くわからんのじゃが、世代的に﹂
西島の疑問に香代は凍りついた。
シャワーの水流が京子の裸身を叩く。
鍛え上げられた筋肉に、ほとんどの脂肪が喰い尽された逞しい裸
身だ。
一目見ただけでは男と間違えるかもしれない。
冷たい水が体の火照りを覚ましながらながら、なだらかな胸から、
奇麗に割れた腹筋の上を通り、股間の茂みに流れ込んでゆく。
マッド二人の奇行には激しく疲労したが、それを差し引いても今
日の阿修羅一号のテストは彼女にとって、大いに満足すべきもので
291
あった。
新たな力を得た喜びと、復讐への期待感が体を火照らせる。
温い化け物どもをどうやって殺してやろうか、冷たい興奮に昏い
笑みが浮かぶ。
自分の手でミンチになっていくヒメーラを妄想していると、体を
洗っていた手が乳首を弾いた。
﹁!﹂
ヒメーラ
乳首の刺激が体の中心に伝わり火をつける。
同時に仇のことを考えていたせいか、過去の光景が脳裏にフラッ
シュバックした。
﹃わ、わらひぃ!メスブタ!チンポだいしゅきのメスブタでふぅ!
ぶひぃ!チンポほひぃ!しぇえきほひぃでふぅ!ぶひぃ!かけてぇ
!いっぱいかへてぇ!﹄
吐き気がするほどいやらしい女だ。
一糸まとわぬその体には既に精液で汚れていない場所はない。
だらしなく舌の出た口からは、あふれた精液が涎のように垂れ流
されている。
そのくせ、大股開きで男に跨り腰を振り続けている。
やや小ぶりな胸が、尻肉が男を手招きするように揺れる。
両手は横に立つ男たちのペニスを、搾り取るように扱きたてる。
正気を失い焦点の合わない女の眼は、それでも男たちのペニスに
向けられている。
女の股間は血で汚れている。
この女がつい先刻まで処女であったなど、誰も信じまい。
だがその血はまぎれもなく破瓜によるものであった。
あさましいまでに淫らなその姿。
292
淫売という呼び方ですら生ぬるい。
もはや、本人が呼ぶように雌豚と言うしかない。
そしてその女こそ過去の京子の姿。
記憶から消したくても消せない悪夢の記憶だった。
﹁ち、ちくしょう!だ、だめ!﹂
衝動に抗いながらも、彼女の両手は自らの秘裂と肛門に伸びる。
正気は取り戻せたものの、その体に刻みこまれた淫魔の刻印まで
は消せない。
淫肉地獄の光景は時に京子の記憶の底から現れ、彼女を苦しめて
いた。
﹁あひぃ!だめ!だめぇ!﹂
涙を流しながら自らを犯す京子。
快楽に流されまいと唇をかみしめる。
頭の中で声がする。
︵ミトメテシマエ︶
︵オマエハメスブタダ︶
︵クルッテシマエ︶
︵カイラクヲウケイレロ︶
︵クルシムコトハナイ︶
︵ハヤクラクニナレ︶
﹁く、くそ!負けてたまるか!﹂
293
しかし彼女の両手は止まらない。
それどころか中途半端な自制は、彼女の肉体に中途半端な刺激を
与え、さらに性感をあおる。
﹁う、うう、っち!ちっくしょう!﹂
敗北感にまみれながら、快楽を抑えるのではなく、沈める方向に
変換する。
両手の動きが加速する。
それでも足りない。
﹁た、たりない、たりないのぉ!お、おかひ、むぐ!﹂
かつてのように、自分を辱める言葉が口を突きそうになる。
指を口に入れてふさぐ。
︵このままじゃ、このままじゃ、また雌豚に戻っちゃう!いや!そ
んなのいや!︶
シャワーヘッドが眼に入る。
少し大きいが⋮⋮
﹁ん!んっぐう!﹂
シャワーヘッドを秘裂に突き入れた。
まるで切腹のような悲壮感がある。
﹁洗って!私の体の中を洗って!あいつ等の毒を奇麗にして!﹂
294
水の流れおちる音とともに、悲痛な声が響く⋮⋮ 295
魔女の情報屋
一人の女に五人の男が群がっている。
仰向けに寝て、下から女を突き上げる逞しい男。
女の後ろから抱きつき、肛門を犯す痩せた男。
中心に寄せられた女の大きい胸の、谷間を犯す腹の出た中年。
女の左脇でペニスを扱きながら、その先端を乳房にめり込ませる
十代後半の少年。
そして女に腰を抱きかかえられるように、ペニスを口に咥えこま
れた十代前半の少年。
男たちはいったい何度放出したのか。
女の体に精液で汚れていないところはない。
一目見ただけでは、男たちに輪姦される女にしか見えないが、女
の顔にあるのは屈辱でも恐怖でも怒りでも絶望でもなく、ただ喜悦
の笑みだけである。
その眼は長く伸びた前髪に隠されているが、歪んだ唇がすべてを
物語っている。
男たちが苦悶の声を上げると、女の身体が再び精液で汚された。
崩れ落ちる男たちを尻目に、満足そうに立ち上がる女。
行儀悪く下腹をポンポンと叩く。
まるで胎内の精液の量を確かめているようだ。
ふと、面白い物を見つけたとばかりに笑みを深くする。
﹁おやあ、坊やはまだ元気っすねえ。オジサンなんか、もう心臓が
やばそうだというのに。やっぱ、若いって素晴らしいっすねえ﹂
確かに一番年下の少年のペニスはもう回復していた。
中年男に至っては苦しげに胸を抑えているのに。
296
うるんだ目で、泣きそうな顔で女を見上げる少年。
その少年に向かって、自らの淫阜を挑発するようにペシペシと叩
いて見せる女。
﹁うふふふふ。可愛いおチンポおっ立てて、そんなにお姉さんのこ
こに突っ込みたいっすかあ?﹂
女の下品な質問に、抜けそうな勢いで首を縦に振ってこたえる少
年。
必死な少年の様子を楽しむ女。
﹁んー。でも坊やのおチンポって可愛すぎんのよねー。まだ剥けて
ないしー﹂
女の無情な答えに、泣きそうになる少年。
そこに女の口から蛇のように、何か長い物が飛び出した。
それは舌だった。
ピンク色の舌が伸びて、少年の包皮に包まれたペニスの先端を貫
く。
舌先が円を描くと少年のペニスを包む皮膚がめくれ上がり、鮮や
かなピンク色の亀頭が顔を出す。
舌がそのままコルク抜きのように螺旋を描くようにさらに伸びる。
さらに回転を早め、竜巻のようにペニスをしゃぶる。
﹁ん︱。剥けた剥けた。でもやっぱり子供チンポっすねー。これじ
ゃ物足んないっすよ﹂
舌を出したままで、なぜか問題なく言葉を発する女。
女の言葉に泣きそうになる少年。
297
﹁どーする?坊や?お医者さんに頼んで大人チンポに手術してもら
う?そーしたら入れさせてあげてもいいっすよ?﹂
さらに伸びた舌先が、少年の二つの瑠璃玉を弾く様に弄ぶ。
少年は血を吐くように叫んだ。
﹁入れたいです!カレン様のオマンコにチンコ入れたいです!手術
してください!﹂
必死な少年の叫びに、嘲笑を深くする女︱︱カレン。
﹁エー、ホントいいの?すっごく痛いかもしんないよー?それどこ
ろか死んじゃうかもー﹂
﹁いいです!どうなってもいいです!だから入れさせて!中で出さ
せて!﹂
泣き叫ぶ少年を嘲笑いながら見ていたカレンだが、少年の哀願を
最後まで聞いて態度を一変させた。
﹁いい!かわいいー!この子ムチャかわいー!﹂
少年のペニスから離れたカレンの舌が、少年の腰に巻きつき彼の
全身をカレンの元に引き寄せた。
舌を口にしながら少年に頬擦りする。
舌がすべて口内に戻ったら少年の唇を奪う。
﹁∼∼∼∼!﹂
白目をむいて射精する少年。
少年の唇から離れるカレン。
298
少年の口中から赤い舌が唾液の糸を残して引き抜かれた。
﹁あははは!おねーさんのディープキスすごいっしょ!これだけで
天国逝けちゃうしょ!口ん中の性感帯を蹂躙して、男も女も逝かせ
ちゃう、おねーさんの必殺技っす!大人チンポになったらこれで搾
り取ってあげるっすよ!チンポ、オマンコに入れたままお口を蹂躙
して抜かずに十連発!びゅびゅく射精して奥に当たるのが最高!責
任もって大人チンポ!ううん、どんな女もイチコロのスーパーチン
ポにしてあげっからね!だからおねーさんをいーっぱい気持ちよく
させてね、ボーヤ!﹂
テンションが上がっておかしなことを口走るカレン。
まさにマシンガントーク。
そこに近づく異形の影。
具体的に言うと体色が緑色で、何より首がない女だ。
当然顔もない。
目も耳も鼻も口もないわけだが、それらの器官は胴体にあった。
乳房が眼に、臍が鼻腔になっており、陰部が縦に裂けた口となり、
そこから鋭い歯と舌がのぞいている。耳は脇の乳房の付け根あたり
に、それらしき穴が開いている。
その縦に裂けた口が言葉を紡ぐ。
声の響きがどこか人間のものと違った。
﹁かれんサマ。オ電話デゴザイマス﹂
﹁んー、サンキュ、部下1号君﹂
﹁イエ、ワタシハ2号デス﹂
﹁いーじゃないすか。大して変わんないし﹂
﹁⋮⋮失礼イタシマス﹂
なまえ
大して変わらないって、自分で産んどいてなんだよ。番号だって
299
つけた意味ないじゃないか。
2号と名乗ったカレンの使い魔は腹の中で毒づきながらも表には
出さない。
これは保身のためというより、彼女?がカレンに対し反抗するこ
とができないよう、遺伝子よりも深いレベルでプログラムされてい
るためだ。むしろ主に対し批判的な考えを持てるだけでも、奇跡的
なことである。
結局2号がしたのは内心を隠して、携帯電話をカレンに渡しただ
けであった。
携帯を操作して通話を開始するカレン。
﹁はーい、魔女の情報屋、カレンさんでーす!おや、これはこれは
お珍しい、どうも女王蜂さん、ご無沙汰しておりますです。何か御
用で?⋮⋮ほほう、ACTの混ざりもんが今までに嗅いだ事ないほ
ど、すっげーエロい臭い出してる?お色気むんむんフェロモン全開
ヤ
?見てるだけで疼いてくる?そりゃー、なんたって純血の雄に徹底
的に犯られちまって、全身精液漬けにされたんすから。それでやっ
ぱりあたしが以前売り込んだ情報が欲しくなった、と。えー、それ
は情報料弾んでもらわないと。⋮⋮男2人?手をつけてない?馬鹿
言わないでくださいよ、こっちも危ない橋わたってるんすよ。え?
女2人つける?カップル2組ともですか。もう一声!雄3匹?番犬
代わりに?んー、よし、それで手を打ちましょ﹂
マシンガントークで交渉相手を圧倒したカレンは、ネズミを見つ
けた猫のように舌舐めずりした。
﹁うふふ、手術料を工面する必要が省けたっす﹂
彼女たち魔女は、時としてこのように人間を通貨代わりにして、
他の魔女と取引をすることがある。
300
﹁ボーヤ!すーぐオチンポ、パワーアップさせたげるっすよ、って、
あら﹂
顔を赤らめた少年のペニスは復活していた。
﹁うわー、また元気になってるぅ!﹂
﹁だ、だって、カレン様のおっぱいとおマンコ、エロすぎるよぉ!﹂
﹁あーん、嬉しいこと言ってくれちゃう∼!かわいいよ∼﹂
再びカレンの舌が少年のペニスに絡みつく。
同時にカレンは跪き、自らの舌ごと少年のペニスを両の乳房で挟
んだ。
そのまま舌と乳房で、少年のペニスを圧迫し扱きたてる。
﹁あ︱!カレン様!﹂
快楽のあまり叫びながら、腰を振りだした少年はすぐに射精する。
竜巻に吸い上げられる海水のように、舌の作る渦の中を通って吸
い上げられる精液。
﹁んー、一生懸命可愛いお尻振っちゃってぇ。ということで今度は
!﹂
床に横たわりながら、カレンは少年の体をひっくり返す。
いわゆるシックスナインの体位に似ている。
普通のシックスナインと違うのが、少年のペニスがカレンの口で
はなく、その胸に咥えこまれていることだ。
﹁ボーヤぁ、今度はおねーさんを気持ち良くしてぇ、オマンコなめ
301
てぇ﹂
﹁はい!カレン様!﹂
カレンの依頼の形をとった命令に喜々として従う少年。
そのまま他の男の精液で汚れた、カレンの秘裂を貪るようになめ
まわす。
﹁あぁん、いい、そこぉ。ボーヤ才能あるっすよぉ。あ、また固く
なってきた﹂
﹁あ!﹂
再び固くなってきたペニスを、乳房で圧迫するカレン。
えびぞりになって反応する少年。
﹁こらぁ、さぼらないの﹂
﹁は、はいぃ﹂
カレンの注意に、奉仕を再開する少年。
しかし今度は彼の腰も動いている。まるで女性器となったカレン
の乳房を犯すように。
カレンの目の前で、少年の引き締まった尻が踊る。
﹁うふふ、白くてすべすべのお尻、かあわいい﹂
再び長く伸びたカレンの舌が、少年の尻をなめまわす。
再び顔をあげて反応しようとする少年だが、それより早くカレン
の脚が少年の頭を捕えた。
カレンの太腿に挟まれる少年。
顔がカレンの陰部に押し付けられる。 302
﹁うふふ∼、と・ど・め﹂
カレンの舌が少年の肛門を貫いた。
下からいかなる成分が分泌されているのか、少年の肛門は程好く
弛緩してカレンの舌を受け入れる。
﹁∼∼∼!﹂
前立腺が刺激され少年が射精する。
脚を開いて少年を解放するカレン。
﹁変になるぅ!壊れちゃうよぉ!おかしくなっちゃうぅ!﹂
妖しい快感に悲鳴を上げる少年。
再びカレンの両脚が、大きなはさみとなって少年の首を捕える。
﹁おかしくなればいいんす!おかしくなって、おねーさんのオマン
コに!精液出すだけの化物になればいいんす!﹂
﹁なりゅぅ、オマンコにしぇいえきだしましゅぅ!﹂
正気を保とうとしているのか、カレンの陰部にかじりつく少年。
その刺激が彼女を絶頂に導く。
﹁い、いっちゃううううう!﹂
その快感の断末魔が、彼女の舌を通じて少年に伝わる。
﹁ぼ、ぼくもぉお!﹂
少年の顔はカレンの吹いた潮をかぶり、カレンの胸は少年の出し
303
た精液があふれた。
荒い息をしながら少年に声をかけるカレン。
﹁うふふ、おねーさん、ボーヤのこと気に入ったすよ﹂
﹁ほんとですか!﹂
子犬のように喜ぶ少年の体の向きを変え、顔を向き合わせる。
そのまま唇を重ね、舌で少年の口を犯す。
先ほどまで自分の肛門を貫いていたそれを、ためらいなく受け入
れる少年。
唇が離れると、カレンは淫らに笑う。
﹁オチンポがパワーアップしたら一生かわいがってあげるっす。オ
マンコも入れ放題出し放題っすよ﹂
﹁ああ!カレン様!﹂
感極まったようにカレンに抱きつく少年。
しかし彼は知らない。
充分の寿命は残りわずかであることを。
その残り少ない命を、カレンが絞りつくす気でいることを。
﹁たのしみっすねぇ﹂
﹁はい!﹂
︵いや、ホント、楽しみっすよ。この子、エッチの才能ありそうだ
し。何よりこの子の生命力の迸り、搾り取るのが︶
304
新生活開始
︵遅いなあ、冴子さん︶
時刻は午前10時を回ったころ。
甲児はACTが用意した、冴子と二人で住む新居で冴子を待ち続
けていた。
運び込まれた私物は既に梱包を解いて出してある。
ベッドの下のお気に入り
は入っていなかった。入
といっても着替えとお気に入りの本とCDぐらいのものだが。
︵さすがに
っていても困るが︶
最低限の家具はACTが用意してくれていたため、どうにか自分
の部屋は形になった。
そうなると気になるのは冴子の部屋である。
どんな部屋か見てみたい。
一応荷物は運びこんであるはずだ。
︵引っ越しが終わってないなら、できる限り手伝ってあげた方がい
いよね︶
自分に言い訳して冴子の部屋のドアに手をかける。
留守中に無断で愛する女性の部屋に入ることに、背徳感を覚えな
がらドアを開けた甲児は絶句した。
女性らしさを全く感じさせない部屋だった。
というより、住んでいる人間の匂いや気配、ぬくもりがまったく
感じられない。
寒気がするほど殺風景な部屋だった。
おいてある家具が粗末というわけではない。
305
それでもその部屋は
︵⋮⋮︶
牢獄
を連想させるに十分な何かがあった。
見てはいけないものを見てしまった、胸のうずきを抱えながら甲
児はドアを閉めた。
冴子の今までの人生、理解したつもりでいたが、まだまだ甘かっ
たことを思い知らされた。
視界の片隅を監視カメラがよぎった。
︵かごめかごめ、か∼ごのな∼かのと∼り∼は︶
昔聞いた童謡が脳裏によみがえる。
自分たちは籠の鳥。
一生出ることはできない。
それでも。
二人なら耐えられる。
二人でなら幸せになれる。
そう信じたい。
一人にしないで、と泣く冴子の姿が浮かぶ。
︵一人になんかしない︶
決意を新たにする少年。
﹁さて、冴子さん徹夜で疲れてるだろうし、なんか作っておくか﹂
少年の独り言は、運命へのささやかなる宣戦布告であったかもし
れない。
ただその戦意は、ほとんど空の冷蔵庫の中身にあえなく折れそう
306
になった。
おそらく転居のため、中身を処分したのだろう。
残っているのはわずかな根菜だけ。
彼の料理の腕前では何も無いのと同じだ。
︵弱った、どうしよう。未だ外出の許可ももらえてないし︶
どういうわけか自分にはヒメーラをひきつける何かがあるという
のが、ACTの考えだ。
そのため訓練が一応の完了を見るまでは、甲児はACT本部の外
に出ることを禁じられていた。
そのため買い物にでることもできない。
何かないかと悩んでいた、その時鍵を開ける音がした。
︵帰ってきた!︶
先ほどまでの悩みも忘れ、出迎える甲児。
そして無防備な獲物は黒い美獣の餌食となる。
冴子の心は荒れていた。
仕事の後はいつもこうだ。
血の匂い、骨肉を切る感触に感じる陶酔と嫌悪。
獲物を仕留める快感、命を奪う罪悪感。
そのアンビバレンツな感情が彼女の心をかき乱す。
特に昨夜のような、人の心を踏みにじって楽しむような敵に遭遇
した時は最悪だ。
自分の魂すら汚されたような不快感を感じる。
サングラスに隠された視線はそれだけで人を殺せそうなほど鋭い。
307
殺気すら放ちながら、まだ慣れない自宅に帰ってドアを開ける。
そしてその美しい野獣は新たな獲物を見つける。
﹁あ、お、お帰りなさい!冴子さ⋮⋮﹂
鋭い北風の中から、暖かい部屋の中に入ったような安心感。
それも旨そうな御馳走が待っていた。
自分を出迎える少年の言葉を最後まで聞かずに、右手で彼の頭を
つかみ強引に唇を奪う。
﹁さ、さえ、むぐ﹂
顔を真っ赤にして身を離そうとする少年。
しかし獣はそれを許さない。
右手でがっちり彼の頭を固定する。
少年の脚の間に自らの右足を入れ、太腿で既に固くなっているペ
ニスを刺激すると同時に、脚の動きを封じる。
自分の体を押し返そうとする少年の右手を左手でつかんで、自ら
の乳房にかぶせる。
彼のペニスがさらに熱く硬くなるのがわかる。
左手を軽く握り、少年の手ごと乳房を揉むと、少年も手を動かし
始めた。
乳房に快感と軽い痛みが走る。
舌を伸ばし、少年の口中をなめまわす。
彼の呼吸が激しくなる。
たっぷり味わった後、彼を解放してやる。
透明な涎が糸を引く。
﹁ただいま。甲児君﹂
﹁さ、冴子さん⋮⋮﹂
308
甲児がペニスを冴子の太腿にさらに押し付けようとする。
冴子は脚をほどいて、甲児と距離をとった。
﹁あ⋮⋮﹂
カオ
赤くなり目を潤ませながらも、失望したような表情を見せる甲児。
その表情を見て挑発的な笑みを浮かべる冴子。
﹁おなかすいちゃった﹂
﹁ご、ごめん。何か作ろうかと思ったんだけど⋮⋮﹂
﹁いらないわ。そんなもの﹂
少年の謝罪を素っ気なく切って捨てる。
﹁甲児君、貴方を食べたいの﹂
﹁え⋮⋮﹂
一瞬、恐怖の表情を浮かべる甲児。
暴走という言葉が脳裏をよぎる。
人食いの怪物に襲われた恐怖がよみがえる。
︵冴子さんの様子が変だ。まさか⋮⋮︶
その恐怖の表情は、攻撃的になっていた冴子の肉欲を刺激した。
サングラスの下の眼が妖しく光る。
蛇に睨まれた蛙のように動けない。
再び甲児の唇を奪う。
獲物に食らいつく獣のようだ。
甲児はもう全く抵抗しない。冴子のなすがままだ。
309
情感をこめて口を吸ってから、余韻を残して離れた。
﹁欲しいの、貴方が欲しいの﹂
サングラスをはずすと肉欲に潤んだ黒ダイヤの眼が現れる。
甲児の背筋にゾクリとしたものが走る。
﹁まだシャワー浴びてないの。背中流してくれる?﹂
甲児はうなずくしかできなかった。
洗面所を兼ねた脱衣所は何とか二人が入れる広さだった。
﹁ふふふ。ここには監視カメラはないわ﹂
そう言って笑った冴子は、甲児の着ていたシャツを引き抜くよう
に脱がす。
露わになる少年の胸。筋肉も脂肪も薄い。
﹁あぅ﹂
﹁うふふ、男の子でも乳首って感じるのね﹂
冴子に乳首を舐められて声を上げる甲児。
冴子の唇と舌は鳩尾から臍へと降下する。
同時に彼女の手はズボンのベルトに手をかけ、あっという間に少
年を裸にしてしまった。
﹁あぁ、すごい⋮⋮﹂
310
露わになったペニスが猛り狂っているのを見て愛おしげにため息
をつく冴子。
先端に軽くキスをして、さらに一舐めした後、口を開けて咥えこ
もうとする冴子。
︵!︶
その唇の向こうから姿を見せた白い歯が、甲児に最初に出会った
ヒメーラの姿を思い起こさせた。
わずかに腰を引く甲児。構わず食らいつく冴子。
﹁ああ!﹂
蠢く舌の感触、甘噛みしてくる歯の感触、口の中の熱さ。
それらが甲児を酔わせる。
いつしか無意識のうちに腰を振り始めた甲児。
すぐに絶頂に導かれる。
﹁!﹂
冴子の口の中に熱い液体があふれる。
啜って呑み込む。
胃の中が燃えるように熱い。
空っぽになっていた胃が、火の入ったエンジンのように燃え上が
る。
﹁うふふ、美味しいわ、甲児君のミルク。これからは毎朝飲ませて
ね﹂
311
上目遣いでねだる冴子に、涎を垂らして虚ろな表情でうなずく甲
児。
を和らげた。
正直、朝食はもうこれだけでもいいのでは?
飢え
そう思えるほどの量と熱であった。
同時にその量と熱は冴子の凶暴な
気分がだいぶ落ち着いた。
攻撃性がおさまり、衝動のスイッチが切り替わる。
﹁さあ、汗を流しましょう﹂
後ろを向いて甲児に背を見せる。いや正しくは⋮⋮
︵うふふ、見てるわ⋮⋮︶
体の一か所に甲児の熱い視線を感じながら、服を脱ぎ始める冴子。
まずは上半身から裸になる。
そして最期の一枚となった飾り気のないショーツに手をかけた時
点で、いったん動きを止める。
肩越しに振り返り、甲児を挑発するように問いかける。
﹁甲児君、私のお尻好き?﹂
﹁は、は、はい!完璧です!﹂
何が完璧なのか、文脈がおかしい。
しかしその答えは冴子を喜ばせる。
﹁そう、ありがとう﹂
ショーツを一気に下した。
甲児に見せつけるように、尻を突き出した形で。
312
立ち上がりながらさらに甲児を挑発する。
﹁私のお尻は甲児君のものよ。完璧なお尻堪能してね﹂
尻を振って甲児を誘う。
唸り声をあげて甲児は後ろから冴子に抱きついた。
冴子は荒々しく自らの乳房をつかもうとする少年の手を、抑える
ようにしながら乳首へと導く。
﹁あ、あン、痛いわ、優しくして⋮⋮﹂
︵これじゃ私⋮⋮とんだ淫売だわ⋮⋮でもたまには初めての時見た
いに荒っぽくして欲しいの⋮⋮︶
雌
の本能に従い、少年に抗うふりをして、逆に少年の中の
を呼び起こそうとする冴子。
アナル
雄
しかし下半身、正確に言うと肛門から感じた感触に本当に慌てる
ことになる。
﹁ちょ、ちょっと!甲児君!そこは違うわ!﹂
﹁違わないよ!冴子さんは僕のものなんだ!お尻だって僕のものな
んだ!﹂
アナル
冴子の抗議を一蹴し、その肛門をペニスで貫く甲児。
既に始めての時に甲児の触手に蹂躙された排泄器官は、既に快楽
器官として開発されていた。
﹁おごぉ!だ、駄目ぇ!前に!前に入れてぇ!あひぃ!﹂
﹁わっ﹂
肛門の妖しい感触に腰が抜ける冴子、そのまま体重を支えきれな
313
かった甲児ごと尻もちを突く。
その衝撃でさらに深く貫かれる。
﹁ひぐぅ!﹂
弓なりになってのけぞる冴子。
アナル
バランスを崩して左に倒れそうのなるのを甲児が支える。
肛門と左胸で支えられる女体。
甲児の右手が動く。
冴子の右腕を肩に担ぐようにして、冴子の体を固定する。
そのまま唇を奪う。
﹁ん、むぐ、んあ、あ﹂
勢いに流されて甲児の下を受け入れ、その首を抱きかかえる冴子。
﹁!んぎひぃ!﹂
甲児の右手がが冴子の秘書を急襲した。
そのまま茂みをかきむしる。
同時に冴子を下から突き上げる。
弓なりになって冴子の唇が甲児から離れる。
そのまま嬌声を上げ続ける。
﹁ひぃ!いひぃ!おま、んこぉ!いひぃ!おしりもぉ!おひりぃも
ぉ!きちゃうぅきちゃうぅ!﹂
まるでギターを弾くように冴子を責める甲児。
動きを止めずに冴子の右の乳房に食らいつく。
314
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼!!!!!!!﹂
声にならない悲鳴を上げながら潮を吹く冴子。
しかし甲児の責めは終わらない。
﹁ひやぁ!こふじくん、やめてぇ、わらひこわれちゃうぅ!まへに
ぃまへにだひてぇ!﹂
もうまともに言葉にならない冴子の哀願。
それが甲児の欲望を加速させる。
﹁ひい!﹂
冴子の胎内に指を深く突き入れる。
指が引っ張られたような痛みを感じた直後。
﹁!﹂
快感が爆発した。
﹁おごほぉおお!﹂
・・・・・・・・・
白目をむいて痙攣を始める冴子。
細長い蛇のようなものが胎内を蹂躙している。
甲児も膣や子宮と腸の壁越しにそれを感じていた。
自分の指が肉の蛇と化して冴子を蹂躙しているのを。
それでも甲児の腰は止まらない。
貪欲に快楽を貪る。
315
今はそのことしか考えられない。
﹁で、出る!﹂
・・
﹁あ、あはあ!でてるぅ!きてるぅうううう!﹂
アナル
冴子の肛門と膣口から白濁液があふれた⋮⋮
肉欲の宴が終わる。
残った力でぐったりした冴子を支えながら、その秘所から指を抜
く。
︵⋮⋮︶
普段と全く変わりない指だった。
精液としか思えない粘液にまみれていることを除けば。
振り払おうとするその手を冴子の手が抑える。
二人の眼が合う。
﹁⋮⋮﹂
とても自然に唇が重なった。
甲児は不安も恐怖も泣き言も、全て冴子に吸い取られていくよう
な安心感を覚えた。
二人の唇が離れる。
見つめ合う二人。
ふと冴子が悪戯っぽく笑う。
﹁もう、やめなさいって言ったのに、しょうがない子ね﹂
316
そのまま甲児からノロノロと離れ、ボディシャンプーのボトルを
手にする。
﹁ほらそこに座って﹂
﹁う、うん﹂
バスタブを指差す冴子にうなずく甲児。
その力を失っていたペニスにボディーシャンプーがかけられた。
﹁洗わなくちゃ汚いわ、って、あら﹂
再び首をもたげ始めたペニス。
甲児の顔を見れば自分の胸を凝視している。
再び悪戯っぽく笑う。
﹁うふふ、ここで洗って欲しいの?﹂
自分の胸にボディシャンプーをかける冴子。
﹁きゃあ﹂
甲児のペニスが勢いよく屹立した。
それを見て、うれしい悲鳴をあげる冴子。
﹁私のおっぱいも完璧?﹂
﹁は、はい!冴子さんは完璧です!﹂
﹁うれしいわ、えい!﹂
﹁ああ!﹂
317
冴子の巨乳が甲児のペニスをはさんで扱きだす。
すぐに甲児の腰が動き出す。
胸の谷間を犯され、心臓が子宮になったように感じる冴子。
再び性感が高まってゆく。
﹁このまま出しなさい。汚いものを絞り出すのよ﹂
﹁ああ!冴子さん!﹂
二人の動きが激しくなる。
自分の胸で快感を必死に貪る少年を愛おしげに見る冴子。
﹁いく!逝くよ、冴子さん逝く!﹂
その叫びに愛おしさが最高潮になる。
甲児の精液の爆発を、冴子はその胸で潰した。
﹁⋮⋮﹂
どことなくもったいなさそうにしながら、胸の精液とボディシャ
ンプーをシャワーで洗い流す冴子。
それが終わると甲児のペニスに水流を向ける。
今度はまだ力を失ってないペニスを見て口元がほころぶ。
バスタブと反対の壁に背を預け。指で秘裂を開く。
とぽんと、愛液の垂れる音がした。
﹁さあ、甲児君、来て。貴方のすべてを私にちょうだい﹂
︵全部受け止めるから。愛も憎しみも欲望も恐怖も︶
淫らに男を誘う冴子の姿は、どこか聖女のような清らかさを感じ
させた。
318
母に飛びつく子供のように、甲児が冴子の胸に顔をうずめた。
そのまま冴子の胎内に侵入する。
﹁は、んん、あぁ﹂
穏やかな快感にため息をつく冴子。
甲児が顔を上げた。
再び二人の唇が重なった。
319
嫉妬 1︵前書き︶
新年明けましておめでとうございます。
お待たせいたしました。
正月休みまでゆっくりできる時間を取れませんでした。
320
嫉妬 1
嵐のような肉欲の時間が終わり、穏やかな時間が訪れた。
恋人たちは一人用の狭い湯船の中、並んで膝を抱えるように座っ
て湯につかっていた。
﹁冴子さん、何か嫌なことあったの?﹂
﹁何でもないわ、徹夜でハイになってただけ﹂
誤魔化そうとする冴子の手を、湯の中で強く握る甲児。
﹁話してよ、なんでも﹂
冴子を見る甲児の眼には強い光が宿っていた。
今の自分は弱い。
だがいつかは冴子と肩を並べて戦ってみせる。
その決意を秘めた眼は冴子の心を動かした。
﹁いやな奴相手の仕事だったのよ﹂
﹁いやな奴?﹂
﹁そ。嫉妬蜂って呼ばれていてね。人の心と幸せを踏みにじって楽
しんでるみたいな⋮⋮﹂
・・
血のように濁った赤い空の下、異形の獣たちが宙に浮かぶそれを
見ている。
321
・・
それは泡のような透明な球体が、葡萄の房のように集まったもの
だ。
その全ての泡一つ一つの中で、男と女が凌辱を受けていた。
凌辱を行っているのは男ではない。
昆虫の複眼のような目を持ち、尻から蜂の腹部を思わせる尾を生
やした、異形の女達だった。
異形の女達︱︱以降、蜂女と呼ぼう︱︱の群れはその女性器で男
のペニスを搾り取り、股下を通してペニスのように前に突き出した
尾を使って、女性器と男女の肛門を貫いていた。
ある泡の中では、中学生、もしかしたら小学生かもしれない少年
少女が襲われていた。
一人の蜂女が少女にのしかかって、その尾で少女を貫き、もう一
人の蜂女が後ろから少年を羽交い締めにして、そのペニスを握って
いる。
﹁いひぃ!おマンコぉ!おマンコもっとついてぇ!﹂
﹁遠藤⋮⋮﹂
最初は抵抗していた少女だったが、今は快楽を求め、みずから腰
を振ってよがっている。
その有様を見て絶望の表情を浮かべる少年。
そして蜂女たちはその少年の様を嘲笑う。
﹁おやあ?彼女寝取られて、しかもレイプされておっ立ててるわ、
この変態﹂
目の前で少女の痴態を見せつけられ、純真な少年のペニスは興奮
322
していた。
﹁ち、ちがっ、あああ﹂
少年の肛門が貫かれた。
蜂女の尾から滲み出た液体が直腸の粘膜から吸収され、少年の脳
を狂わせる。
﹁違わないわよ。この男の屑が!ほら、ケツマンコ犯られながら手
コキでいっちまいな!﹂
﹁ああ!熱い!あついよぉ!﹂
蜂女の尻が前後に振られ、少年の腸を蹂躙する。
同時にペニスが乱暴にしごかれる。
妖しい快楽にむせび泣く少年。
﹁ほら彼氏射精するとこ見ていっちまいな﹂
﹁駄目ぇ!また逝くぅ!﹂
﹁でるぅ!﹂
絶頂の悲鳴を上げる少女の体に少年の白い精液が降りかかる⋮⋮
別の泡では姉と弟らしき二人が襲われている。
いきり立つ幼いペニスを少女に見せ付けるように、少年の肛門を
背面座位で犯す魔女。
﹁おねえちゃん!おれ気持ち良い!お尻気持ち良い!﹂
﹁おやおや、どうするぅ?おねえちゃん?このままだと弟クン、オ
323
カマの道にまっしぐらだよ∼﹂
﹁いやあ!お願い!弟に手を出さないでぇ!私が代りにするからぁ
!﹂
﹁麗しい姉弟愛だねぇ?﹂
少女を羽交い締めにしている蜂女が舌なめずりする。
﹁よし、その姉弟愛に免じてチャンスをあげよう﹂
﹁チャンス?﹂
﹁そ、弟クンを男にするチャンス﹂
蜂女の尾が少女の太腿を刺した。
赤い血が一筋流れる。
﹁痛!あ、あああ!﹂
痛みに歪む少女の表情が、すぐに情欲に蕩けきった表情に変わる。
自ら膨らみきる前の胸をさらけ出し、スカートの下に手を伸ばす
少女。
﹁あ、ああん﹂
﹁何勝手にマンズリしてんだよ!そこに弟のチンポがあるだろうが
!﹂
少女の顔を無理やり弟の方に向ける。
﹁あ゛ぁ゛∼、お゛とうどのぢんぽ∼﹂
酩酊したような少女の声。
その視線が弟のペニスに釘付けになる。
324
少女の手が加速する。
﹁だからマンズリするなっつてんだろ!そいつを入れんだよ!マン
コに!﹂
少女の眼に理性の光が戻った。
それでも目はペニスから離れない。
﹁い、いや!そんな⋮⋮だめよ⋮⋮だめ﹂
拒否の言葉が弱々しくなってゆく。
反比例して甘いと息が多くなる。
弟を犯している蜂女が嘲笑って荒腰を使う。
﹁遠慮すんじゃないよ!ホラ!ホラ!ホラ!﹂
﹁ああ!あふぅ!あん!いいぃ!﹂
弟の体が弾むように上下してペニスが魚のように跳ねる。
少女の眼が跳ねるペニスに魅せられる。
わずかな時間で性感帯として開発された肛門がえぐられる。
﹁でちゃうぅ!でちゃう!﹂
ペニスから白いしぶきがあがる。
その光景は少女から最後の理性を奪った。
﹁けんじぃ!﹂
飢えた獣のように弟に襲いかかる姉。
後ろの蜂女ごと弟を押し倒し、弟のペニスを掴んで己の秘裂へと
325
導く。
﹁痛!﹂
姉の秘裂から破瓜の鮮血が流れる。
それを見て囃したてる蜂女達。
﹁は∼い!処女膜貫通、童貞喪失おめでとう∼!﹂
﹁あはははは!姉と弟でやっちゃった∼!お前らこれで立派なケダ
モノだよ∼!変態だよ∼!﹂
嘲笑も耳に入らず姉弟はお互いを貪りあう。
﹁おねえちゃん!いい!きもちいいよぉ!またでちゃうぅ!﹂
﹁だめぇ!がまんしてぇ!まんこしてぇ!もっともっときてぇ!い
っしょにいったら、だしていいからぁ!にんしんしてもいいからぁ
!﹂
懸命に尻を振って弟の精を絞ろうとする姉の後ろから、もう一人
の蜂女が忍び寄る。
その尾針は姉の肛門を狙っていた⋮⋮
また他の泡では、獣のように唸りながら、一人の男が二人の蜂女
を犯している。
﹁ああん!いい!奥までガンガン来るぅ!﹂
﹁こっちもぉ!こっちも来てぇ!子宮まで首突っ込んでぇ!﹂
326
仰向けになった蜂女を貫きながら、仁王立ちになったほかの蜂女
の秘所に顔を擦りつけている。
その右手は仰向けの蜂女の乳房を、左手は仁王立ちの蜂女の尻肉
を揉みしだいている。 そしてその痴態を絶望に満ちた目で見つめるのは、ウェディング
ドレスを着た花嫁だ。
そのけがれなき白い衣装の上から、荒縄で縛りあげられ、床に転
がされている。
﹁お願いぃ、たけしぃ、正気に戻ってぇ、やめてよぉ⋮⋮﹂
力なく哀願する女の白いドレスのすそを、三人目の蜂女がめくり
あげる。
露わになった白い下着は半透明になるほど濡れていた。
﹁あはははははは!こんなに濡らしちゃって!旦那様の絶倫ぶりに
惚れ直したかい!﹂
﹁ち、ちがっ、私もたけしもさっきの針のせいで⋮⋮﹂
﹁言い訳すんじゃないよ!﹂
﹁ひぃ!﹂
蜂女が花嫁の尻を叩く。
全身を痙攣させて反応する花嫁。
﹁ははははは!スパンキング気持ち良いかい!この変態花嫁!﹂
﹁いやー!ちがっ!!ああーん﹂
抗議する花嫁の尻が再び音を立てる。
花嫁は痙攣して潮を吹く。
327
ビッチ
﹁ふん、いっちまいやがった。カマトトぶってんじゃねえよ、この
雌犬が﹂
振り上げた蜂女の手が変貌する。
五本の指の先から鎌のように鋭い鍵爪のような針が飛び出した。
その手を振るう蜂女。
花嫁を縛っていた荒縄がバラバラに切り裂かれた。
ウエディングドレスとともに。
﹁ああ!﹂
もはや彼女が来ている物は半透明の花嫁のヴェールのみ。
露わになった裸身を隠そうとする、その手がわずかに自らの体に
触れる。
﹁あン﹂
体に走る電流。
両手が自分の意志の制御を離れたように、肉体の愛撫を始める。
﹁あふぅ、ひゃん﹂
両手が止まらない。
屈辱と羞恥で顔が赤くなる。
それでも両手は止まらない。
涙が一層あふれる。
蜂女達はニヤニヤしながら花嫁の痴態を見ている。
仁王立ちの蜂女が、股間に埋まっていた男の顔を両手でつかむ。
﹁うふふふふ、どーするぅ?奥さん、旦那さんが恋しいって泣いて
328
るよー?﹂
無造作に男の首をひねる。
男の顔が自らの妻となるはずだった女性に向けられる。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
何の感情も見せない。
男はすぐに蜂女への奉仕を再開した。
﹁た、たけしぃ⋮⋮﹂
涙の花嫁。
しかしその手は止まらない。
悲しみから逃避しようかというように、快楽を加速させる。
﹁あ、あん、た、たけしぃ、ひぃ、あんあああん、あひぃ﹂
涙を浮かべながら、自らを愛撫する花嫁。
その悲しき自涜行為を蜂女が嘲笑う。
﹁おやおや、可哀そうに、すてられちゃったね∼、あんた。旦那様
はあんたよりもあたしらのマンコが良いってさ。だから新しい旦那
さまを紹介してやるよ、あっち見な﹂
胡坐をかいた脚の間に花嫁の尻を納めるように座らせる蜂女。
その正面には異様な光景が広がっていた。
シャボン玉のような皮膜が壁いっぱいに広がり、液晶モニターの
ように別の場所を映していた。
画面には異形の怪物の群れが、涎を垂らし、そそり立ったペニス
329
を誇示し、またはペニスのような無数の触手をうねらせていた。
﹁ほうら、みんな、あんたのことが気に入ったってさ﹂
﹁あ、いやぁ﹂
最初に感じたのは恐怖と嫌悪。
しかし、獣たちのペニスや触手を見ているとそれらの感情が消え
ていき、代わりに肉の疼きが強くなってゆく。
﹁あ、ああああ﹂
快感と絶望の混ざった喘ぎ。
花嫁の股間をまさぐった蜂女が嘲笑う。
﹁あはははは!さっきよりも濡れ濡れじゃないか!新しいお婿さん
たちは気に入ったかい﹂
違う、とは言えなかった。
もはや肉の疼きは耐えられないところまで来ていた。
思い描いていた幸せな未来も、二人で歩んできた過去も、全て絶
望と肉欲で汚されてゆく⋮⋮
﹁気に入ったんなら、ちゃんとプロポーズするんだよ!皆さん淫乱
な私をお嫁さんにしてくださいってね!﹂
もはや蜂女の言葉に抗う気力もない。
︵もうどうなってもいい⋮⋮︶
﹁み、皆さん、い、淫乱、淫乱な私を、お、お嫁さんに、お嫁さん
にしてくださいーっ!﹂
330
﹁よく言えましたあ!﹂
﹁あひいいいいい!﹂
プロポーズ
ためらいながらも最後は押し流されるように、屈辱の求婚をした
花嫁の秘裂を蜂女の尾針が強襲した。
怪物たちが吼える。
それは歓声か、それとも怒りの叫びか。
それらを一切無視して蜂女が花嫁を責める。
﹁さあ、続けるんだよ!おチンポ様大好きです!どんなおチンポ様
でも中出ししてくださいって!﹂
﹁おおおおちン、ぽさま!だいすき!おちんぽさまああああ!﹂
もはやそこには正気の人間はいなかった⋮⋮
﹁あひぃ、いい!もっともっとぉ!﹂
泡の塊の上では、女が一人よがっていた。
両手で胸を揉みしだき、髪を振り乱し、白目をむいて、涎を垂ら
しながら喘ぐその姿はおぞましいまでに淫らだ。
女の尻から蜂の腹のような器官が前に伸びて、女の性器を貫いて
いる。
女が体をゆするたびに、その蜂の腹も収縮を繰り返す。
この女こそ全ての蜂女の本体にして生みの母、すなわち女王蜂で
ある。
331
この女は今、分身たちと同調することにより感覚を共有している。
すなわち数十人分の情報を脳内で処理し、数十人分の快楽を味わ
っているのだ。
それも犯す者と犯される者の快楽を同時に。
人間であれば脳の限界を超え発狂しているであろう。
さらにはその光景を、泡のスクリーンに映して傘下のヒメーラた
ちを楽しませている。
一体その脳の構造はどうなっているのやら。
女王蜂に異形の虫たちが群がる。
頭部がデフォルメした女体のような蜂に似た虫だ。
蜂女達の幼生である。
この虫が生長して蜂女となるのだ。
怪虫たちがその女性器に似た口で、女王蜂の乳首を咥えこむ。
女王蜂の乳首をペニスに見立てると、騎乗位で男を犯しているよ
うに見える。
﹁あぁん、坊やたちぃ、おっぱい飲みたいのねぇ、いいわぁ、吸っ
てぇ﹂
乳首から振動が走り波打つ巨乳。
﹁いい!いいわぁ!キュンキュン来るぅ!来ちゃうのぉ!﹂
女王蜂の肉体がさらに激しく揺れる。
雌の匂いがさらにその濃さを増す。
それに釣られたのか、怪虫の一匹が女王蜂の両脚の間に入り、そ
の尾針を女王蜂の秘裂に伸ばす。
332
﹁駄目ぇ、入れちゃ駄目ぇ﹂
甘い声で制止する女王蜂。
怪虫は無視してさらに尾針を伸ばす。
あと少しで尾針が膣口に届くその寸前。
﹁駄目だって言ってるだろが!﹂
一瞬でアヘ顔が般若の形相となり、股間の怪虫を引きちぎった。
胴体のほぼ半分で引き千切られた怪虫は地に落ちると、周囲のヒ
メーラに寄ってたかって喰い尽された。
﹁まったくもう、冷めちゃったじゃない﹂
もう、快楽に狂っていた痴女の姿はない。
冷酷な女支配者がそこにいた。
胸にたかっていた怪虫も、もう彼女から距離をとっている。
﹁やめやめ、今日はもう店じまい﹂
手を振って傘下の同胞に解散を命じると、名残惜しそうにノロノ
ロと去ってゆく。
を実況していたのは単なるサービス
︵ま、いいわ。今日は連中に下げ渡す分を入れても、良い獲物がい
くつか手に入ったし︶
だ。
家畜の調教
宣伝
先ほど彼らに
ではない。
いうなれば
女王蜂の閥にいるヒメーラは多いが、その権力は絶対的なもので
333
はない。
飴
飴と鞭
宣伝
だった。
の使い分けが必要だった。
である、家畜の
やはり人間の社会と同様
今回はそのうち
彼ら、肉欲の権化となった男女はみな、ヒメーラの家畜として、
快楽を産む道具として扱われ、最後には餌食となる運命なのだ。
︵特にあの女、山奥の教会で二人だけの結婚式なんて気障なことし
ていたあの女、上手くやったようだし︶
上手くやったというのは、蜂女に尾針の媚薬を弱めに調合させ、
精神が完全に崩壊する一歩手前で止めたという意味である。
おそらく時間をおけば正気を取り戻すであろう。
まだまだ嬲り甲斐があると舌舐めずりする女王蜂。
まわ
︵そうだ、今度は希望者に輪姦させた上で、いちばんグロい奴の奴
隷妻にしてやろう。ライスシャワーの代わりにザーメンシャワーを
かけてやる︶
邪悪な楽しみに心を躍らせていると、分身から通信が入った。
それも危険を知らせる緊急通信だ。
︵こいつは・・・・・・気障女のところか!︶
通信を送ってきたのは、先ほどまで苦しめ方を考えていた花嫁を
襲っていた分身たちだ。
︵一体何事よ!せっかくの玩具に何かあったら承知しないからね!︶
おもちゃ
分身のことより花嫁の方が気になるらしい。
しかし、分身と情報を共有すると、女王蜂の脳裏から花嫁のこと
334
は消え去っていた。
﹁こいつは!﹂
分身が最後に送ってきた情報。
それは自らを一刀のもとに切り捨てる、黒くしなやかな美しい獣
の姿。
そしてその獣から匂ってくる臭い。
﹁!!!!!﹂
その臭いは子宮を直撃した。
女王蜂は、分身の肉体を切り裂く金属の刃の感触と、その臭いに
より絶頂に達していた。
雄
の匂いだった。
﹁はあ、はあ、い、今のは⋮⋮﹂
間違いなく
それも今まで嗅いだ事のない、しびれるほど濃厚な臭い。
そして彼女は思い出す。
不遜にも自分たちを狩る組織︱︱ACTに極めて純血種に近い雄
がいるという情報。
そしてその情報を売り込みに来た同胞の情報屋のこと。
﹁ガセじゃなかったのね⋮⋮﹂
腕は確かなのは知っている。
しかし人格的にあの女は信用できない。
そのため女王蜂はあまり彼女と取引をしたことがない。
今、女王蜂はそのことを後悔していた。
335
その
雄
についての情報、そしてなぜあの女からその
匂いがするのか。
知りたいことはたくさんある。
女王蜂は情報屋と久々に取引をする決心を固めた。
﹁胡散臭いけど仕方ないわね、本っ当に胡散臭いけど!﹂
大事なことなので二度言いました。
雄
の
336
嫉妬 2︵前書き︶
大変お待たせして申し訳ありません。
今年の忙しさは異常だ⋮⋮
337
嫉妬 2
冴子の目の前には赤くぼんやりと光る、半透明の膜が広がってい
る。
これはヒメーラとの混血である彼女だけに見える、空間の境目。
頑迷な研究者どもは認めようともしない。
空間を支配して自らに都合よく作り替える生物の存在など。
しかし彼女は知っている。
あの膜の向こうはヒメーラの支配する魔界、現実から切り離され
た悪夢の異次元空間なのだ。
呼吸を整え精神を集中する。
すぐに雑念が消えて心と感覚が鋭く冴え渡る、その刹那。
﹁!﹂
膜を手にした刀で抜き打ちに斬る。
赤い光のなかに白銀の線が走る。
即座にその線に突進する。
この線は空間の境目についた傷、﹁こちら﹂と﹁あちら﹂の突破
口。
わずかに開いた突破口に滑り込むように侵入する。
いつもやっていることだ。
しかし今回は違った。
冴子が触れると﹁傷﹂は大きく口を開けた、まるで風に吹かれた
カーテンのように。
﹁?﹂
338
わずかな違和感。
背後のざわめき。
それらを意識の片隅に追いやる。
全ての音が消える。
大きく開いた入口に飛び込む。
同時に標的を確認。
三体。
標的A︱︱女性を背面座位で凌辱中。
標的B︱︱男性の腹の下。
標的C︱︱仁王立ちして男性の奉仕を受けている。
一足で間合いを詰める。
踏み込んだ左足が地に着くと同時にAの首をはねる。
そのまま勢いを殺さず左足を支点に方向転換。
Bの向かって左に飛び込みながら袈裟がけに斬りおろす。
恐怖のせいか一瞬硬直したBの体が斜めにずれる。
刀を返して振り向きざまに横たわるCの頭部を、アッパースイン
グで切り飛ばそうとする。
しかしCが勢い良く腹を突き上げ、男性を冴子に向かって突き飛
ばす。
男性を斬殺するわけにはいかないので、冴子の動きが一瞬止まる。
そこを男性の体の陰から狙い撃つように、Cの尾針が冴子の眼に
向かって伸びる。
命中の寸前わずかに顔をずらしてやり過ごした尾針に、横から咬
みつく冴子。
咬み千切りながら冴子が宙に飛ぶ。
両手を地につき、逆立ちになったCが蹴りを放って迎撃する。
339
冴子が空中で体をひねって、腕を思い切り伸ばして突きを放つ。
まるでボクシングのクロスカウンター。
重力に引かれて加速した冴子の刀は、Cの脚を滑るように落ちる。
刀が深々とCの秘裂を貫いた。
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼゛゛゛!!!﹂
不気味な断末魔を上げてCが絶命する。
2秒弱の間に戦闘は終了した。
唐突に音が戻ってくる。
﹁⋮⋮﹂
改めて状況を確認する。
隊員たちが男女に銃を向けながら近付く。
要救助者に対する扱いと思えないが、仕方ない。
被害者が一瞬後には加害者に、怪物に襲われたものが新たな怪物
に変わって他人に襲いかかる。
ヒメーラとの戦いでは珍しくもない、よくあることである。
﹁ぐぁはがぶぃぎぃいい!﹂
そう︱︱まったく珍しくもない。
今、目の前で起こっている事態のように。
﹁ヴァふぁああやがガギが!﹂
﹁獣化を確認!殲滅せよ!﹂
地に横たわっていた男が耳障りな奇声を上げると、男の両目を突
340
き破り、カミキリムシの触角のようなものが飛び出てきた。
顎が二つに割れ昆虫の大顎のように変わる。
その縦に割れた新しい口には鮫のような牙が並んでいる。
両腕が裂けて二対の蟲の脚となる。
パンパンに膨れ上がった筋肉に、被さった黒光りする外骨格が弾
丸を弾く。
百足の甲羅のようになった腹筋がめくれ上がって前に伸びる。
﹁!﹂
隊員が手にしたウッドペッカーを盾にして身を守るが、勢いよく
弾き飛ばされた。
百足のような怪虫となった男の腹筋が冴子に襲いかかる。
その先端︱︱頭部には勃起したままの巨根そのままの角が生えて
いる。
﹁借りるわね﹂
黒い風が囁いた。
地面とほとんど平行になった低い態勢になった冴子は、倒れた隊
員の横を駆け抜きながら、彼の腰のベルトから各党用ナイフを抜き
とった。
一閃。
百足の首が切り落とされた。
苦痛に悲鳴を上げる男の口にナイフが付きこまれた。
刃は脳にまで達している。
残心︱︱身構える冴子の前で男は仰向けに倒れた。
その姿が人間のそれに戻っていく。
341
﹁あひゃひゃひゃひゃ!﹂
けたたましい、調子の外れた女の笑い声が響く。
﹁たけふぃ∼、えっぢしよ、ねええ、えっぢ∼﹂
女が男の元に這い寄る。
舌を出し涎を垂らしながら左腕と両膝で体を支えるその姿︱︱右
手は股間をまさぐっている︱︱はもはや正気ではない。
ACT隊員たちは、ある者はため息をつき、ある者は無言で首を
振った。
サキュバスキラー
⋮⋮結局彼らは間に合わなかったのだ。
既に女には淫毒中和剤が限界近く注入されている。
それでもこの有様だ。
この女が正気を取り戻すことは二度とあるまい。
ACT研究施設ありふれた、大して価値のない研究対象として飼
殺し、それが彼女の運命だ。
もし妊娠していれば、さらに残酷な運命が待っている。
母親は出産までは大事に生かされる。
自分
しかし出産時にほぼ間違いなく死ぬ、冴子の母と同じように。
そして子供は冴子のスペアとして扱われるのだ。
﹁⋮⋮﹂
戦闘時の高揚から冷めた冴子は暗然として女を見る。
ふと女の体にまとわりつく白い布の切れ端に目が止まる。
︵⋮⋮あ︶
342
それはウェディングドレスの残骸だった。
本来なら幸福の象徴とも言える服の無残な姿が主人の運命を暗示
しているようで、冴子の胸を重くする。
いやそれだけではない。
女に正気を失わせる最後のとどめとなったのは、冴子が夫を殺し
たことだろう。
その彼女はもう自分に恨み事すらいえないのだ。
冴子の胸に黒いものが渦巻きだした。
﹁せりゃああ!﹂
京子は阿修羅一号の慣熟訓練を行っている。
縦横無尽にスネークハンドが空間を掻きまわす。
その様子に違和感を感じた香代は浦原に尋ねた。
﹁ね、ねえ、どうしたの?京ちゃん。なんか鬼気迫ってるんだけど﹂
﹁ああ、昨日の第一小隊の相手が嫉妬蜂だと知ったら、ずっとあん
な感じなんだわ﹂
﹁あー、なるほど﹂
嫉妬蜂とは蜂に似た魔女型ヒメーラの一群につけられたあだ名で
ある。
なぜか男女二人のカップルを襲って、それぞれを凌辱する性質を
持つので、恋人たちに嫉妬しているのだろうとこんな名前が付けら
れた。
クローン
外見上ほとんど同じに見えることから、未確認の魔女の使い魔=
分身と考えられている。
そしてかつて京子とその恋人を襲い、彼女に消えない傷を残した
343
仇敵である。
仇敵に一矢報いる好機を逃したと知れば、荒れてもおかしくない。
﹁⋮⋮何があったかは聞かねえよ。他人が立ち入っていい場所じゃ
ねえだろうし﹂
﹁うん。その方が助かる﹂
そっぽを向いて話す浦原に笑みを浮かべる香代。
﹁そういや、影山の転居祝いに行かないのか?﹂
﹁むう﹂
浦原のふとした質問に不機嫌になる香代。
﹁何で行かなきゃいけないのよ﹂
﹁いや、最近割と良い雰囲気だったし﹂
﹁いいでしょ別に﹂
﹁⋮⋮まあ性的に未成熟な時は同性にっでえ!﹂
﹁そんなんじゃないわよ!﹂
香代のケンカキックが炸裂した。
そのまま倒れた浦原を踏み付ける。
﹁ただ気に入らないのよ、あいつが。あたしたちは命懸でやってい
るのに、自分はHし放題の恋人と甘い生活だなんて﹂
﹁⋮⋮気持ちはわからんでもないが、どうせ今だけだぞ、あの司令
的に。あと米神踏むのやめてくれなさい﹂
﹁そりゃまあ、わかってるけど⋮⋮﹂
﹁痛い痛い!まじやめて!﹂
344
スルー
米神云々は無視、というより全く気にもしていない。
その時轟音を上げて阿修羅が標的を破壊した。
﹁わ、すごい音﹂
一瞬痙攣するようにひるむ香代。
靴の踵が更にめり込んだ。
浦原は動かなくなった。
﹁⋮⋮有難う、甲児く、あン﹂
甘えた声で甲児に礼を言う冴子。
今彼女は胡坐をかいた甲児の心音を聞くように、彼の胸に顔を埋
めている。
自分の中にたまったものをその胸に向けて吐き出し続けた。
少年は最初のうちこそ、体を硬直させたりしていたが、そのうち
受け止めるのが自分の役目とばかりに、動揺を見せなくなった。
自分を気遣うように、髪や背を撫でる彼の手がたまらなく心地い
い。
このまま眠ってしまいたい誘惑を振り切って目を開く。
すると視界の真ん中に隆々とした甲児のペニス。
﹁⋮⋮甲児君?﹂
冗談半分に睨みつける。
﹁だ、だって、冴子さんのうなじとか匂いとか⋮⋮﹂
345
慌てて言い訳するその様がなおさら愛しい。
﹁言い訳なんて許さないんだから、そんな口はこうしてやる﹂
冴子が甲児の唇を奪う。
ねっとりと舌を絡み合わせた後、体を上にずらしてゆく。
甲児の顔が自らの胸の谷間を通る。
そのまま腰を下ろし、冴子の尻が甲児の男根を呑みこもうとした
時、視界の片隅に時計が映る。
鏡に映ったバスユニットのコントローラーだ。
時刻は午後1時を回ったところ。
﹁⋮⋮!いけない!﹂
冴子が飛び起きた。
﹁え!な、なに!﹂
﹁14、じゃない2時に皆が来るの。引越祝いと甲児君の歓迎会に﹂
﹁え﹂
慌ててシャワーを浴びながら冴子が応える。
あと1時間もない。
猛スピードで汗と臭いを落とし、体を吹き始める冴子においてけ
ぼりをくらったような甲児。
浴室を飛び出た冴子を眼で追った後、切ない気持で男根を握って
一人﹃後始末﹄をしようとする。
そこに脱衣所から冴子が顔を出して無情な宣告。
﹁いっとくけどマスターベーション禁止だから﹂
﹁え!でも﹂
346
かお
手の中の男根は簡単には治まりそうもない。
そんな甲児に厳しい表情の冴子。
出し
﹁だーめ!甲児君はもう私以外に射精ちゃだめ!﹂
そこで冴子の顔が緩み、淫らな蕩けた顔になる。
体に巻いていたバスタオルを開き裸身を甲児に見せつける。
﹁今夜またお風呂に入りましょう。その時ね?﹂
﹁⋮⋮はい﹂
冴子の挑発によりさらに力を増した男根。
甲児は切なさと情けなさを抱きながら、男根に冷水をかけ始めた。
﹁?﹂
ふと誰かに見られているような気がした。
振り向いても誰もいない。
浴室の壁があるだけだ。
隠しカメラの単語が脳裏によぎる。
しかしそれらしきものは見当たらない。
まあ素人に発見できるものではないだろうが。
他のことが気になったせいか男根は力を失っていた。
首をかしげながら甲児は浴室を後にした。
甲児の見た壁には多くの水滴が付いていた。
浴室に水滴など珍しくもない。
たとえその水滴の一つが、二人が浴室に入る前から流れ落ちるこ
となくそこにあったとしても。 347
348
嫉妬 3︵前書き︶
お待たせいたしました⋮⋮
去年の忙しさはホントひどかった⋮⋮
今年は頑張ろうとおもいます。
349
嫉妬 3
ここは赤道直下の絶海の孤島。
見上げれば青い空、見渡す限りの青い海。
この島は世界中のどの海図にも記載されていない。
いやたとえこの島の上空を飛行機や人工衛星が通過したとして、
この島を発見することは不可能である。
この世に存在するはずのない島︱︱幽霊島。
それは地球から切り離された異空間にある島なのだ。
鳥も通わぬ、ましてや人間などいるはずもないその島に、一棟の
建物が存在する。
遠目にはギリシャのパルテノン神殿を思わせる、石柱で囲まれた
建物だ。
しかし近寄って見れば、神殿というイメージは一変して万魔殿と
呼ぶにふさわしいものになる。
その建物の柱と壁には多数の男女が淫らに絡み合い、お互いの肉
を浅ましく貪る様が彫刻されている。
どれも生きた人間をそのまま石に埋め込んだような精密さだ。
たとえば一本の柱には、上から吊るされたような女の性器と肛門
を前後から二人の男が犯している様が彫られている。
涙や汗までも写実的に彫り出されている。
その快楽にあえぐ顔も、振り乱された髪の毛も。
別の柱には背後から男に犯されている少年の像。
少年のペニスが枝のように柱から突き出ており、蕩けた表情でそ
のペニスに舌を這わせる女も彫られている。
少年の犯される屈辱と快楽の涙、女の涎まで再現した精密な彫刻
だ。
350
壁の一角には男に跨り、両手で横に立つ男たちのペニスを扱きあ
げる女の像。
挑発的な笑みと垂れる涎が官能的だ。
アーチ型の入口の上には大股開きの裸婦の全身像。
男を誘っているような表情だ。
この思い上がった淫魔が神を気取っているかのような建物のすぐ
プールサイズの
そばに、白い大理石製のプールがある。
いやプールというよりは大きな露天風呂というべきであろう。
この島の主はその湯の中に身を浮かべていた。
拡がる金の髪が藻のように波打つ。
青い空の下、魔女ヴィヴィアンは大の字になって太陽の光を全身
に浴びながら、湯の中にその裸身を浮かべていた。
その姿は男が見れば、たとえ泳げなかったとしても飛び込まずに
はいられない妖しい色気がある。
﹁あふぅ﹂
・・
せつなげな溜息をついてヴィヴィアンは水面に立ちあがった。
そのまま水面を歩いて風呂からあがる。
物憂げな表情のまま、鏡のように磨き抜いた大理石製のデッキチ
ェアに腰を下ろす。
水
の支配者であるからだ。
タオルなどは必要ない。
彼女は
濡れていた髪はもうすでに渇いている。
ただし体は濡れたままだ。
日光浴を兼ねて陽光で乾かすつもりらしい。
﹁ん∼。はぁ、ん、んん﹂
351
陽光の愛撫を全身に受けて恍惚としていたヴィヴィアン。
しかしその熱が彼女の肉体の奥の熱を呼び醒ました。
﹁はぁ、んんん、あはぁ、あついぃ﹂
胸を揉みしだき、大きく開いた股の間に手を伸ばす。
陽光で乾いた体の他の箇所と違い、そこはまだ濡れていた。
濡れた金の毛が光を反射する。
その金の毛を白い指がかき乱す。
﹁あ、あはぁん、あぁあ⋮⋮﹂
脳裏に浮かぶは全身から牙を生やした若い獣の姿。
﹁会いたい⋮⋮会いたいわぁ⋮⋮坊や⋮⋮私の王子様ぁせ⋮⋮つな
いぃ、身も心もせつないのぉ﹂
これが恋なのね、と世界中から抗議がやってきそうな自己陶酔に
浸るヴィヴィアン。
両足をほとんど180度に開き、両手で股間をまさぐる。
﹁逝きたいぃ⋮⋮今すぐにもあなたの下に行きたいぃ⋮⋮この身を
あなたに投げだしたいのぉ﹂
デッキチェアにまたがるように体をはね起こし、右手で前の秘裂
を、左手で肛門を貫く。
豊かな金髪は生き物の様にうごめき乳房をひしゃげさせる。
妄想するのは、少年の触手に絡め取られ、全身を串刺しにされて
蹂躙される自分の姿。
352
﹁欲しいぃおチンポ様欲しいぃ⋮⋮あなたのたくさんのおチンポ様
で貫かれたいのぉ⋮⋮全身で受精したいのぉ!﹂
前後から犯されるように腰が勢いよく前後する。
乳房がゴム毬のように跳ねる。
﹁欲しぃ!欲しいわ!かけてぇ!くぅ!﹂
軽いエクスタシーに達するヴィヴィアン。
だがまだ物足りなさそうだ。
﹁足りない⋮⋮足りないわぁ﹂
種
をポコポコ産み捨
︵やはり、すぐにでも確保すべきだったかしら。ううん、そんな危
険はおかせないわ。ダキニさんが無責任に
てたりしなければ、あの子がACTに目を付けられることもなかっ
たのに!殺されて当然だわ!自業自得よ!︶
機嫌が急降下を続けるヴィヴィアンにかかる声。
﹁失礼致します、ヴィヴィアン様﹂
﹁何よ、シェラ﹂
声の主は胸の谷間を強調するように胸元が大きく開き、下着が見
えそうなほど丈の短いミニスカートのメイド服を着た少女だ。
彼女に険悪な声を返すヴィヴィアン。
﹁ジェリーがお目通りを願っています﹂
﹁何の用、ああ、あれね。いいわ、 気晴らしぐらいにはなるでし
353
ょう﹂
﹁わかりました﹂
メイド服の少女が一礼して下がると代わりに、白っぽい水着姿の
おかっぱ頭の女が入ってきた。
しかしそれを本当に水着と呼んでいいものか。
形だけなら普通のハイレグワンピース。
しかしその白っぽい素材はビニールのように半透明になっており、
へそや乳首、股間の翳りが透けて見えている。
もはやほとんど全裸と変わらない。
こんな水着を着る者は露出狂呼ばわりを避けられないであろう。
その彼女の後に続く者たちを見て、ヴィヴィアンの顔がゆるんだ。
﹁あら、これはなかなか可愛いじゃない﹂
それは細身で引き締まった身体の少年たちだった。
その肉体を覆うのはブーメランの水着のみ。
僅か布地が膨らもうとするペニスを押さえつけている。
﹁ありがとう。ジェリー。みんな可愛いわ﹂
﹁恐悦ですわ﹂
機嫌をなおしたヴィヴィアンに、ジェリーと呼ばれた女がヌタリ
と笑い返す。
椅子に横座りになり、ジェリーと少年たちに正対するヴィヴィア
ン。
少年たちの視界で踊る豊乳。
濡れた金の毛が反射した光が一瞬彼等の目をくらませるが、白い
太股が隠してしまう。
息を荒くした若い獣たちは極上の肉に飛びかかろうとするが、す
354
ぐに金縛りになったようにうごきをとめる。
脂肪のほとんど無い肉体に、透明な蛇が締め上げているような痕
が浮かび上がる。
その蛇が少年たちの動きを封じ込んでいるのだ。
切なげに涙ぐむ少年たちを見て笑みを深くするヴィヴィアン。
視線を少年たちの下半身に走らせて、ジェリーに無言で促す。
ヌタリと笑ってジェリーは少年たちに命を下す。
﹁お前たち!ペニスをお出し!バキバキのいやらしい肉棒をヴィヴ
ィアン様にお見せするのよ!﹂
はじかれたように動き出す少年たち。
大急ぎで水着を脱ごうとするが、堅くなったペニスがつっかえて
皆うまく脱げない。
﹁うふふ﹂
その様を見てヴィヴィアンは悪戯っぽく笑うと、脇を見せるよう
に両手を上げる。
揺れる乳房がその存在と量感を主張する。
﹁あっ!﹂
その淫らな様を見ただけで、少年の一人が射精した。
﹁貴様!﹂
いきり立つジェリーを手で制すヴィヴィアン。
﹁元気ね。まだ出せるでしょう?﹂
355
挑発するように自らの乳房を揉み、脚をゆっくりと開いてゆくヴ
ィヴィアン。
胸から頭へ手を伸ばす。
腕の動きに合わせて胸の肉球が誇らしげに上下する。
金の髪をかきあげて妖艶な笑みを浮かべると、少年たちはたまら
なくなったようにヴィヴィアンに駆け寄った。
﹁うふふ、駄目よ、まだダァメ﹂
真っ先にヴィヴィアンに駆け寄った少年が凍りついたように動き
を止める。
後続の少年たちも先頭の少年を避けるようにしてヴィヴィアンを
囲むと、彼らもまた動きを止めた。
﹁うふふふ﹂
全裸の少年たちに囲まれて、ヴィヴィアンはデッキチェアにほほ
笑みながら身を横たえる。
﹁ああっ!﹂
﹁でる!﹂
ヴィヴィアンの淫靡な裸身に圧倒され、また二人の少年たちが射
精する。
白い飛沫がヴィヴィアンの顔から右の乳房に、左の乳房から臍の
横まで汚した。
ヴィヴィアンがそれぞれの精液を両手に擦り付け、香りを楽しむ
ように臭いを嗅ぐ、続けて味を比べるように交互に舐めた。
356
﹁おいしいわぁ﹂
﹁うー!﹂
妖艶な舌の動きにまた一人少年が射精した。
左の太ももの付け根に沿うように飛沫がかかる。
ヴィヴィアンが右手を飛沫のかかった太ももの付け根に伸ばす。
その伸ばした手で精液を白い肌に擦り込むように、股間から胸の
谷間に撫で上げる。
先に発射され流れ落ちていた精液に合流した。
左手は顔にかかった精液を口元に運ぶ。
﹁うふふ、か・け・て﹂
白い雫を垂らし名がな、赤い唇が妖艶に踊る。
﹁出して!坊やたちのミルク!一番たくさん出した子にご褒美上げ
る!私にいっぱいかけて!﹂
その叫びで最後の少年が射精した。
﹁うわ∼∼∼∼∼!!!!﹂
﹁うぉぉお!﹂
狂ったような雄たけびで答え、暴れ出す少年たち。
その体がへこむ。
見えない蛇たちが身動きを許さない。
﹁私をミルクで溺れさせて!私の体で溺れさせてあげる!﹂
その叫びを唐突に少年たちの右腕だけが自由になった。
357
自由になった手でペニスを扱き、次々に射精してゆく少年たち。
まるでヴィヴィアンの肉体の所有権を主張する印をつけるように、
自らの精液で女体を汚してゆく︱︱
太陽が頭上から30度ほど傾いたころ。
既に周囲には濃厚な精液の匂いで噎せ返りそうだ。
少年たちは生命を搾り取るように自らの精を吐きだし続けていた。
もうヴィヴィアンの肉体に精液で汚れていない所はない。
髪にも、顔にも、胸にも、腹にも、尻にも、背中にも、手足にも。
べったりと精液が張り付いている。
不思議なことに周囲の精液はいつまでたっても乾燥せず、射精さ
れたばかりの粘り気を保っている。
全身を包む精液の匂いに陶酔していたヴィヴィアン。
その眉がふと寄せられる。
空気に混ざった違和感。
見れば一人の少年がペニスから精液ではなく血を吹いていた。
ヴィヴィアンはほとんど少年たちに手を触れていない。
例外となるのは少年たちが力尽きた時、その時だけ淫魔女は手で、
手が駄目なら口で少年たちのペニスを再び立ち上がらせていた。
しかしそれにも限度があったようだ。
︵ここまでのようね︶
内心の失望を現さず妖艶な笑みを浮かべ、少年たちに宣言する。
﹁皆もういいわ。最後のテストよ。そこに一列に並びなさい。一番
立派なペニスの持ち主が優勝よ﹂
358
そう言ってウィンクする。
半死半生だった少年たちがよみがえり、命令に従って横一列に並
ぶ。
思い思いのポーズで自らにペニスを誇示する。
その様を精液を擦り込むように乳房を自ら愛撫しながら新たな命
令を下す。
﹁ペニスを私に向けなさい!早く﹂
少年たちのペニスの先がヴィヴィアンに向けられたと同時に、ヴ
ィヴィアンの乳首が少年たちに向けられる。
刹那。
﹁!﹂
ヴィヴィアンの乳首から白い霧が噴出すると、一瞬にして少年た
ちを包み込む。
すぐに霧は消えた。
少年たちの体に染み込むように。
完全に霧が消滅するとそこには少年たちの大理石像が横一列に並
んでいた。
あの白い霧は人間の肉体の主成分を炭酸カルシウムに変換してし
まう妖毒だったのだ。
﹁ふふふぅ、うまくできたわぁ。見てジェリー。北の壁にぴったし
でしょう﹂
どうやらあの神殿を飾る淫らな石像はすべて、こうして石にされ
た人間だったようだ。
部下からの追従の言葉を待つヴィヴィアン。
359
しかしジェリーは沈黙をしている。
﹁⋮⋮あらら﹂
怪訝に思って振り返ると、そこにはジェリーのあられもない姿。
間違いなく自慰をした後であろう、胸ははだけ、下半身は水着が
ずれて股間が露わになっている。
﹁もう、匂いにあてられちゃったのかしら、しょうがない娘ね﹂
呆れたように笑うヴィヴィアン。
メドーサ
その金の髪がうねって伸びると、ジェリーを捕えヴィヴィアンの
ヴィーナス
元に引き寄せた。
この女、女神どころかとんだ蛇髪妖女である。
﹁ヴィ、ヴィヴィアン⋮⋮!﹂
意識を取り戻したジェリーの唇を奪う。
うねる髪の毛でジェリーを拘束しながら、未だ乾かぬ精液にまみ
れた体をこすりつける。
精液を使ったローションプレイ、それも女同士でだ。
四つの肉球がお互いにつぶし合う。
﹁ヴィヴィアン様ぁ⋮⋮﹂
﹁うふふ、壁の飾りを探してきてくれたご褒美よ、精液の香りに包
まれながら逝っておしまい﹂
ジェリーの脚の間のヴィヴィアンの脚が割って入り、白い太腿が
敏感になった秘部を刺激する。
360
﹁ああーっ!﹂
よがり始めるジェリーを笑いながら見ていたヴィヴィアン、ふと
その表情が引き締まる。
﹁やぁ、やめないでぇ、ヴィヴィアン様ぁ﹂
﹁静かにおし!﹂
愛撫を止められ抗議するジェリーを殺気のこもった声ではねつけ
る。
凍りついたジェリーに構わず、右手の人差し指を露天風呂に向け
ると、湯が盛り上がって球となる。
表面にさざ波一つない湯の球。
不純物の一切ないガラス球を思わせる。
その球の中に画像が浮かび上がる。
﹁きいいいいいいいい!﹂
それを目の当たりにした瞬間、ヴィヴィアンが般若の形相となり、
その髪は地獄の業火のように激しくうねる。
恋敵
そこにはヴィヴィアンの懸想する少年と、尻を振ってその少年を
誘惑する若い女の姿。
新たな下僕、ACTの内通者とした女に仕掛けさせた盗撮のため
の仕掛けが、今最悪の形でその役目を果たそうとしていた︱︱
361
同棲初日 午後︵前書き︶
恥ずかしながら帰ってまいりました。
362
同棲初日 午後
︵選択肢間違えたぁ⋮⋮︶
︵欲望に駆られて判断を誤ったぁ⋮⋮︶
︵昨日の自分を張り倒してやりたい⋮⋮︶
現状とその原因を嘆く甲児。
彼の心はその前日の午後に飛んだ。
バスルームからあがってから10分ほどで冴子が近所で食材を買
い込んできた。
残りおよそ50分。
﹁甲児君、掃除をお願いね﹂
彼女が料理を作っている間、ゴミをベランダに出して、部屋中に
掃除機をかけて、リビングのテーブルに白いレースを敷いて客を迎
える準備をした甲児。
その姿はまさに忠実なる下僕。
既にばっちり尻に敷かれている。
残り15分を切った。
﹁ま、間にあった﹂
363
ほっと一息ついた彼に冴子から声が飛ぶ。
﹁あと5分でシャワー!﹂
﹁は、はいい!﹂
脳で考えるよりも脊髄で冴子の指示に従う。
髪の毛だけ軽くシャンプーして汗を流す。
カラスの行水も斯くやというありさまでバスルームを出ると、入
れ替わりに冴子が飛び込んだ。
テーブルにはなかなか豪勢な料理というより酒のつまみ︱︱ロー
ストビーフ、手羽先、ソーセージ、フライドポテト、枝豆︱︱が並
んでいた。
大半が肉なのはご愛敬?
バスルームからジーンズ姿の冴子が出てきたのは午後2時まで2
分を切ったところであった。 ﹁今度こそ間にあった⋮⋮﹂
﹁いいえ、本番はこれからよ﹂
﹁え?﹂
﹁この歓迎会、一番のつまみは私たちだって由美が言ってたわ﹂
﹁うわぁ⋮⋮﹂
心の準備をする間もなく玄関の外に人の気配。
﹁うわ、ギリギリセーフ﹂
﹁しっ﹂
呼び鈴の音に迎えに出る冴子。
364
あとについて行く甲児。
﹁やっほー、おじゃましまぁす﹂
色取り取りな花束を抱えた由美が入ってくる。
﹁あ、ありがとう﹂
赤面して花束を受け取る冴子。
人生初の花束贈呈である。
続いて大山と、名前も知らない第一小隊の面々、公園の黒メガネ
3人組、最後に眼鏡の女性が入ってきた。
最後の女性を見てわずかに顔が引きつる冴子。
正直嫌な奴が来たとは思うが、彼女を敵に回すのは避けねばなら
ない。
好色な男よりも粘つく目で舐めるように自分たちを観察している
女にも挨拶する。
ブリード
﹁里見博士も来てくれたんですか﹂
﹁当然よ。番いの混血の生活を観察する絶好のチャンスだわ﹂
人間扱いしていないことを明瞭に断言されたわけだが、この程度
でめげていてはいられない。
この女をいかに利用するかが、自分と甲児、そしていずれ生まれ
てくる我が子の運命にかかわってくるのだ。
とりあえずほほ笑みでかわす。
面白くない顔の里見。
悪化する雰囲気を吹き飛ばすように、由美が救援に入った。
﹁まーまー、取り合えず呑みましょ、食べましょ。お料理もいっぱ
365
いあることだし、お酒も買ってきたし。あ、甲児君は駄目よ、未成
年だし﹂
﹁は、はあ﹂
未成年というより人間じゃないんじゃなかろうか。
愚にもつかぬことを現実逃避気味に考える甲児。
実は呑む気でいたのは秘密だ。
﹁うわ、肉ばっか﹂
﹁さすがは猛獣女﹂
第一小隊隊員たちが軽く引いている。
﹁おサエ、あんた、もっと野菜摂らないと駄目よ﹂
友人が軍属の男でも食べきれない程の大量の肉を、ぺろりと平ら
げてしまうことにより男どもから恐れられていることを知る由美は、
この機を生かして彼女の食生活の改善を図ろうとした。
﹁いいのよ、甲児君もおいしいって言ってくれるし﹂
﹁ほう?﹂
全員の眼がギラリと光る。
﹁もう食べたのか?﹂
獲物を狙う肉食獣の眼で甲児を囲む隊員たち。
﹁え、ええ、病院に差し入れ持ってきてくれました﹂
﹁この幸せ者!﹂
366
﹁はうっ﹂
結構強く叩かれた。
﹁それでもう交尾はしたの?﹂
賑やかな雰囲気をぶち壊す一言。
﹁里見⋮⋮さすがに空気読めよ﹂
こめかみを揉みながら大山が抗議する。
カシラ
﹁あら、重要なことよ。それが目的で保護したんだから﹂
﹁それはそうだがな、実戦部隊の頭としちゃ、今影山が産休とった
りすると大戦力減なんだが⋮⋮﹂
それは考えていなかったという顔の里見。
﹁だからといって交尾を禁止する訳にはいかないわ﹂
﹁少し我慢してもらうしか⋮⋮﹂
﹁いいえ、精神の安定面でもそれは下策よ!﹂
﹁だが、坊主が戦力として期待できるかどうか⋮⋮﹂
﹁要はこいつが戦力になればいいのよね。2号!じゃなかった芳賀
!﹂
﹁は、はい!﹂
番号で呼ばれたのは気にくわないが返事をする甲児。
﹁あなた自分の意思でメタモルフォースできる?﹂
﹁メタモって⋮なんですか?﹂
367
﹁メタモルフォースよ、メタモルフォース、本性現して触手生やし
てたじゃないの﹂
口ごもる甲児。
思わず右手に目を向ける。
脳裏をよぎるのは先ほどの浴室での一件。
あの時、確かにこの指は触手と化して冴子の子宮の奥まで蹂躙し
ていた。
里見が獲物を見つけた肉食獣の笑みを浮かべる。
﹁ふふーん。右手が変貌したわけね。やって見せなさい、今ここで﹂
﹁え⋮⋮﹂
﹁どうしたの、さあ!﹂
﹁む、無理です!やろうと思ってやったわけじゃないんです!﹂
﹁そう。じゃあどんなシチュエーションでそうなったのかしら?﹂
甲児に詰め寄る里見。
大人の女性に詰め寄られ、のけぞる甲児。
顔が険しくなる冴子。
見かねて由美が割って入る。
﹁あ∼!もう!そこまで!二人ともそこまで!そういう話は明日か
ら!﹂
﹁そうそう、その通り﹂
既に席についている西島。
しかも飲み物も用意済みだ、人数分。
﹁わしゃ、腹が減った﹂
368
﹁⋮⋮﹂
食欲に忠実な怪老人の姿に全員毒気を抜かれたようだ。
﹁そ、そうだな、せっかく用意してくれたんだし、食べようか﹂
大山がまとめに入り、席に着こうとする一同。
そこで、冴子が困惑の声を上げた。
﹁あ、このお花どうしよう⋮⋮﹂
﹁⋮⋮あ、ごめん、花瓶なんかないわよね、この家に﹂
冴子の過去の生活を熟知している由美がぼやく。
そこに意外なところから救いの手が入った。
﹁花瓶なら持ってきたわ﹂
﹁え?﹂
意外な声に当惑する一同。
みれば里見が玄関から手提げの紙袋をとってきたところだ。
床に置いて中の木箱を取り出す。
さらに木箱から取り出したのはクリスタルガラスの花瓶であった。
光を乱反射するその細工は、かなり高級なものと感じさせるに十
分である。
﹁綺麗⋮⋮﹂
﹁本当⋮⋮﹂
冴子と由美の口から感嘆の声が漏れる。
369
﹁おいおい、いいのか?こんな高そうなもん﹂
﹁私ももらいものだから、いくらかは知らないわ。うちの押し入れ
の肥やしになっているよりはいいかと思って﹂
﹁使ってなかったのかよ﹂
﹁うちにはホラ、やんちゃなのがいるから﹂
いかにももったいないと言った顔をして花瓶を観察する大山に、
誇らしげな顔で答える里見。
その顔に何かの違和感を感じる由美。
︵なにか、変ね⋮⋮︶
あれは息子を話しているといった表情ではなく、まるで恋人のこ
とを話しているような⋮⋮
︵⋮⋮気のせいよね︶
現在のところ里見は冴子以上の要監視対象である。
ここ数日の彼女と息子の生活におかしなところは見られない。
大山が花瓶を見ているのも異常はないかと確認しているためだが
⋮⋮
︵さすがにガラス細工に細工は無理か︶
すぐに警戒を解いた。
﹁どうかしら?﹂
﹁あ、ありがとうございます。大事にしますね﹂
370
頭を下げる冴子、つられて甲児も頭を下げる。
︵そんなに悪い人じゃないのかも︶
この時甲児はそう思っていた。
そして宴は始まった。
︵弱った⋮⋮︶
皆楽しそうに談笑している。
あまり会話に参加しないが冴子も楽しそうだ。
酔いつぶれているのは坂本という隊員らしい。
西島は年甲斐もなく騒いでいる。
しかし甲児はいまいち楽しめない。
一人だけ未成年で酒も飲めず、しかも共通の話題がない。
いわゆる﹃壁の華﹄みたいな状況だ。
甲児の初めてのノミ二ケーションはいまいちのようだ。
一人ちびちびコーラを飲んでいると尿意を感じた。
気付かれないように席を立つ。
誰も反応しない。
トイレに入ってほっと一息。
﹁ふう﹂
少し緊張していたようだ。
用を足して洗面台で手を洗う。
肩コリをほぐすように肩を上げる。
371
すると背後に人の気配。
﹁!﹂
振り向くと女マッドサイエンティスト。
﹁さて、さっきの続きを聞かせてもらおうかしら﹂ 肩を付かんで、酒臭い息が甲児の顔にかかるぐらいの近距離から
問い詰めてくる里見。
座った眼は血走り、ギラギラと殺気だっている。
思わずおびえる甲児。
ところが里見はすぐに甲児を解放した。
﹁なんてね、大体の見当はついてるのよ﹂
﹁え⋮⋮!﹂
﹁大方、影山との交尾の時だったんでしょう﹂
﹁そ、それ、は﹂
図星を突かれてしどろもどろの甲児。
面白そうに笑って続ける里見。
﹁そういえばー、直前までモニター見てたけどー、ずいぶん長風呂
だったわねー、それもふたりで﹂
﹁!﹂
そう、この女は自分たちを監視している組織の一員。
自分と冴子の運命は彼女たちの手中にある。
こんな風に一生おもちゃのようにもてあそばれて行くのだろうか。
372
絶望を感じた甲児に里見がいやらしく笑う。
﹁結構結構、バンバンやりなさい。お風呂場といわず、ベッドでも
リビングでも﹂
﹁!そんなこと!﹂
反発しようとした甲児だが、里見が真顔になったためとどまる。
﹁カメラなら止めてもいいわよ?条件次第で、だけど﹂
﹁⋮⋮え?﹂
何を言われたのか分からない。
﹁それはいったい⋮⋮﹂
﹁だから貴女が私の研究に全面的に協力するなら、監視カメラ止め
るんで、思いっきり交尾でもセックスでもしなさいっていうの﹂
甲児はまだ何を言われたか理解できない。
監視されるのは自分たちが危険な生物であるから、認めたくはな
いが納得せざるを得ない。 ﹁え⋮と、博士、酔ってます?﹂
﹁酔っていても仕事は忘れないわよ﹂
﹁で、でも危険じゃないんでしょうか﹂
﹁まあ、リスクは上がる訳だけど大丈夫、何かあったら部屋ごと吹
っ飛ばすようになってるからこの家﹂
﹁⋮⋮﹂
それのどこが大丈夫なのだろうか。
いや大事なのはそこではない。
373
﹁何よ、影山の部屋はずっとそうだったんだから、モニター以外に
も危険を感知する方法はあるってこと﹂
﹁じゃ、じゃあなんで⋮⋮﹂
今まで使っていたのか。
これからは使わないのか。
﹁安全性を高めるためモニターも使っていたの。で、これからはあ
んたたちの交尾を妨げない方が精神面でも戦力面でも好都合ってわ
け﹂
﹁⋮⋮戦力面?﹂
里見はいらつき出した。
その表情はできの悪い生徒を人間扱いしない教師のようだ。
﹁あんたの能力は生殖能力と強い関係あるから、交尾させた方が下
手な訓練よりましだっていうの。そういう上申書を出すの。わかっ
た?﹂
﹁は、はい﹂
﹁で、どうする?﹂
甲児が悩んだのは2秒もなかった。
そして翌日後悔するのである。
宴は6時ごろに終わった。
皆上機嫌で帰った。
あと片付けを始める二人。
374
酒を飲んだ冴子の顔は赤らみ、艶っぽさを増している。
その冴子の顔をじっと見つめる甲児。
その甲児の視線に気づきさらに艶めいた表情になる冴子。
﹁うふふ、あとでお風呂でね﹂
赤くなって視線をそらす甲児。
そらした視線は時計に向かう。
︵後36分で7時⋮⋮︶
かちゃかちゃと冴子の皿を洗う音がする。
その音が甲児の注意を引いた。
今度は冴子の引き締まった尻に視線が吸い寄せられた。
︵⋮⋮︶
跳びかかりそうな全身を抑える甲児。
ただ獲物を狙う肉食獣の眼で冴子の尻を見続ける。
︵今夜の甲児君、なんか変、でも⋮⋮︶
甲児の視線を感じて冴子の肉体にも火が付いた。
乳首がとがり、秘所が潤む。
そこに鳴り響く電子音。
音源は甲児の携帯電話︱︱もちろん新しく支給されたACT御用
達である。
画面を確認した甲児の顔がほころぶ。
何事かと振り返った冴子は、正面から甲児に抱きしめられた。
375
﹁ちょ、ちょっと甲児君。駄目、駄目よ、カメラが⋮⋮﹂
抵抗する冴子に自らの携帯を見せる甲児。
冴子の眼が丸くなる。
そこにはこう表示されていた。
カメラ止めた。約束守れ。明日9時。里見
︵カメラ止めたっですって!︶
目をつぶる冴子。
﹁ほ、本当、作動音がしていない!﹂
﹁さ、作動音って﹂
ひと
この女は四六時中自分を監視する機械の音とともに生きていたの
か。
胸に込み上げてくるものを呑み込むように冴子の唇を吸う。
抵抗は一瞬。
おどおどするように冴子の舌が甲児の口に侵入して来る。
それを迎え撃って翻弄する。
冴子の肉体から力が抜けた。
その場で押し倒しシャツをまくる。
露わになったスポーツブラをまくり上げ、プルンとはじけた左の
乳房を揉みしだく。
﹁は、はぁっ、うん﹂
唇を離して右の乳首を吸う。
376
﹁ふぇ、ひゃ﹂
右手で冴子のジーンズを下ろす。
無意識に冴子も腰と脚を浮かせて協力した。
そのままショーツの上から愛撫する。
指先が尖った陰核を弾く。
﹁あはぁ﹂
もはや冴子は甲児のなすがままだ。
立ち上がる甲児。
﹁!﹂
追いすがるような表情の冴子。
その眼は再び見開かれる。
全裸になった甲児が仁王立ちしていた。
猛々しくなった男根を見せつけるかのように。
身を起して甲児に奉仕しようとする冴子。
その手を抑えて甲児は再び冴子を押し倒し、全身で押さえつける
ように挿入する。
﹁!あンあああああ﹂
もはやすっかりなじんだ異物感。
下腹部から突きあげる充足感。
冴子が絶頂に達するのはそれからすぐのことだった。
口内に違和感を感じて意識が戻る。
377
どうやら失神していたようだ。
そしてその意識のない自分の口を蹂躙している男の顔。
︵眠り姫の王子様のつもり?︶
なんだか腹が立ったのでぽかりと彼の頭を叩く。
﹁た!﹂
叩かれた頭を押さえて甲児が起き上がる。
そして胎内に伝わるその動き。
﹁はぅ﹂
二人はまだ繋がっていた。
﹁やったなぁ、冴子さん、お返しだ!﹂
冴子の右足を抱え込むようにして持ち上げる甲児。
そのまま彼女を側位で責め立てる。
﹁はん!あん!ひあ!だ、だめぇ!いったばかりだからぁあ﹂
﹁うん!﹂
﹁あひぃ!﹂
ひときわ大きく甲児が腰を突き込む。 冴子の目の前で白い光がはじける。
だが甲児はまだ満足していない。
そのまま後背位に移行して冴子に覆いかぶさる。
378
﹁あぁん﹂
後ろから回された甲児の手に乳房を揉みし抱かれ、冴子が嬌声を
上げると再び甲児の腰が前後する。
﹁あは、あはああ、ひぃん﹂
冴子の髪が右に流れて、顔の左側が露わになった。
そこに唇を這わす。
耳の裏から顎に向かって。
﹁ひぃぃぃいい!﹂
一際大きく反応した。
同じ場所を再び責める。
﹁ら、らめぇ!﹂
三度目の絶頂。
﹁で、出る!﹂
甲児も冴子の胎内に精を放った。
そのまま脱力し冴子に覆いかぶさるように横たわる。
冴子はけだるげに寝返りをうち甲児に向き直る。
そして頬をつねった。
﹁痛い!﹂
﹁痛いじゃないわよ!馬鹿!いきなりあんなムリヤリして!という
よりカメラの件はどういうことなの!﹂
379
怒りの冴子。
その怒る様すら今の甲児には愛おしい。
そう思っているともう片方の方もつねられた。
﹁もう、勝手にそんな約束するなんて﹂
︵この件について冴子さんに言われたくないんだけどな︶
甲児は一連の事情を白状した。
﹁でもどっちにしろモルモット扱いなわけでしょ、だったら少しで
もましな扱いになった方がいいじゃないか﹂
﹁それは、そうだけど⋮⋮﹂
﹁それに⋮⋮﹂
﹁それに?﹂
﹁嫌だったの?僕とするの﹂
﹁!﹂
若干赤くなった冴子は甲児の頭を柔らかく叩いた。
﹁嫌じゃない、嫌じゃなくて、乱暴なのもたまにはいいけど、あん
なだまし討ちみたいなのは⋮⋮﹂
︵この件についても冴子さんに言われたくないんだけどな︶
そこで言い返さないあたりが情けない。
しかし、確かに悪いのは自分の方だとも思う。
いかに恋人同士とはいえ、やったことはレイプに近い。
380
﹁わかりました。我慢できなかったんです。ごめんなさい﹂
だから自分が頭を下げることにする。
﹁⋮⋮わかったわ、もういいわよ﹂
矛を収めることにした冴子。
その時二人の腹部から健康的な音が鳴った。
﹁あら﹂
﹁結構食べたのに⋮⋮﹂
﹁運動したからおなかすいた⋮⋮?﹂
﹁まさかと思うけど、そうなのか﹂
なんとなくおかしくなって二人で吹き出した。
﹁ちょちょっと待ってて、簡単なものだけどお夜食作るわ﹂
﹁はーい﹂
服装を整えようとする甲児。
そこに待ったがかかる。
﹁あ、ちょっと待ってね、甲児君、そのまま振り向かないで﹂
﹁?﹂
﹁もういいわよ﹂
振り向くとそこにはブルーのエプロン姿の冴子。
だが何やら違和感が。
具体的には肩と腕。
381
﹁うふふ﹂
妖しい笑みを浮かべてくるりと回る冴子。
素肌のままの背中と尻が甲児の目に焼きつけられる。
﹁!﹂
﹁きゃあ!元気になった﹂
甲児の男根に力が戻った。
再び冴子に襲いかかろうとする甲児の目の前に指を突きつける。
﹁だ∼め。おあずけ﹂
﹁そんな∼﹂
﹁お夜食食べて、後片付けしたら、思う存分愛してね﹂
にっこりとほほ笑まれると甲児は何も言えない。
﹁あ、そうだ。甲児君。今夜は二人でずっと裸でいましょう﹂
﹁え﹂
﹁アダムとイブみたいに、駄目?﹂
﹁駄目じゃない、駄目じゃないけど、なんで?﹂
﹁だってぇ、私だって甲児君に一杯愛して欲しいんだもの﹂
上目遣いのおねだりに唾を呑む甲児。
二人の夜はまだまだ続くらしい。
382
同棲初日 午後︵後書き︶
長くなりましたというか、エロがくどくなりますのでいったん切り
ます。
383
嫉妬 4︵前書き︶
お待たせしました。
今回は結構危険な話です。
BL、レイプ、近親相姦が駄目な方はブラウザバックをお願いしま
す。
384
嫉妬 4
ここでしばし時を巻き戻す。
ヴィヴィアンが少年たちの精と欲望を、その身一杯に浴びている
とき、すぐ近くの﹃神殿﹄でも淫靡な魔女たちの狂宴が開かれてい
た。
﹃神殿﹄の地下。
そこは狂ったような色彩のサンゴに飾られた巨大な海底洞窟だ。
その一角のステージのように高くなった場所に、二十人程の少年
たちが横一列に並んでいた。
不気味なこと彼らは皆、型にはめたように同じ容姿であった。
褐色の肌、銀色の髪、女性的な色気を持つしなやかな体、人形の
ように整った顔。
そそり立つ巨根の大きさ、角度まで一定だ。
そして深海を思わせるような深く黒い目。
まるで両目のない人形を大量生産して並べたようだ。
・・・・
ステージの下には、あられもない姿の美女たちが少年たちを欲望
の目で見上げている。
皆全裸かその方がまだましといった露出の大きい、いかれた姿だ。
一番まともな格好の︵服を着ていると言える意味で︶女でも、褌
とサラシ姿である。
中には乳首と陰部に、大きめの魚の鱗をつけただけという女もい
る。
﹁うふふ、どぉ?可愛い私の息子たちは?﹂
385
ステージ脇からまた女が現れる。
全裸で青みがかったその肌には、ところどころに鱗が生えている。
そしてその眼は人間の目でなく、冷たい魚のものだった。
自慢するような女の声に答える、観客の女たち。
﹁かわいいのに、すごいおちんちん!﹂
まだ幼い、少年とほとんど変わらない、ただし微妙に肉づき始め
た少女が立ち上がる。
褐色の肌の上に一見白い水着を着ているようだが、ただの日焼け
のあとだった。
未だ無毛の秘裂を両手で割って見せつける。
﹁お兄ちゃんたちぃ、エミのツルペタマンコ、きつくて気持ちいい
よぉ、来てぇ!﹂
﹁お黙り!ちっちゃいの!﹂
少女を押しのけるように、大きな二枚貝のブラジャーでその巨乳
を支えた女が立ち上がる。
﹁ふん!﹂
女が短く気合を入れると、貝殻をつないでいた紐がはじけて、解
き放たれた巨乳が躍り出る。
弾む肉球を両手で受け止め、少年たちに見せつけるように突き出
す女。
﹁さぁ、坊やたちぃ。いらっしゃぁい。お姉さんのオッパイ好きに
していいわぁ﹂
386
少年たちの目がその巨乳に集まる。
しかしその視線はすぐに向きを変えた。
﹁|力≪パワー≫を感じるのぉ。エレクトしたコックからビンビン
エナジー感じるのぉ﹂
服の代わりに生きた蛸を身にまとわりつかせていた女がその場で
自慰を始めた。
彼らヒメーラにとって雄の生体エネルギーは重要な問題である。
最近は弱すぎて子供を作れない雄が殆だ。
﹁うおおおお!﹂
一番大柄なアフロヘアーの女が、いきなり立ち上がった。
女の股間から黒い縮れ毛が投げ縄のように伸びて少年たちを捕え
る。
﹁うちの子に何をするの!﹂
﹁抜け駆けすんじゃねえ!﹂
少年たちの母親?が手刀を振るうと、その指先から爪が飛び、剛
毛を切り裂いて少年たちを救う。
褌姿の女の右手から銛のようなものが飛び出して、大女の喉元に
付きつけられる。
﹁う⋮⋮﹂
﹁まったく、ルールは守りやがれ﹂
﹁だってだって﹂
387
大きな体にかかわらず甘ったれた声を出す大女。
﹁あんたは、最後よ﹂
﹁当然だな﹂
﹁やだぁ﹂
﹁そんな﹂
断罪の言葉に上がる不満の声は二つ。
﹁あらセーイ、あなたコニーが気に入ったの?﹂
鱗女が大女の正面にいた息子に質問する。
うっとりと歌うように答える少年。
﹁ハイ、お母様。僕はこのお姉さまに抱かれたいです。この太い腕
で骨が潰れるぐらい抱きしめられたいです。大きな胸に顔を埋めて
窒息したいです。妊娠して僕の子供を産んで欲しいです。食べられ
てもかまいません。お母様。お願いします。僕をこの人の物にして
ください﹂
﹁ああああああ!﹂
少年の言葉についに自分を押さえきれなくなった大女︱︱コニー
の下半身の剛毛が再び少年︱︱セーイに襲いかかる。
褌女が制止しようとするのを、鱗女が止める。
セーイは剛毛で亀甲縛りにされた。
﹁仕方ないわね、コニー。セーイは貴女にあげるわ﹂
せっかくの許しの言葉だがコニーは聞いていない。
388
セーイの唇を奪いきつく吸う。
屹立したペニスを力強く握る。
セーイの口から苦悶の声が漏れる。
﹁うぅう﹂
﹁ぷはっ﹂
顔を離したコニーがセーイに問いかける。
﹁ホントに?本当に私の物になりたいの?﹂
﹁は、はい﹂
﹁今だって無茶苦茶きつく縛ってるんだよ﹂
﹁だ、だいじょぶです。僕耐えます﹂
また一束、剛毛が伸びて少年の肛門を襲った。内部を蹂躙して前
立腺を抉る
﹁あぐぅ!﹂
歯を食いしばる少年。
射精したいのに射精できないようだ。
どんな握力をしているのかコニーの手がそれを許さない。
スタミナ
﹁こんなこともしちゃうよ?出産に体力足りなかったら食べちゃう
かもしれないよ?それでもいいの?﹂
﹁いいですぅ!食べてぇ!犯してぇ!無茶苦茶にしてぇ!貴女の中
に出したいのぉ!﹂
﹁セーイ!﹂
潮を吹くコニー。
389
まさにがぶりつくようにセーイのペニスを口にする。
﹁あはぁ!﹂
コニーの口からあふれる白濁液。
しばし陶然とするコニー。
しかし硬さを失わないペニスに気付き、セーイを地面に叩きつけ
るような勢いで押し倒す。
﹁痛!﹂
﹁セーイ!あんたが欲しい!﹂
襲いかかるコニー。
天を突くセーイのペニスを全体重掛けて尻で潰すように呑み込ん
だ。
﹁キ、キツイぃ!締まるぅ!吸われるぅ!﹂
﹁熱いぃ!燃えちゃう!﹂
三こすり半もしないうちに絶頂に達する二人。
そこに妖しく笑いかける鱗女。
﹁あらあら、相性ピッタリだったようね、二人とも﹂
﹁⋮⋮お母様﹂
﹁⋮⋮リナ﹂
ぼんやりと鱗女︱︱リナを見上げる二人。
次の言葉を聞いて凍りつくコニー。
﹁どう?セーイ。私とどっちが良い?﹂
390
﹁⋮⋮え?﹂
両目を見開くコニー。
だが一瞬遅れて下から突き上げる快感に呑まれる。
﹁ああ∼!お母様!コニーさん、いい!お母様よりずっといい!﹂
﹁!当然よ!リナなんかよりもっと気持ちよくしてやる!このマザ
コン!あんたはもう私のもんなんだよ!﹂
﹁あひぃ!嬉しいですぅ!コニーさぁん!﹂
﹁空になるまで搾り取ってやる!﹂
﹁あぁあ!死んじゃうぅ!気持ちよくて死んじゃうぅ!チンポもケ
ツマンコも気持ち良いぃ!﹂
二人の激しい絡み合いを見て、セーイの兄弟たちも、そして魔女
たちもお互いに駆け寄り肉体を貪りあう。
﹁やぁ!乳首つねっちゃダメ︱!﹂
子供を膝に乗せるような背面座位で犯されるエミ。
﹁ほうら来た。坊やったらずうっと私のオッパイ見てるんだもん。
まずはおっぱいで君のペニス犯してあげる﹂
その隣でパイズリに励む女。
﹁うぐっ!んぐぐ、ん﹂
自慰をしていた女はそのまま口にペニスを突っ込まれた。
﹁あー、いい、いい、あたしはやめた﹂
391
ただ一人褌女だけは少年に手を出そうとしなかった。
一人あぶれていた少年は、母親の元に飛び込んだ。
﹁あら、うちの子のどこが気に入らないの?﹂
﹁あたしはもっとワイルドなのが好みなんだよ、そいつを叩き伏せ
て犯るのがいいんだ﹂
﹁じゃあ、なんで来たのよ?﹂
﹁初物だと思っていたんだよ、童貞を奪うのはそれなりに面白いか
童貞を奪う
らよ。けどこのぶんじゃ全員とやったみたいだな?﹂
﹁当然よ、息子を男にするのは、母親として当然の義務であり権利
だわ!﹂
﹁いや、その理屈はおかしい﹂
息子
を産めばあなたたちもわかるわよ、沙希﹂
リナの言葉に真顔で反論する褌女。
﹁
﹁そうかねえ﹂
﹁ええ、自分を孕ませた雄の精気と自分の生気が、混ざり合って産
まれたさらに優れた雄。抱かれたくなるのも当然よ﹂
﹁そんなもんかね﹂
﹁ま、好きにすればいいわ、私はこれからやらなきゃならないこと
があるから﹂
﹁?﹂
﹁息子を誑し込んでくれた淫売どもを躾けてやらなきゃね﹂
クリトリスを肥大化させてペニスとしたリナ。
セーイの上で大きな尻を振るコニーの背後に立つ。
﹁嫁姑の争いに巻き込むんじゃねえよ﹂
392
呆れかえった表情で見守る褌女︱︱沙希。
そこに。
﹃きいいいいいいいい!﹄
洞窟にいる者すべての脳裏に不快な悲鳴が響き渡る。
いや、﹁不快﹂という表現では足りない。
たとえるならば、鼻腔から脳のど真ん中へ針のような極細のスピ
ーカーを突き刺し、大音量で黒板や曇りガラスをかきむしる音を響
き渡らせるような、とでもいうべきだろうか。
ともかく全員が頭を抱えてのたうちまわるような声が響いたのだ
った。
﹁ぎゃあああああ!﹂
﹁がががががががが!﹂
リナの息子たちの眼から鼻から耳から口から、頭部のすべての穴
から血が噴き出した。。
﹁いやああ!私の坊やたちぃ!﹂
絶叫するリナ。
﹁大丈夫かい?セーイ﹂
﹁ハイ。コニー様が守ってくださいましたから﹂
﹁お兄ちゃん、平気?﹂
﹁う、うん、何とか﹂
393
﹁無事なのは2人だけか﹂
魔女
それもこの中では上位の同胞と密着していた者だけ。
強力な魔女たちが無意識に纏っている防御の<力>、そのおこぼ
れに預かった者だけが生き残ったのだ。
︵リナの言うほどじゃねえな。って、そんなこと言ってる場合じゃ
ねえ︶
﹁今のはいったい何だ?﹂
リナの息子たちに失望する沙希だが、痛む頭を押さえて異変の原
因を探る。
そこに第二の異変が襲いかかる。
﹁!﹂
洞窟の入り口の水面から、白くて太く、そして長いナニカが何本
も飛び出して来た。
それらは一部ではぶよぶよに柔らかい肉が垂れ下がっていたり、
一部では沸騰して泡立つように肉のこぶがぽこぽこと現れる醜悪な
肉の大蛇だった。
彼女たちはそれらを初めて見た。
ルーツ
しかし彼女たちはそれらを知っていた。
自分たちの起源、大いなる母、ヴィヴィアンと同じ気配を感じた
からだ。
﹁ヴィヴィアン様!﹂
﹁これは一体何事ですか!﹂
だが肉の大蛇たちは娘たちの叫びに応えるでもなく襲いかかる︱
394
︱未だ横たわるリナの息子たちに。
肉の蛇の頭が縦に裂け、巨大な女性器を形作り、少年たちを頭か
ら丸呑みした。
少年たちだけではない。
﹁い、いやああ!ヴィヴィアン様ぁ!やめてぇ!私の息子たちを食
べないでぇ!きゃ、きゃああああ!﹂
息子たちを救おうと肉蛇に取りついたリナ。
だが取りついたその場所もまた避けて、巨大な女性器となり彼女
を呑み込んだ。
里奈と息子たちを呑み込み、風船のように膨れ上がった肉蛇たち。
内部で彼らが暴れているのだろう。
せわしなく波打っている。
﹁ヴィヴィアン様!﹂
﹁お気を確かに!﹂
﹁む、無駄よ。逃げて﹂
天井︱︱ヴィヴィアンのいる地上に向けて叫ぶ沙希たち。
その彼女たちに警告する弱々しい声。
全員の視線が集まったそこには、下半身のが千切れた様に存在し
ない、全身が半透明となった少女の姿。
﹁ジェリー!﹂
﹁どうしたの!一体!﹂
﹁いいから逃げて!﹂
気遣う仲間たちにさらに強く警告するジェリー。
395
﹁私たちもやばいんだな?﹂
沙希の問いに弱々しくうなずくジェリー。
それを確認した沙希は立ち上がると、右の手刀で背後を横一文字
に斬った。
何もない空間に横一文字の裂け目が走ると、その裂け目がさらに
縦に開き、水が勢いよく流れこんできた。
まるで船腹に穴のあいた船のようだ。
﹁ずらかれ!﹂
自らの作った脱出口を親指で刺して仲間たちを促す。
そこに逃がすかとばかりに、洞窟の入り口から新たに躍り出た肉
蛇が魔女たちを襲う。
﹁シッ﹂
鋭い気合とともに右手を振る沙希。
・・・・・
その掌からミサイルの如く、銛が飛び出し、命中すると肉蛇の頭
を食いちぎるかのように消失させた。
﹁オラッァ!﹂
コニーが頭を振ると縮れた髪の毛が数十本ほど宙に舞う。
それらが洞窟の壁や地面に付着すると、不気味な怪僧のような植
物が生い茂り、魔女たちと肉蛇を遮る檻となった。
﹁急げ!﹂
腕を振り回して仲間たちを促す沙希。
396
魔女たちが急流を遡る魚のように、激流の中に飛び込んでゆく。
﹁セーイ、私にしっかり掴っているんだよ﹂
﹁はい、コニー様、絶対に離れません﹂
﹁ああ、好きよ。セーイ﹂
﹁エ、エミちゃん、助けて!腰が抜けて⋮⋮﹂
﹁べーっだ、見かけ倒しのヘタレチンポなんて要らないよーだ﹂
リナの息子たちの運命の明暗はきっちり別れたらしい⋮⋮
﹁さっさとしやがれ!こらぁ﹂
また銛が放たれる。
隙間をすり抜けた向こうで、また肉蛇の頭が消失する。
見れば最初に獲物を呑みこんだ肉蛇どもは、その口から精液のよ
うな白い液をあふれさせていた。
﹁ち。はえーよ﹂
消化されたというのか、全身精液に変わったというべきか、とも
かくリナ親子を喰らった肉蛇どもはお変わりとばかりに、こちらに
向かってくる。
檻に加わる圧力が増す。
ブチリブチリと何かがちぎれる音がする。
じりじりと流れてゆく時間。
流れる激流はまさに水時計。
檻が破れたのと、殿を務めていた沙希が流れに飛び込むのは、ほ
ぼ同時だった。
397
島から少し離れた海面に沙希は顔を出した。
脱出した者はみんな自分を見ている。
その中に仲間の一人に抱きかかえられたジェリーの姿を認めた沙
希は、彼女の元に泳いで向かった。
﹁大丈夫か?ジェリー﹂
﹁ええ、一週間もすれば再生できるわ、下半身ぐらい﹂
﹁︵相変わらずすげー回復力︶怪我してるところ悪いが、一体何が
あったんだ﹂
沙希の疑問は全員の疑問だった。
﹁に、人間の、あの女に渡した、水鏡に⋮⋮﹂
ここでいう水鏡とは、ヴィヴィアンが情報収集用に自らの体液か
ら作り出した端末のことである。
その見た目は一滴の水滴にしか見えない。
しかし映像も音声も鮮明に記録できる超高性能の生体隠しカメラ
兼盗聴器であった。
﹁最近ご執心の男の子がセックスしているところが⋮⋮﹂
全員の力が抜けた。
中には水に沈んだ者もいる。
﹁つまり何かい?ヴィヴィアン様は次手を出すつもりだった小僧が
寝取られたから、ご乱心してあんなことしたと?﹂
﹁そうよ﹂
眉をひくひく震わせて確認する沙希に答えるジェリー。
398
﹁⋮⋮一体何をお考えなんだ?うちのおっかさんは﹂
﹁それで喰われかけたんじゃ、たまらないわ﹂
﹁てゆーかさっさと捕まえてくればいいじゃないよー﹂
頭を抱える沙希に、口をとがらせるエミ。
﹁し、しかた、ないわ。ACTの内部に、取り込まれているんだか
ら、リスクが高いって﹂
﹁⋮⋮あいかわらず慎重なこって﹂
ヴィヴィアンの欠点。
それは基本的に受け、あるいは待ちの態勢のため、リスクの伴う
決断を躊躇いがちなところであった。
トップの臆病ともいえるその態度に、不満を持つ配下は少なくな
い。
﹁ご命令に背くことになるが、その小僧あたしらで確保したほうが
いいかもな﹂
︵いっそ横取りしてやろうか︶
そこにそこの貝殻ビキニを着ていた魔女が、恐る恐る発言する。
﹁ちょ、ちょっといいかしら?﹂
﹁どうした?グレイス﹂
・・
この女、表向きはガラス工房を経営している。
商品の特徴は海の波を彷彿させる水玉のような飾りのついた製品
である。
399
﹁ヴィヴィアン様が、この間私のところに花瓶を注文されたのよ、
水鏡を混ぜ込んだ﹂
﹁⋮⋮それをどうした?﹂
﹁さっきここに来る前に人間の女に渡したわ﹂
﹁つまりカメラが増えたという⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁確か時差の関係で日本は⋮⋮﹂
﹁夜はこれからよ⋮⋮﹂
むしろ本当の地獄はこれからであった⋮⋮
﹁⋮⋮ほとぼりが冷めるまで逃げるぞ!﹂
﹁それが賢明ね!﹂
﹁一週間後に一度、東京湾に集まりましょう!﹂
﹁わかったわ!﹂
全員全速力で島から逃げ出した。 ﹁あひぃ!きゃふ!いひぃ!﹂
ヴィヴィアンが荒れ狂う島とは別の、日本に近い海底洞窟。
そこで全裸の美少年が拘束されて、後ろから凌辱されている。
銀髪に褐色の肌、しなやかで細身の筋肉質の少年。
・・・
リナの息子たちにそっくりだ、碧色の瞳を除けば。
・・・
彼の両手は洞窟の天井から斜めに垂れ下がる鍾乳石と、両脚はや
はり地面から斜めに伸びる石筍に呑みこまれて、全身で大きなXの
400
文字を書いている。
そして大きく脚を開いた彼を、背後から激しく突きたてる者も、
瞳を除けばまた彼と同じ姿をしていた。
犯されている者が快楽と屈辱に泣きながら喘いでいるのに対し、
犯している者は冷酷な嗜虐的な笑みを浮かべていた。
﹁ああ!あぐ!ら!らめぇ!また!﹂
﹁ふふふ⋮⋮﹂
今までの経験で相手が射精する寸前であることを察すると、凌辱
者はその動きを止めた。
被害者の腰を両手で固定してその動きを封じる。
﹁ど、どうして?なんでやめるのぉ﹂
﹁動いて欲しいんですか?﹂
﹁だ、だって、もうすぐ、もうすぐぅ﹂
・・
体をよじらせて哀願する相手に、嘲笑を浮かべて凌辱者は答える。
・・・・・
﹁つまり、ローラお父さん、貴方は息子にケツアナを犯されて射精
したいんですね﹂
﹁!い、いやあああぁ!﹂
ローラ
その答えに正気を取り戻した少年は、拘束から逃れようともがく
が、それを抑えるように凌辱が再開される。
イキ
﹁い、いやぁ!や、やめて!ゼーロ!い、射精したくないぃ!あぐ
ぅ!﹂
﹁ふふふ、動けと言ったり、やめろと言ったり、我儘ですね、お父
さん!﹂
401
﹁い、いやあああ!﹂
﹁うう、そんなに暴れられると、僕も!﹂
ローラが勢いよく射精する。
その精液はローラの前におかれた、血の色の半透明の球体に降り
かかる。
その様を満足そうに眼にした後、ゼーロはローラの体深くで射精
した。
﹁さあ、僕も逝きます!受け止めて!お父さん!﹂
﹁やだぁ、やめて!出さないで⋮⋮﹂
息も絶え絶えに拒絶するローラ。
しかしその刺激のせいか、一度垂れ下がったローラのペニスが再
び力を取り戻しつつあった。
﹁息子に犯されて逝っちゃった⋮⋮息子に出されて立っちゃった⋮
⋮﹂
ローラ
絶望のあまり、無表情で壊れたレコードのように同じ言葉を繰り
返す父親の顔を面白そうに見ながら、ゼーロは体を離す。
ゴボリと音を立ててローラの肛門から、ゼーロの精液があふれだ
す。
卵
卵
と入れ替える。
︱︱彼らの新しい兄弟たち︱︱を奥に運び、新たに精を受
ゼーロが手を叩くと頭の大きい半魚人が現れ、ローラの精を受け
た
ける前の
同時に別の半魚人が銀凡に乗った赤ワインのボトルとグラスを一
つ持ってくる。
そのワインをグラス一杯をゆっくり飲んで喉を潤すと、もう一杯
を口に含む。
402
そのまま虚脱しているローラの唇を奪った。
﹁!﹂
首を振って逃れようとしたローラだが、口移しにワインが流し込
まれると動きを止める。
長く続けられた凌辱のため、体が渇きを訴えていたのだ。
逆に貪るように吸う。
鏡にしているようなキスシーン。
唇が離れるとローラは哀願する。
﹁お、お願い、も、もっと﹂
﹁おや、僕とのキスがそんなに気に入りました?﹂
わかっていて言葉を遮り、別の内容にするゼーロ。
﹁ち、違う、の、喉が﹂
﹁そんなこと言っても、ペニスがそんなに大きくなってたらねえ﹂
﹁え、こ、これは﹂
ローラが自ら股間を見やると、先ほどよりも大きくなったペニス
が。
気付いた途端に全身が熱く疼きだす。
﹁ワ、ワインにく、薬が、あ、ああ!﹂
﹁さあて、どうでしょう?お父さんが淫乱なだけでは?息子の犯さ
れて逝っちゃうぐらいに﹂
﹁いやあああ!﹂
さらなる追い打ちに屈辱に泣くローラ。
403
しかしその屈辱すら肉欲の炎を煽る。
﹁や、やめ、て、助けて﹂
﹁助けるとはどういうことですか?体の疼きを止めて欲しいと?﹂
﹁⋮⋮ち、ちが、あはぁ!﹂
思わず肯定しそうになるがギリギリでプライドが踏みとどまる。
目の前の相手は先ほどのようにリナの産んだ卵に自分の精をかけ
て、それも数日ばかり前に産まれたばかりの、自分の子供とも呼び
たくない、たまたま自分の因子を濃く受け継いで生まれただけの幼
生体だ。
そんな者に屈したくはない。
拘束と疼きから逃れようと体をうねらせる。
ペニスが左右に振れる。
﹁そうですか?それは残念。今の貴方はとても魅力的ですよ。ホラ﹂
﹁!ああ⋮⋮﹂
そう言って自分のペニスを誇示するようにつきだすゼーロ。
思わず凝視してしまうローラ。
﹁僕のペニスもこんなに大きくなっています﹂
﹁あああ⋮⋮﹂
乾ききったからだから涎が垂れる。
短期間に集中して行われた肛虐によって肉体に刻み込まれた快楽
が、体を激しく火照らせ疼かせる。
﹁貴方を僕の物にしたい。僕のメスにしたいと猛っています。あな
たももうメスになりたくてなりたくてうずうずしてるでしょう?﹂
404
﹁そんな⋮⋮あ、ああ﹂
新たにワインを注がれたグラスを、ローラの目の前で揺らすゼー
ロ。
赤い光の乱反射が暗示をかけるようにローラの忍耐を削っていく。
﹁おっと﹂
﹁!﹂
グラスを傾け過ぎたようだ。
ワインが一たらしこぼれる。
こぼれたワインは熱いローラのペニスにかかる。
とどめの一撃だった。
﹁⋮⋮て﹂
﹁お、お願い、飲ませて、だ、抱いて、な、なんでもするからぁ﹂
ローラの哀願に勝利者の笑みを浮かべるゼーロ。
﹁何でも、するんですね﹂
﹁する、するぅ!だからぁ!﹂
﹁具体的には何を?﹂
﹁なる!ゼーロのメスになるからぁ﹂
﹁つまり、僕の、息子に愛と忠誠を誓うんですね?﹂
﹁誓う、誓いますぅ、だからぁ﹂
﹁オスをやめて、メスになって僕の子供を産みますか?﹂
﹁う、産みます、産みます、だからぁ﹂
そこでゼーロの手が一閃し、ローラの顔を叩く。
405
﹁言葉づかいを改めなさい。今まで散々男の子におねだりさせてき
たんでしょ﹂
﹁あ⋮⋮ご、ごめんなさい﹂
顔を叩かれたことでわずかに頭が冷える。
躊躇いと屈辱が戻ってくる。
しかし一度折れた心は耐えきれずに、敗北宣言を告げた。
﹁ゼ、ゼーロ様、ロ、ローラは貴方のい、卑しい⋮⋮メス奴隷⋮⋮
になります﹂
﹁うんうん﹂
﹁ゼーロ様の命令には全て従います﹂
﹁それで?﹂
﹁だから飲ませてぇ!ケツマンコ犯してぇ!もう我慢できないのぉ
!﹂
完全に堕ちた、とゼーロは確信した。
﹁最後満点とは言いませんが、合格としましょう﹂
再び口移しでロ−ラにワインを飲ませる。
ワインだけでなく唾液も一杯流し込む。
ローラは貪るようにそれを呑んだ。
顔を離すと、ローラの背後に回り、一歩下がる。
﹁さあ、落ち着いたところで、もう一度おねだりしてみなさい﹂
﹁⋮⋮ああ、ゼーロ様ぁ。ローラの、淫乱パパのケツマンコ犯して
ぇ、早く早くぅ﹂
もうすっかり抵抗がなくなったのかゼーロを誘惑するように尻を
406
振るローラ。
というよりはヴィヴィアンに仕込まれた被虐の性が刺激されたら
しい。
その姿の尾欲望を刺激されたゼーロは一気にローラを貫いた。。
﹁本当にいやらしいですね。貴方は﹂
﹁ああん!ごめんなさいぃ、ビッチなパパでごめんなさいぃ﹂
﹁ううっ、今までより、締まるっ﹂
﹁気持ち良い?私のケツマンコ気持ち良い?﹂
﹁ええ、すごいですよ。すぐに出てしまいそう⋮⋮﹂
﹁出してぇ、私の中でビュクビュクしてぇ!﹂
﹁!﹂
ローラの胎内でゼーロが爆発した。
一瞬遅れてローラも射精する。
﹁逝く!逝っちゃう!息子に犯されてメスイキしちゃう!﹂
再び卵に受精される。
今度はその様を敗北感を感じながら眺めるゼーロ。
︵くそ!︶
完全に支配したと思った相手に先に逝かされてしまった。
それどころか自分の肉体がさらにローラを求めている。
苦い思いを噛みしめているゼーロにローラが甘い声をかける。
﹁足りない、足りないのぉ、もっと、もっとちょうだいィ﹂
﹁く!本当にあなたはビッチですね﹂
﹁ああ、来る!来るのぉ!﹂
407
﹁このまま完全にメスになって妊娠するまで犯してあげますよ!﹂
﹁してぇ!メスにしてぇ!妊娠させてぇ!﹂
凌辱を再開するゼーロだが、逆に相手の貪欲さに呑まれているよ
うな感じがしてならない。
主導権を取り戻そうと頭をひねりだしたその時。
﹃きいいいいいいいい!﹄
耳障りな悲鳴。
﹁!なんだ!﹂
﹁ヴィヴィアン様!﹂
被害が軽かったのはおそらく距離のせいだろう。
が彼らの脳裏に響いた。
ゼーロの母親と、兄弟にして息子たちを襲ったヴィヴィアンの
叫び声
その叫びはゼーロの神経に激しい不快感を感じさせ、ローラに正
気を取り戻させた。
﹁拘束を解いてくれ!ゼーロ!ヴィヴィアン様のところに行かなく
ちゃ!﹂ その言葉はゼーロの逆鱗に触れた。
力強くローラに自らを打ち込むゼーロ。
﹁くはぁ!ゼ、ゼーロ、こんなことしてる場合じゃ⋮⋮﹂
﹁こんなこととはなんだよ!何がヴィヴィアン様だ!﹂
先ほど自分に忠誠を誓ったばかりの奴隷が、あんなに激しく自分
408
を求めていたにもかかわらず、叫び一つで前の主人を思い出して帰
ろうとする。
ゼーロのプライドは傷ついていた。
﹁お前はなぁ!ヴィヴィアン様に見切りつけられたんだよ!飽きら
れたんだ!だから母さんに種馬として下げ渡されたんだよ!﹂
﹁わ、わかって、ひあ!そ、それでも!﹂
﹁だけど!俺が生まれたから!あんたを超えた俺が生まれたから!
もう種馬としての価値も半減しているんで!﹂
﹁だ、だけど、ぼ、僕は!あぐぅ﹂
﹁母さんのマンコは俺専用だ!母さんには俺の子を、俺の因子を継
いだ子をたくさん産んでもらう!あんたは雑魚の卵に受精だけして
りゃいいんだ!それだっていつかは俺と母さんの子供の役になる!﹂
﹁あう!ああ!あひ!﹂
﹁ほら!もう俺の肉体覚えてるだろ!離れられないだろ!だから完
全にメスになっちまいな!母さんと一緒に俺の子供産めぇ!﹂
﹁だ、だめぇ、また逝かされちゃうぅ!﹂
﹁逝けよ!何度でも!ヴィヴィアン様のことなんざ、精液と一緒に
流しちまえ!徹底的に犯して消してやる!﹂
射精するローラ。
それでも凌辱は終わらない。
﹁あひぃ!だ、だめぇ!く、薬のせいでぇ!感じちゃうぅ!我慢で
きないぃ!もっともっとぉ!﹂
一時止まっていた欲望が再び溢れ出す。
﹁ようやく素直になったな!ほらほら!﹂
﹁あひぃい!あふぅ!﹂
409
ローラの眼から再び理性が消え、肉欲に染まりきった時彼女は現
れた。
﹁!﹂
﹁やめないで!もっともっとしてぇ!﹂
ゼーロの眼前で、本が開かれるように水面が広がった。
何もないところに、畳まれていた動く水面の絵が広がったように
見えるが、その水面は本物だった。
﹁空間接続か?﹂
離れた空間の一点と一点をつなぐ超能力、これを持っているのは
同胞の中でも上位にある者だけだ。
﹁!﹂
ローラが身を凍らせた。
彼らの眼前に現れたのはショートカットのメイド姿の少女。
﹁シェ、シェラ⋮⋮﹂
﹁ロ、ロー﹂
口に手を当てて息を呑むシェラ。
ローラの姿を認め一瞬だけ歓喜の光をともしたその眼は、すぐに
痛ましい物を見る目になった。
﹁い、いや、見、見ないで﹂
﹁そんなこと言わないで見てもらいなさいよ、お父さん﹂
410
﹁!﹂
蘇った羞恥心からシェラの目を逃れようとしたローラ。
しかしその羞恥心は再開されたゼーロの責めにつき崩され、被虐
の欲望が掻き立てられる。
﹁あ、ああ、あひぃ! シェ、シェラ!見、見てぇ!わ、私、自分
の息子に、ゼーロに犯されてるのぉ!何度も何度も中出しされて、
メスイキしたのぉ!私、ム、息子の⋮⋮﹂
﹁やめてローラ!﹂
目を伏せて叫ぶシェラ。
だがゼーロはその姿にも嗜虐心を刺激され、凌辱を加速する。
﹁だ駄目、い、逝っちゃう、シェ、シェラが見てるのに!シェラの
前で、息子の犯されて逝っちゃう!息子に中出しされて逝っちゃう
ぅ!駄目ぇ!﹂
﹁!﹂
﹁⋮⋮﹂
涙を流し叫びながら射精するローラ。
未だローラの心に残る自らの楔を実感しながら射精するゼーロ。
目を伏せるシェラ。
しかしすぐに顔を上げる。
その顔に一切の表情はなかった。
﹁はっ!﹂
短くシェラが気合を入れるとその姿が変わった。
メイド服がはじけ飛び全裸となる。
411
そこに胎内から白い粘液が湧きだし貝殻を形作る。
一瞬後、そこにいたのはメイドではなく鎧を着た戦士だ。
肘、肩、膝、そして乳房と臀部、陰部を大小さまざまな二枚貝の
貝殻で覆い、両手で両刃の戦斧を構えている。
ただし露出度は高い。
﹁ローラを離しなさい!﹂
﹁それはヴィヴィアン様の命令ですか?﹂
ローラから離れ前に出るゼーロ。
一歩歩くたびにその姿は変わっていく。
ランス
全身に鱗が生え、さらにその上から巻貝の鎧を装備していく。
右手に構えるは巻貝の騎兵槍。
ただし股間からペニスは凌辱の意思を見せつけるかのようにむき
出しだ。
﹁いいえ、これは私の意志です﹂
﹁そうでしょうな、ご訪問の連絡もなく来られたのですから﹂
鎧姿の二人が相対する。
﹁ですが父はもう母の、いえ母と私の所有物です。ヴィヴィアン様
がお決めになり、本人もそう認めました。それを覆すというのは⋮
⋮﹂
﹁全て覚悟の上です﹂
﹁そうですか。ならすることは一つ!﹂
立てていた槍を水平に構えるゼーロ。
﹁貴方も父と並べて犯してあげます!喜びなさい﹂
412
稲妻のごとき速さで突き出される槍。
シェラはわずかに両手を動かし、顔と胸を斧の刃で隠す。
﹁な⋮⋮﹂
甲高い音をたてて槍の穂が砕けた。
ゼーロがそのことを理解した時にはシェラは一飛びで間合いに飛
び込み、バックハンドで斧を構えている。
﹁しま⋮⋮﹂
後ろに退く前に斧が横になぎ払われた。
﹁お前はローラより弱い﹂
﹁∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼!﹂
はらわた
宙を舞う自分のペニスを見上げながらゼーロは息絶えた、切り裂
かれた腹から腸を吐きだしながら。
﹁もう大丈夫よ。ローラ﹂
﹁シェ、シェラ﹂
羞恥に今にも舌をかみそうなローラを抱きしめる。
鎧を脱ぎ捨てた一糸まとわぬ姿で。
ただし戦斧は手放さない。
﹁仕方ないの、仕方ないのよ﹂
﹁シェ、シェ∼ラ∼﹂
413
子供をあやす母親のようにローラの背を叩く。
泣き崩れるローラを抱きしめながら戦斧を器用に使い、ローラを
解放する。
ローラはシェラの胸に顔をうずめて泣き続けた。
414
嫉妬 4︵後書き︶
次の次は魔女とのエッチです。
きついところは過ぎたので、何とか今月中にあげられるよう頑張り
ます。
415
朝と前夜
洞窟に嗚咽が響く。
﹁シェラ∼、僕は、僕は、ヴィヴィアン様に∼﹂
﹁気にしなくていいのよ、ローラ﹂
﹁ヴィヴィアン様に、もういらなっ、う﹂
シェラがローラの口を自らの唇でふさいだ。
ローラの動きが止まってから顔を離し、叱咤する。
﹁いい加減に泣き止みなさい!ヴィヴィアンが何よ!あんな婆より
も貴方が欲しい雌はここにいるわ!﹂
﹁シェ、シェラ、ヴィヴィアン様のこと⋮⋮﹂
﹁ええ、呼び捨てにしてやったわよ!もう愛想が尽きたわ、淫乱婆
あ!貴方も貴方よ!男なんでしょう!捨てられたって泣いてるぐら
いなら立ち上がって、あの婆を見返してやる、ぐらい言ってみなさ
いよ!﹂
もうここにいるのは、いともたやすく敵を屠った女騎士ではない。
己のすべてを用いて、失意の男を奮い立たせようとする女であっ
た。
ローラの涙が止まる。
それでもまだ失意の色は消えない。
﹁見返してやるって、どうすれば⋮⋮﹂
復活の兆しが見えてきたことを感じ、顔を和らげるシェラ。
416
﹁ヴィヴィアンのご執心の雄、あれを貴方が取りこんでしまえばい
いのよ、完全にね﹂
﹁!﹂
その発想はなかったと、目を丸くすするローラ。
﹁そうやってそいつのすべてを貴方が取り込んでしまえば、貴方こ
そ唯一の雄になるわ﹂
﹁あ、あああ!﹂
﹁そうなったら許しを乞うのはヴィヴィアンの方、貴方のお情けが
欲しくて媚打って、尻振るようになるわよ﹂
﹁ヴィヴィアンさ⋮⋮、いやヴィヴィアンが、僕に⋮⋮﹂
﹁!﹂
﹁⋮⋮あ、これは⋮⋮﹂
雄
が力を取り戻した。
自らを必死に誘惑しようとするかつての女主人。
・・
その姿を想像して、ローラの
太腿に当たる熱くて硬いそれに気付き、一瞬表情を凍らせるシェ
ラ。
弁解しようとするローラを笑顔で制す。
﹁いいのよ、言ったでしょう貴方を求めている雌はいるって﹂
ティッツ
体を離し数歩離れて自分の全身が、ローラの視界に移るようにす
る。
頭の後ろで両手を組み、ローラを挑発する。
﹁みて、私の肉体を﹂
﹁いつも貴方のことで胸いっぱいだから膨らんだ乳房よ﹂
417
﹁貴方が欲しくていつも濡れているプッシーよ。いつでも貴方に貫
かれる準備はできているわ﹂
﹁見て!ああ!もっと見て!見られているだけでも感じちゃうの!﹂
﹁ああ、ローラ!いいえローラ様!今日からシェラはローラ様のメ
イド!貴方様の意のままに!この身はすべてあなた様の物ですぅ!﹂
ローラを挑発しているうちに自ら高まっていくシェラ。
ローラは一度唾を飲み込むと、シェラをそのまま乱暴に押し倒し
た。
﹁ア、ローラ様⋮⋮﹂
﹁いつでも準備できてるんだろ?じゃあ前戯なんかいらないね﹂
﹁はぁん﹂
ローラがシェラを貫いた。
一瞬、脳内が真っ白になり至福に包まれるシェラ。
しかし次のローラの言葉を聞いて、その喜びは冷める。
﹁犯してやる!犯してやる!お前も!ヴィヴィアン様も!﹂
﹁⋮⋮﹂
自らの愛情を受け入れてくれたわけではない。
そんなことは最初から分かっていた。
ローラのヴィヴィアンに対する執着は尋常なものではない。
そのように作られ、育てられてきた、自分もその軌跡をすぐそば
で見てきた。
ローラにとってヴィヴィアンの存在は全てといってもいいぐらい
大きい。
それでも今この瞬間だけは、自分だけを見ていて欲しかった。
だが彼女の失望はすぐに消えることになった。
418
﹁僕は!王になる!雌は全て僕の物だ!シェラ!お前は女王だ!ヴ
ィヴィアンは二人の肉奴隷だ!﹂
﹁!﹂
自分をヴィヴィアンより上にする言葉。
思いがけない言葉に涙があふれる。
﹁いいの?私で?﹂
返事は平手打ちとより強い突きとともに返された﹂。
﹁口のきき方に気をつけろ!お前は僕の雌だ!﹂
今はその痛みすら快感だ。
﹁も、申し訳ございません。ご主人様っ!シェラは貴方様の下僕!
お好きなように躾けてくださいませ!﹂
﹁ああ!躾けてやる!僕の子供を、娘をたくさん産ませてやる!息
子なんて、産ませない!僕だけの物だ!﹂
剥き出しの独占欲。
より力強く、激しくなる突き。
﹁ああ∼∼∼!ローラ様ぁ!ご主人様ぁ!シェラは!シェラは幸せ
ですぅううう!﹂
今この瞬間に死にたい。
そう思うほどシェラは幸福だった。
419
そこは奇妙な部屋であった。
めっき
部屋の真ん中にあるのは低いテーブル。
金鍍の装飾が過剰で成金趣味といってよいデザインだ。
テーブルの周りにはピンクのスツールが三脚。
ここが居間であるにしろ、応接室であるにしろ、本来なら背もた
れのあるソファーなどがふさわしいはずだ。
全体的にちぐはぐな感じの家具の配置であった。
そんな部屋に三人の入室者。
全裸の人物が人、殆ど全裸の人物が二人。
全裸の人物の一人は前髪が両目を隠している女だ。
八頭身の均整のとれた体が跳ねるように、頭部とほぼ同サイズの
肉球を揺らして歩く。
全裸でない人物二人は若い女性たちだ。
顔を赤らめながらも、絶望しきった表情だ。
身に着けるのはヘアタイとエプロンのみ。
いわゆる裸エプロンのメイドだ。
しかしこのエプロン、とんでもない代物である。
某レストランチェーン店の制服のように胸元を大きく抉って、乳
房を全く隠さずむしろ囲い込むように強調している。しかも布地は
薄い白であるため臍や陰部の陰りが透けて見えている。さらに丈が
短く陰部が半分顔を出している。
着用している者の良識を疑う姿である。
全裸の女が勢いよくスツールに腰掛ける。
スツールのクッションが撓み、乳房がボールのように弾む。
メイドの一人が女の背後に立つ。
420
女が体を後ろに傾ける。
メイドの乳房の間に女の頭が納まった。
﹁はぅ﹂
女の舌が蛇のように勢いよく伸びメイドの乳首を弾いた。
メイドの体が揺れる。
﹁こらぁ!背もたれが動いちゃ駄目じゃないですかぁ!﹂
﹁も、申し訳ありませんお客様!﹂
﹁まったくぅ﹂
口を尖らせて正面に向き直し、両脚を大きく開く。
待機していたメイドがその脚の間に跪き、露わになった女陰に口
を寄せ奉仕を始める。
女はしばらく堪能していたが、いきなり一喝する。
﹁ん、んん∼⋮⋮カーッ!なってない!なってないっすよ!貴様、
クンニ道をなんと心得るかぁ!﹂
何だそれはと突っ込む者はこの場にいない。
女の舌が一気に約3メートルも伸びて、跪くメイドをひっくり返
す。
﹁ひい!﹂
﹁見本を見せてやるっす、クンニとはね、こうやるんすよ!﹂
﹁ひ!い、いやあ!やだ!あ、ああ、あああはあん、あ、ああ、あ
あ、﹂
ひっくり返って露わになったメイドの秘部を、電動ブラシのよう
421
な勢いで女の舌が蹂躙する。
﹁い、いい、気持ち、いいれすぇ!いぐ!いぐぅ!﹂
最初恐怖に震えていたメイドも、圧倒的な快感にすぐに絶頂寸前
に追い込まれる。
そこで女の舌が止まった。
︵⋮⋮どうでもいいが、見本も何も、こんなことできるのはこの
女ぐらいであろう︶
﹁あ、どうして?﹂
絶頂に達する寸前で、生殺しにあったメイドが抗議の目を向ける
と、そこには顔を赤くしてわずかに腰を振る同僚と、妙に肩を震わ
せている女の姿が。
﹁人の背中でオナニー始めるんじゃな∼い!﹂
﹁きゃあ!﹂
女の舌が口元から枝分かれした二本目が後ろに伸び、メイドの腰
に巻きつき正面に引き上げた。
そのまま舌のメイドに重ねるように下ろす。
﹁しょーがないから二人とも面倒見てやるっすよ﹂
﹁ああーーっ!﹂
﹁ああう、あー!﹂
二枚舌が二人の女陰を貫いた。
﹁うーん、おいしいっすね、二人のマンコは﹂
422
﹁い、いい!うれしいぃ!﹂
﹁もっと!もっとぉ!﹂
﹁んじゃ、ピッチ上げて⋮⋮﹂
﹁あはぁああ!﹂
﹁んひぃい!﹂
二人のメイドが絶頂するのと、ドアが開くのは同時だった。
﹁なにをやっているの?エリにメイ?﹂
﹁ひ、ひい!﹂
﹁じょ、女王様⋮⋮﹂
﹁お客様のおもてなしもできないなんて、ホントどうしようもない
わね、クビよ﹂
新たに入室した全裸の女が指を鳴らすと、彼女の背後から蜂に似
た姿の女たちが現れ、メイドたちを抱えあげた。
﹁い、いや、お許しを!﹂
﹁だめ﹂
﹁いやあ!獣の子供産むのはいやあ!﹂
﹁どうせ、あれの最中はアヘアヘ言って、それどころじゃないでし
ょうに。連れてお行き!﹂
﹁いやああああ!﹂
蜂女たちが悲鳴を上げるメイドたちを運び出すと、入れ替わりに
別の蜂女たちが鎖を引きずりながら入ってきた。
鎖に繋がれているのは人間の男女が二人ずつ、それと二匹の異形
の怪物。
人間たちはみなラバー、あるいはレザーの拘束具を付けられて身
動きを殺されていた。
423
目隠もしされ、口にはボールギグ、視覚も言葉も封じられた状態
だ。
怪物の一匹は切り落とされたペニスのような芋虫のオバケで、も
う一方はかろうじて人間の面影を残しているが、長い四肢で地を這
うその姿は蜘蛛やアメンボといった虫のようだった。
﹁お待たせしたわね、カレンさん。さあ商談を始めましょ﹂
﹁さっきのはスル︱ですか、そうですか﹂
入室してきた女が上座のスツールに座ると、鎖を持っていない蜂
女がその背後に立ち、その胸をヘッドレストの代わりにした。
よく見ると他の蜂女より胸が大きいようだ。
他の鎖を持った蜂女は主から向かって右の壁に一列に並ぶ。
鎖でつないだ男女、怪物を足で小突きながらだ。
その様を見ながらふうんと、満足そうな声を上げるカレン。
﹁なかなかよさそうっすね﹂
﹁気に入った?じゃあさっさと情報を﹂
﹁は∼い﹂
カレンの手が自らの股間に伸びる。
指が秘裂を押し割って中に入る。
﹁ちょっといきなり何を﹂
﹁いーからいーから、ん、んぅ∼﹂
秘裂から丸めた紙の束を抜きだした。
なお紙には一切湿気た様子はない。
この女の膣や子宮はどういった構造なのか。
424
﹁どこに入れてたのよ!﹂
﹁とらでぃっしょなるな秘密情報の隠し場所っすよ。女忍者のこと
を女という漢字を分解してくノ一と呼ぶというのは俗説で、本当は
男より穴が一つ⋮⋮﹂
﹁∼そういうのはいいから、これを読むから黙ってて﹂
﹁むー﹂
頭痛を抑える表情でカレンの蘊蓄を遮った女王。
それはもういろいろと突っ込みたいのを抑えている。
だがいちいち突っ込んでいると、肝心な話が進まないのであった。
その様を見たカレンは若干不満気にしながら、報酬として用意さ
れた者たちを観察し始めた。
しばし沈黙を保つ二人の裸女。
ふと何かに気付いたように、女王が顔を上げた。
﹁一つ聞きたいんだけど﹂
﹁はい?﹂
﹁この情報って、売ったの私だけよね?﹂
﹁いーいーえー﹂
やる気なさげな答えに、柳眉をたてる女王。
﹁シーナさんとか、家元さんとか、学園長さんとか、お得意先には
あらかた売ったすよ∼﹂
﹁なんですって!﹂
女王の髪が逆立った。
﹁あなた、そんな誰でも知ってるような情報で、報酬取ろうとした
の?というか一度売った情報は黙ってるのが筋じゃないの﹂
425
ボッチ
﹁何言ってんっすか∼、それが商売っす∼、それに口止め料は別料
金っすよ∼。第一ぃ∼、女王様、友達いないでしょ∼﹂
﹁!﹂
女王の堪忍袋の緒が切れた。
その乳首が勃起する。
丸い乳房がひとりでに動き、乳首が標的を狙う銃口のようにカレ
ンに向けられる、その刹那、乳首から針が打ち出された。
﹁お∼っと﹂
カレンの巨乳が横一文字に裂け、縦に開いた。
皮一枚向けた下から顔を出したのは巨大な眼球。
口から伸びた舌が空間をなめとると、舌先に女王の針が張り付い
ていた。
﹁!﹂
﹁んふぅ∼﹂
一声唸るとカレンの姿が消えた。
再び針を打ち出す女王。
その針は壁に突き刺さった。
﹁くっ﹂
﹁おおっと﹂
危険を感じ翅を生やして飛びあがろうとした途端、女王の首に舌
が巻きついた。
﹁んふふ∼、あんまり馬鹿にしないで欲しいすっね∼、あちらこち
426
らで情報売ってたちまわるだけの雑魚と思ってたすか∼、思ってた
んすね∼﹂
﹁くっ、ぐぅう!﹂
下僕たちに命令を下そうとすると、舌が強く締めあげた。
同時に部屋の壁から滲み出てくるように、緑色の人影がいくつも
現れた。
その陰には首がなく、代わりに胴体に顔を構成する器官があった。
胸には今のカレンのように眼球が、股間には秘裂の代わりに縦に
フェイスレス
裂けた口があり、舌を出している。
それはカレンの下僕たちだった。
背後から現れた彼らは、蜂女たちを羽交い締めにしたり、股間か
ら伸びた舌で縛りあげたりして無力化した。
︵そんな、ここまでなの︶
内心観念しかけた女王だが、いきなり拘束が緩んだ。
﹁ま、ここまでにしときましょ∼かね∼﹂
﹁⋮⋮﹂
手も足も出なかったうえに、情けをかけられた屈辱からカレンを
睨みつける女王。
しかしその表情はカレンの次の言葉で凍りついた。
﹁こう見えても第三世代っす∼、年上のおねー様、馬鹿にすんのも
ほどほどにするっすよ∼﹂
第三世代。
あのヨーロッパに猛威をふるった連中が呼びだした第一世代。
427
ヒメーラ
そこから数を増やし、代を重ねるごとに、自分たちの種族は弱体
化していった。
最初の五人
ともいわれる第一世代、その
を代表格とする第二世代に次ぐ古強者なのだ。
を含む
海の魔女
月の魔女
つまり眼の前のこの女は同胞の中でも上級に属するもの。
次の
その年齢は五十年を超えていよう。
産まれて五年の自分など赤子も同然ということか。
︵おねー様というより、おばー様じゃ︶
﹁⋮⋮なんかいったすっか?﹂
﹁い、いえ、失礼いたしました!そのようなお方とは知らず!﹂
﹁いーっすよ、そんな、ちゃんと約束守った取引してくれんなら﹂
﹁は、はい﹂
内心の屈辱を抑えながら、カレンに対し頭を下げる女王。
︵絶対見返してやるんだから!そのためにも情報を!︶
︵うんうん、若いっていいっすね∼、殺すのはもったいないっす︶
そんな女王を、内心物騒なことを考えながら見つめるカレン。
その姿はどことなく孫を見る祖母だった。
そう語ったフェイスレスの一匹は後日惨殺された。
冴子の作った夜食は卵と鶏肉の入った中華粥だった。
二人で向かい合って食べる。
知らないうちに渇いていた体に、温かい水分が沁み渡っていく気
がした。
428
﹁レトルトだけどおいしい?﹂
﹁はい!﹂
冴子の声に顔を上げると、そこにはエプロンをはずした冴子の姿、
露わになった冴子の乳房が目に飛び込んできた。
﹁⋮⋮﹂
唾を呑みこみ体を、股間を硬くする甲児。
わずかな変化から状態を悟った冴子、さらに挑発を重ねる。
﹁あら、どうしたの﹂
胸を隠すのではなく、髪を書きあげるふりをして甲児の前で揺ら
す。
甲児の視線が痛いほど突き刺さるのが、快感と情欲を産む。
﹁い、いえ、なんでも﹂
﹁何でもないことはないでしょう、こんなに硬くしておいて﹂
冴子が右膝を伸ばした。
その足の親指と第二指で挟む。
|テーブルの下の隠された︽・・・・・・・・・・・︾甲児の股
間を、冴子の足は正確に捉えていた。
﹁あ⋮⋮﹂
﹁すごい⋮⋮あんなにしたのにもうこんな硬くなってる⋮⋮﹂
しばし呆然とする二人。
冴子の方が一瞬早く我に返り、脚の指で甲児のペニスをしごく。
429
﹁は、ああん、冴子さ⋮⋮あ﹂
甲児は立ち上がろうとしたが、冴子の足が押さえつける。
﹁は、ああ、さ、冴子さん、ああ﹂
﹁そう、そんなに私の足気持ち良い?﹂
﹁気持ち良いけど、気持ち良いけど、ああもっとぉ﹂
椅子の上で尻をずらすように腰を振り始める甲児。
﹁あ、ちょっと、はぁん﹂
その振動が冴子の子宮まで響いた。
丸で足が女性器となって、性交しているようだ。
﹁はあ、はあ、冴子さん、いかせて、いく﹂
﹁だ、駄目﹂
冴子の足が甲児のペニスを離した。
射精寸前で刺激を止められ、泣きそうな顔で冴子を睨む甲児。
︵やだ、かわいい︶
﹁ごめんなさい、ふざけて、続きは片付けてからね、ね﹂
再びエプロンをつけて流しに向かう冴子。
洗い物をしていたのは数分間。
その間尻に甲児の視線を痛いほど感じる。
︵うふふ、本当に私のお尻好きねぇ︶
430
そのことに不快感どころか歓喜しか湧かないのはなぜだろうか。
︵もう、甲児君にはきっちり責任とってもらわなきゃ、私をこんな
淫乱にしてくれちゃって︶
﹁さて⋮⋮と﹂
洗い物が終わった。
﹁甲児君、もういいわ、来て﹂
流しに手をつき、尻を甲児に向かって突き出して誘う。
獣のように勢いよく襲いかかる甲児。
獲物に食らいつくピラニアのように、甲児の肉の牙が冴子の急所
を貫いた。
そのまま激しく暴れる。
﹁∼∼∼∼∼∼!!だ、駄目、さっきよりすごい、壊れちゃう∼!
待って、あ、あああ﹂
冴子の悲鳴をものともせず、後ろから突き上げながら覆いかぶさ
る甲児。
その両手がエプロンの下に潜り込み、乱暴に乳房を責める。
﹁ああ、おっぱい、おっぱい痛いの、や、優しく、ひわあ﹂
甲児が冴子の耳の後ろ舐め上げる。
冴子の足から力が抜けた。
体重を支えきれない。
今の冴子の体重は、甲児と繋がった股間と流しに引っかかったよ
431
うにつかまる両手だけで支えられている。
少しずつずり落ちてゆく冴子の体。
その体を後ろから左腕で抱き締めるように固定して、一際大きく
突き上げる甲児。
﹁ひいいい!﹂
冴子の体が大きく浮き上がった。
甲児は同時に右腕で冴子の右の太ももを持ち上げる。
﹁きゃあ!﹂
冴子の身体が甲児のペニスを軸に空中で半回転する。
とっさに頭を打たないよう体を丸め、甲児の首にしがみつく様に
つかまる。
一瞬後には甲児に貫かれながら、流しに腰掛けるような体位にな
っていた。
甲児の目の前には、胸の谷間に寄せ集められたエプロンと、顔を
出した二つの乳房。
その乳首を強く吸う。
﹁だ、駄目ぇ、おっぱいそんなに強く吸っちゃいや∼、赤ちゃんの、
赤ちゃんの分なくなっちゃうよ∼﹂
冴子の拒絶にも甲児は止まらない。
また冴子も拒絶しながらも、いつにない甲児の力強さに押し流さ
れていた。
雌としての本能が貪欲に快楽を貪り始めた。
﹁ああああ!ああああああ!いっちゃう!いっちゃうう!﹂
432
﹁うおおお!﹂
その声と同時に甲児が一際強く突き込むと同時に、冴子の胎内で
精を放つ。
﹁ああ!熱い!熱いのぉ!﹂
二人は一層強く抱きしめあった。
そのままの態勢でしばらく荒い息をついてた二人だが、やがて甲
児が立ちあがった。
冴子を貫いたまま、抱え込んだまま。
いわゆる駅弁スタイルである。
﹁こ、甲児君?﹂
﹁冴子さん、部屋に行くよ、冴子さんも冴子さんの部屋も、僕で染
め上げてやる﹂
﹁ああん、あ、ああ、あ﹂
女性とは言え、自分より身長のある相手を苦もなく抱えながら、
しかも揺するようにしながら甲児は冴子をベッドに運んだ。
自分の体重と歩行による振動が刺激となって、冴子を責めてゆく。
冴子の寝室に付いた。
相変わらず無機質な部屋だ。
そして甲児にはなぜかそれが許せない。
︵ソメテヤル!カエテヤル!︶
﹁あひぃ!あ、ああ、ああああ、あふぅ!﹂
433
ベッドに冴子を押し込むように投げ出し、そのまま責める。
冴子はもう内心の仕草としての抵抗もやめ、もはや甲児にされる
まま、快楽に溺れていった。
コーヒーの匂いで目が覚めた。
時間はまだ六時過ぎ、この季節なら日の昇る直前だ。
﹁あら起こしてしまった?﹂
全裸の冴子が、コーヒーを飲んでいた。
﹁おはよう、甲児君﹂
﹁お、おはよう、冴子さん﹂
恥ずかしながらも頬笑みをかわす二人。
﹁早いね、冴子さん﹂
甲児の言葉に眉を寄せる冴子。
﹁裸で気絶したから寒かったのよ﹂
﹁ご、ごめんなさい﹂
今度は赤くなる冴子。
﹁ま、いいわ、これからは気をつけてね、その、昨夜はすごかった
し﹂
﹁う⋮⋮﹂
434
甲児も赤くなった。
外はだんだん明るくなっていった。
﹁やだ、カーテン閉めてない﹂
カーテンを閉めに窓に向かう冴子。
一瞬遅く朝日が彼女を照らし、その美しい裸体が甲児の目に焼き
つけられる。
﹁⋮⋮﹂
﹁さて、甲児君、出勤の前に二人でシャワー浴びて、朝ご飯食べて、
ちょっと掃除していきましょ。昨日のあと始末﹂
﹁う⋮⋮はい﹂
﹁それに、その、ね﹂
視線をそらしながら、ちらりと甲児の股間に目を向ける。
暴れん棒は今朝も元気だった。
︵今日から新しい生活が始まるんだ。冴子さんと二人の。頑張らな
くっちゃ︶
脳内に朝日を浴びる冴子の裸身をよみがえらせながら、新しい生
活へ向けて覚悟を新たにする甲児。
しかし、昨夜にも既に様々な勢力が彼を取り巻き蠢いている以上、
その覚悟はまだ甘いと言わざるを得ない。
そのことを彼はこの朝にも実感する羽目になった。
435
︵そりゃ研究に協力するって言ったけど、こんなの聞いてないよ∼︶
﹁ほうほう、それで?﹂
﹁それで、冴子さんの、オ、オ、オッパ⋮⋮﹂
﹁きちんと明瞭に話しなさい!﹂
昨晩、里見と交わした約束、それは研究への協力であったが、こ
の日の﹃協力﹄とは前夜の冴子との成功の様子を赤裸々に語ること
であった。
もはやただの羞恥責めである。
相手の様子を見ても楽しんでいるとしか思えない。
﹁おっぱいを吸ったら赤ちゃんの分がなくなると⋮⋮﹂
﹁そんなことはないから大丈夫よ、それでそれから?﹂
︵やっぱり選択誤った∼︶
彼の女難、いや受難はまだ始まってもいない。
本番はこれからである。
436
朝と前夜︵後書き︶
ヒメーラとのHを楽しみにされていた方、残念ながら間に合いませ
んでした。
今週中には投稿しますのでしばらくお待ちください。
437
初めての任務 狩りの始まり 1︵前書き︶
3時間ぐらい遅れました。
438
初めての任務 狩りの始まり 1
甲児と冴子の新生活が始まり一週間ほどたったある日。
ACT極東支部の幹部三人の会議が開かれた。
氷室、大山、里見の三人だ。
﹁それで芳賀の具合はどうだ?﹂
﹁だめだありゃ、影山と同じ生き物とは思えない﹂
最近の甲児の日課は、午前中が里見の研究への協力と各種座学。
午後はもっぱら戦闘訓練の日々である。
大山は多忙の合間を縫って、自ら甲児の訓練を見ていたのだが、
その結果はお寒いものであった。
﹁なんだと?﹂
﹁やる気はある、根性もまあ及第点だな、だが致命的に才能ってや
つがない﹂
﹁⋮⋮そんなにひどいのか?﹂
ブリード
﹁良くも悪くも普通の人間並みなんだよ、あの触手になった写真を
見てなかったら、混血と言われても信じられん﹂
里見が口を挟む。
﹁それは心理的な抵抗によるものと思われます﹂
﹁なんだそりゃ?﹂
﹁曲がりなりにも17年彼は人間として生きていました。その積み
重ねが彼を普通の人間のカタに押し込んでいる、要するに思い込み
ですね﹂
439
﹁なるほど﹂
﹁ありそうな話だ﹂
﹁やはり現実を思い知らせるしかないか﹂
目の前で手を組んで発言する氷室。
ファイティングポーズ
両手の向こうで獲物を狙う鷹のような目が光る。
この態勢はいわば彼女の戦闘態勢、危険な判断を下す時の癖であ
った。
﹁⋮⋮おい、実戦投入はまだ早いって言ったはずだぞ﹂
﹁安心しろいきなり実戦部隊に入れるわけではない。今の彼に実績
のある仕事を与えるだけだ﹂
﹁実績?そんなもんあるわけ⋮⋮﹂
いきなり厳しい表情になる大山。
﹁餌にするつもりか?﹂
﹁囮と言って欲しいな﹂
﹁同じだ同じ﹂
そもそも甲児がACTに関係することになった発端、それはたて
つづけに二度もヒメーラに襲われたことだ。
天文学的な確率を引き当てたからには、甲児には何かがあると見
て間違いない。
たとえば他のヒメーラを引き寄せるフェロモンのような何かが。
﹁私も反対です。彼は貴重なサンプルなんですよ、まだ研究も始ま
ったばかりだというのに、こんなことですりつぶすなんて﹂
里見も反論する。
440
しかしその言いざまが気に障った大山は、日ごろ気になっていた
ことを追求し出した。
﹁一つ確認したいんだがな、その研究ってのは一体何なんだ。あの
ウブ
坊主お前の部屋から出てくる時ゃ、いつも顔真っ赤だぞ﹂
﹁まったく威圧までも初心な子ねえ﹂
﹁何やってんだ、てめえ﹂
﹁現在の研究は雄のブリードの性衝動についてよ、だったら内容は
想像できるんじゃない?﹂
﹁⋮⋮影山に切り刻まれても知らんぞ﹂
﹁おお、怖い怖い﹂
氷室の手元でキーボードが甲高く鳴る。
二人が黙ったのを見て話を再開する。
キーボードの操作は続いている。
﹁話を戻すぞ。残念ながら芳賀については早急に成果を出す必要が
出てきた﹂
﹁どういうことだ?﹂
﹁理由は二つ。まず我が極東支部内部での問題。芳賀に対する扱い
への疑問や不安がそろそろ無視できなくなってきた﹂
﹁む⋮⋮そいつは﹂
大山も薄々感じていたことだった。
元々ACT内部の人間はヒメーラに対し強い敵意を持っている方
が当然だ。
冴子のように長期にわたってヒメーラと戦っていても、混血とい
うだけで敵意と隔意の対象になる。
それが未だほとんど実戦を経験していない甲児の場合はいくらば
かりか。
441
しかも最近はヒメーラをの活動が嫌に活発になってきて、実戦部
隊の負担が大きくなっているため、訓練中とはいえ、ある意味特別
扱いされている甲児はさらに反感を買いやすい。
﹁二つ目はこれを見てもらおう﹂
会議室のスクリーンに動画が映された。
映っているのは二人。
大柄な筋肉質な黒人女性と金髪の生意気そうな白人の少年。
お互いの姿を確認した途端、二人に異変が現れた。
女性の眼は充血し、呼吸が荒くなった。
ブラジャーは着けてないのだろう。
厚手のTシャツの上から、勃起した乳首が確認できる。
少年も顔を赤くして前屈みになっている。
その股間は明らかに膨らんでいた。
二人とも明らかに欲情している。
﹁⋮⋮なあ、これって﹂
﹁黙って見ていろ﹂
間違って外国産のポルノ映画を映したのかと思ったが違うらしい。
女は少年に妖しく笑いかけながら、自らのTシャツに手をかけ引
きちぎった。
弾力ある乳房が露わになる。
少年の目が釘付けになる。
女は少年に対し胸を突き出すようにしながら、ウエストに手をか
けホットパンツをショーツごと勢いよく下した。
全裸になった女が少年に歩み寄る。
慌てた少年が、シャツを脱ぎ、ズボンのペルトに手をかけるが、
442
うまく外せない。
女が少年の手を優しく包み、ベルトをはずし、ズボンを下ろす。
すると少年の体格から明らかに異常なサイズのペニスが弾き出さ
れるように現れた。
陶然とした表情でペニスに頬ずりする女。
少年が泣きそうな顔で白い飛沫を上げる。
白い飛沫を顔に受けた女は潮を吹きながら尻もちをつく。
少年の目の前に広がる女の秘部。
凝視する少年の目の前で秘裂を開き、内部へ誘う女。
少年が女に襲いかかった。
あとはもうすることは変わらない。
お互い雄と雌になって互いを貪るのみ。
しかしすぐに異変が生じた。
二人が体位を変え、後背位になった時それは起こった。
少年の肉体が急に膨らむように大きくなった。
まるで子供から大人に成長するように、骨格と筋肉が厚みを増し
てゆく。
皮膚に鱗が生えていく。
顔が伸びて蛇やトカゲのような顔になる。
1分経たないうちに少年は、トカゲ男へと変貌を遂げていた。
女はそれに気付かずに快楽にあえいでいたが、トカゲ男に顔を舐
められて初めて気が付いた。
悲鳴を上げた離れようとするが、トカゲ男は女の尻をがっちりつ
かんで離れない。
女が横に倒れるように体をひねって、踵でトカゲ男の側頭部を蹴
った。
もんどりうって双方の身体が離れた。
だがそれでも二つの肉体は繋がっていた。
トカゲ男のペニスが蛇のように伸びて、女の胎内に潜り込んだま
まだ。
443
抵抗の意思を瞳に燃やして立ち上がろうとする女だが、蛇の責め
がそれを許さない。
蛇がうねるたびに、女の身体が跳ねるように痙攣する。
引き抜こうとしても内部から湧きおこる快楽に、女は我を忘れて
いく。
女が完全に屈しようとした瞬間、赤いレーザーがトカゲ男の脳を
破壊した。
それが動画のラストシーンだった。
﹁今のはなんだ﹂
理解しながらも大山は確認する。
少年と顔を合わせた時の女の表情。
彼には見覚えがあるものだった。
﹁東海岸支部で撮影された、混血同士の出会いの一幕だ﹂
︵やはりそうか⋮⋮︶
そうあの女の表情は甲児と出会った冴子のそれと同じであった。
本人いわく同種の異性に出会った時の顔。
﹁なるほど二番煎じを狙ったわけですね、でも肝心なことを理解し
ていなかったと﹂
﹁肝心なことだと﹂
﹁あの雄はどうみても第二次性徴が始まったぐらいでしょう﹂
﹁⋮⋮その通りだ﹂
﹁⋮⋮なるほど﹂
第二次性徴を通り抜けた者と差し掛かった者。
444
二人の運命の分かれ目はその違いだった。
﹁だが、これで芳賀の特異性はさらに顕著になってしまった﹂
﹁⋮⋮モルモットとしての価値が上がったわけか﹂
﹁そんな!あれは私の物⋮⋮﹂
﹁やかましい!﹂
一喝して黙らせる。
﹁要するに、自分に渡せとうるさいやつらが現れると﹂
﹁すでに現れている、黙らせているがな﹂
﹁⋮⋮﹂
どうやって黙らせているのやら。
﹁つまり、今の体制を崩したくないなら、モルモット以外で何らか
の価値を証明しなくてはならない、と﹂
﹁そういうことだ﹂
﹁⋮⋮やむをえませんね﹂
﹁フォローはきちんとするんだろうな﹂
﹁当然だ﹂
甲児に第六偵察小隊行きの人事が決定した瞬間だった。
ACTにおける偵察小隊とは、情報部が収集・解析した情報をも
とに、ヒメーラの存在を調査・探索・確認する部隊である。
第一小隊から第五小隊まで活動していたが、新たに甲児を中核と
する第六部隊が結成された。
445
甲児以外の隊員は情報部からの異動組、甲児と顔見知りで甲児へ
の反感が少ないことを考慮して選ばれた。
スーツ
ぶっちゃけ、鈴木、田中、佐藤の黒眼鏡三人組である。︵第三話
登場︶
﹁にひひひひ、いー仕事してますねぇ﹂
上機嫌で小男の佐藤がハンドルを回す。
﹁仕事を忘れるなよ、佐藤﹂
助手席に座るのはリーダーの鈴木。
︵⋮⋮狭い︶
後部座席で巨体を詰め込むようにして座っている田中。
その隣で甲児は落ち着かない様子で、はじめて袖を通した背広を
撫でまわしていたり、ポケット内の携帯電話をいじったりしていた。
この背広、見た目はただの黒スーツだが、耐衝撃及び防刃効果の
ある一種のボディーアーマーらしい。
携帯は本物の電話としての機能のほか、Cパルス探知機にもなり、
さらには対ヒメーラ用のスタンガンになるらしい。
なお人間に使うと死ぬ。
靴の踵には爆弾が仕込んであるらしい。
スイッチを入れなければ爆発しないので、強く踏んでも大丈夫と
バン
言われたが、やっぱりつま先立ちになってしまう。
さらに言うと只今乗っている車にも、様々な秘密兵器が隠されて
いるらしい。
説明してくれた由美いわく。
446
﹁ボ〇ド・カーにも負けないよー﹂
とのことだ。
佐藤がはしゃいでるのはそのためらしい。
﹁いい加減落ち着け、少年﹂
助手席から振り向いて甲児に注意する鈴木。
﹁覚悟決めろよ、みっともない﹂
初任務で緊張していると思われたらしい。
いやそれはあるにはあるが。
﹁ヒ、ヒメーラ相手にする覚悟はあります、あるつもりです﹂
﹁つもりって、お前なぁ﹂
﹁あ、あの由美さんって、マッドなんですか?﹂
甲児の直球すぎる質問に全員視線をそらした。
彼女だけはまともでいて欲しかった甲児はうなだれた。
﹁えー、任務を確認するぞ﹂
鈴木は誤魔化すことにしたようだ。
﹁今回の任務は幽霊事件と行方不明事件の調査だ﹂
ACT情報部が最初に注目したのは一件の交通事故だった。
その事故を起こした運転手は警察の事情聴取にこう証言した。
447
幽霊が出た
事故現場を通過しようとした際、フロントガラスの上から逆さま
の女の顔がす︱︱と降りてきたため、驚いて無理にハンドルを切っ
たらしい。
この女幽霊が上位ヒメーラ︱︱魔女の可能性が高いものとして調
査した結果、この事故現場付近を通勤通学などで通過する人間が幾
人も行方不明となっていることが判明した。
﹁⋮⋮ACT情報部って、すごいんですねえ﹂
﹁わはは、そうだろうそうだろう﹂
﹁んん!続けるぞ﹂
既に第四偵察小隊が調査したが、ヒメーラの存在を示すCパルス
を感知できなかった。
しかし、相変わらず行方不明事件は続いている。
そこで甲児を使って誘い出そうということになったわけだ。
﹁まあ、そういったところで、戦闘は俺たちの仕事じゃない。ヒメ
ーラを確認したら本部に連絡して逃げるだけだ﹂
﹁といっても、油断は禁物だぞー。敵に近づくのは確かなんだから﹂
﹁は、はい!﹂
鈴木と佐藤が甲児に気遣いを見せる。
その間、田中は数珠を出して手を合わせているだけだった。
・・・
﹁あ、こいつ、こー見えて見える人﹂
﹁え?﹂
﹁ほんとに幽霊だったら、こいつの方が役に立つかもな﹂
448
などという奇天烈な会話をしながら、バンは夜道を走り、都心か
ら少し離れた事故現場に到着する。
道路の両側に高いビルやマンションが並び、街灯が多いせいもあ
って、結構明るい。
道路を走る車も少なくなく、幽霊が出るような、ものさびしい場
所ではなかった。
﹁こんな賑やかなところで、いきなり人が消えたりするんでしょう
か?﹂
﹁いや、賑やかといっても、誰も周りを見ているわけじゃない、家
路を急いでいたり、携帯を見ていたり、結構周りに無関心だ﹂
﹁人攫いがあっても、目撃者がいないこともありうるさ﹂
﹁まして非常識な方法で攫ったとあったらな﹂
﹁なるほど﹂
先輩たちの推理に感服する甲児。
事故現場を中心に周囲を走り回るバン。
車内から周囲を観察する四人。
時間はそろそろ0時に差し掛かる。
走る車はそれほどではないが人通りは明らかに激減した。
﹁センサーに反応は?﹂
﹁ない﹂
田中から期待した返答はない。
︵ううむ︶
鈴木は迷った。
今回の任務が甲児を囮として使うことは承知の上だ。
449
子供
を危地に追
だが同時に甲児の安全を最優先という矛盾した命令を受けている。
上司としても、人間としても訓練の不十分な
いやることはしたくない。
しかしこのまま何もなかった、で帰れば別の意味で甲児の身に危
険が迫る。
リスクとリターンを秤にかけて、鈴木は決断を迫られた。
﹁やむを得ん、外に出よう。佐藤は車内で待機。芳賀と田中は俺に
ついてこい﹂
﹁わかった﹂
﹁は、はい﹂
身を固くする甲児を視界の隅に入れながら、田中に目配せすると、
この意外と多芸な大男はかすかにうなずいた。
バンから三人の男が降りた。
鈴木、甲児、田中の順に並ぶ。
﹁芳賀、何か感じるか﹂
﹁いえ、別に何も・・・・・・﹂
その時甲児の眼に奇妙なものが映る。
女物のハンドバッグ、それもブランド物ではなかろうか。
そのバッグ自体はおかしくない。
だがバッグがある場所が問題だ。
なぜ道路脇の植え込みの上に無造作に置いてあるのか。
﹁鈴木さん、あのバッグ!﹂
﹁なんだ、うん?確かに変だな、ちょっと見てくる﹂
450
その時携帯から鳴り響くアラーム!
﹁芳賀!車に戻れ!﹂
周囲に視線を走らせながら、携帯をナイフのように胸ポケットか
ら吹き抜いて構える、同時にチラリと画面を確認する。
画面にはCパルス確認の文字。
︵やはりいたか、隠れるのが上手い奴のようだな。それがのこのこ
と︶
﹁しまった!やられた!﹂
後ろで上がる田中の叫び。
振り返ると甲児の姿がない。
一瞬前まで甲児の立っていた場所には、甲児の携帯が︱︱発信機
の役割を持つ特製のそれが転がっていた。
﹁芳賀は!﹂
﹁すまん、ほんの一瞬目を離した隙に⋮⋮﹂
﹁馬鹿!目を離すなと言ったろうが!佐藤!﹂
﹁すいません!俺も周りに気を取られて⋮⋮﹂
﹁くっ﹂
歯噛みする鈴木。
Cパルス
︵くそ、周囲を確認するのではなく、坊主を車に叩きこむんだった。
俺たちの注意を周りにそらすためわざと気配を出したのか︶
後悔しても今さら後の祭りである。
451
胸元で携帯が鳴った時、つい甲児は携帯に意識を向けてしまった。
そこに飛んだ鈴木の指示と、車に向かって押し出す田中の手。
車に何も考えず、いや、携帯を取り出そうとしながら向かった。
・・
彼は未熟だった︱︱訓練も経験も足りていなかった。
しかし戦場で﹃弱い﹄ことは罪である⋮⋮
視線を胸元から正面に顔を戻した時、視界の上からそれは降りて
きた。
垂れ下がった女の髪、逆さまになった妖艶な女の顔、そして細い
が熟れた全裸の体。
まるで意識の隙間から無意識の悪夢が湧いて出たような非現実感。
甲児は動けなかった。
覚悟はしていたが、現実感のない光景に、意識が反応できなかっ
た。
棒立ちになった甲児の前で女の身体がさらに降下する。
甲児の視界の中央に女の濡れそぼった秘部が来た時、始めて甲児
の肉体は危険を感じて、逃走に転じようとした。
しかし、それより早く女が甲児を捕えた。
女の両脚が大きく開き、逆さまで胡坐をかくように組まれた、甲
児の顔を自らの秘部に押し付けるように。
・・・・
女の体液は妙に粘着質で甲児の口をふさぐ。
長く伸びた女の両腕が、甲児の腕を彼の背中越しに固定する。
甲児の手から携帯が弾かれて宙に舞う。
そして女の口は、彼の意思に反して女の裸体に反応した彼のペニ
452
スを、ズボンの上から咥えこんだ。
ズボン越しとはいえ急所を抑えられ甲児が硬直すると、女の体は
浮上を始めた。
甲児とともに。
文章にすると、これら一連の動きは長い時間をかけてゆっくり行
われたようだが、実際は三人の男たちの意識がそろって甲児からそ
れた一瞬以下の時間で行われた⋮⋮
彼の居場所を示す発信機付きの携帯が地に落ちる前に。
さて最愛の男が危地にあるころ、冴子もまた戦場にいた。
そこはもう秩父に近い山の中。
﹁はあああああああ!!!﹂
雄叫び︵この場合雌叫びというのが正しいのか?︶を上げて冴子
が両手の刀を縦横無尽に振る。
二刀流とはかなりの膂力を必要とするものであり、普通は刀と脇
差の大小二刀を使う。
453
しかし今の彼女は左右同じ長さの刀を使い、刃金の嵐を巻き起こ
している。
理由は単純。
手が足らないからだ。
冴子の巻き起こす刃金の嵐に巻き込まれ、無数の獣が断末魔を上
げて切り刻まれてゆく。
猿だ。
無数の人間の子供ぐらいの大きさの猿が、彼女に襲いかかってい
るのだ。
いやしかしそいつらを猿と言ってよいのか。
その顔はどんな人間よりも下衆に歪み、股間から凶暴そうな肉の
牙を冴子の女体に突き刺さんと襲ってくるのだ。
﹁せいっ!﹂
冴子の両刀がその頭上を十字に斬るように走る。
周囲360度を覆う包囲網に開いた一瞬の脱出口。
躊躇わずに血の霧に飛び込むように、上空へ飛ぶ冴子。
冴子が飛びあがった刹那、足元の血だまりから突き出される魚の
骨のような銛。
銛が猿の一匹に命中すると、周囲の猿が見えない口に喰いちぎら
れたように消滅した。
さらに降りかかる血の雨の中、血だまりから銛を持った女の上半
身が現れ、上空の冴子を見て舌打ちしながら、銛を投げる構えをと
る。
冴子を狙う資格は足元からだけではなかった。
﹁どりゃあああ!﹂
上空から黒光りする何かの棒を大上段に構えて振りおろそうとす
454
る人影。
﹁!﹂
冴子の身体が空中で半回転し、襲い来る棒を両足をそろえて蹴る。
﹁なろぉ!﹂
その反動で横に飛ぶ冴子。
その冴子の陰から銛が飛んできた。
空中で態勢を崩されていた棒使いだが、体をひねるように棒を振
り、銛を弾いた。
弾かれた銛は血だまりからその全身をあらわした、さらしに褌姿
の女の手元に、泳ぐ魚のように戻った。
﹁あぶねえじゃねえか!サキ!﹂
棒使いの女?が叫ぶ。
?を付けたのはとても女らしいとは言えないからだ。
筋骨隆々、胸は控えめに膨らんでいる、かすかに剥き出しの女性
器も見える。
しかし目を引くのは股間の勃起した巨根。
それさえなければ女性と言えるのだが、最後のそれが、女性と断
言させるのを躊躇わせる。
さらに加えてべリ−ショートの髪と、眉の太い少年じみた勝ち気
そうな顔のせいで、男と言われても全く違和感がない。
﹁るせえ!猿は引っ込んでな!﹂
﹁なにをぉ!﹂
455
褌女が怒鳴り返すと、棒使いの、というよりは猿女が棒を水平に
構えて褌女に突進する。
急遽始まった魔女同士の戦いを見ながら、冴子は歯噛みしていた。
甲児の初めての任務、何かあった時のために側に待機していたか
ったのだが、この任務のためそれはできなかった。
早く片付けて帰りたいところが、相手は多数の使い魔をひきつれ
た魔女、さらにそこに別の魔女が現れ、三つ巴の戦いになってしま
った。
︵こんなこと、こんなことしてる場合じゃ⋮⋮︶
焦りを押し殺し、両刀を構える冴子。
まだそこまで血迷ってはいない。
大山はひそかに安堵した。
マイクロシャワー
言っておくが彼とその部下たちも何もしていなかったわけではな
い。
携帯用の小型高周波輻射砲︵それでもトランク並みのサイズだが︶
で、簡易的な防壁を作り、その陰から、猿どもと戦っていたのだ。
︵しかし、対魔女任務で別の魔女が乱入して来るとは⋮⋮︶
極めて珍しい、今までになかった事態である。
ヒメーラ
︵やはり奴らの中に何か起きているな︶
長年、ヒメーラと死闘を続けてきた大山は、昨今の情勢に肌で何
かを感じていた。
しかし彼にはそれ以上に気にかかることがあった。
視界の片隅で魔女たちと三つ巴の戦いを演じる冴子を捕える。
先日の嫉妬蜂の異空間侵入と言い、今日の二刀流と言い、何より
456
二匹の魔女と戦えることと言い⋮⋮
︵間違いない。影山の奴、以前より強くなっている︶
それが何を意味するかまでは分からない。
ただ、何か不吉な予感がした。
空中に釣りあげられた甲児。
かろうじて視界は確保されている。
半分は女の尻が占めているが。
そのおかげで自分が今どこにいるかはわかった。
正確な数字は分からないが、横目に見えるのはビルの6階から7
階ぐらいだろう。
そこに自分を捕えている魔女と瓜二つの魔女が待ち構えていた。
︵双子?︶
一瞬疑問にとらわれる甲児だが、次の瞬間思い出したように暴れ
出す。
上で待つ女は両脚を広げ、甲児を挑発する様に自慰を始めた、そ
457
の姿が獲物を待ち構える蟻地獄のように見えたからだ。
たぶんその連想は間違いない。
甲児の抵抗の甲斐があったのか、上昇が止まった。
なおも暴れる甲児だが、上の女の一言で動きが止まる。
﹁あかんえ、暴れたら真っ逆様や﹂
﹁!﹂
上の女が股間から手を振ると、愛液が糸のように伸びて甲児の両
脚に巻きついた。
同時に絡みついてる女が強く噛んでくる。
﹁うう!﹂
動けなくなった甲児はついに上の魔女の目の前まで釣りあげられ
た。
その時には周囲の景色は一変していた。
ほんのりと青みがかった黒い闇。
そこを白い柱が縦横に張り巡らされて網や鉄格子のようだ。
そしてその上を這う蜘蛛の化け物たち。
それは頭胸部から裸の女が生えた蜘蛛の群れだった。
いやよく見ると、蜘蛛の前足はそのまま女の脚と化しているから、
尻から蜘蛛の身体が生えた裸女と言うべきか。
そしてどの蜘蛛も女の部分は、自分を捕えた女に、目の前で見せ
つけるように大股開きで自慰をしている女にそっくりだった。
︵うう、だ、だめだ︶
﹁ああ、来る、来るわぁ、逝く!﹂
自慰をしていた女が絶頂を迎えると、その秘部から飛沫があがる。
458
その霧は空中で糸となって甲児に絡みつく。
その寸前に甲児を捕えていた女が離れた。
甲児の股間を軸に体が半回転し、尻もちをつくように下に落ちる。
﹁あはぁ、ええ匂いやわぁ﹂
地に落ちた女が当然としてつぶやく。
聞き咎めた相方が立ち上がって、彼女に声をかける。
﹁お帰りなさいぇ、八重さん﹂
﹁ただいまやわ、お姉さん﹂
双方立ち上がった女たちは、甲児の前で抱き合って、キスをする。
それだけではなく、脚を開いてお互いの太腿を相手の秘部にこす
りつける。
背徳的な同性愛の姉妹の立ったままの絡み合い。
お互いにつぶし合う同じ形の乳房。
やはり同じ形の尻が、息のあった動きで踊るようにリズミカルに
動く。
見てはいけないと思うものの、甲児は目が離せない。
そのまま何分経過したか。
﹁はああ!﹂
八重とその姉は同時に唇を離すと、同時に首をそらして、絶頂の
叫びを放った。
しばしそのままで余韻に浸ったいたようだが、やがてお互いにつ
いばむような軽いキスをすると、甲児に向き直り、全てが同じ裸体
を甲児に見せつける。
その二人の唇が同じ角度に上がった。
459
甲児の股間のふくらみを確認したのだ。
﹁ウチたちを見て興奮したんね?ボン﹂
無言で顔をそらす甲児。
﹁もー、意地張らんでいいんやで﹂
どちらかは分からないが、魔女の一人が甲児のそらした顔を追い
かけるように左脇に斜め座りをする。
慌てて逆方向にそらすと、そこにもう一人が同じように座ってい
た。
﹁さっきのお姉さんエロかったもんなぁ、ボン、我慢出来んでズボ
ンの中に出してもうたもんな﹂
﹁やっぱりそうなん?道理で匂うと思ったわぁ﹂
﹁うう﹂
屈辱で涙がこみ上げてくる甲児。
だが双子の魔女は気にもしていない。
﹁でも、もったいないわぁ、ズボンの中なんてぇ﹂
﹁ほんまや、おかげでちょっとしか味わえんかったわぁ﹂
﹁せやったら、こんなもん⋮⋮﹂
﹁いらへんなぁ﹂
いきなり二人の女が甲児の股間に噛みついた。
性格には股間周辺のズボンの布地である。
それを食いちぎらんとばかりに引っ張ると、ズボンのチャックが
開き、下から突き上げられたトランクスが顔を出す。
460
たまらず悲鳴を上げる甲児。
﹁ひいい!﹂
﹁うふふ、女の子みたいな声上げて、かーいーなぁ﹂
﹁ほんま、食べちゃいたいぐらいやわぁ﹂
再び食らいつく魔女たち、しかも上目遣いで甲児の表情を窺いな
がらである。
本当に喰われると思った甲児は目をつぶってしまう。
しかし痛みはなく、代わりに妙に涼やかな感覚。
恐る恐る目を開けると、引き裂かれたトランクスと、剥き出しに
なったペニス、そして自分を面白そうに見ている女たち。
﹁うふふ、怖がらなくてええんよぉ﹂
﹁食べるのはこれからやぁ﹂
﹁あ⋮﹂
左右から甲児のペニスに舌を這わせる二人。
﹁うふふ、二人で舐めてもらうんは初めてやろ?﹂
﹁すぐに忘れられなくしたげるからなぁ﹂
﹁は、ああ⋮⋮や、やめろぉ﹂
二枚の舌が甲児のペニスを責める、いや攻める。
それはまさに連携攻撃と言うべきものだった。
二枚の舌は息のあったタイミングで甲児の快感を煽ったと思うと、
時には時間差で甲児を攻め立てる。
一人が鈴口を責めたと思うと、その意識の間隙を縫うように睾丸
を愛撫する。
射精したばかりの甲児だったが短時間で再びの射精に追い込まれ
461
た。
﹁で、出る!﹂
﹁あはあああ!﹂
﹁す、すごひいぃ!﹂
甲児の放った精を顔で受け止めた二人。
﹁アアン、ボンはほんま女殺しやわぁ﹂
﹁ん、活きのいい子種やぁ、若返るえぇ﹂
お互いの顔についた白いものを、美味そうに舐めた二人は、再び
甲児を責め始める。
前回と違うのは甲児を責めながら、右手で自らを慰めているとこ
ろか。
それでも二人の攻勢に耐えきれず、甲児はまた勃ち上がってしま
った。 ﹁うふふ、元気になったわぁ﹂
﹁さあ、それでは﹂
二人同時に立ちあがる。
そこで気がついたようにお互いを見る。
﹁ボンは一人⋮⋮﹂
﹁お男根も一本⋮⋮﹂
﹁⋮⋮で、私らは二人⋮⋮﹂
﹁ここは姉の私から⋮⋮﹂
﹁たかが数時間の違いや﹂
462
甲児は混乱していた。
自分を取り合って全裸の美女がにらみ合い。
今までの人生でこんな事態を予想したことはない。
絶対ない。
いいように玩具にされている現実からの逃避も混じった困惑だっ
た。
そんな甲児の困惑をよそに事態は進行する。
﹁ボンに決めてもらう?﹂
﹁そもそも見分けもつけへんのに無理やろ﹂
﹁ならここはいつも通り⋮⋮﹂
﹁勝負やね⋮⋮﹂
甲児は自分の平衡感覚が狂ったような気がした。
体を倒された感覚はない。
・・
下向きの重力は依然感じている。
なのに二人の女は水平に立った。
甲児の顔をはさんだ形で。
90度傾いてみれば、寝ている甲児の顔の横に立っただけである
が、実際は重力を無視した光景だ。
そして女たちは甲児の鼻の上で、互いの両脚を入れ違いに組合す。
いわゆる松葉崩しの体位だ。
甲児の視界いっぱいに広がる二つの女の尻。
今にも押しつぶされそうだが、自分の鼻の上に見えない床、いや
壁があるように安定していた。
﹁さあ、ボンの前で決着をつけるで﹂
﹁望むところやぁ﹂
甲児の目の前で弾む大きな肉の球。
463
たまに角度を変えて現れる、飢えた雌銃の口が甲児の目を誘う。
﹁ああ!ボンも!ボンも興奮してるんね!﹂
﹁待っててや、ボン!姉さん逝かせたら、次はボンの番や!﹂
二人の魔女が叫ぶ。
甲児のペニスが一回り大きくなった。
﹁ああ、みてや!ボンがさらに大きく!﹂
﹁感じて!もっとうちらで感じてぇ!﹂
二人の勝負がさらに熱を増した。 464
初めての任務 狩りの始まり 1︵後書き︶
追伸
今回の蜘蛛姉妹の活躍はまだこれからです。
次回は無理やり子作りです。
465
初めての任務 狩りの始まり 2︵前書き︶
お待たせしました。
466
初めての任務 狩りの始まり 2
甲児は湧きあがる獣欲と必死に戦っていた。
彼の目の前では白桃に似た肉塊が二つ、音をたててせめぎあって
いる。
尻だ。
熟れていてなお、未だ引き締まっている女の尻だ。
甲児はその光景から目を離せない。
まるで揺れる尻肉が、彼に催眠術をかけたようだ。
そしてその躍動を見れば見るほど魅入られて、彼の官能を刺激し
てゆく。
︱︱あの肉を揉みしだきたい︱︱
︱︱あの肉の弾力を味わいたい︱︱
︱︱アの肉を咬んでミタい︱︱
︱︱あノ肉ヲ⋮⋮︱︱
︱︱クライタイ⋮⋮︱︱
︱︱!︱︱
︵ち、違う!︶
︵僕はそんなこと望んじゃいない!︶
本能的に自分が危険な欲望に取り憑かれそうだったことを悟る甲
467
児。
目を閉じて欲望を押さえ込もうとするが、やはり目をそらせない。
もっとも目を閉じたところで無駄であったかもしれない。
・・
ぶつかる肉の音、何かの液体が出す湿った音、そして鼻腔を満た
す雌の匂いもまた甲児を追い詰めていた。
そして何より甲児を追い詰めるのは、頭上で熱戦を繰り広げる淫
女たちの声である。
﹁や、八重さん、え、ええわぁ、あふぅ!﹂
﹁ね、ねぇさん、も、もっと、もっとぉ!﹂
先に甲児と交わる権利をかけた勝負のはずが、いつしかそのこと
をすっかり忘れ、二人とも女同志の快楽を貪るのに夢中になってい
る。
﹁あ、ああ、い、イグ!逝きそう!﹂
﹁うちも、うちもぉ!﹂
快感とともに高まっていく喘ぎ声。
﹃ええ、気持ちえぇわ!ボン!もっと、もっとぉ!﹄
﹃ギもチいイガ!コの雌ブタがァ!﹄
﹃あぁん、ボン、ウチにもぉ、ウチにもぉ!﹄
﹃安心しロォ!ふたリ゛ドもちゃんどぶヂゴんデやるヨぉ!﹄
官能を刺激された甲児は二人の魔女を犯している自分を幻視した。
並んで手をついて犬のように這う二人の女。
その後ろで体を揺さぶっているのは正気とは思えない目をした自
分。
それを自分とは認めたくはない、しかしなぜか全く否定できない。
468
狂気の目をした甲児は、右の女の尻にその腹をぶつけるように動
いていたが、すっと滑るように女たちの中間に移動した。
その下半身は影になって見えない。
︵見るな!見ちゃ駄目だ!︶
無意識に確かめようとしたが、本能的に自分を制止する。
甲児
が移動した直後、左の女が喉をそらせて叫びをあげる。
﹃おっほおおお!来たぁ!子宮の奥までぇ!﹄
﹃あひぃ、あぁん、お腹の中、オメコから子宮まで、ゴリゴリぃ!﹄
﹃あぐぅ!さっきより激しくぅ!くるぅ!﹄
右の女も左の女と同様、喉をそらせて叫びをあげる。
そのまま二人で競うように体を揺さぶりながら喘ぐ。
﹃か、体がぁ、ウチの、ウチの体がボンの、ボンの物になってくぅ
∼﹄
﹃も、もう、離れ、られ、へんん∼!死ぬぅ!﹄
﹃ボン∼!ボン様ァ!好きやァア!好きィ!﹄
﹃突いてぇ!突き殺してぇ!﹄
腕の間から見える四つの乳房が弾む。
桃のような二つの尻が一つのリズムに合わせて動く。
甲児
の叫びとともに女たちの身体が引き起こされる。
﹃そヴが!ぞんなにイいか!﹄
469
自分の方に倒れてきた女たちを抱きとめる
甲児
その両手は左右の女たちの乳房をつかんでいる。
。
そして犯されている女たちの姿が全て露わになった。
を、歯を食いしばり耐える甲児。
の下半身だった。
何か
甲児
女たちの胎内を蹂躙している物、そして今女たちの身体を引き起
こした物、それは。
触手の束となった
﹁駄目だーっ!﹂
体の中のはじけそうな
しかしその一部がほとばしったかのように、空中に精が吐き出さ
れる。
直後に現実の淫女二人も絶頂に達した。
﹁あはぁあ!すごいぃ!すごいぃ!﹂
﹁あ、あかん、もうだめぇ!逝くぅ︱︱!﹂
甲児の顔に飛沫がかかる。
目前の肉塊の動きが緩やかになる。
荒い呼吸音が穏やかになると、女たちは絡み合った脚を解き、甲
児に並んだ尻を見せるように彼の股間に顔を寄せる。
甲児の両脇に上下逆に四つん這いになった塩梅だ。
だ
﹁あぁん、中に射精して欲しかったのにぃ、このイケズぅ﹂
﹁ホンマ、もったいないわぁ﹂
﹁う⋮⋮﹂
再び甲児のペニスの表面に走る舌の感覚。
力が抜けたばかりのペニスは再び力を取り戻す。
470
﹁あははははは!立った!立ったわ!﹂
﹁元気やなぁ、ボン、さすがやわぁ﹂
﹁く、くそ!﹂
できる限り体を揺さぶって、拘束から抜け出そうとする甲児。
しかし彼を縛る糸はびくともしない。
それどころかその動きは女たちを楽しませる結果にしかならなか
った。
﹁あん、熱ぅ、お魔羅ビンタやぁ﹂
﹁堪忍なぁ、早くウチらに中に挿入れたいんやなぁ﹂
楽しげに笑う女たち。
﹁ち、違⋮⋮﹂
否定しようとする甲児だが、女たちの動作に目を奪われた。
それぞれ甲児の身体のすぐ横にある脚を、犬のように上げる女た
ち。
今まで尻に隠されていた、妖しく光る眼が、児枠的な赤い唇が、
垂れ下がっても形を失わない豊球が、そして雫を垂らす秘部が甲児
の目を釘づけにする。
﹁間違ってへんやろ﹂
﹁さっきもウチらのお尻とオメコ、痛いぐらいに見たの、わかって
るんやえ﹂
﹁く⋮⋮﹂
図星を突かれ反論できない甲児。
471
﹁素直になってええんやで﹂
﹁ウチらに入れたいんやろ﹂
﹁ウチらを孕ませたいんやろ﹂
﹁ウチらもそれを望んどる﹂
﹁ボンの望み通りにしてええんや﹂
それぞれの上げた脚と同じ側の手が自らの秘部に伸び、二本の指
で秘裂を開く。
雌の匂いが一層濃くなった。
﹁ウチらだけでないえ﹂
﹁皆おいで﹂
足音も振動もない。
ただ周りから人が集まってきたことは分かった。
雌の匂いが周りから濃くなってきたからだ。
自分と女たちの周りを、どこから現れたのか全裸の女たちが集ま
って囲んだ。
皆、日本人形のように整った顔立ち。
表情はない。
しかしその瞳は潤み、顔は紅潮していた。
﹁うちの娘たちや﹂
﹁こん娘らもボンのオンナになることを望んでる﹂
周りに並ぶ女たちが一斉に脚を開き、甲児に見せつけるように腰
を前に突き出す。
﹁!﹂
472
甲児の中で
何か
が騒ぎだす。
何か
を
そしてフラッシュバックする、異形に変貌し狂気に取りつかれた
自分の姿。
﹁ぐ、ぐぅううう!﹂
奥歯が砕けるかとぐらいに強くかみしめ、首を振って
押さえ込む。
﹁我慢したらあかんぇ﹂
﹁据え膳食わぬはなんとやら、や﹂
ペニスに熱い息を吹きかけながらかけられる誘惑の言葉。
それをかき消すように甲児は叫ぶ。
﹁だ、駄目だあああ!裏切っちゃ駄目なんだああ!﹂
甲児を拘束していた糸がはじけ飛んだ。
同時にその場の空気が変質した。
熱い淫らな空気から、冷たく身を切るような殺意に満ちた空気に。
怒りに満ちた目で甲児を睨む双子姉妹。
﹁女に恥ぃかかせるんか?﹂
﹁そっちがその気なら予定変更やな﹂
﹁ん、ボン自身の意思でウチらをオンナにして欲しかったんやが﹂
﹁こうなったら、無理やりや﹂
﹁ああ、犯したる﹂
﹁勝手なこと言うな!僕の意思なんて最初から無視じゃないか!﹂
473
甲児の抗議を無視して、双子姉妹を除く女たちが高々と跳躍した。
﹁な、何を⋮⋮﹂
驚くばかりの甲児をよそに、空中の女たちは両脚を開いて、手を
その秘部に突っ込む。
そしてその手を勢いよく抜くと、きらきらひかる糸が吐き出され、
波を打って甲児に襲いかかる。
﹁うわ!痛!﹂
無数の糸が甲児の身体にまとわりついていた衣服の残骸を斬り飛
ばした、皮膚が裂けて血が滲む。
そしてその直後に甲児の身体に突き刺さる。
﹁い、痛い、な、なに、か、体が勝手に⋮⋮﹂
壊れた操り人形のようにぎくしゃくした動きで立ち上がる甲児。
両腕を背伸びするように目いっぱい伸ばす。
股間から糸を伸ばした女たちが、甲児の頭上の見えない天井に後
ろ手を突いて着地する。
糸を除けば、M字開脚で男を誘う姿勢にしか見えない。
くすぐ
﹁うふふふふ、可愛い男の子が縛られて血を流してる、なんやエッ
チィわぁ﹂
﹁サド心を擽られるなぁ﹂
﹁酷いこと言いなさんな、かわいそぉに﹂
﹁むぅん、一人だけええかっこしてぇ﹂
﹁や、やめるぉ!﹂
474
双子姉妹が甲児の両脇に立った。
甲児の腰を固定するように腕を絡ませ、彼の傷を舐める。
おい
﹁あぁん、血が美味し﹂
﹁ほんまやわぁ﹂
﹁!﹂
甲児は総毛立った。
昔読んだ本に、ある種の蜘蛛や蟷螂等の雌は交尾した後の雄を捕
食すると書いてあったことを、思い出したからだ。
︵く、喰われる!︶
頭上の女たちが、そのままの体勢で一斉に高速で横移動を始めた。
いや横移動と言うよりは円運動、甲児を中心軸とした回転である。
無数の糸が縒り合わされ綱のようになっていく。
女たちの回転が止まる。
双子姉妹が甲児の腰から手を離し、お互いの掌を合わせ、不自然
に伸ばしたその両腕で甲児を囲む輪を作った。
﹁わぁあああ!﹂
綱になった糸がほぐれていく、甲児の体を勢いよく逆回転させな
がら。
双子姉妹が笑う。
表面上は怒りを忘れたように。
その笑みは獲物を待ち構える捕食者の笑みであった。
﹁さぁ、運命のルーレットや、回転が止まった時点でボンのお男根
が向いていた方が勝ちや﹂
475
﹁最初からこうすればよかったなぁ﹂
徐々に緩やかになっていった回転ついにが止まる。
﹁ウチの勝ちやな﹂
﹁いいや、未だや﹂
勢い余ったため逆のねじれが発生したために逆回転。
また止まる。
﹁こっち、こっちや﹂
﹁はよう、ウチのところへ﹂
逆回転を何度も繰り返すたびにねじれは少なくなってゆく。
そして決着の時が来た。
﹁あと少し、あと少しや﹂
﹁と、止まってぇ、止まってぇな﹂
ルーレットの針代わりの甲児のペニスは、今にも止まりそうなゆ
っくりしたスピードで、姉妹の合わせた手、勝敗の境目の横を動い
ていた。
﹁こっちやで、こっちやぁ﹂
﹁ああああ、あかん、行ったらあかん﹂
自分の腕の中から離れていく甲児のペニスを、絶望の目で見る女。
甲児のペニスが自分の腕の中に入ってくるのを、歓喜の目で見る
女。
鏡に映したようにそっくりな女たちの表情には明暗が付いていた。
476
そして甲児の回転が止まった。
﹁やった!ウチの⋮⋮﹂
と、思ったら最後にほんのわずかに後戻りした。
勝敗が逆転する程度に。
﹁ええ∼、そんなぁ﹂
﹁やったあ!八雲さん、逆転勝利!﹂
﹁ううう∼﹂
﹁そんな目で見ても勝負は勝負や﹂
涙目で姉︱︱八雲を睨む八重だが、勝負に異を唱えるつもりはな
いようだ。
﹁もう、仕方ない妹やなぁ﹂
八雲が八重の唇を奪う。
音を立てて舌を絡めると、八重も応えてきた。
二人が唇を離すと、透明な糸が伸びる。
すぐ切れそうなその糸は、なぜか切れずに伸びていた。
﹁これで伝えるさかい、大人しくするんやで﹂
﹁おおきに、お姉さん﹂
その場で正座して礼を言う八重。
どうやらこの唾液の糸は二人の感覚を同期させるもののようだ。
﹁さぁて、ボン、今からウチが本物の女の味を教えてやるからな⋮
⋮あら、気絶してる﹂
477
無理もない、高速の回転と逆回転を何度も繰り返したのだから。
﹁うふふ、じゃあ目覚めのキス。眠り姫ならぬ、眠り王子様や﹂
八雲が甲児の唇を奪い、力強く吸う。
肺の中の空気を吸い尽されるような息苦しさに、意識を取り戻す
甲児。
﹁!﹂
顔を背けようとする甲児だが、彼の体は全く彼の意のままになら
ない。
力がいきなり抜けたように、上顎と下顎の間に隙間ができ、そこ
から八雲の舌が侵入してくる。
﹁∼∼∼∼∼∼∼!﹂
﹁んんん﹂
いかにも甲児の口中を堪能した表情の八雲。
﹁うふふ、動けへんのやろ﹂
﹁一体何をしたんだ﹂
﹁娘たちの糸がボンの神経に絡みついている限り、ボンはウチらの
操り人形や﹂
﹁な!﹂
驚愕する間にも甲児の体は勝手に動き、その場に横たわる。
そして屹立するペニスをまたぐように、仁王立する八雲。
甲児の視界が妖艶な裸体で占められる。
478
その反応に気を良くしたのか軽く微笑んだ八雲が、ガニ股に腰を
落としながら、甲児のペニスを掴む。
赤黒い肉の棒に絡みつく白い指。
そして挑発するように大きく開かれた女陰にその肉棒の先があて
られる。
﹁や、やめ⋮⋮﹂
﹁いただきまあす﹂
甲児の哀願を鼻で笑いながら、一気に腰を下ろす八雲。
飢えた雌獣の盾に裂けた口が獲物を呑みこむ。
﹁やめろー!﹂
﹁あはぁああああ!﹂
﹁おほおおおぉ!﹂
﹁うわぁああ!﹂
甲児のペニスが完全に呑み込まれると、姉妹二人は絶頂の叫びを
あげた。
甲児もあまりの快感に悲鳴を上げる。
既に三度も射精していなければ、挿入した途端に射精していたと
ころだ。
﹁すごい、すごいわぁ、ボンのお魔羅、想像以上やぁ﹂
﹁熱くて硬くて、ドクドクいってって、入った途端逝ってもうた﹂
﹁うううう⋮⋮﹂
呆けたように甲児のペニスを讃えながら、腰を動かし始める八雲。
歯を食いしばって快感に耐える甲児に、表面上は優しく笑いかけ
る。
479
﹁うふふ、我慢しているボン、可愛いわぁ、そぉれ﹂
﹁うぁああ!﹂
﹁あはぁ、ボン、お姉、さん、いぃ、あぁ、あぅ、あはぁ!﹂
︵我慢我慢や、ここが勝負なんやぁ、うぅ気持ち良すぎるぅ、あの
愚妹ぃ︶
準備運動は終わりとばかりに腰の動きを速める八雲。
快感に翻弄されている甲児を、勝ち誇った顔で見下ろしている。
実は内心はそんなに余裕はない。
しかし新しい雄に、どっちが上か教え込むためにも、ここは余裕
の態度を崩せない。
何も考えずよがっている妹が恨めしい。
﹁どうや、ボン気持ちええか?﹂
﹁うああああ﹂
﹁気持ちええんやろ、なぁ﹂
﹁うぐぅうううう!﹂
︵うふふ、話も出来ないてかって︶
﹁おほぉおおおお!﹂
甲児のペニスが膨らんだ直後、熱い迸り。
八雲の余裕の演技が一瞬にして崩れる。
﹁来たぁ!ウチの、ウチの中にぃ!﹂
﹁あつぃいい!奥までぇ!﹂
﹁逝くぅう︱!﹂
﹁ウチもおおぉ!﹂
天に向かって絶頂の叫びをあげる魔女二人。
480
甲児の眼から涙があふれ出した。
﹁はぁはぁ、はぁ、ホントすごいわぁ、ボン、はぁ、射精しただけ
でウチらを生かせるなんて﹂
荒い呼吸を落ち着かせながら、甲児に覆いかぶさる八雲。
愛おしげに甲児の顔を見て、涙に気付く。
﹁あらあら﹂
涙を舐めとった後、再び甲児の唇を奪おうとするが、わずかに甲
児が顔を背けたため狙いが外れる。
﹁もぉ、ほんま意固地な子やなぁ﹂
体を起こした八雲は、腰の動きを再開しながらも、両手で甲児の
顔を固定して自分と向き合わせる。
﹁なぁ、ボン、ウチとボンのええ人、どっちが気持ちええ?﹂
﹁!﹂
甲児の眼に怒りが宿る瞬間、八雲は腰の動きを激しくする。
﹁くうう﹂
﹁ウチの方がええやろ?な?いまだってウチん中でガチガチでドク
ドクいっとるんや、もっとウチが欲しいんやろ?﹂
激しい腰使いで甲児を責めながら問い詰める。
快感に耐える甲児。
実際のところ八雲の言うとおりだ。
481
緩急をつけ前後左右に翻弄するような八雲の腰使いに比べると、
冴子の腰使いは情熱の激しさだけの稚拙な腰使いと言うしかない。
しかしこれは仕方がないことだ。
冴子を女にしたのは童貞であった甲児であり、加えて未だ処女を
失って1月前後しかないのだから。
ともかく甲児は、相手の意のままになりたくない意地で嘘をつく。
﹁さ、冴子さんの方が⋮⋮﹂
﹁ふうん、そう、そうなん﹂
八雲の腰の動きが止まる。
そして彼女は立ち上がる。
甲児のペニスが抜ける。
八雲の股間から射精したばかりの精液があふれる。
﹁あ⋮⋮﹂
声をあげて愕然となる甲児。
今の声はまさしく⋮⋮
﹁なぁんや、そのがっくりした顔は、声は﹂
﹁うふふふ、ホントはウチらともっとええことしたいんやな﹂
﹁わかってんの?ボン。それは⋮⋮﹂
﹁サエコサン、と言う人への裏切りとちゃうのん?﹂
﹁裏切ってもぉたな、裏切っちゃいけない人を﹂
勝ち誇った顔で甲児の顔を踏みつける八雲とその顔を覗きこんで
きた八重の言葉責め。
甲児の身体から完全に力が抜けた。
482
︵勝った!︶
少年を征服したことを確信した双子姉妹。
そうなると彼女たちの欲望にも歯止めが利かなくなった。
︵あぶなかったわぁ︶
﹁昔の女なんか思い出せんようにしてやるわぁ﹂
﹁ウチらのことしか考えられんようにしたげるなぁ﹂
再び腰を下ろす八雲。
﹁今度は一緒に逝こうなぁ、ボン、その方が気持ちえぇで、あはぁ
ボンのお魔羅、最高や﹂
﹁お姉さん、ずるいわぁ、次はウチの番やで﹂
﹁すぐや、すぐ替わる。逝ったばかりで敏感やからぁ﹂
激しく腰を動かす八雲。
自分と一緒に逝かせるために懸命に甲児を責め立てる。
今度は演技も何もなしだ。
﹁ボン、逝きそうになったら、ああああ、言うんやで、ああ、ボン
!﹂
﹁もぉ﹂
甲児の顔に跨る八重。
﹁舐めて、ボン﹂
﹁!いやぁ!今ボンがぁ、ボンが、ウチの中で跳ねたぁ!﹂
﹁あ、ああ、上手やでぇ、ボン、ウチのオメコ見て、興奮したんん
?﹂
483
﹁ええで、ボン、逝きそうやぁ!﹂
﹁ウチも逝く!クンニで逝ぐぅ!﹂
甲児は魔女二人に犯され、体が快楽に反応しながらも、心が死ん
だように静かになっていた。
欲望に流された自分への絶望、敵に良いようにされて手も足も出
ない無力感。
それらが甲児の心を殺していた。
・・・・
唯一彼の心で生きているのは憎悪と怒り。
自分の中に宿るヒメーラへの責任転嫁であった。
︵なんでだよ!どうしてだよ!宿主がピンチなんだぞ!なんで助け
に出てこないんだよ!エロイ時だけ出てきやがって!ふざけんなよ
!︶
ぼんやりと八重に奉仕しながら、その尻の向こうの景色を見てい
た。
︵?︶
・・
そこに奇妙なモノがいた。
犬、いや狼であろうか。
漆黒の獣が甲児を見つめていた。
その銀色の瞳で。
︵ニゲルナ︶
︵メヲソムケルナ︶
︵オマエノナカニハダレモイナイ︶
︵イルノハオマエダケダ︶
484
︵スベテハオマエノノゾミ︶
︵スベテハオマエノチカラ︶
︵スベテハオマエノモノダ︶
︵!?!?︶
脳裏に直接響く声。
だが甲児にはその声が何を言っているのか理解できない。
︵シカタナイ︶
︵テツダッテヤロウ︶
その獣の瞳が銀色の光を放った。
世界が銀色に染まる。
いや違う。
光を放っているのは獣の瞳ではない、そこにたたずむ全裸の若い
女だった。
その沁み一つない肌が、その紙が、その瞳が光を放ち世界を銀色
に染め上げているのだ。
そしてその女の裸体を見た瞬間。
甲児は今までにない激しい欲望を感じた。
まるで魂の奥底から湧いて出るように。
甲児の身体が勢いよく跳ねた。
﹁な、なんやぁ!ボ、ボン、いきなりぃ、あ、ああ、あああ、あ︱
︱︱っ!﹂
甲児が下から突き上げるように八雲を責め始めた。
485
八雲は主導権を失い攻守が逆転した。
﹁ウチ、ウチも、そんな、そんなにぃ!吸わないでぇ!噛んじゃい
やぁ!﹂
八重もまたいきなり別人に変わったような責めを受けだした。
何者が強制的に時計の針を進めていた。
反撃の狼煙が上がろうとしていた。 486
初めての任務 狩りの始まり 3︵前書き︶
お久しぶりです。
お待たせして申し訳ありません。
487
初めての任務 狩りの始まり 3
三つ巴の戦いはさらに激しさを増していた。
沙希が鋭く突きだした銛を、筋肉娘が棒を手の中でくるりと回す
ように払うと同時に、一歩踏み込んで棒の反対側で攻撃する。
﹁半魚人が陸に上がってくんじゃねえ!﹂
﹁なにをぉ、猿は猿らしくオナってろ!メスゴリラぁ!﹂
罵声を返すとともに棒を左手で掴み取らんとする。
﹁食い千切る!﹂
﹁チィ!させっか!﹂
踏みとどまる筋肉娘。
棒の角度を変えて沙希の左手首を打ち据える。
そこに襲いかかる無数の銃弾。
冴子が太腿に装着したホルスターから抜いた自動拳銃の弾丸だ。
当然唯の弾丸ではない。
﹁ぐぎゃぎゃ!﹂
﹁だだだだ!痛い痛い!﹂
二人の魔女の肌に触れた途端、無数の小規模の爆発が起こる。
もはや弾丸と言うよりも超小型ミサイルともいうべきである、西
島と浦原、Wマッドの新作である。
名前はまだない。
しかし撃たれた魔女二人の肌には傷一つなかった。
488
﹁この半端者!邪魔すんじゃねえ!﹂
﹁お呼びじゃないんだよ!﹂
跳び退って銃弾から逃れる二人。
特に筋肉娘は棒で地面を叩き、空中で方向変換して冴子の狙いを
はずした。
﹁ち﹂
やはり効かない。
脳裏で失望の言葉が走る刹那、柄を二本合わせて握り締め、弓を
持つように左手で保持していた二刀を、水平にして前に突き出して
二人の敵を牽制する。
同時に右手の銃を捨てて一刀を手にする。
再び二刀流の構えを取る冴子。
切先はそれぞれの敵の急所を狙っている。
とはいうものの冴子からは仕掛けられない。
この構えは双方の敵から攻撃を仕掛けられても対応できるように
する防御の構えだからだ。
魔女たちも仕掛けられない。
魔女
先に攻撃すれば、冴子に後の先を取られかねない、または一拍遅
れた同胞に後ろから襲われかねないからだ。
戦いは一瞬の膠着状態に陥った。
その時、世界が脈打った。
彼女たちはそれを子宮で感じた。
﹁あふぁあ﹂
﹁おごほぉ﹂
489
﹁こォ、甲児君?﹂
冴子の子宮を貫いた衝撃。
それはもうすでに慣れ親しんだ感覚であった。
﹁チっ!外れか!﹂
﹁ちぇ∼、いちぬ∼けた!﹂
沙希が一言毒突くと、筋肉娘は両足と棒で地面を突き放して飛び
上がり、引き締まった尻をさらしながら樹上に立つ。
樹の幹と枝の間に踏ん張る様に大きく開いた脚の中央から光る滴
が落ちる。
樹上に降り立つや否や、鋭く指笛を鳴らす。
鋭い音が鳴り響くと獣の咆哮のような野太い声が応えた。
続いて上空で、重く巨大なものが風を切って飛来する音が響く。
それも北と西の二方向︽・・・︾から。
木の葉を落とし、枝を折って着地する巨大な毛むくじゃらの砲弾。
それは熊より大きい<猿>であった。
霊長類最大と言われるマウンテンゴリラでも雄が身長2m前後で
あるのに対し、こいつらは3m近くある。
サーベルタイガー
現存する動物で一番よく似ているのはヒヒであろう。
しかし牙は剣歯虎のように長く伸び、そのゴリラより太い腕はそ
の胴体に比しテナガザルよりも長い異形の<猿>であった。
筋肉娘が棒を冴子と先に向かって振り下ろす。
犯せ
﹁やれ﹂
GoゴaぐHaaガaaaああああおう!
喜鬼っ奇忌飢偽戯ぃイ!
490
命令とともに<猿>どもの下腹部から毛皮を突き破って肉の大蛇
が顔を出す。
動物の専門家でなくともわかる明らかな歓喜の雄たけびを上げて、
冴子と沙希に襲いかかる<猿>ども。
長い丸太のような剛腕が冴子と沙希を頭上から襲う。
﹁速い!﹂
二人の美女は寸前で攻撃をかわした。
<猿>に殴られた地面が土煙を上げて陥没した。
まるで砲撃だ。
﹁リン!てめえ!待ちやがれぇ!﹂
﹁誰が待つかよって!﹂
沙希に向けた尻をペシペシと叩いて嘲弄する筋肉娘︱︱リン。
怒りを増す沙希を尻目に森の奥へ跳躍する。
﹁じゃあな!<純血の雄>は俺のもんだ!﹂
﹁なめんじゃねぇ!誰が渡すか!﹂
沙希が右手の手刀を振り下ろすと、再び沙希に襲いかかろうとし
ていた<猿>が血飛沫を上げて真っ二つになった。
﹁あばよ!半端者!﹂
血飛沫が作り出した血だまりに、ほれぼれするようなフォームで
飛びこむ沙希。
厚さ数ミリもないその水面に彼女は消えていった。
491
﹁<純血の雄>⋮⋮まさか!﹂
怒餓牙悪ァ!
甲児
その単語と最愛の相手が結び付いた瞬間、生き残った<猿>の腕
が横薙ぎに彼女を襲う。
﹁あひぃいい!ええの!子宮のぉ!奥までぇ!跳ねるぅ!あはぁ!﹂
﹁ひぁあ!オメコ!オメコ食べられるぅ!あん、姉さんん!あはぁ
!﹂
下から荒波の如く突き上げられる八雲の身体が、振り回されるよ
甲児
に噛む様に吸われる刺激に酔いしれていた、八重
うに揺れ動き、支えを求めるかのように八重の方へと倒れ込む。
陰部を
が姉の身体を受け止めた。
二人の乳房がぶつかって、柔らかい音をたてながら潰れて形を変
える。
そのまま姉妹はお互いの唇を貪りあい、舌をからめ合う。
﹁や、八重さぁん、あぁ﹂
﹁お、おネエさぁん、あひぃ!﹂
甲児
が舌を伸ばして淫核から秘裂を舐め上げたからだ。
八重が背をそらして八雲から顔を離す。
二人の顔が離れたタイミングを見計らったように、︽甲児︾が腹
を突き出すように背を反らす。
492
甲児
。
まるでアルファベットのUの字をひっくり返したような、足裏と
頭上に伸ばされた両手で立つブリッジの姿勢をとる
﹁あふぅ!また突き上げてぇ!﹂﹂
﹁だ、駄目、ひっくり返るぅ、姉さんん、あはぁ﹂
お互いの陰部に密着してる部分が水平から垂直に変わったため、
それぞれ後ろに倒れそうになる姉妹だが、八重が慌てて姉の身体に
しがみついて支えた。
その時八重は少年の顔を押しつぶしていた、自らの股間に違和感
を感じた。
下から押し上げてくるような圧迫感。
﹁あ、あふぅ。え、ええ?﹂
﹁あ、なん、なんなの?中でまた大きゅうなッ、つ、詰まる!ああ
っ!一杯!一杯やぁ!﹂
甲児
の頭に持ち上げられていく八重。
折れ曲がっていた針金がゆっくり真っ直ぐに戻るように
甲児
が立ち上がろうとしていた。
ゆっくりと浮き上がる
常人離れした恐るべき腹筋、背筋、首の筋肉の力である。
甲児
の腰に固定されていた。
さらに驚くべきことに、八雲の身体はこの時、身体の中心を串刺
しにされたように
まるで少年の男根と一体と化したように。
甲児
の身体がまっすぐになるにつれ、八重は逆さまになって
﹁ひ、ひぃ﹂
甲児
の腕を抱え込んで体を固定する。
滑り落ちそうになった。
慌てて両足で
493
の身体から無数の、牙を連想させる白い触手が伸びた。
しかし落下を防いだと思ったその瞬間。
甲児
﹁!﹂
の動きを封じていた蜘蛛女たちの糸
は両手を大きく広げながら、力強く仁
甲児
甲児
触手が一斉に蠢くと
が全て切られた。
自由を取り戻した
王立ちする。
この時彼の両手は八重の足首をつかんでいた。
勢いでひっくり返って八雲の上に落ちそうになった八重は落下を
免れた。
大の字に仁王立ちした少年の目の前で、逆さになった全裸の美女
が大股開きでその秘部をさらす。
﹁あ、ああん、やめて、う、うち、は、恥ずかしぃわぁ﹂
八重は秘部に強い刺激を感じていた。
少年は今、両足首以外に自分には触れていない。
しかし秘部に叩きつけられる、熱い呼気とレーザーのような視線
は彼女の官能を燃え上がらせ、失くしていたはずの羞恥心を蘇らせ
ていた。
︵なんでぇ?なんで恥ずかしいん?︶
とうの昔に男に裸を、いやそれ以上に浅ましい淫らな姿を見せる
ことに、なんら抵抗を感じなくなっているはずだった。
いやむしろ裸を見せることは、男に対して自分の優位を見せつけ、
肉欲で屈服させ支配する手段であったはずだ。
なのになぜ今さら初心な小娘の如く羞恥を感じているのか。
494
そのような疑問で逡巡していると、
甲児
が八重の足首を手放
し、滑らせるように手を動かして、太腿を抱え込むように持ち替え
た。
その動きが愛撫のように八重を刺激してゾクゾクとする快感を促
し、彼女は背をのけ反らせる。
﹁きゃあ!﹂
﹁あひぃ!﹂
背をのけ反らせて見えたのは姉のあえぐ顔。
どうやら自分が背をのけ反らすのに合わせて、少年が腰を突き込
んだらしい。
その時、上から押さえつけられるような圧力を感じた。
姉の顔がどんどん近付いてくる。
彼女は悟った。
少年が姉に自分を重ねるように、押さえつけるように、覆いかぶ
さってきたことを。
﹁痛い!姉さん、ごめん!﹂
﹁ええのぉ!気持ちえぇからえぇのぉ!﹂
八重が八雲に叩きつけられた。
先ほどよりも激しく肉の球が潰れて弾力で元に戻る。
だがもはや八雲は快楽しか感じないらしい。
体内に侵入した少年に完全に支配されている。
八重は背後を振り返った。
そして衝撃に襲われた。
両目から後頭部まで衝撃が貫いた。
脳天から心臓、子宮を稲妻が貫いた。
この時彼女は初めて目にしたのだ。
495
今まで自分の尻に隠されていた
甲児
の顔を。
そこにはもう己の無力に泣いていた少年はいない。
狂気と猛々しい力で目を光らせる<獣>︱︱彼女たちが望む<雄
>がいた。
胸が高鳴り、子宮が下りる。
︵惚れる、心底惚れてもぉた。それにウチらのことあんなに欲しが
って⋮⋮︶
愛液を一層を流して喜びに打ち震える八重。
すぐに八雲も気付いたようだ。
﹁ああ!ぼん!﹂
甲児
は八雲を責め立
﹁うれしいわぁ!やっと、その気に、なって、あああああ﹂
姉妹の喜びの叫びに何の反応も見せず、
てる。
逝きつく暇もなく責められ、壊れたかの様に快楽の悲鳴を上げ続
ける八雲。
涙と涎を撒き散らしながらよがり狂う。
﹁あああああひゃああはぁあああ!だ、駄目、飛ぶ!飛んでまう!﹂
﹁酷い、酷いわ、お姉さんばっかりぃ﹂
甲児
の眼の前に自らの秘部を突きつける。
自分の顔のすぐ下でよがり狂う姉に嫉妬する八重。
脚を伸ばして
︵ああ、ほんまに、恥ずかしぃわぁ、でもぉ︶
羞恥に身を焼かれる自分がいる。
496
期待に胸を焦がす自分がいる。
大きく開いた両脚の間から、逆さまに顔を覗かせ、
甲児
甲児
に媚
からは自分の頭の下には姉の乳房が見えるはずだ。
に満ちた笑みを向ける。
なかなかいやらしい。
﹁ぼん∼、うちにも頂戴ィ、うちにもぉ、もうこんなになってんン﹂
右手で自らの秘裂を開く。
トロリと蜜があふれる。
﹁お願いぃ、早く、早くぅ﹂
﹁待って、八重さん、待ってぇ、すぐ逝くからぁ、逝く、逝くぅ!﹂
姉の懇願にも耳を貸さず、体を揺さぶって少年を誘う。
甲児
が嗤った。
両の乳房と尻肉が揺れ、愛液の雫が飛び跳ねる。
その腰使いが加速する。
さらなる喜悦の叫びをあげる八雲。
哀願の叫びをあげる八重。
﹁あ、ああ、や、やめて、こわれ!あああ、そんな、おかしゅうな
るぅ!ひぃ!さらに激しくぅ!﹂
のペニス
﹁そんな、意地悪せんといてぇ!お願いやぁ!うちにも、後生やぁ
!お情けをォ!狂ってまうぅ!﹂
﹁待って、も、もう、逝く!逝っちゃああ⋮⋮え?﹂
甲児
今までに感じたことのないエクスタシーが来る予感。
その予感が現実になる寸前で、八雲の胎内から
497
が勢い良く抜き出された。
﹁そんな、どうしてあと少しで⋮⋮﹂
餌を取りあげられた犬のような顔で涙ぐむ八雲。
逆に妹は顔を輝かせていた。
﹁あぁ、素敵やわぁ﹂
のペニスが八重を貫い
反動で独立した生き物のように跳ねる巨大な肉の牙を、陶然と期
待に満ちた目で見る八重。
甲児
その彼女の期待は裏切られなかった。
獲物を一直線に襲う獣のように、
た。
﹁おぐほぉ!﹂
恥骨から骨盤まで粉砕されるような衝撃。
さらにその衝撃は一瞬にして背骨を伝わり脳天まで突き上げる。
わずか一突きで体を宙に突き上げられるようなエクスタシー。
それが連続して襲ってくる。
﹁あひぃ!あひゃあ!気持ち!良すぎるぅ!吹っ飛ぶぅ!﹂
絶頂に達した後に落ちるところを、再び突き上げられてより高い
絶頂にに達して、また落ちるところを突き上げられて⋮⋮
その繰り返しで魂が地上から宇宙まで叩き上げられそうになる八
重。
その彼女も姉と同じ思いをすることになる。
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﹁え?﹂
先ほどと同じように肉の牙が八重から勢いよく抜き出された。
に尻を突き付ける。
魂の一部が剥ぎ取られたような喪失感。
先ほどの姉と同じ言葉を吐く。
﹁そんな、どうしてあと少しで⋮⋮﹂
甲児
﹁次はウチやぁ!うちの番やぁ!﹂
呆然とする妹を押しのけて姉が
しかし妹も負けてはいない。
﹁ずるは許しまへんえ!まだまだうちの番や!﹂
﹁違うわぁ!ボンはウチの方がお気に入りなんや!﹂
お互いに尻で相手を押しのけようとしている。
甲児
が嗤った。
それも雫を垂らす秘裂を男の眼に晒しながらである。
再び
﹁!﹂
甲児
の触手が一斉に姉妹に襲いかかり、その全身の自由を奪
﹁な、なんや!﹂
った。
無数の触手が彼女たちの肢体にその凹凸を強調するように食い込
む。
﹁キ、キツイ⋮⋮﹂
﹁で、でも、これ﹂
499
触手は彼女たちを拘束しているだけではなかった。
その白い肌の上で不気味に蠢き、新たな性感を呼び起こす愛撫の
ように刺激を与えていた。
乳房にはとぐろを巻く蛇のように巻きつき、触手の先端が乳房の
先端をつつく。
秘裂に沿って舐めるように往復する職種もある。
何より触手からもたらされる熱と圧迫感。
まるで恋焦がれる相手に苦しいほど強く抱きしめられながら、愛
撫を受けているような快感と多幸感を味わっていた。
﹁はぁあ、ええ、ええのボン!ええわぁ!もっとしてぇ!﹂
﹁愛されてるぅ!ウチらボンに愛されてるぅ!﹂
﹁このまま!このまま入れてぇ!﹂
﹁無茶苦茶にしてぇ!﹂
女たちの哀願は叶えられなかった。
触手が強引に彼女たちを動かして、引き起こした。
甲児
が腰を振ると、熱く硬い肉塊が姉妹の唇を叩く。
猛々しい肉の牙をはさんで、姉妹の顔が向き合う。
少年の無言の命令を理解した姉妹は、唯一自由な首を動かして、
先ほどまで自分たちの胎内を蹂躙していた肉の征服者に唇と舌を這
わせた。
︵熱い、硬い、それにこの匂い⋮⋮︶
に奉仕する姉妹。
︵ウチらの匂いをかき消すような濃い匂い、雄の匂いや︶
︵ウ、ウチ、阿保になりそうや︶
甲児
︵あ、あかん、もう何も考えられへん︶
下品な音をたてながら競うように
500
すると
甲児
が苦悶の唸りを上げ始めた。
﹁逝きそうなん?ボン?﹂
﹁ええよ。ウチに呑ませて﹂
﹁嫌や、ウチや﹂
自らが愛しい少年の精を独占しようと、顔で相手の顔を押し出し、
甲児
の男根が耳障りな音をたてながら、鈴口
亀頭を呑みこもうとする。
その時目の前の
から真っ二つに裂けた。
﹁ひ!﹂
﹁な、なんなん!﹂
目を見張る二人の前で男根の断面は肉が盛り上がり、皮膚が再生
されていく。
まるでプラナリアの再生のようだ。
またたく間に根元から日本に枝分かれした異形の男根が誕生した。
二本とも以前と同じ長さ、同じ太さだ。
﹁これ⋮⋮ウチらと同じ⋮⋮﹂
﹁双子の⋮⋮魔羅様や⋮⋮﹂
﹁ウチらと同じ⋮⋮﹂
﹁ウチらのための⋮⋮﹂
二人とも感極まって目の前の男根を加えこむ。
欠けていたものが戻ってきた様な充足感。
そのまま触手に拘束された、不自由な体を精いっぱい使い、情感
をこめて奉仕を始める。
その姿はもう快楽で男を弄ぶ魔女のそれではない。
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﹁ボンん、きもひぃへぇ?﹂
﹁もっと気もちようなってええんよ?﹂
愛する男に自分の愛情を伝え、相手を喜ばせることにより自分も
甲児
が嗤った。
喜びを感じている女の姿だった。
また
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初めての任務 狩りの始まり 3︵後書き︶
続きは来週投稿します。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://novel18.syosetu.com/n3847v/
魔女ヲ喰ウモノ
2016年9月7日11時57分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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