酸化剤を用いた余剰汚泥削減技術 (標準活性汚泥法)

Japan Institute of Wastewater Engineering and Technology
酸 化 剤を用いた余 剰汚 泥 削減 技 術
(標準活性汚泥法)に関する共同研究
下水汚泥の発生量の推移
1
汚泥削減技術に注目
下水道の普及や高度処理化に伴い,下水汚泥として
回収される固形物量は年々増加傾向を示しています。
下水処理場の維持管理費の中で汚泥処理に要する費
用は大きな割合を占めており,更に最終処分場の逼迫
から,今後処分費が高騰していくものと考えられ,省
エネルギー,省コストな汚泥削減技術が求められてい
ます。
図− 1 発生汚泥量及び有効利用状況の推移(出典:国土交通省)
2 酸化剤を用いた余剰汚泥削減技術の概要
余剰汚泥の可溶化
酸化剤を用いて,余剰汚泥中の微生物の細胞壁を破壊し,微生物の可溶化処理を行います。可溶化処理を行うことで,
未処理の余剰汚泥と比較して,同条件であっても一層の酸化分解が進み,余剰汚泥の排出量を削減することができます。
本技術の主な対象は,OD法または長時間エア
レーション法の余剰汚泥でしたが,本研究では新
たな取り組みとして標準活性汚泥法の余剰汚泥
を対象としています。
表− 1 酸化剤の組成
商品名
オーデメルト
酸素系酸化剤 10%以下
含有量
水酸化ナトリウム 30%以上
残り水分等
形 状
淡黄赤色透明液体
沸 点
約 140℃
比 重
1.5 ± 0.05 (15℃ )
溶解度
水,アルコール,グリセリンに易溶
図− 2 微生物の可溶化処理
3 適用フロー
可溶化汚泥を最初沈殿池に返流
最終沈殿池から発生する余剰汚泥の一部を汚泥
減量設備に投入し,可溶化処理を行います。
可溶化した余剰汚泥を最初沈殿池に戻し,可溶
化汚泥の一部は初沈汚泥として重力濃縮槽へ,残
りは越流水として反応タンクに流入させ,好気処
理を行います。
図− 3 概略フロー
4
導入効果
汚泥削減効果&コスト試算
表−2 汚泥減量設備運転条件
◆実証試験方法
減量設備運転条件
実証試験では,汚泥減量設備を大分市松岡水資源再生セ
ンター内に設置し,導入前後の冬季・春季・夏季のデータ
項目
から,汚泥処理設備や水処理設備に与える影響を評価しま
した。
冬季
春季
夏季
汚泥
処理量
薬剤添加濃度 汚泥処理
( 薬剤添加率 )
倍率
反応タンク
可溶化率
水温
30 m3/ 日
(6 日 / 週 )
2,000 mg/L
(21%対 SS)
0.50
18℃
24.9%
3
40 m / 日
(6 日 / 週 )
2,000 mg/L
(18%対 SS)
0.69
22℃
27.1%
3
2,000 mg/L
(20%対 SS)
0.70
26℃
28.3%
40 m / 日
(6 日 / 週 )
表−3 処理方式毎の運転条件・効果のまとめ
写真− 1 汚泥減量設備
◆汚泥固形物発生量
冬季から夏季において 12 ~ 14%の減量効果を確認。
◆濃縮機・脱水機
標準活性汚泥法
OD法
処理倍率
0.5 ~ 0.7 倍
1.5 倍
薬剤添加率
薬剤添加濃度
20%/SS
2,000 ~ 2,500mg/L
30%/SS
3,700mg/L
薬剤反応時間
2 時間
5 時間
可溶化率
25 ~ 30%程度
25%程度
汚泥減量率
12%~ 14%
60%程度
脱水性の向上
−
放流水質
T-P が 0.5mg/L 上昇
T-P が 1 ~ 1.7mg/L 上昇
COD が 1mg/L 上昇
送風機
動力増加率
20%増加
20%増加
余剰汚泥発生量の減少により運転時間・運転経費の削減。 汚泥処理設備
◆OD法との比較
OD余剰汚泥より高い可溶化効果。
◆コスト試算結果
脱水ケーキ処分単価を 16,000 円 / t,減量設備薬剤単価を 100 円 / kg と設定した場合の導入前後のコストを比較した結果,
汚泥処分費・機械濃縮機運転経費および脱水機運転経費の削減により,
流入汚水量 5,000 m3/ 日規模の場合 5.9% (3.7 百万円 ),
50,000 m3/ 日規模の場合 7.6% (34.7 百万円 ) のコスト削減効果が見込まれました。
図−4 コスト試算結果(5,000 m3/ 日規模)
5
図−5 コスト試算結果(50,000 m3/ 日規模)
技術マニュアル - 2013 年 12 月発行-
◆技術マニュアル
本技術マニュアルは,酸化剤を用いた余剰汚泥削減
技術の概要・特徴・原理を説明するとともに,その性
能を明確化した上で,本技術の計画・設計・維持管理
等に係る技術的事項や留意事項についてとり纏めてい
ます。
共同研究者:大分市
目 次
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
総則
処理技術の概要
設備の計画
設備の設計
施工計画
設備の維持管理
資料編
日鉄住金環境株式会社
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