経食道エコーの左心耳血流速度および異常エコー検出と

経食道エコーの左心耳血流速度および異常エコー検出と
心臓CT左心耳造影不良との関連
秋山健太郎¹⁾・佐野裕美¹⁾・工藤悦子¹⁾・野々山則子¹⁾・渡邉志穂¹⁾・
石田誠司¹⁾・関恵理奈¹⁾・遠藤菜々子¹⁾
¹⁾ 岡村記念病院 検査科
・鈴木なおみ¹⁾・東祐圭²⁾
²⁾ 岡村記念病院循環器内科 不整脈センター
目的
心臓造影CT(CC-CT)で左心耳血栓(LAA-TM)の検出が可能であるが、LAA血流(LAA-FLW)や、もやもやエコー(SEC)等の評価方法は決
まっていない。今回、経食道エコー(TEE)でのLAA-FLWおよび異常エコーの有無とCTでのLAA造影所見との関連を検討した。
方法
・2014年1月から2015年12月までTEEとCTを同日に行った70例(男性 47例 女性 23例、平均年齢 61歳、発作性心房細動(PAF) 50例
持続性心房細動(NPAF) 20例、平均CHADS₂スコア 1.09)を対象とした。リウマチ性弁膜症、先天性心疾患および抗凝固薬非服用例は
除外した。
・TEEはLAA-FLW値、SECおよびLAA-TMの有無を検討した。LAA-FLW40cm/s以上(Ⅰ群),30-40cm/s(Ⅱ群),20-30cm/s(Ⅲ群),
20cm/s以下(Ⅳ群)の4群に分け、LAAとLAのCT値との関連を検討した。LAA-FLWの計測はLAA入口部で行った。
・CTは64列MDCTで造影剤370mgI/mLを静注後に動脈相(EF)を、3分後に遅延相(LF)を撮影し、各相でLAAとLAのCT値を計測した。
結果
症例数
(平均LAA-FLW) (全70例)
Ⅰ群 (53.9cm/s)
Ⅱ群
(32.9)
Ⅲ群
(26.1)
Ⅳ群
(18.5)
SEC陽性 (21.0)
LAA-TM陽性 (22.1)
検査時 SR
検査時 AF
Ⅰ群
Ⅱ群
Ⅰ+Ⅱ群
Ⅲ群
Ⅳ群
SEC陽性
LAA-TM陽性
検査時 SR
検査時 AF
48例
3
14
5
6
2
(51.7) 48
(31.7) 22
平均年齢 PAF/NPAF
61歳
66
61
57
61
63
43/5
3/0
2/12
2/3
1/5
0/2
62
57
SEC
LAA-TM LAD(mm) LVEF(%)
なし
なし
3例
3例
なし
なし
1例
1例
40.1
41.4
43.8
43.8
42.3
44.7
59.2
61.6
50.3
51.8
51.1
41.2
1例
5例
なし
2例
39.9
43.7
60.2
50.8
CT値 EF相 CT値 LF相 CT値 EF相 CT値 LF相 CT値 EF相 CT値 LF相 LAA/LA比 LAA/LA比
(EF相)
(LF相)
LAA
LAA
LA
LA
Ao
Ao
361.4
98.7
386.5
98
407.8
98.3
0.94
1.01
390.2
85.2
396.2
78.7
421.9
77.6
0.98
1.08
375.8
91.95
391.35
88.35
414.85
87.95
0.96
1.04
217.9
92.3
427.1
97.9
443.6
104.1
0.51
0.94
120.9
101.36
450
102.7
458.2
102.9
0.27
0.99
128.2
91.3
434.6
103.9
438.8
103.2
0.33
0.95
100.8
62.3
383.9
90.1
394.7
93
0.27
0.69
348.8
98.4
387.3
97.0
406.7
97.8
0.92
1.02
259.3
94.5
422.6
98.5
443.1
100.9
0.62
0.96
各群でのLAAのCT値(EF相)の比較
CT値
EF相 P<0.05
各群でのLAA/LA比(EF相)の比較
LAA-FLWとLAA/LA比(EF相)の相関
異常エコーの有無とLAA/LA比(EF相)の対比
LAA/LA比
LAA/LA比(Y軸)
LAA/LA比
EF相 P<0.05
Y=0.385+0.009x
平均 0.88
最大 1.40
最小 0.14
平均 0.29
最大 0.54
最小 0.18
異常エコー無し
異常エコー有り
(X軸)
•
Ⅰ・Ⅱ群ではEF相のLAA/LA比(0.14-1.14,平均 0.97)の低下が無く、 全例TEEで異常エコーはみられなかった。
•
Ⅲ・Ⅳ群ではEF相のLAA/LA比(0.16-1.13,平均 0.40)の低下がみられ、17例中6例で異常エコーがみられた。
•
LAA-FLWとLAA/LA比(EF相)で正の相関が確認できた。
•
TEEで異常エコーを認めた6例でEF相のLAA/LA比の低下(0.20-0.55,平均 0.29)が認められ、6例中5例が検査時AFであった。
結語
• TEEのLAA-FLWとCTの造影不良に関連を認め、造影CTでLAA-FLW低下の推定を行うことが可能と思われた。
• CTの造影不良と異常エコーの有無については不一致もあった為、特に低下例ではTEEで判断する必要がある。
• エコー機種の違いや術者の熟練度、LAAの解剖によるCT値の測定部位の違い等が測定誤差の要因と考えられた。