異文化適応のための海外インターンシップ

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異文化適応のための海外インターンシップ
一般財団法人 海外産業人材育成協会
HIDA総合研究所 グローバル事業部長
鈴木保己
Yasumi Suzuki
グローバル人材育成の必要性
日本企業の海外事業比率が高まるにつれて、
海外で活躍できる人材を育成するニーズが増加
海外経験を積む機会」とは、海外現地法人での
研修や人事異動等であろうが、このような機会
の提供は、広範な海外ネットワークを有する企
業に限られるものと思われる。
している。「グローバル人材」の必要性が叫ば
こうしたことから、効率的にグローバル人材
れる中、海外に出たがらない、いわゆる「内向
を育成するための各社が利用しやすいツールが
き」な社員も多く、海外展開を進める各社はグ
必要であることが分かるが、そもそもグローバ
ローバル人材の育成に注力している。
ル人材とはどのような資質の人材であろうか?
(一財)国際ビジネスコミュニケーション協会
(IIBC)
が実施した「上場企業における英語活用実態調
求められる異文化理解と対応力
査」
(2011 年)によると、企業が考えるグロー
経済産業省による調査「産学人材育成パート
バル人材に必要な能力とは、
「英語コミュニケー
ナーシップ・グローバル人材育成委員会報告書
ション能力」
(78.4%)が1位であるが、次いで
(2010 年)」において定義されたグローバル人
「異文化理解力」
(40.6%)、
「実行力」
(31.3%)、
材とは「グローバル化が進展している世界の中
リーダーシップ(27.3%)、
「主体性」
(25.6%)と
で、主体的に物事を考え、多様なバックグラウ
続く。語学以外に異文化において考え方の異な
ンドを持つ同僚、取引先、顧客等に自分の考え
る現地法人スタッフや顧客を相手に実績を上
を分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバック
げ、異なる生活環境の中で活躍するための異文
グラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗
化適応力や主体性、実行力が求められているこ
り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、
とが分かる。
更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き
しかし、企業が実際に行っている人材育成と
出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい
しては、
「英語研修」
(44.2%)が 主 で 、
「一般社
価値を生み出すことができる人材」とあり、そ
員が海外経験を積める機会の提供」
(38.8%)、
こでの必要な能力としても語学力のみならず、
「異文化理解研修」
(16.5%)が続くが、一方で
具体的な取り組みをしていないと回答した企業
も3割に達し、英語以外の教育には十分に手が
回っていない様子がうかがえる。
「一般社員が
28
2016年9月号
社会人としての基礎力および、異文化理解・活
用力としている。
つまり「異文化理解」
、
「主体性」等の知識、
資質の重要性が指摘されているにもかかわら