特殊報 ビワキジラミ(第2号)

28農 病 防 第 46760号
平成28年9月7日
各関係機関長 殿
香川県農業試験場病害虫防除所長
( 公 印 省 略 )
平成28年度病害虫発生予察特殊報第2号の発表について
このことについて、次のとおり発表したので送付します。
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平成28年度
1.病害虫名:
第2号
ビワキジラミ
学名 Cacopsylla biwa
2.発生作物名:
3.発生地域:
香川県病害虫発生予察特殊報
ビワ
東かがわ市
4.発生経過
1)ビワキジラミは、平成 24 年に徳島県のビワ園で初めて確認され、果実等すす病の被害を
出している。徳島県の発生地域が香川県境に近いことから、香川県への侵入・被害が懸念
されていた。そこで、平成 25 年度から徳島県に隣接する地域を中心にビワキジラミの発生
調査を実施している。
2)今年度は、6月 21 日に調査を行ったところ、東かがわ市の徳島県境近くの山間部の野良
ビワにキジラミ類と思われる成虫が寄生していることを確認した。このキジラミ類成虫に
ついて神戸植物防疫所に同定を依頼したところ、ビワキジラミであることが確認された。
3)そこで、7月に調査範囲を広げて発生状況を調査したところ、東かがわ市の山間部のほ
か、東かがわ市の平野部でも確認された。現在のところ東かがわ市以外の地域では本虫の
発生は確認されていない。なお、本県での発生は、徳島県に次いで2例目である。
5.形態
4~6月に出現する春夏型は小形で(成虫の全長:2.3mm~3.2mm)、体や前翅先端付近後縁に
淡黄褐色の斑紋があり、10月~翌3月に出現する秋冬型は大形で(成虫の全長:3.0mm~
3.8mm)、体や前翅外縁の斑紋が濃色となる。いずれの季節型も胸部に黄白色の縦条や小斑紋が
あり、頭部や腹部はしばしば緑色を帯びる。触角の長さは頭幅の0.8~1.2倍で、日本産の同属他
種よりも短い(写真1)。
幼虫は扁平、体色は淡い黄褐色~黄緑色で、腹部の一部や翅芽などが褐色である(写真2)。
6.生態
井上(2015)によれば、ビワキジラミによる被害は果実肥大期から成熟期の4~6月に見ら
れ、花芽の基部や果梗、芽鱗の下などに寄生した幼虫が甘露や白色ロウ物質を排出するために、
これらの付着した果実や葉の表面にすす病が発生する(写真3)。この時期に羽化する成虫は、
葉裏のおもに主脈にそって群生する。また、この時期の成虫の体色は葉裏の毛に色彩が酷似して
いるため視認が難しい。
その後分散し、8~9月の盛夏期はほとんど見られなくなるが、その期間の生態はまだ不明で
ある。再び、9月下旬以降、ビワの花芽に多数の卵が観察されるようになる。
なお、これまでにビワキジラミの寄主植物として確認されているのはビワのみである。
7.防除上の注意等
1)葉裏に寄生した成虫やすす病の発生を目印として、早期発見に努める。
2)秋以降にビワの花芽に産卵し、翌春まで花芽や幼果の上で数世代繰り返すため、発生が多
くなる秋期から袋かけ作業前までに、第1表を参考に薬剤散布を行う。
3)花芽基部などの隙間に隠れている幼虫には薬剤がかかりにくいため、薬剤使用にあたって
は丁寧に散布する。
第1表 ビワキジラミに適用のある薬剤
系統名
ピレスロイド系
ネオニコチノイド系
薬剤名
スカウトフロアブル
スタークル顆粒水溶剤
アルバリン顆粒水溶剤
写真1 ビワキジラミ成虫
写真3 すす病が発生した果実および果梗
成分名
トラロメトリン
希釈倍数
2000倍
使用時期/使用回数
収穫3日前/3回
ジノテフラン
2000倍
収穫前日/2回
写真2 果実に寄生した幼虫